1 00:00:43,476 --> 00:00:45,778 ≪(お民)喜一さん いらっしゃい。 2 00:00:45,778 --> 00:00:47,713 ≪(喜一)叔母さん お世話になります。 3 00:00:47,713 --> 00:00:50,713 ≪(お民)こんなに早く よく来たねえ。 4 00:00:58,124 --> 00:01:02,824 おちかさんが 首を長くしてお待ちですよ。 5 00:01:10,703 --> 00:01:12,672 おちか。 6 00:01:12,672 --> 00:01:14,674 兄さん。 7 00:01:14,674 --> 00:01:19,674 さあさあ とにかく お上がりなさいな 喜一さん。 8 00:01:27,186 --> 00:01:33,593 (窓格子が揺れる音) 9 00:01:33,593 --> 00:01:37,463 (おたか)蔵が…。 (清太郎)えっ? 10 00:01:37,463 --> 00:01:40,263 蔵が開いた。 11 00:01:44,103 --> 00:02:02,455 ♬~ 12 00:02:02,455 --> 00:02:08,127 (灯庵)<「神田筋違先三島町の 袋問屋 三島屋では➡ 13 00:02:08,127 --> 00:02:12,632 不思議な話を集めております。 お持ちの方は➡ 14 00:02:12,632 --> 00:02:17,970 どうぞ お寄せ下さいまし」と 江戸中に触れ回ると➡ 15 00:02:17,970 --> 00:02:22,308 次々と奇妙な話が舞い込んだ。➡ 16 00:02:22,308 --> 00:02:26,178 聞き手は 主人 伊兵衛の姪っ子 おちか。➡ 17 00:02:26,178 --> 00:02:31,984 これが なかなか利発で愛らしく 話し手も心を許して➡ 18 00:02:31,984 --> 00:02:39,091 物語の神髄を明かす事に なるようだが そのおかげか➡ 19 00:02:39,091 --> 00:02:43,596 眠っていたあやかしをも 起こしてしまう事が➡ 20 00:02:43,596 --> 00:02:51,096 あるやもしれぬ。 不思議は不思議を呼び覚ます…> 21 00:02:52,939 --> 00:02:55,274 兄さん これ 一人で持ってきたの? 22 00:02:55,274 --> 00:02:59,145 秋のお大師様詣での客が 押し寄せて みんな忙しい。 23 00:02:59,145 --> 00:03:02,949 猫の手も借りたいぐらいなのに うちの者を引っ張り出せるもんか。 24 00:03:02,949 --> 00:03:05,451 (伊兵衛)はあ~。 25 00:03:05,451 --> 00:03:09,956 まあ きれいだね ご覧よ おちか! 26 00:03:09,956 --> 00:03:17,456 あっ 私が雪持ち松で おちかが雪持ち南天だね。 27 00:03:20,299 --> 00:03:23,636 はあ~ いい品だ! 28 00:03:23,636 --> 00:03:26,539 これからの季節には うってつけよ! 29 00:03:26,539 --> 00:03:29,508 ああ。 お民にまで 気 遣って頂いて➡ 30 00:03:29,508 --> 00:03:31,911 ありがたい事だね~。 31 00:03:31,911 --> 00:03:35,247 川崎と江戸の間は 何度も行き来してるけど➡ 32 00:03:35,247 --> 00:03:38,584 追い剥ぎが怖いと思ったのは 今度が初めてです。 33 00:03:38,584 --> 00:03:41,921 この帯をとられるような事が あったら 家に帰れません。 34 00:03:41,921 --> 00:03:47,093 あっ そりゃそうだ。 難儀な事だったな~。 35 00:03:47,093 --> 00:03:51,430 積もる話もあるだろう。 喜一 遠慮なんかいらないから➡ 36 00:03:51,430 --> 00:03:53,466 何日でも ゆっくりしていきなさい。 37 00:03:53,466 --> 00:03:55,666 ありがとうございます。 38 00:03:59,105 --> 00:04:04,276 やっぱり… 大変な事もあるんだろう? 39 00:04:04,276 --> 00:04:08,147 ううん。 叔父さんにも叔母さんにも➡ 40 00:04:08,147 --> 00:04:14,286 本当に よくしてもらってる。 心からありがたいと思ってるよ。 41 00:04:14,286 --> 00:04:17,189 そうか…。 42 00:04:17,189 --> 00:04:21,961 時々 親父が しおれていると おふくろは言うんだ。 43 00:04:21,961 --> 00:04:27,133 「おちかは丸千を離れてよかった。 三島屋さんへ行った方が➡ 44 00:04:27,133 --> 00:04:29,802 ここにいるより ずっと よかったんだ」って➡ 45 00:04:29,802 --> 00:04:33,672 尻をたたいて説教してる。 46 00:04:33,672 --> 00:04:38,911 お父っつぁんも おっ母さんも 達者なのよね? 47 00:04:38,911 --> 00:04:41,411 なんとか気張ってるよ。 48 00:04:44,417 --> 00:04:46,417 うん…。 49 00:04:48,287 --> 00:04:51,924 (良助)これを挿してたら 必ず幸せになれるって。 50 00:04:51,924 --> 00:04:54,124 良助さん。 51 00:04:56,429 --> 00:05:00,299 どうぞ お嬢さんを よろしくお願い致します。 52 00:05:00,299 --> 00:05:02,301 おちかが俺の女房になって➡ 53 00:05:02,301 --> 00:05:04,303 喜一にいさんと俺が 義兄弟になって➡ 54 00:05:04,303 --> 00:05:06,605 丸千と波乃屋は 一つの旅籠になって…。 55 00:05:06,605 --> 00:05:09,442 お前なんかの居場所はねえ! 56 00:05:09,442 --> 00:05:12,142 さっさと荷物をまとめろ! 57 00:05:14,313 --> 00:05:18,150 てめえ 見やがったな… おちかを見やがったな! 58 00:05:18,150 --> 00:05:20,152 いや~! 59 00:05:20,152 --> 00:05:22,154 うわ~! 60 00:05:22,154 --> 00:05:25,791 (殴る音) 松太郎! 61 00:05:25,791 --> 00:05:27,726 許さねえ。 62 00:05:27,726 --> 00:05:31,426 俺の事忘れたら許さねえ! 63 00:05:35,601 --> 00:05:37,601 ああっ! 64 00:05:45,144 --> 00:05:47,913 波乃屋の皆さんは どうしてる? 65 00:05:47,913 --> 00:05:51,784 おばさんは寝たり起きたりして 前より よくなったけど➡ 66 00:05:51,784 --> 00:05:53,786 痩せちまったよ。 67 00:05:53,786 --> 00:05:59,258 おじさんは うちの親父よりは しっかりしてる。 68 00:05:59,258 --> 00:06:03,129 松太郎の しでかした事は 松太郎だけのとがで➡ 69 00:06:03,129 --> 00:06:06,031 丸千は関わりないって かばってくれたから➡ 70 00:06:06,031 --> 00:06:08,434 親父が代官所に 連れてかれもしないで➡ 71 00:06:08,434 --> 00:06:10,469 丸千は潰れなかった。 72 00:06:10,469 --> 00:06:13,969 どれだけ頭を下げても足らないよ。 73 00:06:16,175 --> 00:06:23,916 おちか… 何だか 強くなったんじゃねえのか? 74 00:06:23,916 --> 00:06:26,619 そんなんじゃないよ。 75 00:06:26,619 --> 00:06:30,956 でも… そうね 伊兵衛叔父さんに➡ 76 00:06:30,956 --> 00:06:33,726 ちょっと変わった 荒療治をしてもらって➡ 77 00:06:33,726 --> 00:06:37,062 それが 効いてきてるのかもしれない。 78 00:06:37,062 --> 00:06:40,933 何だよ その荒療治ってのは。 79 00:06:40,933 --> 00:06:55,247 ♬~ 80 00:06:55,247 --> 00:06:57,583 その黒白の間で➡ 81 00:06:57,583 --> 00:07:04,256 私も 良助さんと松太郎さんの事を お話しして…。 