1 00:00:02,102 --> 00:02:40,093 ♬~ 2 00:02:45,732 --> 00:02:49,503 <呂宋丸が沈没する。➡ 3 00:02:49,503 --> 00:02:52,205 天正13年3月。➡ 4 00:02:52,205 --> 00:02:58,912 呂宋島を出航して5日目の 高砂沖での遭難であった> 5 00:03:00,480 --> 00:03:03,150 (助左衛門)帆を巻け! 6 00:03:03,150 --> 00:03:05,452 帆を下ろせ~! 7 00:03:08,021 --> 00:03:10,023 帆を巻け~! 8 00:03:21,501 --> 00:03:25,505 帆を巻け! 帆を巻け! 9 00:03:28,842 --> 00:03:31,144 按針! 10 00:03:42,389 --> 00:03:46,193 暗礁だ! 暗礁に乗り上げるぞ~! 11 00:03:46,193 --> 00:03:48,195 暗礁!? 12 00:03:55,535 --> 00:03:57,537 ああ~! 13 00:04:00,807 --> 00:04:27,501 ♬~ 14 00:04:27,501 --> 00:04:30,170 夢ではなかったんだな 按針。 15 00:04:30,170 --> 00:04:33,840 (按針)はい 船長…。 16 00:04:33,840 --> 00:04:38,712 沈んでしまったんだな 呂宋丸は。 17 00:04:38,712 --> 00:04:44,851 呂宋で積み込んだ 蜜も鹿皮も酒も➡ 18 00:04:44,851 --> 00:04:48,522 みんな 海の底 沈んでしまった。 19 00:04:48,522 --> 00:04:50,857 水夫たちは どうした? 20 00:04:50,857 --> 00:04:53,760 端舟を下ろす間も なかった…。 21 00:04:53,760 --> 00:04:55,729 幾人 生き残っただろう…。 22 00:04:55,729 --> 00:05:00,734 みんな 高砂へ泳いで逃げたさ。 心配ない。 23 00:05:03,136 --> 00:05:07,841 とうとう やられてしまった…。 24 00:05:12,813 --> 00:05:19,486 水 欲しいなあ…。 ああ。 25 00:05:19,486 --> 00:05:25,825 船長 嫁や子は? 26 00:05:25,825 --> 00:05:30,497 父や母は? 27 00:05:30,497 --> 00:05:34,367 2人とも死んだ。 28 00:05:34,367 --> 00:05:40,507 私も 身内いない。 ハハハ… いなくてよかったな。 29 00:05:40,507 --> 00:05:47,848 俺も 親父と同じように死ぬのか 海で…。 30 00:05:47,848 --> 00:05:52,519 船長の父も 船乗りだった? 31 00:05:52,519 --> 00:05:56,189 交易船の船長だった。 32 00:05:56,189 --> 00:05:59,092 死んだのは いつだ? 33 00:05:59,092 --> 00:06:02,796 俺が 4つか5つの頃➡ 34 00:06:02,796 --> 00:06:07,467 琉球へ船出したきり 戻ってこん。 35 00:06:07,467 --> 00:06:11,805 それ 死んだとは決まっていないよ。 36 00:06:11,805 --> 00:06:18,144 船沈んでも 今の私たちのように 生き残ったかもしれないよ。 37 00:06:18,144 --> 00:06:20,814 親父は死んださ。 38 00:06:20,814 --> 00:06:24,517 俺たちだって もう長くはもつまい。 39 00:06:27,687 --> 00:06:31,157 何か聞こえないか? 40 00:06:31,157 --> 00:06:33,827 何が? 41 00:06:33,827 --> 00:06:38,131 近くに船がいる! どこだ!? 42 00:06:39,699 --> 00:06:43,503 船だ…。 おい 船だ! 43 00:06:43,503 --> 00:06:48,208 按針 叫べ! お~い! お~い! 44 00:06:50,377 --> 00:06:53,513 八幡大菩薩…。 八幡船だ! 45 00:06:53,513 --> 00:06:56,416 か… 海賊か!? 46 00:06:56,416 --> 00:06:59,853 時化あさりをやってるんだ。 見つかったら殺されるぞ。 47 00:06:59,853 --> 00:07:04,557 聞こえたかな 私たちの声…。 シッ! 静かに。 48 00:07:28,481 --> 00:07:30,417 何だ こりゃ? 49 00:07:30,417 --> 00:07:32,819 人間じゃねえか。 