1 00:00:05,262 --> 00:00:10,067 (篠)それは 男の身勝手です! 一人の殿様のために・ 2 00:00:10,067 --> 00:00:14,404 なぜ多くの家臣が 命を 捨てなければならないのですか! 3 00:00:14,404 --> 00:00:18,275 (吉右衛門) 神妙に お裁きを受けんがため 自首つかまつりました。 4 00:00:18,275 --> 00:00:22,746 (家宣)寺坂吉右衛門の一件は 大赦令によって 帳消しじゃの。 5 00:00:22,746 --> 00:00:26,416 (詮房)御意にござります。 おかまいなしとは? 6 00:00:26,416 --> 00:00:29,753 (伯耆守)「おかまいなし」は 「おかまいなし」じゃ。・ 7 00:00:29,753 --> 00:00:33,423 どこへでも 行け。 8 00:00:33,423 --> 00:00:35,759 ・~(テーマ音楽) 9 00:00:35,759 --> 00:01:10,459 ・~ 10 00:01:12,395 --> 00:01:17,067 寺坂吉右衛門 御公儀より おかまいなしの沙汰を受け・ 11 00:01:17,067 --> 00:01:19,002 ただいま 帰着つかまつりました。 12 00:01:19,002 --> 00:01:22,405 ようやった! お前の ふんばりで・ 13 00:01:22,405 --> 00:01:25,308 伊豆大島の3人は 無事に戻ってきた。 14 00:01:25,308 --> 00:01:29,746 15歳以下の15人も 流罪を許された。 ははっ。 15 00:01:29,746 --> 00:01:34,084 男を上げはりましたな。 大手柄じゃ! 16 00:01:34,084 --> 00:01:37,954 大手柄と言われましても 手前は 自首したまでの事。 17 00:01:37,954 --> 00:01:40,957 その後の成り行きは とんと心得ておりませぬ。 18 00:01:40,957 --> 00:01:47,097 さもあらん さもあらん。 何とも 天川屋の悪だくみが・ 19 00:01:47,097 --> 00:01:49,432 ことごとく的中した。 20 00:01:49,432 --> 00:01:53,770 悪だくみとは慮外な。 ハハハハハ! 21 00:01:53,770 --> 00:02:00,110 吉右衛門の自首は 大老 柳沢吉保の心胆を寒からしめた。 22 00:02:00,110 --> 00:02:02,712 打ち首にすれば 世間の非難を浴びる。 23 00:02:02,712 --> 00:02:08,385 放免すれば 赤穂浪士断罪の是非を 問われる。 手に余った柳沢は・ 24 00:02:08,385 --> 00:02:12,255 お前を遠島処分とし 口を封じようとした。 25 00:02:12,255 --> 00:02:17,060 どっこい そうはさせぬ。 近衛家熈様は・ 26 00:02:17,060 --> 00:02:21,932 次の将軍 家宣公と ひそかに 示し合わせて二の矢を放った! 27 00:02:21,932 --> 00:02:24,935 その辺りは 進藤様の 悪だくみでおますな。 28 00:02:24,935 --> 00:02:27,704 ぬかしたな。 恐れ入ります。 29 00:02:27,704 --> 00:02:35,412 近衛様は 綱吉公の御面前に 甘い餌をぶら下げた。 30 00:02:35,412 --> 00:02:43,086 「桂昌院様の御一周忌に 従一位の 御追贈は いかがでしょうか?」。 31 00:02:43,086 --> 00:02:48,425 母思いの綱吉公 パクリと食いついた。 32 00:02:48,425 --> 00:02:52,295 そこで すかさず 家宣公が畳みかけた。 33 00:02:52,295 --> 00:02:57,767 「あわせて 大赦令を発し 囚人たちの罪を減ずれば・ 34 00:02:57,767 --> 00:03:01,371 なお 一層の御供養と 相成りましょう」と・ 35 00:03:01,371 --> 00:03:04,274 ハハハハ 見事な知恵よ! 36 00:03:04,274 --> 00:03:08,044 綱吉公は もう涙を流さんばかりじゃ。 37 00:03:08,044 --> 00:03:10,714 「おお それでよい それでよい」。 38 00:03:10,714 --> 00:03:15,385 不意をつかれた柳沢吉保は 哀れなものじゃ。 39 00:03:15,385 --> 00:03:20,056 進藤様の軍師ぶりは 諸[外:B6308282489AE2D3199CC88000A25BBF]孔明の再来ですな。 40 00:03:20,056 --> 00:03:24,394 おだてるな。 これで 大石様は 安心して・ 41 00:03:24,394 --> 00:03:27,731 御成仏なさいますやろ。 うむ。 42 00:03:27,731 --> 00:03:31,601 まあ 何というても 一番手柄は 寺坂吉右衛門じゃ。 43 00:03:31,601 --> 00:03:36,301 褒めてとらすぞ。 ありがたき幸せ。 44 00:03:38,375 --> 00:03:40,875 通るぞ。 あっ すんまへん。 45 00:03:44,281 --> 00:03:46,416 篠は? 46 00:03:46,416 --> 00:03:51,087 は? いないのか? 47 00:03:51,087 --> 00:03:56,387 お篠はんは 辞めはりました。 辞めた? 48 00:04:10,373 --> 00:04:14,711 (小雪)やあ! 寺坂はん 生きてはったんどすか? 49 00:04:14,711 --> 00:04:19,582 幽霊ではありません。 あっ… お帰りやす。 50 00:04:19,582 --> 00:04:24,054 篠は 辞めたそうですね。 へえ。 51 00:04:24,054 --> 00:04:26,354 今は どこに? 52 00:04:28,391 --> 00:04:30,327 女将さん? 53 00:04:30,327 --> 00:04:36,733 篠の事は 諦めて おくれやす。 えっ? 54 00:04:36,733 --> 00:04:40,403 こんな言い方 しとうおへんのどすけど・ 55 00:04:40,403 --> 00:04:44,074 一旦 捨てた女は 戻ってきしまへん。 