1 00:00:02,169 --> 00:00:09,910 ♬~ 2 00:00:09,910 --> 00:00:13,380 (ヨネ子)<昭和初期 星岡茶寮は➡ 3 00:00:13,380 --> 00:00:19,753 魯山人先生のお料理と器が評判を呼び 日本中の名士が押し寄せ➡ 4 00:00:19,753 --> 00:00:23,590 空前の大繁盛となっていました。➡ 5 00:00:23,590 --> 00:00:27,094 しかし 先生は お金に糸目をつけず➡ 6 00:00:27,094 --> 00:00:30,931 売り上げを骨董につぎ込み 経営は悪化。➡ 7 00:00:30,931 --> 00:00:33,400 口の悪さも災いして➡ 8 00:00:33,400 --> 00:00:37,938 従業員たちの不平不満も たまっていました> 9 00:00:37,938 --> 00:00:42,809 先生 内容証明が来ています。 10 00:00:42,809 --> 00:00:44,811 (魯山人)えっ? 11 00:00:52,953 --> 00:00:57,257 なにが「房次郎」や…。 ええ? 12 00:01:13,907 --> 00:01:18,211 何や これは…。 何や これ。 13 00:01:23,250 --> 00:01:30,924 内容証明は 先生と苦楽を共にされた 中村竹四郎支配人からの解雇通知でした。 14 00:01:30,924 --> 00:01:33,260 先生が ひどく狼狽されたのは➡ 15 00:01:33,260 --> 00:01:38,131 宛名に 本名の「房次郎」とあったからに 違いありません。 16 00:01:38,131 --> 00:01:42,970 誰もが 捨て子の房次郎と うわさしている。 17 00:01:42,970 --> 00:01:46,974 やっぱり 自分は捨て子なのだと 思われたのでしょう。 18 00:01:49,109 --> 00:01:54,915 (カラスの鳴き声) 19 00:01:58,618 --> 00:02:04,891 <先生は 北鎌倉に築かれた 登り窯のある家に お住まいでした。➡ 20 00:02:04,891 --> 00:02:08,362 陶芸家の先生を支えておられたのは➡ 21 00:02:08,362 --> 00:02:10,731 窯場主任の松山さんと➡ 22 00:02:10,731 --> 00:02:13,934 お手伝いの春子さんでした> 23 00:02:15,569 --> 00:02:21,441 ⚟(カラスの鳴き声) 24 00:02:21,441 --> 00:02:26,580 先生 おはようございます。 本日も お願いいたします。 25 00:02:26,580 --> 00:02:28,582 おはよう。 26 00:02:38,592 --> 00:02:41,395 先生 今日も お一人ですね。 27 00:02:41,395 --> 00:02:45,265 そうね。 28 00:02:45,265 --> 00:02:48,935 先生のお料理は 春子さんが作られるのですか? 29 00:02:48,935 --> 00:02:53,807 そう。 ほかの人のごはんは 召し上がらないの。 30 00:02:53,807 --> 00:02:58,612 春子さん お母さんみたいですね。 31 00:02:58,612 --> 00:03:00,580 ⚟お~い 春子。 32 00:03:00,580 --> 00:03:03,450 はい ただいま! 33 00:03:03,450 --> 00:03:06,720 今日は大切なお客様が来られるから よろしくね。 34 00:03:06,720 --> 00:03:08,722 はい。 35 00:03:10,357 --> 00:03:12,426 あっ…。 36 00:03:12,426 --> 00:03:16,730 ハァ… イサム 本当に こっちなの? 37 00:03:16,730 --> 00:03:21,234 淑子さん 僕はこっちだと思うよ。 38 00:03:21,234 --> 00:03:24,137 ん…。 フッ…。 39 00:03:24,137 --> 00:03:26,106 (鳥の鳴き声) 40 00:03:26,106 --> 00:03:31,244 もう~ こんなの道じゃないわ。 41 00:03:31,244 --> 00:03:34,147 私の名前は イサム・ノグチ。 42 00:03:34,147 --> 00:03:40,253 アメリカ人の母と 日本人の父の間に生まれたアーティスト。 43 00:03:40,253 --> 00:03:44,591 魯山人先生 会いたくて 来ました。 44 00:03:44,591 --> 00:03:51,098 私の名前は山口淑子。 戦争前は李香蘭。 歌手で女優です。 45 00:03:51,098 --> 00:03:56,403 夫のイサムと来たのですけれども 道が悪くて困っています。 46 00:03:56,403 --> 00:03:58,772 やっぱり こっちですよ。 47 00:03:58,772 --> 00:04:01,675 あっ…。 Are you OK? Yoshiko. 48 00:04:01,675 --> 00:04:04,544 I’m not. フフッ。 49 00:04:04,544 --> 00:04:08,548 あっ…。 