1 00:00:10,336 --> 00:00:16,209 (玉太郎)<お登勢は お嬢様のお供をして 徳島に渡った。➡ 2 00:00:16,209 --> 00:00:18,844 ある夜のこと お登勢は➡ 3 00:00:18,844 --> 00:00:24,150 若旦那様が勤皇方の公家侍を暗殺する 企てを知って➡ 4 00:00:24,150 --> 00:00:27,687 御家老の尾関様に密告した。➡ 5 00:00:27,687 --> 00:00:34,160 へっ? 何で そんなことしたかて? そら あんた 恋のためや。➡ 6 00:00:34,160 --> 00:00:39,031 恋しい津田 貢様が 公家侍と一緒におったからや。➡ 7 00:00:39,031 --> 00:00:44,804 お登勢は 猪尻の舞中島で 傷ついた津田様と ひょっこり巡り会い➡ 8 00:00:44,804 --> 00:00:51,043 身も心も投げ出して 津田様を慰めた。➡ 9 00:00:51,043 --> 00:00:57,383 さあ 一方では 密告された若旦那様の 怒るまいことか。➡ 10 00:00:57,383 --> 00:01:01,254 お登勢は 命からがら 洲本へ追い返された。➡ 11 00:01:01,254 --> 00:01:05,658 慶応元年4月のことや> 12 00:01:05,658 --> 00:01:16,669 ♬~ (テーマ音楽) 13 00:01:16,669 --> 00:01:22,341 (お登勢)愛は 何で こんなに悲しい顔しているんやろ…。 14 00:01:22,341 --> 00:02:51,030 ♬~ 15 00:02:51,030 --> 00:02:58,537 <慶応元年7月19日 徳島藩 洲本城代 稲田稙誠様は➡ 16 00:02:58,537 --> 00:03:02,708 22歳の若さで 御他界なされたんじゃ。➡ 17 00:03:02,708 --> 00:03:08,314 跡を継がれた邦稙様は 御年 僅か11歳> 18 00:03:08,314 --> 00:03:14,653 (セミの声) 19 00:03:14,653 --> 00:03:18,324 (儀平)お帰り~! 20 00:03:18,324 --> 00:03:20,259 お帰りなされませ。 21 00:03:20,259 --> 00:03:24,497 (市左衛門)ああ 草むしりか。 暑さにあたって かくらんを起こすなよ。 22 00:03:24,497 --> 00:03:26,832 おおきに ありがとうございます。 23 00:03:26,832 --> 00:03:29,335 ほんでも 慣れとりますよって。 (市左衛門)ああ。 24 00:03:29,335 --> 00:03:32,238 あっ ええ知らせがあるぞ。 喜べ。 へっ? 25 00:03:32,238 --> 00:03:37,538 明日の船でな 志津が帰ってきよる! ははは…。 26 00:03:43,682 --> 00:03:50,356 <何じゃ? お登勢。 えっ どないした? お嬢様が怖いんか?> 27 00:03:50,356 --> 00:03:52,858 (はま)ほんまのことですかいな? 28 00:03:52,858 --> 00:03:57,163 うそを言うて 何になる。 昼過ぎには 着くそうじゃ。 29 00:03:57,163 --> 00:03:59,231 まあ それは それは…。 30 00:03:59,231 --> 00:04:02,868 儀平。 (儀平)へえ。 明日 出迎えを頼むぞ。 31 00:04:02,868 --> 00:04:04,804 へえ かしこまりました。 32 00:04:04,804 --> 00:04:07,640 すると 睦太郎の身の回りは…? 33 00:04:07,640 --> 00:04:12,111 睦太郎は 出陣じゃ。 出陣!? 34 00:04:12,111 --> 00:04:17,650 せやからこそ 志津が帰ってくる。 やっぱり 長州へ? 35 00:04:17,650 --> 00:04:21,821 殿様は だいぶ迷うておられたようじゃがの➡ 36 00:04:21,821 --> 00:04:26,659 佐幕派の御家老衆に 押し切られたようじゃ。➡ 37 00:04:26,659 --> 00:04:34,333 稲田様の死去もあって 勤皇派は 足並みが乱れた。 38 00:04:34,333 --> 00:04:37,670 うむ。 39 00:04:37,670 --> 00:04:42,541 お登勢 今夜は 志津の部屋を 念入りに お掃除なされ。 40 00:04:42,541 --> 00:04:47,346 へえ。 明日の朝は お布団を干して…。 41 00:04:47,346 --> 00:04:49,646 かしこまりました。 42 00:04:51,217 --> 00:04:53,517 ああ~。 うむ! 43 00:04:57,022 --> 00:04:59,358 <心配すな お登勢。➡ 44 00:04:59,358 --> 00:05:03,028 どうせ お嬢様は 多村家へ お輿入れなさるんじゃ。➡ 45 00:05:03,028 --> 00:05:04,964 のう? 辛抱 辛抱…> 46 00:05:04,964 --> 00:05:07,299 (せきこみ) 47 00:05:07,299 --> 00:05:09,635 (笑い声) 48 00:05:09,635 --> 00:05:13,305 どうじゃ? ちっとは 親の ありがたみが分かったか? 49 00:05:13,305 --> 00:05:19,111 (志津)はい。 ついでに 籠から放された 鳥の楽しさも分かりました。 50 00:05:19,111 --> 00:05:22,911 ははは… こいつめ…。 51 00:05:25,317 --> 00:05:28,220 これを…。 52 00:05:28,220 --> 00:05:31,123 (市左衛門)何じゃ? お銭です。 53 00:05:31,123 --> 00:05:35,327 (はま)お銭? お兄様が およこしになりましたんじゃ。 54 00:05:35,327 --> 00:05:37,263 なんと! 55 00:05:37,263 --> 00:05:42,101 戦に行くのに 銭は要らん。 志津の持参金の足しにせよと。 56 00:05:42,101 --> 00:05:44,503 まあ 睦太郎が…。 57 00:05:44,503 --> 00:05:50,003 8 9 10…。 10両も あるではないか…。 58 00:05:52,678 --> 00:05:55,378 こざかしいまねをしよって…。 59 00:05:58,017 --> 00:06:02,521 お湯加減が 整いました。 おう。 志津 入れ。 60 00:06:02,521 --> 00:06:04,957 いえ 先に父上から…。 61 00:06:04,957 --> 00:06:09,461 お前のために たてたんじゃ。 遠慮せんと先に入れ。 62 00:06:09,461 --> 00:06:11,964 ありがとうございます。 63 00:06:11,964 --> 00:06:13,899 登勢。 へえ。 これから すぐ➡ 64 00:06:13,899 --> 00:06:16,635 多村殿のお屋敷へ行ってくれ。 