1 00:00:14,000 --> 00:00:15,935 (伝内)吉右衛門。 2 00:00:15,935 --> 00:00:17,935 (吉右衛門)へい。 3 00:00:19,872 --> 00:00:22,675 天川屋儀兵衛が 母を訪ねてきたそうじゃ。 4 00:00:22,675 --> 00:00:27,013 は? お前に 用があるらしい。 5 00:00:27,013 --> 00:00:31,684 嫁ももらわず 仕官もせず ず~っと 郡山に・ 6 00:00:31,684 --> 00:00:36,384 閉じこもっておいでやとか? して ご用件は? 7 00:00:40,026 --> 00:00:47,700 ご存じのように 来年は 赤穂義士の十七回忌を迎えます。 8 00:00:47,700 --> 00:00:53,373 進藤様の音頭で 盛大な法要を 営む事になりました。 9 00:00:53,373 --> 00:00:56,042 (菊)ありがたい事じゃ。 10 00:00:56,042 --> 00:00:59,379 ついては 寺坂はんにも 世話人として・ 11 00:00:59,379 --> 00:01:01,314 お骨折りを願いたい。 12 00:01:01,314 --> 00:01:03,983 どうか ご勘弁を…。 13 00:01:03,983 --> 00:01:06,652 寺坂はんが 名を連ねてくれはったら・ 14 00:01:06,652 --> 00:01:09,989 人も ぎょうさん集まるし 外聞もよろしい。 15 00:01:09,989 --> 00:01:14,861 何と言うても あんたは 大石様お名指しの生き証人。 16 00:01:14,861 --> 00:01:20,333 世を捨てて 仙人になるのは まだ早いのと違いますか? 17 00:01:20,333 --> 00:01:22,668 ・~(テーマ音楽) 18 00:01:22,668 --> 00:01:53,968 ・~ 19 00:01:58,471 --> 00:02:01,974 (九郎兵衛)見忘れたか。 大野九郎兵衛じゃ。 20 00:02:01,974 --> 00:02:03,910 えっ…。 21 00:02:03,910 --> 00:02:08,481 かしこまらんでもよい。 今は ただの町人じゃ。 22 00:02:08,481 --> 00:02:13,986 大野様はな 土佐堀界隈で 手広う 両替商を営んでおいでになります。 23 00:02:13,986 --> 00:02:15,922 天川屋のおかげでの。 24 00:02:15,922 --> 00:02:20,326 こちらは 元物頭の 多川九左衛門様どす。 25 00:02:20,326 --> 00:02:23,663 ははっ。 今は 大野様の番頭や。 26 00:02:23,663 --> 00:02:28,501 (儀兵衛)お二人とも快う 世話人を 引き受けてくれはりました。 27 00:02:28,501 --> 00:02:33,005 世話人の筆頭は 誰じゃ? 進藤源四郎様でございます。 28 00:02:33,005 --> 00:02:37,877 わしは その下か! 大野様には 大坂衆の お取りまとめを。 29 00:02:37,877 --> 00:02:40,880 その儀は 心得かねる。 はて? 30 00:02:40,880 --> 00:02:44,617 公卿侍になった連中は 我々 商人組を見下しておる。 31 00:02:44,617 --> 00:02:49,021 それが 腹に据えかねる。 そのとおりじゃ。 32 00:02:49,021 --> 00:02:52,358 我らには 我らの言い分がある。 33 00:02:52,358 --> 00:02:55,027 おうおう。 34 00:02:55,027 --> 00:02:59,866 殿のご刃傷により お家断絶になりしみぎり・ 35 00:02:59,866 --> 00:03:04,837 大石殿は 強く 籠城切腹を唱えた。・ 36 00:03:04,837 --> 00:03:10,309 我らは 涙をのんで 大石殿と袂を分かち・ 37 00:03:10,309 --> 00:03:13,980 城を引き退いた。 ところが どうじゃ・ 38 00:03:13,980 --> 00:03:18,851 幕府の役人が乗り込むや 大石殿は 態度を一変して・ 39 00:03:18,851 --> 00:03:22,321 神妙に 城を引き渡したではないか! 40 00:03:22,321 --> 00:03:26,993 我らは 大石殿に 一杯食わされたのじゃ。 41 00:03:26,993 --> 00:03:29,495 一杯食わされた? 42 00:03:29,495 --> 00:03:35,001 そうじゃ。 城を引き退いた者は 後々までも 卑怯者呼ばわりされ・ 43 00:03:35,001 --> 00:03:38,337 著しく面目を失うたわ!