1 00:00:05,995 --> 00:00:10,400 (砲声) 2 00:00:10,400 --> 00:00:12,735 <江戸時代末期の文久年間➡ 3 00:00:12,735 --> 00:00:17,073 幕府の権威は 根底から揺らぎ始めていた。➡ 4 00:00:17,073 --> 00:00:20,944 当時 四国 徳島藩に属していた淡路島でも➡ 5 00:00:20,944 --> 00:00:25,244 勤皇派 佐幕派が 対立を深めつつあった> 6 00:00:27,083 --> 00:00:31,754 <これは 幕末維新の激動の渦に 巻き込まれながらも➡ 7 00:00:31,754 --> 00:00:37,454 愛一筋に たくましく生き抜いた 一人の女の物語である> 8 00:00:41,764 --> 00:01:09,464 ♬~(歌声) 9 00:01:20,403 --> 00:01:25,742 (玉太郎) 何 わしか? わしの名は 玉太郎。 10 00:01:25,742 --> 00:01:31,614 生まれは 淡路島の三原郡三条村や。 11 00:01:31,614 --> 00:01:36,753 知っとるじゃろうが 三条村は 淡路木偶発祥の地で➡ 12 00:01:36,753 --> 00:01:41,090 百姓の多くは 人形遣いを兼ねとった。 13 00:01:41,090 --> 00:01:45,962 わしは その中でも 気楽な箱廻しじゃった。 14 00:01:45,962 --> 00:01:51,100 ほんなけんど 事情があって➡ 15 00:01:51,100 --> 00:01:57,440 わしは ふるさとの淡路に 当分 足を向けられんのや。 16 00:01:57,440 --> 00:02:01,310 今頃 お登勢は どないしてるやろか…。 17 00:02:01,310 --> 00:02:05,715 え? お登勢は 今年16。 18 00:02:05,715 --> 00:02:10,053 わしの たった一人の娘や。 19 00:02:10,053 --> 00:02:13,053 のう お登勢。 20 00:02:16,926 --> 00:02:25,068 ♬~ (テーマ音楽) 21 00:02:25,068 --> 00:02:30,940 (お登勢)愛は 何で こんなに悲しい顔しているんやろ…。 22 00:02:30,940 --> 00:03:53,940 ♬~ 23 00:04:00,963 --> 00:04:08,371 「ととさんや かかさんと 一緒にいたりゃ➡ 24 00:04:08,371 --> 00:04:12,241 こんな目には遭うまいものを。➡ 25 00:04:12,241 --> 00:04:18,714 どこに どうしていやしゃんすぞ。➡ 26 00:04:18,714 --> 00:04:23,052 会いたいこっちゃ 会いたいこっちゃ➡ 27 00:04:23,052 --> 00:04:27,723 会いたい」と➡ 28 00:04:27,723 --> 00:04:35,398 わっと泣きだす娘より 見る母親はたまりかね…。 29 00:04:35,398 --> 00:04:44,407 「オオ 道理じゃ かわいや いじらしやと」➡ 30 00:04:44,407 --> 00:04:56,018 我を忘れて 抱きつき➡ 31 00:04:56,018 --> 00:05:13,318 前後正体嘆きしが…。 32 00:05:16,339 --> 00:05:25,381 (泣き声) 33 00:05:25,381 --> 00:05:30,720 (はなをかむ音) 34 00:05:30,720 --> 00:05:41,720 「ヤ 必ず必ず煩うてばしたもんな」と…。 35 00:05:43,299 --> 00:05:46,269 いや~ 降ってきよった! えらいこっちゃがな。 36 00:05:46,269 --> 00:05:49,969 ああ そやそや。 人形な ぬらさんように頼むで。 37 00:05:51,741 --> 00:05:56,078 (伊三治)ご迷惑とは存じますが なんとか お願いできませんやろか。➡ 38 00:05:56,078 --> 00:06:03,419 実は これの奉公先が決まりまして 洲本へ お目見えに参じますのやが➡ 39 00:06:03,419 --> 00:06:07,023 おなごの足では 山越えは難儀でございまする。 40 00:06:07,023 --> 00:06:09,692 (しゃっくり) どないぞして 明日➡ 41 00:06:09,692 --> 00:06:14,363 皆様の船の舳先の隅っこ なんとか わしと2人➡ 42 00:06:14,363 --> 00:06:16,699 乗せてもらうわけには まいりませんやろか。 (しゃっくり) 43 00:06:16,699 --> 00:06:19,035 (稔麿)あんた 誰な? 44 00:06:19,035 --> 00:06:23,372 こりゃどうも。 同じ黒岩村から 洲本へ奉公に出ております➡ 45 00:06:23,372 --> 00:06:26,275 伊三治と申す者で。 へえ。 46 00:06:26,275 --> 00:06:28,711 どないしたもんかいの? 47 00:06:28,711 --> 00:06:31,380 (貢)かまんでしょう。 48 00:06:31,380 --> 00:06:42,992 ♬~ 49 00:06:42,992 --> 00:06:45,728 私が座元に掛け合うたるわ。 50 00:06:45,728 --> 00:06:50,566 そうですか! そら助かります。 ほら お前も お礼を言わんかい。 51 00:06:50,566 --> 00:06:53,402 へえ…。 (しゃっくり) 52 00:06:53,402 --> 00:06:56,072 かわいそうに 涙ぐんどるぞ。 いやいや…。 53 00:06:56,072 --> 00:06:58,407 生まれ故郷を離れるのは つらいと見ゆるのう。 54 00:06:58,407 --> 00:07:01,310 これは 「巡礼お鶴」に 泣かされましたんでのう…。➡ 55 00:07:01,310 --> 00:07:04,013 はっはっはっは。 (稔麿)そうか なるほど…。 