1 00:00:56,390 --> 00:03:34,381 ♬~ 2 00:03:50,163 --> 00:03:53,066 <海に向かって開いた町がある。➡ 3 00:03:53,066 --> 00:03:57,838 町は 残り三方に 深い堀を巡らしている。➡ 4 00:03:57,838 --> 00:04:02,109 ここに住む人々の数は およそ3万。➡ 5 00:04:02,109 --> 00:04:06,980 海外との交易によって 巨万の富を築き上げてきた この町は➡ 6 00:04:06,980 --> 00:04:13,120 その経済力を武器に 四方の戦国武将たちの武力介入を退け➡ 7 00:04:13,120 --> 00:04:16,990 誇りある中立を保っている。➡ 8 00:04:16,990 --> 00:04:22,696 後世 人は この町を 自由都市 堺と呼んだ> 9 00:05:18,785 --> 00:05:20,787 (善住坊)来た~。 10 00:05:24,457 --> 00:05:40,807 (喚声) 11 00:05:40,807 --> 00:05:43,710 信長が来たぞ~! 12 00:05:43,710 --> 00:05:47,480 信長が来たぞ~! 信長が来たぞ~! 13 00:05:47,480 --> 00:06:02,429 (鐘の音) 14 00:06:02,429 --> 00:06:05,432 閉めろ! 早く閉めろ! 15 00:06:15,008 --> 00:06:17,978 <永禄11年10月1日。➡ 16 00:06:17,978 --> 00:06:23,984 泉州 堺の町は 織田信長の軍勢によって包囲された> 17 00:06:28,121 --> 00:06:31,791 <これより3日前の9月28日。➡ 18 00:06:31,791 --> 00:06:36,663 禁裏御領の回復と 足利幕府の立て直しを名義として➡ 19 00:06:36,663 --> 00:06:41,468 先の十三代将軍 義輝の弟 義昭をいただき➡ 20 00:06:41,468 --> 00:06:46,139 6万の大軍を率いて 上洛を果たした織田信長は➡ 21 00:06:46,139 --> 00:06:51,011 義昭を足利十五代将軍に据えると ほどなく➡ 22 00:06:51,011 --> 00:06:54,014 摂津 石山本願寺に5,000貫➡ 23 00:06:54,014 --> 00:06:57,484 堺の町に 2万貫の矢銭➡ 24 00:06:57,484 --> 00:07:01,354 すなわち軍用金の献上を命じた。➡ 25 00:07:01,354 --> 00:07:04,758 石山本願寺は 要求に屈したが➡ 26 00:07:04,758 --> 00:07:09,062 堺は 断固 信長を拒絶した> 27 00:07:15,101 --> 00:07:20,407 (歓声) 28 00:07:28,114 --> 00:07:31,117 さあ 下りて 下りて 下りて! 下りて 下りて! 29 00:07:32,786 --> 00:07:36,089 (兼久)よし 出発! 30 00:07:43,430 --> 00:07:46,333 どけ どけ! どけ! 31 00:07:46,333 --> 00:07:50,804 おお こりゃ 手ごろの舟があるぞ。 おい! その舟 もろうていくぞ。 32 00:07:50,804 --> 00:07:54,140 早う 残りの荷を揚げてしまえ! わざわざ 揚げなくともよい。 33 00:07:54,140 --> 00:07:57,477 海へ捨ててしまえ。 どうせ 中身は塩じゃ。 34 00:07:57,477 --> 00:07:59,479 ハハハハ! 35 00:08:03,283 --> 00:08:05,585 さあ みんな! おう! 36 00:08:09,089 --> 00:08:11,991 (美緒)舟を降りていただきます! 37 00:08:11,991 --> 00:08:17,764 その舟は 今井の舟です! あなた方 どちらの御浪人ですか!? 38 00:08:17,764 --> 00:08:23,436 女 随分と威勢がよいではないか。 汝こそ 何者だ!? 39 00:08:23,436 --> 00:08:28,108 私めは 今井の頭目 今井宗久の 使い番の者でございます。 40 00:08:28,108 --> 00:08:31,978 おい 聞いたか! 今井の使い番だとよ。 41 00:08:31,978 --> 00:08:34,981 こんな器量よしの使い番がおると 知っておれば➡ 42 00:08:34,981 --> 00:08:38,451 あ~ 我らも 今井に雇われておれば よかったのう。 43 00:08:38,451 --> 00:08:40,387 (笑い声) 44 00:08:40,387 --> 00:08:43,790 どちらの傭兵の方々かは存じませぬが➡ 45 00:08:43,790 --> 00:08:47,660 この期に及んで退散とは 理不尽な お振る舞い。 46 00:08:47,660 --> 00:08:51,664 さあ 心を改めて 舟から降りてくださりませ! 47 00:08:51,664 --> 00:08:56,369 おお さすがは 今井の使い番じゃ。 いい着物を着ておる。 48 00:08:56,369 --> 00:08:59,339 着物もいいが 中身も上物だ。 49 00:08:59,339 --> 00:09:02,275 ついでのことだ 中身もろとも もろうていくか。 50 00:09:02,275 --> 00:09:05,078 おっしゃ~! 51 00:09:05,078 --> 00:09:09,949 グハハハハハ! さあ 極楽浄土へ案内してやるわ。 52 00:09:09,949 --> 00:09:12,952 ヘヘヘヘ…。 あっ! 53 00:09:16,423 --> 00:09:18,425 逃げろ! 54 00:09:21,761 --> 00:09:24,464 小僧! 死ね! 55 00:09:36,776 --> 00:09:38,778 死ね~! 