56 00:04:44,074 --> 00:04:46,743 捨てたつもりはない。 いいえ。 57 00:04:46,743 --> 00:04:51,081 寺坂はんは 打ち首覚悟で 御公儀へ自首しはりました。 58 00:04:51,081 --> 00:04:55,418 風の噂では 大島へ流罪を 申し渡されたと。 59 00:04:55,418 --> 00:04:59,756 篠にしてみれば 捨てられたも同然どすやろ? 60 00:04:59,756 --> 00:05:05,362 しかし こうして 放免されて戻ってきました。 61 00:05:05,362 --> 00:05:10,700 もう 手遅れやわ。 手遅れ? 62 00:05:10,700 --> 00:05:16,373 あんな別嬪さんやもん 男はんが ほっときまへんわな。 63 00:05:16,373 --> 00:05:18,708 すると…? 64 00:05:18,708 --> 00:05:22,579 所司代のお役人に 口説き落とされて・ 65 00:05:22,579 --> 00:05:25,048 後妻に入りました。 66 00:05:25,048 --> 00:05:30,348 えっ!? 今は 幸せやと思います。 67 00:05:36,393 --> 00:05:39,295 さては 裏切ったのか…。 68 00:05:39,295 --> 00:05:41,264 ちょっと待って下さい。 69 00:05:41,264 --> 00:05:44,734 裏切ったん 寺坂はんの方 違いますか? 70 00:05:44,734 --> 00:05:48,071 お侍の道が どれほどのもんか 知りまへんけど・ 71 00:05:48,071 --> 00:05:52,742 生身の女 ほったらかして よう そんな事が言えますなあ。 72 00:05:52,742 --> 00:05:57,414 後妻の口を勧めたんは うちどす。 73 00:05:57,414 --> 00:06:03,019 折角 つかんだ幸せや。 そっとしといたげなはれ。 74 00:06:03,019 --> 00:06:06,019 うちからも お願いします。 75 00:06:33,383 --> 00:06:35,383 ・(女)もし…。 76 00:06:39,255 --> 00:06:41,724 篠! 77 00:06:41,724 --> 00:07:02,424 ・~ 78 00:07:11,688 --> 00:07:13,688 けち! 79 00:07:25,702 --> 00:07:28,371 (鈴の音) 80 00:07:28,371 --> 00:07:31,708 心ならずも お見舞いが遅れました事・ 81 00:07:31,708 --> 00:07:34,744 謹んで お詫び申し上げまする。 82 00:07:34,744 --> 00:07:37,881 (菊)最後でよいと 言うたではないか。 83 00:07:37,881 --> 00:07:41,718 (伝内)親子ともども世話になった。 礼を申すぞ 吉右衛門。 84 00:07:41,718 --> 00:07:45,889 もったいのうござります。 85 00:07:45,889 --> 00:07:49,759 ぶしつけながら 伝内様は仏門に…。 86 00:07:49,759 --> 00:07:53,062 うむ。 伊豆大島に朽ち果てるはずが・ 87 00:07:53,062 --> 00:07:56,399 こうして命を拾うたのだ。 余生は静かに・ 88 00:07:56,399 --> 00:07:58,735 父と兄の菩提を弔いたい。 89 00:07:58,735 --> 00:08:01,704 すると 吉田家は…? 90 00:08:01,704 --> 00:08:05,904 先代で終わりじゃ。 それでよい。 91 00:08:09,345 --> 00:08:13,645 (登勢)主人が戻りました。 ははっ。 92 00:08:17,220 --> 00:08:21,925 (十郎太夫)やあやあ。 寺坂吉右衛門にござります。 93 00:08:21,925 --> 00:08:25,361 御高名は かねがね。 滅相もない。 94 00:08:25,361 --> 00:08:28,264 手前は 吉田家の 奉公人にござります。 95 00:08:28,264 --> 00:08:30,867 今は恩人じゃ。 いえ…。 96 00:08:30,867 --> 00:08:35,371 本多忠常が家臣 伊藤十郎太夫と申す。 97 00:08:35,371 --> 00:08:39,042 ゆるりと滞在なさるがよい。 ありがとうござります。 98 00:08:39,042 --> 00:08:42,912 早速ながら 明日にも登城して 殿の お目通りを。 99 00:08:42,912 --> 00:08:45,381 一介の足軽にござります。 100 00:08:45,381 --> 00:08:49,052 殿は 赤穂義士の討ち入りに 殊の外 御感興あそばし・ 101 00:08:49,052 --> 00:08:53,389 是非 寺坂吉右衛門殿の話を 聞きたいと仰せで。 102 00:08:53,389 --> 00:08:56,726 滅相もない事。 (登勢)折角のおぼし召しじゃ。 103 00:08:56,726 --> 00:08:59,395 お目にかかれば 仕官の道も開けようぞ。 104 00:08:59,395 --> 00:09:03,666 お言葉ながら まだ御家族の お見舞いが残っておりまする。 105 00:09:03,666 --> 00:09:07,337 (菊)どこと どこじゃ? 遠くは 奥州白河に・ 106 00:09:07,337 --> 00:09:10,240 矢頭右衛門七様の御家族。 107 00:09:10,240 --> 00:09:13,676 常陸笠間には 勝田新左衛門様の御家族。 108 00:09:13,676 --> 00:09:17,547 ならば 早う 務めを果たして ここへ戻って参れ。 109 00:09:17,547 --> 00:09:22,685 大和郡山は 住み心地がよい。 ははっ。 110 00:09:22,685 --> 00:09:26,556 そなたに ふさわしい嫁を 探しておきましょう。 111 00:09:26,556 --> 00:09:30,360 その儀は 平に…。 