1 00:00:09,951 --> 00:00:16,658 (玉太郎)<明治3年5月13日 徳島と洲本で起きた騒擾事件は➡ 2 00:00:16,658 --> 00:00:19,628 その年の干支に ちなんで 庚午事変といわれ➡ 3 00:00:19,628 --> 00:00:25,100 また 稲田騒動ともいわれる。 おおまかに言うたら➡ 4 00:00:25,100 --> 00:00:30,772 浅葱足袋と蔑まれる稲田家臣が 新政府に 分藩独立を申し立て➡ 5 00:00:30,772 --> 00:00:35,610 それを反逆と見なした白足袋の徳島藩士が 武力で攻撃した。➡ 6 00:00:35,610 --> 00:00:39,781 これが まあ 事件のあらすじじゃな。➡ 7 00:00:39,781 --> 00:00:44,119 若旦那様に斬られて 瀕死の重傷を負うた お登勢は➡ 8 00:00:44,119 --> 00:00:49,791 なんと 津田様から 一緒に暮らしたいと告げられた> 9 00:00:49,791 --> 00:01:01,136 ♬~ (テーマ音楽) 10 00:01:01,136 --> 00:01:06,742 (お登勢)愛は 何で こんなに悲しい顔しているんやろ…。 11 00:01:06,742 --> 00:02:35,096 ♬~ 12 00:02:35,096 --> 00:02:39,434 (セミの声) 13 00:02:39,434 --> 00:02:44,105 (セミの声) 14 00:02:44,105 --> 00:02:52,447 (弥一郎)お登勢。 加納の伜は ほんまに お前を斬ったんか? 15 00:02:52,447 --> 00:02:55,116 (太助)斬りよりました! 私が この目で見ました! 16 00:02:55,116 --> 00:02:57,786 何で 斬ったんじゃ? 刀に決まってますがな。 17 00:02:57,786 --> 00:03:00,822 そんなことは分かっておる。 いかなる理由で斬ったのかと➡ 18 00:03:00,822 --> 00:03:03,658 尋ねておるんじゃ。 (伊三治)アホか。 19 00:03:03,658 --> 00:03:07,062 うるさいのう。 あの…➡ 20 00:03:07,062 --> 00:03:10,932 若旦那様は どない言うてはりますか? 21 00:03:10,932 --> 00:03:15,570 うん… それが… 困ったことにじゃ➡ 22 00:03:15,570 --> 00:03:21,076 お前のことについては 一切 口を割らん。 23 00:03:21,076 --> 00:03:26,581 お前も腹立たしいじゃろうが この石毛に免じて➡ 24 00:03:26,581 --> 00:03:31,419 なんとか 睦太郎が死罪にならんように 考えてやってくれんかの。 25 00:03:31,419 --> 00:03:33,922 虫のええ話じゃ! こら! 26 00:03:33,922 --> 00:03:39,227 市左衛門夫婦にしてみれば 掛けがえのない伜じゃ。 27 00:03:39,227 --> 00:03:43,431 打ち首でも なってしもうたら 気の毒でならん。➡ 28 00:03:43,431 --> 00:03:47,769 はあ~ それにしても けったいな話じゃ。 29 00:03:47,769 --> 00:03:53,108 加納家の若旦那様が 訳もなしに お登勢を斬るはずがない。 30 00:03:53,108 --> 00:03:56,111 斬ったもんは 斬ったんじゃ! お前に言うとらんわい。 31 00:03:56,111 --> 00:04:01,616 睦太郎は 人違いをしたのではないか? どうじゃ? 32 00:04:01,616 --> 00:04:05,587 (太助)人違いやないです! 確かに「お登勢」と呼びなさった! 33 00:04:05,587 --> 00:04:09,724 (弥一郎)登勢に聞いとるんじゃ。 34 00:04:09,724 --> 00:04:14,563 ええか お登勢。 お前も知っとるじゃろうが➡ 35 00:04:14,563 --> 00:04:18,400 騒ぎを起こしたんは 一握りの藩士じゃ。 36 00:04:18,400 --> 00:04:23,071 御家老も わしらも 騒ぎを鎮めようとして駆けずり回った。 37 00:04:23,071 --> 00:04:31,413 しかし 無念にも力及ばず 大勢の死人や ケガ人を出してしもうた。 38 00:04:31,413 --> 00:04:36,585 ところが 政府の役人は 藩庁が 陰で 糸を引いて➡ 39 00:04:36,585 --> 00:04:40,088 大事を起こしたのではないかと 疑うておる。➡ 40 00:04:40,088 --> 00:04:49,088 いや 政府は なんとか難癖をつけて 徳島藩を取り潰したいんじゃ。 41 00:04:50,732 --> 00:04:55,937 かかるみぎりに 義を貫いた首謀者の一味が➡ 42 00:04:55,937 --> 00:05:01,437 おなごを斬ったとなると 申し開きの しようがない。 43 00:05:03,678 --> 00:05:06,381 よう 分かりました。 44 00:05:06,381 --> 00:05:11,720 ほんまのこと言うたら うちが 若旦那様に手向かいしたんです。 45 00:05:11,720 --> 00:05:15,056 うそじゃ! うそやありまへん。 46 00:05:15,056 --> 00:05:17,959 若旦那様に 尋ねてくだされ。 47 00:05:17,959 --> 00:05:23,732 そうか! お前は 睦太郎たちの乱暴を止めようとして➡ 48 00:05:23,732 --> 00:05:26,401 誤って 斬られたのじゃな? 49 00:05:26,401 --> 00:05:28,737 へえ。 50 00:05:28,737 --> 00:05:34,075 (弥一郎)なるほど… それで よかろう。 51 00:05:34,075 --> 00:05:36,911 政府から監察の役人が来たら➡ 52 00:05:36,911 --> 00:05:39,948 そのように 言うてくれんかいの? 53 00:05:39,948 --> 00:05:45,086 へえ。 (弥一郎)よろしゅう頼む! 54 00:05:45,086 --> 00:05:50,959 お登勢 一段落したら お前の身の振り方は 考えてやるよっての。 55 00:05:50,959 --> 00:05:52,961 いらん世話じゃ。 56 00:05:52,961 --> 00:05:55,797 お登勢ちゃんにはな わしが ついとるさかいな! 57 00:05:55,797 --> 00:05:58,099 それが 何よりの気がかりじゃ。 ああ!? 58 00:05:58,099 --> 00:06:00,035 ぐだたれな! 59 00:06:00,035 --> 00:06:02,035 早う 帰れ。 60 00:06:08,710 --> 00:06:12,380 ≪(貢)ごめんください。 61 00:06:12,380 --> 00:06:17,252 (市左衛門)ややっ! 