小僧! 56 00:09:40,447 --> 00:09:44,117 あっ 痛っ! 誰か! 誰か 味方を! 57 00:09:44,117 --> 00:09:46,119 ええいっ! 58 00:09:51,458 --> 00:09:53,460 おのれ! 59 00:10:04,037 --> 00:10:06,339 兄様! 60 00:10:10,477 --> 00:10:13,379 兄様! 61 00:10:13,379 --> 00:10:16,149 おう これはこれは 我が妹君。 62 00:10:16,149 --> 00:10:18,818 どうだ! お前も こっちへ上がってこぬか? 63 00:10:18,818 --> 00:10:22,489 今 荷揚場で 舟を奪われかけています! 64 00:10:22,489 --> 00:10:25,825 何? 聞こえぬぞ。 65 00:10:25,825 --> 00:10:29,529 誰か! 誰か 鉄砲を! 66 00:10:32,499 --> 00:10:34,501 おい! 67 00:10:49,516 --> 00:10:52,418 逃げたのではありませぬ。 68 00:10:52,418 --> 00:10:56,389 これで あなたを助けようと思って…。 69 00:10:56,389 --> 00:10:59,692 鉄砲には いささか心得がありますので。 70 00:11:03,463 --> 00:11:08,168 鉄砲は 玉が込めてなければ 役に立ちません。 71 00:11:20,013 --> 00:11:22,015 よし 止まれ! 72 00:11:25,485 --> 00:11:30,156 さ~て どこまで飛ぶものやら。 73 00:11:30,156 --> 00:11:32,492 試し撃ちには もってこいの的だ! 74 00:11:32,492 --> 00:11:35,395 (兵士)おお これが 今井自慢の大鉄砲か。 75 00:11:35,395 --> 00:11:40,166 さよう。 南蛮の大鉄砲を 見よう見まねでつくったものだから➡ 76 00:11:40,166 --> 00:11:42,502 玉が飛び出すかどうか分からんがの。 77 00:11:42,502 --> 00:11:45,405 フフフ… わしらの鍛冶場でつくったもんで。 78 00:11:45,405 --> 00:11:47,840 (兵士)すると まだ一発も撃ってないんで? 79 00:11:47,840 --> 00:11:51,711 本日が 初のお目見え! (兵士)大丈夫でございますか? 80 00:11:51,711 --> 00:11:53,713 撃ってみなければ分かるものか! 81 00:11:53,713 --> 00:11:56,416 善住坊 松明をもて! 合点! 82 00:11:58,484 --> 00:12:03,189 プッ! どけどけ どけ! 83 00:12:05,325 --> 00:12:09,329 ごめん! ごめん ごめん ごめん ごめん ごめん! 84 00:12:11,064 --> 00:12:16,769 よ~し 善住坊 尾張の田舎武士どもの 度肝を抜いてやろうぞ。 85 00:12:18,471 --> 00:12:20,773 それ…。 お待ちなさい! 86 00:12:28,815 --> 00:12:31,150 (斎藤)戦の下知は まだ下っていない。 87 00:12:31,150 --> 00:12:33,820 たとえ 今井氏のご嫡子といえども➡ 88 00:12:33,820 --> 00:12:38,491 下知なくして先手をさし 軍法に違背なさると 処罰を受けますぞ! 89 00:12:38,491 --> 00:12:41,828 この着到櫓は 今井の指揮所だな。 いかにも。 90 00:12:41,828 --> 00:12:44,497 しからば この陣中での大将は この俺だ! 91 00:12:44,497 --> 00:12:48,835 貴様! 傭兵の分際で 今井の大将に指図するつもりか! 92 00:12:48,835 --> 00:12:54,707 たわけたことを。 今井氏の御大将は 今井宗久殿 ただお一人。 93 00:12:54,707 --> 00:12:57,010 貴殿ではござらぬ。 94 00:12:59,178 --> 00:13:01,781 親父殿がおわしたか…。 95 00:13:01,781 --> 00:13:07,120 そうよな。 大将は 親父殿であった。 96 00:13:07,120 --> 00:13:14,127 フフフ… あの大将なら 息子の首も はねるだろう。 97 00:13:22,468 --> 00:13:25,371 <ポルトガルの宣教師 ビレラが見た➡ 98 00:13:25,371 --> 00:13:30,143 堺を治める執政官たちとは 会合衆のことである。➡ 99 00:13:30,143 --> 00:13:35,815 堺には いわゆる大名とか領主という 独裁の支配者がいない。➡ 100 00:13:35,815 --> 00:13:40,687 代わりに 36人の町の代表者たちから成る 自治組織が➡ 101 00:13:40,687 --> 00:13:45,992 司法 行政 そのほか 全ての運営を つかさどっていた> 102 00:13:50,163 --> 00:13:57,470 <堺の運命は 今 彼ら 会合衆の手に握られている> 103 00:14:02,108 --> 00:14:05,011 (天王寺屋)解せぬな 宗久殿。 104 00:14:05,011 --> 00:14:08,981 お前様は 信長の何を そのように恐れるのか。➡ 105 00:14:08,981 --> 00:14:11,784 新公方を奉じたとはいえ➡ 106 00:14:11,784 --> 00:14:15,655 信長は 天下を平定して 上洛をしたわけではない。 107 00:14:15,655 --> 00:14:22,428 越前の朝倉 甲斐の武田 越後の上杉 中国の毛利➡ 108 00:14:22,428 --> 00:14:25,131 それら諸将が いずれかでも 攻め上れば➡ 109 00:14:25,131 --> 00:14:29,802 尾張 美濃の寄せ集め武者などは ひとたまりもあるまい。 