1 00:00:10,742 --> 00:00:14,079 (玉太郎)<お登勢は 吉野川の舞中島で➡ 2 00:00:14,079 --> 00:00:16,915 恋しい 津田 貢様と結ばれた。➡ 3 00:00:16,915 --> 00:00:20,218 ところが 津田様とは別れたはずのお嬢様が➡ 4 00:00:20,218 --> 00:00:23,755 再び 津田様に嫁ぎたいと言いだした。➡ 5 00:00:23,755 --> 00:00:28,427 加納家は 旦那様も奥方様も動転して 大騒ぎじゃ。➡ 6 00:00:28,427 --> 00:00:34,599 同情するやら 憎らしいやら お登勢は 自分の気持ちが 自分で分からん。➡ 7 00:00:34,599 --> 00:00:41,239 はてさて 男女の道は いつの世も もつれた恋の糸車。➡ 8 00:00:41,239 --> 00:00:46,439 どうなる どうなる? 末は どうなる…> 9 00:00:48,613 --> 00:01:00,125 ♬~ (テーマ音楽) 10 00:01:00,125 --> 00:01:05,931 (お登勢)愛は 何で こんなに悲しい顔しているんやろ…。 11 00:01:05,931 --> 00:02:34,953 ♬~ 12 00:02:34,953 --> 00:02:37,956 <慶応2年の1月20日➡ 13 00:02:37,956 --> 00:02:42,227 長州藩と摩藩は 内々に軍事協定を結び➡ 14 00:02:42,227 --> 00:02:46,431 幕府を のっぴきならない窮地に追い込んだ。➡ 15 00:02:46,431 --> 00:02:50,102 そうした 天下の情勢は 加納市左衛門様の立場にも➡ 16 00:02:50,102 --> 00:02:52,938 微妙な影響を与えた> 17 00:02:52,938 --> 00:02:58,443 (弥一郎)志津殿 父上と母上に よう お礼を言いなされ。 18 00:02:58,443 --> 00:03:01,480 (志津)はっ? そなたと 津田 貢との婚礼を➡ 19 00:03:01,480 --> 00:03:06,051 ようやく 許す気になったそうじゃ。 20 00:03:06,051 --> 00:03:10,722 (市左衛門)許してはおらん! 目 つぶって 見逃すだけじゃ。 21 00:03:10,722 --> 00:03:14,059 (弥一郎)おんなじことではないか。 (市左衛門)違う! 22 00:03:14,059 --> 00:03:16,759 ≪ごめんなされませ。 23 00:03:18,930 --> 00:03:25,670 (志津)お父様 お母様 ほんまに ありがとうございます。 24 00:03:25,670 --> 00:03:28,573 わがままを言うて 申し訳ありません。 25 00:03:28,573 --> 00:03:36,748 ほんでも いつかは 私のしたことを 分かっていただけると思います。 26 00:03:36,748 --> 00:03:41,419 (弥一郎)さあ! そうと決まったら 機嫌よう 酒を飲まんか。 27 00:03:41,419 --> 00:03:44,756 うん? 志津殿 酌を 酌を…。 28 00:03:44,756 --> 00:03:46,756 はい。 29 00:03:51,429 --> 00:03:57,302 時節柄 公にするのは 当分 見合わせる。 30 00:03:57,302 --> 00:04:00,105 内々の話として 津田家に伝えるのじゃから➡ 31 00:04:00,105 --> 00:04:02,774 志津殿も そのつもりでいるように。 32 00:04:02,774 --> 00:04:05,677 かしこまりました。 33 00:04:05,677 --> 00:04:09,381 (はま)志津…。 はい。 34 00:04:09,381 --> 00:04:18,723 津田家へ行ったら… お前は もう 藩士の娘ではないのじゃ。 35 00:04:18,723 --> 00:04:26,198 よう分かっております。 私は 浅葱者の妻になるんです。 36 00:04:26,198 --> 00:04:31,403 (はま)睦太郎に 何と知らせたものかのう。 37 00:04:31,403 --> 00:04:36,074 知らせることはない。 38 00:04:36,074 --> 00:04:39,574 勤めに 差し支えるわ。 39 00:04:46,084 --> 00:04:48,384 (儀平)どないしたんじゃ? お登勢。 40 00:04:52,757 --> 00:04:55,660 体の具合でも 悪いんか? 41 00:04:55,660 --> 00:04:57,629 ううん…。 42 00:04:57,629 --> 00:04:59,929 (儀平)けったいなやっちゃな…。 43 00:05:02,767 --> 00:05:08,373 儀平さん うち お暇を頂けんじゃろうか。 44 00:05:08,373 --> 00:05:11,876 (儀平)お暇じゃと? 45 00:05:11,876 --> 00:05:15,714 どっか 遠くへ行きとうなった。 46 00:05:15,714 --> 00:05:21,386 アホ言え。 年季は 来年の正月じゃろうが。 47 00:05:21,386 --> 00:05:26,725 訳もなしに 奉公人が 暇を願い出るっちゅうのは筋が通らんぞ。 48 00:05:26,725 --> 00:05:32,397 まあ そらな いろいろと…➡ 49 00:05:32,397 --> 00:05:35,433 つらいこともあるわいな。 50 00:05:35,433 --> 00:05:39,904 悲しいこともあるわいな。 うん…。 51 00:05:39,904 --> 00:05:43,408 ほなけんど… こうやって こう➡ 52 00:05:43,408 --> 00:05:50,582 頭 下げとったらな お小言は 頭の上を す~っと通り抜けていく。 53 00:05:50,582 --> 00:05:57,355 はははは… 我慢せんかい! ふふ…。 54 00:05:57,355 --> 00:06:03,595 <津田様とお嬢様の祝言は 春に行うことが決まった。➡ 55 00:06:03,595 --> 00:06:09,701 藩士の娘が 格下の陪臣に嫁ぐうわさは 徳島の城下に広がり➡ 56 00:06:09,701 --> 00:06:14,372 若旦那様のお耳にも達した> 57 00:06:14,372 --> 00:06:18,877 (睦太郎)妹が浅葱者の妻となるのは 一門の恥辱じゃ! 58 00:06:18,877 --> 00:06:24,049 まして 津田 貢は 俺にとって不倶戴天の仇や。 59 00:06:24,049 --> 00:06:28,386 たとえ 父上や母上が許しても 俺は 絶対に許さん! 60 00:06:28,386 --> 00:06:31,890 (原)媒酌人は 家老の三田昂馬がやるらしいな。 61 00:06:31,890 --> 00:06:35,560 洲本では 勤皇派が ますます 大きな顔をしとるそうじゃ。 62 00:06:35,560 --> 00:06:39,064 今に 吠え面かくわ! 