津田 貢です。 62 00:06:17,252 --> 00:06:23,024 待て待て! わしは 丸腰じゃぞ。 はっ? 63 00:06:23,024 --> 00:06:25,560 その方の言い分を まず聞こう。 64 00:06:25,560 --> 00:06:29,397 その上で 果たし合いの時と場所を 決めることにしよう。 65 00:06:29,397 --> 00:06:33,735 果たし合い? わしもな 武士の端くれじゃ。 66 00:06:33,735 --> 00:06:39,407 決して… 逃げ隠れはせんわい! 67 00:06:39,407 --> 00:06:43,211 伜に代わって 果たし合いをいたす。 68 00:06:43,211 --> 00:06:47,082 はっ…。 これ… うわっ! 69 00:06:47,082 --> 00:06:50,585 勘違いをなされますな。 勘違い!? 70 00:06:50,585 --> 00:06:55,457 本日 まかり越したのは お登勢の処遇についてです。 71 00:06:55,457 --> 00:06:57,457 さあ…。 72 00:07:01,296 --> 00:07:10,705 え~… 研ぎ屋~。 はさみに かみそり研ぎ おまへんかな? 73 00:07:10,705 --> 00:07:13,041 ≪包丁 おまへんかな? 74 00:07:13,041 --> 00:07:20,181 (市左衛門)お登勢は 16の時から 当家に奉公しておる。➡ 75 00:07:20,181 --> 00:07:26,554 わしも 娘同様に かわいがってきただけに➡ 76 00:07:26,554 --> 00:07:31,059 こたびの不祥事は 気の毒でならん。 77 00:07:31,059 --> 00:07:35,897 睦太郎の親として 何としてでも➡ 78 00:07:35,897 --> 00:07:41,069 償いは せねばならんと思うておる。 79 00:07:41,069 --> 00:07:45,573 その思いは 私も同じです。 うん? 80 00:07:45,573 --> 00:07:49,077 お登勢は 私に引き取らせてください。 81 00:07:49,077 --> 00:07:53,948 いやいや これ以上 お主に 迷惑は かけられん。 82 00:07:53,948 --> 00:07:59,587 お登勢にしても 今更 加納家に戻るのは つらいでしょう。 83 00:07:59,587 --> 00:08:03,925 お登勢が… そう言うたのか? 84 00:08:03,925 --> 00:08:06,925 誰が考えても そうでしょう。 85 00:08:08,696 --> 00:08:16,696 どうか 御承服 願いたい。 お登勢の面倒は 一生 私が見ます。 86 00:08:20,708 --> 00:08:25,008 若い者の気持ちは よう分からん。 87 00:08:27,582 --> 00:08:36,724 お主は 睦太郎が 何で お登勢を斬ったか ご存じかな? 88 00:08:36,724 --> 00:08:40,595 無論 私を逃がしたからでしょう。 89 00:08:40,595 --> 00:08:46,067 それもある。 しかし… それだけではない。 90 00:08:46,067 --> 00:08:48,736 はっ? 91 00:08:48,736 --> 00:08:52,607 睦太郎は…➡ 92 00:08:52,607 --> 00:08:58,307 お登勢を… 妻に迎えるつもりじゃった。 93 00:09:01,316 --> 00:09:11,025 あいつは 侍の身でありながら 下女にほれたことを恥じる色もなく…➡ 94 00:09:11,025 --> 00:09:15,825 お登勢との婚礼を望んでおった。 95 00:09:17,899 --> 00:09:21,369 (市左衛門) そのお登勢に裏切られたんじゃ。➡ 96 00:09:21,369 --> 00:09:29,244 思わず逆上して 前後の見境もなく… 斬りつけたんじゃろう。 97 00:09:29,244 --> 00:09:31,379 そうでしたか…。 98 00:09:31,379 --> 00:09:37,051 お登勢も かわいそうじゃが…➡ 99 00:09:37,051 --> 00:09:43,725 睦太郎も… ふびんな男じゃ。 100 00:09:43,725 --> 00:09:47,395 お話を伺うて よかった。 101 00:09:47,395 --> 00:09:53,067 人に裏切られるほど 口惜しく苦しいことはありません。 102 00:09:53,067 --> 00:09:57,367 私にも 感ずるとこがあります。 103 00:10:06,080 --> 00:10:08,080 ≪お登勢。 104 00:10:09,951 --> 00:10:12,420 津田様…。 105 00:10:12,420 --> 00:10:14,420 夜分に すまん。 106 00:10:18,092 --> 00:10:23,431 加納家とは 話をつけてきたぞ。 えっ? 107 00:10:23,431 --> 00:10:25,366 ほれ…。 108 00:10:25,366 --> 00:10:27,302 いや~! 109 00:10:27,302 --> 00:10:31,606 大切なもんが入ってるらしいな。 がらくたばっかりです。 110 00:10:31,606 --> 00:10:33,541 <「がらくた」とは何じゃい> 111 00:10:33,541 --> 00:10:38,241 親の形見の木偶とか。 木偶か…。 112 00:10:42,250 --> 00:10:47,050 <はあ… 助かった。 どっかに ほかされるかと思うたぞ> 113 00:10:49,023 --> 00:10:53,795 初めて会うた時 お前は木偶芝居を見ておったな。 114 00:10:53,795 --> 00:10:58,466 はい。 「傾城阿波鳴門」でした。 115 00:10:58,466 --> 00:11:01,466 お前は 目を泣き腫らして…。 116 00:11:04,072 --> 00:11:10,411 あの時 津田様は 人形一座の道具方のなりをして…。 117 00:11:10,411 --> 00:11:13,214 そうであった。 118 00:11:13,214 --> 00:11:16,084 私が座元に掛け合うたろ。 119 00:11:16,084 --> 00:11:27,095 ♬~ 120 00:11:27,095 --> 00:11:29,095 ええか お登勢。 121 00:11:34,602 --> 00:11:40,408 もう 誰にも気兼ねせんでええ。 どこまでも 私についてきてくれ。 122 00:11:40,408 --> 00:11:42,343 ほんなけんど…。 123 00:11:42,343 --> 00:11:47,115 お前は湯島の宿で エゾへでも どこへでも行くと言うたではないか。 124 00:11:47,115 --> 00:11:50,018 あの時は まだ…。 125 00:11:50,018 --> 00:11:56,457 傷のことは考えるな。 