65 00:06:16,635 --> 00:06:22,975 先方も 承知やと思うが 一応 「志津が戻った」と伝えてくれ。 66 00:06:22,975 --> 00:06:25,975 かしこまりました。 お待ち。 67 00:06:27,846 --> 00:06:30,849 それは 後で ええ。 (はま)何でや? 68 00:06:30,849 --> 00:06:34,549 私の背中を 流しておくれ。 69 00:06:38,991 --> 00:06:45,864 どないします? ええじゃろ。 言うとおりにせい。 70 00:06:45,864 --> 00:06:48,164 はあ…。 71 00:06:57,009 --> 00:06:59,912 (志津)お登勢。 72 00:06:59,912 --> 00:07:01,880 へえ。 73 00:07:01,880 --> 00:07:04,617 何を考えてるの? 74 00:07:04,617 --> 00:07:09,488 あの… うっちゃあ 多村様へ お使いに行かんなりません。 75 00:07:09,488 --> 00:07:14,093 行かんでもよい。 ほんなけんど お嬢様…➡ 76 00:07:14,093 --> 00:07:17,963 旦那様のお言いつけじゃから。 77 00:07:17,963 --> 00:07:20,633 私はね お登勢➡ 78 00:07:20,633 --> 00:07:23,969 多村様とのお話は なかったことにしてもらうの。 79 00:07:23,969 --> 00:07:28,841 えっ? そのつもりで洲本に帰ってきたんじゃ。 80 00:07:28,841 --> 00:07:33,112 何でですか? 心変わりしたんよ。 81 00:07:33,112 --> 00:07:35,047 そんな…。 82 00:07:35,047 --> 00:07:39,847 あっはははは… あははは…。 83 00:07:45,658 --> 00:07:47,593 お嬢様…。 84 00:07:47,593 --> 00:07:52,331 ≪(志津)私はね 佐伯様について 京都に行ってきました。➡ 85 00:07:52,331 --> 00:07:56,201 それで 急に目の前が開けてきたの。 86 00:07:56,201 --> 00:08:00,205 もう どんなことをしても 時の流れは せき止められん。 87 00:08:00,205 --> 00:08:03,342 将軍様の御世は もうすぐ終わります。 88 00:08:03,342 --> 00:08:06,311 ほんな お嬢様は佐伯様と…。 89 00:08:06,311 --> 00:08:10,311 ≪(志津)お入りなさい。 へえ。 90 00:08:14,953 --> 00:08:19,291 あいにく 佐伯様には 奥方様がおいでや。 91 00:08:19,291 --> 00:08:21,226 では…? 92 00:08:21,226 --> 00:08:25,964 私は やっぱり 津田様のところに行きます。 93 00:08:25,964 --> 00:08:30,664 ええっ…。 (志津)そう決めたんよ。 94 00:08:34,306 --> 00:08:39,306 ふっ… おや? どうしたん? その顔。 95 00:08:41,647 --> 00:08:48,120 私はね 子供の頃から 要らんようになって捨てたおもちゃでも➡ 96 00:08:48,120 --> 00:08:51,657 ほかの子が拾うて 大切にしてるのを見ると➡ 97 00:08:51,657 --> 00:08:54,326 また 欲しゅうて たまらんようになるの。 98 00:08:54,326 --> 00:08:57,229 そんなアホな…。 99 00:08:57,229 --> 00:09:01,500 裸におなり。 へっ? 100 00:09:01,500 --> 00:09:03,936 着物を脱ぎなされ。 101 00:09:03,936 --> 00:09:06,136 めっそうもない…。 102 00:09:07,806 --> 00:09:10,809 嫌とは言わせへん。 103 00:09:10,809 --> 00:09:13,946 お嬢様! 私に逆らうの? 104 00:09:13,946 --> 00:09:15,881 離してくだされ! 105 00:09:15,881 --> 00:09:17,816 お前の裸が見たいの! 106 00:09:17,816 --> 00:09:19,818 堪忍してください! 107 00:09:19,818 --> 00:09:24,289 ならん! 108 00:09:24,289 --> 00:09:26,959 お嬢様…。 109 00:09:26,959 --> 00:09:28,894 やめてくだされ! 110 00:09:28,894 --> 00:09:31,630 ああ~っ! お嬢様! 111 00:09:31,630 --> 00:09:34,299 ≪(志津)あはははは…! ≪ああ~っ! 112 00:09:34,299 --> 00:09:37,336 何じゃ? ≪ああ~っ お嬢様! 113 00:09:37,336 --> 00:09:39,638 熱っ! 114 00:09:39,638 --> 00:09:43,308 ≪離してくだされ! ああっ!➡ 115 00:09:43,308 --> 00:09:46,979 お嬢様 やめてくだされ…! 116 00:09:46,979 --> 00:09:49,882 ≪(志津)ああっ! ≪(水の音) 117 00:09:49,882 --> 00:09:52,851 何事じゃ! 118 00:09:52,851 --> 00:09:55,120 (はま)志津! ふう…。 119 00:09:55,120 --> 00:09:59,658 (市左衛門)何をしとるんじゃ! そのザマは何じゃ! 120 00:09:59,658 --> 00:10:03,128 すんまへん! お嬢様を お湯に投げ込みました。 121 00:10:03,128 --> 00:10:07,499 投げ込んだ…? なんということを! 122 00:10:07,499 --> 00:10:10,135 お登勢に柔術を教えていたのです。 123 00:10:10,135 --> 00:10:13,005 じゅ… 柔術? 124 00:10:13,005 --> 00:10:16,008 お登勢は えらい馬鹿力でな。 125 00:10:16,008 --> 00:10:20,879 ケガでもしたら何とする! 申し訳ありません 申し訳ありません。 126 00:10:20,879 --> 00:10:24,016 ば… 場所を考えなさい! 場所を! 127 00:10:24,016 --> 00:10:25,951 以後 気を付けます。 128 00:10:25,951 --> 00:10:37,162 (笑い声) 129 00:10:37,162 --> 00:10:42,034 <お登勢は信じられんかった。 お嬢様の嫌がらせやと思うた。➡ 130 00:10:42,034 --> 00:10:48,234 そらそうや 今更 多村様との縁談を断れるはずがない> 131 00:10:50,042 --> 00:10:54,046 うそや… うそに決まっとる。 132 00:10:54,046 --> 00:10:57,916 何を ぶつぶつ言うてるの? いえ…。 