82 00:07:04,256 --> 00:07:07,756 兄さん? どうしたの? 83 00:07:09,762 --> 00:07:12,598 兄さん! しっかりして! 84 00:07:12,598 --> 00:07:15,100 ああっ。 85 00:07:15,100 --> 00:07:17,603 伊兵衛叔父さんは何の酔狂で➡ 86 00:07:17,603 --> 00:07:20,272 お前に そんなおっかない事を やらせてるんだ。 87 00:07:20,272 --> 00:07:23,943 無理強いじゃないのよ。 最初のうちは 私➡ 88 00:07:23,943 --> 00:07:28,781 訳が分からなくて腹も立ったけど 今は違うの。 89 00:07:28,781 --> 00:07:31,684 不幸なのは自分だけじゃないって 思う事で➡ 90 00:07:31,684 --> 00:07:34,220 ちっとは救われたって事なのか? 91 00:07:34,220 --> 00:07:37,890 そんな ちまちました事じゃ ないのよ 兄さん。 92 00:07:37,890 --> 00:07:42,728 うまく言えないけど… 人の話を聞く事で➡ 93 00:07:42,728 --> 00:07:47,900 自分が怖がっているものの正体を 知ろうとしているんだと思う。 94 00:07:47,900 --> 00:07:52,771 正体が分からないで 闇雲に 怖がって逃げ回っているより➡ 95 00:07:52,771 --> 00:07:55,241 その方がいいって事が 分かってきて。 96 00:07:55,241 --> 00:07:59,111 なあ おちか。 お前 そんな恐ろしい事をして➡ 97 00:07:59,111 --> 00:08:04,750 お前… この家で恐ろしいものに 出会ったりしていないのか? 98 00:08:04,750 --> 00:08:06,785 恐ろしいものって? 99 00:08:06,785 --> 00:08:13,759 私は… 話を聞いているだけよ。 そういう兄さんは➡ 100 00:08:13,759 --> 00:08:18,059 何か恐ろしいものを 見たりしているの? 101 00:08:21,433 --> 00:08:25,271 丸千で何か起こってるのね? あっちで何か起こってるから➡ 102 00:08:25,271 --> 00:08:30,142 私の事が心配になって 急いで 会いに来てくれたんじゃないの? 103 00:08:30,142 --> 00:08:32,544 何が起こってるの? 兄さん。 104 00:08:32,544 --> 00:08:35,344 私に教えてちょうだい。 105 00:08:37,883 --> 00:08:43,689 お前が こっちに来て 半月ばかり過ぎてから➡ 106 00:08:43,689 --> 00:08:45,689 出たんだよ。 107 00:08:47,393 --> 00:08:49,428 どうぞ。 こちらの部屋でございます。 108 00:08:49,428 --> 00:08:53,198 失礼しやす。 どうぞ どうぞ。 109 00:08:53,198 --> 00:08:55,398 うわっ! うわわ~! 110 00:08:58,737 --> 00:09:00,737 (客)どうしたんです? 111 00:09:04,076 --> 00:09:09,581 あっ… 何でもございません。 失礼しました。 112 00:09:09,581 --> 00:09:13,752 何だよ。 急にひっくり返るからよ。 113 00:09:13,752 --> 00:09:27,599 ♬~ 114 00:09:27,599 --> 00:09:29,799 ま… 待て 松太郎。 115 00:09:32,438 --> 00:09:35,040 お前 まさか…➡ 116 00:09:35,040 --> 00:09:38,711 おちかを捜しに 化けて 出てきたんじゃねえだろうな? 117 00:09:38,711 --> 00:09:41,213 そんなつもりだったら 俺は決して許さねえぞ。 118 00:09:41,213 --> 00:09:44,713 お前の卒塔婆 引っこ抜いてやるからな! 119 00:09:47,553 --> 00:09:50,753 じゃあ… 何だってんだ? 120 00:09:54,326 --> 00:09:57,730 「手前でも よく分からねえうちに 迷い出てきて➡ 121 00:09:57,730 --> 00:10:00,065 にいさんに心配をかけました。➡ 122 00:10:00,065 --> 00:10:02,401 それでも ようよう 行き場所が分かったんで➡ 123 00:10:02,401 --> 00:10:07,740 そっちへ向かいます。 もう ご迷惑をかけません」って。 124 00:10:07,740 --> 00:10:14,613 だから「どこへ行くんだよ」って 聞いたんだ。 そしたら➡ 125 00:10:14,613 --> 00:10:20,085 「どうにも しきりと呼ばれている。 そこへ行けばいいらしいから➡ 126 00:10:20,085 --> 00:10:24,423 行ってきます」と言うんだよ。 127 00:10:24,423 --> 00:10:26,358 どこの事だろう? 128 00:10:26,358 --> 00:10:29,094 だから ここじゃねえかって。 129 00:10:29,094 --> 00:10:31,930 今度こそ おちかのところじゃねえかって。 130 00:10:31,930 --> 00:10:34,433 それで 泡を食って やって来たんだよ。 131 00:10:34,433 --> 00:10:38,103 そしたら 百物語なんてやってる って言うじゃねえか。 132 00:10:38,103 --> 00:10:41,440 ああいう遊びはな 怪しいものを招くんだぞ? 133 00:10:41,440 --> 00:10:44,476 お前… 知らねえ訳じゃねえだろう。 134 00:10:44,476 --> 00:10:46,945 知ってるよ。 でも➡ 135 00:10:46,945 --> 00:10:52,618 私は 松太郎さんの幽霊なんかに 会ってない。 本当か? 136 00:10:52,618 --> 00:10:57,122 こんな事で 私が うそをつく訳がないでしょう。 137 00:10:57,122 --> 00:11:02,322 ここにいないのなら 松太郎の野郎 どこ行ったんだ? 138 00:11:03,896 --> 00:11:08,734 「呼ばれてる」って 言ったんだよね? ああ。 139 00:11:08,734 --> 00:11:12,471 それが何かあるか? 140 00:11:12,471 --> 00:11:16,809 松田屋さんに会ったのが ちょうど そのくらいの頃なの。 141 00:11:16,809 --> 00:11:22,809 松田屋さんと曼珠沙華の話をして あの事を思い出したから…。 142 00:11:25,818 --> 00:11:29,321 だけど… 思い出すなら それまでだって➡ 143 00:11:29,321 --> 00:11:33,091 いくらでも あったじゃねえか。 忘れた事なんてなかったろう? 144 00:11:33,091 --> 00:11:38,764 それまでは 思い出すっていうより ふいっと頭に浮かんだのを➡ 145 00:11:38,764 --> 00:11:43,435 つらくて悲しくて 大急ぎで押し隠してたの。 146 00:11:43,435 --> 00:11:49,608 でも 変わり百物語を始めてからは 自分で思い出すようになって➡ 147 00:11:49,608 --> 00:11:52,644 しっかり見つめるようにもなった。 148 00:11:52,644 --> 00:11:58,784 だから 私が松太郎さんを呼んで 丸千に出てきたのかもしれない。 149 00:11:58,784 --> 00:12:03,784 だったら何で今 ここに松公がいねえんだ? 150 00:12:07,493 --> 00:12:10,496 (清太郎)どうしたの? 姉さん? 151 00:12:10,496 --> 00:12:13,632 おちかさん…。 おちかさんが どうしましたか? 152 00:12:13,632 --> 00:12:17,469 男の人が…。 男の人? 153 00:12:17,469 --> 00:12:33,585 ♬~ 154 00:12:33,585 --> 00:12:40,085 越後屋の若旦那… 行く先は三島屋か。 155 00:12:43,095 --> 00:12:46,131 お内儀さん 大変失礼な事と存じますが➡ 156 00:12:46,131 --> 00:12:49,601 手前は おちかお嬢さんに お目に かかりたくて参上致しました。 