1 00:00:02,102 --> 00:02:40,093 ♬~ 2 00:02:45,532 --> 00:02:48,869 <キリシタン禁令下の日本へ…➡ 3 00:02:48,869 --> 00:02:55,742 イエズス会の巡察師 ヴァリニヤーノが インド副王使節の名目で渡来した。➡ 4 00:02:55,742 --> 00:03:01,448 使節団はポルトガル領インド総督の書翰を 秀吉に奉呈するため➡ 5 00:03:01,448 --> 00:03:04,151 聚楽第に伺候する> 6 00:03:05,819 --> 00:03:11,691 <この一行の中に 4人の日本の青年が同行していた。➡ 7 00:03:11,691 --> 00:03:19,166 伊東マンショ 千々石ミゲル 中浦ジュリアン 原マルチノ> 8 00:03:19,166 --> 00:03:23,837 ♬~(リュート) 9 00:03:23,837 --> 00:03:29,176 <彼らこそ 日本人として初めてヨーロッパに渡り➡ 10 00:03:29,176 --> 00:03:33,847 ポルトガル イスパニア イタリアの国々を歴訪して➡ 11 00:03:33,847 --> 00:03:41,188 今 8年5か月ぶりに祖国へ帰ってきた 遣欧使節の若者であった> 12 00:03:41,188 --> 00:04:02,142 ♬~(リュート) 13 00:04:02,142 --> 00:04:09,850 (美緒)宗匠様の身辺に 何やら容易ならぬことが起こっています。 14 00:04:11,485 --> 00:04:14,788 容易ならぬことが起こっています。 15 00:04:16,356 --> 00:04:21,495 (助左衛門)宗匠様が 関白様から お咎めを…? 16 00:04:21,495 --> 00:04:24,831 一体 どのような お咎めでございますか。 17 00:04:24,831 --> 00:04:29,703 詳しいことは分かりませぬが 京都からのお便りでは➡ 18 00:04:29,703 --> 00:04:35,175 宗匠様の木像が 関白様のご勘気に触れたご様子なのです。 19 00:04:35,175 --> 00:04:37,511 木像とは? 20 00:04:37,511 --> 00:04:43,383 大徳寺山門の金毛閣に 宗匠様の寿像が安置されたことが➡ 21 00:04:43,383 --> 00:04:48,155 関白様に 僭上の振る舞いと決めつけられたとか。 22 00:04:48,155 --> 00:04:51,057 それだけのことで? 23 00:04:51,057 --> 00:04:54,528 とにかく 一度 京都のお屋敷の方に➡ 24 00:04:54,528 --> 00:04:58,198 お訪ねをしてみてはいただけませぬか。 25 00:04:58,198 --> 00:05:01,501 お伺いしてみましょう。 それとなく…。 26 00:05:03,036 --> 00:05:06,473  心の声 穏やかなお顔ではないか。➡ 27 00:05:06,473 --> 00:05:13,146 大徳寺の木像のことは やはり 周囲の思い過ごしだったのだ。 28 00:05:13,146 --> 00:05:19,452 ♬~ 29 00:05:36,169 --> 00:05:42,042 (利休)悲しいほど 美しい音色だ。 30 00:05:42,042 --> 00:05:50,750 まだ見も知らぬ南蛮の国々を 巡り巡っているような心持ちだった。 31 00:05:53,720 --> 00:05:58,425 おことが 幾歳の時でござったか。 32 00:05:58,425 --> 00:06:04,130 長崎から ポルトガル船で 南蛮へ渡っていったのは。 33 00:06:04,130 --> 00:06:11,471 (マルチノ)旅立ちましたのは 天正10年の正月。 私は 12歳でございました。 34 00:06:11,471 --> 00:06:15,342 12の年で…。 それで 今は…。 35 00:06:15,342 --> 00:06:18,812 21歳に相なります。 36 00:06:18,812 --> 00:06:22,482 長い旅路でござったのう。 37 00:06:22,482 --> 00:06:24,818 はい。 38 00:06:24,818 --> 00:06:31,691 天正10年の正月といえば それから 5か月後でございましたか➡ 39 00:06:31,691 --> 00:06:37,397 信長公が 非業の最期を遂げられたのは…。 40 00:06:37,397 --> 00:06:44,170 信長公が ご存命であれば この度の おことたちの帰還を➡ 41 00:06:44,170 --> 00:06:48,508 誰よりも喜ばれたであろうに…。 42 00:06:48,508 --> 00:06:52,178 信長公のご他界もさることながら➡ 43 00:06:52,178 --> 00:06:55,515 よもや キリシタンまでが ご禁令になっていようとは➡ 44 00:06:55,515 --> 00:07:00,353 我ら 夢にも思わぬことでございました。 