おっとっとっと…。あっ! フフッ…。 50 00:04:10,417 --> 00:04:13,553 春子! 何か連絡あったか? 51 00:04:13,553 --> 00:04:17,557 ⚟ありませんよ。 あっ…。 52 00:04:21,294 --> 00:04:23,563 (駆けてくる足音) 53 00:04:23,563 --> 00:04:26,867 先生 いらっしゃいました! あっ そうか! 54 00:04:31,905 --> 00:04:36,776 ああ! ハハハ…。 よう来てくれましたね~! 初めまして。 55 00:04:36,776 --> 00:04:39,779 魯山人先生! おお… ハハハ! 56 00:04:39,779 --> 00:04:45,385 イサムは「魯山人先生 魯山人先生」と 寝言でも言っておりますのよ。 57 00:04:45,385 --> 00:04:47,320 Really? It’s true. 58 00:04:47,320 --> 00:04:50,090 いびきも かいていましたけれどね。 アッハッハ…! 59 00:04:50,090 --> 00:04:52,592 いや~ まあ とにかく早う入って。 さあ 入って入って。 60 00:04:52,592 --> 00:04:54,528 <イサム・ノグチさんは➡ 61 00:04:54,528 --> 00:04:59,366 広島の原爆モニュメントを作るために 来日されたのですが➡ 62 00:04:59,366 --> 00:05:04,671 その話が立ち消えとなり 落ち込んでおられました> 63 00:05:06,206 --> 00:05:10,343 美しいなあ…。 64 00:05:10,343 --> 00:05:15,715 お月様 どこの国も同じ… 美しい。 65 00:05:15,715 --> 00:05:17,717 ああ…。 66 00:05:19,586 --> 00:05:22,222 (足音) 67 00:05:22,222 --> 00:05:24,558 ああ…。 68 00:05:24,558 --> 00:05:28,862 こちら 食いしん坊のヨネ子君や。 んっ。 69 00:05:41,374 --> 00:05:44,077 よっしゃ! これ 水に取って むきや。 70 00:05:44,077 --> 00:05:46,112 はい! 71 00:05:46,112 --> 00:05:50,750 熱っ! あっち… あちち あちち…。 72 00:05:50,750 --> 00:05:52,953 あちちちち…。 73 00:06:02,863 --> 00:06:07,200 (淑子)まあ… 美しい! 74 00:06:07,200 --> 00:06:11,204 自然に勝る アート ない。 75 00:06:16,543 --> 00:06:18,878 うん! 76 00:06:18,878 --> 00:06:22,882 そして… おいしい。 フッ。 うん。 77 00:06:27,354 --> 00:06:29,356 ん…。 78 00:06:35,896 --> 00:06:37,831 あ~。 79 00:06:37,831 --> 00:06:45,572 イサム君! あんたの石の芸術 すばらしい。 80 00:06:45,572 --> 00:06:54,281 是非 日本でもね 本物の芸術を生んでください。 ねっ? 81 00:06:54,281 --> 00:06:56,283 乾杯。 82 00:07:01,521 --> 00:07:08,395 僕… 日本の父の邪魔者。 83 00:07:08,395 --> 00:07:12,098 日本に 家 ない。 84 00:07:15,535 --> 00:07:22,042 (淑子)むか~しむかし 日本のお父さんと アメリカのお母さんの間に➡ 85 00:07:22,042 --> 00:07:25,078 かわいい男の子が生まれました。 86 00:07:25,078 --> 00:07:29,549 男の子は 日本にも アメリカにも 帰る家がなく➡ 87 00:07:29,549 --> 00:07:32,886 悲しい思いをしていました。 88 00:07:32,886 --> 00:07:38,358 それでも 男の子は アートに育てられ➡ 89 00:07:38,358 --> 00:07:43,563 淑子という女性に出会い 結婚しましたとさ。 90 00:07:43,563 --> 00:07:47,901 めでたし めでたし。 フッ…。 91 00:07:47,901 --> 00:07:51,204 I love you, Yoshiko. 92 00:07:57,377 --> 00:08:03,016 イサム君。 あんた ここに住んだらええ。 なあ? 93 00:08:03,016 --> 00:08:07,187 ちょうど 離れが空いとるから そこに住んで芸術を生みなさい。 94 00:08:07,187 --> 00:08:09,856 ねっ? あ…。 95 00:08:09,856 --> 00:08:12,692 本当ですか? ああ。 96 00:08:12,692 --> 00:08:16,563 窯があるから 焼き物も やったらええ。 97 00:08:16,563 --> 00:08:21,201 で 淑子さん… あんた ここから撮影所へ通いなさい。 