112 00:09:30,360 --> 00:09:34,030 (登勢)女子は 嫌いかや? いえ…。 113 00:09:34,030 --> 00:09:38,030 酒じゃ 酒! かしこまりました。 114 00:09:45,375 --> 00:09:52,715 (詮房)「上意。 御葬儀は 今月28日 寛永寺にて執り行う事。・ 115 00:09:52,715 --> 00:09:57,587 ただし 増上寺にても 仏事を行う事」。 116 00:09:57,587 --> 00:10:01,724 (吉保)しかと承りました。 117 00:10:01,724 --> 00:10:07,397 六代将軍を継ぐにあたり いくつかの所信を述べる。 118 00:10:07,397 --> 00:10:17,073 綱吉公に仕えし側用人 松平輝貞 および 松平忠周の任務を解き・ 119 00:10:17,073 --> 00:10:22,945 御遺言によって 柳沢吉保のみを残す。 120 00:10:22,945 --> 00:10:30,420 ただし 将軍への物言いに 吉保の取り次ぎは 一切無用。 121 00:10:30,420 --> 00:10:35,291 老中 若年寄りともども 遠慮なく御座所に入り・ 122 00:10:35,291 --> 00:10:38,791 じきじきに意見を具申すべし。 123 00:10:40,930 --> 00:10:46,436 金銭の流通を滞らせる 大銭の鋳造は これを取りやめる。 124 00:10:46,436 --> 00:10:48,371 御賢察…。 125 00:10:48,371 --> 00:10:52,308 生類憐みの令は ただちに取りやめる。 126 00:10:52,308 --> 00:10:56,446 恐れながら 言上つかまつります。 127 00:10:56,446 --> 00:10:58,381 (家宣)苦しゅうない。 128 00:10:58,381 --> 00:11:02,719 六代将軍に孝養の志あらば・ 129 00:11:02,719 --> 00:11:08,057 百年の後まで続けよとの 御遺言にござりました。 130 00:11:08,057 --> 00:11:11,394 生類憐みの令は 正しいか? 131 00:11:11,394 --> 00:11:16,265 恐れながら 慈悲をもって 殺生を禁ずるは・ 132 00:11:16,265 --> 00:11:20,069 仏の道に叶うものと心得まする。 133 00:11:20,069 --> 00:11:23,069 幾万の民を罪に落としてもか? 134 00:11:25,408 --> 00:11:29,078 (家宣)悪政は 改めねばならん。 135 00:11:29,078 --> 00:11:31,414 ははっ。 136 00:11:31,414 --> 00:11:37,086 この家宣だけは 世継ぎとして 御遺言に従い・ 137 00:11:37,086 --> 00:11:40,423 生類憐みの令は守りぬく。 138 00:11:40,423 --> 00:11:44,927 されど 天下万民においては その限りにあらず。 139 00:11:44,927 --> 00:11:46,863 ありがたき事かな。 140 00:11:46,863 --> 00:11:50,433 (忠増)民は 随喜の涙を 流しましょう。 141 00:11:50,433 --> 00:11:55,304 その方どもに 申し条あらば 何なりと差し許す。 142 00:11:55,304 --> 00:11:57,304 遠慮なく述べよ。 143 00:11:59,442 --> 00:12:03,312 恐れながら…。 (家宣)うむ。 144 00:12:03,312 --> 00:12:10,052 某は 幼少のみぎりより 綱吉公に お仕え申して参りました。 145 00:12:10,052 --> 00:12:15,391 されば 御葬儀の前に 剃髪のお許しを。 146 00:12:15,391 --> 00:12:18,294 頭を丸めると申すか? 147 00:12:18,294 --> 00:12:20,294 御意。 148 00:12:24,066 --> 00:12:27,403 その儀は お控え下さりませ。 149 00:12:27,403 --> 00:12:29,338 何故じゃ? 150 00:12:29,338 --> 00:12:34,038 いまだかつて 重臣の剃髪は 例が ござりませぬ。 151 00:12:36,078 --> 00:12:38,778 そうであったか。 152 00:12:43,419 --> 00:12:46,322 葬儀の折の剃髪は許さぬ。 153 00:12:46,322 --> 00:12:49,759 心得ましてござります。 154 00:12:49,759 --> 00:12:56,432 されど 葬儀が終われば そちの気ままに致すがよかろう。 155 00:12:56,432 --> 00:12:59,769 大儀。 ははっ。 156 00:12:59,769 --> 00:13:25,469 ・~ 157 00:13:28,397 --> 00:13:30,733 (儀兵衛)新将軍は きっぱりした お方でな・ 158 00:13:30,733 --> 00:13:35,404 矢継ぎ早に 賄賂禁止令 贅沢禁止令ですわ。 159 00:13:35,404 --> 00:13:40,276 柳沢様は 次々にボロを出して とうとう隠居です。 160 00:13:40,276 --> 00:13:45,414 この勝負 長い目で見れば 大石様の勝ちでしょうな? 161 00:13:45,414 --> 00:13:49,752 そらもう えら勝ちですな。 大石様の御三男の大三郎様は・ 162 00:13:49,752 --> 00:13:55,424 新将軍のお計らいで 芸州浅野の 御本家に 知行千五百石で・ 163 00:13:55,424 --> 00:13:58,761 召し抱えられましたしな。 千五百石…。 164 00:13:58,761 --> 00:14:02,365 ご存じなかった? 長旅が続いたもので。 165 00:14:02,365 --> 00:14:06,235 ほな これは? 浅野内匠頭様の御舎弟 大学様は・ 166 00:14:06,235 --> 00:14:10,239 五百石をもって お旗本に返り咲きや。 