45 00:07:00,353 --> 00:07:06,126 関白様の仕官の勧告を 断られたと伺ったが…。 46 00:07:06,126 --> 00:07:12,799 はい。 キリシタンの信仰を捨てることが 条件でございましたので…。 47 00:07:12,799 --> 00:07:16,670 あなた方にまで キリシタンを捨てよと…。 48 00:07:16,670 --> 00:07:19,472 我らが ここで信仰を捨てては➡ 49 00:07:19,472 --> 00:07:24,144 我らを 無事に 本国まで送り届けてくれた ヴァリニヤーノ様や➡ 50 00:07:24,144 --> 00:07:29,816 南蛮の国々の さまざまな人々の恩寵を 裏切ることになってしまいます。 51 00:07:29,816 --> 00:07:37,490 更には 我らの遣欧の旅の意義も 水泡に帰してしまいます。 52 00:07:37,490 --> 00:07:43,163 都にとどまれないことは 残念ではございますが…。 53 00:07:43,163 --> 00:07:47,834 で これから先の当ては…。 54 00:07:47,834 --> 00:07:54,140 一旦 パーデレらと共に 九州へ帰るつもりでおります。 55 00:07:55,709 --> 00:08:01,114 九州へ帰られても 今は➡ 56 00:08:01,114 --> 00:08:06,786 おことたちを南蛮へ派遣した 豊後の大友宗麟殿➡ 57 00:08:06,786 --> 00:08:12,459 肥前の大村純忠殿も この世にはおわさぬ。 58 00:08:12,459 --> 00:08:19,332 これらのキリシタン大名の方々が ご存命の時ならば ともかく➡ 59 00:08:19,332 --> 00:08:22,135 今の九州へ帰られても➡ 60 00:08:22,135 --> 00:08:27,841 なかなかに 庇護を 受けにくいのではないかと推察するが…。 61 00:08:29,476 --> 00:08:34,347 いっそ 堺で暮らされては いかがでございますか? 62 00:08:34,347 --> 00:08:39,819 堺なら ご禁令の取締りも そう厳しくはない。 63 00:08:39,819 --> 00:08:45,158 御身のため 及ばずながら お力添えをいたしましょう。 64 00:08:45,158 --> 00:08:49,029 ご好意には 感謝をいたします。 65 00:08:49,029 --> 00:08:55,034 南蛮で得てこられた知識を 堺で広めてください。 66 00:08:56,770 --> 00:09:01,441 我ら 春を待って 天草へ渡るつもりです。 67 00:09:01,441 --> 00:09:03,777 天草へ? 68 00:09:03,777 --> 00:09:06,679 天草の修道院に入ります。 69 00:09:06,679 --> 00:09:10,450 修道士になられるおつもりか…。 70 00:09:10,450 --> 00:09:12,786 はい。 71 00:09:12,786 --> 00:09:16,456 ご禁令を承知の上で➡ 72 00:09:16,456 --> 00:09:21,127 なお 修道士の道を歩まれるのか? 73 00:09:21,127 --> 00:09:23,463 ここで道を曲げては➡ 74 00:09:23,463 --> 00:09:27,467 8年5か月の旅を無駄にしてしまいます。 75 00:09:35,475 --> 00:09:43,183 皆それぞれに 譲れないものを持って 生きているということだ。 76 00:09:47,087 --> 00:09:54,494 これは 私が愛用している茶器の一つだが➡ 77 00:09:54,494 --> 00:09:59,833 本日の思い出に 持ち帰られよ。 78 00:09:59,833 --> 00:10:02,735 えっ…。 79 00:10:02,735 --> 00:10:09,843 いえ 天下の大宗匠様のおてまえで 頂戴を承りましただけでも➡ 80 00:10:09,843 --> 00:10:12,178 生涯の思い出にございます。 81 00:10:12,178 --> 00:10:17,851 この上 そのような貴重なものを 頂くわけにはまいりませぬ。 82 00:10:17,851 --> 00:10:22,188 原殿。 はい。 83 00:10:22,188 --> 00:10:30,530 私には おことが お一人で この庵をお訪ねくださったことが➡ 84 00:10:30,530 --> 00:10:34,400 とてもうれしかったのだ。 85 00:10:34,400 --> 00:10:39,873 天草へ行かれたら もはや 再び➡ 86 00:10:39,873 --> 00:10:45,211 生あるうちに お目にかかることは かなうまい。 87 00:10:45,211 --> 00:10:54,220 どうか 形見とでも思うて お納めを願いたい。 88 00:10:55,855 --> 00:11:00,159 もったいなき お言葉にございます。 