50 00:07:32,819 --> 00:07:36,156 よっしゃ 殺すか。 ひとまず 連れてこう。 51 00:07:36,156 --> 00:07:39,059 おし! おい 乗れ 乗れ! 52 00:07:39,059 --> 00:07:41,361 さあ 乗れい! 53 00:07:57,844 --> 00:08:00,747 (鬼丸)そっちは。金めのものは 何も持っておりません。 54 00:08:00,747 --> 00:08:03,450 明国人のようだな。 按針のようで。 55 00:08:03,450 --> 00:08:06,353 やかましい! 分かってるよ。 56 00:08:06,353 --> 00:08:09,789 お前 羅針盤が操れるか。 は… はい。 57 00:08:09,789 --> 00:08:14,661 ちょうどよかった。 おとといの戦でな うちの按針が死んじまったんだ。 58 00:08:14,661 --> 00:08:18,465 ぬしを 今日から この船の按針にしてやる。 59 00:08:18,465 --> 00:08:20,800 こっちは 捨てとけ。 へい。 60 00:08:20,800 --> 00:08:23,136 両手を切り落として 海へ投げ込め。 61 00:08:23,136 --> 00:08:26,039 (按針)船長! 舵取りができます! 舵取りが! 62 00:08:26,039 --> 00:08:29,476 あいにくだったな。 舵取りは 間に合ってんだよ。 63 00:08:29,476 --> 00:08:32,379 医術の…! 医術の心得もございます! 64 00:08:32,379 --> 00:08:34,381 待て。 65 00:08:37,817 --> 00:08:40,153 医術の心得があると? 66 00:08:40,153 --> 00:08:42,822 はい。 南蛮仕込みでございます。 67 00:08:42,822 --> 00:08:46,493 放してやれ。 へい。 68 00:08:46,493 --> 00:08:49,396 ついてこい。 69 00:08:49,396 --> 00:08:53,400 行けよ! ほら! (按針)船長! 70 00:09:01,441 --> 00:09:04,110 お頭。 71 00:09:04,110 --> 00:09:06,813 座れ! 72 00:09:08,448 --> 00:09:12,318 南蛮流の医術の心得のある者を 連れてまいりましたが➡ 73 00:09:12,318 --> 00:09:14,320 いかがいたしましょう。 74 00:09:27,801 --> 00:09:32,138 (甚兵衛)南蛮の医術を どこで会得した。 75 00:09:32,138 --> 00:09:38,011 はい… 堺ノ荘で ポルトガルのパーデレから教わりました。 76 00:09:38,011 --> 00:09:44,484 う~ん 堺の船人か。 はい。 77 00:09:44,484 --> 00:09:48,154 鬼丸。 見せてやれ。 78 00:09:48,154 --> 00:09:50,156 はい。 79 00:10:02,168 --> 00:10:04,170 みてくれ。 80 00:10:09,509 --> 00:10:13,179 ここに 鉛玉が入っている。 81 00:10:13,179 --> 00:10:16,850 明国の官兵に撃たれたんだ。 82 00:10:16,850 --> 00:10:20,520 鉛玉には 毒があるだろう。 はい。 83 00:10:20,520 --> 00:10:22,856 早速に かかってくれ。 84 00:10:22,856 --> 00:10:24,791 かかるとは…。 85 00:10:24,791 --> 00:10:28,728 この鉛玉を抜くんだ。 手前が!? 86 00:10:28,728 --> 00:10:32,198 南蛮流なら できるはずだ。 87 00:10:32,198 --> 00:10:35,535 お前 口から出任せを 言ったんじゃねえんだろうな。 88 00:10:35,535 --> 00:10:37,470 いや 出任せなぞ言っておりません。 89 00:10:37,470 --> 00:10:41,207 そりゃ 医術の心得はあります。 心得はありますが…➡ 90 00:10:41,207 --> 00:10:43,877 その道具がありません。 91 00:10:43,877 --> 00:10:46,179 おい。 (鬼丸)はい。 92 00:11:00,159 --> 00:11:04,497 刃物… 糸と針…。 93 00:11:04,497 --> 00:11:08,368 あっ 玉抜きもある。 94 00:11:08,368 --> 00:11:12,372 おい 要るものがあるなら 何でも言え。 