157 00:12:49,601 --> 00:12:53,772 どうか お取り次ぎを お願い致します。 158 00:12:53,772 --> 00:12:57,276 あらあら そんなにお急ぎですか。 159 00:12:57,276 --> 00:13:01,776 あいにく おちか ちょっと 使いに出てるんですよ。 160 00:13:05,150 --> 00:13:07,286 待て。 161 00:13:07,286 --> 00:13:09,221 どうして止めるんですか? 162 00:13:09,221 --> 00:13:13,792 喜一に もう少し 清太郎さんを 見せておあげよ。 163 00:13:13,792 --> 00:13:18,297 あいつ何者なんだ? おちか。 164 00:13:18,297 --> 00:13:21,967 安藤坂にあった 人の魂をのみ込んでしまう➡ 165 00:13:21,967 --> 00:13:25,003 恐ろしいお屋敷の お話をされた人のお身内で。 166 00:13:25,003 --> 00:13:28,473 草履屋の若旦那だ。 道楽もせんし➡ 167 00:13:28,473 --> 00:13:32,444 商いの目筋にも なかなか いいものを持ってると評判だよ。 168 00:13:32,444 --> 00:13:35,914 優男だなあ。 降るように縁談が来るのに➡ 169 00:13:35,914 --> 00:13:37,950 片っ端から断っているそうだ。 170 00:13:37,950 --> 00:13:42,588 「身を固めるには 手前は まだ未熟者だ」と言ってな。 171 00:13:42,588 --> 00:13:44,523 気に入らねえな。 172 00:13:44,523 --> 00:13:46,758 んな体裁のいい事を 言い並べる野郎に➡ 173 00:13:46,758 --> 00:13:50,095 ろくなもんは いねえ。 174 00:13:50,095 --> 00:13:52,931 どうして こんな意地悪するんですか? 175 00:13:52,931 --> 00:13:54,967 あと少しお待ち。 176 00:13:54,967 --> 00:14:02,274 役者になれそうな色男だ。 うん? もしかして あいつ➡ 177 00:14:02,274 --> 00:14:05,611 おちかに執心してるんじゃ ないですか? 叔父さん。 178 00:14:05,611 --> 00:14:07,546 う~ん。 179 00:14:07,546 --> 00:14:10,482 兄さんったら 今は そんな事を 気にしてる時じゃないでしょう? 180 00:14:10,482 --> 00:14:13,952 お前こそ 何をムキになってんだ? ムキになんか なってやしません。 181 00:14:13,952 --> 00:14:19,291 お客様に失礼だって言ってるのよ。 まあまあ…。 182 00:14:19,291 --> 00:14:22,127 手前は おちかさんの身に 案じられるところがあり➡ 183 00:14:22,127 --> 00:14:25,631 まかり越しました。 打ち明けて お伺い致します。 184 00:14:25,631 --> 00:14:27,966 このところ おちかお嬢さんに➡ 185 00:14:27,966 --> 00:14:29,901 変わった事は ございませんでしょうか? 186 00:14:29,901 --> 00:14:32,938 例えば 何かに おびえていたり 悩んでおられるような➡ 187 00:14:32,938 --> 00:14:35,073 ご様子があったり…。 188 00:14:35,073 --> 00:14:37,109 おちかが何を悩むんです? 189 00:14:37,109 --> 00:14:43,248 そんな ご様子は見られませんか? …なければ よろしいのです。 190 00:14:43,248 --> 00:14:48,587 手前の取り越し苦労でございます。 ただ近頃…。 191 00:14:48,587 --> 00:14:51,089 「ただ近頃…」何です? 192 00:14:51,089 --> 00:14:55,927 姉の おたかが今までにない事を 口走るようになり➡ 193 00:14:55,927 --> 00:14:59,765 その中に おちかさんのお名前が 出てくるのです。 194 00:14:59,765 --> 00:15:04,102 それと もう一人… 松太郎という人の名前も。 195 00:15:04,102 --> 00:15:06,102 ≪(喜一)えっ!? 196 00:15:11,443 --> 00:15:15,113 清太郎さん ちかでございます。 197 00:15:15,113 --> 00:15:18,813 そのお話 私がお伺い致します。 198 00:15:24,456 --> 00:15:29,795 以前に申し上げましたとおり 姉は今 越後屋の奥座敷➡ 199 00:15:29,795 --> 00:15:33,231 座敷牢のような所に 暮らしております。 200 00:15:33,231 --> 00:15:35,901 やっぱり そうなってしまったんですか。 201 00:15:35,901 --> 00:15:41,773 ええ。 とはいえ 牢というほど 堅牢なものでは ございません。 202 00:15:41,773 --> 00:15:44,409 姉が 一人で出歩く事ができぬよう➡ 203 00:15:44,409 --> 00:15:47,245 出入り口に鍵を掛けただけの事で ございますから。 204 00:15:47,245 --> 00:15:50,582 まさに それが 座敷牢ってもんだよ。 205 00:15:50,582 --> 00:15:53,418 兄さん。 (喜一)うん? お兄さん? 206 00:15:53,418 --> 00:15:56,755 はい。 兄の喜一です。 207 00:15:56,755 --> 00:15:59,591 これは失礼致しました! てっきり こちらの番頭さんだと。 208 00:15:59,591 --> 00:16:02,627 番頭? あっ そりゃあいい。 使えるかな? 209 00:16:02,627 --> 00:16:05,397 八十助さんに叱られますよ。 210 00:16:05,397 --> 00:16:09,935 清太郎さん この黒白の間で伺った話を➡ 211 00:16:09,935 --> 00:16:14,773 兄にも教えてしまいました。 ごめんなさい。 212 00:16:14,773 --> 00:16:18,443 ですから兄も おたかさんと 安藤坂のお屋敷の事は➡ 213 00:16:18,443 --> 00:16:22,314 存じております。 お気を悪くなさらないで下さい。 214 00:16:22,314 --> 00:16:25,314 いえ それは もちろん。 215 00:16:27,452 --> 00:16:30,288 姉の話に戻りますが…➡ 216 00:16:30,288 --> 00:16:34,159 表情はなく 体を動かすような事もなく➡ 217 00:16:34,159 --> 00:16:37,562 まるで 生き人形のようでございました。 218 00:16:37,562 --> 00:16:42,901 ところが 姉の瞳をのぞいていると 瞳の奥で何かが動き➡ 219 00:16:42,901 --> 00:16:48,201 そして小さな声で 「蔵が開いた」と言ったのです。 220 00:16:49,775 --> 00:16:58,250 ねえ お屋敷にお客様が来たの。 うれしいわ~。 221 00:16:58,250 --> 00:17:00,752 にぎやかね。 222 00:17:00,752 --> 00:17:06,258 そして おたかさんは松太郎さんの 名前を呼んだのですね。 223 00:17:06,258 --> 00:17:09,094 それは どんなふうに? 224 00:17:09,094 --> 00:17:13,765 姉が また お客様がいる と言うので尋ねてみたのです。 225 00:17:13,765 --> 00:17:18,270 「そのお客様は どこのどなたですか?」と。 226 00:17:18,270 --> 00:17:21,070 松太郎という人よ。 227 00:17:23,108 --> 00:17:26,611 手前の知り合いに その名前の者はおりません。 228 00:17:26,611 --> 00:17:29,114 そこで更に➡ 229 00:17:29,114 --> 00:17:32,884 「そのお方は姉さんの知り合いの方 ですか?」と尋ねると…。 230 00:17:32,884 --> 00:17:36,084 三島屋のお嬢さんが知ってる。 231 00:17:39,758 --> 00:17:44,558 松太郎さんは三島屋の おちかさんに会いたがってるわ。 