1 00:00:02,102 --> 00:02:39,793 ♬~ 2 00:02:44,731 --> 00:02:47,868 <その疾きこと風の如く➡ 3 00:02:47,868 --> 00:02:50,771 徐かなること 林の如し➡ 4 00:02:50,771 --> 00:02:53,540 侵すこと 火の如く➡ 5 00:02:53,540 --> 00:02:55,842 動かざること 山の如し> 6 00:02:57,411 --> 00:03:00,814 <時は元亀3年の暮れ。➡ 7 00:03:00,814 --> 00:03:07,120 武田信玄の軍勢2万7,000が 都を目指して攻め上ってくる> 8 00:03:20,500 --> 00:03:26,373 <その行く手に立ち塞がった 遠江 浜松城主の徳川家康は➡ 9 00:03:26,373 --> 00:03:29,843 三方ヶ原において 惨憺たる敗北をなめ➡ 10 00:03:29,843 --> 00:03:34,714 残る信玄の敵は 織田信長ただ一人となる。➡ 11 00:03:34,714 --> 00:03:41,188 もはや 誰の目にも 信長の滅亡は 避け難い状況に見えた。➡ 12 00:03:41,188 --> 00:03:45,525 信玄の押し太鼓と 甲州騎馬軍団の馬蹄の響きは➡ 13 00:03:45,525 --> 00:03:48,862 地鳴りとなって 堺の町を揺さぶり…。➡ 14 00:03:48,862 --> 00:03:54,868 更に 遠い但馬国の山奥にまで 響き渡っていた> 15 00:04:02,809 --> 00:04:08,115 (七兵衛)助左! 石だ! もういい そこは! 石だ!(助左)へえ! 16 00:04:26,032 --> 00:04:29,736 早くしろ!へい! 早くしろ ほら! 17 00:04:51,191 --> 00:04:53,894 (彦助)何か見えるぞ。 18 00:04:56,863 --> 00:05:00,133 あっ 今井の荷駄隊だ。 19 00:05:00,133 --> 00:05:05,438 ハハッ。 よ~し みんな 手を休めて お客人をお通ししろ。 20 00:05:07,007 --> 00:05:11,144 今 気取られては せっかくの仕掛けが 無駄になるからな。➡ 21 00:05:11,144 --> 00:05:16,149 ハッハ! ハッハッハッハッハ! 22 00:05:18,818 --> 00:05:20,820  心の声 うん? 23 00:05:24,691 --> 00:05:26,993  心の声 御寮様! 24 00:05:34,367 --> 00:05:39,372  心の声 銀の運搬などというお役目を なぜ 御寮様が…? 25 00:05:47,514 --> 00:05:49,816 引っ込まねえか! 26 00:05:52,385 --> 00:05:56,856 みんな 拝んで見送れ。 明日には あの一行が➡ 27 00:05:56,856 --> 00:06:01,695 72貫の灰吹銀を積んで この道を戻ってくるんだ。 28 00:06:01,695 --> 00:06:04,698 後光がさして見えるぞ。 29 00:06:19,112 --> 00:06:24,818 列の一番後ろにいるのが 今井の番頭で 平次という。➡ 30 00:06:24,818 --> 00:06:27,120 あれも仲間だ。 31 00:06:32,158 --> 00:06:45,705 ♬~ 32 00:06:45,705 --> 00:06:49,709 <この時代 海外を相手の交易業者にとって➡ 33 00:06:49,709 --> 00:06:53,847 銀は 最大の輸出品であった。➡ 34 00:06:53,847 --> 00:07:00,453 今井は 摂津諸国の銀山をはじめ この但馬国の生野銀山でも➡ 35 00:07:00,453 --> 00:07:03,356 早くから その採掘権を持って➡ 36 00:07:03,356 --> 00:07:10,163 灰吹法や南蛮吹と呼ばれる 最新の精錬技術を次々と投入しては➡ 37 00:07:10,163 --> 00:07:13,500 銀の産出に励んでいた> 38 00:07:13,500 --> 00:07:35,188 ♬~ 39 00:07:46,199 --> 00:07:48,868 何 ウロウロしてやがる。 あ はい。 40 00:07:48,868 --> 00:07:51,137 穴へ戻らねえか! ばか野郎! 41 00:07:52,739 --> 00:07:55,208 (七兵衛)早くしろ! 42 00:07:55,208 --> 00:07:57,877 (五右衛門)フフフ… 苦労してるな。 43 00:07:57,877 --> 00:08:00,146 五右衛門。 44 00:08:07,487 --> 00:08:14,828 ここでは もう 誰が味方で 誰が裏切り者か 見分けもつかぬ。 45 00:08:14,828 --> 00:08:21,701 銀山を差配する立場の勤め番が 銀泥棒の首領とはの。 