133 00:10:57,916 --> 00:11:01,653 お使いに行ってきて。 へっ? 134 00:11:01,653 --> 00:11:04,990 この手紙を届けるのじゃ。 135 00:11:04,990 --> 00:11:06,925 多村様でございますか? 136 00:11:06,925 --> 00:11:10,329 津田様じゃ。 ほんなけんど 津田様は…。 137 00:11:10,329 --> 00:11:15,000 稲田様の御葬儀で 洲本に戻っておいでじゃ。 138 00:11:15,000 --> 00:11:16,935 お嬢様は ほんまに…。 139 00:11:16,935 --> 00:11:21,435 早う行きなされ。 ここは 私が見ます。 140 00:11:35,687 --> 00:11:41,360 明日 石毛が 多村慎吾を連れてくる。 141 00:11:41,360 --> 00:11:45,697 もちろん 祝言の日取りを 決めるためじゃ。 142 00:11:45,697 --> 00:11:51,036 明日は困ります。 何じゃ? 143 00:11:51,036 --> 00:11:53,939 用事がありますので。 何の用じゃ? 144 00:11:53,939 --> 00:11:57,910 今更 石毛との約束を 取り消すわけにはいかんぞ。 145 00:11:57,910 --> 00:12:01,046 そりゃ そうですとも…。 146 00:12:01,046 --> 00:12:06,846 実は お願いがあります。 お願い? 147 00:12:13,992 --> 00:12:19,865 どうか 多村様とのお話は お断り願います。 148 00:12:19,865 --> 00:12:22,501 何じゃと!? 志津!? たわけたことを言うでない! 149 00:12:22,501 --> 00:12:25,137 どうか お聞き入れくだされ。 いけません! 150 00:12:25,137 --> 00:12:29,675 はっきり言いますが 多村様に嫁ぐ気は 毛頭ありません。 151 00:12:29,675 --> 00:12:34,846 志津! 武家の娘には 言うてええことと 悪いことがあるぞ。 152 00:12:34,846 --> 00:12:38,350 どうか お許しくだされ。 親を愚弄するつもりか! 153 00:12:38,350 --> 00:12:41,253 (はま)まあまあ…。 154 00:12:41,253 --> 00:12:45,223 多村様の どこが気に入らん?➡ 155 00:12:45,223 --> 00:12:49,962 嫁ぎとうないなら 何で 初めに それを言わん? 156 00:12:49,962 --> 00:12:53,899 1年前は どなたのところへでも 行くつもりでした。 157 00:12:53,899 --> 00:12:58,036 心変わりしたと申すのか。 はい。 158 00:12:58,036 --> 00:13:01,540 おのれ ようも ぬけぬけと…。 159 00:13:01,540 --> 00:13:04,443 そんな身勝手が 許されると思うのかえ? 160 00:13:04,443 --> 00:13:09,982 親の立場は どうなる? どうか 私を勘当してくだされ。 161 00:13:09,982 --> 00:13:14,853 勘当…? お前 尼寺へでも行くつもり? 162 00:13:14,853 --> 00:13:19,553 いいえ お嫁に行きます。 どこへ? 163 00:13:21,593 --> 00:13:24,293 津田 貢様です。 164 00:13:27,532 --> 00:13:32,004 今 何と申した? 165 00:13:32,004 --> 00:13:34,673 津田様に嫁ぎます。 166 00:13:34,673 --> 00:13:36,608 (はま)出任せを言うでない! 167 00:13:36,608 --> 00:13:39,344 出任せでは ありません。 168 00:13:39,344 --> 00:13:41,279 たわけ! 169 00:13:41,279 --> 00:13:44,279 おやめなされませ。 お前というやつは! 170 00:13:47,019 --> 00:13:50,856 どけ! このままでは 加納市左衛門の男が廃る! 171 00:13:50,856 --> 00:13:56,028 こうなった上は 首にしてでも 志津を 多村家に渡すんじゃ! 172 00:13:56,028 --> 00:13:58,697 いけません! 誰か来ておくれ! 173 00:13:58,697 --> 00:14:00,632 どけ! 邪魔立てするな! どかんか! 174 00:14:00,632 --> 00:14:03,368 お登勢! 儀平! どけ! 175 00:14:03,368 --> 00:14:06,104 (はま)いけません! おやめなされ! 176 00:14:06,104 --> 00:14:09,007 ひえ~! (市左衛門)どかんか! (はま)どきません。 177 00:14:09,007 --> 00:14:12,978 あっ… 旦那様! いけません! 178 00:14:12,978 --> 00:14:17,849 こら! 何をするんじゃ。 お前… これ! 離さんか! 179 00:14:17,849 --> 00:14:20,986 志津 逃げるのじゃ! 早う! 180 00:14:20,986 --> 00:14:22,921 (市左衛門)どけ…! どきません! 181 00:14:22,921 --> 00:14:26,658 どきません! お… 何を… あっ…! 182 00:14:26,658 --> 00:14:29,694 あっ! 何をするんじゃ こら! あっ…。 183 00:14:29,694 --> 00:14:31,830 お登勢…。 どきません。 184 00:14:31,830 --> 00:14:35,333 どかんか! ああ~! 185 00:14:35,333 --> 00:14:37,269 お登勢? あっ…。 186 00:14:37,269 --> 00:14:41,673 あっ… 無礼者~! 187 00:14:41,673 --> 00:14:44,509 すんまへん! うっ…。 188 00:14:44,509 --> 00:14:48,346 何を… あたた…。 189 00:14:48,346 --> 00:14:52,150 すんまへん…。 (市左衛門)主人をかむやつがあるか!➡ 190 00:14:52,150 --> 00:14:55,020 あっ…。 すんまへん…。 191 00:14:55,020 --> 00:14:56,955 (市左衛門)はあはあ…。 192 00:14:56,955 --> 00:15:02,360 <その翌朝 お登勢は 石毛様のお屋敷へ 使いに出された。➡ 193 00:15:02,360 --> 00:15:08,560 そうや… お嬢様の病気を口実に 面談を引き延ばすためや> 194 00:15:11,069 --> 00:15:14,806 <それから お嬢様は お部屋に閉じこもったまま➡ 195 00:15:14,806 --> 00:15:18,977 一切 お食事をおとりにならん日が続いた。