56 00:07:04,013 --> 00:07:29,038 ♬~ 57 00:07:29,038 --> 00:07:33,909 ええか お前も 木偶は もう 見納めやと思わなならんぞ。 58 00:07:33,909 --> 00:07:38,047 え? 洲本にかて 木偶芝居はあるじゃろ。 59 00:07:38,047 --> 00:07:42,385 そりゃそうじゃ しょっちゅうな。 何で見られんのじゃ? 60 00:07:42,385 --> 00:07:46,585 木偶は もともと 百姓の楽しみじゃからのう。 61 00:07:49,058 --> 00:07:51,727 (伊三治)武家奉公とは そういうもんじゃ。 62 00:07:51,727 --> 00:07:54,063 ふ~ん。 63 00:07:54,063 --> 00:07:57,933 (伊三治)木偶芝居のことなど 口にも出してはならんぞ。 64 00:07:57,933 --> 00:08:02,405 伊三治さんも 村におった頃は 浄瑠璃好きじゃったんじゃろ? 65 00:08:02,405 --> 00:08:06,375 今でも好きじゃ。 我慢しとるん? 66 00:08:06,375 --> 00:08:08,375 まあな…。 67 00:08:23,025 --> 00:08:26,529 (庄之助)木偶が好きらしいな。 へい。 68 00:08:26,529 --> 00:08:30,032 あんたも木偶に似とる。 へ? 69 00:08:30,032 --> 00:08:33,903 ちょっと色は黒いけんど…。 ふふっ…。 70 00:08:33,903 --> 00:08:37,706 人形遣うのんて 難しいじゃろうな。 71 00:08:37,706 --> 00:08:42,006 荒事3年 足遣い10年。 72 00:08:43,579 --> 00:08:45,879 はっはっはっは。 73 00:08:52,054 --> 00:08:56,725 外は寒いですよ。 中で… ウエッよりは ましじゃろ。 74 00:08:56,725 --> 00:08:58,661 (笑い声) 75 00:08:58,661 --> 00:09:00,961 ちょっと 風に当たってきます。 76 00:09:09,004 --> 00:09:14,677 (稔麿)貢。 はあ。 あれは 何じゃろう? 77 00:09:14,677 --> 00:09:16,977 さあ…。 78 00:09:19,348 --> 00:09:22,348 水仙です。 79 00:09:27,223 --> 00:09:31,927 水仙か…。 (稔麿)見事じゃのう。 80 00:09:31,927 --> 00:09:36,899 まるで 花の壁ですな。 (稔麿)全くじゃ。 81 00:09:36,899 --> 00:09:41,370 花の壁じゃ! はっはっはっは。 82 00:09:41,370 --> 00:09:45,040 あの水仙の山の陰が 黒岩やがな。 83 00:09:45,040 --> 00:09:48,711 黒岩? うっちゃが育った在所で…。 84 00:09:48,711 --> 00:09:50,646 ああ。 85 00:09:50,646 --> 00:09:54,383 娘 奉公に出してしもたから 親御は 寂しい思いをしちょるじゃろ。 86 00:09:54,383 --> 00:09:57,286 うっちゃあ 親は おらんのじゃ。 87 00:09:57,286 --> 00:10:00,723 <親は おらんのじゃと?➡ 88 00:10:00,723 --> 00:10:04,393 なんと 薄情な物言いじゃ。➡ 89 00:10:04,393 --> 00:10:12,268 お登勢よ お前の父親は ちゃんと生きておるぞよ> 90 00:10:12,268 --> 00:10:15,738 にいさん方は 三原の人と違うんかいの? 91 00:10:15,738 --> 00:10:17,673 うん? 92 00:10:17,673 --> 00:10:23,078 (伊三治)菊太夫一座の人じゃったら この辺は 年中巡業しとるけんど…。 93 00:10:23,078 --> 00:10:27,416 新参者やからね。 洲本のほかは あまり知らんのです。 94 00:10:27,416 --> 00:10:29,351 洲本…。 95 00:10:29,351 --> 00:10:33,289 洲本の「廻り弁天」て ほんま にぎやかじゃろうな。 96 00:10:33,289 --> 00:10:37,426 まあな…。 沼島の祭りの何層倍もの人が出て➡ 97 00:10:37,426 --> 00:10:42,298 朝まで 歌たり踊ったりするそうな。 話だけは聞いとります。 98 00:10:42,298 --> 00:10:45,768 祭りが好きらしいな? へえ 大好きじゃ。 99 00:10:45,768 --> 00:10:51,106 だんじりのお囃子を聞くと 何や知らん 体がふわふわになってしもうて…。 100 00:10:51,106 --> 00:10:56,779 木偶芝居の人形みたいに…。 はっはっはっは。 101 00:10:56,779 --> 00:11:00,649 すんまへん。 何で うっちゃあ べらべら しゃべるんじゃろ。 102 00:11:00,649 --> 00:11:05,949 初めての旅の時は 誰でも 心が浮きたつもんじゃ。 ほんまじゃ。 103 00:11:09,358 --> 00:11:15,264 今年は はやばやと 徳島の御城下で 興行なされたそうですな。 104 00:11:15,264 --> 00:11:19,401 うん。 その前は どちらで? 105 00:11:19,401 --> 00:11:23,272 土佐やったかな。 その前は? 106 00:11:23,272 --> 00:11:25,272 貢…。 107 00:11:29,078 --> 00:11:31,013 どうもおかしい。 108 00:11:31,013 --> 00:11:34,750 ほんまや。 うち どないかしとるんじゃわ。 109 00:11:34,750 --> 00:11:39,088 いや あの2人のこっちゃ。 ただ者やないで…。 110 00:11:39,088 --> 00:11:41,991 えっ? 111 00:11:41,991 --> 00:11:46,762 いっこも働かんし 年嵩の方は 長州訛りじゃ。 