46 00:08:21,701 --> 00:08:26,439 その上 番頭の平次までが 裏切り者か…。 47 00:08:26,439 --> 00:08:30,377 今井宗久の威光も 地に落ちたものだな。 48 00:08:30,377 --> 00:08:33,847 もろい。 確かに もろい。 49 00:08:33,847 --> 00:08:38,518 織田方敗れるの噂が立っただけで この騒ぎだ。 50 00:08:38,518 --> 00:08:42,856 今井の土台が こんなにもろいものとは思わなかった。 51 00:08:42,856 --> 00:08:47,527 (五右衛門)今井も 織田にくっついて 天下を狙ったんだ。 52 00:08:47,527 --> 00:08:50,430 会合衆の末席から➡ 53 00:08:50,430 --> 00:08:56,536 今井宗久は 信長におぶわれて 堺第一等の柿の実を もぎり取った。➡ 54 00:08:56,536 --> 00:09:01,808 信長が転べば 宗久も転ぶ道理だな。 55 00:09:01,808 --> 00:09:06,479 それが 間違いのもとだったのかもしれない。 56 00:09:08,148 --> 00:09:12,485 商人と侍は 同じ夢は見られん。 57 00:09:12,485 --> 00:09:20,460 いや… 商人と侍が組んで 同じ夢を見てはいけないのかもしれない。 58 00:09:22,829 --> 00:09:25,498 商人は 侍の家来じゃない。 59 00:09:25,498 --> 00:09:28,835 たとえ相手が 天下人にせよ➡ 60 00:09:28,835 --> 00:09:33,173 商人にとっちゃ ものを売り買いする 一人の客にすぎない。 61 00:09:33,173 --> 00:09:37,043 決して 主にしちゃいけないんだ。 62 00:09:37,043 --> 00:09:40,513 ぬしは 今井宗久の商いのやり方を 間違いだと言ってるのか。 63 00:09:40,513 --> 00:09:46,386 大元様は 織田信長という武将に 心底 惚れてしまった。 64 00:09:46,386 --> 00:09:52,058 織田と共に滅ぶことができれば本望だと 腹を決めてしまったんだ。 65 00:09:54,060 --> 00:09:58,531 ぬし 知らぬ間に 少し大人になったな。 66 00:09:58,531 --> 00:10:02,402 うん? ふふ…。 67 00:10:02,402 --> 00:10:06,206 大人になりついでに➡ 68 00:10:06,206 --> 00:10:09,876 美緒様のお気持ちを 察してやっては どうだ。 69 00:10:09,876 --> 00:10:11,811 御寮様の気持ち? 70 00:10:11,811 --> 00:10:15,215 美緒様は ぬしに会いに来たんだぞ。 71 00:10:15,215 --> 00:10:17,150 何を言う。 72 00:10:17,150 --> 00:10:21,888 大元様にも 兼久にも 断りなしの旅立ちだ。 73 00:10:21,888 --> 00:10:23,823 だから 俺も追ってきたのさ。 74 00:10:23,823 --> 00:10:30,230 大元様に 美緒様を連れ戻せと 命ぜられてな。 な…!? 75 00:10:30,230 --> 00:10:35,101 堺から但馬まで 4日の道のり。 76 00:10:35,101 --> 00:10:38,104 連れ戻す機会は 何度もあったんだが➡ 77 00:10:38,104 --> 00:10:43,576 ついつい 不憫な気がしてな。 とうとう ここまで来てしまった。 78 00:10:43,576 --> 00:10:48,915 しかし どうやら 悪い時に 悪い所へ 踏み込ませてしまったようだな。 79 00:10:48,915 --> 00:10:54,254 そうとも。 おかげで もくろみが狂うてしもうた。 80 00:10:54,254 --> 00:10:56,189 もくろみとは? 81 00:10:56,189 --> 00:11:01,060 今井の銀が 目の前で盗まれるのを 指をくわえて見ていられると思うか? 82 00:11:01,060 --> 00:11:06,833 なんとか 銀を奪い返して 堺へ送り届けるつもりだった…。 83 00:11:06,833 --> 00:11:09,202 やってみようじゃないか。 84 00:11:09,202 --> 00:11:13,540 80貫もの銀 みすみす きやつらの手に渡すことなんかない。 85 00:11:13,540 --> 00:11:15,475 御寮様がいたら それもできない。 86 00:11:15,475 --> 00:11:20,213 銀よりも まず 御寮様のお身を守らねば。 87 00:11:20,213 --> 00:11:24,884 銀も 美緒様も 両方手に入れて 山を下りるさ。 88 00:11:26,886 --> 00:11:29,556 やってみるしかないな。 