➡ 196 00:15:18,977 --> 00:15:24,116 ほんなけんど 大概 強情なお方じゃのう> 197 00:15:24,116 --> 00:15:30,322 お父様は 心配のあまり 痩せてしまわれた。 198 00:15:30,322 --> 00:15:34,993 あれでは お役を務めるのも大儀じゃろう。 199 00:15:34,993 --> 00:15:41,666 お前も 同じじゃ。 こう幾日も ものを食べんでは➡ 200 00:15:41,666 --> 00:15:45,003 暑さ負けして倒れてしまう。 201 00:15:45,003 --> 00:15:48,874 いつまでも 強情を張らんで 考え直したら どうや。 202 00:15:48,874 --> 00:15:51,776 考え直す気は ありません。 203 00:15:51,776 --> 00:15:59,151 お前は… 老い先短い親を どこまで苦しめる気か! 204 00:15:59,151 --> 00:16:03,688 私は 津田様のもとへ行きます。 205 00:16:03,688 --> 00:16:09,494 なんぼ お前が そう言うても 先方が 遠慮するかもしれん。 206 00:16:09,494 --> 00:16:14,966 遠慮? 仮にも こちらは 藩士の娘じゃ。 207 00:16:14,966 --> 00:16:17,969 津田様が 受け入れてくださらんと 言わはるんですか? 208 00:16:17,969 --> 00:16:22,474 そうです。 そんなはずは ありません。 209 00:16:22,474 --> 00:16:24,409 なぜじゃ? 210 00:16:24,409 --> 00:16:29,981 私は どうしても 津田様に 行かんならんのです。 211 00:16:29,981 --> 00:16:31,981 えっ? 212 00:16:33,652 --> 00:16:38,990 2人は とうに結ばれています。 213 00:16:38,990 --> 00:16:40,990 何やて!? 214 00:16:44,863 --> 00:16:48,667 それは ほんまか!? どうしましょう…。 215 00:16:48,667 --> 00:16:51,002 どうするも こうするも もし ほんまであれば➡ 216 00:16:51,002 --> 00:16:56,341 多村家に 申し訳が立たん! わしの面目 丸潰れじゃ。 217 00:16:56,341 --> 00:17:00,011 情けなや…。 志津を呼べ! 218 00:17:00,011 --> 00:17:02,514 どうしはるんですか? 知れたことじゃ。 219 00:17:02,514 --> 00:17:04,449 事の真偽を 問い詰めるんじゃ! 220 00:17:04,449 --> 00:17:06,952 そのことは 平に…。 221 00:17:06,952 --> 00:17:10,455 娘の不行状を 黙って見過ごせと言うのか!? 222 00:17:10,455 --> 00:17:13,491 親子の いがみ合いは もう たくさんです! 223 00:17:13,491 --> 00:17:18,964 それより 先方の親を呼びつけて 直談判なさったら? 224 00:17:18,964 --> 00:17:22,834 先方…? 津田 貢の親です。 225 00:17:22,834 --> 00:17:25,303 呼びつけて どうするんじゃ? 226 00:17:25,303 --> 00:17:31,977 はっきりと お断りなされ。 「浅葱者に 娘は やれん」と。 227 00:17:31,977 --> 00:17:35,847 指図をするな いちいち! 嫌なんですか? 228 00:17:35,847 --> 00:17:37,849 ≪あの…。 229 00:17:37,849 --> 00:17:39,851 (はま)何じゃ? 230 00:17:39,851 --> 00:17:45,123 染め物屋の茂兵衛さんが 花嫁衣装の生地を お見せしたいと…。 231 00:17:45,123 --> 00:17:50,929 へげたれが~…。 なにが 花嫁衣装か! えっ? 232 00:17:50,929 --> 00:17:56,929 はあ~ わしは… 死に装束でも着たいくらいじゃ! 233 00:18:00,005 --> 00:18:02,005 (ため息) 234 00:18:09,281 --> 00:18:16,281 <数日後 津田 貢様の父上 頼母様が 加納家を訪れた> 235 00:18:21,626 --> 00:18:23,926 (せきばらい) 236 00:18:27,098 --> 00:18:29,634 へえ。 (太助)津田頼母様じゃ。 237 00:18:29,634 --> 00:18:31,569 加納様に取り次いでもらいたい。 238 00:18:31,569 --> 00:18:36,869 <いや こら えらいこっちゃ! 血の雨でも降らにゃええが…> 239 00:18:40,645 --> 00:18:47,319 お呼び立てしたんは 余の儀にあらず。 お主の伜のことじゃ。 240 00:18:47,319 --> 00:18:49,821 (頼母)何事でございますか? 241 00:18:49,821 --> 00:18:55,994 津田家の当主は 聞きしに勝る不作法者じゃのう。 242 00:18:55,994 --> 00:19:01,132 藪から棒に 何を お言いじゃ…。 243 00:19:01,132 --> 00:19:06,604 津田 貢は 当家に縁談を断られたのを 根に持って➡ 244 00:19:06,604 --> 00:19:09,441 けしからん振る舞いに 及んだんじゃ! 245 00:19:09,441 --> 00:19:11,943 けしからん振る舞い? 246 00:19:11,943 --> 00:19:15,814 卑劣な策を弄して 志津を おびき出し➡ 247 00:19:15,814 --> 00:19:21,619 人には言えん関わり合いを 無理強いしよった! 248 00:19:21,619 --> 00:19:26,958 はてさて… 御息女が そのように言われましたか。 249 00:19:26,958 --> 00:19:28,893 いかにも! 250 00:19:28,893 --> 00:19:34,299 差し支えなければ 志津殿と お引き合わせ願いたいですな。 251 00:19:34,299 --> 00:19:37,802 わしが うそを言うておると申すのか? 252 00:19:37,802 --> 00:19:41,973 いやいや そうやない。 話に行き違いがあると➡ 253 00:19:41,973 --> 00:19:44,476 今後 差し障りがあろうかと…。 254 00:19:44,476 --> 00:19:52,650 お黙りなされ! 娘は… 操を汚されたんじゃ! 255 00:19:52,650 --> 00:19:55,553 お声が 高うございます。 256 00:19:55,553 --> 00:20:00,525 (頼母)加納殿 いかに 吟味役お役とはいえ➡ 257 00:20:00,525 --> 00:20:04,662 その決めつけようは 少々 腑に落ちませんな。 