232 00:17:46,898 --> 00:17:50,769 おちかさんも ここへ来ればいいのに。 233 00:17:50,769 --> 00:17:55,607 いいえ きっと来るわ。 松太郎さんに会いに。 234 00:17:55,607 --> 00:17:58,076 来ない訳がないもの。 235 00:17:58,076 --> 00:18:02,948 ハアハア ごめんなさい。 ハア 胸に悪いわ。 236 00:18:02,948 --> 00:18:04,950 何で こいつが 松太郎を知ってんだ? 237 00:18:04,950 --> 00:18:09,087 何で おたかって人のところに 松太郎がいるんだ? 238 00:18:09,087 --> 00:18:13,425 兄さん 落ち着いて。 松太郎さんが誰に➡ 239 00:18:13,425 --> 00:18:17,295 何に呼ばれて どこへ行ったのか これで分かったわ。 240 00:18:17,295 --> 00:18:19,931 だけど お前 何で そんな訳の分かんねえ➡ 241 00:18:19,931 --> 00:18:23,435 よそのところに…。 安藤坂のお屋敷が➡ 242 00:18:23,435 --> 00:18:26,271 人の魂を求めているからよ。 243 00:18:26,271 --> 00:18:29,941 そうして私が おたかさんを知ったから…。 244 00:18:29,941 --> 00:18:31,910 みんな つながってるの。 245 00:18:31,910 --> 00:18:33,912 あのお屋敷は そういう場所なのよ。 246 00:18:33,912 --> 00:18:37,382 (ため息) 俺には分からねえ。 247 00:18:37,382 --> 00:18:41,052 その屋敷は燃えて無くなったって 言ったじゃねえか。 248 00:18:41,052 --> 00:18:43,955 おたかさんの中にあるの。 249 00:18:43,955 --> 00:18:47,559 えっ? 屋敷が? 250 00:18:47,559 --> 00:18:51,730 姉は「松太郎とは どんな人だ」 という手前の問いに➡ 251 00:18:51,730 --> 00:18:53,730 こう申しました。 252 00:18:56,568 --> 00:19:01,907 死人よ。 おちかさんが よく知ってる。 253 00:19:01,907 --> 00:19:05,243 おちかさんのために死んだ人。 254 00:19:05,243 --> 00:19:08,914 だから おちかさんも おっつけ ここに来る事になる。 255 00:19:08,914 --> 00:19:11,714 その事は あの子も よく分かってる。 256 00:19:13,585 --> 00:19:17,455 あの子は 死人に つかれてるから。 257 00:19:17,455 --> 00:19:21,760 やめろ! そんな話 おちかに聞かせないでくれ! 258 00:19:21,760 --> 00:19:24,596 喜一… 喜一! 259 00:19:24,596 --> 00:19:31,870 おちか 清太郎さんに お前の事を 話しなさい。 できるだろう? 260 00:19:31,870 --> 00:19:35,373 お前には もう その覚悟があるはずだ。 261 00:19:35,373 --> 00:19:41,373 お話ししなければ 清太郎さんには 訳が分からないでしょう? 262 00:19:44,049 --> 00:19:46,049 はい。 263 00:19:48,553 --> 00:19:51,456 お話し致します。 264 00:19:51,456 --> 00:19:53,425 いや~! (蹴る音) 265 00:19:53,425 --> 00:19:55,727 (殴る音) 266 00:19:55,727 --> 00:20:14,746 ♬~ 267 00:20:14,746 --> 00:20:17,746 (忠兵衛) よろしくお願い致します。 268 00:20:22,087 --> 00:20:26,591 母にしてみれば安藤坂の屋敷は 父の敵でございます。 269 00:20:26,591 --> 00:20:31,930 ならばこそ おたか姉さんの事が 二重に哀れでならないのです。 270 00:20:31,930 --> 00:20:35,433 祖父の清六が命と引き換えに 助け出したはずの➡ 271 00:20:35,433 --> 00:20:39,604 おたか姉さんが今でも あの屋敷に 捕らわれたままである事が➡ 272 00:20:39,604 --> 00:20:43,775 歯がゆく 口惜しくてならないのです。 273 00:20:43,775 --> 00:20:47,445 清太郎さんは怖くないんですか? 274 00:20:47,445 --> 00:20:49,381 子どもの頃 清太郎さんも➡ 275 00:20:49,381 --> 00:20:52,784 錠前に たたられたんでしょう? 276 00:20:52,784 --> 00:20:56,454 実は 手前は その事を覚えてないんです。 277 00:20:56,454 --> 00:21:00,625 事情は全て 大きくなってから 両親に聞きました。 278 00:21:00,625 --> 00:21:03,461 そうですか。 279 00:21:03,461 --> 00:21:08,633 おちかさんこそ このような事に 巻き込んでしまいまして➡ 280 00:21:08,633 --> 00:21:11,970 恐ろしくありませんか? 281 00:21:11,970 --> 00:21:18,309 あの時の恐ろしさに比べれば もう何も。 282 00:21:18,309 --> 00:21:22,109 おちかは地獄を見てるんだ。 283 00:21:34,592 --> 00:21:37,929 ここから先が姉の座敷でして➡ 284 00:21:37,929 --> 00:21:41,433 絵柄のついた唐紙でしたが 張り替えました。 285 00:21:41,433 --> 00:21:45,103 時折 この唐紙の柄が 変わって見えるのです。 286 00:21:45,103 --> 00:21:47,803 手前一人の勘違いではなく…。 287 00:21:49,774 --> 00:21:53,611 今 変わりましたでしょうか!? 288 00:21:53,611 --> 00:21:55,547 いつから このような…。 289 00:21:55,547 --> 00:21:59,747 姉が三島屋さんから戻ってからで ございます。 290 00:22:05,623 --> 00:22:07,623 (錠前を外す音) 291 00:22:09,294 --> 00:22:11,294 どうぞ。 292 00:22:27,679 --> 00:22:33,251 おたかさん 三島屋の ちかでございます。 293 00:22:33,251 --> 00:22:39,424 やっと私の方から お訪ねする事が かないました。 294 00:22:39,424 --> 00:22:44,724 おたかさん そこに いらっしゃるんでしょう? 295 00:22:47,165 --> 00:22:53,972 ちかです。 安藤坂のお屋敷に 似合いの ちかが参りました。 296 00:22:53,972 --> 00:22:59,744 どうぞ お出迎え下さいまし。 297 00:22:59,744 --> 00:23:01,813 (窓格子が揺れる音) 298 00:23:01,813 --> 00:23:06,117 何だ? これは… 清太郎さん! 分かりません。 299 00:23:06,117 --> 00:23:08,117 うわっ! 300 00:23:19,297 --> 00:23:21,799 おたか姉さん? 301 00:23:21,799 --> 00:23:38,082 ♬~ 302 00:23:38,082 --> 00:23:40,418 (喜一)おちか? (清太郎)おちかさん! 303 00:23:40,418 --> 00:23:45,089 (喜一)どこに… どこに行ったんだ おちか… おちか! 304 00:23:45,089 --> 00:24:01,105 ♬~ 305 00:24:01,105 --> 00:24:03,942 おたかさん? 306 00:24:03,942 --> 00:24:06,142 兄さん? 307 00:24:08,112 --> 00:24:10,448 清太郎さん? 308 00:24:10,448 --> 00:24:38,409 ♬~ 309 00:24:38,409 --> 00:24:40,709 おたかさん? 310 00:24:44,215 --> 00:24:47,015 待って… おたかちゃん。 