ねえ? 98 00:08:21,201 --> 00:08:25,038 ありがとうございます。 松竹大船なんて 言うたら隣町や。 99 00:08:25,038 --> 00:08:27,073 ハハハハ…! 100 00:08:27,073 --> 00:08:29,542 ああっ。 Thank you! 101 00:08:29,542 --> 00:08:32,879 えっ? Thank you so much! パパ魯山人。 102 00:08:32,879 --> 00:08:37,217 大丈夫… 逃げへん 逃げへん。 あっ… 苦しい。 103 00:08:37,217 --> 00:08:45,225 (鳥の鳴き声) 104 00:09:28,501 --> 00:09:30,870 ハハハ…。 ご無沙汰しております。 105 00:09:30,870 --> 00:09:33,706 いや~ しばらくやね~。 今日は お時間を取っていただき➡ 106 00:09:33,706 --> 00:09:35,642 ありがとうございます。 いや いや いや…。 107 00:09:35,642 --> 00:09:42,449 <先生の昔からの友人で 美術評論家の 大山さんが訪ねてこられました> 108 00:09:44,717 --> 00:09:48,054 おいしそうですね~。 うん。 109 00:09:48,054 --> 00:09:51,891 栗のお皿 私が選んでいいですか? 110 00:09:51,891 --> 00:09:56,763 どうぞ。 大山様は お目が高いから 慎重にね。 111 00:09:56,763 --> 00:09:58,765 はい。 112 00:10:27,260 --> 00:10:30,163 どうですか? 春子さん。 113 00:10:30,163 --> 00:10:33,399 まあ 美しい。 114 00:10:33,399 --> 00:10:37,270 もう 私じゃなくても大丈夫ね。 何がですか? 115 00:10:37,270 --> 00:10:41,140 ほら 早くお出しして。 あっ はい。 116 00:10:41,140 --> 00:10:43,943 (風の音と鳥の鳴き声) 117 00:10:43,943 --> 00:10:47,413 ここは いいですね~。 118 00:10:47,413 --> 00:10:51,117 自然が目に入ると 心持ちが違う。 119 00:10:51,117 --> 00:10:55,955 ハハッ… まあ 飽きることはないな。 120 00:10:55,955 --> 00:10:59,425 行雲流水の毎日ですか? 121 00:10:59,425 --> 00:11:04,230 行雲流水… アハハハハ…。 まあ そんなとこかな。 122 00:11:04,230 --> 00:11:07,133 アッハハハ…。 ああ…。 123 00:11:07,133 --> 00:11:13,239 私は 国への出仕が忙しく 日本のために せっせと働いていますよ。 124 00:11:13,239 --> 00:11:16,743 ええこっちゃ。 日本のために頑張ってください。 125 00:11:16,743 --> 00:11:19,245 (笑い声) 126 00:11:19,245 --> 00:11:22,248 (足音) 127 00:11:29,589 --> 00:11:33,393 こちらね 雑誌の記者で田ノ上君や。 128 00:11:33,393 --> 00:11:35,929 あっ…。 私の人生録を書いとる。 129 00:11:35,929 --> 00:11:37,864 ああ…。 田ノ上です。 130 00:11:37,864 --> 00:11:41,601 大山です。 うん。 131 00:11:41,601 --> 00:11:43,603 ほう…。 132 00:12:00,353 --> 00:12:04,557 この栗の皿 誰が決めたのかね? 133 00:12:04,557 --> 00:12:09,896 春子さんに教えてもらって 私が選びました。 134 00:12:09,896 --> 00:12:11,898 うん…。 135 00:12:26,446 --> 00:12:30,583 今日 来たのは 北大路魯山人先生を➡ 136 00:12:30,583 --> 00:12:35,388 織部焼の人間国宝に推薦しようと 考えていまして…。 137 00:12:35,388 --> 00:12:37,390 いかがですか? 138 00:12:40,593 --> 00:12:43,496 うん…。 139 00:12:43,496 --> 00:12:50,269 申し訳ないがね… お断りします。 140 00:12:50,269 --> 00:12:58,144 私はね 名誉とか勲章とは 無縁でありたいんや。 141 00:12:58,144 --> 00:13:03,549 はあ… そうだと思いましたよ。 142 00:13:03,549 --> 00:13:10,423 でも 人間国宝になれば 作品の値段は 3倍にも4倍にも跳ね上がる。 143 00:13:10,423 --> 00:13:19,432 使用人の生活もあるでしょうから 早急に断らないで 少し考えてください。 144 00:13:32,078 --> 00:13:38,584 う~ん… この栗はうまいなあ。 