89 00:11:03,496 --> 00:11:11,838 では 原殿の堺見物 引き受けてもらえるな。 90 00:11:11,838 --> 00:11:19,512 あ… はい。 私も ちょうどよいところへ来合わせました。 91 00:11:19,512 --> 00:11:23,216 喜んで お引き受けいたしましょう。 92 00:11:24,851 --> 00:11:31,191 おぬし 都へは商いで来たというのは偽りで➡ 93 00:11:31,191 --> 00:11:36,196 実は 堺の誰ぞに頼まれて 私の様子を見に来たのだろう。 94 00:11:37,864 --> 00:11:44,737 あ… お見通しでございましたか。 95 00:11:44,737 --> 00:11:48,875 堺の者たちに伝えておくれ。 96 00:11:48,875 --> 00:11:55,215 金毛閣の木像の件なら 何も心配は要らぬ。 97 00:11:55,215 --> 00:12:01,020 まあ なかなかに 住みにくい世の中ではあるが➡ 98 00:12:01,020 --> 00:12:08,761 な~に 住みにくい浮世ならば なおのこと➡ 99 00:12:08,761 --> 00:12:13,766 意地でも 住み抜いてみせようではないか。 100 00:12:15,501 --> 00:12:17,503 のう。 101 00:12:20,373 --> 00:12:24,844 宗匠様が その意気なら➡ 102 00:12:24,844 --> 00:12:29,849 手前も 安心して 引き揚げることにいたしましょう。 103 00:12:44,197 --> 00:12:48,534 去年の夏 天川から長崎に着いて➡ 104 00:12:48,534 --> 00:12:53,873 それから 加津佐のセミナリオで 上洛までの日を過ごしていました。 105 00:12:53,873 --> 00:12:58,544 加津佐で 呂宋助左衛門という名を聞いた時には➡ 106 00:12:58,544 --> 00:13:02,415 もっと毛むくじゃらの海賊の首領を 思い浮かべていましたが…。 107 00:13:02,415 --> 00:13:06,352 当てが外れましたか。 あまりにも普通の方なので➡ 108 00:13:06,352 --> 00:13:10,156 かえって驚きました。 アッハッハッハ。 109 00:13:10,156 --> 00:13:12,825 そういえば 加津佐にいる時➡ 110 00:13:12,825 --> 00:13:16,162 助左衛門殿を捜している女人に 会いました。 111 00:13:16,162 --> 00:13:18,498 女人の名は? 112 00:13:18,498 --> 00:13:21,401 名は知りません。 113 00:13:21,401 --> 00:13:23,369 いつごろのことで? 114 00:13:23,369 --> 00:13:27,507 去年の暮れでした。 115 00:13:27,507 --> 00:13:30,176 子供を連れてはいませんでしたか? 116 00:13:30,176 --> 00:13:33,513 ええ。 男の子を連れていました。 117 00:13:33,513 --> 00:13:35,448 加津佐のどこで? 118 00:13:35,448 --> 00:13:39,385 セミナリオに訪ねてきたのです。 119 00:13:39,385 --> 00:14:08,147 ♬~(賛美歌) 120 00:14:08,147 --> 00:14:10,083 どうぞ。 121 00:14:10,083 --> 00:14:15,021 (桔梗)あ いえ…。 人を捜しに来ただけですから。 122 00:14:15,021 --> 00:14:17,156 行くよ 銭丸。 123 00:14:17,156 --> 00:14:20,493 どなたを お捜しですか? 124 00:14:20,493 --> 00:14:23,830 (銭丸)呂宋助左衛門。 いないから いいの。 125 00:14:23,830 --> 00:14:26,833 どうも お騒がせいたしました。 126 00:14:29,502 --> 00:14:32,839 呂宋… 助左衛門。 127 00:14:32,839 --> 00:14:36,709 (五右衛門)桔梗に 銭丸だ。 128 00:14:36,709 --> 00:14:38,711 間違いねえな。 129 00:14:38,711 --> 00:14:41,848 美緒様から聞いたとおりだ。 130 00:14:41,848 --> 00:14:48,187 家出なら 無理にでも 堺へ お連れすればよかったのですね。 131 00:14:48,187 --> 00:14:53,059 こっちも わざと放っといたのさ。 所在は分かってたんだ。 132 00:14:53,059 --> 00:14:57,530 じゃあ なぜ 迎えに行ってやらないんです。 133 00:14:57,530 --> 00:15:02,802 うっかり連れ戻すと 関白の側女にされてしまうんでね。 