110 00:14:29,802 --> 00:14:33,139 今 信長にくみすれば これから さきざき➡ 111 00:14:33,139 --> 00:14:36,843 厄介なことになるというのが お分かりにならんのか。 112 00:14:49,489 --> 00:14:52,391 (宗久)私には どうも まだ➡ 113 00:14:52,391 --> 00:14:57,163 織田上総介信長という武将の 正体が見えない。 114 00:14:57,163 --> 00:15:02,969 実に 見定めの利かぬ敵ほど 恐ろしいものはございません。 115 00:15:02,969 --> 00:15:08,107 (べに屋)暴挙だよ。 この度の入京にせよ 堺の包囲にせよ➡ 116 00:15:08,107 --> 00:15:13,446 天下の情勢をわきまえぬ田舎武士の 無為無策の暴挙にすぎぬ。 117 00:15:13,446 --> 00:15:19,318 このまま 信長ずれに降参すれば 堺は 天下の笑いものになるだけだ。 118 00:15:19,318 --> 00:15:21,788 2万貫…。 119 00:15:21,788 --> 00:15:26,125 遣明船の運航費を 千5百貫として➡ 120 00:15:26,125 --> 00:15:31,464 15隻に近い船を 明国へ往復させることができる。 121 00:15:31,464 --> 00:15:33,800 やはり 大金ですな。 122 00:15:33,800 --> 00:15:36,135 いや~ 2万貫ぐらいなら➡ 123 00:15:36,135 --> 00:15:38,805 この能登屋一軒の身代からでも➡ 124 00:15:38,805 --> 00:15:41,140 ひねり出せんことはない。 125 00:15:41,140 --> 00:15:44,477 しかし 今は 額のことではない。 126 00:15:44,477 --> 00:15:50,817 信長ごとき成り上がり者の 言いなりになってはいかんということだ。 127 00:15:50,817 --> 00:15:54,487 今井さん もういいんじゃないかね? 128 00:15:54,487 --> 00:15:58,357 もう少しだけ お聞きくださいますか…。 129 00:15:58,357 --> 00:16:02,762 皆様も ご承知のとおり かの信長めは➡ 130 00:16:02,762 --> 00:16:07,099 9年ほど前に一度 当地へ足を踏み入れております。 131 00:16:07,099 --> 00:16:10,436 かの時には 供ぞろえも 20人ばかりで➡ 132 00:16:10,436 --> 00:16:15,107 田舎小名の物見遊山と見せた しつらえでございましたが➡ 133 00:16:15,107 --> 00:16:21,447 その折 手前どもに 鉄砲30丁を求め その上 更に➡ 134 00:16:21,447 --> 00:16:25,451 奇妙な注文をいたしたものでございます。 135 00:16:27,119 --> 00:16:30,456 その注文と申しますのが➡ 136 00:16:30,456 --> 00:16:34,126 買った1丁の鉄砲を つくづくと眺めて➡ 137 00:16:34,126 --> 00:16:39,999 「これを 30倍 50倍にした 大鉄砲は出来ないか。➡ 138 00:16:39,999 --> 00:16:46,305 それも もしできれば 船の上から 撃てるようなものをつくってくれ」と。 139 00:16:48,140 --> 00:16:53,012 9年前です。 この時までに 信長は まだ➡ 140 00:16:53,012 --> 00:16:57,817 南蛮船を見たこともない。 大筒も知らない。 141 00:16:57,817 --> 00:17:03,623 ところが この尾張から出てきた 田舎武将の26歳の頭の中には➡ 142 00:17:03,623 --> 00:17:08,761 なぜか この時 大筒を積んだ南蛮船が 浮かんでいたんです。 143 00:17:08,761 --> 00:17:11,097 ハハハハハハ…。 144 00:17:11,097 --> 00:17:14,433 すると 宗久殿が恐れているのは 信長の…➡ 145 00:17:14,433 --> 00:17:19,305 頭の中に浮かんでいる 大筒を載せた軍船か。 ハハハ。 146 00:17:19,305 --> 00:17:25,077 いかにも そのとおり。 ますます解せぬな。 147 00:17:25,077 --> 00:17:28,781 信長には 先見の明がある。 148 00:17:28,781 --> 00:17:32,118 その上 勢いが加わっております。 149 00:17:32,118 --> 00:17:35,788 桶狭間の一戦以来 信長の勢いたるや➡ 150 00:17:35,788 --> 00:17:41,127 その進むところ 風を望んで来たり伏すの趣がある。 151 00:17:41,127 --> 00:17:44,997 先が見えて 勢いの加わっている者に対しては➡ 152 00:17:44,997 --> 00:17:48,467 いかなる力も これを押し返すことはできますまい。 153 00:17:48,467 --> 00:17:52,138 今井さん 三好は帰ってくる。 154 00:17:52,138 --> 00:17:59,946 阿波で 信長討伐の軍を調えて 必ず 攻め返してくる。 155 00:17:59,946 --> 00:18:06,085 その時 三好方の城となるのは この堺。 156 00:18:06,085 --> 00:18:09,755 いや いけません! 堺に 三好勢を入れてはいけません。 157 00:18:09,755 --> 00:18:14,226 お黙りなさい! もう そちらの考えは 十分に伺った。 158 00:18:14,226 --> 00:18:17,129 我ら 既に 矢銭2万貫を拒んだ時より➡ 159 00:18:17,129 --> 00:18:20,433 信長に抗することで 心を合わせているはず。 