・ 44 00:03:38,337 --> 00:03:42,208 それに引き比べ 京の連中は何じゃ!・ 45 00:03:42,208 --> 00:03:46,212 一旦 討ち入りに名を連ねながら・ 46 00:03:46,212 --> 00:03:49,348 途中で 脱落した者ばかりではないか! 47 00:03:49,348 --> 00:03:53,686 こら あきまへんな。 48 00:03:53,686 --> 00:03:57,023 大坂組と京都組が こないに いがみ合うては・ 49 00:03:57,023 --> 00:03:59,358 御供養になりまへん。 よろしい。・ 50 00:03:59,358 --> 00:04:01,627 大坂は大坂で 勝手にやっておくなはれ。 51 00:04:01,627 --> 00:04:04,297 ただし この天川屋は 手を引かしてもらいます。 52 00:04:04,297 --> 00:04:07,633 何じゃと!? 言うときますがな 大野様のお名前では・ 53 00:04:07,633 --> 00:04:09,969 人は集まりまへんで。 無礼を申すな! 54 00:04:09,969 --> 00:04:11,904 無礼は どっちや! 55 00:04:11,904 --> 00:04:15,841 大野様の今日あるのは 大石様の おかげやないか! 56 00:04:15,841 --> 00:04:18,644 淡路島の岩屋に くすぶっていた あんたに・ 57 00:04:18,644 --> 00:04:20,980 商売の元手を用立てたんは どなたや! 58 00:04:20,980 --> 00:04:27,320 恩義は 重々心得ておる。 大石殿には 頭が上がらん。 59 00:04:27,320 --> 00:04:29,989 そんなら ぐだぐだ言いなはんな。 60 00:04:29,989 --> 00:04:33,859 わしが腹に据えかねるのは 京都の面々じゃ。 61 00:04:33,859 --> 00:04:35,861 もうええ。 帰っておくなはれ! 62 00:04:35,861 --> 00:04:37,863 控えよ! やかましいわい! 63 00:04:37,863 --> 00:04:40,863 いつまでも 侍風 吹かしなはんな! 64 00:04:47,006 --> 00:04:49,675 前途多難ですな。 65 00:04:49,675 --> 00:04:55,348 心配いりまへん。 あの人は 必ず 折れてきはります。 えっ? 66 00:04:55,348 --> 00:05:01,648 ああいう御仁に限って 気が小さいんですわ。 ハハハハ。 67 00:05:05,958 --> 00:05:09,829 (四郎次郎)去年の暮れ近くや。 上善寺の近くで・ 68 00:05:09,829 --> 00:05:15,301 世にも美しい姫君を 見かけましてな。 上善寺…。 69 00:05:15,301 --> 00:05:19,972 きっぱりした面だちといい 気品あたりを払うさまといい・ 70 00:05:19,972 --> 00:05:25,845 さながら 一幅の絵を見るようで 伜も 私も ボ~ッと見惚れました。 71 00:05:25,845 --> 00:05:29,315 (儀兵衛)そりゃ よほどの上物や。 茶屋四郎次郎は・ 72 00:05:29,315 --> 00:05:31,651 女子はんの目利きも 達者やからな。 73 00:05:31,651 --> 00:05:35,988 ハハハハ。 まあ 聞いとくなはれ。 ほんで ふっと見ると・ 74 00:05:35,988 --> 00:05:42,662 なんと そのお姫様のお供が 刈屋孫兵衛ですわ。 えっ! 75 00:05:42,662 --> 00:05:45,331 瀬尾孫左衛門ですな? 76 00:05:45,331 --> 00:05:49,201 そうどす。 そこで 私は はたと思い当たりました。 77 00:05:49,201 --> 00:05:54,507 あの姫は 大石内蔵助様の 御息女と違うやろか? 78 00:05:54,507 --> 00:05:58,507 年の頃は? 16~17かいな? 79 00:06:00,946 --> 00:06:03,849 言葉は交わしましたか? いや それが・ 80 00:06:03,849 --> 00:06:07,820 声をかけて近づきかけるや 一旦 振り返った孫兵衛が・ 81 00:06:07,820 --> 00:06:11,957 すっと背を向けて 足早に立ち去りました。 82 00:06:11,957 --> 00:06:15,828 お姫様を せかすようにどす。 おうおう。 83 00:06:15,828 --> 00:06:21,967 そこで 寺坂様に お願いがありますのやが…。 84 00:06:21,967 --> 00:06:28,841 あのお姫様が 大石様のお子か どうかを 確かめて頂けませんか? 