63 00:06:39,064 --> 00:06:44,064 兄妹の縁を切ってでも 婚礼は阻止する。 64 00:06:48,740 --> 00:06:52,210 (睦太郎)「いかなる因縁のあるやは 存じ候わねども➡ 65 00:06:52,210 --> 00:06:57,048 志津が又家来に嫁ぐは 家名を傷つけること 著しく➡ 66 00:06:57,048 --> 00:07:01,219 到底 承服いたしかねるものに候。➡ 67 00:07:01,219 --> 00:07:06,691 多村慎吾は もとより 朋輩連中に合わせる顔とて これなく➡ 68 00:07:06,691 --> 00:07:13,565 兄として 嘲りを受くるは必定と 心得申し候」。 69 00:07:13,565 --> 00:07:15,700 きれいじゃ…。 70 00:07:15,700 --> 00:07:20,400 いろいろと世話をかけたお礼に これを あげる。 71 00:07:22,374 --> 00:07:25,043 まあ もったいない。 72 00:07:25,043 --> 00:07:28,880 これからの世の中は 読み書きができんと あかんのじゃ。 73 00:07:28,880 --> 00:07:34,580 まず 字を覚えなされ。 これは 私が書いたお手本じゃ。 74 00:07:37,389 --> 00:07:41,589 おおきに。 ありがとうございます。 75 00:07:48,400 --> 00:07:55,100 お前が 今 どんな気持ちか 私には よう分かる。 76 00:07:56,741 --> 00:08:01,212 それは 私のせいでも お前のせいでもない。 77 00:08:01,212 --> 00:08:04,682 身分のせいじゃ。 78 00:08:04,682 --> 00:08:10,355 お前が 津田様に思いを寄せていながら 添うことができんのは なぜじゃ? 79 00:08:10,355 --> 00:08:12,290 身分が違うからじゃ。 80 00:08:12,290 --> 00:08:15,693 お嬢様 何で そんなことを 言わはるんですか? 81 00:08:15,693 --> 00:08:19,564 うっちゃあ 津田様が好きや。 ほんなけんど お嬢様も好きや。 82 00:08:19,564 --> 00:08:21,566 ほんで ええんです。 83 00:08:21,566 --> 00:08:27,038 いいえ お前は もっと 身分の違いを憎まんと いかんのです。 84 00:08:27,038 --> 00:08:30,875 差別のない世の中が来るか 来んか 分からんけど➡ 85 00:08:30,875 --> 00:08:34,379 自分なりに それを ちょっとでも 縮めていかな あかん。 86 00:08:34,379 --> 00:08:38,716 じゃから 手習いをするんよ。 87 00:08:38,716 --> 00:08:41,386 へえ。 88 00:08:41,386 --> 00:08:49,086 自分を高めてゆけば いつか きっと幸せになれる。 89 00:08:58,937 --> 00:09:01,237 お嬢様…。 90 00:09:03,208 --> 00:09:07,708 お嬢様は ほんまに 津田様が お好きなんか? 91 00:09:12,884 --> 00:09:17,522 ほんなら 何も言うことありまへん。 92 00:09:17,522 --> 00:09:22,026 周り中が敵でも うちは お嬢様の味方じゃ。 93 00:09:22,026 --> 00:09:24,726 幸せになってくだされ。 94 00:09:31,369 --> 00:09:33,669 おおきに…。 95 00:09:35,707 --> 00:09:45,049 ♬~ 96 00:09:45,049 --> 00:09:50,188 <婚礼の日は 朝から雨じゃった。➡ 97 00:09:50,188 --> 00:09:53,892 加納家を発った花嫁行列は➡ 98 00:09:53,892 --> 00:10:00,392 しずしずと 屋敷町を通って 津田様のお屋敷に着いた> 99 00:10:03,067 --> 00:10:09,941 <祝言は 七つ時 三田昂馬様の媒酌で始まった> 100 00:10:09,941 --> 00:10:38,436 ♬~ 101 00:10:38,436 --> 00:10:43,107 <一人 留守番役のお登勢は 何やら 落ち着かん> 102 00:10:43,107 --> 00:11:24,716 ♬~ 103 00:11:24,716 --> 00:11:27,416 (笑い声) 104 00:11:34,759 --> 00:11:37,662 (太助)失礼ないようにな。 うん。 105 00:11:37,662 --> 00:11:41,432 ≪誰か おらんか~? 106 00:11:41,432 --> 00:11:44,632 (太助)へえ! ああ…。 107 00:11:46,237 --> 00:11:49,941 おいでなされませ。 (稲垣)少々 ものを尋ねる。➡ 108 00:11:49,941 --> 00:11:53,611 当家では 浅葱者と藩士の娘が 婚礼をしているそうじゃな。 109 00:11:53,611 --> 00:11:57,448 えっ… へえ。 110 00:11:57,448 --> 00:12:01,319 (礼次郎)祝いの品じゃ。 取り次いでくれ。 111 00:12:01,319 --> 00:12:03,788 あっ… うわ…!➡ 112 00:12:03,788 --> 00:12:06,057 ど… どなた様ですか!? 113 00:12:06,057 --> 00:12:09,727 (礼次郎)足袋が目に入らんのか。 114 00:12:09,727 --> 00:12:12,397 (太助)あっ…。 115 00:12:12,397 --> 00:12:17,902 (礼次郎)祝いの品を持ってきたんじゃ。 花婿から 礼の言葉を聞きたい。 116 00:12:17,902 --> 00:12:21,202 ちょ… ちょっと お待ちを…。 117 00:12:23,574 --> 00:12:25,510 ≪(太助)旦那様。 118 00:12:25,510 --> 00:12:40,024 ♬~ 119 00:12:40,024 --> 00:12:49,233 (雷鳴) 120 00:12:49,233 --> 00:12:52,103 (頼母)津田 貢の父でござる。 121 00:12:52,103 --> 00:12:55,606 (稲垣)親父殿に用はない。 花婿に会いたいんじゃ。 122 00:12:55,606 --> 00:12:58,109 あいにく 祝言の最中です。 123 00:12:58,109 --> 00:13:02,613 ならば この祝儀を 面前に運び込んでもええぞ。 124 00:13:02,613 --> 00:13:05,383 その儀は 御無用に…。 125 00:13:05,383 --> 00:13:10,054 (片岡)何? 受け取れんと言うのか。 126 00:13:10,054 --> 00:13:14,058 ちいと いたずらがすぎますな。 お持ち帰り願いたい。 