95 00:11:15,508 --> 00:11:18,211  回想 (美緒)焼酎を…。 96 00:11:19,846 --> 00:11:22,749 焼酎を…。 (鬼丸)焼酎?➡ 97 00:11:22,749 --> 00:11:26,719 焼酎が要るのか? はい。 98 00:11:26,719 --> 00:11:32,725  回想  焼酎を…。 焼酎を温めてください。 99 00:11:37,197 --> 00:11:43,202 ヤシの油と 卵の白身をたくさん。 100 00:11:46,873 --> 00:11:50,210 焼酎を温めてください。 101 00:11:50,210 --> 00:11:54,881 あ… それから ヤシの油と 卵の白身をたくさん。 102 00:11:54,881 --> 00:11:58,751 ヤシの油はあるけど 卵はねえぞ。 103 00:11:58,751 --> 00:12:01,487 あ… なければ構いません。 104 00:12:01,487 --> 00:12:03,489 うん。 105 00:12:07,827 --> 00:12:11,164 相当に痛いですよ 南蛮流は…。 106 00:12:11,164 --> 00:12:13,099 うむ。 107 00:12:13,099 --> 00:14:17,824 ♬~ 108 00:14:17,824 --> 00:14:19,759 ふう~。 109 00:14:19,759 --> 00:14:23,162 おい 済んだのか…。 110 00:14:23,162 --> 00:14:25,865 済んだのか? 111 00:14:34,507 --> 00:14:37,510 お頭! (一同)お頭! 112 00:14:42,181 --> 00:14:44,484 お頭。 113 00:14:51,524 --> 00:14:54,193 (按針)船長! 按針。 114 00:14:54,193 --> 00:14:59,499 船長 よかった。 よかった…。 115 00:15:17,417 --> 00:15:21,821 <天正13年3月21日。➡ 116 00:15:21,821 --> 00:15:23,756 羽柴秀吉は➡ 117 00:15:23,756 --> 00:15:29,162 紀伊の根来寺に籠もる2万の僧兵と 雑賀一揆軍 撲滅のため➡ 118 00:15:29,162 --> 00:15:36,035 10万の大軍を起こして大坂を発し 途中 堺に休息する> 119 00:15:36,035 --> 00:16:04,797 ♬~ 120 00:16:04,797 --> 00:16:07,700 (秀吉)止まれ! 121 00:16:07,700 --> 00:16:10,470 三成を これへ。 はっ! 122 00:16:10,470 --> 00:16:29,822 ♬~ 123 00:16:29,822 --> 00:16:33,159 (三成)殿のお目に留まりました女は➡ 124 00:16:33,159 --> 00:16:37,163 今井宗薫が女房にございます。 125 00:16:50,510 --> 00:16:53,412 宗薫の女房か…。 126 00:16:53,412 --> 00:16:58,384 (三成)従いまして 殿のおそばに 連れてまいることは かないませぬ。➡ 127 00:16:58,384 --> 00:17:00,786 何とぞ お諦めくださいますよう。 128 00:17:00,786 --> 00:17:02,722 何が かなわぬ。 129 00:17:02,722 --> 00:17:06,959 申し上げましたとおり 既に 人の女房にございます。 130 00:17:06,959 --> 00:17:12,765 誰の女房だろうと構わん。 わしは 一目惚れしてしまったんだ。 131 00:17:12,765 --> 00:17:15,468 殿のお言葉とも思えませぬ。 132 00:17:15,468 --> 00:17:17,470 名は 何と申す。 133 00:17:19,138 --> 00:17:21,140 名は!? 134 00:17:22,808 --> 00:17:25,111 美緒殿とか…。 135 00:17:27,680 --> 00:17:29,982 美緒か…。 136 00:17:34,820 --> 00:17:41,594 今井宗薫といえば 宗久亡きあと 徳川方と通じている商人ではないか。 137 00:17:41,594 --> 00:17:43,829 (三成)確かに。 138 00:17:43,829 --> 00:17:49,502 宗薫には いずれ 灸を据えてやらねばならぬ。 139 00:17:49,502 --> 00:17:53,839 宗薫の女房と知れば ますます 後へは引けぬな。 140 00:17:53,839 --> 00:17:58,177 今井家は 信長公 統治以来➡ 141 00:17:58,177 --> 00:18:02,782 堺会合衆の中でも 筆頭の豪商にございます。 