89 00:11:29,556 --> 00:11:48,908 ♬~ 90 00:11:48,908 --> 00:11:54,247 (平次)なぜ 生野まで来たのか。 あの御寮さんの思惑が解せません。 91 00:11:54,247 --> 00:11:59,919 (弥三郎)どちらにしても 始末は こちらでつけるぞ。 92 00:12:06,526 --> 00:12:08,795 美緒様。 93 00:12:14,400 --> 00:12:19,072 ⚟(足音) 94 00:12:37,890 --> 00:12:39,859 うっ! 95 00:12:41,561 --> 00:12:43,529 汝は…!? 96 00:12:59,112 --> 00:14:10,083 ♬~ 97 00:14:11,851 --> 00:14:13,786 御寮様!? 98 00:14:13,786 --> 00:14:16,189 (美緒)助左!? 99 00:14:16,189 --> 00:14:18,858 どうして こんな所…!? 100 00:14:18,858 --> 00:14:23,529 お前こそ どうして こんな所へ? 101 00:14:23,529 --> 00:14:27,800 ⚟火事だ~! 火事だぞ~! 102 00:14:32,538 --> 00:14:36,209 曲者! 曲者~! 103 00:14:38,211 --> 00:14:41,547 はっ 何やつだ! 104 00:14:41,547 --> 00:14:45,818 汝らと同じ 今井の雇われ者よ。 何!? 105 00:14:47,420 --> 00:14:50,556 銀はな もろうてくぞ。 106 00:14:50,556 --> 00:14:53,226 うう~っ! 107 00:15:02,168 --> 00:15:04,103 はい! 108 00:15:04,103 --> 00:15:14,180 ♬~ 109 00:15:14,180 --> 00:15:17,083 (七兵衛)助左! 助左! 110 00:15:17,083 --> 00:15:23,523 ♬~ 111 00:15:23,523 --> 00:15:25,458 はい! 112 00:15:25,458 --> 00:15:30,196 ♬~ 113 00:15:30,196 --> 00:15:42,175 (ほら貝の音) 114 00:15:55,421 --> 00:15:58,391 あそこだ~! 追え! 115 00:16:00,493 --> 00:16:03,763 (男たちの声) 116 00:16:07,834 --> 00:16:09,802 (縄を切る音) 117 00:16:17,510 --> 00:16:19,479 (縄を切る音) 118 00:16:22,181 --> 00:16:25,084 うわ~っ! 119 00:16:25,084 --> 00:16:27,520 わあ~っ!➡ 120 00:16:27,520 --> 00:16:34,794 わあ~っ! わあ~っ! あっ あ…! 121 00:16:37,196 --> 00:17:00,486 ♬~ 122 00:17:06,826 --> 00:17:09,495 ここは どの辺り…? 123 00:17:09,495 --> 00:17:13,366 はい 丹波の国境辺りでございましょう。 124 00:17:13,366 --> 00:17:16,369 明日は 摂津に入ります。 125 00:17:16,369 --> 00:17:20,506 今なら まだ間に合うのね。 126 00:17:20,506 --> 00:17:30,516 播磨の明石へ出て 船で瀬戸内を回り 博多か 長崎へ行こうと言ったら➡ 127 00:17:30,516 --> 00:17:33,853 お前 ついてきてくれる? 128 00:17:33,853 --> 00:17:35,788 ご… 御寮様。 129 00:17:35,788 --> 00:17:39,058 気まぐれに聞こえて? 130 00:17:40,726 --> 00:17:43,863 本心なのよ。 131 00:17:43,863 --> 00:17:47,733 初めから そのつもりで 生野へ来たの。 132 00:17:47,733 --> 00:17:52,204 生野へ行けば お前に会える。 銀も手に入る。 133 00:17:52,204 --> 00:17:56,876 銀を盗んで お前と逐電するつもりだった。 134 00:17:56,876 --> 00:17:58,844 御寮様…。 135 00:18:02,682 --> 00:18:12,358 お前の夢は 呂宋のマイニラに渡ることだったわね。 136 00:18:12,358 --> 00:18:15,161 博多か長崎へ行きましょう。 137 00:18:15,161 --> 00:18:20,833 そこの地で 銀72貫を元手に 2人で商いをすれば➡ 138 00:18:20,833 --> 00:18:24,503 自分の船など すぐ持てる。 139 00:18:24,503 --> 00:18:28,174 2人で船を持って 呂宋へ渡りましょう。 