311 00:24:48,753 --> 00:24:50,753 おたかちゃん? 312 00:25:00,265 --> 00:25:02,300 おたかちゃん! 313 00:25:02,300 --> 00:25:13,600 ♬~ 314 00:25:29,294 --> 00:25:33,898 きれいでしょ? ここには きれいなものが たんとあるよ。 315 00:25:33,898 --> 00:25:36,934 欲しくない? おたかちゃん…➡ 316 00:25:36,934 --> 00:25:41,239 ここには一人でいるの? ずっと一人だけなの? 317 00:25:41,239 --> 00:25:44,575 お着物 欲しくない? 体にあててみたら➡ 318 00:25:44,575 --> 00:25:47,775 きっと うんと欲しくなるよ。 319 00:25:49,747 --> 00:25:56,747 待って。 鬼ごっこ? 捕まらないよ? 320 00:26:04,762 --> 00:26:08,266 あんた 一人で来なかったね。 321 00:26:08,266 --> 00:26:10,301 えっ? ずるい! 322 00:26:10,301 --> 00:26:12,937 一人で来たよ。 私は一人よ。 323 00:26:12,937 --> 00:26:14,972 うそつき! 324 00:26:14,972 --> 00:26:17,442 おたかちゃん! 325 00:26:17,442 --> 00:26:30,988 ♬~ 326 00:26:30,988 --> 00:26:33,288 松太郎さん? 327 00:26:46,070 --> 00:26:50,408 三島屋の… お嬢さん。 328 00:26:50,408 --> 00:26:53,745 松田屋さん。 329 00:26:53,745 --> 00:26:58,082 この曼珠沙華の中に隠れていれば 大丈夫。 330 00:26:58,082 --> 00:27:02,920 ここは 屋敷とは別の世界。 331 00:27:02,920 --> 00:27:08,426 屋敷も あなたを見つけられますまい。 332 00:27:08,426 --> 00:27:12,930 あなたは… 亡くなったはずです。 333 00:27:12,930 --> 00:27:17,602 はい。 私は この世の者ではありません。 334 00:27:17,602 --> 00:27:22,940 ですから お嬢さんに ついてくる事ができました。 335 00:27:22,940 --> 00:27:28,440 みすみす 屋敷に お嬢さんを 渡す訳には まいりません。 336 00:27:30,448 --> 00:27:36,053 さっき おたかちゃんが 私一人で 来なかったと言ったのは…。 337 00:27:36,053 --> 00:27:42,393 ええ。 でも 私だけではございませんよ。 338 00:27:42,393 --> 00:27:56,240 ♬~ 339 00:27:56,240 --> 00:28:01,740 あの方たちは? お分かりになりませんか? 340 00:28:04,749 --> 00:28:10,421 もしや… お彩さんと市太郎さんでは? 341 00:28:10,421 --> 00:28:12,421 そうです。 342 00:28:14,759 --> 00:28:19,430 どうして? …どうしてここに。 343 00:28:19,430 --> 00:28:24,101 お嬢さんが 聞いて下さったからですよ。 344 00:28:24,101 --> 00:28:27,605 私たちの… 胸の痛みを。 345 00:28:27,605 --> 00:28:32,376 生きていた時の 過ちへの後悔を。 346 00:28:32,376 --> 00:28:36,047 聞いて 分かって下さった。 347 00:28:36,047 --> 00:28:40,918 心のうちで涙を流して下さった。 348 00:28:40,918 --> 00:28:44,388 そんなひどい出来事は ひと事だと➡ 349 00:28:44,388 --> 00:28:47,291 愚かで忌まわしいと 顔を背けたりせずに…。 350 00:28:47,291 --> 00:28:50,728 我が事のように悼んで下さった。 351 00:28:50,728 --> 00:28:58,069 私どもの罪は お嬢さんの魂の一部になり➡ 352 00:28:58,069 --> 00:29:00,769 涙で清められました。 353 00:29:02,940 --> 00:29:08,079 おちかさんのおかげで 解き放たれたのです。 354 00:29:08,079 --> 00:29:12,917 ここは… 冥土の入り口なんでしょうか? 355 00:29:12,917 --> 00:29:14,852 私は死んだんでしょうか? 356 00:29:14,852 --> 00:29:18,723 いいえ。 おちかさんは 生きておりますよ。 357 00:29:18,723 --> 00:29:21,259 だから あなたを お助けしたいのです。 358 00:29:21,259 --> 00:29:26,130 おちかさんを苦しめている者が 呼ばれて ここに来ていますから。 359 00:29:26,130 --> 00:29:30,268 松太郎さんの事ですね? 松太郎さんは悪くありません。 360 00:29:30,268 --> 00:29:35,873 でも… 松太郎さんのした事が お嬢さんを苦しめている。 361 00:29:35,873 --> 00:29:38,709 思いは別でも➡ 362 00:29:38,709 --> 00:29:42,409 しでかしてしまった事は 消しようもありません。 363 00:29:44,048 --> 00:29:46,884 お嬢さんを苦しめた事で➡ 364 00:29:46,884 --> 00:29:52,056 松太郎さんもまた苦しみ 迷っている。 365 00:29:52,056 --> 00:29:57,395 屋敷は そういう魂を欲している。 366 00:29:57,395 --> 00:30:01,899 ならば 松太郎さんも 放ってはおけません。 367 00:30:01,899 --> 00:30:05,403 松太郎さんも 一緒に助けられるのでしょうか? 368 00:30:05,403 --> 00:30:09,907 皆で ここを出て 屋敷を空にしましょう。➡ 369 00:30:09,907 --> 00:30:12,707 そうしたら…。 (何かが砕け散る音) 370 00:30:16,581 --> 00:30:19,250 お吉も外に出られたようです。 371 00:30:19,250 --> 00:30:24,050 [ 回想 ] (お吉)私は ずっと ここに 閉じ込められているんです! 372 00:30:29,260 --> 00:30:34,432 お福は 大きくなりましたね。 373 00:30:34,432 --> 00:30:38,102 おちかさんのおかげで 見る事ができました。 374 00:30:38,102 --> 00:30:40,438 石倉屋さんに忠義を尽くした➡ 375 00:30:40,438 --> 00:30:43,474 奉公人の宗助さんの事は 覚えていますか? 376 00:30:43,474 --> 00:30:46,611 宗助の事まで 気にかけてくれるのですか? 377 00:30:46,611 --> 00:30:49,447 忘れる事はできません。 378 00:30:49,447 --> 00:30:53,747 2人とも… 来たようです。 379 00:30:55,620 --> 00:30:59,123 おちかさんが思ってくれたから。 380 00:30:59,123 --> 00:31:02,823 どこに? 屋敷のどこかです。 381 00:31:04,629 --> 00:31:08,829 それなら… 私が参ります。 382 00:31:25,316 --> 00:31:29,487 こちらは 若お内儀のお吉です。 383 00:31:29,487 --> 00:31:32,089 手前が死んでから 輿入れされたんで➡ 384 00:31:32,089 --> 00:31:35,960 手前の事は ご存じないので…。 385 00:31:35,960 --> 00:31:40,765 では あなたが宗助さんですね? 386 00:31:40,765 --> 00:31:42,765 ええ。 387 00:31:46,637 --> 00:31:51,937 石倉屋の事を ずっと案じていたんですものね。 388 00:32:00,451 --> 00:32:04,288 お吉さん 怖かったでしょう。 389 00:32:04,288 --> 00:32:10,094 でも もう大丈夫。 私… たった一人で➡ 390 00:32:10,094 --> 00:32:12,029 怖くて怖くて。 