145 00:13:38,584 --> 00:13:42,922 その 栗の木ぃな➡ 146 00:13:42,922 --> 00:13:48,594 娘が生まれた時に植えたんや。 147 00:13:48,594 --> 00:13:56,269 娘は 柿や栗が大好物で よう食べとったわ。 148 00:13:56,269 --> 00:13:58,271 ああ…。 149 00:13:59,939 --> 00:14:03,710 ごちそうさまでした。 150 00:14:03,710 --> 00:14:07,547 これ以上いると 北大路魯山人を怒らせるから➡ 151 00:14:07,547 --> 00:14:09,849 退散しますよ。 152 00:14:35,908 --> 00:14:39,579 (鳥の鳴き声) 153 00:14:39,579 --> 00:14:44,083 先生。 えっ? ああ…。 154 00:14:44,083 --> 00:14:46,385 何や? 155 00:14:46,385 --> 00:14:50,256 このようなことを申し上げる立場では ございませんが➡ 156 00:14:50,256 --> 00:14:53,092 お聞き願いたいことがございます。 157 00:14:53,092 --> 00:14:57,597 何や 改まって。 えっ? 言うてみい。 158 00:14:59,599 --> 00:15:04,036 今や… 経済状態は火の車➡ 159 00:15:04,036 --> 00:15:07,907 使用人たちへの給料が 払えないだけではなく➡ 160 00:15:07,907 --> 00:15:12,745 土や釉薬も買えない始末。 161 00:15:12,745 --> 00:15:21,053 このままでは 作陶もままならぬ日が近くやって来ます。 162 00:15:21,053 --> 00:15:28,561 是非 人間国宝へのご推薦を お受けくださいませ! 163 00:15:30,363 --> 00:15:35,368 人間国宝 お受けくださいませ! 164 00:15:39,906 --> 00:15:43,776 あんたらの覚悟は分かったわ。 165 00:15:43,776 --> 00:15:45,778 下がってくれ。 166 00:16:00,193 --> 00:16:04,897 (せきばらい) 167 00:16:10,837 --> 00:16:19,345 (鳥の鳴き声) 168 00:16:24,884 --> 00:16:27,220 先生…。 うん。 169 00:16:27,220 --> 00:16:30,890 この不思議な模様 どうして出来ますか? 170 00:16:30,890 --> 00:16:33,359 ああ それは備前の土や。 171 00:16:33,359 --> 00:16:38,564 炎に焼かれて 土の景色が現れるんや。 172 00:16:38,564 --> 00:16:42,869 すごい! 土の景色…。 173 00:16:58,384 --> 00:17:01,187 パパ魯山人は 志野ですか? 174 00:17:01,187 --> 00:17:07,894 うん…。 子供の時分に見たな ツツジの赤を出すんや。 175 00:17:09,528 --> 00:17:12,331 火と 戦いですね。 176 00:17:12,331 --> 00:17:16,202 うん… あんたも土との戦いやな。 177 00:17:16,202 --> 00:17:18,204 そうです。 178 00:17:18,204 --> 00:17:22,975 人生 戦いの連続です。 パパ魯山人。 179 00:17:22,975 --> 00:17:26,212 うん…。 180 00:17:26,212 --> 00:17:34,553 (鳥の鳴き声) 181 00:17:34,553 --> 00:17:42,428 ♬ 君がみ胸に 182 00:17:42,428 --> 00:17:50,369 ♬ 抱かれて聞くは 183 00:17:50,369 --> 00:18:00,046 ♬ 夢の船唄 184 00:18:00,046 --> 00:18:09,722 ♬ 鳥の歌 185 00:18:09,722 --> 00:18:18,564 ♬ 水の蘇州の 186 00:18:18,564 --> 00:18:27,206 ♬ 花散る春を 187 00:18:27,206 --> 00:18:35,548 ♬ 惜しむか 柳が 188 00:18:35,548 --> 00:18:43,255 ⚟(戸の開閉音) ♬ すすり泣く 189 00:18:46,559 --> 00:18:53,432 ♬ 花をうかべて 190 00:18:53,432 --> 00:19:00,673 ♬ 流れる水の 191 00:19:00,673 --> 00:19:07,847 ♬ 明日のゆくえは 192 00:19:07,847 --> 00:19:14,553 ♬ 知らねども 193 00:19:17,523 --> 00:19:24,296 ♬ こよい映した 194 00:19:24,296 --> 00:19:31,537 ♬ ふたりの姿 195 00:19:31,537 --> 00:19:40,546 ♬ 消えてくれるな 196 00:19:40,546 --> 00:19:47,219 ♬ いつまでも 197 00:19:47,219 --> 00:19:49,889 先生。 