140 00:18:28,174 --> 00:18:30,142 御寮様! 141 00:18:31,844 --> 00:18:37,516 今井にいても 生涯 呂宋へは行けませんよ。 142 00:18:39,518 --> 00:18:44,190 摂津へは入らず 播磨へ道を変えましょう。 143 00:18:44,190 --> 00:18:47,526 今からなら まだ…。 なりません! 144 00:18:47,526 --> 00:18:50,429 お前のために言っているのに。 断じて それはなりません! 145 00:18:50,429 --> 00:18:52,398 なぜ いけないの。 146 00:18:52,398 --> 00:18:55,401 御寮様 今 織田勢が負けるようなことがあれば➡ 147 00:18:55,401 --> 00:18:59,872 今井は… 今井は 織田と共に滅んでしまいます。 148 00:18:59,872 --> 00:19:04,844 私には 今井を見捨てるようなことは できません! 149 00:19:08,481 --> 00:19:13,819 今井が滅びるのは 私たちのせいではない。 150 00:19:13,819 --> 00:19:20,092 銀は… 銀は 堺へ送り届けます。 151 00:19:21,694 --> 00:19:25,164 御寮様… 御寮様も どうか 一緒に 私と…。 152 00:19:25,164 --> 00:19:27,833 堺へは帰りませぬ! 御寮様! 153 00:19:32,038 --> 00:19:40,713 お願いでございます。 私と一緒に 堺へ帰ってください。 154 00:19:42,515 --> 00:19:44,784 お願いします。 155 00:19:47,386 --> 00:19:53,159 去年 生野へ旅立つ時➡ 156 00:19:53,159 --> 00:19:56,062 私の笛の音に誘われて➡ 157 00:19:56,062 --> 00:20:02,034 お前は 松の木陰から こっそり別れを告げてくれましたね。 158 00:20:04,537 --> 00:20:11,210 あの時 私も決心をした。 159 00:20:11,210 --> 00:20:16,182 いつか お前を追って 生野へ行こうと…。 160 00:20:20,886 --> 00:20:24,757 どちらかに 心を決めておくれ。 161 00:20:24,757 --> 00:20:30,229 私を連れて九州へ逃れ 独り立ちの機をつかむか➡ 162 00:20:30,229 --> 00:20:36,502 再び堺へ戻って 生涯 今井の奉公人で終わるか。 163 00:20:39,905 --> 00:20:41,874 さあ! 164 00:20:43,576 --> 00:20:45,845 美緒様…。 165 00:21:14,540 --> 00:21:16,509 助左! 166 00:21:18,210 --> 00:21:20,880 私を連れて逃げて。 167 00:21:26,085 --> 00:21:29,822 ゆっくりと歩いております。 168 00:21:29,822 --> 00:21:35,094 後から追いかけてこられても 間に合われますように。 169 00:21:50,910 --> 00:21:56,582 去りなさい! 私は 堺への道は戻らぬ! 170 00:22:05,424 --> 00:22:30,883 ♬~ 171 00:22:30,883 --> 00:22:33,552 火が消えますよ。 172 00:22:38,557 --> 00:22:41,227 いつから ここに…。 173 00:22:46,899 --> 00:22:52,571 どうあっても 今井へ連れ帰る気か。 174 00:22:52,571 --> 00:22:57,910 大元様の言いつけには逆らえません。 175 00:22:57,910 --> 00:23:04,583 助左が私の誘いに乗ったら 斬るつもりでいたのね。 176 00:23:07,720 --> 00:23:09,688 さあ…。 177 00:23:11,857 --> 00:23:14,526 (モニカ)お前が憎い! 178 00:23:22,501 --> 00:23:26,171 私を堺から連れて逃げて! 179 00:23:27,873 --> 00:23:30,542 見逃したかもしれません。 180 00:23:35,547 --> 00:23:38,450 2人が同じ気持ちだったら。 181 00:23:38,450 --> 00:24:11,450 ♬~ 182 00:24:20,526 --> 00:24:23,495 ただいま戻りました。 183 00:24:29,868 --> 00:24:34,206 (宗久)五右衛門 大儀であった。➡ 184 00:24:34,206 --> 00:24:36,542 助左。 はい。 185 00:24:36,542 --> 00:24:40,212 生野銀山での騒動 早馬で知らせがあった。 186 00:24:40,212 --> 00:24:44,550 銀72貫 よくぞ守り通してくれた。 