258 00:20:04,662 --> 00:20:11,536 腑に落ちようが 落ちまいが たぶらかされたことは 確かじゃ! 259 00:20:11,536 --> 00:20:16,674 それなら 申し上げます。 260 00:20:16,674 --> 00:20:23,014 御息女と貢は かねてより むつまじい仲であった。 261 00:20:23,014 --> 00:20:26,885 何…!? 262 00:20:26,885 --> 00:20:30,355 かねてよりとは…? 263 00:20:30,355 --> 00:20:35,655 去年… いや おととしであったかな。 264 00:20:38,029 --> 00:20:41,032 不届き千万…! 265 00:20:41,032 --> 00:20:44,903 そうじゃから 縁組みを申し入れました。 266 00:20:44,903 --> 00:20:48,540 前から知っておって 何で 隠しておった!? 267 00:20:48,540 --> 00:20:52,043 隠しておったわけでは ありませんが…。 268 00:20:52,043 --> 00:20:56,915 浅葱者に 娘を傷物にされては 引っ込みがつかん! 269 00:20:56,915 --> 00:21:02,053 こは 由々しきことじゃぞ。 うん? どう始末を つけてくれるんじゃ! 270 00:21:02,053 --> 00:21:09,794 なれば ここは 百歩お譲りいただいて 去年の春まで 話を戻してくださらんか。 271 00:21:09,794 --> 00:21:12,997 何じゃ? あの折 お願いしたとおり➡ 272 00:21:12,997 --> 00:21:18,803 御息女を 伜の妻に下されば 八方 丸く収まる。 273 00:21:18,803 --> 00:21:20,872 アホぬかせ。 274 00:21:20,872 --> 00:21:24,342 その儀は 固く お断りいたします。 275 00:21:24,342 --> 00:21:29,681 (市左衛門)志津には れっきとした 藩士の許嫁がおる! 276 00:21:29,681 --> 00:21:35,153 それでは 話のまとめようが ありませんな。 277 00:21:35,153 --> 00:21:39,991 親子そろうて 腹でも切れと言われますか。 278 00:21:39,991 --> 00:21:42,894 切ってもらうかもしれん。 279 00:21:42,894 --> 00:21:47,365 おっ… ははは…。 280 00:21:47,365 --> 00:21:53,037 話の趣は 承りました。 281 00:21:53,037 --> 00:21:56,374 わしは隠居の身で 即答は しかねる。 282 00:21:56,374 --> 00:22:00,712 伜と相談の上 また参りましょう。 283 00:22:00,712 --> 00:22:03,047 逃げるなよ! 284 00:22:03,047 --> 00:22:06,918 ははは…。 285 00:22:06,918 --> 00:22:11,122 ああ こんなものは 持って いんでもらおう。 286 00:22:11,122 --> 00:22:13,322 ははは…。 287 00:22:16,661 --> 00:22:19,130 登勢! へえ。 288 00:22:19,130 --> 00:22:21,666 もう ほかしてしまえ! 289 00:22:21,666 --> 00:22:34,012 ♬~ 290 00:22:34,012 --> 00:22:38,016 おっ どないしたんじゃ? お登勢。 291 00:22:38,016 --> 00:22:40,216 何を ボ~ッとしとるんじゃ? 292 00:22:42,353 --> 00:22:44,289 うん? 何や? それ…。 はあ…。 293 00:22:44,289 --> 00:22:46,524 旦那様が 「ほかせ」言わはるんじゃ。 294 00:22:46,524 --> 00:22:49,861 えっ? どれ… どれどれ…。 295 00:22:49,861 --> 00:22:52,897 何や これ お菓子やな…。 296 00:22:52,897 --> 00:22:55,366 もったいない。 これ わしが もろとくわ。 297 00:22:55,366 --> 00:22:58,169 津田頼母様が 持ってきなさったんや。 298 00:22:58,169 --> 00:23:01,706 津田様…? あっ! 299 00:23:01,706 --> 00:23:08,006 何や お前 ほかしてしまえ! お菓子やけど ほかせ…。 300 00:23:17,989 --> 00:23:24,689 <その夜は 旦那様の御同役 石毛様が おいでなさった> 301 00:23:40,678 --> 00:23:47,151 (弥一郎)はあ~… これは どんならん話じゃの。 302 00:23:47,151 --> 00:23:49,687 何もかも こちらの不手際じゃ。 303 00:23:49,687 --> 00:23:53,157 志津殿は もちろんのこと 親も悪い! 304 00:23:53,157 --> 00:23:57,996 仲人のわしも うかつじゃった。 305 00:23:57,996 --> 00:23:59,931 面目ない。 306 00:23:59,931 --> 00:24:05,637 ひとまず 多村との話は水に流そう。 石毛様…。 307 00:24:05,637 --> 00:24:07,572 いけん。 308 00:24:07,572 --> 00:24:14,312 履き古しの下駄をサラじゃと言うて 売るわけにはいけん。 309 00:24:14,312 --> 00:24:23,321 う~ん さしあたっては 志津殿が 徳島で病を得て 帰ったことにするか…。 310 00:24:23,321 --> 00:24:25,990 納得してくれるじゃろうか? 311 00:24:25,990 --> 00:24:32,130 そこまでは分からん。 ともかく 長い床につくことになったと➡ 312 00:24:32,130 --> 00:24:34,330 うん… そう言おう。 313 00:24:36,000 --> 00:24:38,903 お主が 使者に立ってくれるのか? 314 00:24:38,903 --> 00:24:44,342 ふんっ。 乗りかかった舟じゃ。 貧乏くじを引いてやるわ。 315 00:24:44,342 --> 00:24:47,642 はあ… 情けないこと…。 316 00:24:50,014 --> 00:24:57,689 ≪♬~(琴) 317 00:24:57,689 --> 00:25:03,027 何じゃ? 寝込んでは おらんのか? 318 00:25:03,027 --> 00:25:05,296 あの ごくどれが! 319 00:25:05,296 --> 00:25:18,643 ♬~ 320 00:25:18,643 --> 00:25:20,978 不心得者が! 321 00:25:20,978 --> 00:25:26,278 ♬~ 322 00:25:28,319 --> 00:25:31,019 琴なんか弾いてる場合か! 323 00:25:37,995 --> 00:25:40,498 志津… 志津! 324 00:25:40,498 --> 00:25:43,835 おい… 志津… 志津! 325 00:25:43,835 --> 00:25:46,871 あんた…! 