1 00:00:08,408 --> 00:00:15,415 それは 日本の植物学史上に残る宣言でした。 2 00:00:17,150 --> 00:00:21,421 (田邊)「西洋の植物学者諸氏に告ぐ。➡ 3 00:00:21,421 --> 00:00:27,294 日本の植物学は かつては 標本も文献も足らず➡ 4 00:00:27,294 --> 00:00:35,002 いちいち 欧米の植物学者たちへ 検定を仰がねばならなかった。➡ 5 00:00:35,002 --> 00:00:43,143 だが もはや 日本の植物学は 貴殿らに後れを取るものではない。➡ 6 00:00:43,143 --> 00:00:47,648 今後は 欧米の学者は頼らず➡ 7 00:00:47,648 --> 00:00:53,987 日本人自らが 自分で学名を与え 発表すると➡ 8 00:00:53,987 --> 00:00:56,456 ここに 宣言する」。 9 00:00:56,456 --> 00:01:20,147 ♬~ 10 00:01:22,282 --> 00:01:25,285 (万太郎)教授…。 11 00:01:25,285 --> 00:01:32,926 ♬~ 12 00:01:32,926 --> 00:01:41,301 ♬「言葉足らずの愛を 愛を貴方へ」 13 00:01:41,301 --> 00:01:45,172 ♬「私は決して今を」 14 00:01:45,172 --> 00:01:50,310 ♬「今を憎んではいない」 15 00:01:50,310 --> 00:02:03,256 ♬「命ある日々 静かに誰かを 愛した日々」 16 00:02:03,256 --> 00:02:11,598 ♬「空が晴れたら 愛を、愛を伝えて」 17 00:02:11,598 --> 00:02:15,769 ♬「涙は明日の為」 18 00:02:15,769 --> 00:02:20,273 ♬「新しい花の種」 19 00:02:20,273 --> 00:02:24,611 ♬「空が晴れたら」 20 00:02:24,611 --> 00:02:28,782 ♬「逢いに、 逢いに来て欲しい」 21 00:02:28,782 --> 00:02:37,991 ♬「涙は枯れないわ 明日へと繋がる輪」 22 00:02:40,494 --> 00:02:42,963 手のひらみたいな大きな葉っぱが➡ 23 00:02:42,963 --> 00:02:45,432 対生して ついちゅう。 24 00:02:45,432 --> 00:02:51,238 長い花茎の先に かれんな花が 下向きについちゅうところ➡ 25 00:02:51,238 --> 00:02:55,642 レンゲショウマに似ちゅうのう。 26 00:02:55,642 --> 00:02:58,679 うん… 似ちゅう。 27 00:02:58,679 --> 00:03:03,083 いや… ど… どうじゃろう? 28 00:03:03,083 --> 00:03:07,254 ほんなら 仮に おまんのことは キレンゲショウマと呼ぼう。 29 00:03:07,254 --> 00:03:12,092 フィールドで見た外見の印象から 仮に キレンゲショウマと呼ぶが➡ 30 00:03:12,092 --> 00:03:15,929 これは 花弁が がく片より大きいという点で➡ 31 00:03:15,929 --> 00:03:18,265 毛茛科ではないだろう。 32 00:03:18,265 --> 00:03:21,101 De Candolleの 「Prodromus Systematis」と➡ 33 00:03:21,101 --> 00:03:23,603 Bentham & Hookerの 「Genera Plantarum」を。 34 00:03:23,603 --> 00:03:25,605 (一同)はい! 35 00:03:34,247 --> 00:03:38,151 ギンバイソウや ヤワタソウの 仲間じゃろうか? 36 00:03:38,151 --> 00:03:45,292 やったら… サバティエの本に出ちょったのう。 37 00:03:45,292 --> 00:03:59,139 ♬~ 38 00:03:59,139 --> 00:04:05,579 花弁が5個で発達し 雄しべが5の倍数…。 39 00:04:05,579 --> 00:04:09,382 ギンバイソウも ヤワタソウも どっちも虎耳草科じゃ。 40 00:04:09,382 --> 00:04:13,253 子房半下位で花盤が発達する。 41 00:04:13,253 --> 00:04:17,924 ほんなら このキレンゲショウマも➡ 42 00:04:17,924 --> 00:04:20,827 Saxifrageae…。 43 00:04:20,827 --> 00:04:24,397 Saxifrageae…。 44 00:04:24,397 --> 00:04:28,101 虎耳草科じゃろうか?虎耳草科としよう。 45 00:04:28,101 --> 00:04:32,606 (大窪)教授 お見事です。 うん。 46 00:04:32,606 --> 00:04:36,109 この先は 果実を見てみないと 何とも言えんな。 47 00:04:36,109 --> 00:04:38,779 果実の標本が必要だ。 48 00:04:38,779 --> 00:04:40,714 大窪君。 はっ! 49 00:04:40,714 --> 00:04:42,649 案内人に連絡してくれ。 