167 00:14:10,239 --> 00:14:12,375 なんと…。 168 00:14:12,375 --> 00:14:16,245 おてんとさまは 何もかも お見通しですなあ。 169 00:14:16,245 --> 00:14:20,716 寺坂はんも そのうち ええ話があるのと違いますか? 170 00:14:20,716 --> 00:14:26,389 私は もう46です。 足腰も めっきり弱くなった。 171 00:14:26,389 --> 00:14:31,389 ハハッ そんな情けない事 言わんと もう一花咲かしなはれ。 172 00:14:33,262 --> 00:14:36,399 儀兵衛殿。 へえ。 173 00:14:36,399 --> 00:14:41,070 床の間の花生け 大石様からの頂き物ですか? 174 00:14:41,070 --> 00:14:43,973 いや 違います。 175 00:14:43,973 --> 00:14:47,944 赤穂のお屋敷で 同じものを見たような気がする。 176 00:14:47,944 --> 00:14:53,416 ほう。 いや これはな 茶屋四郎次郎の秘蔵の名品を・ 177 00:14:53,416 --> 00:14:58,287 無理を言うて 120両で譲り受けたもんです。 178 00:14:58,287 --> 00:15:03,225 120両! 南宋の砧ですな。 179 00:15:03,225 --> 00:15:05,361 南宋の砧? 180 00:15:05,361 --> 00:15:09,231 ご存じで? 大石様も そうおっしゃった。 181 00:15:09,231 --> 00:15:16,005 えっ! ほな 同じもんが巡り巡って・ 182 00:15:16,005 --> 00:15:22,005 ここへ来たとなったら これは 因縁ですなあ。 183 00:15:28,384 --> 00:15:32,254 恐れながら申し上げます。 待て! 184 00:15:32,254 --> 00:15:36,258 赤穂浅野家の旧臣 寺坂吉右衛門にござります。 185 00:15:36,258 --> 00:15:39,395 (信吾)おお 吉右衛門か! 186 00:15:39,395 --> 00:15:43,265 御舎弟 大学様にあらせられ ましては 此度 謹慎を解かれ・ 187 00:15:43,265 --> 00:15:48,738 御公儀お旗本に復帰との御事 恐悦至極に存じ奉り・ 188 00:15:48,738 --> 00:15:51,641 お見送りに参じた次第に ござります。 189 00:15:51,641 --> 00:15:54,341 殊勝である。 ははっ。 190 00:16:02,284 --> 00:16:05,855 (大学)吉右衛門。 御機嫌麗しく。 191 00:16:05,855 --> 00:16:09,692 ここで待っていたのか。 ははっ。 192 00:16:09,692 --> 00:16:14,363 そちの忠節ぶりは 進藤源四郎より 詳しく聞いておる。 193 00:16:14,363 --> 00:16:18,234 ありがたく思うぞ。 ははっ。 194 00:16:18,234 --> 00:16:25,708 兄も大石も よい家臣に恵まれた。 草葉の陰で喜んでいよう。 195 00:16:25,708 --> 00:16:29,045 恐れ入り奉りまする。 196 00:16:29,045 --> 00:16:32,381 用がすんだら いつでも江戸へ参れ。 197 00:16:32,381 --> 00:16:37,053 わしも お前のような 家臣を持ちたい。 198 00:16:37,053 --> 00:16:39,722 ありがたき幸せ。 199 00:16:39,722 --> 00:16:42,058 さらばじゃ。 200 00:16:42,058 --> 00:16:44,393 ははっ。 201 00:16:44,393 --> 00:17:14,857 ・~ 202 00:17:14,857 --> 00:17:19,361 見れば見るほど 味わいがありますなあ。 203 00:17:19,361 --> 00:17:24,867 いや~ 手放すんやなかった。 2百両出しても買い戻したい。 204 00:17:24,867 --> 00:17:28,704 いっぺん散った花は 元の枝には戻りまへん。 205 00:17:28,704 --> 00:17:31,040 (笑い声) 206 00:17:31,040 --> 00:17:36,378 寺坂はんが尋ねてはるのはな この花生けの出どころや。 207 00:17:36,378 --> 00:17:41,250 私の見立てですが 恐らく 龍泉窯でしょうな。 208 00:17:41,250 --> 00:17:45,054 天竜寺物と違うて 暗さがないのが よろしい。 209 00:17:45,054 --> 00:17:49,925 そうやない これの売り主や。 元の持ち主やがな。 210 00:17:49,925 --> 00:17:53,395 それは分かりまへん。 3年ほど前に・ 211 00:17:53,395 --> 00:17:56,065 名もない古道具屋が 持ち込んだものを・ 212 00:17:56,065 --> 00:18:01,670 一目で惚れて仕入れたんですわ。 箱書きも由緒書きもなしに。 213 00:18:01,670 --> 00:18:04,573 実はな ひょっとして これは・ 214 00:18:04,573 --> 00:18:08,344 大石様の 持ち物やなかったかと。 215 00:18:08,344 --> 00:18:12,214 大石様? 寺坂はんは 赤穂のお屋敷で・ 216 00:18:12,214 --> 00:18:16,018 これを見たと言うてはる。 ほう~。 217 00:18:16,018 --> 00:18:20,356 もし それやったら 今どき もっと値が張りますな。 218 00:18:20,356 --> 00:18:23,259 3百両と言うても通ります。 219 00:18:23,259 --> 00:18:26,228 四郎次郎殿。 へえ。 220 00:18:26,228 --> 00:18:31,367 差し支えなければ その古道具屋の 名を知りたいのだが。 221 00:18:31,367 --> 00:18:37,239 ええ… 何といいましたかなあ…。 