85 00:06:28,841 --> 00:06:34,547 確かめて どないするんや? はい 伜の嫁にと思いまして。 86 00:06:34,547 --> 00:06:38,517 えっ? ぼんの嫁に? 87 00:06:38,517 --> 00:06:41,987 はい。 伜は よほど感じ入ったと見えて・ 88 00:06:41,987 --> 00:06:46,492 寝ても覚めても あのお姫様の姿が頭を離れません。 89 00:06:46,492 --> 00:06:51,330 私は 来年にも 隠居して 茶屋家を 伜に継がせるつもりですが・ 90 00:06:51,330 --> 00:06:55,201 それには しかるべき家から 嫁をもらわな ならん。 91 00:06:55,201 --> 00:07:00,139 ところが 修一郎は あれ以来 どんな縁談を持ち込まれても・ 92 00:07:00,139 --> 00:07:04,610 見向きもしまへん。 そこで 私も 考えました。・ 93 00:07:04,610 --> 00:07:09,949 大石様のお血筋ならば どこへ出しても引けをとらん。 94 00:07:09,949 --> 00:07:14,820 ちょっと待ちなはれや。 仮にも 大石様は・ 95 00:07:14,820 --> 00:07:19,291 赤穂浅野家の城代家老でっせ。 96 00:07:19,291 --> 00:07:24,964 やっぱり 商人の伜では あかんやろか? 97 00:07:24,964 --> 00:07:28,664 ふ~ん… なあ…。 98 00:07:30,836 --> 00:07:32,836 そんな事はない。 99 00:07:34,974 --> 00:07:38,844 お可留さんは 亡くなる間際に 言うたらしい。 100 00:07:38,844 --> 00:07:42,314 「娘は 町家に嫁がせたい」と。 101 00:07:42,314 --> 00:07:44,984 町家に? 102 00:07:44,984 --> 00:07:50,856 へえ~。 ほな 話は別やなあ。 103 00:07:50,856 --> 00:07:54,994 だが…。 はっ? 104 00:07:54,994 --> 00:08:02,435 孫左衛門は 後難を恐れて お可音様の素性を隠し通しておる。 105 00:08:02,435 --> 00:08:07,606 それは 無理もない話やが あんたの方から・ 106 00:08:07,606 --> 00:08:10,943 あんじょう言うて 聞かしてあげたら どないや? 107 00:08:10,943 --> 00:08:13,279 お願いします。 108 00:08:13,279 --> 00:08:18,150 (儀兵衛)いや~ 大石家と 茶屋家との縁組みか。 109 00:08:18,150 --> 00:08:25,450 思いもよらなんだ事やが これ成り立ったら快挙やな。 110 00:08:37,303 --> 00:08:45,978 ・(笛の音) 111 00:08:45,978 --> 00:09:13,978 ・~ 112 00:09:19,845 --> 00:09:23,845 卒爾ながら 可音様と お見受け致します。 113 00:09:27,953 --> 00:09:30,856 (可音)そなたは? 114 00:09:30,856 --> 00:09:35,828 浅野家の旧臣 寺坂吉右衛門にござります。 115 00:09:35,828 --> 00:09:38,964 寺坂… 吉右衛門。 116 00:09:38,964 --> 00:09:43,636 9年前 孫左衛門を訪れ 一晩 泊めて頂きました。 117 00:09:43,636 --> 00:09:46,636 ああ…。 118 00:09:50,976 --> 00:09:52,976 ・孫左衛門。 119 00:09:55,848 --> 00:09:57,848 久しぶりだな。 120 00:10:02,988 --> 00:10:05,891 一人か? 一人じゃ。 121 00:10:05,891 --> 00:10:08,861 何の用か? 話がしたい。 122 00:10:08,861 --> 00:10:11,997 ここへは 来るなと 言うたはずだ。 123 00:10:11,997 --> 00:10:13,997 硬い事を申すな。 124 00:10:21,006 --> 00:10:25,344 今 お可音様に会うた。 125 00:10:25,344 --> 00:10:30,215 何? 庵主様のお墓の前でじゃ。 126 00:10:30,215 --> 00:10:35,354 余りの美しさに 感じ入った。 127 00:10:35,354 --> 00:10:42,054 よくぞ立派に育て上げた。 お主には頭が下がる。 128 00:10:44,363 --> 00:10:49,034 して お主は お可音様を どうする気じゃ? 129 00:10:49,034 --> 00:10:51,370 どうするとは? 