1 00:00:10,146 --> 00:00:13,283 (玉太郎) <3つのことを言うとかんならん。➡ 2 00:00:13,283 --> 00:00:17,954 幕府を倒した新政府は 江戸城へ 天子様をお移しして➡ 3 00:00:17,954 --> 00:00:23,826 東京城と改めた。 ついでに 慶応4年は 明治元年になった。➡ 4 00:00:23,826 --> 00:00:29,432 将軍様の世の中は とうとう ひっくり返ってしもうたんや。➡ 5 00:00:29,432 --> 00:00:34,971 2つ目は あれほど ごたくり回して 津田様に輿入れなさった お嬢様が➡ 6 00:00:34,971 --> 00:00:38,007 2年も たたぬうちに 夫婦別れして➡ 7 00:00:38,007 --> 00:00:43,446 今度は 公家侍の 佐伯織部様と ひっついてしもうたことや。➡ 8 00:00:43,446 --> 00:00:48,284 怒った旦那様に勘当されたのも 無理ないこっちゃ。➡ 9 00:00:48,284 --> 00:00:54,190 3つ目は 徳島の若旦那様が お登勢に 結婚を申し込んだこと。➡ 10 00:00:54,190 --> 00:00:58,661 一方 お登勢の慕う津田様は 洲本へ戻ってきたものの➡ 11 00:00:58,661 --> 00:01:03,333 からっきし 元気がなかった> 12 00:01:03,333 --> 00:01:15,278 ♬~ (テーマ音楽) 13 00:01:15,278 --> 00:01:20,950 (お登勢)愛は 何で こんなに悲しい顔しているんやろ…。 14 00:01:20,950 --> 00:02:49,250 ♬~ 15 00:02:50,940 --> 00:02:56,846 <明治2年5月 幕府方最後の拠点 箱館の五稜郭が落城して➡ 16 00:02:56,846 --> 00:03:01,146 日本全土が 天子様の御領地になった> 17 00:03:06,255 --> 00:03:08,191 ハンセキ ホウカン? 18 00:03:08,191 --> 00:03:12,929 (はま)つまり お大名は皆 天子様に 領地をお返しして➡ 19 00:03:12,929 --> 00:03:14,864 お代官になるんじゃ。 20 00:03:14,864 --> 00:03:18,601 (儀平)お代官? 禄高は これまでの1割。 21 00:03:18,601 --> 00:03:24,407 徳島のお殿様は 25万石から たったの2万5, 000石に減らされる。 22 00:03:24,407 --> 00:03:26,342 あちゃ~! 23 00:03:26,342 --> 00:03:30,947 藩士は ほら この書きつけにあるとおり➡ 24 00:03:30,947 --> 00:03:33,282 1等給の 1, 000石から➡ 25 00:03:33,282 --> 00:03:37,286 8等給の 3人扶持 8石に分けられる。 26 00:03:37,286 --> 00:03:42,291 旦那様は 4等給やから 36石から40石の間。 27 00:03:42,291 --> 00:03:44,961 ほな 今までの半分! 28 00:03:44,961 --> 00:03:51,634 お殿様でさえ お城を出られて 南浜の御別邸に お移りになったんじゃ。 29 00:03:51,634 --> 00:03:57,507 お前たちも 腹をくくって 諸事倹約に努めること。 30 00:03:57,507 --> 00:04:01,644 かしこまりました。 ほな… また あれを? 31 00:04:01,644 --> 00:04:06,482 アホ! お前の貼ったうちわは 使いものにならん。 32 00:04:06,482 --> 00:04:09,452 せいぜい 物を壊さんようにしなされ。 33 00:04:09,452 --> 00:04:11,454 へえ。 34 00:04:11,454 --> 00:04:13,454 ほな…。 35 00:04:17,126 --> 00:04:20,129 これでも 藩士は いい方じゃ。 36 00:04:20,129 --> 00:04:26,269 浅葱者は 侍の身分さえ失うた。 えっ? 37 00:04:26,269 --> 00:04:29,939 御城代のほかは 皆 足軽じゃ。 38 00:04:29,939 --> 00:04:35,411 三田昂馬殿も 津田 貢殿も…。 39 00:04:35,411 --> 00:04:39,282 何でですか? 勤皇派が 幕府を倒したのに…。 40 00:04:39,282 --> 00:04:44,582 なんぼ 勤皇派でも 又家来は又家来じゃ。 41 00:04:50,893 --> 00:04:55,832 (内藤)足軽ではない。 卒族じゃ。 (丹羽)卒族? 42 00:04:55,832 --> 00:05:01,137 (内藤)朝廷のお達しでは 大名を華族とし その家臣を士族とする。 43 00:05:01,137 --> 00:05:04,106 士族の家来は 卒族と称する。 44 00:05:04,106 --> 00:05:07,743 それは すなわち 足軽ではないんか? そうじゃ! 45 00:05:07,743 --> 00:05:11,380 (藤木)最も耐えられんのは 稲田家臣が 家禄を失い➡ 46 00:05:11,380 --> 00:05:15,084 本藩から 個々に扶持米を支給されること。 (荒木)ほんまか? 47 00:05:15,084 --> 00:05:20,756 ほんまじゃ。 我々 3, 000人は 本藩の士族の下に組み込まれるんや! 48 00:05:20,756 --> 00:05:22,692 (三善)そんなアホな! (荒木)理屈が通らん! 49 00:05:22,692 --> 00:05:25,094 ほんまに 新政府は そないなことするつもりか? 50 00:05:25,094 --> 00:05:28,965 (六車)我々が 勤皇の志を抱き 江戸や奥州路まで戦いに行ったんは➡ 51 00:05:28,965 --> 00:05:33,269 何のためじゃ!? 幕府を倒して 浅葱者の屈辱を晴らし➡ 52 00:05:33,269 --> 00:05:35,771 藩士と同等の地位を 得んがためではなかったんかいな! 53 00:05:35,771 --> 00:05:39,275 (丹羽)これでは新政府に裏切られたとしか 言いようがない! 54 00:05:39,275 --> 00:05:41,210 ほうじゃ! (三善)断じて許せん! 55 00:05:41,210 --> 00:05:47,149 (三田)静かにせい! 我々は あくまでも稲田家の家臣じゃ。➡ 56 00:05:47,149 --> 00:05:49,785 そやから 扶持米も 稲田家から もらう。➡ 57 00:05:49,785 --> 00:05:55,424 そやないと 徳島藩からの分藩独立は 永久に望めんのじゃ。 