127 00:13:14,058 --> 00:13:16,194 (片岡)無礼を申すな! そこを どけい! 128 00:13:16,194 --> 00:13:19,063 ≪(言い争う声) 129 00:13:19,063 --> 00:13:21,065 何事じゃ? 一体 誰じゃ? 130 00:13:21,065 --> 00:13:23,401 (三田)静かに…。 131 00:13:23,401 --> 00:13:25,436 静かに…。 132 00:13:25,436 --> 00:13:28,206 ≪(言い争う声) 133 00:13:28,206 --> 00:13:30,206 どかんか…! 134 00:13:35,747 --> 00:13:37,682 (三善)これは 一体 何のまねじゃ。 135 00:13:37,682 --> 00:13:40,585 (六車)嫌がらせか? 祝儀を持ってきたんじゃ! 136 00:13:40,585 --> 00:13:43,087 (丹羽)ふざけんな! 藩士に 手向かいする気か? 137 00:13:43,087 --> 00:13:45,590 なにが 藩士や! (丹羽)ごろつき侍が! 138 00:13:45,590 --> 00:13:47,525 ぬかしたな! やるか? 139 00:13:47,525 --> 00:13:49,460 待て待て! 今宵は祝言じゃ。 140 00:13:49,460 --> 00:13:52,764 面白い! その祝言に 血の雨を降らしたる! 141 00:13:52,764 --> 00:13:54,699 浅葱色の血をな! 142 00:13:54,699 --> 00:13:58,199 くそ~! 表へ出んか! 143 00:13:59,937 --> 00:14:02,607 しばらく! しばらく! おやめくだされ! 144 00:14:02,607 --> 00:14:07,378 来んか! 控えよ! 控えよ! 145 00:14:07,378 --> 00:14:10,178 仲人の三田昂馬じゃ。 146 00:14:12,049 --> 00:14:15,553 祝儀は ありがたく頂戴する。 三田様! 147 00:14:15,553 --> 00:14:17,488 厚意は 受けんならん。 148 00:14:17,488 --> 00:14:20,057 ほう~。 さすがに 物分かりがええのう。 149 00:14:20,057 --> 00:14:24,395 ただし 祝いの品には 相応の引き出物をお返ししたい。 150 00:14:24,395 --> 00:14:26,898 (片岡)引き出物? 151 00:14:26,898 --> 00:14:31,569 早速 この犬を料理して おのおの方の屋敷へ届けるから➡ 152 00:14:31,569 --> 00:14:34,205 姓名を伺うておく。 何? 要らん 要らん。 153 00:14:34,205 --> 00:14:39,744 これは異なこと。 当方が 快く 祝いの品を受け取ったのに➡ 154 00:14:39,744 --> 00:14:42,413 引き出物を断るとは無礼の極み! 155 00:14:42,413 --> 00:14:46,918 おのれ! (三田)名乗らんのか! 156 00:14:46,918 --> 00:14:51,088 お主が 多村慎吾の弟であることは 知っているが…。 157 00:14:51,088 --> 00:14:53,788 兄の差し金か? 158 00:14:59,430 --> 00:15:02,099 これまでじゃ。 引き揚げるぞ! 159 00:15:02,099 --> 00:15:05,599 (三田)引き出物は どうする? 御免被る! 160 00:15:12,376 --> 00:15:19,050 ≪(犬の吠え声) 161 00:15:19,050 --> 00:15:20,985 はあ…。 162 00:15:20,985 --> 00:15:26,190 まあ… 死んだ犬を? (儀平)おかげで 祝言は ワヤじゃ。➡ 163 00:15:26,190 --> 00:15:29,093 まるで お通夜のようじゃった。 164 00:15:29,093 --> 00:15:31,562 ほんで 御機嫌 悪かったんじゃな。 165 00:15:31,562 --> 00:15:33,898 ああ! 166 00:15:33,898 --> 00:15:41,072 ああ… 旦那様も奥方様も ほんでのうても しょうことなしの祝言じゃからなあ➡ 167 00:15:41,072 --> 00:15:43,572 げんなりしたはるわいな。 168 00:15:45,076 --> 00:15:48,412 (儀平)ほれ 食わんかい。 169 00:15:48,412 --> 00:15:51,749 おおきに。 170 00:15:51,749 --> 00:15:55,086 ほいで 津田様は うれしそうにしてなはった? 171 00:15:55,086 --> 00:15:57,922 花婿か? ふんっ。 172 00:15:57,922 --> 00:16:03,722 あの傷っ面じゃ うれしいのか悲しいのか さっぱり分からん。 173 00:16:18,042 --> 00:16:22,546 (貢)そなたを 妻に迎えたのは➡ 174 00:16:22,546 --> 00:16:26,384 どうしても そなたが欲しかったからではない。 175 00:16:26,384 --> 00:16:31,055 私は 白足袋の連中に挑んでみたかった。 176 00:16:31,055 --> 00:16:33,755 目にものを見せてやりたかった。 177 00:16:35,927 --> 00:16:38,930 もちろん そればかりではない。 178 00:16:38,930 --> 00:16:44,568 夫婦になったら また 以前の思い出が よみがえると思うていた。 179 00:16:44,568 --> 00:16:48,205 じゃが それは なまやさしいことではないと➡ 180 00:16:48,205 --> 00:16:50,505 思い知らされた。 181 00:16:52,076 --> 00:17:00,876 私には そなたの心の底が見えん。 自分の心の底も見えん。 182 00:17:03,087 --> 00:17:06,691 少のうても そなたは 2年前のそなたではない。 183 00:17:06,691 --> 00:17:10,561 そなたは 勤皇派の私の将来に賭けたんや。 184 00:17:10,561 --> 00:17:14,031 いえ それは…。 時間が要る。 185 00:17:14,031 --> 00:17:19,704 本当の夫婦になるためには 時間が要る。 186 00:17:19,704 --> 00:17:23,040 あのころの愛情が戻ってくるまで 待たんならん。 187 00:17:23,040 --> 00:17:29,340 それまで お互いに 自分の心を見つめ直そうやないか。 188 00:17:31,716 --> 00:17:33,651 (火を吹き消す音) 189 00:17:33,651 --> 00:17:48,651 ♬~ 190 00:17:53,004 --> 00:17:56,407 多村慎吾が 弟を連れてきた。 191 00:17:56,407 --> 00:18:00,277 わびを入れさせるから とりなしてくれと…。 192 00:18:00,277 --> 00:18:02,279 それには及ばん。 