142 00:18:02,782 --> 00:18:07,119 つまらぬ醜聞で 殿の御名を 汚すようなことがございませぬよう➡ 143 00:18:07,119 --> 00:18:11,991 ご自重くださいませ。 こなたの説教は たくさん たくさん。 144 00:18:11,991 --> 00:18:19,465 それよりも 三成 こなた この堺を治めてみる気はないか。 145 00:18:19,465 --> 00:18:23,135 は? 松井友閑に代わって➡ 146 00:18:23,135 --> 00:18:28,007 堺の奉行をやってみる気はないかと 聞いておるんだ。 147 00:18:28,007 --> 00:18:30,476 堺の奉行を…。 148 00:18:30,476 --> 00:18:34,347 堺は 今もって 天下一富める町だ。 149 00:18:34,347 --> 00:18:40,820 おことの経世の才で この堺の町を 存分に操ってみないか。 150 00:18:40,820 --> 00:18:46,492 恐れながら 堺には 36名の会合衆がおります。 151 00:18:46,492 --> 00:18:51,163 堺の仕置きは 全て 彼らの自治に任されております。 152 00:18:51,163 --> 00:18:53,499 私ごときが立ち入る余地はございません。 153 00:18:53,499 --> 00:18:56,402 友閑までは それでよかった。 154 00:18:56,402 --> 00:19:00,106 しかし 天下が統一に向かっていく今➡ 155 00:19:00,106 --> 00:19:04,777 いつまでも 堺を格別扱いにはできまい。 156 00:19:04,777 --> 00:19:09,081 会合衆も いずれは なくさねばならぬ。 157 00:19:10,649 --> 00:19:17,123 まあ 根来 雑賀の征伐でもしながら ゆっくり考えておいてくれ。 158 00:19:17,123 --> 00:19:19,058 はっ…。 159 00:19:19,058 --> 00:19:20,993 ⚟(波の音) 160 00:19:20,993 --> 00:19:28,134 おお… 潮騒が ここまで聞こえる。 161 00:19:28,134 --> 00:19:33,005 フハハハハハハハッ! 162 00:19:33,005 --> 00:19:35,808 宗薫の女房か…。➡ 163 00:19:35,808 --> 00:19:39,678 アハハハハハ…。 164 00:19:39,678 --> 00:19:42,681 これは面白いな。 165 00:19:42,681 --> 00:19:49,155 ⚟(波の音) 166 00:19:49,155 --> 00:19:57,496 ♬~ 167 00:19:57,496 --> 00:20:01,167  心の声  もう帰ってきても いいころなのに➡ 168 00:20:01,167 --> 00:20:04,070 助左の船は…。 169 00:20:04,070 --> 00:20:24,056 ♬~ 170 00:20:31,530 --> 00:20:36,235 え~ 鹿皮が15枚。 よし! 次。 171 00:20:40,539 --> 00:20:44,543 え~と 麻布が10反。 よし。 172 00:20:48,881 --> 00:20:52,885 鉄鍋が50。 よし。 173 00:20:54,754 --> 00:21:02,828 えっと 「書経」「礼記」 「論語」に 「大学」に 「中庸」です。 174 00:21:02,828 --> 00:21:05,531 書物か。 よし。 175 00:21:07,166 --> 00:21:10,169 おうおう…。 よし 俺 手伝う。 176 00:21:38,130 --> 00:21:44,069 「論語」か…。 こんなものまで密売してるのか。 177 00:21:44,069 --> 00:21:46,839 勝手に品物に触ると殺されるぞ。 178 00:21:46,839 --> 00:21:51,210 荷は どこへ運ぶんだ。 ああ? 琉球だ。 179 00:21:51,210 --> 00:21:53,546 日本へは行かないのか。 180 00:21:53,546 --> 00:21:58,884 あいにくだったな。 この高砂丸は 高砂と琉球が縄張りなの。 181 00:21:58,884 --> 00:22:03,289 だから 高砂で仕入れた明の品物を琉球へ運び➡ 182 00:22:03,289 --> 00:22:07,493 長崎から積んできた日本の銀と交換して また 高砂へ引き返す。 183 00:22:07,493 --> 00:22:10,830 で また 琉球へ行って それで また 高砂と…➡ 184 00:22:10,830 --> 00:22:13,165 琉… こんなことして…。 