58 00:05:55,424 --> 00:05:57,360 そうじゃ! 59 00:05:57,360 --> 00:06:01,797 稲田家は 蜂須賀家の家臣やない。 客分である。➡ 60 00:06:01,797 --> 00:06:05,234 たとえ 飢えて死ぬるとも 本藩からの扶持米は➡ 61 00:06:05,234 --> 00:06:09,234 決して 受けはせんぞ! (一同)おう! 62 00:06:12,575 --> 00:06:15,611 <淡路の稲田家は 徳島本藩に➡ 63 00:06:15,611 --> 00:06:22,919 家臣の士族待遇を求める嘆願書を 2度出して 2度とも突き返された。➡ 64 00:06:22,919 --> 00:06:28,257 明治2年11月 徳島藩の御家老 寺沢甚内様は➡ 65 00:06:28,257 --> 00:06:35,131 洲本吟味役 加納市左衛門様を 徳島城内の役宅に召し出された> 66 00:06:35,131 --> 00:06:37,600 (睦太郎)ほう 江戸へ? 67 00:06:37,600 --> 00:06:39,635 (市左衛門)いやはや 驚いた。 68 00:06:39,635 --> 00:06:43,272 この年になって 江戸詰めを命じられるとは。 69 00:06:43,272 --> 00:06:45,207 (陸太郎)して お役目は? 70 00:06:45,207 --> 00:06:48,945 あ~ 詳しゅうは 聞いとらんが➡ 71 00:06:48,945 --> 00:06:53,115 稲田家の分藩独立を 差し止めるためらしい。 72 00:06:53,115 --> 00:06:58,421 ははあ… それで 察しがつきました。 うん? 73 00:06:58,421 --> 00:07:02,792 父上のお役目は 東久世通禧の 外交方やろう。 74 00:07:02,792 --> 00:07:05,227 東久世? 75 00:07:05,227 --> 00:07:11,100 ご存じやろうか? 東久世の懐刀は 佐伯織部です。 76 00:07:11,100 --> 00:07:13,369 あっ…。 77 00:07:13,369 --> 00:07:17,239 父上は 志津とのつながりで 佐伯織部を利用し➡ 78 00:07:17,239 --> 00:07:20,242 東久世に取り入ることができますわな。 79 00:07:20,242 --> 00:07:23,045 志津は 勘当した。 加納家とは 無縁じゃ。 80 00:07:23,045 --> 00:07:28,250 そうは いきませんで。 藩は 何としてでも手づるをつかみたいんです。 81 00:07:28,250 --> 00:07:30,586 儀平! (儀平)へえ。 裃を持ってこい! 82 00:07:30,586 --> 00:07:32,521 へ… へえ。 どうなさるんじゃ? 83 00:07:32,521 --> 00:07:35,925 知れたことじゃ。 これより 寺沢様のお役宅へ戻り➡ 84 00:07:35,925 --> 00:07:37,960 きっぱりと お役目をお断りしてくる! 85 00:07:37,960 --> 00:07:42,398 父上! 大体 徳島藩の御家老ともあろうお人が➡ 86 00:07:42,398 --> 00:07:46,268 そんな姑息な手段で 公に取り入るとは情けない。 87 00:07:46,268 --> 00:07:48,771 わしは 断固として お諫めしてくる! 88 00:07:48,771 --> 00:07:51,674 徳島藩には ほかに 手づるがないんじゃ。 89 00:07:51,674 --> 00:07:57,780 もし 稲田家の分藩独立を許したら 徳島藩の面目が立ちません。 90 00:07:57,780 --> 00:08:01,617 勘当した娘に 頭を下げるわけにはいかん! 91 00:08:01,617 --> 00:08:06,355 勘当を取り消せばよいではありませんか。 92 00:08:06,355 --> 00:08:09,558 たわけたことを言うな。 93 00:08:09,558 --> 00:08:13,062 痩せても枯れても 加納市左衛門は 武士じゃ。 94 00:08:13,062 --> 00:08:16,565 志津の手づるで 太鼓持ちのまねはできん! 95 00:08:16,565 --> 00:08:18,601 主命に背くは 不忠じゃ。 96 00:08:18,601 --> 00:08:22,438 わしは 吟味方じゃ。 外交方は向かん! 97 00:08:22,438 --> 00:08:25,938 召し放ちになってもいいんですか!? 98 00:08:28,577 --> 00:08:33,277 浪人は… 覚悟の上じゃ。 99 00:08:38,921 --> 00:08:43,259 どうか 考えを直してくだされ。 100 00:08:43,259 --> 00:08:48,597 そのお年で禄を離れては 野たれ死にや。 101 00:08:48,597 --> 00:08:54,403 ここは我慢して 藩のため 主君のため 立派に お役目を果たしたら➡ 102 00:08:54,403 --> 00:08:58,274 父上の御出世は 間違いないんじゃ。 103 00:08:58,274 --> 00:09:02,274 母上も どんなに お喜びなさることか。 104 00:09:05,881 --> 00:09:08,551 <さあ 加納家は えらいことになった。➡ 105 00:09:08,551 --> 00:09:15,424 奉公人も引き連れて 江戸… やなかった 東京へ引っ越しじゃ> 106 00:09:15,424 --> 00:09:18,227 儀平さん 奥方様のは これで しまいです。 107 00:09:18,227 --> 00:09:21,564 ああ そうか。 よいしょ! ほな あとは お登勢のだけやな。 108 00:09:21,564 --> 00:09:23,564 へえ。 109 00:09:27,236 --> 00:09:36,245 はあ… お役目とはいえ この年で 洲本を離れるとは思わなんだ。 110 00:09:36,245 --> 00:09:40,583 ほんに 島流しのような心持ちじゃ。 111 00:09:40,583 --> 00:09:44,253 江戸は 京よりも 遠いんですかいな? 112 00:09:44,253 --> 00:09:50,760 当たり前じゃ! 船で まっすぐに行っても 6日か7日は かかる。 113 00:09:50,760 --> 00:09:52,795 え~っ! 114 00:09:52,795 --> 00:09:58,400 淡路より ずっと さぶいらしいし 難儀なことや。 115 00:09:58,400 --> 00:10:03,606 ほんでも きっと お嬢様に 会えますやろ。 