193 00:18:02,279 --> 00:18:06,083 あの夜は 酒も入っておったし つい 血気に はやって➡ 194 00:18:06,083 --> 00:18:11,022 前後の見境もなく 武士に あるまじきことをしたと…。➡ 195 00:18:11,022 --> 00:18:14,358 もっとも これは 兄の口上じゃが…。 196 00:18:14,358 --> 00:18:18,529 今更 咎め立てする気はない。 197 00:18:18,529 --> 00:18:23,034 騒ぎ立てんと そっとしておいてくれ。 (弥一郎)ほう…。 198 00:18:23,034 --> 00:18:25,936 津田家には わしの方から伝えておく。 199 00:18:25,936 --> 00:18:32,043 待て待て! 多村は 加納家には謝ると言うておるが➡ 200 00:18:32,043 --> 00:18:35,713 津田家に謝るとは言うておらん。 201 00:18:35,713 --> 00:18:38,013 よう 分かった! 202 00:18:40,384 --> 00:18:45,189 今後 この件には 一切 触れんでもらいたい。 203 00:18:45,189 --> 00:18:51,395 んん… なるほど。 まあな お主の気持ちも分からんではない。 204 00:18:51,395 --> 00:18:56,567 他人には 分かりゃせん! そう 八つ当たりすんな…。 205 00:18:56,567 --> 00:19:00,404 志津は あれで よかったんじゃろか。 206 00:19:00,404 --> 00:19:06,404 寂しいやろうのう…。 輿入れ早々 亭主は長旅じゃ。 207 00:19:08,012 --> 00:19:09,947 長旅…? 208 00:19:09,947 --> 00:19:15,886 何じゃ? 知らんのか。 津田 貢は 京へ発ったぞ。 209 00:19:15,886 --> 00:19:18,022 京へ? まあ…。 210 00:19:18,022 --> 00:19:21,322 勤皇公家の警護じゃそうな。 211 00:19:22,893 --> 00:19:29,533 <4月半ば 京都守護職の会津藩と 摩藩との間に いざこざがあり➡ 212 00:19:29,533 --> 00:19:33,037 今にも 戦が始まらんばかりじゃった。➡ 213 00:19:33,037 --> 00:19:36,707 洲本の稲田家は 20人の武士を京へ送って➡ 214 00:19:36,707 --> 00:19:41,045 有栖川宮の護衛に当たらせた。➡ 215 00:19:41,045 --> 00:19:47,184 5月になった ある日 お登勢は 奥方様の言いつけで津田家へ訪れた。➡ 216 00:19:47,184 --> 00:19:51,388 無論 お嬢様の様子を探るためじゃ> 217 00:19:51,388 --> 00:19:56,727 何しろ 素手で ねずみを捕まえたり 私を湯船に投げ込んだり➡ 218 00:19:56,727 --> 00:19:59,063 いろいろと 武勇伝があります。 219 00:19:59,063 --> 00:20:02,933 ほう~! (りく)今様巴御前じゃね。 220 00:20:02,933 --> 00:20:08,072 (笑い声) 見かけによらんと 力持ちです。 221 00:20:08,072 --> 00:20:10,007 (足音) 222 00:20:10,007 --> 00:20:12,076 お持ちいたしました。 そこへ お置き。 223 00:20:12,076 --> 00:20:14,578 へえ! 224 00:20:14,578 --> 00:20:16,778 よっ…。 225 00:20:20,084 --> 00:20:23,954 (志津)その上で お登勢と腕相撲をなされ。 226 00:20:23,954 --> 00:20:26,957 えっ? 腕相撲? 227 00:20:26,957 --> 00:20:32,096 そうじゃ。 津田家と加納家の一騎打ちです。 228 00:20:32,096 --> 00:20:34,431 こりゃ! 負けるなよ 太助。 229 00:20:34,431 --> 00:20:38,102 アホらしい! なあ? わしは これでも 男じゃわいな。 230 00:20:38,102 --> 00:20:41,438 (頼母)ほう…。 (志津)お前は 昨日 お登勢のことを➡ 231 00:20:41,438 --> 00:20:45,309 根掘り葉掘り 尋ねとったじゃろ。 ええ…? 232 00:20:45,309 --> 00:20:48,612 「婿は決まってるのか」と…。 233 00:20:48,612 --> 00:20:51,649 あっ… 若奥様… なにも こんな席で…。 234 00:20:51,649 --> 00:20:55,486 腕相撲に勝ったら 私が 仲を取り持ちましょう。 235 00:20:55,486 --> 00:20:58,622 おやおや! 「棚から ぼた餅」じゃ。 236 00:20:58,622 --> 00:21:02,822 やってみんかい 太助。 はい! えへへ… よし。 237 00:21:05,396 --> 00:21:08,732 さあ 見合うて見合うて…。 困ります お嬢様…。 238 00:21:08,732 --> 00:21:13,732 早う早う! うふふ… 早う! 239 00:21:17,441 --> 00:21:21,078 さあ 見合うて…。 おっ! 240 00:21:21,078 --> 00:21:24,748 はっけよ~い! のこった! 241 00:21:24,748 --> 00:21:27,084 のこった のこった! 242 00:21:27,084 --> 00:21:31,088 <どうしたんじゃ? お登勢。 負けたら 太助の嫁にされるぞ> 243 00:21:31,088 --> 00:21:33,424 (志津)のこった のこった! 244 00:21:33,424 --> 00:21:35,359 あっ! おお おお…。 245 00:21:35,359 --> 00:21:40,297 まだ… まだまだ…。 246 00:21:40,297 --> 00:21:43,934 あはは… のこった のこった!➡ 247 00:21:43,934 --> 00:21:47,438 のこった のこった! (頼母)太助! 太助 おい!➡ 248 00:21:47,438 --> 00:21:49,773 しっかり… しっかりせい! 249 00:21:49,773 --> 00:21:54,245 ああっ…。 (志津)太助 もっと頑張り!➡ 250 00:21:54,245 --> 00:21:56,614 のこった のこった! (頼母)ほら! 251 00:21:56,614 --> 00:21:58,549 (くしゃみ) はい! 252 00:21:58,549 --> 00:22:00,484 あ~っ! あ~っ! 253 00:22:00,484 --> 00:22:05,322 (志津)勝負あった! 何じゃ 男のくせに! ははは…。 254 00:22:05,322 --> 00:22:10,060 (笑い声) 255 00:22:10,060 --> 00:22:12,060 はあ…。 