160 00:18:20,433 --> 00:18:26,772 信長に屈せよと言われているのは 宗久殿が ただお一人だ。 161 00:18:26,772 --> 00:18:31,110 堺の町並みを 馬蹄の蹂躙に任せ➡ 162 00:18:31,110 --> 00:18:33,779 家々を戦火にさらしても よろしいか。 163 00:18:33,779 --> 00:18:36,115 堺は負けぬ。 164 00:18:36,115 --> 00:18:41,454 現に お前様のご嫡子 兼久殿などは 大筒を持ち出し➡ 165 00:18:41,454 --> 00:18:46,158 傭兵どもの先頭に立って 華々しく指揮をなされておりましたぞ。 166 00:18:48,327 --> 00:18:51,464 お恥ずかしい限りです。 167 00:18:51,464 --> 00:18:56,135 あれらは まだ 実戦の経験を持ちませぬゆえ➡ 168 00:18:56,135 --> 00:18:59,472 戦と祭りの区別もつかんふうで…。 169 00:18:59,472 --> 00:19:02,742 (能登屋)いや それは頼もしい限りだ。 170 00:19:02,742 --> 00:19:06,078 それでこそ 天下の堺衆だ。 171 00:19:06,078 --> 00:19:13,419 今井さん お前様は 近江源氏の末裔にしては どうも弱腰だな。 172 00:19:13,419 --> 00:19:22,428 三好衆のためにも この堺のためにも ここは ふんばりどころだと思うのだが➡ 173 00:19:22,428 --> 00:19:27,433 ご一統のお考えは いかがなものだろうか? 174 00:19:29,301 --> 00:19:42,748 ♬~ 175 00:19:42,748 --> 00:19:45,451 (宗易)彦八郎。 176 00:19:45,451 --> 00:19:48,354 (宗久)おう 与四郎か。 177 00:19:48,354 --> 00:19:52,124 いや… 我が家の息子にも困ったもんだ。 178 00:19:52,124 --> 00:19:58,464 俺が東へ行けと言えば 西 南へ行けと言えば 北。 179 00:19:58,464 --> 00:20:02,802 親子とは そうしたもんだろう。 180 00:20:02,802 --> 00:20:07,673 お主 なぜ一言も発せぬ。 181 00:20:07,673 --> 00:20:12,678 堺が 三好衆と共に滅びていくのを 眺めている気か。 182 00:20:18,818 --> 00:20:26,158 都より 珍しい客人が見えているのだが 立ち寄っていかんか。 183 00:20:26,158 --> 00:20:32,832 このような時に 都から堺見物? 一体 どこの酔狂人かのう。 184 00:20:32,832 --> 00:20:35,534 来れば分かる。 185 00:20:44,443 --> 00:20:46,378 あ~。 186 00:20:46,378 --> 00:20:50,182 信長勢6万の大軍が 入京してくるというので➡ 187 00:20:50,182 --> 00:20:52,518 慌てて 店を畳ませ➡ 188 00:20:52,518 --> 00:20:57,389 淀川を下って この地に逃れついた途端の災難だ。 189 00:20:57,389 --> 00:21:04,096 まさか この堺で信長軍に囲まれようとは 思ってもみなかった。 190 00:21:05,798 --> 00:21:13,472 しかし 矢銭2万貫を拒んだとなれば 戦は免れん。 191 00:21:13,472 --> 00:21:22,481 そうなれば いよいよ船を仕立てて 天竺へでも逃げ出しますか。 ハッ。 192 00:21:22,481 --> 00:21:27,353 信長の都での評判は いかがでございますか? 193 00:21:27,353 --> 00:21:32,158 (隆佐) ああ 町衆の評判はいいようで。➡ 194 00:21:32,158 --> 00:21:39,498 まず 軍律が厳しい。 従って 兵に緩みがない。➡ 195 00:21:39,498 --> 00:21:46,839 自らが定めた掟に自らを課し 天命に従って動いてるふうにも見える。➡ 196 00:21:46,839 --> 00:21:53,712 ああした男は 己の敵に対しては容赦がない。 197 00:21:53,712 --> 00:22:00,786 堺が敵対すれば 包囲軍は 一丸となって 堺を攻めたてましょう。 198 00:22:00,786 --> 00:22:05,457 目下の難を逃れる手だてがあれば お教え願えまいか。 199 00:22:05,457 --> 00:22:09,328 手段は選ばぬ。 うん。 200 00:22:09,328 --> 00:22:13,799 手前の方で散らした乱波の消息では➡ 201 00:22:13,799 --> 00:22:20,139 かの松永弾正久秀殿が 信長の陣を訪れ➡ 202 00:22:20,139 --> 00:22:24,810 作物髪の茶入れを進上して 首をつないだらしい。 203 00:22:24,810 --> 00:22:31,517 なんと 本朝無双の あの作物髪の茶入れを 信長に進上…。 204 00:22:41,360 --> 00:22:43,829 (宗二)用意が整いましてございます。 205 00:22:43,829 --> 00:22:45,764 庵へ お運びくださいませ。 206 00:22:45,764 --> 00:22:47,700 ご造作をかける。 207 00:22:47,700 --> 00:22:57,176 (隆佐)おお これは 天下に隠れなき名物 松島の葉茶壺…。 208 00:22:57,176 --> 00:23:01,780 私と宗易とは 共に武野紹鴎の門下でございました。 209 00:23:01,780 --> 00:23:06,452 縁あって 私が この紹鴎の茄子を➡ 210 00:23:06,452 --> 00:23:10,322 宗易が 松島の葉茶壺を 譲り受けたものでございます。 