187 00:24:44,550 --> 00:24:48,520 生野へは戻るには及ばぬ。 はい。 188 00:25:27,526 --> 00:25:30,863 <元亀4年1月11日。➡ 189 00:25:30,863 --> 00:25:36,201 信玄の上洛軍は 三河の野田城を戦始めに選んだ。➡ 190 00:25:36,201 --> 00:25:41,540 急を聞いた家康は 援軍を率いて 笠頭山に陣取ったが➡ 191 00:25:41,540 --> 00:25:44,443 武田の大軍の前には 身動きもできず➡ 192 00:25:44,443 --> 00:25:48,414 野田城は 僅かひとつきで陥落する。➡ 193 00:25:48,414 --> 00:25:53,552 野田城陥落から16日後の2月26日。➡ 194 00:25:53,552 --> 00:25:57,222 都で満を持していた 将軍 足利義昭が➡ 195 00:25:57,222 --> 00:26:01,827 ついに 信長追討の兵を挙げる。➡ 196 00:26:01,827 --> 00:26:08,801 将軍を敵に回した信長は 一朝にして 天下の逆徒となった> 197 00:26:19,845 --> 00:26:24,516 捨ててゆかれたのだとばかり思っていた。 198 00:26:24,516 --> 00:26:27,486 決心がつかなかったんだ。 199 00:26:33,525 --> 00:26:36,195 今は もう迷わぬ。 200 00:26:37,863 --> 00:26:40,833 どこへでも行く。 201 00:26:48,207 --> 00:26:53,879 お前とは 今夜が最後。 202 00:26:55,881 --> 00:26:59,551 最後? 203 00:26:59,551 --> 00:27:03,822 天王寺屋へ 輿入れします。 204 00:27:03,822 --> 00:27:09,495 もう お受けしてしまいました。 205 00:27:09,495 --> 00:27:11,763 天王寺屋…。 206 00:27:16,168 --> 00:27:18,103 津田宗及…。 207 00:27:18,103 --> 00:27:21,507 (天王寺屋)ハッハッハッハッハ! 208 00:27:21,507 --> 00:27:24,409 信長も 往生際の悪い。 209 00:27:24,409 --> 00:27:28,847 この期に及んで なお 将軍に和議を乞うてくるとは。 210 00:27:28,847 --> 00:27:32,518 (能登屋) いや それも 尋常の詫び方ではない。➡ 211 00:27:32,518 --> 00:27:37,189 日乗上人や松井友閑らを使者に立て➡ 212 00:27:37,189 --> 00:27:41,059 実子を人質に差し出すと 言ってきたというのだから。 213 00:27:41,059 --> 00:27:44,530 あの信長が 我が子を人質に出すと。 さよう。 214 00:27:44,530 --> 00:27:48,200 (べに屋) なんと 露骨な命乞いをすることよ。 215 00:27:48,200 --> 00:27:53,539 恭順も そう むき出しでは まことに見苦しい。 216 00:27:53,539 --> 00:27:55,474 (笑い声) 217 00:27:55,474 --> 00:27:59,411 で 義昭将軍は いかが処しあそばされました。 218 00:27:59,411 --> 00:28:02,347 無論 突き返されましたとも。 219 00:28:02,347 --> 00:28:09,021 いや 公方様も 信長の横暴には 随分と苦汁をなめられましたからね。➡ 220 00:28:09,021 --> 00:28:17,496 今度は 汝が 苦渋を味わう番だと そう思っておられるのでしょう。 221 00:28:17,496 --> 00:28:21,166 あっ 話は変わるが➡ 222 00:28:21,166 --> 00:28:27,506 天王寺屋さん そなた ゆうべ 暴漢に襲われたと聞いたが➡ 223 00:28:27,506 --> 00:28:29,441 おけがはなかったかな。 224 00:28:29,441 --> 00:28:33,378 ハハッ… もう お耳に入っておりましたか。 225 00:28:33,378 --> 00:28:35,847 いえいえ 大したことではございません。 226 00:28:35,847 --> 00:28:41,186 たかが 野良犬に ほえかけられた程度のことで…。 227 00:28:41,186 --> 00:29:25,163 ♬~ 228 00:29:25,163 --> 00:29:29,034 (能登屋) 堺の市中で そなたを狙う者といえば➡ 229 00:29:29,034 --> 00:29:33,705 織田か徳川の回し者としか 考えようがないな…。 230 00:29:35,507 --> 00:29:37,476 今井さん。 231 00:29:39,378 --> 00:29:44,850 賊の検分をお願いしたいのだが。 