134 00:15:02,802 --> 00:15:04,804 側女に? 135 00:15:06,472 --> 00:15:08,775 迎えに行ってやろう。 136 00:15:10,343 --> 00:15:13,146 (五右衛門)堺へ連れ戻す気か。 137 00:15:13,146 --> 00:15:16,816 いつまでも放ってはおけまい。 138 00:15:16,816 --> 00:15:21,487 今井に帰せば 関白に差し出さなけりゃならねえんだぞ。 139 00:15:21,487 --> 00:15:24,390 今井には渡さん。 140 00:15:24,390 --> 00:15:27,360 それで? 141 00:15:27,360 --> 00:15:30,496 ここへ引き取る。 142 00:15:30,496 --> 00:15:33,833 宗薫が黙ってると思うのか。 143 00:15:33,833 --> 00:15:37,170 ぬしが女房にするというのなら ともかく➡ 144 00:15:37,170 --> 00:15:41,040 ただ引き取るというだけじゃ けんかにしかならんぞ。 145 00:15:41,040 --> 00:15:44,844 フッ…。 それも 面白いがな。 146 00:15:44,844 --> 00:15:49,182 この際に 宗薫をたたきのめしてやるか。 147 00:15:49,182 --> 00:15:56,522 今井には恩義がある。 争いはできぬ。 148 00:15:56,522 --> 00:15:59,826 話し合いだけじゃ 片がつかんぞ。 149 00:16:02,962 --> 00:16:04,897 女房にする。 150 00:16:04,897 --> 00:16:07,133 誰の? 151 00:16:07,133 --> 00:16:09,435 わしの。 152 00:16:14,807 --> 00:16:17,710 本気か。 153 00:16:17,710 --> 00:16:20,480 それなら 誰も 文句はあるまい。 154 00:16:20,480 --> 00:16:25,351 わしの女房にすると言ったら。 155 00:16:25,351 --> 00:16:28,354 桔梗に聞かせてやりたいもんだな➡ 156 00:16:28,354 --> 00:16:30,356 その言葉を。 157 00:16:32,091 --> 00:16:37,830 桔梗は 宗久様の子だ。 158 00:16:37,830 --> 00:16:40,833 不幸せにはできぬ。 159 00:16:44,170 --> 00:16:47,506 2月の13日に 加津佐へ渡る船がある。 160 00:16:47,506 --> 00:16:51,510 6日後だが それに乗っていくか。 161 00:16:53,179 --> 00:16:55,181 行こう。 162 00:17:06,726 --> 00:17:09,462 お帰りまで待っています この堺で。 163 00:17:09,462 --> 00:17:13,332 南蛮の遠さに比べれば 九州など 目と鼻の先です。 ハハハハッ。 164 00:17:13,332 --> 00:17:15,334 そろそろ はしご 外すぞ。 おお そうだ。 165 00:17:15,334 --> 00:17:19,138 後を頼んだぞ。 任しとけ。 166 00:17:19,138 --> 00:17:21,474 助左衛門殿! 167 00:17:21,474 --> 00:17:24,143 御寮様。 168 00:17:24,143 --> 00:17:29,482 宗匠様が…。 利休様が何か? 169 00:17:29,482 --> 00:17:31,417 聚楽第のお屋敷を追われ➡ 170 00:17:31,417 --> 00:17:34,820 堺のお屋敷に 蟄居謹慎を命じられました。 171 00:17:34,820 --> 00:17:38,157 蟄居謹慎!? 172 00:17:38,157 --> 00:17:46,032 ♬~ 173 00:17:46,032 --> 00:17:50,336 (吾助)船長! 帆を上げますぜ! (百足)早く乗ってくだせえ! 174 00:17:54,507 --> 00:17:58,177 よし 俺が行こう。 五右衛門。 五右衛門! 175 00:17:58,177 --> 00:18:00,112 船を出せ! (一同)お~っ! 176 00:18:00,112 --> 00:18:03,449 帆を上げろ! (一同)お~っ! 177 00:18:03,449 --> 00:18:19,765 ♬~ 178 00:18:22,802 --> 00:18:29,675 (秀吉)大徳寺の山門には 天子も上皇も 行幸あそばされる。➡ 179 00:18:29,675 --> 00:18:37,350 また 摂家・清華の貴顕も皆 この山門の下を通る。➡ 180 00:18:37,350 --> 00:18:40,152 しかるに その頭上に➡ 181 00:18:40,152 --> 00:18:44,824 雪駄を履かせ 杖をつかせた おのれの木像をのせるとは➡ 182 00:18:44,824 --> 00:18:47,493 不遜僭上の極みじゃ。