211 00:23:10,322 --> 00:23:15,327 う~む… 聞きしに勝る名器だ。 212 00:23:29,675 --> 00:23:32,678 彦八郎。 うん。 213 00:23:32,678 --> 00:23:38,684 この葉茶壺で 堺を救えぬかのう。 214 00:23:40,819 --> 00:23:43,822 これで 堺を救えと…。 215 00:23:45,491 --> 00:23:50,162 もし そのために役立ってくれるならば➡ 216 00:23:50,162 --> 00:23:54,867 この松島 お主に進呈しようと思うが どうであろう。 217 00:23:56,835 --> 00:24:04,109 織田上総介殿が もし 噂どおりの ひとかどの数寄者であれば➡ 218 00:24:04,109 --> 00:24:08,447 この葉茶壺 2万貫と取り替えても 惜しゅうはないと➡ 219 00:24:08,447 --> 00:24:10,382 思うてくれるかもしれぬ。 220 00:24:10,382 --> 00:24:19,458 なんと この松島を 信長に献上すると。 221 00:24:19,458 --> 00:24:22,795 安いものではないか。 222 00:24:22,795 --> 00:24:29,501 葉茶壺一つで 町一つ 戦火にさらさずに済めば。 223 00:24:31,136 --> 00:24:34,139 与四郎…。 224 00:24:38,477 --> 00:24:42,815 いや… 隆佐殿も お人が悪い。 225 00:24:42,815 --> 00:24:47,486 いや 私は 何も見なかった➡ 226 00:24:47,486 --> 00:24:51,190 聞かなかったということに いたしましょう。 227 00:24:52,825 --> 00:24:59,164 この葉茶壺には それがしの命も詰めてござる。 228 00:24:59,164 --> 00:25:02,167 共に お届けいただこう。 229 00:25:03,769 --> 00:25:08,107  心の声  紹鴎の茄子と松島の茶壺。➡ 230 00:25:08,107 --> 00:25:13,979 茶の湯者としてならば 俺も 少しは知られた男だ。➡ 231 00:25:13,979 --> 00:25:21,286 これだけの名器と相対死にできれば 本望ではないか。 232 00:25:24,123 --> 00:25:27,025 お呼びでございますか。 233 00:25:27,025 --> 00:25:29,995 信長軍の様子は どうだ。 234 00:25:29,995 --> 00:25:35,734 堀を囲む篝火の火が 夢のように揺れているだけで➡ 235 00:25:35,734 --> 00:25:40,139 いまだ攻めてくる気配はございません。 236 00:25:40,139 --> 00:25:42,474 包囲の様子は。 237 00:25:42,474 --> 00:25:48,347 鉄砲を恐れてでございましょう。 堀より少し引いた所に布陣し➡ 238 00:25:48,347 --> 00:25:52,351 三方 蟻の這い出る隙間もない 囲みでございます。 239 00:25:54,820 --> 00:25:57,723 至急 人を集めてくれ。 240 00:25:57,723 --> 00:26:00,426 傭い兵を外せ。 241 00:26:00,426 --> 00:26:06,765 今井家の奉公人の中から 身寄りのない者を選べ。 242 00:26:06,765 --> 00:26:10,769 身寄りのない者と申されますと…。 243 00:26:28,787 --> 00:26:33,125 これより 堀を渡り➡ 244 00:26:33,125 --> 00:26:36,128 包囲陣を駆け抜ける。 245 00:26:42,134 --> 00:26:50,008 「飛脚番 五右衛門 生国 丹波国石川村。 12歳より奉公」…。 246 00:26:50,008 --> 00:26:55,481 <今井宗久が率いる 今井家の企業体としての規模は➡ 247 00:26:55,481 --> 00:26:59,785 今日で言う 総合商社の形態と似ている> 248 00:27:04,089 --> 00:27:07,426 <その事業内容は 多岐にわたり➡ 249 00:27:07,426 --> 00:27:13,765 海外との交易業 鉄砲製造業 薬種業 回船業➡ 250 00:27:13,765 --> 00:27:18,103 更に 納屋と呼ばれる倉庫業に及び➡ 251 00:27:18,103 --> 00:27:23,408 奉公人の総勢500人を数える 大所帯であった> 252 00:27:24,977 --> 00:28:20,766 ♬~ (ミサ曲) 253 00:28:20,766 --> 00:28:24,469 今井の使い番の者です。 表へ…。 254 00:28:51,463 --> 00:28:53,465 (銃声) 255 00:28:57,336 --> 00:29:00,339 当たった! 当たった~! 256 00:29:03,408 --> 00:29:08,080 どうだ! 当たらぬの方に賭けたのは 誰と誰だ! 257 00:29:08,080 --> 00:29:10,415 大将 当たりました。 258 00:29:10,415 --> 00:29:14,753 (斎藤)鉄砲鍛冶所の 善住坊という鍛冶師は 誰だ? へい! 259 00:29:14,753 --> 00:29:16,688 (斎藤)お前か。 へい…。 260 00:29:16,688 --> 00:29:19,691 (斎藤)下に 客だ。 あ… わしに? 261 00:29:38,977 --> 00:29:40,979 イテテッ! 262 00:29:52,457 --> 00:29:56,461  回想  これで あなたを助けようと思って…。 263 00:29:58,130 --> 00:30:00,832 逃げたのではありませぬ。 