116 00:10:03,606 --> 00:10:07,476 旦那様が お許しになりませんのや。 117 00:10:07,476 --> 00:10:10,379 何でですの? 118 00:10:10,379 --> 00:10:19,622 勘当した娘じゃ。 旦那様の前では 志津の「し」の字も 言うてはならん。 119 00:10:19,622 --> 00:10:22,525 ややこしいこっちゃ…。 120 00:10:22,525 --> 00:10:27,496 こら お登勢! 何を ぐずぐずしよんねん。 早う お前の荷物 まとめてこんかい。 121 00:10:27,496 --> 00:10:29,696 へえ! 122 00:10:57,326 --> 00:11:00,162 お前 そんなものを 江戸まで持っていく気かえ? 123 00:11:00,162 --> 00:11:03,662 すんまへん。 親の形見じゃよって。 124 00:11:14,276 --> 00:11:18,147 お登勢…。 へえ。 125 00:11:18,147 --> 00:11:22,017 お前に聞きたいことがある。 へえ。 126 00:11:22,017 --> 00:11:30,817 旦那様のお話では 睦太郎が お前を妻にしたいと言うたそうじゃな。 127 00:11:34,597 --> 00:11:38,300 やはり そやったんか。 128 00:11:38,300 --> 00:11:41,203 へえ。 129 00:11:41,203 --> 00:11:45,975 まさか… 睦太郎と 契りを結んだのではあるまいな? 130 00:11:45,975 --> 00:11:48,811 いいえ めっそうもない! 131 00:11:48,811 --> 00:11:52,448 それなら よいが…。 132 00:11:52,448 --> 00:11:58,988 今の睦太郎は 心が すさんでおる。 そら そうじゃろう。 133 00:11:58,988 --> 00:12:02,324 以前は 幕府について 長州と戦い➡ 134 00:12:02,324 --> 00:12:06,762 今度は 官軍について 幕府と戦うたんじゃ。 135 00:12:06,762 --> 00:12:10,933 これでは 何が正義か 分からんようになりますわな。 136 00:12:10,933 --> 00:12:15,933 頼りのうて 藁をもつかむ 気持ちになりますわな。 137 00:12:18,274 --> 00:12:23,779 ほんなけんど なんぼ 世の中が変わっても➡ 138 00:12:23,779 --> 00:12:27,950 人には 生まれついての 身分というものがある。➡ 139 00:12:27,950 --> 00:12:30,619 志津を見たら分かるように➡ 140 00:12:30,619 --> 00:12:34,290 身分違いの縁組みは不幸せのもとじゃ。 141 00:12:34,290 --> 00:12:37,960 うっちゃあ そんなこと 夢にも思うてません。 142 00:12:37,960 --> 00:12:40,629 ほんまか? ほんまじゃ。 143 00:12:40,629 --> 00:12:45,501 睦太郎が どない言うても きっぱり断ってくれるな。 144 00:12:45,501 --> 00:12:48,304 断りますわいな。 145 00:12:48,304 --> 00:12:54,810 はあ… それを聞いて 安心した。 146 00:12:54,810 --> 00:13:00,683 あっ… きっと埋め合わせはするよってな。 埋め合わせ? 147 00:13:00,683 --> 00:13:07,883 お前に ふさわしい嫁ぎ先を 必ず見つけてあげますわいな。 148 00:13:12,928 --> 00:13:18,228 (戸の開閉音) 149 00:13:20,269 --> 00:13:24,773 <加納一家を乗せた船が 洲本の港を船出したのは➡ 150 00:13:24,773 --> 00:13:28,644 11月の半ばじゃった。➡ 151 00:13:28,644 --> 00:13:32,514 船は 夕方になって 大坂に着いたが➡ 152 00:13:32,514 --> 00:13:39,621 熊野灘が荒れとったもんで その夜は 潮待ちになった。➡ 153 00:13:39,621 --> 00:13:44,621 思いも寄らんことが起きたのは その翌朝じゃった> 154 00:13:46,962 --> 00:13:51,834 やれやれ…。 はあ~ 疲れましたねえ…。 155 00:13:51,834 --> 00:13:54,703 お登勢。 へえ。 お茶を頼む。 156 00:13:54,703 --> 00:13:58,503 すんまへん。 今 お湯を もろてきますよって。 157 00:14:06,315 --> 00:14:08,250 あっ…。 ああ これ…。 158 00:14:08,250 --> 00:14:10,250 すんまへん。 159 00:14:27,936 --> 00:14:32,408 (貢)これは 意外なところで お目にかかるもんじゃ。 160 00:14:32,408 --> 00:14:37,946 どちらへ お越しですか? 江戸に決まっておる。 161 00:14:37,946 --> 00:14:41,784 御一家で…。 それが どうしたんじゃ。 162 00:14:41,784 --> 00:14:44,820 私も 東京へ行きます。 163 00:14:44,820 --> 00:14:47,956 三田昂馬殿の お供やな。 164 00:14:47,956 --> 00:14:52,828 いや 三田様は先発なされました。 165 00:14:52,828 --> 00:14:56,328 分藩独立の陳情か。 166 00:14:59,301 --> 00:15:05,574 お主らは 見苦しく騒ぎ立てて 徳島藩を潰す気か! 167 00:15:05,574 --> 00:15:11,747 お言葉ですのやが 徳島藩を 潰そうとしたんは藩士の方々じゃ! 168 00:15:11,747 --> 00:15:13,747 何を言うか! 169 00:15:19,254 --> 00:15:22,254 しょうがありませんな。 170 00:15:29,264 --> 00:15:34,264 私は 艫の方へ退散します。 御免。 171 00:15:37,139 --> 00:15:40,776 浅葱者の思いどおりにはさせんぞ。 172 00:15:40,776 --> 00:15:52,955 ♬~ 173 00:15:52,955 --> 00:15:56,625 ふん! 礼儀知らずめが…。 174 00:15:56,625 --> 00:16:10,739 ♬~ 175 00:16:10,739 --> 00:16:22,918 (船の きしむ音) 176 00:16:22,918 --> 00:16:25,218 はあ…。 