232 00:29:44,850 --> 00:29:49,521 手前に検分せよとは これはまた異なことを…。 233 00:30:06,138 --> 00:30:08,540 お引き取り願えませぬか。 234 00:30:08,540 --> 00:30:13,211 もし この者が 今井さんの飛脚番の者でしたら。 235 00:30:29,561 --> 00:30:31,830 今井さん。 236 00:30:35,901 --> 00:30:43,241 我ら お互いに 天下の戦を相手の商いだ。 237 00:30:43,241 --> 00:30:47,112 勝ち負けに 道は分かれようとも➡ 238 00:30:47,112 --> 00:30:54,853 どっちであれ 堺の会合衆であることは 忘れたくないものだな。 239 00:30:54,853 --> 00:30:58,123 血迷われるなよ。 240 00:31:50,108 --> 00:31:57,783 今より この今井宗久は 織田信長公に一味し➡ 241 00:31:57,783 --> 00:32:01,720 目下 西上中の武田信玄公に 戦いを挑む。 242 00:32:01,720 --> 00:32:03,855 (どよめき) 243 00:32:03,855 --> 00:32:06,124 ええい 静まれ! 244 00:32:07,726 --> 00:32:14,866 波戸場の納屋にある 全ての鉄砲弾薬 食料 金銀 南蛮品を➡ 245 00:32:14,866 --> 00:32:17,769 全て岐阜城に運び込む。 246 00:32:17,769 --> 00:32:20,205 陸路は避ける。➡ 247 00:32:20,205 --> 00:32:23,475 紀州灘を通って 尾張の港に向かう。 248 00:32:25,076 --> 00:32:31,817 これは 商いではないぞ。 戦だ! 249 00:32:31,817 --> 00:32:36,221 船団の指揮は このわしが執る。 250 00:32:36,221 --> 00:32:42,093 今井の立ちゆく道は 信玄公の上洛を阻むよりほかにはない。 251 00:32:42,093 --> 00:32:44,362 よいな! 252 00:32:57,909 --> 00:33:01,513 大元様 お願いがございます。 253 00:33:01,513 --> 00:33:05,183 ぬしの願いは 常に一つ 海へ出たいと申すことであろう。 254 00:33:05,183 --> 00:33:07,118 その願いは 聞き届けてやるぞ。 255 00:33:07,118 --> 00:33:10,856 五右衛門のことでございます。 そのことは もう申すな。 256 00:33:10,856 --> 00:33:14,726 生野銀山で 御寮様のお命を救ったのは 五右衛門でございます。 257 00:33:14,726 --> 00:33:17,529 どうか 生野での働きに免じて➡ 258 00:33:17,529 --> 00:33:20,432 命だけは 助けてやってくださいまし。 259 00:33:20,432 --> 00:33:24,402 助左。 我らは 五右衛門の命を助けようと➡ 260 00:33:24,402 --> 00:33:26,872 必死になってるではないか。➡ 261 00:33:26,872 --> 00:33:32,143 信長公さえ勝てばだな 誰も 五右衛門を殺せとは言えなくなる。 262 00:33:35,213 --> 00:33:38,116 そちも 五右衛門の命を助けたくばな➡ 263 00:33:38,116 --> 00:33:40,886 我らと一緒に岐阜へ来い。 264 00:33:40,886 --> 00:33:43,788 お供いたします。 はい! 265 00:33:43,788 --> 00:33:49,561 ♬~ 266 00:33:49,561 --> 00:33:56,902 <今井の存亡をかけた船団が 堺の港を後に出帆していく。➡ 267 00:33:56,902 --> 00:34:01,506 早 4月も終わろうという季節であった> 268 00:34:01,506 --> 00:34:17,789 ♬~ 269 00:34:46,551 --> 00:34:54,426 みんな出ていったわ。 岐阜の信長様の陣へ…。 270 00:34:54,426 --> 00:34:57,896 助左も? 271 00:34:57,896 --> 00:34:59,831 ええ。 272 00:34:59,831 --> 00:35:02,167 大元様も? 273 00:35:02,167 --> 00:35:04,135 ええ。 274 00:35:07,038 --> 00:35:10,008 信玄に勝てるものか…。 275 00:35:11,843 --> 00:35:14,813 死にに行くようなもんだ。 276 00:35:28,393 --> 00:35:32,530 (兼久)三河の徳川家康というのは 大した武将だな。