えっ? 198 00:19:49,889 --> 00:19:55,227 少し お話があります。 よろしいですか? 199 00:19:55,227 --> 00:19:57,163 ああ…。 200 00:19:57,163 --> 00:20:00,900 お前 誰に向かって 物を言うとるんや! ええ!? 201 00:20:00,900 --> 00:20:04,570 お会いくださいませ。 202 00:20:04,570 --> 00:20:09,742 春子… あんた 余計な世話を焼いちゃ あかん。 なあ? 203 00:20:09,742 --> 00:20:12,244 引っ込んでいなさい。 204 00:20:12,244 --> 00:20:14,914 何や その目は。 ええ? 205 00:20:14,914 --> 00:20:18,584 まだ何か言いたいことがあるんか? 206 00:20:18,584 --> 00:20:20,886 お願いでございます。 207 00:20:22,922 --> 00:20:26,592 お会いくださいませ。 208 00:20:26,592 --> 00:20:28,928 やかましい! 209 00:20:28,928 --> 00:20:32,732 引っ込んでろ! ケガするぞ! 210 00:20:48,280 --> 00:20:51,584 お~い。 お~い。 211 00:21:03,362 --> 00:21:06,232 パパ魯山人。 212 00:21:06,232 --> 00:21:09,902 火が 人間のにおい 焼きます。 213 00:21:09,902 --> 00:21:12,938 火のマジック。 214 00:21:12,938 --> 00:21:17,943 汚い人間の考え 火が焼き尽くします。 215 00:21:22,248 --> 00:21:26,585 イサム! 炎の色を見てみろ。 216 00:21:26,585 --> 00:21:32,258 真っ赤な炎 白くなってきました。 217 00:21:32,258 --> 00:21:34,760 ⚟よし 止めろ! 218 00:21:34,760 --> 00:21:36,795 はい パパ魯山人! 219 00:21:36,795 --> 00:21:38,797 お~い! 220 00:21:51,210 --> 00:21:57,216 <窯だきが終わったから来なさいと 先生から お呼びがかかりました> 221 00:21:59,285 --> 00:22:01,554 どうぞ。 222 00:22:01,554 --> 00:22:03,556 すいません。 223 00:22:24,577 --> 00:22:29,081 春子さん。 昭子さんって ご存じですか? 224 00:22:29,081 --> 00:22:32,117 先生の娘さんよ。 どうして知ってるの? 225 00:22:32,117 --> 00:22:36,589 先生から聞きました。 そう…。 226 00:22:36,589 --> 00:22:39,258 とってもかわいい子でね➡ 227 00:22:39,258 --> 00:22:44,129 小さい時はね 私が遊び相手だったのよ。 228 00:22:44,129 --> 00:22:48,267 私と同じ年だそうですね。 229 00:22:48,267 --> 00:22:52,605 先生 そんなことまで おっしゃったのね。 230 00:22:52,605 --> 00:22:56,909 昭子さんは 今も よく ここへ来られるのですか? 231 00:22:58,477 --> 00:23:02,481 おやめなさい。 あなたは知らなくていいの。 232 00:23:04,717 --> 00:23:07,219 すみませんでした。 233 00:23:09,889 --> 00:23:13,359 先生は? おられますよ。 234 00:23:13,359 --> 00:23:15,294 ちょっと待って。 235 00:23:15,294 --> 00:23:19,899 先生は窯たきが終わったばかりで 気が立っておられるから 気を付けてね。 236 00:23:19,899 --> 00:23:23,369 はい。 237 00:23:23,369 --> 00:23:25,304 (文字を彫る音) 238 00:23:25,304 --> 00:23:27,239 おう! 239 00:23:27,239 --> 00:23:48,394 ♬~ 240 00:23:48,394 --> 00:23:51,597 先生 遅くなりました。 241 00:23:51,597 --> 00:24:05,878 ♬~ 242 00:24:05,878 --> 00:24:10,749 <先生の 野獣のような荒ぶる魂に触れて➡ 243 00:24:10,749 --> 00:24:13,752 私は動けなくなった> 244 00:24:13,752 --> 00:24:21,360 ♬~ 245 00:24:21,360 --> 00:24:23,429 んん…! 246 00:24:23,429 --> 00:24:40,245 ♬~ 247 00:24:40,245 --> 00:24:45,117 ハァ… ハァ…。 248 00:24:45,117 --> 00:24:49,254 春子! ビールや。 249 00:24:49,254 --> 00:24:52,257 はい。 