112 00:11:46,762 --> 00:11:49,431 長州訛り…? 113 00:11:49,431 --> 00:11:53,769 (伊三治)あの2人は 道具方やない。 侍じゃ。 114 00:11:53,769 --> 00:11:55,704 まさか…! 115 00:11:55,704 --> 00:12:00,109 (伊三治)わしの目は 節穴やないで。 あれは 勤皇侍じゃ。 116 00:12:00,109 --> 00:12:03,012 「きんのうざむらい」て 何? 117 00:12:03,012 --> 00:12:06,915 まあ 一口に言うたらな 尊皇攘夷いうて➡ 118 00:12:06,915 --> 00:12:11,387 つまり 将軍様の世の中を ひっくり返そうと企てる連中じゃ。 119 00:12:11,387 --> 00:12:14,289 世の中を ひっくり返す? うん。➡ 120 00:12:14,289 --> 00:12:17,059 その本家本元が 長州でな。 121 00:12:17,059 --> 00:12:20,929 その勤皇侍が 何でまた 洲本へ? 122 00:12:20,929 --> 00:12:26,735 そら分からん。 多分 稲田屋敷に用事があるんじゃろう。➡ 123 00:12:26,735 --> 00:12:30,072 このごろ 御家来衆が 勤皇づいとるからの。 124 00:12:30,072 --> 00:12:32,741 何や さっぱり分からん。 125 00:12:32,741 --> 00:12:38,080 まあ 分からんでもええわ。 それから 言うとくけんど➡ 126 00:12:38,080 --> 00:12:41,417 知らん人には めったなことで 話しかけるんやないぞ。 127 00:12:41,417 --> 00:12:47,089 町へ出たら 油断も隙もならん。 物の言いよう一つで➡ 128 00:12:47,089 --> 00:12:50,426 首が飛ぶんじゃ。 え~…! 129 00:12:50,426 --> 00:12:55,097 いつまでも 九つや十の はなたれのつもりでおったらあかん。 130 00:12:55,097 --> 00:13:01,437 ええか 洲本の加納家は 80石取りの お武家様じゃ。 131 00:13:01,437 --> 00:13:07,437 行儀作法も厳しいんで ちっとは 娘らしゅうならないかんで。 132 00:13:09,044 --> 00:13:14,717 <土生から洲本までは 船で 半日もかかりゃせん。➡ 133 00:13:14,717 --> 00:13:18,587 淡路木偶の船は 港が近うなると➡ 134 00:13:18,587 --> 00:13:21,590 旗や幟を吹き流して➡ 135 00:13:21,590 --> 00:13:26,729 囃子太鼓で にぎにぎしく乗り込むんや> 136 00:13:26,729 --> 00:13:40,075 ♬~(囃子太鼓) 137 00:13:40,075 --> 00:13:42,010 達者でな…。 138 00:13:42,010 --> 00:14:18,310 ♬~ 139 00:14:20,048 --> 00:14:26,388 <お登勢の奉公先は 加納市左衛門様のお屋敷じゃそうな。➡ 140 00:14:26,388 --> 00:14:32,060 ほう 御門筋通りを下って 左へ曲がったの。➡ 141 00:14:32,060 --> 00:14:34,963 ここは 細工町じゃ> 142 00:14:34,963 --> 00:14:38,963 (伊三治)これ 早う 来んかい。 へえ。 143 00:15:00,756 --> 00:15:06,028 ああ やれやれ やっと着いた。 お登勢。 これが お屋敷じゃ。 144 00:15:06,028 --> 00:15:09,528 しっかり 挨拶するんやで。 へえ。 145 00:15:21,043 --> 00:15:25,914 あれが 旦那様? (伊三治)違う違う。 あれは 浅葱足袋。 146 00:15:25,914 --> 00:15:28,214 浅葱足袋? 147 00:15:31,386 --> 00:15:35,724 ええか。 おんなじ お武家はんでも 藩士は 白足袋➡ 148 00:15:35,724 --> 00:15:40,062 又家来は 浅葱色の足袋や。 よう 覚えとき…。 149 00:15:40,062 --> 00:15:43,362 返事は? へえ。 150 00:15:52,407 --> 00:15:56,078 ≪(伊三治)これは奥方様。 151 00:15:56,078 --> 00:15:59,414 ただいま 洲本へ 立ち戻りましてございます。 152 00:15:59,414 --> 00:16:04,253 あっ これが 先日お話し申し上げた 登勢でして…。 153 00:16:04,253 --> 00:16:06,953 こら お辞儀をせんかい! 154 00:16:08,690 --> 00:16:11,990 (はま)裏へ お回りなさい。 (伊三治)へえっ。 155 00:16:14,563 --> 00:16:21,703 あのお方が 奥方様じゃ。 この お屋敷で 一番うるさい。 156 00:16:21,703 --> 00:16:23,703 行くぞ。 157 00:16:27,042 --> 00:16:29,945 ≪♬~(琴) 158 00:16:29,945 --> 00:16:33,916 ああ。 あれは お嬢様が 弾いておんなさるんじゃ。 159 00:16:33,916 --> 00:16:35,916 ふ~ん…。 160 00:16:38,053 --> 00:16:42,391 今年で 17におなりじゃ。 お前とは 1つ違いかの。 161 00:16:42,391 --> 00:16:45,294 それは それは 美しいお嬢様じゃ。 162 00:16:45,294 --> 00:16:47,262 お嬢様 お一人? 163 00:16:47,262 --> 00:16:50,265 いや その上に 御嫡男が おいでじゃが➡ 164 00:16:50,265 --> 00:16:54,403 今のところは 本藩詰めで 徳島に おんなさる。 