乱暴は いけん! 326 00:25:46,871 --> 00:25:50,007 な… 何をしたんです!? 何もせん。 急に倒れた。 327 00:25:50,007 --> 00:25:53,678 志津? おい… 志津! (はま)志津… 志津! 328 00:25:53,678 --> 00:25:56,581 ≪(市左衛門)志津! ≪(はま)お登勢! 329 00:25:56,581 --> 00:25:58,581 へえ! 330 00:26:02,687 --> 00:26:06,958 ≪(市左衛門)水じゃ! 水! へえ…。 331 00:26:06,958 --> 00:26:20,304 ♬~ 332 00:26:20,304 --> 00:26:23,207 枕じゃ。 へえ。 333 00:26:23,207 --> 00:26:26,110 あっ そのまま寝ていなされ。 334 00:26:26,110 --> 00:26:32,316 お志津殿… あんまり 親を泣かせるな。 335 00:26:32,316 --> 00:26:36,487 それほど嫌なら… しかたがない。 336 00:26:36,487 --> 00:26:39,991 多村との縁組みは わしが断ってやる。 337 00:26:39,991 --> 00:26:41,926 申し訳ございません。 338 00:26:41,926 --> 00:26:46,926 異存は あるまいの? けんど… 津田には やらんぞ。 339 00:26:49,667 --> 00:26:54,338 石毛 聞いてくれ。 340 00:26:54,338 --> 00:27:00,011 わしは 何が悲しいて 18年間も こんな娘を育ててきたんか…。 341 00:27:00,011 --> 00:27:02,311 わしが知るか。 342 00:27:22,967 --> 00:27:26,967 味は どないですか? ええよ。 343 00:27:29,841 --> 00:27:34,579 その芋は うちが お庭の隅に こしらえましたんです。 344 00:27:34,579 --> 00:27:37,515 へえ~。 345 00:27:37,515 --> 00:27:42,653 たんと召し上がってくだされ。 346 00:27:42,653 --> 00:27:47,491 少しじゃけんど 実の締まった ええ芋じゃ。 347 00:27:47,491 --> 00:27:52,129 明日は ネギと一緒に 難波煮をしますよって…。 348 00:27:52,129 --> 00:27:55,666 お登勢…。 へえ。 349 00:27:55,666 --> 00:27:58,703 お前は 私を憎いとは思わんのか? 350 00:27:58,703 --> 00:28:01,903 えっ? 何でです? 351 00:28:04,475 --> 00:28:06,611 <ひょっとして お嬢様は➡ 352 00:28:06,611 --> 00:28:09,947 うちと津田様のことを 知ってはるんやないか。➡ 353 00:28:09,947 --> 00:28:13,247 お登勢は 胸がドキドキした> 354 00:28:20,091 --> 00:28:25,296 (弥一郎)話は つけてきたぞ。 どうにかこうにかの。 355 00:28:25,296 --> 00:28:30,801 なんとも すまんことじゃ…。 お主に このような世話をかけるとは➡ 356 00:28:30,801 --> 00:28:32,737 思うてもみんかった。 357 00:28:32,737 --> 00:28:36,607 ほじゃから ふだん 朋輩を粗末に扱うては いけんのじゃ。 358 00:28:36,607 --> 00:28:39,510 して 多村様の御機嫌は? 359 00:28:39,510 --> 00:28:44,982 うむ… 若いが さすがに 150石の当主じゃ。 360 00:28:44,982 --> 00:28:50,488 白紙に戻す話を平然と受けてくれた。 笑みさえ浮かべてな。 361 00:28:50,488 --> 00:28:52,423 申し訳ない…。 362 00:28:52,423 --> 00:28:56,294 やはり 諦めておったらしい。 363 00:28:56,294 --> 00:29:01,499 わしが 顔を見せただけで 万事 のみ込んだフシもある。 364 00:29:01,499 --> 00:29:04,468 返す返すも 残念なことじゃ…。 365 00:29:04,468 --> 00:29:06,470 それは もう言うまい! 366 00:29:06,470 --> 00:29:11,943 ところで… 御当人は承知したが 周りが いきりたってのう。 367 00:29:11,943 --> 00:29:14,845 (市左衛門)周りとは? 弟の礼次郎 それに➡ 368 00:29:14,845 --> 00:29:19,617 来合わせておった桑村速之助じゃ。 369 00:29:19,617 --> 00:29:24,288 まあ そら… 怒るのが当然での。 ふっ しまいには➡ 370 00:29:24,288 --> 00:29:28,459 「仲人が悪い」と言いだして 危うく 小突き回されるとこじゃ。 371 00:29:28,459 --> 00:29:32,096 いやいや…。 ふっ 仲人も命懸けよ。 372 00:29:32,096 --> 00:29:36,634 わしは 二度と やらん! 重々 おわびを…。 373 00:29:36,634 --> 00:29:41,973 はあ~… 志津殿は 相変わらずか。 374 00:29:41,973 --> 00:29:46,477 ああ 何を聞いても 答えん。 375 00:29:46,477 --> 00:29:51,983 「津田家へ やってくれ」の一点張りじゃ。 うむ…。 376 00:29:51,983 --> 00:29:56,854 こうなった以上 津田へ やるほかは ないじゃろうが。 377 00:29:56,854 --> 00:29:59,123 何? 378 00:29:59,123 --> 00:30:03,327 言うちゃ悪いがの… もう生娘ではない。 379 00:30:03,327 --> 00:30:06,664 大手を振って行けるのは 津田のところだけじゃ。 380 00:30:06,664 --> 00:30:09,700 じゃあ 浅葱者に娘をやれ言うんか! 381 00:30:09,700 --> 00:30:14,005 ただし 多村の方の ほとぼりが 冷めてからじゃの。 382 00:30:14,005 --> 00:30:17,505 加納家の御先祖が 許しません! 383 00:30:19,143 --> 00:30:22,346 娘を… 捨てればええ。 384 00:30:22,346 --> 00:30:25,383 娘を捨てる? 385 00:30:25,383 --> 00:30:30,221 (弥一郎)捨てれば 津田家が拾うてくれる。 加納家にも 傷がつかん。 386 00:30:30,221 --> 00:30:33,357 わしが 志津を 捨てられると思うのか! 387 00:30:33,357 --> 00:30:40,557 大義名分を取るか 親子の情を取るか… 二つに一つじゃ。 