222 00:18:37,239 --> 00:18:40,709 そうそう 刈屋孫兵衛。 223 00:18:40,709 --> 00:18:42,709 えっ! 224 00:18:52,321 --> 00:18:54,256 (四郎次郎)お可留さんとは? 225 00:18:54,256 --> 00:18:58,727 大石様が こよなく めではった京娘や。 226 00:18:58,727 --> 00:19:03,332 討ち入りの翌年に 亡くならはったと聞きましたがな。 227 00:19:03,332 --> 00:19:08,204 その墓を建てたのが 刈屋孫兵衛。 ほう~。 228 00:19:08,204 --> 00:19:10,840 どんな男でしたか? 229 00:19:10,840 --> 00:19:17,713 ええ… よう覚えておりまへんが 色 浅黒く 実直なふうで・ 230 00:19:17,713 --> 00:19:22,551 さよう 年の頃は 45~46。 231 00:19:22,551 --> 00:19:25,688 是非 会わせて頂きたいのだが。 232 00:19:25,688 --> 00:19:30,359 それが 年に いっぺんか にへん ふらっと やってくるぐらいで・ 233 00:19:30,359 --> 00:19:35,030 店を構えておる訳やなし 住まいも 素性も・ 234 00:19:35,030 --> 00:19:37,830 皆目 見当がつきまへん。 235 00:19:39,869 --> 00:19:45,374 恐らく その刈屋孫兵衛が 瀬尾孫左衛門だと思われます。 236 00:19:45,374 --> 00:19:47,309 瀬尾孫左衛門? 237 00:19:47,309 --> 00:19:50,713 討ち入りの前夜に 逃亡したといわれている・ 238 00:19:50,713 --> 00:19:54,413 大石様の御家来や。 ほう~。 239 00:20:12,401 --> 00:20:18,073 これ建てた 刈屋孫兵衛は 瀬尾孫左衛門でっしゃろ? 240 00:20:18,073 --> 00:20:22,945 (次郎左衛門)さあ…。 口止めされてますのか? 241 00:20:22,945 --> 00:20:24,947 すんまへん。 242 00:20:24,947 --> 00:20:29,418 あのな 一文字屋さん。 将軍様は代替わりして・ 243 00:20:29,418 --> 00:20:34,757 世の中 変わったんや。 娘さんが 大石内蔵助の妾やいうて・ 244 00:20:34,757 --> 00:20:40,429 びくびくする事あらへん。 大威張りでええがな。 へえ…。 245 00:20:40,429 --> 00:20:44,099 このお方は 赤穂浪士の 後始末をしてはるのや。 246 00:20:44,099 --> 00:20:49,099 ほんで 孫左衛門に会いたいと こない言うてますのや。 247 00:20:51,774 --> 00:20:57,446 私は 茶屋四郎次郎や。 悪いようにはせえへんさかい・ 248 00:20:57,446 --> 00:21:02,718 信用しとくなはれ。 それはもう…。 249 00:21:02,718 --> 00:21:08,418 お可留さんは 亡くなる前に 子を産んだと思うが…。 250 00:21:13,362 --> 00:21:18,067 男の子か? 女の子か? 女子です。 251 00:21:18,067 --> 00:21:21,937 その子は 今 どこにおる? しっ… 知りまへん。 252 00:21:21,937 --> 00:21:27,409 知らんはずあるかい。 あんたの孫やないか! 253 00:21:27,409 --> 00:21:38,409 ・~ 254 00:21:45,427 --> 00:22:01,710 ・(笛の音) 255 00:22:01,710 --> 00:22:17,259 ・~ 256 00:22:17,259 --> 00:22:20,396 軒を お借りしております。 257 00:22:20,396 --> 00:22:24,066 (松月尼)旅のお方かの? はっ。 258 00:22:24,066 --> 00:22:27,366 どうぞ お入りなされ。 259 00:22:31,407 --> 00:22:36,078 この辺りに 尼寺があると聞きましたが…。 260 00:22:36,078 --> 00:22:42,418 焼けてしまいましてな。 今は墓守だけさせてもろうてます。 261 00:22:42,418 --> 00:22:48,757 庵主様ですか? さようでございます。 262 00:22:48,757 --> 00:22:51,660 (お可音)孫左ではないのか。 263 00:22:51,660 --> 00:22:55,097 雨宿りをさせて 頂いております。 264 00:22:55,097 --> 00:22:57,797 ごゆるりと。 265 00:23:14,383 --> 00:23:18,053 ・(戸の開閉音) 266 00:23:18,053 --> 00:23:20,722 ただいま戻りました。 267 00:23:20,722 --> 00:23:22,722 お帰り。 268 00:23:24,393 --> 00:23:28,897 お探しの書物は 亀山では 手に入りませんでした。 269 00:23:28,897 --> 00:23:32,097 お客様ですよ。 え? 270 00:23:39,074 --> 00:23:42,774 俺だ。 孫左衛門。 271 00:23:46,415 --> 00:23:48,915 吉右衛門…。 272 00:23:50,752 --> 00:23:53,452 会いたかったぞ。 273 00:23:58,427 --> 00:24:01,427 何しに来た? 274 00:24:03,031 --> 00:24:07,369 「何しに来た」とは不粋な物言い。 275 00:24:07,369 --> 00:24:12,708 俺は 7年もの間 お主を捜したのだ。 276 00:24:12,708 --> 00:24:15,408 何のために…。 277 00:24:17,379 --> 00:24:21,250 お主の性根を 確かめたかったのだ。 278 00:24:21,250 --> 00:24:27,055 討ち入りの前夜に逐電したと 聞いて 俺は 頭が クラクラした。 