185 00:22:13,165 --> 00:22:16,835 まあ 4~5年は 日本には帰れねえな。 186 00:22:16,835 --> 00:22:19,738 4~5年!? そう。 フフフ…。 187 00:22:19,738 --> 00:22:22,508 おい…。 いや~ まあまあ…。 188 00:22:22,508 --> 00:22:25,411 ハッハッハッハ ハッハッハッハ。 189 00:22:25,411 --> 00:23:01,146 ♬~ 190 00:23:01,146 --> 00:23:08,020 おぬし 俺の足のことを 一度も尋ねなかったな。 191 00:23:08,020 --> 00:23:10,155 へい…。 ハハハハ。 192 00:23:10,155 --> 00:23:15,027 やっぱり 気にしているのか。 そりゃ…。 193 00:23:15,027 --> 00:23:20,499 すっかり よくなったよ。 傷口も塞がった。 194 00:23:20,499 --> 00:23:23,402 そいつは よかった。 195 00:23:23,402 --> 00:23:29,842 助左… といったかな。 おぬしの名は。 196 00:23:29,842 --> 00:23:34,513 今は 納屋助左衛門と名乗っております。 197 00:23:34,513 --> 00:23:39,018 いい名だな。 親父の名を継いだのか。 198 00:23:39,018 --> 00:23:44,523 いえ。 親父の名は 甚九郎といいました。 199 00:23:44,523 --> 00:23:51,864 甚九郎…。 へい。甚九郎か。 似ているな。 200 00:23:51,864 --> 00:23:55,734 俺の名を聞いたか。 201 00:23:55,734 --> 00:23:59,538 甚兵衛っていうんだ。 202 00:23:59,538 --> 00:24:03,809 で 親父殿は。 203 00:24:03,809 --> 00:24:07,146 あ… 死にました。 204 00:24:07,146 --> 00:24:09,081 いつ。 205 00:24:09,081 --> 00:24:12,017 25年ほど前に。 206 00:24:12,017 --> 00:24:16,488 お前が いくつの時だ。 207 00:24:16,488 --> 00:24:19,158 まだ 5つのガキでした。 208 00:24:19,158 --> 00:24:21,827 う~ん そうか…。 209 00:24:21,827 --> 00:24:25,130 で 親父の顔を覚えてるか? 210 00:24:26,699 --> 00:24:31,837 い… いえ まるで。 そうだろうな。 211 00:24:31,837 --> 00:24:38,177 25年前というと 俺が船を沈めた時だ。 212 00:24:38,177 --> 00:24:40,846 じゃあ 難破をしたんで? 213 00:24:40,846 --> 00:24:45,184 いや 難破といっても 時化に遭ったんじゃない。 214 00:24:45,184 --> 00:24:51,056 海賊の戦いに巻き込まれたんだ。 215 00:24:51,056 --> 00:24:56,195 安芸の厳島沖でな…。 216 00:24:56,195 --> 00:25:00,065 で どこから船出をなさったんで? 217 00:25:00,065 --> 00:25:04,003 うん? いや 分からん。 218 00:25:04,003 --> 00:25:08,140 ご自分の船出をなさった港が分からない? 219 00:25:08,140 --> 00:25:12,011 どうしても思い出せないんだ。 220 00:25:12,011 --> 00:25:14,013 思い出せない? 221 00:25:14,013 --> 00:25:19,151 奇妙だろう。 だが あるんだ こういうことも。 222 00:25:19,151 --> 00:25:21,820 こういうこととは…。 223 00:25:21,820 --> 00:25:28,694 船が火だるまのようになって 沈んでいったありさま➡ 224 00:25:28,694 --> 00:25:32,464 今でも 目に焼き付いている。 225 00:25:32,464 --> 00:25:36,668 が 以前のことが どうしても思い出せない。 226 00:25:36,668 --> 00:25:40,839 俺の身分 俺の名前…。 227 00:25:40,839 --> 00:25:42,775 そんなことが…。 228 00:25:42,775 --> 00:25:45,177 本当にあるんだ。 229 00:25:45,177 --> 00:25:52,885 名前は 25年たった今でも 思い出せない。 