177 00:16:27,789 --> 00:16:41,603 (波の音) 178 00:16:41,603 --> 00:16:46,403 危ないで… 海へ落ちなや。 はい。 179 00:17:03,859 --> 00:17:12,234 ♬~ 180 00:17:12,234 --> 00:17:14,169 登勢…。 181 00:17:14,169 --> 00:17:34,923 ♬~ 182 00:17:34,923 --> 00:17:36,923 (物音) 183 00:17:39,795 --> 00:17:42,798 津田様…。 184 00:17:42,798 --> 00:17:44,798 お登勢か。 185 00:17:46,535 --> 00:17:49,771 お前も 東京へ行くんじゃな。 186 00:17:49,771 --> 00:17:52,274 はい。 187 00:17:52,274 --> 00:17:56,144 いつまで加納家に 奉公するつもりや。 188 00:17:56,144 --> 00:17:59,948 分かりまへん。 189 00:17:59,948 --> 00:18:01,948 (船が揺れる音) 190 00:18:08,223 --> 00:18:10,523 すんまへん。 191 00:18:18,233 --> 00:18:20,733 嫁には 行かんのか? 192 00:18:25,107 --> 00:18:31,246 お前が嫁に行かんのは 私のせいじゃと 志津は言うた。 193 00:18:31,246 --> 00:18:34,149 えっ? 194 00:18:34,149 --> 00:18:40,255 舞中島のことで 私を責めているんか? 195 00:18:40,255 --> 00:18:42,555 いえ そんな…。 196 00:18:47,129 --> 00:18:53,829 私は 何もかも忘れたい。 過ぎたことは 何もかも…。 197 00:19:01,276 --> 00:19:03,945 津田様…。 198 00:19:03,945 --> 00:19:21,229 ♬~ 199 00:19:21,229 --> 00:19:27,569 <船が東京に着いたんは 9日目の夕方じゃった。➡ 200 00:19:27,569 --> 00:19:31,440 お登勢は 船着き場で ちらりと 津田様を見かけたが➡ 201 00:19:31,440 --> 00:19:36,912 もちろん 言葉は交わさずじまいや。➡ 202 00:19:36,912 --> 00:19:41,583 築地の鉄砲洲から 鍛冶橋御門までは なんぼもないけんど➡ 203 00:19:41,583 --> 00:19:46,254 町は寂れ切って 真っ暗やった。 それも そのはずじゃ➡ 204 00:19:46,254 --> 00:19:51,093 将軍様が 静岡に御隠居されて お旗本が おらんようになり➡ 205 00:19:51,093 --> 00:19:57,399 参勤交代も のうなって お大名たちは 皆 国元へ引き揚げたんや。➡ 206 00:19:57,399 --> 00:20:02,399 なんと 東京の8割方は無人地帯じゃ> 207 00:20:04,172 --> 00:20:07,609 <徳島藩上屋敷は鍛冶橋辺り。➡ 208 00:20:07,609 --> 00:20:11,279 あてがわれた御長屋は荒れ放題で➡ 209 00:20:11,279 --> 00:20:15,279 御近所は みんな 空き家じゃった> 210 00:20:17,619 --> 00:20:25,494 ≪(猫の鳴き声) 211 00:20:25,494 --> 00:20:28,296 うえ~…。 (儀平)うわっ! 212 00:20:28,296 --> 00:20:31,633 ここ ほんまに江戸かいな…。 213 00:20:31,633 --> 00:20:36,438 うわっ うわっ…。 花のお江戸は お化け屋敷かいな…。 214 00:20:36,438 --> 00:20:38,373 えらいとこ 来てしもうたな…。 215 00:20:38,373 --> 00:20:42,144 ほんまに 世の中 ひっくり返ったんやね。 216 00:20:42,144 --> 00:20:45,447 あら? あっ… くっ…。 217 00:20:45,447 --> 00:20:48,150 開かんか? くっ…。 218 00:20:48,150 --> 00:20:50,452 (せきこみ) 219 00:20:50,452 --> 00:20:53,989 痛っ… いたたたた…! 220 00:20:53,989 --> 00:21:11,273 ♬~ 221 00:21:11,273 --> 00:21:15,973 (せきこみ) 222 00:21:19,147 --> 00:21:24,419 <翌日 江戸藩邸に御出仕なされた旦那様は➡ 223 00:21:24,419 --> 00:21:29,719 間もなく 苦りきったお顔で 御帰宅なされた> 224 00:21:32,160 --> 00:21:35,460 困ったことになった…。 225 00:21:37,966 --> 00:21:45,640 東京では 稲田の評判が ずっとええ。 我が藩は 分が悪い。 226 00:21:45,640 --> 00:21:51,980 妙なお話じゃこと。 この度の処置は 新政府の方針のはずや。 227 00:21:51,980 --> 00:21:56,151 藩は それに従い 稲田方は 不服を唱えていますのに…。 228 00:21:56,151 --> 00:22:03,658 理屈はそうじゃ。 しかし 向こうは 勤皇稲田で通っておる。 229 00:22:03,658 --> 00:22:08,263 宮中や政府への出入りも 意のままじゃ。 230 00:22:08,263 --> 00:22:11,166 こっちは 冷とう あしらわれる。 231 00:22:11,166 --> 00:22:14,936 はがいたらしいこと…。 232 00:22:14,936 --> 00:22:18,607 御家老の星合様も仰せやった。 233 00:22:18,607 --> 00:22:25,280 一刻も早う… 佐伯織部に会えと。 234 00:22:25,280 --> 00:22:29,150 ごもっともなことや。 う… うむ…。 235 00:22:29,150 --> 00:22:34,956 さて… そこでじゃ。 236 00:22:34,956 --> 00:22:37,626 はあ? う… うむ…。 237 00:22:37,626 --> 00:22:42,797 なんぼなんでも いきなり わしから 訪ねていくわけには いかんじゃろ? 238 00:22:42,797 --> 00:22:44,833 何ででございます? 239 00:22:44,833 --> 00:22:51,439 門前払いを食わされたら 武士の面目が立たんやないか。 