256 00:22:19,069 --> 00:22:21,369 ≪お嬢様。 257 00:22:24,408 --> 00:22:28,078 では ここいらで おいとまいたします。 258 00:22:28,078 --> 00:22:30,078 また 遊びにおいで。 259 00:22:32,416 --> 00:22:34,451 ありがとうございます。 260 00:22:34,451 --> 00:22:38,756 そうや 渡したいもんがあるから お入り。 261 00:22:38,756 --> 00:22:40,756 へえ。 262 00:22:53,103 --> 00:22:55,803 津田家からの土産じゃ。 263 00:22:58,776 --> 00:23:02,076 匂い袋は お母様に。 264 00:23:05,049 --> 00:23:09,349 蒔絵の印籠は お父様に。 265 00:23:11,922 --> 00:23:13,922 かしこまりました。 266 00:23:24,068 --> 00:23:29,206 私のことを聞かれたら どうすんの? 267 00:23:29,206 --> 00:23:32,006 何と言うつもりや? 268 00:23:34,411 --> 00:23:38,082 お嬢様は いつも 今日のように 陽気にしてはるんですか? 269 00:23:38,082 --> 00:23:41,585 そうじゃ。 お前も見たように➡ 270 00:23:41,585 --> 00:23:45,089 お義父様の尺八と お琴を合わせてみたり➡ 271 00:23:45,089 --> 00:23:47,758 取りとめもない おしゃべりをしたり➡ 272 00:23:47,758 --> 00:23:53,564 たまには お酒のお相手もして 面白おかしゅう 過ごしています。➡ 273 00:23:53,564 --> 00:23:58,469 ここでは まるで お姫様じゃ…。 どうしたん? 274 00:23:58,469 --> 00:24:01,939 太助さんの話では➡ 275 00:24:01,939 --> 00:24:06,377 今日の若奥様は別人のようじゃと…。 276 00:24:06,377 --> 00:24:09,046 随分 はしゃいでおいでなはると…。 277 00:24:09,046 --> 00:24:12,549 奉公人に 何が分かりますかいな。 278 00:24:12,549 --> 00:24:15,185 すんまへん。 279 00:24:15,185 --> 00:24:20,991 「私は とても幸せじゃ。 どうぞ 安心してくだされ」と➡ 280 00:24:20,991 --> 00:24:23,291 そう伝えておくれ。 281 00:24:24,928 --> 00:24:27,228 かしこまりました。 282 00:24:45,282 --> 00:24:48,419 お登勢…。 283 00:24:48,419 --> 00:25:00,998 ♬~ 284 00:25:00,998 --> 00:25:09,540 私… 後悔なんかしてない…。 とても幸せや…。 285 00:25:09,540 --> 00:25:18,182 私… 後悔なんかしていない…。 とても幸せや…。 286 00:25:18,182 --> 00:25:21,885 とても幸せや…。 287 00:25:21,885 --> 00:25:24,922 幸せや…。 288 00:25:24,922 --> 00:25:27,391 お嬢様…。 289 00:25:27,391 --> 00:25:32,196 (泣き声) 290 00:25:32,196 --> 00:25:37,396 <お登勢は お嬢様が かわいそうでならんかった…> 291 00:25:43,941 --> 00:25:46,076 放て~! (銃声) 292 00:25:46,076 --> 00:25:51,949 <慶応2年6月。 幕府軍は ようやく 西に向けて出発。➡ 293 00:25:51,949 --> 00:25:55,085 長州軍と戦端を開いた。➡ 294 00:25:55,085 --> 00:26:01,758 幕府軍の旗色は極めて悪く 至る所で 敗戦を重ねた。➡ 295 00:26:01,758 --> 00:26:08,532 そして 7月20日。 十四代将軍 家茂公が 大坂城で死去。➡ 296 00:26:08,532 --> 00:26:12,870 幕府は 服喪による休戦という 体裁を整えて➡ 297 00:26:12,870 --> 00:26:17,370 敗戦続きの長州との戦から 手を引いた> 298 00:26:22,045 --> 00:26:28,745 <幕府の権威は 地に落ち もはや 回復の望みはなかった> 299 00:26:30,387 --> 00:26:36,727 (セミの声) 300 00:26:36,727 --> 00:26:40,027 なんぼなんでも ひどすぎるわ。 301 00:26:46,069 --> 00:26:49,940 全く いつになったら お戻りになるんやろか。 302 00:26:49,940 --> 00:26:53,577 うん? ああ…。 303 00:26:53,577 --> 00:27:00,918 運の強いお方じゃ。 心配いらん。 必ず 生きておんなさるわい。 304 00:27:00,918 --> 00:27:05,689 そら生きてはるわ。 これから いよいよ 勤皇の世の中やのに➡ 305 00:27:05,689 --> 00:27:10,027 死んでしもたら どんならん。 えっ? 何のこっちゃ? 306 00:27:10,027 --> 00:27:12,362 津田様のことやろ? 307 00:27:12,362 --> 00:27:17,234 アホ! 睦太郎様のこっちゃ。 308 00:27:17,234 --> 00:27:19,236 なんや…。 309 00:27:19,236 --> 00:27:24,942 ほんまに もう… どえらい世の中に なってしもうたのう! 310 00:27:24,942 --> 00:27:27,377 <その年の暮れ➡ 311 00:27:27,377 --> 00:27:31,048 水戸中納言 慶喜様が 徳川宗家に入り➡ 312 00:27:31,048 --> 00:27:35,719 十五代将軍に おなりじゃった。➡ 313 00:27:35,719 --> 00:27:40,057 続いて 幕府が頼りとする孝明天皇が➡ 314 00:27:40,057 --> 00:27:43,727 お隠れあそばした。➡ 315 00:27:43,727 --> 00:27:50,067 明けて 慶応3年 正月。 御年16歳の明治天皇が御即位。➡ 316 00:27:50,067 --> 00:27:56,940 これにて 幕府寄りの公家衆は 朝廷から 一掃された。➡ 317 00:27:56,940 --> 00:28:01,211 そのころ 加納家には 吉報が届いた。➡ 318 00:28:01,211 --> 00:28:07,017 若旦那様が 無事 徳島に御帰還なされたんじゃ> 319 00:28:07,017 --> 00:28:09,920 お帰りなされませ。 