130 00:10:51,370 --> 00:10:55,040 まさか 尼寺に入れる訳でも あるまいの。 131 00:10:55,040 --> 00:10:59,878 あほをぬかせ。 時がくれば しかるべきお家に嫁がせる。 132 00:10:59,878 --> 00:11:01,878 時は きておる。 133 00:11:03,849 --> 00:11:07,620 茶屋四郎次郎を知っとるな。 134 00:11:07,620 --> 00:11:12,920 その跡取り息子が お可音様に 一目惚れをした。 135 00:11:14,994 --> 00:11:19,331 去年の暮れ 上善寺の近くで 見かけて以来・ 136 00:11:19,331 --> 00:11:26,672 ほかの女子には目もくれぬ。 恋の病に取りつかれたのだ。 137 00:11:26,672 --> 00:11:33,012 俺は 茶屋四郎次郎に頼まれた。 「息子の願いを叶えてやりたい。・ 138 00:11:33,012 --> 00:11:38,684 お可音様との縁組みの 仲立ちをしてほしい」と。 139 00:11:38,684 --> 00:11:43,555 偽りを申すな。 偽りじゃと? 140 00:11:43,555 --> 00:11:49,328 茶屋家は 京でも一番の豪商じゃ。 素性の知れぬ娘を・ 141 00:11:49,328 --> 00:11:54,033 跡取りの嫁にするはずはない。 素性は知れておる。 142 00:11:54,033 --> 00:11:55,968 何じゃと? 143 00:11:55,968 --> 00:11:59,371 あの大石様の御息女なら 願ってもない御縁じゃと・ 144 00:11:59,371 --> 00:12:03,071 親子とも 手放しの 喜びようじゃ。 145 00:12:05,978 --> 00:12:09,848 お主 しゃべったな。 しゃべって 何が悪い。 146 00:12:09,848 --> 00:12:12,848 裏切り者! 147 00:12:15,654 --> 00:12:18,557 孫左衛門! 誰にも素性を明かさぬのが・ 148 00:12:18,557 --> 00:12:22,327 大石様とのお約束じゃ! 素性を明かしたからこそ・ 149 00:12:22,327 --> 00:12:25,664 良縁を得たではないか! 縁組みは断る! 150 00:12:25,664 --> 00:12:29,334 お可音様の幸せを考えろ! 茶屋の伜ごときに…。 151 00:12:29,334 --> 00:12:33,205 大石様は御満足のはずじゃ! 帰れ! 152 00:12:33,205 --> 00:12:35,674 気は確かか 孫左衛門! 153 00:12:35,674 --> 00:12:38,343 帰れ! 154 00:12:38,343 --> 00:12:41,680 手放すのが惜しくなったか。 頭を たたき割るぞ! 155 00:12:41,680 --> 00:12:44,349 まさか お主…。 誰にも渡さぬ! 156 00:12:44,349 --> 00:12:46,649 横恋慕では あるまいな! 157 00:12:48,220 --> 00:12:50,520 わ~っ! 158 00:12:55,961 --> 00:12:57,961 孫左! 159 00:12:59,832 --> 00:13:01,832 錯乱致すでない! 160 00:13:06,972 --> 00:13:09,308 どうしたのじゃ? 161 00:13:09,308 --> 00:13:27,993 ・~ 162 00:13:27,993 --> 00:13:37,002 (泣き声) 163 00:13:37,002 --> 00:13:56,702 ・~ 164 00:14:00,959 --> 00:14:06,832 おとつい 瀬尾孫左衛門様が 堀川の拙宅を訪れました。 165 00:14:06,832 --> 00:14:11,603 えっ! 茶屋家の申し入れが 確かであれば・ 166 00:14:11,603 --> 00:14:15,307 お可音様の縁談を ありがたく お受けするとの・ 167 00:14:15,307 --> 00:14:18,343 口上にござりました。 なんと…。 168 00:14:18,343 --> 00:14:20,479 それは めでたい。 169 00:14:20,479 --> 00:14:22,981 お二方のおかげですわ。 170 00:14:22,981 --> 00:14:27,319 お骨折り頂き まことに ありがとうございました。 171 00:14:27,319 --> 00:14:30,222 して 孫左衛門の様子は? 172 00:14:30,222 --> 00:14:33,992 慇懃で折り目正しく 物言いも いちいち・ 173 00:14:33,992 --> 00:14:36,992 作法に かのうておりました。 