264 00:30:10,475 --> 00:30:13,812 櫓には行かないのか。 いや。 265 00:30:13,812 --> 00:30:20,152 お主だけだぞ。 皆は 槍や鉄砲を持って 町を守りに行っとるというのに➡ 266 00:30:20,152 --> 00:30:22,487 主は行かんのか。 行かん。 267 00:30:22,487 --> 00:30:24,823 死ぬのが怖いか。 268 00:30:24,823 --> 00:30:28,160 俺は 本願寺の門徒でも バテレンでもない。 269 00:30:28,160 --> 00:30:30,095 死ぬのは 怖いさ。 270 00:30:30,095 --> 00:30:34,032 だから このようなものを こしらえているんだ。 271 00:30:34,032 --> 00:30:36,034 何だ そりゃあ。 272 00:30:36,034 --> 00:30:41,506 明国の按針が教えてくれた 死に場所を探す道具だ。 273 00:30:41,506 --> 00:30:43,842 死に場所だと? 274 00:30:43,842 --> 00:30:46,178 ほれ… ほれ よく見ろ。 275 00:30:46,178 --> 00:30:52,851 この針 どう動かそうとも 北しか向かぬ。 276 00:30:52,851 --> 00:30:55,754 北は 釈尊涅槃の方角。 277 00:30:55,754 --> 00:30:59,191 冥土だ。 278 00:30:59,191 --> 00:31:05,464 北が死に場所を指すなら その反対の南は 生きる場所だ。 279 00:31:05,464 --> 00:31:09,334 皆が死に場所を探しに行くなら 俺は南だ。 280 00:31:09,334 --> 00:31:12,337 南へ行って 生きる場所を探そうと思っている。 281 00:31:12,337 --> 00:31:14,639 ちょっと貸せ。 282 00:31:16,475 --> 00:31:19,378 おお なるほど。 283 00:31:19,378 --> 00:31:21,813 北と南しか向かんぞ これは。 284 00:31:21,813 --> 00:31:24,483 (戸をたたく音) ⚟ごめんください。 285 00:31:24,483 --> 00:31:26,485 誰だ? 286 00:31:28,153 --> 00:31:32,491 今井の使い番の者です。 あ… へえ~! 287 00:31:32,491 --> 00:31:35,393 ここに 納屋番の助左という者がおりましたら➡ 288 00:31:35,393 --> 00:31:40,098 お呼び出しを願います。 へえへえ へえ! 助… 助左! 289 00:31:47,839 --> 00:31:51,176 あなたが 助左…。 290 00:31:51,176 --> 00:31:53,178 はい。 291 00:31:54,846 --> 00:31:57,749 命懸けの仕事だ。 292 00:31:57,749 --> 00:32:03,121 万が一 死ぬようなことがあっても 誰も悲しむ者がないように➡ 293 00:32:03,121 --> 00:32:07,993 親兄弟のいない お前たちを選んだ。 294 00:32:07,993 --> 00:32:12,464 命を惜しむ者は この場から立ち去れ。 295 00:32:12,464 --> 00:32:18,336 そのかわり 事が成就した暁には 銭5貫を与える。 296 00:32:18,336 --> 00:32:23,041 銭5貫で命を張る気のある者は 居残れ。 297 00:32:25,043 --> 00:33:04,749 ♬~ 298 00:33:06,451 --> 00:33:09,788 3名か。 299 00:33:09,788 --> 00:33:12,457 まず 名を聞こう。 300 00:33:12,457 --> 00:33:15,794 (五右衛門)飛脚番の五右衛門と申します。 301 00:33:15,794 --> 00:33:18,463 (宗久)親兄弟は どこで亡くした? 302 00:33:18,463 --> 00:33:23,802 父は 松永弾正様の小荷駄隊に加わり 討ち死にし➡ 303 00:33:23,802 --> 00:33:30,141 母は… 母は 行方が知れません。 304 00:33:30,141 --> 00:33:34,813 (宗久)堺へは 一人で流れ着いてきたか。 はい。 305 00:33:34,813 --> 00:33:40,485 (宗久)いくつだ? 11か 12でございました。 306 00:33:40,485 --> 00:33:44,155 うん。 次は? 307 00:33:44,155 --> 00:33:50,028 はっ! 鉄砲鍛冶所に ご奉公しております 杉谷善住坊と申します。 308 00:33:50,028 --> 00:33:55,767 その名から察するところ 生国は甲賀か。 はっ。 309 00:33:55,767 --> 00:33:58,503 (宗久)お前の名は 知っておる。➡ 310 00:33:58,503 --> 00:34:02,374 なんでも 20間先の銅銭を射ぬくほどの 鉄砲の名手だそうだな。 311 00:34:02,374 --> 00:34:05,110 いえ それは 少々…。 312 00:34:05,110 --> 00:34:10,415 その腕も いずれは見せてもらうが この度は 鉄砲は無用。 313 00:34:13,451 --> 00:34:22,460 (宗久)お主の父親は もしや 熊野灘で難破した南海丸の船頭➡ 314 00:34:22,460 --> 00:34:26,131 甚九郎ではないか?➡ 315 00:34:26,131 --> 00:34:29,467 どうだ? 316 00:34:29,467 --> 00:34:31,403 はい。 317 00:34:31,403 --> 00:34:38,810 ほう… 甚九郎のせがれが このように大きく育ったか。 318 00:34:38,810 --> 00:34:45,150 今朝方は 逃亡を企てた傭兵どもから 荷揚場の舟を守ってくれました。 