320 00:28:09,920 --> 00:28:12,356 (市左衛門)これは 何じゃ? 321 00:28:12,356 --> 00:28:14,291 お赤飯でございます。 322 00:28:14,291 --> 00:28:18,028 アホ。 赤飯は見れば分かるわ。 323 00:28:18,028 --> 00:28:21,365 睦太郎の お祝いなんよ。 324 00:28:21,365 --> 00:28:25,702 心得違いをするな! 戦に負けて帰ってきたんやぞ。 325 00:28:25,702 --> 00:28:29,539 睦太郎のせいで負けたのでは ありまへんやろ。 326 00:28:29,539 --> 00:28:35,045 たわけ者… 幕府存亡の危機に赤飯を炊くとは➡ 327 00:28:35,045 --> 00:28:36,980 不謹慎にも 程がある! 328 00:28:36,980 --> 00:28:39,716 難しいことを言わはりますな。 329 00:28:39,716 --> 00:28:44,588 加納家の跡取りが 傷も負わんと帰ってきたんですよ。 330 00:28:44,588 --> 00:28:47,591 登勢 下げなさい。 331 00:28:47,591 --> 00:28:49,591 へえ。 332 00:28:52,729 --> 00:28:55,399 下げんでもええ。 へえ…。 333 00:28:55,399 --> 00:28:57,334 下げるんじゃ。 へえ。 334 00:28:57,334 --> 00:28:59,269 (はま)下げんでもええ! へえ…。 335 00:28:59,269 --> 00:29:02,572 (市左衛門)登勢 下げんか! へえ! 336 00:29:02,572 --> 00:29:07,411 あんたは 睦太郎の帰還が うれしゅうないんですか!? 337 00:29:07,411 --> 00:29:13,016 将軍家あっての徳島藩 徳島藩あっての加納家じゃ! 338 00:29:13,016 --> 00:29:16,887 徳島藩は 変わります。 何じゃ!? 339 00:29:16,887 --> 00:29:23,160 いつまでも 幕府に ひっついていたら 時代に取り残されます!➡ 340 00:29:23,160 --> 00:29:27,030 お登勢 置きなされ。 341 00:29:27,030 --> 00:29:28,965 へえ。 342 00:29:28,965 --> 00:29:40,577 ♬~ 343 00:29:40,577 --> 00:29:45,382 <お登勢は お赤飯をお嬢様に届けた> 344 00:29:45,382 --> 00:29:48,082 ごめんなされ。 へえ。 345 00:29:54,057 --> 00:29:58,395 若旦那様は 月末に 洲本へ おいでなさるそうです。 346 00:29:58,395 --> 00:30:03,567 おいそれとは会えんやろ。 はっ? 347 00:30:03,567 --> 00:30:09,372 私は 浅葱者の妻です。 348 00:30:09,372 --> 00:30:12,209 御兄妹やありませんか。 349 00:30:12,209 --> 00:30:18,749 戦に負けた腹いせに 八つ裂きにされるかもしれん。 350 00:30:18,749 --> 00:30:20,684 まさか…。 351 00:30:20,684 --> 00:30:27,758 それに お兄様は 今の私を見て 何と言うじゃろう。 352 00:30:27,758 --> 00:30:31,428 夫に 9か月も 置き去りにされて…。 353 00:30:31,428 --> 00:30:34,128 お便りは ないんですか? 354 00:30:36,099 --> 00:30:41,438 津田様は お忙しいだけじゃ。 きっと もうじき お戻りになります。 355 00:30:41,438 --> 00:30:43,373 お前に何が分かる。 356 00:30:43,373 --> 00:30:46,309 何にも分かりまへん。 ほんでも うっちゃあ➡ 357 00:30:46,309 --> 00:30:50,147 お嬢様と津田様が お幸せになってくれはらんと…。 358 00:30:50,147 --> 00:30:52,947 何で お前が…。 あの…。 359 00:30:54,785 --> 00:30:58,655 うちの思うてることを 言うても よろしいじゃろか? 360 00:30:58,655 --> 00:31:01,124 言うてみなされ。 361 00:31:01,124 --> 00:31:03,126 うっちゃあ 不思議でならんのです。 362 00:31:03,126 --> 00:31:05,962 何で お嬢様は 京へ おいでにならんのかと…。 363 00:31:05,962 --> 00:31:08,198 私が京へ? そうや! 364 00:31:08,198 --> 00:31:10,133 洲本で じりじりしとるぐらいなら➡ 365 00:31:10,133 --> 00:31:14,404 津田様の おそばへおいでになった方が なんぼか ええと思います。 366 00:31:14,404 --> 00:31:19,576 私は 武士の妻です。 勝手な振る舞いは許されません。 367 00:31:19,576 --> 00:31:23,413 何でですか? お嬢様やったら 何でもできるはずや。 368 00:31:23,413 --> 00:31:26,316 京へ行ってくだされ。 369 00:31:26,316 --> 00:31:28,285 お登勢…。 370 00:31:28,285 --> 00:31:33,485 津田様は きっと 待ってはります。 371 00:31:42,766 --> 00:31:45,101 (三田)どうしたもんかな…。 372 00:31:45,101 --> 00:31:49,773 津田の両親には 許しを得ました。 京は 物騒じゃよ。 373 00:31:49,773 --> 00:31:52,442 もとより 覚悟は できています。 374 00:31:52,442 --> 00:31:54,477 いつ また 戦になるか分からん。 375 00:31:54,477 --> 00:32:00,951 そやよって存分に御奉公ができますように 身の回りの世話をしたいんじゃ。 376 00:32:00,951 --> 00:32:05,922 ふっ… もっとも あなたには➡ 377 00:32:05,922 --> 00:32:09,059 なまじ穏やかな春日和よりも➡ 378 00:32:09,059 --> 00:32:14,397 荒れ模様の方が 似合うかもしれませんな。 379 00:32:14,397 --> 00:32:18,902 お願いじゃ。 戦になっても 気遣いは いりません。 380 00:32:18,902 --> 00:32:22,405 武士の妻としての作法は 心得てます。 381 00:32:22,405 --> 00:32:26,276 ただ… 津田君が何と言うか。 382 00:32:26,276 --> 00:32:31,576 知らせずに行きます。 止められると 残念じゃから。 383 00:32:34,017 --> 00:32:36,920 ほて 御使者の趣は? 