230 00:25:57,756 --> 00:26:02,461 ああ あるいは…➡ 231 00:26:02,461 --> 00:26:07,166 甚九郎といったかもしれんな。 232 00:27:08,794 --> 00:27:12,798 (桔梗)どうぞ。 中で見たら? 233 00:27:22,341 --> 00:27:24,810 笠を取ったら? 234 00:27:24,810 --> 00:27:26,812 (五右衛門)ああ…。 235 00:27:43,495 --> 00:27:47,799 何だ 空っぽじゃないか。 236 00:27:49,368 --> 00:27:52,504 堺へは 唐物の仕入れで来たの? 237 00:27:52,504 --> 00:27:55,807 うん? ああ… まあな。 238 00:27:58,844 --> 00:28:02,714 葡萄酒と それから 蜂蜜ぐらいしかないよ。 239 00:28:02,714 --> 00:28:05,017 それも ここにあるだけ…。 240 00:28:07,653 --> 00:28:15,127 船が着けば また いろんな品物が入ってくるんだけどね。 241 00:28:15,127 --> 00:28:18,997 まだ 帰ってこない…。 242 00:28:18,997 --> 00:28:22,000 呂宋という国まで行ってるんだ。 243 00:28:22,000 --> 00:28:24,469 ふ~ん…。 244 00:28:24,469 --> 00:28:28,173 また 呂宋行ったのか… 助左は。 245 00:28:29,808 --> 00:28:35,147 お前様は 助左の知り合いなの? 246 00:28:35,147 --> 00:28:43,455 おかしいじゃないか。 呂宋へ渡った船が 6月の今になっても戻ってこねえなんて。 247 00:28:48,694 --> 00:29:01,707 (泣き声) 248 00:29:16,755 --> 00:29:20,459 まだ風向きは変わっていない。 249 00:29:20,459 --> 00:29:22,761 まだ 間に合うよね。 250 00:29:24,329 --> 00:29:28,033 ぬしは 助左の女房か? 251 00:29:29,801 --> 00:29:36,141 ♬~ 252 00:29:36,141 --> 00:29:39,144 俺の名は…。 五右衛門。 253 00:29:40,812 --> 00:29:44,149 なぜ知ってる。 254 00:29:44,149 --> 00:29:48,820 助左から聞いていた。 善住坊にも。 255 00:29:48,820 --> 00:29:51,823 善住坊まで知ってるのか。 256 00:29:54,159 --> 00:29:57,062 (桔梗)加賀で育ててもらったから…。 257 00:29:57,062 --> 00:29:59,831 加賀でといやあ…。 258 00:29:59,831 --> 00:30:03,135 それじゃ ぬしは 宗久の隠し子の…。 259 00:30:07,706 --> 00:30:15,847 そうか… あの時の しまさんが抱いていた赤子が➡ 260 00:30:15,847 --> 00:30:18,150 助左の女房に…。 261 00:30:23,522 --> 00:30:26,425 これからも 時々 様子を見に来る。 262 00:30:26,425 --> 00:30:29,394 助左のことは 心配いらぬ。 263 00:30:29,394 --> 00:30:33,398 あいつは 必ず… 必ず戻ってくる。 264 00:31:15,507 --> 00:31:17,442 はっ…。 265 00:31:17,442 --> 00:31:21,380 ハハ…。 いや 構わぬ 構わぬ。 266 00:31:21,380 --> 00:31:26,518 明国の古書が読めるのか。 あ いえ…。 267 00:31:26,518 --> 00:31:32,858 古書には 五経四書というのがあってな それぞれに 値段が違うんだ。 268 00:31:32,858 --> 00:31:37,529 おぬしの手にしている「孟子」は 日本では売れんのだ。 269 00:31:37,529 --> 00:31:41,533 さあ 読んでみろ。 はい。 270 00:31:43,201 --> 00:31:48,507 え~ 「じょ 上下…」。 ハハ…。 ちょっと貸せ ちょっと貸せ。 271 00:31:50,542 --> 00:31:55,881 「上下こもごも利をとれば 国危うし」。 272 00:31:55,881 --> 00:32:01,486 「上の者も 下の者も 一人だけ 利に走れば➡ 273 00:32:01,486 --> 00:32:05,357 国が滅びる」といっているんだ。 全く…。 274 00:32:05,357 --> 00:32:08,660 そっちのを貸せ。 