➡ 277 00:35:32,530 --> 00:35:39,204 信長は嫌いだが 家康には 何か こう➡ 278 00:35:39,204 --> 00:35:43,475 人の血の温かさのようなものを感じる。 279 00:35:45,543 --> 00:35:50,882 (兼久)家康のような武将となら 組んで 商いがしてみたかったな。 280 00:35:50,882 --> 00:35:57,856 もう 商いの道具など 何も残ってはおりません。 281 00:36:00,158 --> 00:36:08,500 あの親父殿は とうとう 己がせがれには 何一つとして残していかなかった。 282 00:36:08,500 --> 00:36:11,836 俺の方も どういうわけか 最後まで➡ 283 00:36:11,836 --> 00:36:15,807 慕う気にも 敬う気にも なれなかったがな。 284 00:36:28,853 --> 00:36:31,523 (信長)これも そうか。 285 00:36:31,523 --> 00:36:35,860 はい。 南蛮地図屏風にございます。 286 00:36:35,860 --> 00:36:39,731 なるほど。 フロイスがくれたグローボを➡ 287 00:36:39,731 --> 00:36:43,735 平たくすれば こういうことになるか…。 はい。 288 00:36:43,735 --> 00:36:48,873 行ってみたいものだな これらの国々へ。 289 00:36:48,873 --> 00:36:53,211 殿がお望みとあらば いつでも 船を仕立てまする。 290 00:36:53,211 --> 00:36:58,550 その時は 宗久 水先案内を務めさせていただきます。 291 00:36:58,550 --> 00:37:02,420 いずれは そういう日を迎えたいものだ。 292 00:37:02,420 --> 00:37:04,823 宗久。 はい。 293 00:37:04,823 --> 00:37:09,160 この度は 船 何艘を従えて来た。 294 00:37:09,160 --> 00:37:16,034 はい。 昨日4艘 今日4艘 明日4艘➡ 295 00:37:16,034 --> 00:37:19,170 計12艘で参りました。 296 00:37:19,170 --> 00:37:23,842 それらの荷を わしに どうせよというのだ。 297 00:37:23,842 --> 00:37:28,179 来るべき武田との一戦に 用立てていただきますれば➡ 298 00:37:28,179 --> 00:37:30,115 幸せに存じます。 299 00:37:30,115 --> 00:37:34,519 それで 勘定は合うのか。 300 00:37:34,519 --> 00:37:41,192 武田に勝っていただきますれば 勘定は合いまする。 301 00:37:41,192 --> 00:37:45,530 わしが 信玄に勝つと思うか。 302 00:37:45,530 --> 00:37:49,801 勝っていただかなければ この今井も滅びまする。 303 00:37:52,403 --> 00:37:56,875 宗久 もちっと近う。 304 00:37:56,875 --> 00:37:58,843 はい。 305 00:38:05,683 --> 00:38:10,655 信玄は死んだかもしれぬ。 306 00:38:12,357 --> 00:38:16,161 なんと仰せられました! 307 00:38:16,161 --> 00:38:20,131 信玄が死んだ。 308 00:38:22,500 --> 00:38:25,170 まことに…。 309 00:38:25,170 --> 00:38:31,509 まさに信玄が死んだとしか思えない動きを 武田軍が始めている。 310 00:38:31,509 --> 00:38:35,847 信玄ならば 決して動かぬ方向への移動➡ 311 00:38:35,847 --> 00:38:40,718 すなわち 甲斐への引き揚げを始めたのだ。 312 00:38:40,718 --> 00:38:43,721 引き揚げと…。 313 00:38:43,721 --> 00:38:51,396 武田の全軍が 引き潮のように 今も 東山道を甲斐へと退いている。 314 00:38:51,396 --> 00:38:56,534 武田の全軍が… 引き揚げと! 315 00:38:56,534 --> 00:39:02,207 (信長)信じ難い事態ではあるが 事実だ。 316 00:39:04,809 --> 00:39:09,681 信玄公が…。 317 00:39:09,681 --> 00:39:14,152 我らは 九死に一生を得た。 318 00:39:14,152 --> 00:39:19,490 天の恩寵を得て 死地より脱したのだ。 319 00:39:19,490 --> 00:39:21,826 殿! 320 00:39:21,826 --> 00:39:28,800 宗久。 我らは勝ったぞ。 321 00:39:30,835 --> 00:39:33,104 はい! 322 00:39:36,507 --> 00:39:38,476 はい…! 