240 00:22:51,439 --> 00:22:58,647 そこでじゃ… お前が まず 志津に会うてじゃ➡ 241 00:22:58,647 --> 00:23:01,550 探りを入れてくれんかの。 242 00:23:01,550 --> 00:23:07,088 は~ん 志津に頭を下げるんが 嫌なんじゃね? 243 00:23:07,088 --> 00:23:09,991 ものには 順序というものがあるじゃろうが。 244 00:23:09,991 --> 00:23:14,829 ここまで来ても まだ そんなことを! 245 00:23:14,829 --> 00:23:18,266 わしの気持ちも察してくれんか…。 246 00:23:18,266 --> 00:23:20,266 (ため息) 247 00:23:31,279 --> 00:23:36,418 いや~ 竜宮城のようじゃなあ。 248 00:23:36,418 --> 00:23:38,486 キョロキョロしな。 みっともない。 249 00:23:38,486 --> 00:23:40,486 へえ すんまへん。 250 00:23:49,431 --> 00:23:57,631 (時報) 251 00:24:01,176 --> 00:24:05,246 奥様は ただいま お見えになります。 あっ そう。 252 00:24:05,246 --> 00:24:07,546 どうぞ こちらへ。 253 00:24:09,918 --> 00:24:14,618 お掛けくださいませ。 あっ そう。 254 00:24:22,263 --> 00:24:24,199 あなた様も どうぞ。 255 00:24:24,199 --> 00:24:28,403 うちは お供ですよって…。 でも そこは…。 256 00:24:28,403 --> 00:24:31,940 奉公人が そんな高いとこ座ったら 罰が当たります。 257 00:24:31,940 --> 00:24:34,843 (志津)まあ お母様…。 258 00:24:34,843 --> 00:24:37,612 志津! 259 00:24:37,612 --> 00:24:40,281 ようこそ おいであそばしました。 260 00:24:40,281 --> 00:24:42,617 お前 そのなりは…。 261 00:24:42,617 --> 00:24:46,287 そんな きつねにつままれたような お顔を なさらなくても…。 262 00:24:46,287 --> 00:24:50,792 どうです? 似合うでしょ? 263 00:24:50,792 --> 00:24:53,695 まあ お登勢! 264 00:24:53,695 --> 00:24:55,664 お懐かしゅうございます。 265 00:24:55,664 --> 00:25:00,301 何をしてるの? そんなところで。 さっ ここに お掛けなさい。 266 00:25:00,301 --> 00:25:05,140 いえ うちは…。 床に座るのは 不作法なのよ。 267 00:25:05,140 --> 00:25:08,340 えっ? さあ…。 268 00:25:16,251 --> 00:25:20,121 私は お父様だけが おいでになるのかと 思ってました。 269 00:25:20,121 --> 00:25:25,260 まさか お母様や登勢まで 東京に来るとは 本当に思いがけない。 270 00:25:25,260 --> 00:25:30,260 お前も達者で安心しました。 271 00:25:37,272 --> 00:25:39,272 お登勢…。 272 00:25:44,145 --> 00:25:46,414 船旅は いかがでした? 273 00:25:46,414 --> 00:25:48,783 もう疲れましたわいな…。 274 00:25:48,783 --> 00:25:54,589 そうそう! 船というたら 津田殿が大坂から乗り合わせて…。 275 00:25:54,589 --> 00:25:56,524 まあ。 276 00:25:56,524 --> 00:26:03,298 身の程知らずが。 稲田方を代表して 分藩独立を訴えるとか…。 277 00:26:03,298 --> 00:26:07,235 そうでしょうね。 先ほど 貢さんは ここに来ました。 278 00:26:07,235 --> 00:26:09,237 ええっ!? 279 00:26:09,237 --> 00:26:12,741 でも 佐伯も留守ですし 私も会いませんでしたけど。 280 00:26:12,741 --> 00:26:15,376 まあ ずうずうしい男じゃ! 281 00:26:15,376 --> 00:26:19,247 離別した妻のところへ ものを頼みに来るとは。 282 00:26:19,247 --> 00:26:22,150 貢さんたちも 立つ瀬がないでしょうね。 283 00:26:22,150 --> 00:26:27,388 やっと自分たちの世の中が来たと思いきや 武士の身分を失うとは…。 284 00:26:27,388 --> 00:26:30,091 (はま)それは お上の定めたことじゃ。 285 00:26:30,091 --> 00:26:37,265 ところが 有栖川宮様も 岩倉大納言様も 稲田家に同情しています。 286 00:26:37,265 --> 00:26:41,136 まあ… よう聞いておくれ。 287 00:26:41,136 --> 00:26:45,607 お父様が 江戸藩邸詰めを仰せつけられたんは➡ 288 00:26:45,607 --> 00:26:49,410 東久世を藩の味方につけたいからや。 289 00:26:49,410 --> 00:26:52,614 それは察しておりました。 290 00:26:52,614 --> 00:26:58,119 お前から 佐伯様に よう とりなしてもらいたいんじゃ。 291 00:26:58,119 --> 00:27:01,990 さあ… それは 佐伯が どう言いますか…。 292 00:27:01,990 --> 00:27:05,360 稲田方の言いなりになっては 困るんじゃ。 293 00:27:05,360 --> 00:27:11,065 お母様 難しいお話は あとにして 一緒にお食事でも…。 294 00:27:11,065 --> 00:27:14,903 お食事? 今日は 牛鍋を ごちそういたしますわ。 295 00:27:14,903 --> 00:27:16,903 牛…!? 296 00:27:18,573 --> 00:27:21,376 <数日後 加納家の旦那様は➡ 297 00:27:21,376 --> 00:27:27,582 北海道開拓使庁の 東京出張所に呼び出された。➡ 298 00:27:27,582 --> 00:27:35,382 佐伯様のお仕えする東久世通禧は 北海道開拓使の長官なんじゃ> 299 00:27:42,597 --> 00:27:48,269 (佐伯)いや~ お待たせしましたね。 私が佐伯織部です。 