は… はい。 275 00:32:10,495 --> 00:32:13,832 うん。 これは「論語」だ。 はい。 276 00:32:13,832 --> 00:32:19,504 「その父 羊を盗みて 子 これを証せり」。 277 00:32:19,504 --> 00:32:25,377 「父親が盗みを働いたのを 子が役所に届け出た」というんだ。 278 00:32:25,377 --> 00:32:29,514 ハッ… おぬしなら どうする。 279 00:32:29,514 --> 00:32:32,184 私なら 訴え出ません。 280 00:32:32,184 --> 00:32:36,521 そうかな? ハッハッハッハ。 281 00:32:36,521 --> 00:32:40,859 しかし 明の古書というのは なかなか面白いもんでございますなあ。 282 00:32:40,859 --> 00:32:44,196 好きな時に来て 好きなだけ読め。 283 00:32:44,196 --> 00:32:47,199 はい。 ハッハッハッハ。はい。 284 00:32:49,534 --> 00:32:51,870 お頭。 うん? 285 00:32:51,870 --> 00:32:55,540 堺へ行かれたことは…。 286 00:32:55,540 --> 00:32:59,878 あるかもしれん。 ないかもしれんよ。 287 00:32:59,878 --> 00:33:06,885 では あの おきくという女子の名に 聞き覚えは…。 288 00:33:11,823 --> 00:33:15,494 (鬼丸)お頭! 水くみ場が見えてきました。 岸に着けますか? 289 00:33:15,494 --> 00:33:19,364 (甚兵衛)沖から 艀を出せ。 手間はかかるが その方が安心だ。 290 00:33:19,364 --> 00:33:21,366 へい。 291 00:33:51,863 --> 00:33:55,166 うっ! うう…。 292 00:33:59,204 --> 00:34:03,508 (矢が刺さる音) 293 00:34:10,482 --> 00:34:13,818 戻ってきました。 (按針)待て。 294 00:34:13,818 --> 00:34:16,488 乗ってる人 違う。 295 00:34:16,488 --> 00:34:18,423 明国の官兵だ! 296 00:34:18,423 --> 00:34:20,725 (矢が刺さる音) うっ! 297 00:34:22,827 --> 00:34:24,763 按針! 298 00:34:24,763 --> 00:34:26,765 うっ! 299 00:34:28,500 --> 00:34:31,503 錨を上げろ! 船を出せ! 300 00:34:36,841 --> 00:34:39,177 お頭! 301 00:34:39,177 --> 00:35:09,474 ♬~ 302 00:35:09,474 --> 00:35:12,377 皆殺しにしろ! 303 00:35:12,377 --> 00:35:14,346 うっ! 304 00:35:14,346 --> 00:35:36,701 ♬~ 305 00:35:36,701 --> 00:35:41,406 ここの隠し井戸も 占領されたか…。 306 00:35:41,406 --> 00:35:44,109 船には 水が一滴もありません。 307 00:35:49,514 --> 00:35:52,183 五島へ行こう。 308 00:35:52,183 --> 00:35:57,522 五島まで 順風で3日間かかります。 3日間 水なしで…。 309 00:35:57,522 --> 00:36:00,125 琉球の岸は どこも危ない。 310 00:36:00,125 --> 00:36:04,796 五島へ着けば 我ら白浜党の井戸がある。 311 00:36:04,796 --> 00:36:07,098 3日 辛抱してくれ。 312 00:36:25,483 --> 00:36:30,155 お頭。 お頭。 少し 日陰に入られたら どうですか。 313 00:36:30,155 --> 00:36:34,025 ぬしこそ 誰かに 舵を代わってもらったがいい。 314 00:36:34,025 --> 00:36:39,831 いえ 私は まだ もちます。 強情なやつだな。 315 00:36:39,831 --> 00:36:45,170 堺の港にも 遙明台があったか。 316 00:36:45,170 --> 00:36:47,505 へい あります。 317 00:36:47,505 --> 00:36:54,379 今 俺が ふと思い出した港にも 美しい遙明台があった。 318 00:36:54,379 --> 00:37:00,785 あの 小波戸の突端に…。 そう そう。 