50 00:04:42,649 --> 00:04:44,651 石鎚山に 人を張り付かせろ。 51 00:04:44,651 --> 00:04:47,954 何としてでも 果実の標本を手に入れるんだ。 52 00:04:47,954 --> 00:04:49,890 はい! 53 00:04:49,890 --> 00:04:51,892 (波多野)私も行きます。 54 00:04:59,666 --> 00:05:04,371 (机をたたく音) ああ…。 55 00:05:04,371 --> 00:05:08,909 いかん。 この一枚の標本だけじゃ どうにもならん。 56 00:05:08,909 --> 00:05:12,379 果実の標本が要る。 57 00:05:12,379 --> 00:05:17,584 虎鉄君に 送ってもらわんと…。 58 00:05:17,584 --> 00:05:24,357 はあ… 修学旅行じゃのうて 行けるがじゃろうか? 59 00:05:24,357 --> 00:05:29,763 いや わしが行くか…。 60 00:05:29,763 --> 00:05:33,600 (寿恵子)ああ! これ 百ちゃん! 61 00:05:33,600 --> 00:05:35,535 ねえ ちぃちゃん 百ちゃん➡ 62 00:05:35,535 --> 00:05:37,771 これ 終わらないと おまんま 食べれないんだからね。 63 00:05:37,771 --> 00:05:39,706 は~い。 64 00:05:39,706 --> 00:05:44,945 いい子に しててね。 (子供たちの声) 65 00:05:44,945 --> 00:05:49,616 あっ… 時計があるよ。 これ見て。 ここ 見て。 66 00:05:49,616 --> 00:05:51,952 あ…。 67 00:05:51,952 --> 00:05:54,421 お~… ハハハ。 68 00:05:54,421 --> 00:05:56,790 寿恵ちゃん わしも手伝うき。 69 00:05:56,790 --> 00:06:01,228 え… でも 万太郎さんは…。 いや やりたいき。 のう? 70 00:06:01,228 --> 00:06:05,232 ほら お父ちゃんは お母ちゃんのお手伝いが うまいきのう。 71 00:06:05,232 --> 00:06:07,234 のう? ハハ…。 72 00:06:14,374 --> 00:06:18,078 これが 果実と種子なんですね。 73 00:06:18,078 --> 00:06:20,747 種子に 翼がある…。 74 00:06:20,747 --> 00:06:24,451 Englerの「Pflanzenfamilien」を! はい! 75 00:06:33,927 --> 00:06:40,267 葉が対生 花柱が3個 種子に翼がある…。 76 00:06:40,267 --> 00:06:47,941 この特徴から 虎耳草科の ヒドランゲアエに当てはまるが…。 77 00:06:47,941 --> 00:06:53,113 このヒドランゲアエの中に 花弁が回旋状に重なる属は➡ 78 00:06:53,113 --> 00:06:57,417 記載されていない…。 79 00:06:57,417 --> 00:06:59,486 つまり…。 80 00:06:59,486 --> 00:07:07,060 このキレンゲショウマは 世界でも まれに見る特異な植物であり➡ 81 00:07:07,060 --> 00:07:13,366 この一種のみで 一つの属を構成する…➡ 82 00:07:13,366 --> 00:07:18,238 新属新種である…。 83 00:07:18,238 --> 00:07:22,909 (歓声) 84 00:07:22,909 --> 00:07:27,080 (波多野)教授 おめでとうございます! (一同)おめでとうございます! 85 00:07:27,080 --> 00:07:30,116 ありがとう…。 みんな ありがとう! 86 00:07:30,116 --> 00:07:38,091 (拍手) 87 00:07:38,091 --> 00:07:40,593 野宮。 (野宮)はい。 88 00:07:40,593 --> 00:07:44,464 論文用に 植物画を描け。 大至急だ! 89 00:07:44,464 --> 00:07:46,466 はい! 90 00:07:48,268 --> 00:07:55,041 (波多野) 教授 学名は どうなさるのですか? 91 00:07:55,041 --> 00:07:58,278 そうだな…。 92 00:07:58,278 --> 00:08:02,482 らせん状に花弁がつく キレンゲショウマ…。 93 00:08:04,050 --> 00:08:10,256 属名も 和名と同じく キレンゲショウマとする。 94 00:08:16,563 --> 00:08:20,233 (田邊)Kirengeshoma turbinata➡ 95 00:08:20,233 --> 00:08:22,936 Tanabe. 96 00:08:26,573 --> 00:08:30,744 あ…。 97 00:08:30,744 --> 00:08:34,547 ふう…。 98 00:08:36,383 --> 00:08:38,318 はあ…。 