あれ? 私…。 250 00:24:52,257 --> 00:24:54,760 気を失っていたのよ。 251 00:24:59,898 --> 00:25:04,536 春子! ビール 遅い! 252 00:25:04,536 --> 00:25:08,240 はい! (駆けていく足音) 253 00:25:18,217 --> 00:25:21,954 あんたなあ…➡ 254 00:25:21,954 --> 00:25:26,158 言われたことも すぐにできんのかね。 255 00:25:28,060 --> 00:25:32,564 あんた クビや。 出ていきなさい。 256 00:25:41,907 --> 00:25:47,246 聞こえんのか? あんた クビや。 257 00:25:47,246 --> 00:25:49,248 出ていけ! 258 00:25:57,256 --> 00:25:59,958 お世話になりました。 259 00:26:05,864 --> 00:26:08,167 ちょっ 春子さん…。 260 00:26:15,574 --> 00:26:17,576 (戸を閉める音) 261 00:26:24,883 --> 00:26:30,222 春子さん 行かないでください! きっと 先生も後悔されています。 262 00:26:30,222 --> 00:26:34,560 もう いいのよ。 どうしてですか? 263 00:26:34,560 --> 00:26:38,363 私がね 余計なおせっかいをしたの。 264 00:26:38,363 --> 00:26:40,732 どういうことですか? 265 00:26:40,732 --> 00:26:45,370 前から覚悟していたのよ。 もういいの。 266 00:26:45,370 --> 00:26:50,742 たかが ビールが遅れたぐらいで… 春子さんは何も悪くありません。 267 00:26:50,742 --> 00:26:54,246 私 先生を呼んできます! 268 00:26:54,246 --> 00:26:57,149 先生… 先生 どこですか? 269 00:26:57,149 --> 00:26:59,852 窯たきのあとは お茶室よ。 270 00:27:08,327 --> 00:27:12,531 先生! 春子さんが行ってしまいます! 271 00:27:12,531 --> 00:27:17,536 ⚟先生 出てきてください! お願いします! 272 00:27:19,204 --> 00:27:22,908 先生… 先生! 273 00:27:27,546 --> 00:27:31,350 お願い! 待ってください… 春子さん。 274 00:27:31,350 --> 00:27:34,553 先生は ご自分の身の回りのことが できないから➡ 275 00:27:34,553 --> 00:27:37,456 あなたが 時々は見てあげてね。 276 00:27:37,456 --> 00:27:41,727 私は 春子さんみたいにはできません。 ヨネ子さんなら 大丈夫。 277 00:27:41,727 --> 00:27:44,763 春子さん! 278 00:27:44,763 --> 00:27:51,270 ヨネ子さん どうしようもないこともね あるのよ。 279 00:27:54,239 --> 00:27:56,542 先生をお願いします。 280 00:27:58,911 --> 00:28:01,813 勝手を言ってごめんね。 281 00:28:01,813 --> 00:28:06,018 春子さん ここで待っててください! 282 00:28:06,018 --> 00:28:09,221 先生は 私が説得してきます! 283 00:28:25,337 --> 00:28:30,142 (鳥の鳴き声) 284 00:28:38,350 --> 00:28:44,556 先生! もう一度 春子さんと話してください! 285 00:28:44,556 --> 00:28:47,359 春子さんは 本当は ここにいたいんです! 286 00:28:47,359 --> 00:28:49,294 先生だって同じじゃないですか! 287 00:28:49,294 --> 00:28:52,798 先生! 先生さえ…。 288 00:28:56,568 --> 00:29:01,540 先生さえ… 素直になれば…➡ 289 00:29:01,540 --> 00:29:05,844 春子さんは…。 290 00:29:05,844 --> 00:29:09,314 先生! 素直になってください! 291 00:29:09,314 --> 00:29:12,517 春子さんに ここにいてくれと言ってください! 292 00:29:12,517 --> 00:29:17,222 子供みたいに閉じこもってないで 外へ出てください! 293 00:29:19,291 --> 00:29:21,493 先生! 294 00:29:25,864 --> 00:29:32,371 あんた… 誰に向かって 物を言っとるんや。 ええ? 295 00:29:34,573 --> 00:29:38,343 私は 北大路魯山人や! 296 00:29:38,343 --> 00:29:40,879 出てけ! 297 00:29:40,879 --> 00:29:43,548 あんたに何が分かる!? 