319 00:34:45,150 --> 00:34:52,023 荷揚場で…。 すると 納屋番でもしておるか? 320 00:34:52,023 --> 00:34:55,160 はい。 (宗久)名は? 321 00:34:55,160 --> 00:34:58,496 はい。 助左と申します。 322 00:34:58,496 --> 00:35:03,335 助左。 銭5貫 何に使う。 323 00:35:03,335 --> 00:35:09,107 それにつきまして お願いしたい儀がございます。 324 00:35:09,107 --> 00:35:12,010 何だ。 言うてみよ。 はい。 325 00:35:12,010 --> 00:35:16,982 わしは 銭は要りません。 そのかわりに➡ 326 00:35:16,982 --> 00:35:22,454 勤め口を かえていただきたいんでございます。 327 00:35:22,454 --> 00:35:27,325 納屋番では不足だと申すか。 で 何がしたい。 328 00:35:27,325 --> 00:35:33,465 はい。 交易業へ 回していただきたいんでございます。 329 00:35:33,465 --> 00:35:36,801 海を渡りたいか。 はい。 330 00:35:36,801 --> 00:35:40,472 お前の父親を殺した海へか。 331 00:35:40,472 --> 00:35:42,474 はい。 332 00:35:44,142 --> 00:35:46,811 母者は いつ亡くなった。 333 00:35:46,811 --> 00:35:50,482 去年 病で死にました。 334 00:35:50,482 --> 00:35:58,189 う~ん 母者が許してくれなかったんだな お前が海へ出ることを。 335 00:36:00,091 --> 00:36:05,964 (宗久)一生を陸の仕事で終えるように ということであったであろう。➡ 336 00:36:05,964 --> 00:36:11,102 母者の遺言に背くことになるな。 337 00:36:11,102 --> 00:36:16,107 わしは 父のようになりたいです! 338 00:36:18,977 --> 00:36:21,980 父のように…。 339 00:36:25,650 --> 00:36:30,655 我が家の息子どもとは 何たる違いか。 340 00:36:32,791 --> 00:36:38,663 甚九郎が生きておれば さぞかし 涙を流して喜んだであろうに。 341 00:36:38,663 --> 00:36:41,800 あれは 立派なキャピタンだった。 342 00:36:41,800 --> 00:36:46,504 よかろう。 お前の願いは 聞き届ける。 343 00:36:48,673 --> 00:36:52,811 父の後を継いで 海を渡れ。 344 00:36:52,811 --> 00:36:57,148 そして 更に 父の行けなかった所へ➡ 345 00:36:57,148 --> 00:37:00,752 お前の父が 行こうとして行けなかった彼岸へ➡ 346 00:37:00,752 --> 00:37:04,089 お前の船で行ってやれ! 347 00:37:04,089 --> 00:37:06,758 ありがとうございます! 348 00:37:06,758 --> 00:37:19,771 ♬~ 349 00:37:23,308 --> 00:37:26,010 一息に飲み干せ。 350 00:37:33,785 --> 00:37:37,455 これが 南蛮酒の味だ。 351 00:37:37,455 --> 00:37:42,327 一度 味を占めると 生涯 これから抜けられなくなる。 352 00:37:42,327 --> 00:37:48,333 堺に流れ込んできた者が 二度と他国へ出られなくなるのと同じだ。 353 00:37:56,474 --> 00:37:59,177 用件を言う。 354 00:38:00,745 --> 00:38:05,617 これから 信長に会いに行く。 355 00:38:05,617 --> 00:38:10,755 目指すは 摂津西成郡の芥川城だ。 356 00:38:10,755 --> 00:38:14,092 信長は 目下は 堺の敵。 357 00:38:14,092 --> 00:38:19,764 無事にたどりつけたとしても 生きて帰れる保証はない。➡ 358 00:38:19,764 --> 00:38:23,635 善住坊 顔色が変わったな。 359 00:38:23,635 --> 00:38:26,638 いや 何か こう… 急に めまいが。 360 00:38:26,638 --> 00:38:30,108 いかんな 南蛮酒のせいかな。 361 00:38:30,108 --> 00:38:33,444 これまで話した以上は もう抜けられんぞ。 362 00:38:33,444 --> 00:38:35,780 はい それは もう…。 363 00:38:35,780 --> 00:38:39,651 ただな 一縷の望みだけはある。 364 00:38:39,651 --> 00:38:44,455 それは わしが 一度 信長に会うているということだ。 365 00:38:44,455 --> 00:38:46,457 (銃声) 366 00:38:57,035 --> 00:39:05,743 ♬~ 367 00:39:05,743 --> 00:39:12,417 あの時のことを 信長が覚えていてくれれば➡ 368 00:39:12,417 --> 00:39:16,120 あるいは 活路が開けるかも分からん。 369 00:39:17,755 --> 00:39:24,429 <あの時… あれは 9年前 永禄2年の正月。➡ 370 00:39:24,429 --> 00:39:32,437 助左の脳裏にも 少年の日に出会った ある男への かすかな記憶がよみがえる> 371 00:39:40,778 --> 00:39:45,450 (藤吉郎)小僧 この今井の雇い人か? うん。 372 00:39:45,450 --> 00:39:50,788 うん… お前の主というのは 実に 大したやつだな。 