165 00:16:54,403 --> 00:17:05,703 ≪♬~(琴) 166 00:17:13,689 --> 00:17:19,689 遅いなあ。 忘れとるんじゃろか? 167 00:17:21,363 --> 00:17:23,363 (障子が開く音) 168 00:17:27,235 --> 00:17:31,039 おお 伊三治さん ご苦労やな。 169 00:17:31,039 --> 00:17:32,975 (伊三治)何や 儀平はんか。 170 00:17:32,975 --> 00:17:38,714 あのな 奥は ちょっと取り込み中や。 もちっと お待ちなされ。 171 00:17:38,714 --> 00:17:42,384 あっ 儀平はん これが 頼まれた娘じゃ。 おっ! 172 00:17:42,384 --> 00:17:46,254 いや~ なかなか 丈夫そうな子やないか。 173 00:17:46,254 --> 00:17:49,057 よろしゅうお頼み申します。 174 00:17:49,057 --> 00:17:52,394 ほほ… これで わしも助かるわ。 175 00:17:52,394 --> 00:17:58,066 お登勢。 儀平はんはな このお屋敷に 20年も御奉公していなさるんじゃ。 176 00:17:58,066 --> 00:18:00,402 あははははは…。 177 00:18:00,402 --> 00:18:06,208 ところで… 奥方様は 御機嫌斜めじゃな。 178 00:18:06,208 --> 00:18:11,680 それが… 今さっき とんだ客があってのう。 179 00:18:11,680 --> 00:18:14,583 御門先で お見かけしたが どなた様じゃ? 180 00:18:14,583 --> 00:18:19,021 (儀平)うん。 津田頼母様いうての➡ 181 00:18:19,021 --> 00:18:22,691 お嬢様に 御縁談を持ち込まれたのよ。 182 00:18:22,691 --> 00:18:27,029 へえ~! お嬢様に? で 相手は誰じゃ? 183 00:18:27,029 --> 00:18:32,367 それが 伜殿の嫁にと 親父様が乗り込んできたのよ。 184 00:18:32,367 --> 00:18:35,270 浅葱足袋がか? そうよ! 185 00:18:35,270 --> 00:18:38,707 断っても 断っても なかなか いなんので➡ 186 00:18:38,707 --> 00:18:42,377 旦那様も閉口しておられたわ。 そりゃ そうじゃ。➡ 187 00:18:42,377 --> 00:18:46,048 目の中に入れても痛うない お嬢様を 何がつらあて 浅葱者なんぞに…。 188 00:18:46,048 --> 00:18:47,983 ≪(はま)儀平! (儀平)へえ! 189 00:18:47,983 --> 00:18:51,283 ≪(はま)通しなされ。 へえ! ほな…。 190 00:18:53,722 --> 00:18:57,722 あんたは まだええ。 上がって 待っとれや。 191 00:19:16,344 --> 00:19:19,014 せんだっても 申し上げましたが➡ 192 00:19:19,014 --> 00:19:23,685 何せ 手前同様 草深い田舎の百姓の子ですよって➡ 193 00:19:23,685 --> 00:19:28,023 作法の儀は 厳しゅう躾けていただきとう存じます。 194 00:19:28,023 --> 00:19:31,893 16か…。 まだ 子供じゃの。 195 00:19:31,893 --> 00:19:36,698 まっ 志津の ええ話し相手にはなるじゃろう。 196 00:19:36,698 --> 00:19:39,367 (はま)何を おっしゃいます。 197 00:19:39,367 --> 00:19:43,238 武家の娘が 下女と言葉を交わすなど もってのほか。 198 00:19:43,238 --> 00:19:45,707 それは 分かってはおるが…。 199 00:19:45,707 --> 00:19:49,377 人には 生まれついての身分というものが ございますのや。 200 00:19:49,377 --> 00:19:52,280 そう 目くじらを立てるな。 201 00:19:52,280 --> 00:19:55,717 (はま)あんたさんが けじめを おつけになりはらへんから➡ 202 00:19:55,717 --> 00:19:58,620 人に つけ込まれるんや。 つけ込まれる? 203 00:19:58,620 --> 00:20:02,390 津田頼母様ですよ。 また蒸し返すのか…。 204 00:20:02,390 --> 00:20:08,263 よろしいか? 浅葱者に縁談を持ち込まれるなんぞ➡ 205 00:20:08,263 --> 00:20:12,400 武門の名折れや。 御先祖様に申し訳が立ちません! 206 00:20:12,400 --> 00:20:15,737 そう 大仰に申すな。 207 00:20:15,737 --> 00:20:20,408 津田も 伜かわいさのあまり つい 勘違いしたんじゃ。 208 00:20:20,408 --> 00:20:26,281 いいえ。 加納家は80石 津田家は120石。 209 00:20:26,281 --> 00:20:30,085 禄高に不足はあるまいと 見くびっておいでなんじゃ。➡ 210 00:20:30,085 --> 00:20:35,957 ええ年をして 浅葱者の分際をわきまえんとは…! 211 00:20:35,957 --> 00:20:40,428 そのうち 謝ってくるわいな。 212 00:20:40,428 --> 00:20:46,101 妙な噂でも立てられたら この加納家に 傷が付きます!➡ 213 00:20:46,101 --> 00:20:49,004 睦太郎の出世にも 差し支えますがな! 214 00:20:49,004 --> 00:20:50,972 分かった 分かった。 215 00:20:50,972 --> 00:20:56,611 (はま)こうなったからには 一日も早う 由緒正しい藩士の御子息と➡ 216 00:20:56,611 --> 00:21:01,116 縁組みをさせんと いかんのや。 