388 00:30:42,066 --> 00:30:45,936 んん… 友達甲斐のないやつじゃ…。 389 00:30:45,936 --> 00:30:48,172 聞き捨てならん。 390 00:30:48,172 --> 00:30:52,043 わしは この家のためを思うて 知恵を絞っておるのに! 391 00:30:52,043 --> 00:30:55,379 あ~ 取り消す! 392 00:30:55,379 --> 00:31:01,252 はあ… よいか 市左衛門。 393 00:31:01,252 --> 00:31:05,823 わしが 志津殿を津田へやれと 言うについては➡ 394 00:31:05,823 --> 00:31:10,995 いささか いわくがある。 うん? 395 00:31:10,995 --> 00:31:16,801 実は 役所で 漏れ聞いた話じゃがの➡ 396 00:31:16,801 --> 00:31:19,503 新井水竹先生が いよいよ➡ 397 00:31:19,503 --> 00:31:26,010 「藩の構えを切り替えるべし」という 建白書を 殿に差し出したそうじゃ。 398 00:31:26,010 --> 00:31:27,945 建白書? 399 00:31:27,945 --> 00:31:33,884 そのために 藩の御重役方が 大きく揺らぎ始めたらしい。 400 00:31:33,884 --> 00:31:42,026 まさか…。 徳島藩に限って… 幕府を裏切るはずがない! 401 00:31:42,026 --> 00:31:47,364 お主は 娘に限って 親に背くはずはないと 思うていたろうが。 402 00:31:47,364 --> 00:31:51,235 それは意味が違います。 いや おんなじじゃ。 403 00:31:51,235 --> 00:31:58,375 徳島藩は 幕府を 見限るかもしれん。 404 00:31:58,375 --> 00:32:04,181 そう やすやすと 志を変えて 武士の面目が立つのじゃろうか。 405 00:32:04,181 --> 00:32:08,819 面目は ともかく 長州藩は➡ 406 00:32:08,819 --> 00:32:14,125 高杉晋作と桂 小五郎が 実権を握って 大きく動き始めた。➡ 407 00:32:14,125 --> 00:32:19,663 稲田家は 三田昂馬を中心に 再び 長州と手を結ぶ。 408 00:32:19,663 --> 00:32:23,534 ひょっとすると ひょっとするぞ。 409 00:32:23,534 --> 00:32:31,375 情勢が変われば 津田 貢も… 出世株の一人じゃ。 410 00:32:31,375 --> 00:32:34,145 世迷い言を申すな! 411 00:32:34,145 --> 00:32:37,681 お主は 浅葱足袋の提灯持つ気か! 412 00:32:37,681 --> 00:32:40,351 んん… ますますもって 聞き捨てならん! 413 00:32:40,351 --> 00:32:43,154 わしは ほんまに この家のためを思うて…! 414 00:32:43,154 --> 00:32:46,654 あ~ 取り消す 取り消す! 415 00:32:58,035 --> 00:33:00,871 (貢)お帰りなさいませ。 お呼びですか? 416 00:33:00,871 --> 00:33:03,571 まあ そこに座りなさい。 417 00:33:06,977 --> 00:33:09,880 驚くなよ 貢。 418 00:33:09,880 --> 00:33:14,852 なんと 志津殿が お前に嫁ぎたいと ごたてておるそうな。 419 00:33:14,852 --> 00:33:17,621 えっ? やっぱり…。 420 00:33:17,621 --> 00:33:24,128 無論 あの親が許すはずもないが 志津殿は テコでも動かん構えらしい。 421 00:33:24,128 --> 00:33:28,666 加納様に会われたのですか? いや 石毛弥一郎じゃ。 422 00:33:28,666 --> 00:33:32,336 石毛殿は こうも言うた。 423 00:33:32,336 --> 00:33:38,676 もし 加納家が 志津殿を 義絶勘当したら どないする。 424 00:33:38,676 --> 00:33:44,014 はは… 当家へ もらい受けるか? 425 00:33:44,014 --> 00:33:49,153 志津殿は 身勝手じゃ。 身勝手? 426 00:33:49,153 --> 00:33:53,023 尊皇攘夷の風が吹けば 私に心を寄せ➡ 427 00:33:53,023 --> 00:33:55,926 幕府が盛り返せば 藩士との縁談を受け入れ➡ 428 00:33:55,926 --> 00:34:00,364 今 また 我らが時を得ようとしたら 再び 鞍替えを図る。 429 00:34:00,364 --> 00:34:04,969 ほう… 手厳しい見方じゃのう。 430 00:34:04,969 --> 00:34:07,471 あれは 権勢になびく おなごや。 431 00:34:07,471 --> 00:34:16,480 そうやない。 おなごは 自らの手で 世の中を切り開くことはできんのじゃ。 432 00:34:16,480 --> 00:34:21,118 自分や子供の運命を 夫の手に委ねなならん。 433 00:34:21,118 --> 00:34:29,326 そやからこそ 世の中の仕組みが変われば 殿御を見る目も変わる。 434 00:34:29,326 --> 00:34:36,000 志津殿は 身勝手やのうて きっと 賢いのじゃ。 435 00:34:36,000 --> 00:34:37,935 さあ それは…。 436 00:34:37,935 --> 00:34:42,873 いっぺん 志津殿の身になって 考えてみるとよい。 437 00:34:42,873 --> 00:34:51,373 (風鈴の音) 438 00:34:54,018 --> 00:34:56,020 (鳥の鳴き声) 439 00:34:56,020 --> 00:35:02,726 <そろそろ 秋風が吹こうとする頃 幕府の威信は 急に ぐらつき始めた。➡ 440 00:35:02,726 --> 00:35:10,426 摩藩を筆頭に 力のある藩の多くが 長州征伐に反対を唱えたんや> 441 00:35:36,994 --> 00:35:38,994 誰じゃ。 442 00:35:40,864 --> 00:35:45,564 (礼次郎)その顔の傷 津田 貢に 間違いないな? 443 00:35:50,007 --> 00:35:53,877 何者じゃ。 名乗っても 無駄や。 444 00:35:53,877 --> 00:35:56,577 お主は ここで斬られる。 445 00:35:58,349 --> 00:36:02,649 物取りか? 恨みか? 何でも ええ! 446 00:36:04,154 --> 00:36:06,790 狼藉者! 町なかでの抜刀は御法度じゃぞ。 447 00:36:06,790 --> 00:36:09,090 問答無用! 448 00:36:23,807 --> 00:36:26,844 おじけづいたんか? 抜け! 449 00:36:26,844 --> 00:36:29,480 恨みを買う覚えはない。 