384 00:32:36,920 --> 00:32:41,424 (儀平)お前らごときに漏らせるか。 早う取り次がんかい。 385 00:32:41,424 --> 00:32:44,928 用も聞かんうちは 取り次げん。 386 00:32:44,928 --> 00:32:46,863 偉そうに ぬかすな! はなたれが…。 387 00:32:46,863 --> 00:32:52,435 ふん! 当家のしきたりを 曲げるわけにはいかん。 388 00:32:52,435 --> 00:32:55,939 ほうか… ほたら言うて聞かせる。 ああ。 389 00:32:55,939 --> 00:33:02,712 今日は 加納家の先代の 祥月命日じゃによって➡ 390 00:33:02,712 --> 00:33:05,048 供養の品を届けに来たんじゃ。 391 00:33:05,048 --> 00:33:07,050 ふん! そんなことか。 392 00:33:07,050 --> 00:33:13,556 そんなこととは 何じゃ。 おはぎが 16も入っとるんやぞ。 393 00:33:13,556 --> 00:33:15,492 おはぎが 16…! 394 00:33:15,492 --> 00:33:19,195 お前に やるんやない。 当家の御隠居に届けるんじゃ。 395 00:33:19,195 --> 00:33:22,565 ふん! 石見銀山 入っとらんやろな? 396 00:33:22,565 --> 00:33:26,436 何 言って…! くだらんことぬかすと お前 そのベロ 引き抜くぞ。 397 00:33:26,436 --> 00:33:29,072 ベロ 引き抜かれたらな 毒味ができへんわい。 398 00:33:29,072 --> 00:33:32,742 貸さんか こら! こら! な… 何や 頭が高いわい こら! 399 00:33:32,742 --> 00:33:37,213 お前な… わしは こう見えてもな 徳島の殿様の 家来の家来やぞ。 400 00:33:37,213 --> 00:33:39,749 お前は 家来の家来の家来やないか! 401 00:33:39,749 --> 00:33:43,620 おはぎ置いて 帰れ! お前…。 汚らわしい 触るな…! 402 00:33:43,620 --> 00:33:46,423 何事じゃ? 403 00:33:46,423 --> 00:33:48,758 お帰りなさいませ。 404 00:33:48,758 --> 00:33:51,661 往来で大声を出すとは 不作法な。 405 00:33:51,661 --> 00:33:54,931 えらい すんまへん。 ほんでも この提灯頭が…。 406 00:33:54,931 --> 00:33:56,866 何やと? この アジの尻尾が! 407 00:33:56,866 --> 00:33:59,102 おやめなされ。 へい。 408 00:33:59,102 --> 00:34:01,037 何の用ですか? 409 00:34:01,037 --> 00:34:04,541 あの… 御法事に お嬢様が お見えにならんので➡ 410 00:34:04,541 --> 00:34:09,045 おはぎを お届けに来ました。 太助に お渡し。 411 00:34:09,045 --> 00:34:11,045 早く…。 412 00:34:13,383 --> 00:34:15,885 儀平…。 へえ。 413 00:34:15,885 --> 00:34:21,691 急なことですが 私は あさって 京へ出立することになったんじゃ。 414 00:34:21,691 --> 00:34:24,194 へっ? 若奥様? 415 00:34:24,194 --> 00:34:28,994 明日 おいとまに伺うからと お伝えしておくれ。 416 00:34:30,734 --> 00:34:34,404 えっ? …へい。 417 00:34:34,404 --> 00:34:36,339 (2人)えっ? 418 00:34:36,339 --> 00:34:39,075 何!? そりゃ まことか? 419 00:34:39,075 --> 00:34:41,978 へえ。 もう この耳で確かに…。 420 00:34:41,978 --> 00:34:48,218 なんというムチャを! 津田家の申しつけじゃろうか? 421 00:34:48,218 --> 00:34:54,591 いいえ お嬢様が じきじきに 三田昂馬様に お願いされたそうで…。 422 00:34:54,591 --> 00:34:58,094 なんとか思いとどまらせんと…。 423 00:34:58,094 --> 00:35:08,371 ♬~ 424 00:35:08,371 --> 00:35:12,242 <とうとう お嬢様が京へ行かはる。➡ 425 00:35:12,242 --> 00:35:17,714 津田様に お会いになるんじゃ。➡ 426 00:35:17,714 --> 00:35:21,184 うれしいか? お登勢。➡ 427 00:35:21,184 --> 00:35:24,184 それとも… 悲しいか?> 428 00:35:29,726 --> 00:35:32,762 ≪(門をたたく音と犬の吠え声) 429 00:35:32,762 --> 00:35:48,411 (門をたたく音と犬の吠え声) 430 00:35:48,411 --> 00:35:52,282 どなた様ですか? ≪俺だ! 431 00:35:52,282 --> 00:35:54,284 オレダ様ですか? 432 00:35:54,284 --> 00:35:56,920 ≪やかましい! ≪(門を蹴る音) 433 00:35:56,920 --> 00:35:59,222 何をするんですか!? 434 00:35:59,222 --> 00:36:03,760 ≪その声は お登勢やな? 435 00:36:03,760 --> 00:36:07,460 あっ… 若旦那様! 436 00:36:09,032 --> 00:36:10,967 くそったれ! 437 00:36:10,967 --> 00:36:14,537 あっ あっ あっ… 危ない! 438 00:36:14,537 --> 00:36:18,174 何事じゃ! 439 00:36:18,174 --> 00:36:21,377 睦太郎ではないか! 全く…。 (睦太郎のいびき) 440 00:36:21,377 --> 00:36:25,048 ば…! ほれ! おいおいおい しっかりせんか! 441 00:36:25,048 --> 00:36:28,551 あ~! まあ こんなになるまで… おい!➡ 442 00:36:28,551 --> 00:36:31,054 大丈夫か? お登勢… 大丈夫か?➡ 443 00:36:31,054 --> 00:36:35,354 おい! あ~…。 (いびき) 444 00:36:39,395 --> 00:36:42,432 また 志津のわがままじゃと お思いでしょうが➡ 445 00:36:42,432 --> 00:36:44,567 許してくだされ。 446 00:36:44,567 --> 00:36:50,073 許すも何も お前は津田家の嫁じゃ。 447 00:36:50,073 --> 00:36:55,211 向こうが よいと言うのなら わしに 言うことは何もない。 448 00:36:55,211 --> 00:36:58,081 ありがとうございます。 