217 00:21:01,116 --> 00:21:04,386 それとこれとは 別もんや。 218 00:21:04,386 --> 00:21:09,257 いいえ。 落ちぶれた加納家を 再興するには➡ 219 00:21:09,257 --> 00:21:14,396 志津の輿入れ先こそ 肝心。 220 00:21:14,396 --> 00:21:18,266 急いては 事を仕損じる。 221 00:21:18,266 --> 00:21:22,270 悪い虫がついたら どうします! 222 00:21:22,270 --> 00:21:26,007 自分の娘を 信用でけんのか? 223 00:21:26,007 --> 00:21:31,947 誰に似たやら 志津は どことのう派手好みで➡ 224 00:21:31,947 --> 00:21:36,651 加納家の娘らしゅう ございませんからなあ。 225 00:21:36,651 --> 00:21:40,622 ちょっと待て。 さっきから聞いておると まるで わしが➡ 226 00:21:40,622 --> 00:21:43,758 加納家を落ちぶれさせたとでも 言いたげじゃが。 227 00:21:43,758 --> 00:21:47,429 家名を上げたとは 申せませんわな…。 228 00:21:47,429 --> 00:21:51,766 聞き捨てならん! わしは 好んで ここへ養子に来たわけではないぞ。 229 00:21:51,766 --> 00:21:55,103 私も頼んだわけではございません。 230 00:21:55,103 --> 00:21:58,440 (市左衛門)いや しかし そら あの 亡くなった親御様が…。 231 00:21:58,440 --> 00:22:00,740 (はま)私は頼んではおりません! 232 00:22:40,048 --> 00:22:42,048 ≪(物音) 233 00:22:43,952 --> 00:22:47,422 (鳴き声) 234 00:22:47,422 --> 00:22:51,760 (市左衛門)確かに そうじゃな。 へえ。 235 00:22:51,760 --> 00:22:55,630 長州訛りといい 不敵な面構えといい…➡ 236 00:22:55,630 --> 00:22:58,099 勤皇方のお武家に 間違いございまへん。 237 00:22:58,099 --> 00:23:03,905 相川菊太夫の一座なら 稲田様の向屋敷に入ったはずじゃ。 238 00:23:03,905 --> 00:23:06,541 まあ 御城代様の…。 239 00:23:06,541 --> 00:23:11,046 うむ。 菊太夫は 御城代様のお気に入りでな。 240 00:23:11,046 --> 00:23:16,718 興行の前に 家臣一同で 木偶芝居を見物することになっておる。 241 00:23:16,718 --> 00:23:21,589 すると 曲者どもも…? まあまあ そう うろたえるな。 242 00:23:21,589 --> 00:23:25,060 大きな声では言えんがな➡ 243 00:23:25,060 --> 00:23:30,932 家臣の中にも 勤皇派は増えつつある。 244 00:23:30,932 --> 00:23:35,070 嘆かわしい御時世じゃ。 さよで さよで。 245 00:23:35,070 --> 00:23:37,005 ≪(物音と掛け声) 246 00:23:37,005 --> 00:23:38,940 どないしたんや? 何事じゃ! 247 00:23:38,940 --> 00:23:40,942 ≪(物音と掛け声) 248 00:23:40,942 --> 00:23:44,412 どないしたんや!? たあ~っ! 249 00:23:44,412 --> 00:23:47,082 (悲鳴) 250 00:23:47,082 --> 00:23:51,753 (はま)ねずみ ねずみ…。 あ~ 怖い。 251 00:23:51,753 --> 00:23:53,688 うわ~っ! 252 00:23:53,688 --> 00:23:56,424 はっはっはっは。 253 00:23:56,424 --> 00:23:59,761 初陣の功じゃな。 はっはっはっは。➡ 254 00:23:59,761 --> 00:24:05,367 来た早々 ねずみを捕まえるとは まあ大したもんじゃ。 255 00:24:05,367 --> 00:24:08,036 それにしても 手づかみで…。 256 00:24:08,036 --> 00:24:13,908 お前は 何か? 武芸のたしなみでもあるんか? 257 00:24:13,908 --> 00:24:19,047 いえ。 ねずみは畑を荒らしますんで ちょいちょい 鍬で…。 258 00:24:19,047 --> 00:24:21,950 おお 気色の悪い! そう言うな。 259 00:24:21,950 --> 00:24:25,720 儀平よりは よっぽど 役に立ちそうじゃ。 のう? 260 00:24:25,720 --> 00:24:27,655 さあ それは どうですやろ。 261 00:24:27,655 --> 00:24:32,594 まあ… 猫の代わりぐらいには なるじゃろうが。 262 00:24:32,594 --> 00:24:37,065 (はま)お前のことは 行儀見習いとして預かりましょう。➡ 263 00:24:37,065 --> 00:24:41,403 ただし 不都合があったら 直ちに引き取ってもらいますから➡ 264 00:24:41,403 --> 00:24:45,273 そのつもりでおりなされ。 聞こえてるのかえ? 265 00:24:45,273 --> 00:24:47,742 へ… へえ! 266 00:24:47,742 --> 00:24:54,416 加納家は 微禄ながら 先祖代々 蜂須賀家に仕えた 藩士の家柄じゃ。 267 00:24:54,416 --> 00:24:58,586 当家の奉公人として 恥ずかしゅうないよう➡ 268 00:24:58,586 --> 00:25:00,522 日々の行いを正すこと。 269 00:25:00,522 --> 00:25:02,457 へえ。 270 00:25:02,457 --> 00:25:06,327 下女部屋に お仕着せが出してあります。 