373 00:39:50,788 --> 00:39:54,459 たまげたぞ この台所の窓の大きさには。 374 00:39:54,459 --> 00:39:57,795 これに比べて 我が清洲の城の台所ときたら➡ 375 00:39:57,795 --> 00:40:00,465 わざと日の光が当たらぬように 工夫してあるから➡ 376 00:40:00,465 --> 00:40:02,400 昼間も 薄暗く陰気くさい。 377 00:40:02,400 --> 00:40:07,138 柱にも天井にも 昆布の煮出し汁の においが染みついている。 378 00:40:07,138 --> 00:40:09,073 あれじゃ いかんな。 379 00:40:09,073 --> 00:40:14,012 台所とは このように 常に明るく 風通しをよくしておくべき場所なんだ。 380 00:40:14,012 --> 00:40:17,715 よし これは 帰ったら 早速まねよう。 381 00:40:19,484 --> 00:40:21,419 お侍さんは 台所方か? 382 00:40:21,419 --> 00:40:25,356 そうだ。 先月 御小人組から 台所方へ 昇格したばかりだ。 383 00:40:25,356 --> 00:40:30,128 台所方への役人には 大抵 出世の見込みのない者か➡ 384 00:40:30,128 --> 00:40:32,830 落ち目の侍が回されるというが 本当か? 385 00:40:32,830 --> 00:40:34,832 こら! 誰が そんなこと言った! 386 00:40:38,503 --> 00:40:40,838 いや~ 見事な堀だ。 387 00:40:40,838 --> 00:40:46,711 この水濠だけを見ても 堺が どれほどの金持ちか よく分かる。 388 00:40:46,711 --> 00:40:49,180 この堀がある限り➡ 389 00:40:49,180 --> 00:40:53,518 敵がどのように攻めてきても 堺は 決して落ちまい。 390 00:40:53,518 --> 00:40:57,522 藤吉郎 そろそろ出発だぞ。 よし分かった。 391 00:40:59,390 --> 00:41:05,697 おい 小僧 駄賃だ。 さあ 取っとけ。 392 00:41:07,465 --> 00:41:12,337 これは 永楽銭というてな 明の国から来た銭だ。 393 00:41:12,337 --> 00:41:16,808 わしも お前ほどの時 永楽銭を抱いて郷里を出た。 394 00:41:16,808 --> 00:41:21,679 わしゃ それで 縫い針を買い その針を売り歩きしながら➡ 395 00:41:21,679 --> 00:41:26,384 運を探して回ったんだ。 運をな。 396 00:41:28,419 --> 00:41:31,723 お前も よい商人になれ。 397 00:41:33,358 --> 00:41:35,493 さらばだ。 398 00:41:35,493 --> 00:42:39,824 ♬~ 399 00:42:39,824 --> 00:42:43,161  心の声  あの時の あのひょうきんなお侍は➡ 400 00:42:43,161 --> 00:42:46,164 今も 息災でいるだろうか。 401 00:42:47,832 --> 00:42:53,171  心の声  もしや あの包囲軍の中にいるのでは…。➡ 402 00:42:53,171 --> 00:42:56,841 あるいは 芥川の野陣の中か…。➡ 403 00:42:56,841 --> 00:43:02,113 いや もはや いずこかの合戦で 討ち死にしてしまわれたかもしれぬ…。 404 00:43:02,113 --> 00:43:04,115 (銃声) 405 00:43:05,983 --> 00:43:10,455 敵だ~! 敵が来たぞ! 敵だ 敵だ! 行くぞ! 406 00:43:10,455 --> 00:43:12,790 (銃声) 407 00:43:12,790 --> 00:43:16,461 よし。 行くぞ。 408 00:43:16,461 --> 00:43:24,135 ♬~ 409 00:43:24,135 --> 00:43:26,471 <時は戦国末期。➡ 410 00:43:26,471 --> 00:43:32,343 信長 秀吉 家康へと移り変わる 天下争乱の時代を相手取り➡ 411 00:43:32,343 --> 00:43:36,481 自由都市 堺と 南海のルソン島を股にかけて➡ 412 00:43:36,481 --> 00:43:40,151 一代の豪商にのし上がっていく この男も➡ 413 00:43:40,151 --> 00:43:44,489 今は まだ 一介の納屋番にすぎない> 414 00:43:44,489 --> 00:43:47,158 (銃声) 415 00:43:47,158 --> 00:43:53,030 <永禄11年 西暦1568年。➡ 416 00:43:53,030 --> 00:43:57,502 同じ年に ヨーロッパでは 自由都市 ネーデルランドが➡ 417 00:43:57,502 --> 00:43:59,837 イスパニア王 フェリペ二世の 圧政に対して➡ 418 00:43:59,837 --> 00:44:02,106 武器を持って立ち上がった。➡ 419 00:44:02,106 --> 00:44:08,980 この自由都市の蜂起は やがて オランダという新しい国を生む。➡ 420 00:44:08,980 --> 00:44:13,451 この時 堺は まるで 世界の歴史と呼応するように➡ 421 00:44:13,451 --> 00:44:18,322 信長という天下の覇者に 反旗を翻している。➡ 422 00:44:18,322 --> 00:44:25,796 時 あたかも 中世の断末魔と近世の産声が 同時に天地を揺るがした➡ 423 00:44:25,796 --> 00:44:30,134 16世紀末の怒涛の幕開けであった> 424 00:44:30,134 --> 00:44:46,150 ♬~