174 00:14:47,005 --> 00:14:51,877 つきましては お願いの儀がございます。 175 00:14:51,877 --> 00:14:54,680 承りましょう。 176 00:14:54,680 --> 00:15:00,953 大石様のお子としての婚儀は 御本家に憚りがございますゆえ・ 177 00:15:00,953 --> 00:15:07,292 表向きは 可音様を しかるべき お方のご養女という事に。 178 00:15:07,292 --> 00:15:10,963 しかるべき お方とは? 179 00:15:10,963 --> 00:15:15,963 さあ… それが…。 180 00:15:17,636 --> 00:15:22,474 そや! 進藤様が ええ。 は? 181 00:15:22,474 --> 00:15:25,978 進藤源四郎様は 大石様の又従兄弟や。 182 00:15:25,978 --> 00:15:30,315 太っ腹な お方やから きっと 引き受けて下さるやろ。 183 00:15:30,315 --> 00:15:35,654 そら ありがたい。 進藤様なら 願ったり叶ったりですわ。 184 00:15:35,654 --> 00:15:39,992 よっしゃ。 これで 養い親は決まった。 185 00:15:39,992 --> 00:15:44,863 お礼を言わんかい。 おおきに…。 186 00:15:44,863 --> 00:15:48,500 祝言の日取りですが…。 187 00:15:48,500 --> 00:15:58,677 されば 来年2月4日 大石様の十七回忌法要の日に。 188 00:15:58,677 --> 00:16:03,448 十七回忌? そら また何で? 189 00:16:03,448 --> 00:16:09,955 孫左衛門様が 申されるには 大石様への何よりの御供養と。 190 00:16:09,955 --> 00:16:15,655 ふ~ん…。 そればかりでは ござるまい。 191 00:16:17,296 --> 00:16:21,166 大石様の十七回忌法要に 列座できぬ お可音様を・ 192 00:16:21,166 --> 00:16:25,637 不憫に思うての事でしょう。 なるほど。 193 00:16:25,637 --> 00:16:29,508 むつきの取れぬ頃から 手塩にかけてきた お可音様を・ 194 00:16:29,508 --> 00:16:33,808 手放す孫左衛門も 辛かろうと思います。 195 00:16:36,982 --> 00:16:41,486 茶屋家で引き取ったら どないや。 後見人として…。 196 00:16:41,486 --> 00:16:44,486 私も それを 言うたんやが…。 197 00:16:50,495 --> 00:16:55,334 折角ながら その儀は おかまいなく。 198 00:16:55,334 --> 00:16:59,504 お可音様も 心強いと 思いますけどな。 199 00:16:59,504 --> 00:17:03,475 余計なもんが ついていっては 足手まといになります。 200 00:17:03,475 --> 00:17:06,278 道具の目利きでも してくれはったら・ 201 00:17:06,278 --> 00:17:11,978 うちも助かります。 私は 独りになりたいのです。 202 00:17:13,952 --> 00:17:17,823 16年もの間 卑怯者と蔑まれ 隠れて生きているうちに・ 203 00:17:17,823 --> 00:17:22,961 私の心は ねじくれておりました。 204 00:17:22,961 --> 00:17:29,261 それを気付かせてくれたのが 寺坂吉右衛門です。 205 00:17:31,970 --> 00:17:38,970 あのお人は 自分のすさんだ心を 見つめ直すと言うてました。 206 00:17:40,979 --> 00:17:44,479 坊さんにでも なるんかいな…。 207 00:17:46,852 --> 00:17:50,989 身の振り方は いずれ 私から 話しましょう。 208 00:17:50,989 --> 00:17:56,862 お可音様の晴れ姿を見れば 心が解けるかもしれません。 209 00:17:56,862 --> 00:17:59,862 よろしくお願い致します。 210 00:18:13,945 --> 00:18:19,818 (源四郎)芸州より はるばるの 御来駕 御苦労にござります。 211 00:18:19,818 --> 00:18:22,954 (りく)そなたの おかげぞ。 212 00:18:22,954 --> 00:18:29,461 大三郎殿は 内蔵助殿に よう似てこられた。 213 00:18:29,461 --> 00:18:34,961 此度の法要 父と兄に代わって 厚く御礼申し上げます。 