99 00:08:38,318 --> 00:08:53,600 ♬~ 100 00:08:53,600 --> 00:09:01,207 まさか 万さんが同じ植物を調べてたなんて…。 101 00:09:01,207 --> 00:09:03,543 キレンゲショウマ属は➡ 102 00:09:03,543 --> 00:09:06,446 キレンゲショウマ ただ一種だけからなる➡ 103 00:09:06,446 --> 00:09:09,349 東アジアの固有属であり➡ 104 00:09:09,349 --> 00:09:15,855 日本人が 日本の雑誌に発表した 最初の新属となりました。 105 00:09:17,724 --> 00:09:20,226 ああ…。 106 00:09:22,362 --> 00:09:26,733 ああ…。 107 00:09:26,733 --> 00:09:29,636 ふう…。 108 00:09:29,636 --> 00:09:34,607 おめでとうございます 田邊教授。 109 00:09:34,607 --> 00:10:05,772 ♬~ 110 00:10:05,772 --> 00:10:10,276 聡子。 (聡子)はい。 111 00:10:19,285 --> 00:10:21,221 お前のおかげだ。 112 00:10:21,221 --> 00:10:23,723 そばに いてくれたから。 113 00:10:26,960 --> 00:10:32,131 じき 誕生日だろう? 何か欲しいものはあるか? 114 00:10:32,131 --> 00:10:35,969 欲しいもの? うん。 115 00:10:35,969 --> 00:10:40,840 I want to give you a gift for your birthday. 116 00:10:40,840 --> 00:10:47,981 アメリカでは その人の生まれた日を祝福するんだ。 117 00:10:47,981 --> 00:10:52,652 では… おねだりしても よろしいのでしょうか? 118 00:10:52,652 --> 00:10:55,855 うん。 何でも。 119 00:11:02,462 --> 00:11:07,667 1日だけ あなたをください。 120 00:11:09,936 --> 00:11:14,607 子供たちが 海を見たいと申しております。 121 00:11:14,607 --> 00:11:17,911 お忙しいのは 承知しておりますが…。 122 00:11:19,779 --> 00:11:23,116 いいなあ…。 123 00:11:23,116 --> 00:11:25,818 海か…。 124 00:11:27,787 --> 00:11:31,424 あ… 私も 久しく行っていない。 125 00:11:31,424 --> 00:11:35,295 行こう みんなで。 はい。 126 00:11:35,295 --> 00:11:39,132 (足音) 127 00:11:39,132 --> 00:11:43,803 旦那様 お手紙でございます。 大学からです。 128 00:11:43,803 --> 00:11:46,439 大学から? 129 00:11:46,439 --> 00:11:49,142 どうして わざわざ…。 130 00:12:06,759 --> 00:12:12,765 それは 唐突に 田邊に非職を命じる書面でした。 131 00:12:15,468 --> 00:12:20,473 田邊は 帝国大学を追放されたのです。 132 00:12:27,080 --> 00:12:30,950 徳永君… 帰ってきてたのか。 133 00:12:30,950 --> 00:12:34,821 (徳永) 田邊教授 大変ご無沙汰しております。 134 00:12:34,821 --> 00:12:37,423 ドイツより 帰国いたしました。 135 00:12:37,423 --> 00:12:39,359 ん…。 136 00:12:39,359 --> 00:12:43,630 なぜ 先に 植物学教室に来ない? 137 00:12:43,630 --> 00:12:46,666 もちろん 今 行こうと思っておりました。 138 00:12:46,666 --> 00:12:49,969 たまたま 美作教授と行き合いましたもので。 139 00:12:49,969 --> 00:12:54,641 (美作)ええ。 ドイツの話を聞いていただけですよ。 140 00:12:54,641 --> 00:12:59,812 徳永君とは 昔 モース博士の貝塚発掘に 同行しましたからね。 141 00:12:59,812 --> 00:13:03,082 あのころは 田邊教授のもとに 呼ばれたはいいものの➡ 142 00:13:03,082 --> 00:13:07,587 植物学どころかフィールドワークが 何たるかも知りませんでしたからね。 143 00:13:07,587 --> 00:13:12,292 徳永君 じゃあ また。 はい。 144 00:13:21,934 --> 00:13:27,640 教授 私も 世界を見てきましたよ。 145 00:13:33,413 --> 00:13:36,215 お帰り。 146 00:13:38,284 --> 00:13:45,158 植物学教室は 田邊に代わり 徳永が教授となりました。 147 00:13:45,158 --> 00:14:02,175 ♬~ 148 00:14:28,267 --> 00:14:31,471 はあ…。