323 00:39:40,845 --> 00:39:44,816 <今井宗久が泣いた> 324 00:39:49,187 --> 00:39:53,858 <武田信玄は 信州伊那郡の駒場の陣中で➡ 325 00:39:53,858 --> 00:39:57,729 53歳を一期として 息を引き取った。➡ 326 00:39:57,729 --> 00:40:01,699 4月12日のことである> 327 00:40:18,883 --> 00:40:21,853 助左! はい! 328 00:40:25,556 --> 00:40:28,226 久しぶりに船に乗った気分は どうだ。 329 00:40:28,226 --> 00:40:33,197 はい! 爽快だろう。 フフフ…。 330 00:40:34,899 --> 00:40:40,238 港へ戻ったら このまま水夫として働いてよいぞ。 331 00:40:40,238 --> 00:40:43,141 今井は これから ますます大きくなる。 332 00:40:43,141 --> 00:40:48,579 助左。 兼久の片腕になってやってくれ。 333 00:40:48,579 --> 00:40:52,450 兼久には 交易船1艘 与えようと思う。 334 00:40:52,450 --> 00:40:56,921 ぬしは それに乗って 兼久を助けてやってくれ。 335 00:40:56,921 --> 00:40:59,590 やってくれるな 助左。 336 00:41:07,532 --> 00:41:12,870 大元様。 船が堺へ着きましたら➡ 337 00:41:12,870 --> 00:41:16,140 お暇を頂きとう存じます。 338 00:41:19,744 --> 00:41:23,514 今井を辞めると申すのか。 はい。 339 00:41:23,514 --> 00:41:27,218 訳を申せ! 340 00:41:27,218 --> 00:41:34,559 今井の危機は去ったのだ。 五右衛門も この手で殺さずに済む。 341 00:41:34,559 --> 00:41:39,230 不服があるならば 申せ。 今ならば 何なりとかなえてやる。 342 00:41:39,230 --> 00:41:41,566 いえ 不服ではございません。 343 00:41:41,566 --> 00:41:45,436 呂宋へ行く夢は捨てたか。 344 00:41:45,436 --> 00:41:49,440 父親のように船長になると➡ 345 00:41:49,440 --> 00:41:51,909 そう言ったことは 偽りか! 346 00:41:51,909 --> 00:41:55,580 呂宋へ渡る夢も 父のような船長になる夢も➡ 347 00:41:55,580 --> 00:41:59,250 捨ててはおりません。 それらの夢を➡ 348 00:41:59,250 --> 00:42:03,855 己一人の力で つかみ取ってみたいんでございます。 349 00:42:03,855 --> 00:42:07,725 奉公を捨てて自立したいと申すか。 350 00:42:07,725 --> 00:42:10,194 ぬしは 我に盾つく気か! 351 00:42:10,194 --> 00:42:13,531 大元様に盾つくなど とんでもないことでございます。 352 00:42:13,531 --> 00:42:19,404 生まれ落ちてからこの方 今井様の奉公人だった私でございます。 353 00:42:19,404 --> 00:42:27,078 今日まで育ててくださったご恩は 生涯 忘れるものではございません。 354 00:42:27,078 --> 00:42:36,754 ただ… ただ 今は 己一人で 思いっきり 商いの中に生きてみたいんでございます。 355 00:42:36,754 --> 00:42:39,223 己の思いどおりの商いができれば➡ 356 00:42:39,223 --> 00:42:44,896 たとえ 野末に果てようとも 悔いは残りません。 357 00:42:44,896 --> 00:42:51,569 大元様 どうか 独り立ちすることを お許しください! 358 00:43:01,179 --> 00:43:07,518 ♬~ 359 00:43:07,518 --> 00:43:10,188 <助左衛門は その目で➡ 360 00:43:10,188 --> 00:43:14,525 中世の巨大なエネルギーが 最後の炎を吹き上げて➡ 361 00:43:14,525 --> 00:43:18,863 突然 嘘のように 霧散し去っていく様を見た。➡ 362 00:43:18,863 --> 00:43:23,534 若者が受けた衝撃は 今いるところを出ていくという➡ 363 00:43:23,534 --> 00:43:28,406 抑え難い無謀の行為となって現れる。➡ 364 00:43:28,406 --> 00:43:34,178 燃え落ちる太陽を背に 未曽有の嵐を乗り越えた船が➡ 365 00:43:34,178 --> 00:43:38,883 今 堺の港へ帰っていく> 366 00:43:38,883 --> 00:43:46,157 ♬~