214 00:18:36,968 --> 00:18:41,840 浅野御本家 ならびに瑶泉院様 大学様より・ 215 00:18:41,840 --> 00:18:44,843 供養料を賜りました。 216 00:18:44,843 --> 00:18:48,980 恐れ多い事じゃ。 217 00:18:48,980 --> 00:18:52,680 では そろそろ本堂へ…。 218 00:18:54,319 --> 00:18:58,619 進藤様。 御免。 219 00:19:04,129 --> 00:19:08,600 大坂の皆様が 本堂へ お入りになりませぬ。 あっ? 220 00:19:08,600 --> 00:19:12,900 席順が気に食わぬとか…。 何? 221 00:19:14,473 --> 00:19:19,244 いや 我らは 大坂組を 蔑んだ覚えはない。 222 00:19:19,244 --> 00:19:23,148 とぼけを申すな! 京都の者が前を占めておる! 223 00:19:23,148 --> 00:19:25,951 先着順でござる! 負い目の邪推じゃ。 224 00:19:25,951 --> 00:19:28,620 負い目… 聞き捨てならぬ! 225 00:19:28,620 --> 00:19:30,956 我らは進んで 商人になった訳ではないぞ! 226 00:19:30,956 --> 00:19:33,625 侍を捨てたではないか! お主らこそ・ 227 00:19:33,625 --> 00:19:35,560 二君に仕えて 恥ずかしゅうないのか! 228 00:19:35,560 --> 00:19:37,963 我らは 討ち入りの連判に 加わったのだ! 229 00:19:37,963 --> 00:19:41,633 途中で脱落しましたな! お主らは最初から逃げた! 230 00:19:41,633 --> 00:19:45,333 逃げてはいない。 大野九郎兵衛殿。 231 00:19:48,507 --> 00:19:53,979 十七回忌の法要に水をさすなら 一統を引き連れて帰ってもらおう。 232 00:19:53,979 --> 00:20:00,852 帰ってよいかどうか 進藤源四郎に聞きたい。 233 00:20:00,852 --> 00:20:03,655 目くそ鼻くその争いは やめよ! 234 00:20:03,655 --> 00:20:07,526 目くそ鼻くそ? 席順などは どうでもよい。 235 00:20:07,526 --> 00:20:11,997 お望みとあらば 大野九郎兵衛殿に上席を譲る。 236 00:20:11,997 --> 00:20:14,332 いや その儀は…。 237 00:20:14,332 --> 00:20:18,670 内蔵助殿は 最後に こう言うた。 238 00:20:18,670 --> 00:20:24,009 「町家暮らしの者には 商いの元手を用立てよ。・ 239 00:20:24,009 --> 00:20:28,880 士分を望む者には 公卿奉公の道を開いてやれ。・ 240 00:20:28,880 --> 00:20:31,883 たとえ 名を変え 身分を捨て・ 241 00:20:31,883 --> 00:20:38,023 あるいは素性を隠して生きるとも 赤穂浅野家に仕えた者の心は・ 242 00:20:38,023 --> 00:20:43,523 一つじゃ。 互いに助け合い 励まし合うて生き抜くべし」。 243 00:20:49,034 --> 00:20:55,907 筆頭家老として 侍の志を世に示す一方・ 244 00:20:55,907 --> 00:21:01,313 生き残る藩士の行く末を おもんぱかる。 245 00:21:01,313 --> 00:21:05,984 これほどの お人が どこにおる! 246 00:21:05,984 --> 00:21:09,321 その法要の日に お主らは・ 247 00:21:09,321 --> 00:21:14,192 見苦しく 角突き合うて 恥じるところがない。 248 00:21:14,192 --> 00:21:20,492 内蔵助殿の憂慮せしは まさに この事であった…。 249 00:21:27,339 --> 00:21:34,212 かかる醜態をさらして 46士に顔向けができようか。 250 00:21:34,212 --> 00:21:41,512 わしは 腹を切って詫びるが 大野九郎兵衛殿は いかに! 251 00:21:48,026 --> 00:22:04,976 (読経) 252 00:22:04,976 --> 00:22:46,976 (読経) 253 00:23:12,644 --> 00:23:16,981 これは お可留様が・ 254 00:23:16,981 --> 00:23:21,319 大石様のために仕立てた 御装束でござる。 255 00:23:21,319 --> 00:23:27,992 母が… 父のために…。 256 00:23:27,992 --> 00:23:32,292 婿殿への引き出物になされませ。 