お前は もう奉公人ではないのだ。 126 00:11:56,457 --> 00:11:58,793 えっ? 127 00:11:58,793 --> 00:12:01,493 私の妻になるんや。 128 00:12:03,464 --> 00:12:07,201 加納睦太郎が お前を妻に望んだと聞いて➡ 129 00:12:07,201 --> 00:12:13,741 恥ずかしい話やが 私は 目からウロコが落ちたような気がした。 130 00:12:13,741 --> 00:12:18,079 私にとっても お登勢が どんなに 大切な人間かが はっきり分かったのだ。 131 00:12:18,079 --> 00:12:20,748 いけません 津田様。 何でじゃ!? 132 00:12:20,748 --> 00:12:24,218 私は 舞中島で言うたように お前が好きじゃった。 133 00:12:24,218 --> 00:12:28,756 そして 今 私には お前が要る。 134 00:12:28,756 --> 00:12:34,095 どうか 私と夫婦になってくれんか。 135 00:12:34,095 --> 00:12:36,097 いいえ。 やめてくだされ。 136 00:12:36,097 --> 00:12:38,966 津田様と私は 身分違いじゃ。 137 00:12:38,966 --> 00:12:43,771 大それたことを考えると きっと また悪いことが起きますわいな。 138 00:12:43,771 --> 00:12:46,674 起きるに決まってます。 139 00:12:46,674 --> 00:12:48,674 お登勢…! 140 00:12:54,782 --> 00:13:00,121 <蒸し暑い8月。 政府太政官から使者が来て➡ 141 00:13:00,121 --> 00:13:04,392 暴動関係者の処分が通達された> 142 00:13:04,392 --> 00:13:09,063 東京から抜け出した8人は みんな 打ち首じゃ。 143 00:13:09,063 --> 00:13:11,065 (はま)ええっ!? 144 00:13:11,065 --> 00:13:14,936 おい…。 して 睦太郎は? 145 00:13:14,936 --> 00:13:18,072 島流しじゃ。 146 00:13:18,072 --> 00:13:21,409 島流し…。 八丈島へな。 147 00:13:21,409 --> 00:13:25,213 うっ うっ ううっ… ああ~! 148 00:13:25,213 --> 00:13:28,082 うろたえるな。 見苦しい! 149 00:13:28,082 --> 00:13:32,587 (はまの泣き声) 150 00:13:32,587 --> 00:13:37,091 首が つながっとるだけでも ありがたいと思え。 151 00:13:37,091 --> 00:13:42,230 それにしても 八丈島とは…。 152 00:13:42,230 --> 00:13:47,435 やもうえん。 みだりに兵を動かした罪は免れんわ。 153 00:13:47,435 --> 00:13:50,735 (儀平)へ へえ… おまっとおさんで。 おお すまん。 154 00:13:54,308 --> 00:13:57,945 いや~ しかし 驚き入った! 155 00:13:57,945 --> 00:14:01,449 斬首と島流しだけで 37人。 156 00:14:01,449 --> 00:14:05,887 禁錮と謹慎を加えたら 100人以上やぞ。 157 00:14:05,887 --> 00:14:07,922 もう一杯くれんか。 へえ。 158 00:14:07,922 --> 00:14:13,394 そのかわり 蜂須賀家の断絶は 免れたやないか。 159 00:14:13,394 --> 00:14:18,266 若い連中が決起したんは 藩の面目を守らんがためじゃ。 160 00:14:18,266 --> 00:14:23,738 そやけん 藩庁は 政府に減刑を嘆願すべきやないか? 161 00:14:23,738 --> 00:14:28,609 お前が やってくれ。 わしは 外交方は向かん。 162 00:14:28,609 --> 00:14:31,412 たわけを申すな。 (市左衛門)うん? 163 00:14:31,412 --> 00:14:34,749 お主も わしも… 謹慎じゃ。 164 00:14:34,749 --> 00:14:37,418 はっ…! 謹慎…? 165 00:14:37,418 --> 00:14:40,321 職掌柄不行き届きで…➡ 166 00:14:40,321 --> 00:14:43,224 はあ… お役も召し上げじゃ。 167 00:14:43,224 --> 00:14:51,766 ああっ… 加納家は 一体 どうなるんやろか…。 168 00:14:51,766 --> 00:14:53,701 (泣き声) 169 00:14:53,701 --> 00:15:00,441 <重い判決に驚いた徳島藩庁は 政府への減刑陳情を繰り返したが➡ 170 00:15:00,441 --> 00:15:08,049 結局のところ 首謀者10人の斬首刑が 切腹になっただけやった。➡ 171 00:15:08,049 --> 00:15:12,386 一方 島流しを宣告された27人は➡ 172 00:15:12,386 --> 00:15:15,723 秋晴れの朝 徳島藩の御用船で➡ 173 00:15:15,723 --> 00:15:19,060 小松島港を発つことになった> 174 00:15:19,060 --> 00:15:22,930 (礼次郎)我々の行く八丈島は 淡路より ずっと ぬくい。 175 00:15:22,930 --> 00:15:26,400 それに 住民も少のうない。 176 00:15:26,400 --> 00:15:31,739 ところが 北海道へ移住と決まった 稲田の浅葱どもは➡ 177 00:15:31,739 --> 00:15:37,411 恐ろしい寒さの中で原始林を切り開かねば 生きていけんのじゃ。 178 00:15:37,411 --> 00:15:41,582 これは 我々より はるかに厳しい刑罰やないか! 179 00:15:41,582 --> 00:15:44,619 そうやとも! 稲田は 丸ごと島流しじゃ! 180 00:15:44,619 --> 00:15:48,089 (一同)そうや! 我々は勝ったのだ! 181 00:15:48,089 --> 00:15:50,024 (喚声) 182 00:15:50,024 --> 00:15:53,427 ≪(喚声) 183 00:15:53,427 --> 00:16:00,301 (市左衛門)元気出せ 睦太郎。 お前は… 罪人やないぞ。 184 00:16:00,301 --> 00:16:08,301 忠節を全うした志士じゃ。 もっと誇りを持て 誇りを…。 185 00:16:11,379 --> 00:16:14,882 短気を起こしては なりませんぞ。 186 00:16:14,882 --> 00:16:21,682 島に着いたら 食べ物に気ぃ付けて 達者に暮らしなされ。 187 00:16:26,594 --> 00:16:30,364 何とか言うておくれ! 