洗いざらしじゃが➡ 271 00:25:06,327 --> 00:25:09,697 その寸足らずよりは よっぽどましじゃ。 へえ。 272 00:25:09,697 --> 00:25:13,697 (はま)すぐ 着替えておいで。 へえ! 273 00:25:18,706 --> 00:25:22,377 では これで 手前は退散いたしますでございます。 274 00:25:22,377 --> 00:25:24,377 お待ち…。 275 00:25:29,050 --> 00:25:31,953 手間賃じゃ。 取っておけ。 276 00:25:31,953 --> 00:25:35,723 めっそうもない。 こんなつもりは 毛頭ございませんので…。 277 00:25:35,723 --> 00:25:40,562 かまん。 道中の路銀も 多少なりとも使うたじゃろう。 278 00:25:40,562 --> 00:25:43,598 いえ これでは 主人に怒られますでございます。 279 00:25:43,598 --> 00:25:46,734 石毛には わしから言っておく。 280 00:25:46,734 --> 00:25:50,605 さようでございますか。 281 00:25:50,605 --> 00:25:52,905 恐れ入りましてございます。 282 00:25:59,314 --> 00:26:04,686 ほほう… そのまま着られるな。 283 00:26:04,686 --> 00:26:08,556 帯は こんなんで ええんやろか。 284 00:26:08,556 --> 00:26:13,361 うんうん。 まあ そんなところじゃろ。 285 00:26:13,361 --> 00:26:18,032 あの… これ お嬢さんの お下がりかいな? 286 00:26:18,032 --> 00:26:22,370 あ… アホかいな。 お嬢様が そんなもん着るかいな。➡ 287 00:26:22,370 --> 00:26:27,242 あんたの前の女中の着古しじゃ。 うちの前の? 288 00:26:27,242 --> 00:26:33,982 うん。 体の具合が悪いとか言うての 暮れに宿下がりをしたんじゃが➡ 289 00:26:33,982 --> 00:26:37,385 そのまま戻ってこんずくじゃ。➡ 290 00:26:37,385 --> 00:26:43,725 あんたも いつまで辛抱できるかな。 へ…? 291 00:26:43,725 --> 00:26:48,396 ははっ。 まあ 奉公人が居つかんのも無理ないわ。 292 00:26:48,396 --> 00:26:52,734 旦那様は養子で 奥様に 頭が上がらんし➡ 293 00:26:52,734 --> 00:26:59,073 奥様の人使いの荒さっちゅうたら こらもう 天下一品じゃからの。 294 00:26:59,073 --> 00:27:02,073 そんなに つらいんかえ? 295 00:27:06,347 --> 00:27:13,221 そらもう… 名目は 行儀見習いでも 早い話が 下働きじゃ。 296 00:27:13,221 --> 00:27:19,894 お屋敷の内外の掃除 それから 洗い物 それから お勝手仕事の一切➡ 297 00:27:19,894 --> 00:27:23,898 奥様や お嬢様の 身の回りのお世話…。 298 00:27:23,898 --> 00:27:26,034 そんだけ? 299 00:27:26,034 --> 00:27:30,905 いやいや… まだある。 300 00:27:30,905 --> 00:27:39,581 使い走りに それから 水くみ 草むしりに それから 薪割りがあるぞ。 301 00:27:39,581 --> 00:27:45,720 そんくらいやったら 田舎でも やらされとったから なんとか…。 302 00:27:45,720 --> 00:27:50,391 頼んまっせ 頼んまっせ…。 303 00:27:50,391 --> 00:27:53,294 それは どないするんじゃ? 304 00:27:53,294 --> 00:27:57,265 もう 生地が傷んどるんで 雑巾にでもします。 305 00:27:57,265 --> 00:28:00,068 そら もったいない。 わしに くれへんか。 306 00:28:00,068 --> 00:28:03,404 何になさるん? 冬場は冷え込むんでな➡ 307 00:28:03,404 --> 00:28:07,008 座布団代わりにでもしようかいの。 308 00:28:07,008 --> 00:28:09,677 ああ こらええわ。 309 00:28:09,677 --> 00:28:12,347 何じゃ これは? あっ もみ殻じゃ。 310 00:28:12,347 --> 00:28:14,682 黒岩から うちに ついて来たんじゃ。 311 00:28:14,682 --> 00:28:19,554 あっ もみ殻か。 わしは また これ 観音様かと思うた。 312 00:28:19,554 --> 00:28:22,023 観音様て? 313 00:28:22,023 --> 00:28:25,360 シラミじゃ。 シラミ。 314 00:28:25,360 --> 00:28:29,030 はははは 冗談 冗談。 ははは…。 315 00:28:29,030 --> 00:28:31,933 よいしょ。 ああ こら ありがたい。 316 00:28:31,933 --> 00:28:37,372 それはそうと あんた お嬢様には もう 挨拶済んだか? 317 00:28:37,372 --> 00:28:39,307 いや まだや。 318 00:28:39,307 --> 00:28:43,607 早い方が ええぞ。 へえ。 うん。 319 00:28:58,059 --> 00:29:00,059 ごめんなはれ。 320 00:29:02,930 --> 00:29:04,930 ≪ごめんなされ。 321 00:29:25,219 --> 00:29:56,050 ♬~ 322 00:29:56,050 --> 00:29:58,953 <この方が お嬢様か…。➡ 323 00:29:58,953 --> 00:30:02,390 まあ なんと きれいな人じゃのう。