257 00:23:49,013 --> 00:23:54,886 おじじ様からは 長持ち一棹を 頂戴致しました。 258 00:23:54,886 --> 00:23:58,022 かたじけのう存じます。 259 00:23:58,022 --> 00:24:02,627 (次郎左衛門)すまんな。 身内のわしが・ 260 00:24:02,627 --> 00:24:05,927 何もしてやれずに…。 261 00:24:10,969 --> 00:24:15,306 では 参りましょう。 262 00:24:15,306 --> 00:24:20,645 茶屋家より差し回しの乗り物が 待っております。 263 00:24:20,645 --> 00:24:24,945 孫左。 はっ。 264 00:24:27,519 --> 00:24:37,662 そなたの忠義は生涯忘れぬ。 父に代わって 礼を申しますぞ。 265 00:24:37,662 --> 00:25:39,962 ・~ 266 00:25:52,003 --> 00:25:55,003 法事は終わったのか? 267 00:26:29,841 --> 00:26:35,313 恐れながら 大石内蔵助殿 御息女のお行列と・ 268 00:26:35,313 --> 00:26:38,216 お見受けつかまつる。 いかにも。 269 00:26:38,216 --> 00:26:44,656 手前は 元浅野家家中 小姓頭 月岡治右衛門にござりまする。 270 00:26:44,656 --> 00:26:48,493 手前は 元鉄砲組 金森左兵衛と申します。 271 00:26:48,493 --> 00:26:52,997 手前は 元銀座横目 陰山惣兵衛でございます。 272 00:26:52,997 --> 00:26:57,335 拙者は 作事方 脇屋三左衛門にござりまする。 273 00:26:57,335 --> 00:27:02,941 今宵は 晴れの御婚儀を承り 御恩返しの万分の一にもと・ 274 00:27:02,941 --> 00:27:10,815 お待ち申し上げました。 お供の儀 何とぞ お許し下されたく…。 275 00:27:10,815 --> 00:27:13,815 ・(可音)孫左。 はっ。 276 00:27:27,966 --> 00:27:33,638 皆様のお心遣い うれしゅう存じます。 277 00:27:33,638 --> 00:27:40,511 まみゆる事 叶わぬ父に代わり 厚く御礼申し上げます。 278 00:27:40,511 --> 00:27:43,211 (一同)ははっ。 279 00:27:53,958 --> 00:27:58,863 手前は 元物頭 多芸太郎左衛門と申す者。 280 00:27:58,863 --> 00:28:03,935 某は 元馬廻役 塩谷武右衛門と申します。 281 00:28:03,935 --> 00:28:08,806 元郡奉行下役 杉野順左衛門にござります。 282 00:28:08,806 --> 00:28:10,808 承知! 283 00:28:10,808 --> 00:28:30,962 ・~ 284 00:28:30,962 --> 00:28:34,832 お主の仕掛けか。 285 00:28:34,832 --> 00:28:38,132 進藤様であろう。 286 00:28:43,975 --> 00:28:47,311 手前は 小幡弥右衛門。 287 00:28:47,311 --> 00:28:49,347 三輪喜兵衛でござる。 288 00:28:49,347 --> 00:28:51,983 同じく 弥九郎に ござります。 289 00:28:51,983 --> 00:28:54,652 生瀬一左衛門と申す。 290 00:28:54,652 --> 00:28:59,323 山城金兵衛にござります。 291 00:28:59,323 --> 00:29:01,623 承知! 292 00:29:04,929 --> 00:29:10,601 灰方藤兵衛でござる。 長沢六郎左衛門と申す。 293 00:29:10,601 --> 00:29:12,937 岡本次郎左衛門。 294 00:29:12,937 --> 00:29:18,609 小山源五右衛門でござる。 河村伝兵衛と申す。 295 00:29:18,609 --> 00:29:21,946 かたじけのうござる。 296 00:29:21,946 --> 00:29:50,946 ・~ 297 00:30:07,992 --> 00:30:11,992 (どよめきと ため息) 298 00:30:14,866 --> 00:30:20,004 元番頭 奥野将監にござりまする。 299 00:30:20,004 --> 00:30:23,875 本日は まことに めでたき御婚儀・ 300 00:30:23,875 --> 00:30:28,346 一同とともに お祝い申し上げまする。 301 00:30:28,346 --> 00:30:31,249 ありがとう存じます。 