298 00:29:43,548 --> 00:29:45,851 二度と来るな! 299 00:29:55,227 --> 00:29:59,031 ハァ… ハァ… ハァ…。 300 00:29:59,031 --> 00:30:04,369 (鳥の鳴き声) 301 00:30:04,369 --> 00:30:17,683 (すすり泣き) 302 00:30:29,528 --> 00:30:33,265 アハハハハ…。 303 00:30:33,265 --> 00:30:35,567 はあ~…。 304 00:30:55,287 --> 00:31:08,300 (鳥の鳴き声) 305 00:31:18,510 --> 00:31:21,446 これから 窯 開ける。 306 00:31:21,446 --> 00:31:23,448 先生! ああ? 307 00:31:23,448 --> 00:31:26,585 まだ 窯が冷め切っておりません。 おやめください! 308 00:31:26,585 --> 00:31:29,921 いや 開けるんや。 先生…。 309 00:31:29,921 --> 00:31:32,824 あと一日… あと一日だけ お待ちください! 310 00:31:32,824 --> 00:31:35,260 やかましい! 311 00:31:35,260 --> 00:31:41,933 松山なあ… わしの茶碗が 出してほしい言うとるんや。 312 00:31:41,933 --> 00:31:46,104 すぐ出してほしい 言うとるんや。 なあ? 313 00:31:46,104 --> 00:31:48,774 おい 開けるぞ! 314 00:31:48,774 --> 00:31:56,415 (陶器にヒビが入る音) 315 00:31:56,415 --> 00:32:01,553 きれいな音 します。 うん…。 316 00:32:01,553 --> 00:32:04,890 ヒビの音や。 317 00:32:04,890 --> 00:32:11,062 人知を超えたヒビにこそ 美が宿るんや。 318 00:32:11,062 --> 00:32:13,265 ハハッ…。 319 00:32:20,772 --> 00:32:26,378 ちゃうわ… ちゃうわ。 320 00:32:26,378 --> 00:32:29,748 私の赤やない。 321 00:32:29,748 --> 00:32:31,750 あっ…。 322 00:32:35,554 --> 00:32:41,359 先生の志野茶碗 私は すばらしいと思ったのですが➡ 323 00:32:41,359 --> 00:32:43,929 納得されませんでした。 324 00:32:43,929 --> 00:32:51,403 冷えていない窯を早く開けたため 半分近くの作品が割れてしまいました。 325 00:32:51,403 --> 00:32:57,209 それでも 窯を維持するためには 売らなくてはいけません。 326 00:32:59,945 --> 00:33:07,953 (鳥の鳴き声) 327 00:33:14,359 --> 00:33:18,230 私たちがアメリカに帰る日が やって来ました。 328 00:33:18,230 --> 00:33:24,736 魯山人先生とイサム・ノグチ 2人とも ショートテンパァ とっても短気なのに➡ 329 00:33:24,736 --> 00:33:27,072 まるで親子のようでした。 330 00:33:27,072 --> 00:33:32,577 ここでのひとときを 私たちは決して忘れないでしょう。 331 00:33:32,577 --> 00:33:36,248 また 必ず来なさいよ。 ねっ? 332 00:33:36,248 --> 00:33:38,183 はい。 うん。 333 00:33:38,183 --> 00:33:41,753 この地は私たちのシャングリラ。 うん。 334 00:33:41,753 --> 00:33:45,590 日本の故郷。 335 00:33:45,590 --> 00:33:55,300 最後 パパ魯山人に 我が妻から… プレゼント。 336 00:33:57,269 --> 00:34:05,911 ♬ わが子よ いとしの汝を 337 00:34:05,911 --> 00:34:14,619 ♬ 父君の形見とし 338 00:34:14,619 --> 00:34:22,360 ♬ こころして愛しみつ 339 00:34:22,360 --> 00:34:31,102 ♬ きょうまで育て上げぬ 340 00:34:31,102 --> 00:34:39,778 ♬ 古き家を巣立ちして 341 00:34:39,778 --> 00:34:48,620 ♬ 今はた汝は何処 342 00:34:48,620 --> 00:34:56,928 ♬ よわき母の影さえも 343 00:34:56,928 --> 00:35:06,538 ♬ 雄々しき汝には見えず 344 00:35:06,538 --> 00:35:14,879 ♬ はてしもなきかの路の 345 00:35:14,879 --> 00:35:23,221 ♬ あなたに汝はゆきぬ 346 00:35:23,221 --> 00:35:30,895 ♬ むなしき我が家を見れば 347 00:35:30,895 --> 00:35:42,240 ♬ 亡き父君おもわる 348 00:35:42,240 --> 00:35:50,382 ♬ 足もとの草むらより 349 00:35:50,382 --> 00:36:03,061 ♬ 立つはさえずる雲雀 350 00:36:03,061 --> 00:36:11,736 ♬ ああ われも強く立ちて 351 00:36:11,736 --> 00:36:22,447 ♬ 我が家の栄誉を守らん 352 00:37:57,909 --> 00:38:00,612 んん…。 