300 00:27:48,269 --> 00:27:54,142 徳島藩士族 加納市左衛門と申します。 301 00:27:54,142 --> 00:27:56,611 何とぞ お見知りおきを…。 302 00:27:56,611 --> 00:27:59,948 お父上と 申さねばならぬところでしょうが➡ 303 00:27:59,948 --> 00:28:04,552 まあ 勘弁していただく。 急には不自然ですからね。 304 00:28:04,552 --> 00:28:10,225 仰せ ごもっとも至極。 お気遣いには及びません。 305 00:28:10,225 --> 00:28:15,363 志津から あらましは聞きました。 はあ…。 306 00:28:15,363 --> 00:28:19,901 (佐伯)だが もう遅い。 手遅れです。 307 00:28:19,901 --> 00:28:21,836 何やと? 308 00:28:21,836 --> 00:28:27,775 稲田方は 夏の間から 宮家や政府の高官に働きかけています。 309 00:28:27,775 --> 00:28:35,917 その儀は 僭越至極… 稲田家は 徳島藩の家臣でございます。 310 00:28:35,917 --> 00:28:40,388 ふう… 率直に私の意見を 言わせてもらいますよ。 311 00:28:40,388 --> 00:28:47,161 稲田家の分藩独立を阻止するには 特例を認めるしかありませんね。 312 00:28:47,161 --> 00:28:49,597 特例…? 313 00:28:49,597 --> 00:28:54,269 稲田家の家臣のみ 士族と認めてはどうですか。 314 00:28:54,269 --> 00:28:56,204 えっ…? 315 00:28:56,204 --> 00:29:00,608 (佐伯)そちらさえよければ 私が政府に働きかけますよ。 316 00:29:00,608 --> 00:29:04,879 これは 思いも寄らんことを承るもんです。 317 00:29:04,879 --> 00:29:09,751 我が藩の家老は 稲田邦稙だけではございません。➡ 318 00:29:09,751 --> 00:29:14,889 高禄の藩士は いずれも 相応の家来を養うております。➡ 319 00:29:14,889 --> 00:29:19,761 稲田家のみ特例を認めては 藩内は 大騒動になりますじゃろう。 320 00:29:19,761 --> 00:29:24,232 ひいては 政府から 失政のお咎めを受けます。 321 00:29:24,232 --> 00:29:28,236 ふう… いや それは おかしい。➡ 322 00:29:28,236 --> 00:29:30,905 徳島藩が今日あるは➡ 323 00:29:30,905 --> 00:29:35,777 稲田家の 長年にわたる 勤皇の功績があってのこと。➡ 324 00:29:35,777 --> 00:29:40,381 ほかに家老が何十人いたとて 同列には考えられまい。 325 00:29:40,381 --> 00:29:46,087 特例を認めてこそ 公正な措置であり それで徳島藩も安泰になる。 326 00:29:46,087 --> 00:29:49,390 双方無事に おさまるではないか。 327 00:29:49,390 --> 00:29:52,293 そうは言われましても…。 328 00:29:52,293 --> 00:29:54,293 はあ…。 329 00:29:58,399 --> 00:30:01,602 あっ では 私は これにて…。 330 00:30:01,602 --> 00:30:06,274 どうか東久世に お引き合わせくだされ。 331 00:30:06,274 --> 00:30:11,612 あ~ あいにく函館です。 あっ では 岩倉様に…。 332 00:30:11,612 --> 00:30:13,548 そちらに妥協の用意がなければ➡ 333 00:30:13,548 --> 00:30:16,417 誰にお引き合わせしようと 無駄なことです。 334 00:30:16,417 --> 00:30:19,287 では…。 335 00:30:19,287 --> 00:30:23,787 何とぞ… 何とぞ! 336 00:30:25,426 --> 00:30:30,626 う~ん…。 こんなものは 役に立ちませんよ。 337 00:30:38,973 --> 00:30:42,010 (佐伯)はははは… いや…。 338 00:30:42,010 --> 00:30:46,314 いや~ お力添え ありがとう存じます。 339 00:30:46,314 --> 00:30:51,185 徳島藩は強硬ですぞ。 志津の父親が 何度も何度も訪ねてきて➡ 340 00:30:51,185 --> 00:30:53,988 もう 私は 板挟みだ。 341 00:30:53,988 --> 00:30:57,325 私は勘当されています。 342 00:30:57,325 --> 00:31:01,195 「勘当は許す」と言うて お父上は 頭を下げられたではないか。 343 00:31:01,195 --> 00:31:04,098 それは お役目に 頭を下げたのでしょう。 344 00:31:04,098 --> 00:31:10,271 殿方は 皆さん そうですから。 はは… これは手厳しい。 345 00:31:10,271 --> 00:31:12,571 御無沙汰しております。 346 00:31:19,614 --> 00:31:25,286 近く 岩倉大納言が 蜂須賀侯に内示を出される。 347 00:31:25,286 --> 00:31:27,221 内示を? うむ。 348 00:31:27,221 --> 00:31:32,794 稲田家の家臣を全て 士族にせよと。 まあ! 349 00:31:32,794 --> 00:31:37,298 何藩の士族じゃろか? (佐伯)ああ 徳島藩の士族だ。 350 00:31:37,298 --> 00:31:40,635 稲田藩では ないんですか? はあ~ 津田君…。 351 00:31:40,635 --> 00:31:44,305 ここまで持ってくるには 私も だいぶ 骨を折っているのだぞ。 352 00:31:44,305 --> 00:31:46,240 それは感謝してます。 353 00:31:46,240 --> 00:31:50,178 悪いことは言わん。 ここらで 矛を収めるのが上策だ。 354 00:31:50,178 --> 00:31:54,315 (三田)しかし 我々は…。 あくまで 分藩独立に固執するとすれば➡ 355 00:31:54,315 --> 00:31:57,652 政府の心証を悪くする。 356 00:31:57,652 --> 00:32:03,852 ゆくゆくは 藩そのものを廃止するのが 基本方針だからね。 357 00:32:06,928 --> 00:32:12,266 うん… 私は 年内 函館へ発つ。 