449 00:36:58,081 --> 00:37:01,417 体に 気を付けるんやで。 450 00:37:01,417 --> 00:37:03,753 はい。 451 00:37:03,753 --> 00:37:05,722 早う いね。 452 00:37:05,722 --> 00:37:08,591 お兄様が お戻りやと 聞きましたんやが…。 453 00:37:08,591 --> 00:37:12,562 はあ… 会わん方がよかろう。 (志津)何でじゃろ? 454 00:37:12,562 --> 00:37:18,268 睦太郎は 負け戦がこたえて だいぶ 荒れておる。 455 00:37:18,268 --> 00:37:21,538 「負け戦 負け戦」と言うな! 456 00:37:21,538 --> 00:37:25,041 ゆうべは酔い潰れて 高いびきじゃ。 457 00:37:25,041 --> 00:37:28,912 (市左衛門)起きてこんうちに 早う帰れ。 458 00:37:28,912 --> 00:37:31,714 二度と会えんかもしれません。 459 00:37:31,714 --> 00:37:35,014 お前は この家を捨てた娘やないか。 460 00:37:37,587 --> 00:37:40,390 (はま)睦太郎! 461 00:37:40,390 --> 00:37:46,196 おはようございます。 ゆうべは ご迷惑をかけました。 462 00:37:46,196 --> 00:37:49,996 お兄様 御機嫌よろしゅう。 463 00:37:55,738 --> 00:38:00,738 志津は お前に 謝りたいそうじゃ。 464 00:38:02,412 --> 00:38:06,015 御無礼の数々は お許しくだされ。 465 00:38:06,015 --> 00:38:11,888 お兄様には 後足で 砂をかけるようなことをいたしました。 466 00:38:11,888 --> 00:38:14,357 苦労しているそうやな。 467 00:38:14,357 --> 00:38:17,160 (市左衛門) 親の言うことを聞かんからじゃ。 468 00:38:17,160 --> 00:38:21,864 京へ行くと聞いたが…。 はい。 469 00:38:21,864 --> 00:38:28,037 結構な話や。 どうやら お前は 賭けに勝ったらしい。 470 00:38:28,037 --> 00:38:30,540 津田は 出世するじゃろう。 471 00:38:30,540 --> 00:38:33,376 お前は 思いどおりの暮らしが できるかもしれん。 472 00:38:33,376 --> 00:38:35,311 それは まだ分からん。 473 00:38:35,311 --> 00:38:37,880 (睦太郎)父上…。 うん? 474 00:38:37,880 --> 00:38:42,180 恐れ入りますが 志津と2人にしてくだされ。 475 00:38:43,753 --> 00:38:48,953 大丈夫じゃ。 睦太郎は大人になりました。 476 00:38:51,060 --> 00:38:53,060 よかろう。 477 00:39:13,683 --> 00:39:19,555 俺は ゆうべ どこへ行ってたと思う? さあ…? 478 00:39:19,555 --> 00:39:22,692 多村慎吾のところや。 479 00:39:22,692 --> 00:39:26,529 兄として 妹の背信をわびてきたんじゃ。 480 00:39:26,529 --> 00:39:29,032 申し訳ありません。 481 00:39:29,032 --> 00:39:33,036 ところが多村は お前を褒めた。 482 00:39:33,036 --> 00:39:40,643 勤皇派の未来が明るいと見るや 機敏に津田を選んだ賢さをな。 483 00:39:40,643 --> 00:39:46,382 分かるか。 多村は皮肉を言うたんやぞ。 484 00:39:46,382 --> 00:39:50,253 お兄様は いかがじゃ? (睦太郎)何が? 485 00:39:50,253 --> 00:39:55,253 徳島藩の未来に 不安は ないんじゃろか? 486 00:39:57,393 --> 00:40:01,264 本音を言えば 不安だらけや。 487 00:40:01,264 --> 00:40:06,903 必ず勝つと信じてた幕府軍が ものの見事に潰されたんじゃからな。 488 00:40:06,903 --> 00:40:09,739 今からでも遅うはないんじゃ。 489 00:40:09,739 --> 00:40:15,411 お兄様たちが率先して 徳島藩を尊皇倒幕に導くべきや。 490 00:40:15,411 --> 00:40:18,314 それは 殿が お決めになることじゃ。 491 00:40:18,314 --> 00:40:22,752 加納睦太郎の命は 殿に お預けしてある。 492 00:40:22,752 --> 00:40:26,589 雲行きが怪しゅうなったからというて➡ 493 00:40:26,589 --> 00:40:30,589 お前のように 節を曲げることはできん。 494 00:40:42,772 --> 00:40:45,072 お嬢様。 495 00:40:50,646 --> 00:40:55,118 どうぞ お達者で…。 ありがとう。 496 00:40:55,118 --> 00:40:58,788 心配すな。 わしが京まで お供するんじゃ。 497 00:40:58,788 --> 00:41:00,723 お願いします。 498 00:41:00,723 --> 00:41:07,397 旦那様には お前からも よろしゅうにと申し上げておきます。 499 00:41:07,397 --> 00:41:12,697 私が 京に行けるんは お登勢の励ましのおかげじゃからね。 500 00:41:15,071 --> 00:41:17,371 お嬢様…。 501 00:41:21,944 --> 00:41:24,244 (志津)何や? 502 00:41:28,084 --> 00:41:31,087 今度こそ…➡ 503 00:41:31,087 --> 00:41:35,958 今度こそ 津田様を➡ 504 00:41:35,958 --> 00:41:38,728 しっかりと つかまえてくだされ。 505 00:41:38,728 --> 00:42:30,413 ♬~ 506 00:42:30,413 --> 00:42:34,750 うっちゃあ お嬢様のことが心配でならんのや。 507 00:42:34,750 --> 00:42:37,587 加納家には 加納家の面目があるんじゃ! 508 00:42:37,587 --> 00:42:42,758 刀に懸けても 離縁はさせんからな! 509 00:42:42,758 --> 00:42:47,663 ええじゃないか ええじゃないか…。 志津は もともと私と結婚したのではない。 510 00:42:47,663 --> 00:42:51,100 勤皇派の未来と結婚したんじゃ。 511 00:42:51,100 --> 00:42:53,100 そんなアホな! 512 00:42:54,770 --> 00:42:59,070 何でや? お嬢様…。 何があったんですか?