279 00:24:27,055 --> 00:24:30,726 なぜ 俺に黙って姿を消したのだ? 280 00:24:30,726 --> 00:24:32,661 今更 言うてもしかたがない。 281 00:24:32,661 --> 00:24:35,397 言うてくれ。 俺と お主の仲ではないか! 282 00:24:35,397 --> 00:24:37,332 気安い口をきくな。 283 00:24:37,332 --> 00:24:41,270 俺は お前の事など 何とも思うておらぬ。 284 00:24:41,270 --> 00:24:44,740 孫左衛門…。 すまんが 帰ってくれ。 285 00:24:44,740 --> 00:24:50,740 何を恐れているのだ? 俺が お主を咎めるとでも思うか? 286 00:24:59,288 --> 00:25:05,288 いま一度 聞く。 なぜ逃げたのだ? 287 00:25:07,362 --> 00:25:10,265 逃げとうなったからだ。 そうではあるまい。 288 00:25:10,265 --> 00:25:14,703 大石様から 何ぞ頼まれたのではないか? 289 00:25:14,703 --> 00:25:17,403 何も頼まれておらぬ。 290 00:25:20,576 --> 00:25:26,276 今出川千本の上善寺に お可留様の墓があった。 291 00:25:28,717 --> 00:25:33,417 建て主の刈屋孫兵衛は お主であろうが。 292 00:25:35,591 --> 00:25:39,361 誰に聞いた? あちこち聞いて回った。 293 00:25:39,361 --> 00:25:42,064 それこそ さざえの口を こじあけるようにな。 294 00:25:42,064 --> 00:25:49,064 余計な事を。 ここに住む姫御は お可留様のお子じゃな? 295 00:25:53,075 --> 00:25:56,375 大石様の忘れがたみじゃな? 296 00:25:58,413 --> 00:26:03,018 お主… 会うたのか? 297 00:26:03,018 --> 00:26:08,690 一目見て すぐに分かった。 清らかな面ざしといい・ 298 00:26:08,690 --> 00:26:14,990 凜とした物腰といい ただの娘ではない。 299 00:26:29,378 --> 00:26:34,078 話してくれ 孫左衛門。 300 00:26:38,053 --> 00:26:43,053 よし… ついてこい。 301 00:26:56,405 --> 00:27:02,405 いいか 誰にも言うなよ。 302 00:27:04,212 --> 00:27:10,512 これから話す事は 大石様の面目に係わる。 303 00:27:14,356 --> 00:27:22,230 討ち入りの前日 俺は 大石様の部屋に呼ばれた。 304 00:27:22,230 --> 00:27:25,967 (内蔵助)これから 京へ戻って お可留を助けてやってほしい。 305 00:27:25,967 --> 00:27:27,903 えっ? 306 00:27:27,903 --> 00:27:34,376 おりくと子どもたちは 但馬豊岡に れっきとした親がおる。 家もある。 307 00:27:34,376 --> 00:27:38,246 だが お可留には帰る家がない。 308 00:27:38,246 --> 00:27:44,720 若い身空で わしの子を産んで 行く先 どう育て・ 309 00:27:44,720 --> 00:27:52,394 どう暮らすのか それが心残りである。 310 00:27:52,394 --> 00:27:56,732 この期に及んで 未練がましいかもしれんが・ 311 00:27:56,732 --> 00:28:02,003 死を賭して吉良邸に 討ち入らんとする今の今・ 312 00:28:02,003 --> 00:28:05,703 どうしても お可留が気にかかる。 313 00:28:07,342 --> 00:28:14,642 人には言えぬ煩悩に この胸を かきむしられる。 314 00:28:17,018 --> 00:28:24,318 同志は 50人近いが 大石の家来は お前しかいない。 315 00:28:26,361 --> 00:28:29,264 余人には 口が裂けても頼めぬ事だ。・ 316 00:28:29,264 --> 00:28:37,372 すまぬが 悪い主を持ったと・ 317 00:28:37,372 --> 00:28:41,243 思うてはくれまいか…。 318 00:28:41,243 --> 00:28:47,543 大石様の ああいうお顔は 見た事がなかった。 319 00:28:49,384 --> 00:28:56,258 何とも切のうて やるせのうて…。 320 00:28:56,258 --> 00:29:00,996 俺は あの人のためなら いつでも死ねると思うた。 321 00:29:00,996 --> 00:29:05,333 ところが皮肉な事に・ 322 00:29:05,333 --> 00:29:09,204 「生きよ」と言われた。 323 00:29:09,204 --> 00:29:15,343 これは 当座の百両だ。 あとは 長岡天神の家と・ 324 00:29:15,343 --> 00:29:21,683 家財道具 一切を売り払うて 用立てよ。 はっ。 325 00:29:21,683 --> 00:29:27,355 どこかに隠れがを見つけて お可留を住まわせるのだ。 326 00:29:27,355 --> 00:29:32,027 生まれてくる子は 重罪人の連累として・ 327 00:29:32,027 --> 00:29:34,930 公儀に追われるおそれがある。 328 00:29:34,930 --> 00:29:41,036 不憫ではあるが 時が来るまで素性を隠せ。 329 00:29:41,036 --> 00:29:44,372 はっ。 330 00:29:44,372 --> 00:29:48,043 この事は 誰にも言うな。 331 00:29:48,043 --> 00:29:55,043 赤穂の旧臣にも そちの身内にもだ。 332 00:29:57,385 --> 00:30:03,085 しかと 心得ました。 333 00:30:05,727 --> 00:30:12,027 頼むぞ… 孫左衛門。 