➡ 183 00:18:47,493 --> 00:18:52,164 利休の不敬 断じて許し難い。 184 00:18:52,164 --> 00:18:59,505 利休のたわけめに 閉門を言い渡した理由は まだある! 185 00:18:59,505 --> 00:19:01,774 あの不届き者めは➡ 186 00:19:01,774 --> 00:19:04,443 予の茶頭の地位を利用して➡ 187 00:19:04,443 --> 00:19:08,114 新儀の道具を 不当の高値に目利きし➡ 188 00:19:08,114 --> 00:19:11,017 私腹を肥やした。➡ 189 00:19:11,017 --> 00:19:18,457 そうとも 新儀の道具とは 呂宋壺も その一つじゃ。 190 00:19:18,457 --> 00:19:23,796 助左衛門めが 呂宋より持ち帰りたる あの壺は➡ 191 00:19:23,796 --> 00:19:26,699 長崎の原田喜右衛門によれば➡ 192 00:19:26,699 --> 00:19:32,138 呂宋では 道端に転がっておる 水がめだそうな。 193 00:19:32,138 --> 00:19:38,010 そんな二束三文の土器に あの老いぼれめは➡ 194 00:19:38,010 --> 00:19:43,482 実に恐れ気もなく 1万貫もの値をつけて➡ 195 00:19:43,482 --> 00:19:49,155 一介の船頭を 一朝にして 大豪商に仕立て上げた。 196 00:19:49,155 --> 00:19:53,159 前代未聞の振る舞いというべきである! 197 00:19:55,494 --> 00:20:04,170 今言ったとおり 利休を罰するのは この2つの理由だ。 198 00:20:04,170 --> 00:20:13,846 大徳寺山門の木像の一件と 茶道具の私曲の一件だ。 199 00:20:13,846 --> 00:20:17,516 それで足りなければ➡ 200 00:20:17,516 --> 00:20:21,187 理由は いくらでもつくる。 201 00:20:21,187 --> 00:20:30,529 いずれにしても 利休には 死んでもらわねばならんということじゃ。 202 00:20:30,529 --> 00:20:34,867 時に この度は 誰がとりなしに来るか➡ 203 00:20:34,867 --> 00:20:38,537 内心 楽しみに待っておったのじゃ。 204 00:20:38,537 --> 00:20:43,409 予の周りには 利休を慕う大名が多いからのう。 205 00:20:43,409 --> 00:20:50,883 忠興か 古田織部辺りが 真っ先に来るじゃろうと思うていた。 206 00:20:50,883 --> 00:20:56,555 あるいは 加賀の大納言を担ぎ出してくるか➡ 207 00:20:56,555 --> 00:21:00,826 北政所に とりなしを頼むか。 208 00:21:00,826 --> 00:21:04,163 ところが 誰も来ぬ。 209 00:21:04,163 --> 00:21:11,036 皆 巻き添えになるのを恐れておるのじゃ。 210 00:21:11,036 --> 00:21:14,173 よもや こなたが➡ 211 00:21:14,173 --> 00:21:19,512 利休の助命嘆願に来ようとは 思わなかったぞ➡ 212 00:21:19,512 --> 00:21:23,182 治部少輔よ。 213 00:21:23,182 --> 00:21:25,851 (三成)それがしとて➡ 214 00:21:25,851 --> 00:21:30,723 殿下のご意志に いささかも 異を挟むものではございませぬ。 215 00:21:30,723 --> 00:21:35,194 ただ 堺奉行の立場として➡ 216 00:21:35,194 --> 00:21:41,534 会合衆である利休殿のお咎めに 多少とも 殿下の温情を賜りますれば➡ 217 00:21:41,534 --> 00:21:45,871 堺の今後の統制上も有益であることを➡ 218 00:21:45,871 --> 00:21:49,742 言上に まかり越しました次第にございます。 219 00:21:49,742 --> 00:21:53,546 利休の命を助けよとか。 220 00:21:53,546 --> 00:21:59,418 恐れながら 大徳寺山門にて 不敬を犯しましたるは➡ 221 00:21:59,418 --> 00:22:05,157 利休居士にはあらず 利休殿の木像にございましょう。 222 00:22:05,157 --> 00:22:11,497 ならば 刑に処すべきものも 木像ではございますまいか。 223 00:22:11,497 --> 00:22:14,400 木像を火あぶりに処し➡ 224 00:22:14,400 --> 00:22:20,506 世間への見せしめになされては いかがなものでございましょう。 225 00:22:20,506 --> 00:22:25,844 機知に富んだ もっともなる言い分。 