391 00:32:12,029 --> 00:32:16,467 ねえ。 怖くて 寂しかったですよね。 392 00:32:16,467 --> 00:32:21,305 でも もう すっかり終わりました。 393 00:32:21,305 --> 00:32:28,179 私… 私は どうして ここにいるのでしょう? 394 00:32:28,179 --> 00:32:32,379 じきに分かります。 一緒に行きましょう。 395 00:32:35,252 --> 00:32:38,752 手前が 若お内儀に お供致します。 396 00:32:47,598 --> 00:32:53,104 宗助さん お吉さんをお願いします。 397 00:32:53,104 --> 00:32:57,104 曼珠沙華の所で 休ませてあげて下さい。 398 00:33:02,113 --> 00:33:05,783 おかしいな…。 399 00:33:05,783 --> 00:33:10,083 ここに 逃げ込んだはずなんだがなあ。 400 00:33:13,290 --> 00:33:15,326 清六さん… ですね? 401 00:33:15,326 --> 00:33:19,797 俺は たか坊を 捜しに来たんだがねえ。 402 00:33:19,797 --> 00:33:24,301 おう。 あんたの事は 知ってる気がする。 403 00:33:24,301 --> 00:33:27,638 おかしいなあ。 お得意さんでもないのに➡ 404 00:33:27,638 --> 00:33:30,474 なぜだか 知ってる気がするなあ。 405 00:33:30,474 --> 00:33:34,245 こちらの おちかさんのおかげですよ。 406 00:33:34,245 --> 00:33:37,281 おちかさん? 407 00:33:37,281 --> 00:33:42,419 そうだ! 私らの話を 聞いて下さった方ですね。 408 00:33:42,419 --> 00:33:45,089 はい。 409 00:33:45,089 --> 00:33:47,789 あそこにいるのは…? 410 00:33:49,593 --> 00:33:53,464 (藤兵衛)錠前職人の 辰二郎さんのご一家でしょう。 411 00:33:53,464 --> 00:33:58,302 私 あの話も ここで知りました。 412 00:33:58,302 --> 00:34:02,306 ここは黒白の間と つながっているのでしょうか? 413 00:34:02,306 --> 00:34:06,610 私は ここにいて お嬢さんを感じていました。 414 00:34:06,610 --> 00:34:10,948 お嬢さんは 近づいたり離れたりしていて➡ 415 00:34:10,948 --> 00:34:16,120 おたかさんとも つながって ついに ここに来られたんです。 416 00:34:16,120 --> 00:34:19,023 おたかさんは今 子どもに戻っています。 417 00:34:19,023 --> 00:34:25,296 親方… ご迷惑をおかけ致しやした。 418 00:34:25,296 --> 00:34:30,801 (おさん)本当に この人が 親方の言う事を聞かないもので…。 419 00:34:30,801 --> 00:34:36,607 一本立ちさせる時に もうちょっと 言い含めてやりゃよかったな。 420 00:34:36,607 --> 00:34:40,607 (辰二郎)へえ。 相すみません。 421 00:34:48,219 --> 00:34:54,425 (藤兵衛)あの一家は 屋敷が見せる 夢のような幻の中に浸り込んで➡ 422 00:34:54,425 --> 00:34:58,295 一人ずつ消えていったのでは ないでしょうか。 423 00:34:58,295 --> 00:35:00,297 子どもの おたかさんは➡ 424 00:35:00,297 --> 00:35:04,997 一人で一家を守ろうと していたんですよ。 でも…。 425 00:35:07,938 --> 00:35:12,443 [ 回想 ] たか坊! お前 どうしたんだい➡ 426 00:35:12,443 --> 00:35:14,743 こんな所に一人で…。 427 00:35:18,315 --> 00:35:21,118 たか坊 おいで! 私は ここにいる! 428 00:35:21,118 --> 00:35:24,455 私は どこにも行かない! ここにいるんだ! 429 00:35:24,455 --> 00:35:27,791 (別人の声で) 次は この子の番なんだよ! 430 00:35:27,791 --> 00:35:32,630 なんて ひどい事を…。 ひどい事でございます。 431 00:35:32,630 --> 00:35:35,599 非道で ずるい事です! 432 00:35:35,599 --> 00:35:39,904 この屋敷の主は そういうものなのです。 433 00:35:39,904 --> 00:35:44,241 おたかちゃんは みんなに 別れも言えてないんです。 434 00:35:44,241 --> 00:35:48,078 それから… 松太郎さんを連れ出さなくちゃ。 435 00:35:48,078 --> 00:35:51,749 この屋敷を 打ち負かさなくちゃいけません。 436 00:35:51,749 --> 00:35:54,418 でも どうやって…。 437 00:35:54,418 --> 00:35:57,454 お嬢さんは もう ご存じのはずだ。 438 00:35:57,454 --> 00:36:02,593 私が知ってる? 何も難しい事はない。 439 00:36:02,593 --> 00:36:06,096 お嬢さんが 私どもにして下さった事を➡ 440 00:36:06,096 --> 00:36:09,796 今度は この屋敷の主に してやりなさい。 441 00:36:14,605 --> 00:36:16,540 (春吉)おたか姉ちゃん! 442 00:36:16,540 --> 00:36:19,740 姉ちゃんも こっちへおいでよ! 443 00:36:27,318 --> 00:36:33,891 松田屋さん 私 行ってきます! もう惑わされる事はありません。 444 00:36:33,891 --> 00:36:38,691 ならば私は ここで 皆と一緒に。 はい。 445 00:36:40,664 --> 00:37:13,630 ♬~ 446 00:37:13,630 --> 00:37:20,330 神田三島町 袋物屋 三島屋の ちかと申します。 447 00:37:23,941 --> 00:37:29,113 私は 叔父 三島屋 伊兵衛の 命を受けまして➡ 448 00:37:29,113 --> 00:37:34,084 変わり百物語の聞き役を 相務めおる者にございます。 449 00:37:34,084 --> 00:37:38,555 本日も その趣向にて この方様が ご秘蔵の➡ 450 00:37:38,555 --> 00:37:43,755 不可思議話を お聞かせ願いたく まかり越しましてございます。 451 00:37:45,429 --> 00:37:51,229 私に お話を お聞かせ下さるのは どなた様でございましょうか? 452 00:37:55,005 --> 00:37:57,741 (別人の声で) お嬢さんは よく ご存じでしょう。 453 00:37:57,741 --> 00:38:00,741 今更 言い並べなくても。 454 00:38:03,614 --> 00:38:06,450 あなたは 俺を恨んで 怒っているはずだ。 455 00:38:06,450 --> 00:38:09,753 私が知ってると思っている あなたのお話と➡ 456 00:38:09,753 --> 00:38:14,258 あなたの胸の奥にある お話とは きっと違うと思うのです。 457 00:38:14,258 --> 00:38:19,596 そうですかい。 あれは起こったんじゃない。 458 00:38:19,596 --> 00:38:26,937 俺が起こしたんだ。 …恨んでいるでしょう。 459 00:38:26,937 --> 00:38:33,544 聞いてるんですよ! お嬢さんは 俺を恨んで怒っているはずだ! 460 00:38:33,544 --> 00:38:37,714 あなたは どなたでございますか? 461 00:38:37,714 --> 00:38:40,551 何を茶化すような事を。 462 00:38:40,551 --> 00:38:46,056 重ねてお尋ね致します。 あなたは どなたです? 463 00:38:46,056 --> 00:38:50,561 松太郎さんの中に 隠れておられますね。 464 00:38:50,561 --> 00:38:54,361 怖くありませんよ。 大丈夫。 465 00:38:56,900 --> 00:38:59,937 どうぞ お答え下さいまし。 