334 00:30:16,738 --> 00:30:19,641 京へ戻った俺は・ 335 00:30:19,641 --> 00:30:22,611 大石様の お申しつけどおり 家を売り払い・ 336 00:30:22,611 --> 00:30:27,611 一文字屋のつてで お可留様を ここへ移した。 337 00:30:29,317 --> 00:30:36,091 間もなく 京の町にも 討ち入りの噂が伝わった。 338 00:30:36,091 --> 00:30:41,429 お可留様は 心配で心配で 朝夕の食事が喉を通らぬ。 339 00:30:41,429 --> 00:30:50,772 やがて 全員切腹の知らせが 届いたが お可留様は臨月じゃ。 340 00:30:50,772 --> 00:30:57,445 お体に障りがあってはならぬと 俺は 口をつぐんでいた。 341 00:30:57,445 --> 00:31:06,445 しかし 利発なお可留様の事じゃ うすうす感づいていたと思う。 342 00:31:08,390 --> 00:31:13,261 それでも 旦那様のお帰りを信じて 日夜 陰膳を供え・ 343 00:31:13,261 --> 00:31:18,400 季節のお着物を仕立てて 待ち続けた。 344 00:31:18,400 --> 00:31:24,739 やがて 出産。 お可音様が生まれた。 345 00:31:24,739 --> 00:31:27,409 お可音様…。 346 00:31:27,409 --> 00:31:34,749 だが あいにく 産後の肥立ちが悪く・ 347 00:31:34,749 --> 00:31:42,049 お可留様は床についたまま 日に日に弱っていった。 348 00:31:44,092 --> 00:31:47,792 最期は 破傷風じゃ。 349 00:31:50,966 --> 00:31:57,966 御年 僅か 二十歳。 350 00:32:02,377 --> 00:32:05,377 花の盛りであった。 351 00:32:07,248 --> 00:32:14,248 いまわの際に 俺の手を取って…。 352 00:32:20,395 --> 00:32:25,095 「可音の事を頼みます」。 353 00:32:31,039 --> 00:32:36,411 それから もうひと言 こう言われた。 354 00:32:36,411 --> 00:32:43,411 「旦那様には申し訳ないが 可音は 町家に嫁がせたい」と。 355 00:32:45,420 --> 00:32:47,420 町家に…。 356 00:32:49,290 --> 00:32:53,290 その気持ち 分かるではないか。 357 00:33:20,255 --> 00:33:26,394 俺は 途方に暮れたよ。 358 00:33:26,394 --> 00:33:33,268 生まれたばかりの赤ん坊を 男手ひとつで どうやって育てる? 359 00:33:33,268 --> 00:33:38,973 俺は お可音様を抱いて もらい乳に歩き回った。 360 00:33:38,973 --> 00:33:42,410 慣れぬ手で むつきも洗うた。 361 00:33:42,410 --> 00:33:48,083 外で働く事ができず 蓄えが どんどん減っていく。 362 00:33:48,083 --> 00:33:55,383 先の事を思うて ぞっと 身がすくんだ。 363 00:33:58,426 --> 00:34:06,034 幸い 近くの尼寺の庵主様が 見るに見かねて・ 364 00:34:06,034 --> 00:34:12,373 手を貸して下さった。 「地獄に仏」じゃ。 365 00:34:12,373 --> 00:34:16,044 先ほどの? そうじゃ。 366 00:34:16,044 --> 00:34:19,744 お可音様は あの庵主様が 養育して下さった。 367 00:34:21,382 --> 00:34:26,254 若い時分は さるお公卿様の 乳母だったそうで・ 368 00:34:26,254 --> 00:34:32,393 躾から 行儀作法 読み書き 芸事まで 一分の隙もない。 369 00:34:32,393 --> 00:34:36,264 お陰で 俺は 亀山の古道具屋に出はいりして・ 370 00:34:36,264 --> 00:34:41,736 商いの「いろは」を覚えた。 俺は剣術も学問も苦手だが・ 371 00:34:41,736 --> 00:34:46,436 道具の目利きだけは 人に引けはとらぬ。 372 00:34:49,077 --> 00:34:55,416 「石の上にも3年」じゃ。 店こそ持たぬが 方々 歩いて・ 373 00:34:55,416 --> 00:35:01,416 めぼしい骨董を仕入れ 大店に 買うてもらえるようになった。 374 00:35:05,226 --> 00:35:10,365 大石様の青磁の花生けを 茶屋四郎次郎に売ったな? 375 00:35:10,365 --> 00:35:15,065 えっ? 刈屋孫兵衛の名で。 376 00:35:19,374 --> 00:35:24,245 そうか… そういう事か。 377 00:35:24,245 --> 00:35:27,248 売って どこが悪い。 378 00:35:27,248 --> 00:35:30,385 俺は大石様に すべてを任されたのだ。 379 00:35:30,385 --> 00:35:33,288 悪いとは言うておらぬ。 お前に とやかく言われる筋合いはない。 380 00:35:33,288 --> 00:35:38,259 俺は この7年間 地べたを はうような苦労をしてきた。 381 00:35:38,259 --> 00:35:41,729 これからは その苦労を 分かち合おうではないか。 382 00:35:41,729 --> 00:35:44,399 分かち合う? 383 00:35:44,399 --> 00:35:51,272 お主も 俺も 大石様の遺命を 受けて生き残った。 384 00:35:51,272 --> 00:35:57,745 いわば 似た者同士じゃ。 同類よ。 385 00:35:57,745 --> 00:36:04,018 同類なものか。 俺と お前は 大違いだ。 386 00:36:04,018 --> 00:36:07,689 お前は 吉良邸に討ち入った。 