函館へ? 358 00:32:12,266 --> 00:32:17,605 春までには お互い 歩み寄って 穏やかに 事を解決してもらいたい。 359 00:32:17,605 --> 00:32:20,108 それは無理でしょうね。 360 00:32:20,108 --> 00:32:25,279 ほう… 君なら どうする? はっ? 361 00:32:25,279 --> 00:32:31,419 父親の味方をするか 愛する人の味方をするか。 362 00:32:31,419 --> 00:32:35,289 あっ… 愛する人とは どなたのことかしら。 363 00:32:35,289 --> 00:32:40,161 しらばくれるな。 君は 今でも 津田君のことが好きなはずだ。 364 00:32:40,161 --> 00:32:45,633 まあ! ははは… また お戯れを…。 あははは…。 365 00:32:45,633 --> 00:32:54,333 (笑い声) 366 00:32:56,277 --> 00:33:04,977 <間もなく 佐伯織部様は 北海道開拓使の仕事で函館に発たれた> 367 00:33:07,889 --> 00:33:12,393 まあ 聞いてくださりませ! ほほほ…。 368 00:33:12,393 --> 00:33:15,596 志津から届いた シャボンを ふふっ➡ 369 00:33:15,596 --> 00:33:20,401 お登勢が 羊羹と間違えて 包丁で切りまして… ははは…。 370 00:33:20,401 --> 00:33:25,773 それを食べた儀平が 口から 泡 ブクブク… 泡 ブクブク…。 371 00:33:25,773 --> 00:33:27,808 はま! (はま)はい。 372 00:33:27,808 --> 00:33:30,645 わしは 明朝 北海道へ発つ。 373 00:33:30,645 --> 00:33:32,647 ええっ!? 北海道!? 374 00:33:32,647 --> 00:33:37,385 御家老からの御下命じゃ。 何で また…? 375 00:33:37,385 --> 00:33:42,790 あのな… 稲田家の分藩独立を認める代わりに➡ 376 00:33:42,790 --> 00:33:47,128 士族として エゾへ移して 開拓に当たらせるという折衷案が➡ 377 00:33:47,128 --> 00:33:49,163 政府の中で 持ち上がった。 378 00:33:49,163 --> 00:33:54,302 ≪(はま)士族として 江戸へ? ≪(市左衛門)江戸やない エゾや。 379 00:33:54,302 --> 00:33:58,306 まあ それやったら 徳島藩にも異存はない。 380 00:33:58,306 --> 00:34:03,010 わしは 取り急ぎ 佐伯織部に会うて その案を推し進める。 381 00:34:03,010 --> 00:34:08,249 ≪(はま)稲田家の人たちが 皆 エゾへ…。 ≪(市左衛門)ん? うむ。 382 00:34:08,249 --> 00:34:11,252 津田様が エゾへ…。 383 00:34:11,252 --> 00:34:18,259 それにしても 明日 発つやなんて 急ですなあ。 384 00:34:18,259 --> 00:34:21,262 これからは 凍えますよってな…。 385 00:34:21,262 --> 00:34:23,764 しんどいこっちゃ。 386 00:34:23,764 --> 00:34:27,602 もっと お若い方が なんぼでも おられますやろうに…。 387 00:34:27,602 --> 00:34:32,940 若い者には任せておけん。 こうなったら 意地でも やり通す。 388 00:34:32,940 --> 00:34:35,409 私らは どうなります? 389 00:34:35,409 --> 00:34:39,280 (市左衛門) うん? いや ここで待っとればいい。➡ 390 00:34:39,280 --> 00:34:42,283 ああ 儀平だけ連れていく。 391 00:34:42,283 --> 00:34:44,952 えっ えっ… えっ? 392 00:34:44,952 --> 00:35:22,790 ♬~ 393 00:35:22,790 --> 00:35:28,396 <東京から函館までは 船で半月はかかる。➡ 394 00:35:28,396 --> 00:35:34,596 旦那様と儀平は 大晦日も 正月も 船の上じゃった> 395 00:35:37,138 --> 00:35:50,418 ♬~(謡曲) 396 00:35:50,418 --> 00:36:06,233 ≪♬~ 397 00:36:06,233 --> 00:36:11,933 ≪ごめんください。 へえ! 398 00:36:19,246 --> 00:36:21,248 おいでなされませ。 399 00:36:21,248 --> 00:36:25,386 (阿部)新年のお喜び めでたく申し納めます。 400 00:36:25,386 --> 00:36:29,256 へっ? 昨年同様 新玉の庚午の年も➡ 401 00:36:29,256 --> 00:36:32,259 お栄えなされますよう お祝い つかまつります。 402 00:36:32,259 --> 00:36:35,062 はあ…。 あっ あの➡ 403 00:36:35,062 --> 00:36:36,997 今 奥方様を呼んできますよって。 404 00:36:36,997 --> 00:36:41,602 いえ それには及びません。 「阿部が来た」とだけ お伝えください。 405 00:36:41,602 --> 00:36:43,602 はあ…。 では! 406 00:36:49,944 --> 00:36:56,283 ♬~ 407 00:36:56,283 --> 00:37:02,156 ♬~(謡曲) 408 00:37:02,156 --> 00:37:05,559 あっ あっ あっ あっ…! な… 何じゃ! 409 00:37:05,559 --> 00:37:08,229 お嬢様が! 志津が? 410 00:37:08,229 --> 00:37:12,099 首だけ 空を飛んでいかはりました! え~? 411 00:37:12,099 --> 00:37:16,103 す~っと 首だけで…。 お前 気は確かか? 412 00:37:16,103 --> 00:37:20,374 早う 早う! なっ… ちょ ちょ… お登勢? 413 00:37:20,374 --> 00:37:23,174 えっ? どこやて? 414 00:37:25,212 --> 00:37:29,383 おらんやないの! もう 夢でも見たんと違うの? 415 00:37:29,383 --> 00:37:33,087 ほんまに 人騒がせな初夢やな もう…。 416 00:37:33,087 --> 00:37:38,592 あっ またや またや! 