188 00:16:30,364 --> 00:16:35,569 このまま 一生 会えんかも分からんのですよ! 189 00:16:35,569 --> 00:16:39,407 不吉なことを申すな! 190 00:16:39,407 --> 00:16:42,310 御赦免があるかもしれん。 191 00:16:42,310 --> 00:16:47,081 いや… 必ずある! 192 00:16:47,081 --> 00:16:50,951 それまで 私らが 生きておるかどうか…。 193 00:16:50,951 --> 00:16:54,422 (睦太郎)母上…。 194 00:16:54,422 --> 00:16:56,757 (はま)睦太郎…。 195 00:16:56,757 --> 00:16:59,660 どうか長生きしてください。 196 00:16:59,660 --> 00:17:07,034 (泣き声) 197 00:17:07,034 --> 00:17:14,734 父上… 長い間の御薫陶 まことに ありがとうございました。 198 00:17:17,044 --> 00:17:19,044 達者でな。 199 00:17:20,715 --> 00:17:24,051 ≪(ほら貝の音) 200 00:17:24,051 --> 00:17:26,721 船が出るぞ~! 201 00:17:26,721 --> 00:17:29,421 もう お別れか…。 202 00:17:32,893 --> 00:17:37,064 いっそ このまま… ついていきたい! 203 00:17:37,064 --> 00:17:40,935 (泣き声) 204 00:17:40,935 --> 00:17:45,935 睦太郎… 許せ。 205 00:17:50,077 --> 00:17:56,777 あの時 お登勢を お前の妻にしておけばよかった…。 206 00:18:11,699 --> 00:18:16,370 (三田)佐伯さん 稲田方が 武士の誇りを捨ててまで➡ 207 00:18:16,370 --> 00:18:19,039 無抵抗を貫いたのは 何のためでしょうか。 208 00:18:19,039 --> 00:18:21,876 (佐伯)だから 首謀者は切腹させた。 209 00:18:21,876 --> 00:18:26,380 切腹は 10人。 稲田方の死者は 17人ですぞ。 210 00:18:26,380 --> 00:18:29,283 それでも 稲田家は 北海道へ移住させられるんですか? 211 00:18:29,283 --> 00:18:32,887 まあ そう むきにならんと…➡ 212 00:18:32,887 --> 00:18:37,725 抜け道は ある。 抜け道? 213 00:18:37,725 --> 00:18:40,194 ここだけの話だが どうせ 政府は➡ 214 00:18:40,194 --> 00:18:43,397 稲田家の全員が移住するとは 思うておらん。 215 00:18:43,397 --> 00:18:45,332 何ですと? 216 00:18:45,332 --> 00:18:50,738 稲田家の当主を含め せいぜい 100人か 200人ぐらい移住すれば➡ 217 00:18:50,738 --> 00:18:54,538 あとは 見て見ぬふりをするでしょうな。 218 00:18:56,410 --> 00:19:01,916 君や 津田 貢のような有能の士が わざわざ エゾへなど行くことはあるまい。 219 00:19:01,916 --> 00:19:08,022 何なら 私が 岩倉に話をして しかるべき官途を用意してもよい。 220 00:19:08,022 --> 00:19:12,359 私は 稲田家の禄を食んでおる身です。 そんなつもりは毛頭ありません。 221 00:19:12,359 --> 00:19:19,033 まあ そう 肩を張らずに…。 政府のやるべきことは 山ほどある。 222 00:19:19,033 --> 00:19:23,904 太政官も 野にある逸材を登用するに やぶさかではない。 223 00:19:23,904 --> 00:19:27,904 (志津)三田様も 東京へ おいでなさいませ。 224 00:19:32,379 --> 00:19:35,282 それに 津田様も…。 225 00:19:35,282 --> 00:19:40,254 君は 津田君のこととなると 目の色が変わるね。 226 00:19:40,254 --> 00:19:45,726 津田様は 御両親を殺されて お屋敷を焼かれたんですよ。 227 00:19:45,726 --> 00:19:48,629 気の毒なことをした。 228 00:19:48,629 --> 00:19:53,400 津田君を助けようとして 身代わりになった娘は重傷です。 229 00:19:53,400 --> 00:19:56,737 お登勢のことですね? (三田)そうです。 230 00:19:56,737 --> 00:20:00,074 津田君は お登勢を引き取って 面倒を見るそうです。 231 00:20:00,074 --> 00:20:02,409 まあ…。 232 00:20:02,409 --> 00:20:30,104 ♬~ 233 00:20:30,104 --> 00:20:35,442 早速やが 廃藩置県によって 稲田家の淡路の所領は➡ 234 00:20:35,442 --> 00:20:37,378 兵庫県に組み入れられる。 235 00:20:37,378 --> 00:20:40,781 待ってください。 兵庫県の支配下に置かれるとすれば➡ 236 00:20:40,781 --> 00:20:43,250 殿の御身分は どうなります? 237 00:20:43,250 --> 00:20:46,453 殿は 北海道へ お移りになる。 238 00:20:46,453 --> 00:20:48,389 何ですと? 239 00:20:48,389 --> 00:20:51,959 佐伯さんの内々の話やが どうも 政府は➡ 240 00:20:51,959 --> 00:20:55,796 稲田家臣の全てが移住するとは 考えとらんようだ。 241 00:20:55,796 --> 00:20:58,132 ますます 分かりませんが…。 242 00:20:58,132 --> 00:21:03,470 北海道へは 御城代様と一部の家臣が 移住したら あとは大目に見るらしい。 243 00:21:03,470 --> 00:21:07,074 政府は 稲田家を 分断するつもりでしょうか? 244 00:21:07,074 --> 00:21:13,213 そうではあるまい。 兵庫県の支配下では 御城代様の御身分が成り立たん。 245 00:21:13,213 --> 00:21:17,585 というて 全員を北海道へ移住させるのは 難しいということだ。 246 00:21:17,585 --> 00:21:21,455 全く… ずさんですね。 247 00:21:21,455 --> 00:21:27,761 (三田)私は その ずさんさに つけいる隙があると思う。 248 00:21:27,761 --> 00:21:31,231 ええかね 私の構想は こうじゃ。 