➡ 324 00:30:02,390 --> 00:30:05,059 あどけのうて 気品があって➡ 325 00:30:05,059 --> 00:30:10,932 とりわけ 抜けるような あの肌の白さは どうじゃ…> 326 00:30:10,932 --> 00:30:17,405 ♬~ 327 00:30:17,405 --> 00:30:19,705 あの…。 328 00:30:22,076 --> 00:30:25,376 うち 登勢と申します。 329 00:30:26,948 --> 00:30:31,248 (志津)お前 ずっと そこにいたの? 330 00:30:42,764 --> 00:30:45,064 無礼者! 331 00:30:54,108 --> 00:31:01,108 (鐘の音) 332 00:31:09,056 --> 00:31:14,929 お前 津田 貢という若侍を 知っておるか? 333 00:31:14,929 --> 00:31:16,931 いいえ 存じません。 334 00:31:16,931 --> 00:31:19,400 あっ。 あ そうかそうか。 335 00:31:19,400 --> 00:31:23,738 おおかた そういうことではないかと 思うておったんだが➡ 336 00:31:23,738 --> 00:31:26,641 先方の片思いじゃのう。 は? 337 00:31:26,641 --> 00:31:32,747 うん。 いや 実はな その津田の父親が さっき 乗り込んできてな➡ 338 00:31:32,747 --> 00:31:37,418 お前を伜の妻に迎えたいと 申したんじゃ。 339 00:31:37,418 --> 00:31:39,353 察しておりました。 340 00:31:39,353 --> 00:31:44,292 おお そうか。 いや その津田という男➡ 341 00:31:44,292 --> 00:31:49,764 お前を 一目見てから ほかの娘は見向きもせんらしい。 342 00:31:49,764 --> 00:31:54,435 (はま)身分の見境がつかんらしい。 迷惑なことや。 343 00:31:54,435 --> 00:31:59,106 津田家というのは 120石じゃそうなが➡ 344 00:31:59,106 --> 00:32:02,777 稲田様の又家来やからねえ。➡ 345 00:32:02,777 --> 00:32:06,380 その場で お断りしときました。 はい。 346 00:32:06,380 --> 00:32:11,052 まっ それにしても 月日がたつのは早いものじゃのう。 347 00:32:11,052 --> 00:32:16,557 ついこの間までは おはじきやら あやとりやら申して➡ 348 00:32:16,557 --> 00:32:20,394 子供らしゅう遊んでおったものを…➡ 349 00:32:20,394 --> 00:32:24,065 縁談とはのう…。 350 00:32:24,065 --> 00:32:26,968 おかしゅうは ありませんよ。 うん? 351 00:32:26,968 --> 00:32:31,739 私も 17で あんたさんの妻になりましたもんね。 352 00:32:31,739 --> 00:32:35,409 うん…。 あのころは お前も➡ 353 00:32:35,409 --> 00:32:40,748 みずみずしゅうて なかなか しっとりとしておったわの。 354 00:32:40,748 --> 00:32:46,420 (はま)あんたさんも 若うて きりりと苦みばしった殿御でしたよ。 355 00:32:46,420 --> 00:32:50,091 (2人の笑い声) お話は それだけですか。 356 00:32:50,091 --> 00:32:52,091 うむ。 357 00:32:53,761 --> 00:32:57,632 いつ どこで 誰に見られてるか 分かりませんから。➡ 358 00:32:57,632 --> 00:33:01,632 決して隙を見せてはなりません。 はい。 359 00:33:16,717 --> 00:33:21,389 人一倍 賢い娘じゃ。 志津に限って 心配はいらん。 360 00:33:21,389 --> 00:33:24,725 そやからこそ よい縁組みを…。 361 00:33:24,725 --> 00:33:30,398 お前は しかし どうも 一日も早う 志津を追い出したいみたいやのう。 362 00:33:30,398 --> 00:33:34,735 おや これは また 嫌みな言い方。 うん? 363 00:33:34,735 --> 00:33:40,608 親というもんは 娘の花嫁姿を見るのが 楽しみなもんや。 364 00:33:40,608 --> 00:33:45,379 それには 飛び切り優れた若者をと考えるのが➡ 365 00:33:45,379 --> 00:33:47,748 当たり前のことでっしゃろう? う… うん。 366 00:33:47,748 --> 00:33:54,622 女の幸せは いつの世も 夫の手に委ねられているのですから。 367 00:33:54,622 --> 00:33:56,922 うん? うん…。 368 00:34:25,386 --> 00:34:37,732 ≪♬~(琴) 369 00:34:37,732 --> 00:35:04,032 ♬~ 370 00:35:15,369 --> 00:35:19,040 <どや 疲れたか?➡ 371 00:35:19,040 --> 00:35:21,375 心配すな お登勢。➡ 372 00:35:21,375 --> 00:35:28,249 なんぼ忙しいいうたかて たかが 町なかのお屋敷勤めやないか。➡ 373 00:35:28,249 --> 00:35:32,987 山里の 水飲み百姓とは 比べもんにならんわい。➡ 374 00:35:32,987 --> 00:35:37,725 僅かな田畑への行き帰りにも 崖をよじ登ったり➡ 375 00:35:37,725 --> 00:35:41,595 藪を こぎ渡ったり…。 え?