353 00:38:02,180 --> 00:38:04,482 頂きます。 354 00:38:31,709 --> 00:38:35,346 (カラスの鳴き声) 355 00:38:35,346 --> 00:38:38,550 うっ! (倒れる音) 356 00:38:38,550 --> 00:39:15,320 ♬~ 357 00:39:15,320 --> 00:39:19,624 ⚟田ノ上さ~ん お荷物預かってますよ。 358 00:39:21,192 --> 00:39:23,194 はい! 359 00:39:35,540 --> 00:39:41,045 <柿の届け先は 娘の昭子さんなのだろう。➡ 360 00:39:41,045 --> 00:39:43,348 先生と娘さんには➡ 361 00:39:43,348 --> 00:39:47,552 きっと 触れてはいけない 悲しみがあるに違いない> 362 00:39:49,220 --> 00:39:56,027 (鳥の鳴き声) 363 00:39:58,830 --> 00:40:01,566 ごめんください。 364 00:40:01,566 --> 00:40:03,568 ⚟はい。 365 00:40:08,439 --> 00:40:11,242 どちら様ですか? 366 00:40:11,242 --> 00:40:14,946 魯山人先生からのお届け物です。 367 00:40:26,591 --> 00:40:28,593 あの…。 368 00:40:31,396 --> 00:40:34,399 先生は とてもお元気です。 369 00:40:38,169 --> 00:40:40,672 お手数をおかけしました。 370 00:40:44,275 --> 00:40:47,979 (鳥の鳴き声) 371 00:41:08,232 --> 00:41:14,038 ⚟(鳥の鳴き声) 372 00:41:18,576 --> 00:41:20,511 お父ちゃん…。 373 00:41:20,511 --> 00:41:33,925 ♬~ 374 00:41:33,925 --> 00:41:36,260 (すすり泣き) 375 00:41:36,260 --> 00:41:51,409 ♬~ 376 00:41:51,409 --> 00:41:56,614 <真っ赤に熟した柿は 優しい味がした> 377 00:41:56,614 --> 00:42:09,927 ♬~ 378 00:42:11,896 --> 00:42:17,902 (足音) 379 00:42:24,909 --> 00:42:27,211 ごめんください。 380 00:42:34,252 --> 00:42:39,257 ⚟(鳥の鳴き声) 381 00:42:58,276 --> 00:43:04,081 ⚟(鳥の鳴き声) 382 00:43:04,081 --> 00:43:07,084 ⚟(物音) 383 00:43:11,823 --> 00:43:17,128 ⚟(鳥の鳴き声) 384 00:43:23,434 --> 00:43:26,337 先生。 うん? 385 00:43:26,337 --> 00:43:30,208 あっ! やあ よう来たな。 386 00:43:30,208 --> 00:43:33,110 んっ… よいしょ! 387 00:43:33,110 --> 00:43:35,913 おっ…。 おお… 大丈夫ですか?いやいや…。 388 00:43:35,913 --> 00:43:39,784 もうろくしてしもうたわ。 ハハハハハ…。 389 00:43:39,784 --> 00:43:41,786 先生。 うん。 390 00:43:41,786 --> 00:43:45,256 せんだっては 言葉が過ぎました。 391 00:43:45,256 --> 00:43:49,126 (せきばらい) あんた イングリッシュいけるか? 392 00:43:49,126 --> 00:43:51,596 はい? 英語。 393 00:43:51,596 --> 00:43:54,098 イエス。 少しだけですが。 394 00:43:54,098 --> 00:43:56,033 オーケー。 ヘヘヘ…。 395 00:43:56,033 --> 00:44:00,872 いや 実はな 外国から 大切な客人が来るんや。 396 00:44:00,872 --> 00:44:02,807 手伝ってくれんかね? 397 00:44:02,807 --> 00:44:05,743 いつですか? 今日や。 398 00:44:05,743 --> 00:44:07,745 今日!? 399 00:44:09,881 --> 00:44:13,684 ロックフェラー? 石油王のロックフェラーですか!? 400 00:44:17,221 --> 00:44:23,561 この北大路魯山人いう男 おもろい人生 歩いとる。 401 00:44:23,561 --> 00:44:27,265 「私が作り あなたが食べる」ですね。