249 00:21:31,231 --> 00:21:37,104 まず 御城代様には 政府の方針に従って 一旦 北海道へ移っていただく。➡ 250 00:21:37,104 --> 00:21:41,976 そして しかるべき時に政府を動かして 再び 淡路へ戻っていただき➡ 251 00:21:41,976 --> 00:21:44,778 兵庫県からの独立を果たす。 252 00:21:44,778 --> 00:21:49,249 誰が 政府を動かすのですか? 253 00:21:49,249 --> 00:21:51,318 君と私だよ。 254 00:21:51,318 --> 00:21:57,124 ≪(鳥の鳴き声) 255 00:21:57,124 --> 00:22:00,995 佐伯さんは 君と私のために➡ 256 00:22:00,995 --> 00:22:04,295 しかるべき官職を用意してくれるそうや。 257 00:22:09,069 --> 00:22:13,741 北海道へ移住して 稲田家に尽くすのも忠義なら➡ 258 00:22:13,741 --> 00:22:19,213 政府役人になって 稲田家の独立に 尽力するのも忠義ではないか。 259 00:22:19,213 --> 00:22:21,915 お言葉ですが…。 まあ 聞きなさい。 260 00:22:21,915 --> 00:22:23,851 同志たちを 北のへき地に送り込んで➡ 261 00:22:23,851 --> 00:22:26,754 自分だけが のうのうと 政府の役人に納まるのですか? 262 00:22:26,754 --> 00:22:29,089 ≪(鳥の鳴き声) 263 00:22:29,089 --> 00:22:32,760 私は 政府の ずさんさに 腹を立てているんじゃ。 264 00:22:32,760 --> 00:22:36,630 (鳴き声) 265 00:22:36,630 --> 00:22:41,435 だからこそ その ずさんさを 内側から たたき直したいのだ! 266 00:22:41,435 --> 00:22:44,471 私には できません。 津田君! 267 00:22:44,471 --> 00:22:47,241 あなたは 稲基神社に同志を集めて➡ 268 00:22:47,241 --> 00:22:52,112 分藩独立の血盟を結んだ日を お忘れですか? 269 00:22:52,112 --> 00:22:54,782 もちろん 私も 張本人の一人です。 270 00:22:54,782 --> 00:22:57,685 ほやからこそ 真っ先に御城代様のお供をして➡ 271 00:22:57,685 --> 00:22:59,985 エゾへ渡らな ならんのです! 272 00:23:02,456 --> 00:23:04,425 エゾへ渡って 何ができる? 273 00:23:04,425 --> 00:23:07,725 百姓でも きこりでも 何でも やります。 274 00:23:12,066 --> 00:23:17,404 君は 米や麦を作ったことがあんのか?➡ 275 00:23:17,404 --> 00:23:21,575 肥桶を担いだことがあんのか? 276 00:23:21,575 --> 00:23:25,746 百姓の暮らしを知らん侍が 原生林を開拓するのは➡ 277 00:23:25,746 --> 00:23:31,418 容易なことや ないぞ。 もとより 承知しています。 278 00:23:31,418 --> 00:23:36,223 意地を張らんと 考え直してくれんか。 279 00:23:36,223 --> 00:23:41,061 佐伯さんのツテで役人になれば 君の才能を大きく伸ばすことができる。 280 00:23:41,061 --> 00:23:45,766 国の政治を変えることも夢ではない。 281 00:23:45,766 --> 00:23:49,103 お断りします。 282 00:23:49,103 --> 00:23:54,441 ひょっとして 君は 別れた細君の亭主に 世話になるのが嫌なのか? 283 00:23:54,441 --> 00:23:57,344 そうやありません。 同志を裏切ってまで➡ 284 00:23:57,344 --> 00:24:01,044 己の栄達を図ることに 我慢が ならんのです! 285 00:24:08,956 --> 00:24:15,062 <よしよし それでええ。 今度は 首を回してみんかい。➡ 286 00:24:15,062 --> 00:24:17,731 首じゃ 首じゃ…。➡ 287 00:24:17,731 --> 00:24:19,731 うん…> 288 00:24:22,069 --> 00:24:24,738 うっ…。 289 00:24:24,738 --> 00:24:28,438 お登勢。 津田様。 290 00:24:32,412 --> 00:24:36,083 治ったんか!? もうちょっとです。 291 00:24:36,083 --> 00:24:40,420 だいぶ 力が ついてきました。 292 00:24:40,420 --> 00:24:42,356 <いてて…> 293 00:24:42,356 --> 00:24:45,092 痛うないんか? <痛いわい> 294 00:24:45,092 --> 00:24:48,092 いえ 何ともありまへん。 295 00:24:57,437 --> 00:25:02,109 お前は強い。 どこまでも くじけんようにできておる。 296 00:25:02,109 --> 00:25:04,909 津田様のおかげじゃ。 297 00:25:06,713 --> 00:25:13,187 お登勢… 私はエゾへ行く。 298 00:25:13,187 --> 00:25:16,056 ついてきてくれるか? 299 00:25:16,056 --> 00:25:20,928 行っても ええんですか? もちろんや! 300 00:25:20,928 --> 00:25:25,566 うち 何でもしますよって。 一生懸命 働きますよって。 301 00:25:25,566 --> 00:25:28,402 私の妻に なってくれるんやな? 302 00:25:28,402 --> 00:25:31,305 いや それは…。 303 00:25:31,305 --> 00:25:34,741 お登勢。 304 00:25:34,741 --> 00:25:39,613 うちは 下女で十分や。 お侍さんの奥様には なれまへん。 305 00:25:39,613 --> 00:25:43,083 私は もう 侍やない。 306 00:25:43,083 --> 00:25:45,018 へ…? 307 00:25:45,018 --> 00:25:48,018 一人の百姓として エゾへ行く。 308 00:25:49,957 --> 00:25:52,593 私は 思い上がってた。 309 00:25:52,593 --> 00:25:57,431 昨日までは 穴の底におるお前を 引っ張り上げようとしたんだが➡ 310 00:25:57,431 --> 00:26:02,769 お前は じ~っと うずくまって 私の手に すがろうとせんかった。 311 00:26:02,769 --> 00:26:07,040 私は 腹立たしく 悲しかった。 