➡ 376 00:35:41,595 --> 00:35:45,599 朝から晩まで 間なしに働かなんだら➡ 377 00:35:45,599 --> 00:35:49,070 その日の粥も すすれんのじゃから…> 378 00:35:49,070 --> 00:36:47,728 ♬~ 379 00:36:47,728 --> 00:36:51,065 お登勢! 380 00:36:51,065 --> 00:36:53,765 いかん いかん。 381 00:36:57,404 --> 00:36:59,404 お登勢! 382 00:37:03,077 --> 00:37:06,947 ≪(儀平)お登勢! いかん いかん。 383 00:37:06,947 --> 00:37:09,647 ≪(儀平)お登勢 起きんかい! 384 00:37:35,376 --> 00:37:38,279 いつまで寝とるんじゃ。 すんまへん。 すんまへん。 385 00:37:38,279 --> 00:37:41,715 お前は この家で 一番早う 起きんならんのやぞ。 386 00:37:41,715 --> 00:37:44,051 こんなに寝坊したんは 初めてじゃ。 387 00:37:44,051 --> 00:37:48,051 お目見え早々から 肝っ玉の太い おなごじゃ。 388 00:37:49,924 --> 00:37:52,726 何をするんや? 顔を洗うんじゃ。 389 00:37:52,726 --> 00:37:58,426 おいおい こら 何様のつもりじゃ。 お前の顔なんぞ 井戸端で洗てこい。 390 00:38:27,027 --> 00:38:29,697 これ! 不埒者! 391 00:38:29,697 --> 00:38:33,367 足で開けるやつがあるか! 392 00:38:33,367 --> 00:38:35,367 へえ…。 393 00:38:37,238 --> 00:38:41,709 はまに見つかったら 大ごとじゃぞ。 394 00:38:41,709 --> 00:38:43,644 はま? 395 00:38:43,644 --> 00:38:47,644 アホ 奥のことじゃ! へえ! 396 00:38:50,050 --> 00:38:53,050 もう一度 初めから やり直してみい。 397 00:38:54,722 --> 00:38:59,059 分からんのか。 はあ~。 398 00:38:59,059 --> 00:39:06,333 障子は きちんと座って 両手で開ける。 399 00:39:06,333 --> 00:39:10,204 膝をついて 両手で閉める。 400 00:39:10,204 --> 00:39:14,504 すんまへん。 やってみい。 へえ! 401 00:39:26,353 --> 00:39:32,026 なんと 手間のかかるやつじゃのう。 402 00:39:32,026 --> 00:39:35,026 そんなこともできんのか。 403 00:39:38,899 --> 00:39:42,199 そこへ座って よう見とれ。 へえ。 404 00:39:53,714 --> 00:39:57,014 よいか こうするんじゃ。 405 00:40:26,080 --> 00:40:29,080 おはようございます。 406 00:40:34,755 --> 00:40:39,626 どうされました? え? あっ いやいや あの…。 407 00:40:39,626 --> 00:40:42,626 (お盆を落とす音) ああ… しまった! 408 00:40:46,767 --> 00:40:51,438 (頭をぶつける音) あ 痛いっ! いたたた…! 409 00:40:51,438 --> 00:40:54,775 すんまへん…。 あいたたた…。 410 00:40:54,775 --> 00:41:09,056 ♬~ 411 00:41:09,056 --> 00:41:16,397 <お登勢。 お前が夢にまで見た あの若い男やけどな➡ 412 00:41:16,397 --> 00:41:19,299 一体 誰やと思う…?➡ 413 00:41:19,299 --> 00:41:23,737 悪いことは言わん。 今のうちに忘れい。➡ 414 00:41:23,737 --> 00:41:28,409 忘れなんだら 不幸になるで> 415 00:41:28,409 --> 00:41:35,109 ♬~ 416 00:41:41,755 --> 00:41:44,425 ≪登勢! へ~い! 417 00:41:44,425 --> 00:41:50,097 <16になったばかりの お登勢は 淡路の田舎から 洲本へ出て➡ 418 00:41:50,097 --> 00:41:54,435 徳島藩士 加納市左衛門様の お屋敷に奉公した。➡ 419 00:41:54,435 --> 00:41:59,106 文久4年正月 血気盛んな勤皇派のお侍が➡ 420 00:41:59,106 --> 00:42:03,444 幕府を倒そうと うごめき始めた頃やった。➡ 421 00:42:03,444 --> 00:42:06,346 ある日 お登勢は 加納家のお嬢様が➡ 422 00:42:06,346 --> 00:42:11,051 稲田家の家臣 津田 貢様と 恋仲であることを知った。➡ 423 00:42:11,051 --> 00:42:15,923 なんと 津田様は お登勢が人形一座の船の中で知り合い➡ 424 00:42:15,923 --> 00:42:18,725 乙女心を燃やしたお方じゃった。➡ 425 00:42:18,725 --> 00:42:22,596 それに 津田様は 勤皇派の急先鋒で 浅葱足袋。➡ 426 00:42:22,596 --> 00:42:28,402 奉公先の旦那様は これを取り締まる 白足袋の吟味役じゃ> 427 00:42:28,402 --> 00:42:31,305 若旦那様! 来い! 428 00:42:31,305 --> 00:42:37,411 <時代は うねり 恋は もつれ さてさて 気がもめるわいの。➡ 429 00:42:37,411 --> 00:42:40,080 お登勢よ… 我が娘よ…➡ 430 00:42:40,080 --> 00:42:44,952 厳しい試練が降りかかろうと つらい定めが待ち受けようと➡ 431 00:42:44,952 --> 00:42:49,089 己の愛を信じろ。 己の愛を貫け。➡ 432 00:42:49,089 --> 00:42:55,089 わしは陰ながら応援しておるぞよ。 なあ お登勢>