226 00:22:25,844 --> 00:22:28,180 じゃがのう 治部。➡ 227 00:22:28,180 --> 00:22:35,521 予が利休を罰するのは ただの懲らしめのためではないのじゃ。 228 00:22:35,521 --> 00:22:42,194 罪状は 死を与えるための口実にすぎぬ。 229 00:22:42,194 --> 00:22:50,069 要するに 利休には死んでもらわねばならんのじゃ。 230 00:22:50,069 --> 00:23:00,679 いや… 死んでもらわねばならぬ時期が 来てしまったのじゃよ。 231 00:23:00,679 --> 00:23:04,450 時期が来たと…。 232 00:23:04,450 --> 00:23:10,823 ♬~ 233 00:23:10,823 --> 00:23:13,492 聞けよ 治部。 234 00:23:13,492 --> 00:23:20,165 天下を統一するとは ものの価値を不動のものとすることじゃ。 235 00:23:20,165 --> 00:23:25,504 金は金 銀は銀 土くれは土くれでなければならぬ。 236 00:23:25,504 --> 00:23:30,376 土くれが黄金になってはならんのじゃ。 237 00:23:30,376 --> 00:23:32,845 人も同じだ。 238 00:23:32,845 --> 00:23:41,186 大名は大名 百姓は 終生百姓でなければならぬ。 239 00:23:41,186 --> 00:23:47,526 百姓が大名になってはならぬのじゃ。 240 00:23:47,526 --> 00:23:52,865 利休が生きておる限り この鉄則を確立することはできぬ。 241 00:23:52,865 --> 00:23:58,203 利休が手を触れれば 土くれが黄金になる。➡ 242 00:23:58,203 --> 00:24:07,813 官位も身分も超えて 天子の頭上に 己が木像を掲げてしまう。 243 00:24:07,813 --> 00:24:13,152 利休一人のために ものの価値が乱れ➡ 244 00:24:13,152 --> 00:24:18,157 人の世の上下秩序が ないがしろになる。 245 00:24:22,161 --> 00:24:27,866 邪魔なのだ こういうものが。 246 00:24:34,173 --> 00:24:41,847 土器が 目利き一つで 黄金となりえた時代…➡ 247 00:24:41,847 --> 00:24:49,521 一介の船乗りが 一夜にして 大徳人となりえた時代…➡ 248 00:24:49,521 --> 00:25:00,799 そして 百姓の小せがれが たちまち 関白にまで のし上がった時代…。 249 00:25:00,799 --> 00:25:05,504 かくのごとき時代は 終わりだ。 250 00:25:08,140 --> 00:25:11,844 終わりにせねばならぬ! 251 00:25:15,814 --> 00:25:22,488 おことならば 分かってくれよう。 252 00:25:22,488 --> 00:25:24,790 三成よ。 253 00:25:27,159 --> 00:25:29,161 はい。 254 00:26:21,814 --> 00:26:24,116 お手を…。 255 00:26:35,160 --> 00:26:40,032 そこの船頭…。 へい。 256 00:26:40,032 --> 00:26:46,505 ぬしの舟に乗るのは2度目だが… 覚えておるか。 257 00:26:46,505 --> 00:26:55,514 へい。 もう 22~23年も前のことに 相なります。 258 00:26:55,514 --> 00:27:01,787 早いものだ。 そんな昔になるか…。 259 00:27:01,787 --> 00:27:10,496 へい。 あの夜も 雪でございました。 260 00:27:12,431 --> 00:27:17,436 ほんに そう…。 261 00:27:20,472 --> 00:27:22,474 お手を…。 262 00:27:24,343 --> 00:27:27,045 すまぬのう。 263 00:27:37,489 --> 00:27:39,424 さあ。 264 00:27:39,424 --> 00:28:28,140 ♬~ 265 00:28:28,140 --> 00:28:35,480 宗匠様。 川岸に お見送りのお方が…。 266 00:28:35,480 --> 00:29:01,440 ♬~ 267 00:29:01,440 --> 00:29:06,778 与一郎殿… 織部殿も…。 268 00:29:06,778 --> 00:29:33,071 ♬~ 269 00:29:36,775 --> 00:29:39,478 ⚟宗匠様。 270 00:29:42,481 --> 00:29:45,150 呂宋へ お連れいたします。 271 00:29:45,150 --> 00:29:52,824 明晩 お屋敷裏の水濠に 端舟で お迎えに伺います。 