312 00:26:07,040 --> 00:26:11,740 くだらん… 実に くだらん考えや。 313 00:26:13,380 --> 00:26:16,717 私は やっと 気が付いた。 314 00:26:16,717 --> 00:26:20,554 お前と同じ 穴の底へ 下りていけばいいんじゃ。 315 00:26:20,554 --> 00:26:23,891 津田様…。 316 00:26:23,891 --> 00:26:33,391 ええな? これで お前と私の間に 身分の違いはないのや。 317 00:26:35,068 --> 00:26:39,768 お互いに 裸一貫の百姓じゃ。 318 00:26:42,943 --> 00:26:50,083 お登勢… 私の妻に なってくれ。 319 00:26:50,083 --> 00:26:54,755 そして 百姓の手ほどきをしてくれんか。 320 00:26:54,755 --> 00:26:58,091 夢や ないんですね? 321 00:26:58,091 --> 00:27:00,391 夢やない。 322 00:27:01,962 --> 00:27:09,036 すんまへん。 うち 体が ぶるぶる震えて…。 323 00:27:09,036 --> 00:27:11,736 もう離さんぞ。 324 00:27:16,376 --> 00:27:18,312 ああ…。 325 00:27:18,312 --> 00:27:22,249 うち もう死んでもええ…。 326 00:27:22,249 --> 00:27:25,719 死んでもええ。 327 00:27:25,719 --> 00:27:31,019 <おい 泣くな。 わしまで泣きとうなるやないか> 328 00:27:33,593 --> 00:27:36,730 <秋雨の降る昼下がり➡ 329 00:27:36,730 --> 00:27:41,401 津田様と お登勢は ささやかな祝言を挙げた。➡ 330 00:27:41,401 --> 00:27:45,739 「高砂や➡ 331 00:27:45,739 --> 00:27:56,383 この浦船に 帆を上げて」。➡ 332 00:27:56,383 --> 00:28:03,156 えらい べっぴんやな お登勢。 親ながら ほれぼれするわい。➡ 333 00:28:03,156 --> 00:28:08,656 うん… 死んだお前の母親に生き写しじゃ> 334 00:28:11,365 --> 00:28:18,038 ほんなけんど 若旦那様の婚礼には いっつも 雨が降りますなあ。 335 00:28:18,038 --> 00:28:21,908 うん? <余計なこっちゃ> 336 00:28:21,908 --> 00:28:24,711 おめでとうございます。 337 00:28:24,711 --> 00:28:29,049 うん。 338 00:28:29,049 --> 00:28:34,921 奥様… おめでとうございます。 339 00:28:34,921 --> 00:28:37,724 おおきに…。 340 00:28:37,724 --> 00:28:41,395 太助には 最後まで 世話をかけたな。 341 00:28:41,395 --> 00:28:46,266 いや 私も 侍になる夢は あっさりと捨てました。 342 00:28:46,266 --> 00:28:54,408 あっ 在所に戻って 地道に働きますよって どうか 御安心ください。 343 00:28:54,408 --> 00:28:59,279 太助さん… お達者で。 344 00:28:59,279 --> 00:29:04,084 へえ。 お別れするんは つらいんじゃが…➡ 345 00:29:04,084 --> 00:29:12,692 これから エゾに おいでになる… お二人の… ご苦労を思うたら…。 346 00:29:12,692 --> 00:29:16,163 わしらのことは 心配するな。 347 00:29:16,163 --> 00:29:20,033 さあ…。 へい。 348 00:29:20,033 --> 00:29:24,371 <媒酌人もない 身寄りもない 祝いの客もない。➡ 349 00:29:24,371 --> 00:29:27,874 衣装も借り物で 形ばかりの婚礼じゃったが➡ 350 00:29:27,874 --> 00:29:34,074 お登勢の胸の内には 幸せの花が いっぱい咲いとった> 351 00:29:38,051 --> 00:29:43,190 <稲田家の北海道移住先は 政府の通達によって➡ 352 00:29:43,190 --> 00:29:46,393 日高郡の静内 および 根室海上の➡ 353 00:29:46,393 --> 00:29:50,063 志古丹島と決められた> 354 00:29:50,063 --> 00:29:54,401 (浅川)静内は ほとんど未開の地で 道一つない。➡ 355 00:29:54,401 --> 00:29:58,271 しかし 北海道の南部やから 寒さは 奥地ほど厳しゅうない。 356 00:29:58,271 --> 00:30:06,012 雪も 少ないらしい。 一致団結して 苦難を忍べば 将来に望みがなくもない。 357 00:30:06,012 --> 00:30:11,751 ところが 志古丹島は 静内から はるかに遠い 離れ島や。 358 00:30:11,751 --> 00:30:14,654 とても 支配が行き届かんので こっちは 辞退する。 359 00:30:14,654 --> 00:30:16,623 辞退? 360 00:30:16,623 --> 00:30:21,094 (岩根)三田さんが奔走して 政府に 替え地を願い出ておる。 361 00:30:21,094 --> 00:30:23,394 ≪ごめんなされませ。 362 00:30:27,968 --> 00:30:32,105 おいでなされませ。 ほう この人が お登勢さんか。 363 00:30:32,105 --> 00:30:34,040 よろしゅう頼む。 364 00:30:34,040 --> 00:30:36,776 知らせてくれれば 祝言に 駆けつけたものを…。 365 00:30:36,776 --> 00:30:44,117 平民同士の結婚じゃからな。 実は そのことやが…。 366 00:30:44,117 --> 00:30:48,989 政府に提出する移住人名簿には 君を「士族」と書いておきたい。 367 00:30:48,989 --> 00:30:53,793 私は 士族ではないのや。 役所に提出して 平民になった。 368 00:30:53,793 --> 00:30:58,465 早まってはいかん。 士族と卒族には 支度金が出るが 平民には出んぞ。 369 00:30:58,465 --> 00:31:00,400 それで 結構や。 370 00:31:00,400 --> 00:31:06,573 平民の場合は 人別帳に永住民と書かれる。 淡路には 永久に帰れん。 371 00:31:06,573 --> 00:31:11,444 無論 帰るつもりはない。 エゾに 骨をうずめる覚悟や。 372 00:31:11,444 --> 00:31:18,185 はあ… 君の気構えは さすがに立派じゃ。 敬服に値する。 