319 00:37:00,785 --> 00:37:04,122 港は 大波戸 小波戸に囲まれ➡ 320 00:37:04,122 --> 00:37:09,994 湾の中には 会合衆の船に 明船や南蛮船も交じって➡ 321 00:37:09,994 --> 00:37:12,464 それは こう ちょうど…➡ 322 00:37:12,464 --> 00:37:18,336 大きな池の中に たくさんの水鳥たちが 仲よく羽を休めているような➡ 323 00:37:18,336 --> 00:37:23,341 そんな… そんな風景が思い浮かんできませんか。 324 00:37:25,043 --> 00:37:35,153 ♬~ 325 00:37:35,153 --> 00:37:40,024 堺の町というのは 三方を深い堀に囲まれていて➡ 326 00:37:40,024 --> 00:37:46,164 町の通りは 東西南北 縦横に まっすぐに延びた道で区切られています。 327 00:37:46,164 --> 00:37:51,503 港の納屋街を抜けると すぐ 大小路通りという目抜きに出ます。 328 00:37:51,503 --> 00:37:56,174 その中でも… その中でも一番にぎやかな通りが➡ 329 00:37:56,174 --> 00:37:58,843 湯屋町という花街で➡ 330 00:37:58,843 --> 00:38:03,114 ここは もう 一年中 お祭り騒ぎです。 331 00:38:03,114 --> 00:38:06,785 そうだ。 そのとおりだ。 332 00:38:06,785 --> 00:38:09,454 それが堺です! 333 00:38:09,454 --> 00:38:15,794 すると 俺は 堺の船乗りだったかもしれんな。 334 00:38:15,794 --> 00:38:22,667 そうして 堺の港から船出をしたのか…。 335 00:38:22,667 --> 00:38:27,805 あの… 子もいたんでしょう? 女房も…。 336 00:38:27,805 --> 00:38:30,475 思い出せぬ。 337 00:38:30,475 --> 00:38:34,813 堺へ行ってみませんか? 俺一人でか? 338 00:38:34,813 --> 00:38:38,483 いえ… 私と。 339 00:38:38,483 --> 00:38:45,823 船も手下も捨ててか。 ばかを言っちゃいかん。 340 00:38:45,823 --> 00:38:52,163 たとえ 堺が 俺の里でも 今の俺にとっちゃ➡ 341 00:38:52,163 --> 00:38:55,500 無縁の町だ。 342 00:38:55,500 --> 00:39:44,816 ♬~ 343 00:40:25,857 --> 00:40:29,193 (鬼丸)さあ もう一漕ぎしたら 切り上げるか。 344 00:40:29,193 --> 00:40:31,195 (一同)へい! 345 00:40:33,531 --> 00:40:36,868 鬼丸。 へい。 346 00:40:36,868 --> 00:40:41,539 そいつも 一緒に連れていってくれ。 347 00:40:41,539 --> 00:40:49,414 さあ 乗っていけ。 岸へ着いたら もう戻ることもあるまい。 348 00:40:49,414 --> 00:40:54,552 ここで水を積んだら まっすぐ高砂へ引き揚げる。 349 00:40:54,552 --> 00:40:59,891 そこで 俺は 船を下りる。 350 00:40:59,891 --> 00:41:06,197 この船を譲ると言ったら 高砂まで来るか? 351 00:41:08,700 --> 00:41:15,840 そうか… やっぱり 堺が恋しいか。 352 00:41:15,840 --> 00:41:22,180 よし 帰るがいい。 さあ 行け。 353 00:41:22,180 --> 00:41:24,182 お頭…。 354 00:41:26,517 --> 00:41:28,519 おぬしのだ。 355 00:42:02,820 --> 00:42:08,159 「孟子」の古書は 売り物にゃあならねえ。 356 00:42:08,159 --> 00:42:11,462 土産にくれてやる。 357 00:42:15,032 --> 00:42:18,035 船を出せ。 へい。 358 00:42:38,856 --> 00:42:41,192 お父っつぁん! 359 00:42:41,192 --> 00:42:46,864 ♬~ 360 00:42:46,864 --> 00:42:55,206 いえ 他人様と承知の上でございます。 361 00:42:55,206 --> 00:42:58,109 お笑いくださいまし。 362 00:42:58,109 --> 00:43:05,483 ♬~ 363 00:43:05,483 --> 00:43:08,386 ありがとよ…。 364 00:43:08,386 --> 00:43:46,090 ♬~