272 00:29:52,824 --> 00:29:56,695 マルチノ殿のリュートの調べを 合図といたします。 273 00:29:56,695 --> 00:30:02,501 先日 葭屋町の書院で お聴きになった あの調べでございます。 274 00:30:02,501 --> 00:30:07,172 リュートの音が届きましたら 裏門まで お越しくださいませ。 275 00:30:07,172 --> 00:30:10,175 御身一つで結構でございます。 276 00:30:23,188 --> 00:30:29,061  心の声  「おもいやれ 都をいでて 今宵しも➡ 277 00:30:29,061 --> 00:30:34,800 淀のわたりの 月の舟路を。➡ 278 00:30:34,800 --> 00:30:42,874 返返 御詠ながめ 返し仕かね候まま➡ 279 00:30:42,874 --> 00:30:47,546 御使を待たせ申候。➡ 280 00:30:47,546 --> 00:30:52,417 いつもと申ながら 今宵また➡ 281 00:30:52,417 --> 00:30:57,422 都の名残り 旁旁に候」。 282 00:30:59,891 --> 00:31:05,163  心の声  「都を出ての 淀の川舟とよみ候を➡ 283 00:31:05,163 --> 00:31:12,838 おもいだすにも 猶猶 涙に候。➡ 284 00:31:12,838 --> 00:31:19,845 やがてやがて待申候」。 285 00:31:22,180 --> 00:31:26,051  心の声  「ことさら天気もよくなり候…➡ 286 00:31:26,051 --> 00:31:29,855 かなしく候…➡ 287 00:31:29,855 --> 00:31:33,191 かなしく候」。 288 00:31:33,191 --> 00:32:00,886 ♬~ 289 00:32:11,496 --> 00:32:15,200 (弥次郎)船長。 いつでも出せます。 290 00:32:16,835 --> 00:32:19,171 日が落ちたら 沖へ出しといてくれ。 はい。 291 00:32:19,171 --> 00:32:21,840 こっちは 水濠から 端舟で まっすぐに乗りつける。 292 00:32:21,840 --> 00:32:25,143 そのまま船出だ。 合点。 293 00:32:33,451 --> 00:32:42,160 助左衛門が 私を呂宋へ連れていくと 言うてくれたのだが…。 294 00:32:42,160 --> 00:32:44,095 いつでございますか? 295 00:32:44,095 --> 00:32:49,868 それが 今夜 迎えに来ると言いよりましてな…。 296 00:32:49,868 --> 00:32:53,538 呂宋へ お渡りになるのでございますか? 297 00:32:53,538 --> 00:32:58,410 いや… まだ 行くとも 行かぬとも…。 298 00:32:58,410 --> 00:33:01,346 お迷いになることはございませぬ。 299 00:33:01,346 --> 00:33:07,486 是非とも お渡りくださいませ。 私も お供いたします。 300 00:33:07,486 --> 00:33:09,821 美緒殿も行かれると…。 301 00:33:09,821 --> 00:33:15,160 呂宋のアゴーの村には 私も 半年暮らしました。 302 00:33:15,160 --> 00:33:20,832 村人たちは 皆 心優しく とても住みよい所でございます。 303 00:33:20,832 --> 00:33:24,703 宗匠様にも きっと お気に召します。 304 00:33:24,703 --> 00:33:30,175 このまま 蟄居の日々を お過ごしなされるよりは➡ 305 00:33:30,175 --> 00:33:34,179 どれだけ お心も 安んじられますことか…。 306 00:33:40,185 --> 00:33:50,528 南海の島で このように素朴で無心な壺を こつこつ作って暮らせるならば➡ 307 00:33:50,528 --> 00:33:58,203 それは 心も穏やかになるであろう。 308 00:33:58,203 --> 00:34:00,805 すぐに 旅立ちのお支度を。 309 00:34:00,805 --> 00:34:03,141 御身の回りのものは 私が整えます。 310 00:34:03,141 --> 00:34:05,844 今より すぐに。 311 00:34:10,015 --> 00:34:20,158 (風の音) 312 00:34:20,158 --> 00:34:25,830 (秀吉)堺では 利休の館を厳重に警固せよ。➡ 313 00:34:25,830 --> 00:34:29,701 利休を ひそかに かくまおうとする者がいれば➡ 314 00:34:29,701 --> 00:34:33,004 その者も 同罪に処す。 315 00:34:43,181 --> 00:34:48,053 これより 利休宗匠殿の館を警固する。 316 00:34:48,053 --> 00:34:52,190 直ちに 兵を整えい。 (一同)はっ! 317 00:34:52,190 --> 00:35:25,190 ♬~ 318 00:35:44,442 --> 00:35:48,146 支度は あらかた整えました。 319 00:35:53,852 --> 00:35:57,155 まずは これに お召し替えを。 320 00:36:14,472 --> 00:36:24,482 ⚟(足音) 321 00:36:35,760 --> 00:36:40,698 奉行所の兵に囲まれましてございます。 えっ! 322 00:36:40,698 --> 00:36:43,501 奉行所の手勢に相違ないか。 323 00:36:43,501 --> 00:36:48,373 はい。 表門に 治部少輔様のお姿を お見受けいたしました。 324 00:36:48,373 --> 00:36:50,842 そんな…。 325 00:36:50,842 --> 00:37:12,464 ♬~ 326 00:37:12,464 --> 00:37:14,399 あれは…!? 327 00:37:14,399 --> 00:37:55,507 ♬~ 328 00:37:55,507 --> 00:37:58,176 なんということだ…。 329 00:37:58,176 --> 00:38:02,180 ♬~ 330 00:38:10,755 --> 00:38:13,124 おい 貴様 どこへ行く!? 331 00:38:13,124 --> 00:38:19,798 手前 利休様に商用あって参った 納屋衆の一人にございます。 332 00:38:19,798 --> 00:38:22,467 何とぞ お館へ お通しのほどを。 333 00:38:22,467 --> 00:38:25,370 通すことはならぬ。 帰れ! 334 00:38:25,370 --> 00:38:29,140 帰るわけにはまいりませぬ。 何とぞ お通しください。 335 00:38:29,140 --> 00:38:32,811 ならぬと言ってるのが分からぬのか!? 貴様! 336 00:38:32,811 --> 00:38:35,113 貴様~! 337 00:38:37,148 --> 00:38:39,083 怪しきやつ! 奉行所へ引っ立てい! 338 00:38:39,083 --> 00:38:41,386 待てい! 339 00:38:43,021 --> 00:38:47,025 詮議は無用だ。 放せい。 340 00:38:53,498 --> 00:38:57,368 面会は まかりならぬ。 341 00:38:57,368 --> 00:39:00,305 早々に立ち去れい。 342 00:39:00,305 --> 00:39:03,775 御身のためだ。➡ 343 00:39:03,775 --> 00:39:06,077 立ち去れい! 344 00:39:23,127 --> 00:39:25,797 宗匠様…。 345 00:39:25,797 --> 00:39:36,140 さあ もう心を静めて 一服なされよ。 346 00:39:36,140 --> 00:39:43,815 女子の身で 茶を頂戴しても よろしいのでございましょうか。 347 00:39:43,815 --> 00:39:48,152 女人には 茶をたてさせぬと➡ 348 00:39:48,152 --> 00:39:52,023 いつから 誰が定めたことであるかは 知らぬが➡ 349 00:39:52,023 --> 00:39:56,828 思えば ばかげた習わしであった。 350 00:39:56,828 --> 00:40:01,833 今より 美緒殿が破られるがよい。 351 00:40:05,503 --> 00:40:08,506 頂戴いたします。 352 00:40:36,200 --> 00:40:52,550 ⚟♬~(リュート) 353 00:40:52,550 --> 00:40:56,421 やはり 来てくれたのか…。 354 00:40:56,421 --> 00:41:02,360 ⚟♬~(リュート) 355 00:41:02,360 --> 00:41:52,877 ♬~(リュート) 356 00:41:52,877 --> 00:42:13,831 ♬~(リュート)(泣き声) 357 00:42:13,831 --> 00:42:28,546 ♬~(リュート) 358 00:42:44,796 --> 00:42:49,534 <この夜から14日目の2月28日。➡ 359 00:42:49,534 --> 00:42:55,239 千 利休は 切腹をして果てた> 360 00:43:02,113 --> 00:43:07,485 <利休の首は 大徳寺山門の木像と共に➡ 361 00:43:07,485 --> 00:43:14,158 京都・一条の戻橋において 獄門にさらされた。➡ 362 00:43:14,158 --> 00:43:18,162 その辞世の歌は…> 363 00:43:20,498 --> 00:43:27,839 <「ひっさぐる 我得具足の ひとつ太刀➡ 364 00:43:27,839 --> 00:43:32,710 いま この時ぞ 天になげうつ」> 365 00:43:32,710 --> 00:43:47,024 ♬~