466 00:38:59,937 --> 00:39:04,637 そして どうぞ お出まし下さいまし。 467 00:39:09,079 --> 00:39:11,379 (元の声で)お嬢さん…。 468 00:39:16,820 --> 00:39:19,020 松太郎さん! 469 00:39:28,265 --> 00:39:33,036 お嬢さん すまねえ。 こんな所に呼ばれて。 470 00:39:33,036 --> 00:39:36,540 俺は どうして ここに…。 お嬢さんに何を…。 471 00:39:36,540 --> 00:39:39,042 あなたのせいじゃありません。 472 00:39:39,042 --> 00:39:43,547 ごめんなさい。 あなたが悪いんじゃない。 473 00:39:43,547 --> 00:39:45,582 ごめんなさい…。 474 00:39:45,582 --> 00:39:47,885 どんなに謝りたかったか。 475 00:39:47,885 --> 00:39:52,685 謝る? お嬢さんが俺に? どうして…! 476 00:39:55,058 --> 00:40:01,832 俺は良助さんに手をかけた。 お嬢さんの恋しい人をあやめた。 477 00:40:01,832 --> 00:40:04,401 なのに お嬢さんが謝るって…。 478 00:40:04,401 --> 00:40:07,304 あなたが あんなに 思い詰めてしまったのは➡ 479 00:40:07,304 --> 00:40:10,274 私のせいです。 480 00:40:10,274 --> 00:40:14,745 私のおごり あさましさ…。 481 00:40:14,745 --> 00:40:20,045 私だけじゃありません。 兄も あなたに謝りたいって。 482 00:40:21,618 --> 00:40:24,454 (涙声で)ああっ… お嬢さん。 483 00:40:24,454 --> 00:40:30,761 (すすり泣き) 484 00:40:30,761 --> 00:40:36,567 (櫃が揺れる音) 485 00:40:36,567 --> 00:40:40,767 (別人の声で)うまい事言うなあ! この尻軽女。 486 00:40:42,773 --> 00:40:44,708 あ~! (おたか)そんな事しちゃ駄目だ! 487 00:40:44,708 --> 00:40:50,514 そんなの もう嫌だ! やめて! やめて! やめてってば! 488 00:40:50,514 --> 00:40:52,514 ああっ。 489 00:41:04,161 --> 00:41:06,296 (元の声で)お嬢さん…。 490 00:41:06,296 --> 00:41:08,496 松太郎さん…。 491 00:41:14,037 --> 00:41:20,310 俺は… はぐれ者でした。 492 00:41:20,310 --> 00:41:23,110 生まれてこない方が よかったくらいだ。 493 00:41:28,819 --> 00:41:33,257 俺を崖から捨てたのは親父です。 494 00:41:33,257 --> 00:41:37,427 丸千の皆さんには どうしても言えなかった。 495 00:41:37,427 --> 00:41:42,933 (喜兵衛)まだ息してるぞ! 生きてるぞ! 急げ! 496 00:41:42,933 --> 00:41:47,804 言ったら また皆さんにも 見捨てられるような気がして…。 497 00:41:47,804 --> 00:41:54,444 親に捨てられるような子を 人様が 大事にしてくれるはずがない。 498 00:41:54,444 --> 00:41:57,144 だから言えなかった。 499 00:41:59,316 --> 00:42:02,319 それが俺のひがみになった。 500 00:42:02,319 --> 00:42:04,619 おびえになった。 501 00:42:08,625 --> 00:42:15,132 でも… 丸千の皆さんは➡ 502 00:42:15,132 --> 00:42:20,332 こんな はぐれ者に いつも優しくしてくれた。 503 00:42:22,005 --> 00:42:25,309 (お圭)あっ… お前さん。 504 00:42:25,309 --> 00:42:27,809 さあ こっち いらっしゃい。 505 00:42:33,583 --> 00:42:39,923 なのに… どうして あんな事を しでかしたのか。 506 00:42:39,923 --> 00:42:46,697 あの時… あの刹那…➡ 507 00:42:46,697 --> 00:42:48,632 俺は人でなしになってしまった。 508 00:42:48,632 --> 00:42:51,332 うわ~! (殴る音) 509 00:43:00,777 --> 00:43:06,077 松太郎さんは 私たちの家族でした。 510 00:43:08,652 --> 00:43:15,125 松太郎さんが丸千に来てくれて 私は本当にうれしかった。 511 00:43:15,125 --> 00:43:30,474 ♬~ 512 00:43:30,474 --> 00:43:32,474 お嬢さん…。 513 00:43:36,079 --> 00:43:39,750 (蔵が揺れる音) 514 00:43:39,750 --> 00:43:51,261 ♬~ 515 00:43:51,261 --> 00:43:54,931 (清六)おたか おたか こっちゃ来~い! 516 00:43:54,931 --> 00:43:56,931 清六じいちゃん! 517 00:43:58,602 --> 00:44:01,271 おっ母さん! 518 00:44:01,271 --> 00:44:03,771 おちかさんも急いで! 519 00:44:05,776 --> 00:44:07,776 私は…。 520 00:44:11,581 --> 00:44:15,781 おちかさん! (一同)うわ~! 521 00:44:17,954 --> 00:44:19,954 (一同)うおっ! 522 00:44:21,792 --> 00:44:25,792 お鎮まりなさい 私は逃げません! 523 00:44:27,464 --> 00:44:29,464 辰…。 524 00:44:40,043 --> 00:44:45,582 ようやく相対で お話を伺う事が できるようになりました。 525 00:44:45,582 --> 00:44:48,382 開けさせて頂きますよ! 526 00:45:00,931 --> 00:45:07,437 こんな… 空っぽのものが➡ 527 00:45:07,437 --> 00:45:11,942 あなたの 正体なのでございますか? 528 00:45:11,942 --> 00:45:15,142 これが あなたのお話ですか? 529 00:45:22,953 --> 00:45:26,289 私が ここに入れば…➡ 530 00:45:26,289 --> 00:45:29,626 あなたは満足なのね。 531 00:45:29,626 --> 00:45:36,126 そして 私も 苦しみから逃れられるのね。 532 00:45:45,108 --> 00:45:47,110 お嬢さん 駄目だ! 533 00:45:47,110 --> 00:45:49,610 入ったら もう出られない。 534 00:45:59,256 --> 00:46:01,758 ありがとう 松太郎さん。 535 00:46:01,758 --> 00:46:06,096 分かったわ。 もう大丈夫だから。 536 00:46:06,096 --> 00:46:11,096 ちょっと… 弱虫になってたの。 537 00:46:17,274 --> 00:46:21,778 忘れられる事が 悲しいのでしょう? 538 00:46:21,778 --> 00:46:27,951 忘れられていく事が 悔しいのですね。 539 00:46:27,951 --> 00:46:30,751 私たちは忘れません! 540 00:46:33,223 --> 00:46:36,126 お嬢さん…。 541 00:46:36,126 --> 00:46:39,729 全ては 遠い昔の事。 542 00:46:39,729 --> 00:46:46,603 悲しみ 苦しみ 恨みと怒り。 543 00:46:46,603 --> 00:46:52,309 それは全て 時を超えて残ります。 544 00:46:52,309 --> 00:46:56,580 あなたも ここから出たいのですよね? 545 00:46:56,580 --> 00:47:02,252 私と一緒に… 外へ出ましょう! 546 00:47:02,252 --> 00:47:04,252 (鍵が外れる音) 547 00:47:09,593 --> 00:47:11,593 おっ! 548 00:47:14,431 --> 00:47:20,770 お嬢さん そのまま振り返らずに おいでなさい。 