373 00:31:18,185 --> 00:31:22,589 移住者全員に その気概があったら 成功は 疑いないのやが…。 374 00:31:22,589 --> 00:31:25,091 移住を志願する人数は? 375 00:31:25,091 --> 00:31:29,429 今のところ 士族 卒族合わせて 60人足らずやな。 376 00:31:29,429 --> 00:31:33,099 60人? (浅川)家族を加えても 200人前後…。 377 00:31:33,099 --> 00:31:36,436 稲田家の家臣は 3, 000人 その家族は 1万人やぞ。 378 00:31:36,436 --> 00:31:45,145 じゃから 今 説得に説得を重ねておる。 しかし 何より大きな障害は➡ 379 00:31:45,145 --> 00:31:49,015 肝心の御城代様が 移住を渋っておられることや。 380 00:31:49,015 --> 00:31:50,984 何…? 381 00:31:50,984 --> 00:31:56,623 御城代様だけやない。 三田昂馬 内藤弥兵衛といった御重役連中も➡ 382 00:31:56,623 --> 00:31:58,558 尻込みしておる。 383 00:31:58,558 --> 00:32:04,258 そんなアホな…。 殿様が率先して 移住せんと 誰が ついてくるか。 384 00:32:08,735 --> 00:32:15,075 七条弥左衛門に続いて 内藤弥兵衛も 闇討ちを食うたらしい。 385 00:32:15,075 --> 00:32:18,078 まあ 大したケガではないらしいがの。 386 00:32:18,078 --> 00:32:23,416 稲田家の重臣が次々に襲われるのは ただごとではない。 387 00:32:23,416 --> 00:32:26,753 浅葱者が ああじゃ こうじゃと ごたくって➡ 388 00:32:26,753 --> 00:32:29,089 さっさと エゾへ行かんからじゃ。 389 00:32:29,089 --> 00:32:34,961 そのとおり。 徳島では 若手の不満が 日に日に高まっておる。 390 00:32:34,961 --> 00:32:41,668 この分だと また暴動が起きかねん。 391 00:32:41,668 --> 00:32:45,105 一体 どうする!? ん? うむ…。 392 00:32:45,105 --> 00:32:47,040 こっちへ打つか…。 393 00:32:47,040 --> 00:32:50,977 いや そうではなくて…。 うん? 稲田の始末じゃ。 394 00:32:50,977 --> 00:32:55,749 わしの知ったことか! 395 00:32:55,749 --> 00:33:01,454 ん… お主は それで ええやろうが…。 うん? 396 00:33:01,454 --> 00:33:07,727 志津殿から 東京へ出てこいと 手紙が来たそうやの。 397 00:33:07,727 --> 00:33:12,065 誰に聞いた? ん… 奥方じゃ。 398 00:33:12,065 --> 00:33:14,968 わしは行かんぞ。 断じて行かん。 399 00:33:14,968 --> 00:33:16,936 ほう 何でや? 400 00:33:16,936 --> 00:33:21,408 東京へ出て 佐伯織部の世話になったら ええやないか。 401 00:33:21,408 --> 00:33:26,079 あいつは 虫が好かん! 権力に吸いつく こばんざめじゃ。 402 00:33:26,079 --> 00:33:32,952 ん… そう言わんと… わしのことを 志津殿に頼んでくれんかのう? 403 00:33:32,952 --> 00:33:35,088 何… へげたれが! 404 00:33:35,088 --> 00:33:37,023 ≪(はま)あんた…。 405 00:33:37,023 --> 00:33:41,428 うん? お登勢が 挨拶に参りました。 406 00:33:41,428 --> 00:33:48,301 何!? いよいよ 北海道へ発つそうじゃ。 407 00:33:48,301 --> 00:33:51,104 あっ… 通せ! なっ。 408 00:33:51,104 --> 00:33:54,774 あ~っ! 汚いぞ 市左衛門…。 409 00:33:54,774 --> 00:33:59,112 (鳴き声) 410 00:33:59,112 --> 00:34:02,982 お忙しいとこをお邪魔して 申し訳ありません。 411 00:34:02,982 --> 00:34:08,388 いやいや お役御免で 暇を持て余しておるわ。 412 00:34:08,388 --> 00:34:13,193 何の御恩返しもでけんまま 旅立つのは心苦しいんですが…。 413 00:34:13,193 --> 00:34:17,731 津田 貢と一緒か? へえ。 414 00:34:17,731 --> 00:34:20,767 祝言を挙げたそうじゃのう。 ええ加減にせんかい! 415 00:34:20,767 --> 00:34:24,904 おおっ? 登勢は わしに会いに来たんじゃ! 416 00:34:24,904 --> 00:34:27,704 んん… そう怒るな。 417 00:34:33,079 --> 00:34:36,079 傷は どうじゃ? 418 00:34:37,751 --> 00:34:40,420 だいぶ ようなりました。 419 00:34:40,420 --> 00:34:43,089 (市左衛門)もう痛まんか? 420 00:34:43,089 --> 00:34:45,992 おかげさまで…。 421 00:34:45,992 --> 00:34:49,963 お前には わびんならん。 422 00:34:49,963 --> 00:34:53,800 睦太郎が… すまんことをした。 423 00:34:53,800 --> 00:34:58,104 めっそうもない! うちが 余計な出しゃばりをしたもんで…。 424 00:34:58,104 --> 00:35:02,776 (はま)お登勢…。 へえ。 425 00:35:02,776 --> 00:35:10,049 お前は ずっと前から津田殿を 慕うておったそうじゃな。➡ 426 00:35:10,049 --> 00:35:15,722 志津の手紙で 初めて知りました。 427 00:35:15,722 --> 00:35:18,625 申し訳ありまへん。 428 00:35:18,625 --> 00:35:26,325 志津は 心から お前の幸せを願うております。 429 00:35:32,739 --> 00:35:39,078 (市左衛門)エゾは… 死ぬほど さぶいぞ。 430 00:35:39,078 --> 00:35:41,414 へえ。 431 00:35:41,414 --> 00:35:46,920 もし 体 壊したらな いつでも ここへ帰ってこい。 432 00:35:46,920 --> 00:35:54,420 ここは お前のうちじゃ。 わしらは お前の親代わりじゃ。 433 00:35:57,096 --> 00:35:59,599 ありがとうございます。 434 00:35:59,599 --> 00:36:20,386 ♬~ 435 00:36:20,386 --> 00:36:26,386 (儀平)ほんまに エゾへ行くんか。 