387 00:36:07,689 --> 00:36:14,028 47番目の義士として 天下に名を馳せたではないか。 388 00:36:14,028 --> 00:36:16,364 俺は どうじゃ? 389 00:36:16,364 --> 00:36:19,267 逃亡した臆病者と あしざまに言われ・ 390 00:36:19,267 --> 00:36:23,238 人前に顔をさらす事もできず これからの一生・ 391 00:36:23,238 --> 00:36:27,008 惨めに隠れて 暮らさねばならぬ。 392 00:36:27,008 --> 00:36:33,008 俺一人が 貧乏くじを引かされたのだ。 393 00:36:39,387 --> 00:36:46,728 正直言うて 俺は 大石様を恨みたい。 394 00:36:46,728 --> 00:36:51,399 憎いと思うた事もある。 395 00:36:51,399 --> 00:36:56,738 いかに 家来とはいえ 外に産ませた子の面倒を・ 396 00:36:56,738 --> 00:37:05,346 何で 俺が見なければならん。 思えば ひどい仕打ちではないか。 397 00:37:05,346 --> 00:37:13,646 お陰で 俺は… 一生を棒に振ったんだ。 398 00:37:16,357 --> 00:37:19,694 それほど討ち入りが大事か。 399 00:37:19,694 --> 00:37:23,364 忠義のためなら 何でも許されるのか。 400 00:37:23,364 --> 00:37:27,235 お主は 疲れておるのだ。 重たい荷物なら・ 401 00:37:27,235 --> 00:37:32,373 分けて持てばよい。 分けて…? 402 00:37:32,373 --> 00:37:36,044 何より大事は お可音様の御養育じゃ。 403 00:37:36,044 --> 00:37:41,382 浅野の旧臣に 奉加帳を回して 寄付を募ってはどうじゃ? 404 00:37:41,382 --> 00:37:45,053 たわけを申すな! 大石様の子と分かれば・ 405 00:37:45,053 --> 00:37:48,723 命を狙われるではないか! その心配はない! 406 00:37:48,723 --> 00:37:53,394 今は 六代将軍 家宣様のみ代じゃ。 世の中は すぐまた変わる! 407 00:37:53,394 --> 00:37:56,731 誰も信用できぬ! お主は 御養育は 手に余ると…。 408 00:37:56,731 --> 00:37:59,634 大石様は 誰にも言うなと 仰せであった! 409 00:37:59,634 --> 00:38:05,540 その約束を反故にすれば これまで生きてきた甲斐がない。 410 00:38:05,540 --> 00:38:10,278 俺の一生は 虫けら同然になるではないか。 411 00:38:10,278 --> 00:38:13,014 ・(お可音)孫左! 412 00:38:13,014 --> 00:38:17,685 はっ。 何を どなっておるのじゃ? 413 00:38:17,685 --> 00:38:23,358 ハハハ… ご心配なく。 この者は かつての朋輩ゆえ・ 414 00:38:23,358 --> 00:38:28,029 ついつい気を許して 口論を致しましたわい。 415 00:38:28,029 --> 00:38:34,369 おばば様が嘆いておりますぞ。 折角の雑炊が 糊になったと。 416 00:38:34,369 --> 00:38:39,040 やや これはしたり。 ハハハハ。 417 00:38:39,040 --> 00:38:44,379 先ほどは失礼致しました。 浅野家の旧臣・ 418 00:38:44,379 --> 00:38:47,379 寺坂吉右衛門と申します。 419 00:38:56,724 --> 00:39:02,424 足元に お気を付けて。 お世話になりました。 420 00:39:07,335 --> 00:39:11,205 また おいでなされ。 421 00:39:11,205 --> 00:39:16,010 春の大枝は 美しゅうござりますぞ。 422 00:39:16,010 --> 00:39:19,810 かたじけのう存じます。 423 00:39:36,330 --> 00:39:39,233 おい。 うん? 424 00:39:39,233 --> 00:39:45,373 二度と ここへは来るな。 お可音様の事は 口外無用。 425 00:39:45,373 --> 00:39:51,373 もし しゃべったら 生かしておかぬ。 426 00:39:53,247 --> 00:39:56,247 相分かった。 427 00:40:01,389 --> 00:40:03,724 あほ。 428 00:40:03,724 --> 00:40:06,394 すまん。 429 00:40:06,394 --> 00:40:55,394 ・~ 430 00:41:20,735 --> 00:42:54,435 ・~ 431 00:45:04,058 --> 00:45:08,295 うわ~! 見えてきたのは地中海だ。 432 00:45:08,295 --> 00:45:11,795 コートダジュールの青い海! 433 00:45:13,667 --> 00:45:17,037 ここは 南フランス カンヌ。 434 00:45:17,037 --> 00:45:19,607 カンヌといえば映画祭。 435 00:45:19,607 --> 00:45:24,207 そして 世界中のセレブが集まる 高級リゾート。 436 00:45:25,880 --> 00:45:29,550 でも カンヌって もともとは 小さな漁村で・ 437 00:45:29,550 --> 00:45:33,450 街には 今も その面影が 残っているらしい。 438 00:45:35,890 --> 00:45:39,590 さて バスを降りて歩きますか。 439 00:45:41,796 --> 00:45:45,332 ここは 高級ホテルや ブティックが立ち並ぶ・ 440 00:45:45,332 --> 00:45:48,135 海沿いのメインストリート。 441 00:45:48,135 --> 00:45:51,005 この先に カンヌのランドマーク・ 442 00:45:51,005 --> 00:45:54,605 カールトンホテルが あるはずなんだけど…。