549 00:47:20,770 --> 00:47:22,706 はい。 550 00:47:22,706 --> 00:47:29,446 さあ あなたも参りましょう。 私らと一緒に。 551 00:47:29,446 --> 00:47:56,072 ♬~ 552 00:47:56,072 --> 00:47:59,909 お嬢さん あなたは ここまでだ。 553 00:47:59,909 --> 00:48:02,709 おたかちゃんを連れて 帰って下さい。 554 00:48:05,248 --> 00:48:07,917 おたかを頼みます。 555 00:48:07,917 --> 00:48:09,853 さあ…。 556 00:48:09,853 --> 00:48:25,935 ♬~ 557 00:48:25,935 --> 00:48:29,435 お父っつぁん! おっ母さん! 558 00:48:36,579 --> 00:48:42,719 姉ちゃん! 兄ちゃん! 春吉! 559 00:48:42,719 --> 00:48:56,733 (おたかの泣き声) 560 00:48:56,733 --> 00:49:50,920 ♬~ 561 00:49:50,920 --> 00:49:53,389 松太郎さん…。 562 00:49:53,389 --> 00:50:13,689 ♬~ 563 00:50:20,250 --> 00:50:23,586 いよいよ ここも空になりますか。 564 00:50:23,586 --> 00:50:29,459 それとも… あなた様がお残りになるか。 565 00:50:29,459 --> 00:50:32,095 あなたは何者です? 566 00:50:32,095 --> 00:50:37,267 私は商人。 あなたの叔父さんと同じです。 567 00:50:37,267 --> 00:50:42,105 私が仕入れて売るものを 欲しがる人たちに与える。 568 00:50:42,105 --> 00:50:48,778 2つの場所をつなぐ道筋で お客様を相手にしている。 569 00:50:48,778 --> 00:50:52,949 三島屋さんと同じです。 570 00:50:52,949 --> 00:50:55,449 2つの場所? 571 00:50:58,755 --> 00:51:01,755 あの世と この世の。 572 00:51:06,462 --> 00:51:12,268 あんたのような人がいるおかげで 私の商いも成り立つんです。 573 00:51:12,268 --> 00:51:15,972 けどね… おちかさん。 574 00:51:15,972 --> 00:51:18,641 良助さんの事は どうでもいいんですか? 575 00:51:18,641 --> 00:51:24,314 あの人は まるっきりの殺され損だ。 576 00:51:24,314 --> 00:51:28,985 あんたが松太郎を許したいと ばっかり思うもんだから➡ 577 00:51:28,985 --> 00:51:34,485 良助さんの恨みと悲しみは 棚上げだ。 578 00:51:37,427 --> 00:51:39,427 おちか…。 579 00:51:41,264 --> 00:51:46,603 お前は松太郎を許す事で 自分を許そうとしている。 580 00:51:46,603 --> 00:51:49,505 全部 お前の都合じゃないか。 581 00:51:49,505 --> 00:51:54,477 俺は どうなるんだ? おちか…。 582 00:51:54,477 --> 00:51:57,113 あなたは良助さんではありません。 583 00:51:57,113 --> 00:51:59,048 俺を忘れたのか!? 584 00:51:59,048 --> 00:52:02,452 良助さんを忘れる事は 決してありません! 585 00:52:02,452 --> 00:52:07,452 おちか… 俺は…。 586 00:52:11,461 --> 00:52:14,130 あっという間に 殺されちまったから➡ 587 00:52:14,130 --> 00:52:18,968 迷う暇もなかったって事か。 588 00:52:18,968 --> 00:52:25,742 しかたない。 これで いよいよ しまいですな。 589 00:52:25,742 --> 00:52:29,145 まあ いいや。 590 00:52:29,145 --> 00:52:31,915 あんたは これからも生きていく。 591 00:52:31,915 --> 00:52:34,951 また会う機会がありそうだ。➡ 592 00:52:34,951 --> 00:52:38,421 あんたの話は終わっちゃいない。➡ 593 00:52:38,421 --> 00:52:43,593 私と あんたの商いは この先 まだまだ続くでしょう。 594 00:52:43,593 --> 00:52:46,262 これからが楽しみだ。 595 00:52:46,262 --> 00:52:51,062 腹の底から楽しみですよ。 596 00:52:55,438 --> 00:53:01,110 それには ここから 帰ってもらわんとなりませんが➡ 597 00:53:01,110 --> 00:53:03,780 道案内は要りませんか? 598 00:53:03,780 --> 00:53:08,451 あなたの案内など… 要りません。 599 00:53:08,451 --> 00:53:26,636 ♬~ 600 00:53:26,636 --> 00:53:29,836 おちか! おちかさん! 601 00:53:31,474 --> 00:53:36,774 兄さん…。 その子は… おたか姉さん? 602 00:53:38,915 --> 00:53:41,250 おねえちゃん? 603 00:53:41,250 --> 00:53:44,754 おたかちゃん… もう大丈夫。 604 00:53:44,754 --> 00:53:47,454 怖くなんかないから。 605 00:53:54,464 --> 00:54:01,964 ありがとう おちかさん。 …もう怖くないわ 大丈夫。 606 00:54:06,609 --> 00:54:12,415 おちかさんに助けてもらった。 姉さん… 分かるんだね? 607 00:54:12,415 --> 00:54:16,715 うん。 迷惑かけて ごめんなさい。 608 00:54:19,622 --> 00:54:23,793 おちか… お前 今 消えてたんだよ。 609 00:54:23,793 --> 00:54:29,966 ほんのちょっとの間だけど。 俺 どうしようかと思って…。 610 00:54:29,966 --> 00:54:38,766 兄さん… 松太郎さんは 帰っていきました。 611 00:54:40,410 --> 00:54:45,710 松太郎が… そうか。 612 00:54:47,917 --> 00:54:49,952 おちか…。 613 00:54:49,952 --> 00:55:32,228 ♬~ 614 00:55:32,228 --> 00:55:36,899 (灯庵)<三島屋では 昨今 草履問屋 越後屋と組んで➡ 615 00:55:36,899 --> 00:55:40,570 履物の鼻緒を商っている。➡ 616 00:55:40,570 --> 00:55:44,740 目新しい意匠の鼻緒は すぐ評判になり➡ 617 00:55:44,740 --> 00:55:49,612 はやりもの 珍しいものに 目のない 江戸っ子たちが➡ 618 00:55:49,612 --> 00:55:52,915 手に取っては買っていく。➡ 619 00:55:52,915 --> 00:55:55,418 その越後屋の跡取りに➡ 620 00:55:55,418 --> 00:56:02,758 三島屋の姪が望まれているという うわさもあるが 定かではない。➡ 621 00:56:02,758 --> 00:56:08,264 ただ 越後屋で 永く奇妙な病に伏していた娘が➡ 622 00:56:08,264 --> 00:56:12,935 近頃 きれいに本復し 三島屋の姪と➡ 623 00:56:12,935 --> 00:56:19,809 姉妹のように仲むつまじく している事は確かでござる。➡ 624 00:56:19,809 --> 00:56:25,948 そこには 三島屋の百物語が 絡んでいるらしいが➡ 625 00:56:25,948 --> 00:56:31,754 さて どんな物語か それを知る事ができるのは➡ 626 00:56:31,754 --> 00:56:39,395 語るべき不思議な話を胸に 三島屋を訪れる客ばかり。➡ 627 00:56:39,395 --> 00:56:49,395 この変調百物語の聞き手は 三島屋主人の美しい姪でござる> 628 00:56:56,746 --> 00:58:28,746 ♬~