へえ。 436 00:36:28,261 --> 00:36:31,261 生きて帰ってこいよ。 437 00:36:33,399 --> 00:36:36,069 儀平さんも どうじゃ? 438 00:36:36,069 --> 00:36:38,004 ん… 何が? 439 00:36:38,004 --> 00:36:42,004 開拓百姓は なんぼおっても 足らんのやて。 440 00:36:45,411 --> 00:36:53,753 堪忍してくれよ。 わしは北海道で この腰 痛めたんじゃぞ。 441 00:36:53,753 --> 00:36:56,453 ほな お達者で…。 442 00:37:01,094 --> 00:37:03,394 (儀平)お登勢! 443 00:37:08,368 --> 00:37:12,539 滑って こけたら あかんぞ! 444 00:37:12,539 --> 00:37:14,474 おおきに…。 445 00:37:14,474 --> 00:37:20,280 うん それから… 熊に食われなよ。 446 00:37:20,280 --> 00:37:24,717 気ぃ付けます。 (儀平)うん…。 447 00:37:24,717 --> 00:37:39,065 ♬~ 448 00:37:39,065 --> 00:37:46,406 <北海道への移住者を乗せた大型汽船 大有丸が 洲本の港を船出したのは➡ 449 00:37:46,406 --> 00:37:50,406 4月12日やった> 450 00:37:54,080 --> 00:37:57,083 とうとう行ってしまうんですね。 451 00:37:57,083 --> 00:37:59,752 津田君にも あきれたな。 452 00:37:59,752 --> 00:38:04,157 せっかく 役人に取り立てようと思ったのに…。 453 00:38:04,157 --> 00:38:09,028 何だか羨ましいような気もします。 羨ましい? 454 00:38:09,028 --> 00:38:14,801 立身出世に目もくれず 愛する者同士が 手と手を取り合って➡ 455 00:38:14,801 --> 00:38:17,170 北の果てまで 流れていくんですから…。 456 00:38:17,170 --> 00:38:20,873 ははは… 君は やきもちをやいてるのか? 457 00:38:20,873 --> 00:38:23,910 あっ… やきもちというよりも➡ 458 00:38:23,910 --> 00:38:30,383 あんな純粋な生き方もあるのかと 胸を打たれてしまいます。 459 00:38:30,383 --> 00:38:33,683 世の中 そんなに甘くはないぞ。 460 00:38:41,995 --> 00:38:47,934 間もなく廃藩置県が施行されて 藩そのものが なくなれば➡ 461 00:38:47,934 --> 00:38:53,406 分藩独立の大義名分も 消滅する。➡ 462 00:38:53,406 --> 00:38:57,577 稲田家が何のために北海道へ行ったのか 分からなくなる。➡ 463 00:38:57,577 --> 00:39:01,214 あれは 移住というより 棄民だな。 464 00:39:01,214 --> 00:39:03,583 棄民…。 465 00:39:03,583 --> 00:39:08,354 津田君も お登勢も そのうち 尻尾を巻いて帰ってくるよ。 466 00:39:08,354 --> 00:39:14,527 さもなくば 飢えと凍えの中で 野たれ死にだ。 467 00:39:14,527 --> 00:39:17,430 それが政治ですか? 468 00:39:17,430 --> 00:39:23,536 しかたあるまい。 内乱の火種を 作ったのは 稲田家の家臣なのだ。 469 00:39:23,536 --> 00:39:26,172 あなたには分からないと思います。 470 00:39:26,172 --> 00:39:29,075 何が? 471 00:39:29,075 --> 00:39:34,714 たとえ 飢えても 凍えても あるいは 野たれ死んでも➡ 472 00:39:34,714 --> 00:39:39,052 あの二人は きっと本望でしょう。 473 00:39:39,052 --> 00:39:46,726 あらゆる くびき あらゆる支配から 自分を解き放ったんですから。 474 00:39:46,726 --> 00:40:05,026 ♬~ 475 00:40:10,950 --> 00:40:14,754 おう ごめんよ… ごめんよ ごめんよ…。 ごめんよ… あっ 大丈夫か? 476 00:40:14,754 --> 00:40:16,754 はい 外 行こう。 477 00:40:24,430 --> 00:40:28,101 また 考え事かいな? 478 00:40:28,101 --> 00:40:31,003 いや…。 479 00:40:31,003 --> 00:40:38,111 ここまで来たら もう後戻りはできません。 なるようにしか ならんのです。 480 00:40:38,111 --> 00:40:41,981 エゾでは 米が取れんそうだ。 481 00:40:41,981 --> 00:40:46,281 米が取れんなら 芋でもキビでも作りましょう。 482 00:40:48,121 --> 00:40:50,456 元気を出してくだされ。 483 00:40:50,456 --> 00:40:54,794 北海道には 尊皇攘夷も分藩独立も ありまへん。 484 00:40:54,794 --> 00:40:59,665 みんなで力を合わせて 強う生き抜くしかないんです。 485 00:40:59,665 --> 00:41:04,070 私に できるやろか…。 486 00:41:04,070 --> 00:41:06,739 できますとも! 487 00:41:06,739 --> 00:41:11,077 ふっ… お前は へこたれんな。 488 00:41:11,077 --> 00:41:13,777 あなたが いますから。 489 00:41:15,948 --> 00:41:17,950 (汽笛) 490 00:41:17,950 --> 00:41:22,088 ≪見えてきたぞ! ≪陸地じゃ! 491 00:41:22,088 --> 00:41:35,635 ♬~ 492 00:41:35,635 --> 00:41:39,438 どこや? どこや? 493 00:41:39,438 --> 00:41:44,110 向こうじゃ。 おお とうとう着いたか! 494 00:41:44,110 --> 00:41:48,981 (歓声) 495 00:41:48,981 --> 00:41:57,456 ♬~ 496 00:41:57,456 --> 00:42:02,261 <負けるなよ お登勢。 あれが北海道じゃ。➡ 497 00:42:02,261 --> 00:42:06,566 お前の 新しい ふるさとじゃ。➡ 498 00:42:06,566 --> 00:42:09,602 のう… お登勢> 499 00:42:09,602 --> 00:42:28,302 ♬~