奥方様 早う 早う! 417 00:37:38,592 --> 00:37:44,932 お嬢様~! どこに おるんや? もう…。 418 00:37:44,932 --> 00:37:50,805 奥方様 こっちです こっちです! お登勢 ほんまかいな? 419 00:37:50,805 --> 00:37:55,105 やっぱり ここです。 志津! 420 00:37:58,946 --> 00:38:02,246 明けまして おめでとうございます。 421 00:38:04,218 --> 00:38:06,918 おめでとうございます…。 422 00:38:10,558 --> 00:38:15,729 (はま)今や 徳島藩の命運は 佐伯様の手の内じゃ。 423 00:38:15,729 --> 00:38:19,066 はあ… 大したお方よのう。 424 00:38:19,066 --> 00:38:23,237 それは 時の勢いです。 佐伯が偉いのではありません。 425 00:38:23,237 --> 00:38:26,140 心細いことを言うんやない。 426 00:38:26,140 --> 00:38:30,744 お父様が エゾへ わざわざ出向いたのは 何のためじゃ。 427 00:38:30,744 --> 00:38:36,917 真心を尽くして 東久世を 味方につけるためではないか。 428 00:38:36,917 --> 00:38:41,755 ところが 政治というものは しばしば 真心を裏切ります。 429 00:38:41,755 --> 00:38:44,091 裏切られては 困るんじゃ。 430 00:38:44,091 --> 00:38:48,929 稲田家も負けずに 岩倉様や三条様に近づいています。 431 00:38:48,929 --> 00:38:50,865 腹立たしいこと! 432 00:38:50,865 --> 00:38:55,603 昨日も 三田昂馬殿が 佐伯の消息を尋ねに見えました。 433 00:38:55,603 --> 00:38:58,405 お屋敷へか? はい。 434 00:38:58,405 --> 00:39:02,276 津田殿も? いいえ お一人で。 435 00:39:02,276 --> 00:39:05,045 つけ込まれてはなりませんぞ。 436 00:39:05,045 --> 00:39:10,351 佐伯様や お父様の名に 決して傷をつけないように…。 437 00:39:10,351 --> 00:39:13,721 ご心配なら お登勢をよこしてください。 438 00:39:13,721 --> 00:39:15,656 お登勢を? 439 00:39:15,656 --> 00:39:20,494 2~3日で結構。 私も気晴らしに 話し相手が欲しいのです。 440 00:39:20,494 --> 00:39:22,730 けんど…。 代わりに➡ 441 00:39:22,730 --> 00:39:25,930 気の利いた召し使いを 差し向けますから。 442 00:39:55,930 --> 00:40:00,130 お前を連れてきたのは 話し相手のためではない。 443 00:40:02,603 --> 00:40:06,473 貢さんが病気だそうです。 444 00:40:06,473 --> 00:40:08,475 えっ…? 445 00:40:08,475 --> 00:40:14,175 (志津)三田殿の話では 風邪をこじらせて だいぶ 悪いそうよ。 446 00:40:16,617 --> 00:40:21,817 旅籠住まいだから 看病してくれる人もいないそうです。 447 00:40:24,959 --> 00:40:27,759 お前が行っておあげ。 448 00:40:33,300 --> 00:40:36,203 お登勢…。 449 00:40:36,203 --> 00:40:39,173 何で お嬢様が お行きにならんのかえ? 450 00:40:39,173 --> 00:40:42,309 私は 佐伯織部の妻です。 451 00:40:42,309 --> 00:40:44,311 ほんな うちは お嬢様の身代わりかいな? 452 00:40:44,311 --> 00:40:51,611 それは違います。 貢さんを しんから慕っているのは お前だから…。 453 00:40:57,324 --> 00:41:01,195 うちは行きまへん。 えっ? 454 00:41:01,195 --> 00:41:03,664 すんまへん。 455 00:41:03,664 --> 00:41:10,938 ほんまのこと言うて うっちゃあ 津田様を お慕いしてます。 456 00:41:10,938 --> 00:41:18,412 ほんなけんど そのことは 胸の中に じ~っと しもうておきたいんや。 457 00:41:18,412 --> 00:41:21,115 それを お嬢様は 面白半分に引っ張り出して➡ 458 00:41:21,115 --> 00:41:23,417 退屈しのぎの おもちゃにしなさります。 459 00:41:23,417 --> 00:41:26,954 うっちゃあ 木偶や ありまへん。 460 00:41:26,954 --> 00:41:31,291 お前 怒ってるの? 461 00:41:31,291 --> 00:41:33,627 すんまへん…。 462 00:41:33,627 --> 00:41:38,966 今 行かなければ 二度と会えなくなるのよ。 463 00:41:38,966 --> 00:41:44,838 佐伯からの手紙では 稲田家の主従を 全て エゾへ追放することが➡ 464 00:41:44,838 --> 00:41:48,142 本決まりになったそうです。 465 00:41:48,142 --> 00:41:50,077 ほんな 津田様も…。 466 00:41:50,077 --> 00:41:52,646 (志津)だから 早く行きなさい! 467 00:41:52,646 --> 00:42:02,656 ♬~ 468 00:42:02,656 --> 00:42:09,263 お前が助けなければ 貢さんは エゾに行く前に死んでしまう…。 469 00:42:09,263 --> 00:42:37,958 ♬~ 470 00:42:37,958 --> 00:42:40,994 見逃せば 内乱になりますぞ。 471 00:42:40,994 --> 00:42:45,432 恩を仇で返す逆賊を討たぬは 武門の恥辱じゃ! 472 00:42:45,432 --> 00:42:48,302 政府にとっては 内乱が起きた方が好都合なんです。 473 00:42:48,302 --> 00:42:51,205 我々の望みは 稲田藩の独立じゃ! 474 00:42:51,205 --> 00:42:54,108 うちにできますやろか? お前なら きっとできる。 475 00:42:54,108 --> 00:42:56,443 登勢…。 死なんといてください 津田様! 476 00:42:56,443 --> 00:42:59,243 今 死にはったら 何もかも ワヤじゃ!