450 00:36:29,480 --> 00:36:34,318 そっちに のうても こっちに あるんじゃ。 いくぞ! 451 00:36:34,318 --> 00:36:36,987 やっ! 452 00:36:36,987 --> 00:36:39,823 卑怯者! 名乗れ! 453 00:36:39,823 --> 00:36:42,860 騒ぐな 浅葱足袋! 何…? 454 00:36:42,860 --> 00:36:47,998 藩士の娘に手を出すとは 世にも ずうずうしいやつ…。 455 00:36:47,998 --> 00:36:53,137 なるほど… そういうことか。 456 00:36:53,137 --> 00:36:55,506 身の程を知れ! やあ~! 457 00:36:55,506 --> 00:37:00,677 (刃音) 458 00:37:00,677 --> 00:37:03,947 誰に頼まれた? 俺の一存じゃ! 459 00:37:03,947 --> 00:37:10,821 ♬~ 460 00:37:10,821 --> 00:37:14,591 多村慎吾の弟やな? 461 00:37:14,591 --> 00:37:17,961 それが どうした! うう~! 462 00:37:17,961 --> 00:37:32,309 ♬~ 463 00:37:32,309 --> 00:37:36,980 貴様らを いつまでも のさばらせては おかんぞ! 464 00:37:36,980 --> 00:37:59,980 ♬~ 465 00:38:06,143 --> 00:38:15,285 ≪(門をたたく音) 466 00:38:15,285 --> 00:38:17,621 どなた様でしょうか? 467 00:38:17,621 --> 00:38:19,556 ≪津田 貢と申す者です。 468 00:38:19,556 --> 00:38:23,856 (雷鳴) 469 00:38:28,966 --> 00:38:30,966 お登勢か…。 470 00:38:32,836 --> 00:38:36,840 その節は いろいろと すまんかった。 471 00:38:36,840 --> 00:38:39,977 いいえ。 472 00:38:39,977 --> 00:38:43,847 市左衛門殿に会いたい。 もう お休みですが…。 473 00:38:43,847 --> 00:38:46,847 急用じゃ。 起こしてくれ。 474 00:38:56,326 --> 00:39:00,626 ≪申し上げます。 津田 貢様が お見えになりました。 475 00:39:02,499 --> 00:39:04,434 津田 貢が…!? 476 00:39:04,434 --> 00:39:14,611 (雷鳴) 477 00:39:14,611 --> 00:39:18,949 夜分に何事じゃ! 御無礼の段は御容赦くだされ。 478 00:39:18,949 --> 00:39:21,852 用件は何じゃと聞いておる。 479 00:39:21,852 --> 00:39:24,821 実は たった今 吸江寺近くの堀端で➡ 480 00:39:24,821 --> 00:39:28,292 曲者に斬りつけられました。 うん? 481 00:39:28,292 --> 00:39:33,163 曲者の口上によれば 浅葱足袋の分際で 藩士の娘に手を出すとは➡ 482 00:39:33,163 --> 00:39:37,634 けしからんということやった。 (市左衛門)それが どうしたんじゃ? 483 00:39:37,634 --> 00:39:42,506 まさか 御当家 差し回しの刺客では ないじゃろうな。 484 00:39:42,506 --> 00:39:47,811 血迷うな! いやしくも 吟味方 加納市左衛門が➡ 485 00:39:47,811 --> 00:39:50,847 そんな姑息なまねをすると思うか! 486 00:39:50,847 --> 00:39:54,685 それを伺うて 安心しました。 487 00:39:54,685 --> 00:39:56,987 用件は それだけか? 488 00:39:56,987 --> 00:40:01,325 ぶしつけながら いまひとつ お願いの儀があります。 489 00:40:01,325 --> 00:40:03,660 願いじゃと? 490 00:40:03,660 --> 00:40:08,332 御息女を 私の妻に申し受けたい。 491 00:40:08,332 --> 00:40:12,502 (市左衛門)何!? 浅葱足袋を侮る藩士の方々に➡ 492 00:40:12,502 --> 00:40:19,009 時の流れを思い知ってもらうためにも 志津殿を申し受けます。 493 00:40:19,009 --> 00:40:21,011 帰ってもらおう! 494 00:40:21,011 --> 00:40:25,148 もとより この場で 御返事を頂けるとは思いません。 495 00:40:25,148 --> 00:40:29,853 この儀 お心に留めていただけたら 幸甚の至り…。 496 00:40:29,853 --> 00:40:33,357 聞く耳 持たぬ! 497 00:40:33,357 --> 00:40:36,026 お騒がせしました。 498 00:40:36,026 --> 00:40:46,370 ♬~ 499 00:40:46,370 --> 00:40:50,040 お登勢 塩をまきなさい。 500 00:40:50,040 --> 00:40:52,040 へえ。 501 00:40:53,710 --> 00:40:55,710 ≪津田様…。 502 00:41:00,050 --> 00:41:02,050 これを…。 503 00:41:05,856 --> 00:41:07,856 かたじけない。 504 00:41:10,994 --> 00:41:16,667 <どないした お登勢…。 えっ? 何ぞ言うなら 今のうちやぞ。➡ 505 00:41:16,667 --> 00:41:18,602 ほれ!> 506 00:41:18,602 --> 00:41:49,366 ♬~ 507 00:41:49,366 --> 00:41:56,366 (雷鳴) 508 00:42:07,851 --> 00:42:15,851 (雷鳴) 509 00:42:24,000 --> 00:42:31,341 今度こそ 津田様を しっかりと つかまえてくだされ。 510 00:42:31,341 --> 00:42:33,376 津田の命を取る! 511 00:42:33,376 --> 00:42:36,213 ちいと いたずらがすぎますな。 512 00:42:36,213 --> 00:42:40,016 津田 貢は 京へ発ったぞ。 京へ? 513 00:42:40,016 --> 00:42:42,686 まあ…。 514 00:42:42,686 --> 00:42:46,022 (泣き声) お嬢様…。 515 00:42:46,022 --> 00:42:50,694 私… 後悔なんかしていない…。 516 00:42:50,694 --> 00:42:53,363 後悔なんか していない…。 517 00:42:53,363 --> 00:42:56,266 とても幸せや…。 518 00:42:56,266 --> 00:42:58,966 とても幸せや…。