302 00:30:31,249 --> 00:30:50,034 ・~ 303 00:30:50,034 --> 00:30:51,969 さて…。 304 00:30:51,969 --> 00:31:14,225 ・~ 305 00:31:14,225 --> 00:31:18,196 天川屋儀兵衛にござります。 306 00:31:18,196 --> 00:31:23,334 僭越ながら 媒酌の任を承りました。 307 00:31:23,334 --> 00:31:26,237 お世話になります。 308 00:31:26,237 --> 00:31:31,209 言うても詮ない事だが 今日の晴れ姿・ 309 00:31:31,209 --> 00:31:35,346 内蔵助殿に 見せたかったのう。 310 00:31:35,346 --> 00:31:41,018 きっと 草葉の陰で 見ていてくれはりますやろ。 311 00:31:41,018 --> 00:31:43,688 うむ。 312 00:31:43,688 --> 00:31:46,988 ところで おのおの方…。 313 00:31:54,031 --> 00:31:58,903 この可音さんには 父親が 3人おる。 314 00:31:58,903 --> 00:32:05,309 実父は 大石内蔵助殿。 養父は この進藤源四郎。 315 00:32:05,309 --> 00:32:10,648 そして 育ての親は 瀬尾孫左衛門。 316 00:32:10,648 --> 00:32:17,989 そこでじゃ 17年にわたる養育の 苦労を 祝言の席で披露して・ 317 00:32:17,989 --> 00:32:23,661 孫左衛門をねぎらいたいが いかがなものかな? 318 00:32:23,661 --> 00:32:25,997 それは よいお考え。 319 00:32:25,997 --> 00:32:29,333 赤穂の旧臣も ぎょうさん 来てはりますさかい・ 320 00:32:29,333 --> 00:32:34,005 孫左衛門殿にとっては 生涯の誉れとなりますやろ。 321 00:32:34,005 --> 00:32:37,341 かたじけのう存じます。 吉右衛門。 322 00:32:37,341 --> 00:32:40,678 ははっ。 (源四郎) ここへ孫左衛門を連れて参れ。 323 00:32:40,678 --> 00:32:43,378 心得ました。 324 00:32:56,027 --> 00:33:01,727 失礼。 孫左衛門を 見かけませなんだか? いや。 325 00:33:18,983 --> 00:33:24,283 孫左衛門! 瀬尾孫左衛門は おらぬか? 326 00:33:37,001 --> 00:33:52,016 ・「高砂や この浦舟に帆をあげて」 327 00:33:52,016 --> 00:34:00,825 ・「月もろともに 出汐の」 328 00:34:00,825 --> 00:34:09,967 ・「波の淡路の島影や」 329 00:34:09,967 --> 00:34:20,978 ・「遠く鳴尾の沖すぎて」 330 00:34:20,978 --> 00:34:38,978 ・「はや住の江に 着きにけり」 331 00:34:54,879 --> 00:34:56,879 ・孫左衛門! 332 00:34:59,817 --> 00:35:01,817 やはり ここか…。 333 00:35:04,288 --> 00:35:07,988 婚礼の途中で姿を消すとは いかなる存念か! 334 00:35:09,960 --> 00:35:12,260 申せ! 335 00:35:15,833 --> 00:35:17,835 孫左衛門…。 336 00:35:17,835 --> 00:35:26,310 すまん…。 俺は 腹を切った。 337 00:35:26,310 --> 00:35:29,010 何…!? 338 00:35:40,858 --> 00:35:42,860 あほ! 339 00:35:42,860 --> 00:35:53,337 遅ればせながら… 大石様の お供を… つかまつる。 340 00:35:53,337 --> 00:35:56,537 なんという事を…! 341 00:35:59,009 --> 00:36:03,848 やっと終わった…。 342 00:36:03,848 --> 00:36:14,548 思えば… 長い生涯であった。 343 00:36:22,967 --> 00:36:24,967 孫左衛門…。 344 00:36:26,837 --> 00:36:29,840 孫左衛門! 345 00:36:29,840 --> 00:36:32,840 孫左衛門! 346 00:36:34,578 --> 00:36:37,578 おい! 347 00:36:40,985 --> 00:37:05,985 (泣き声) 348 00:37:30,968 --> 00:37:34,305 お尋ねします。 349 00:37:34,305 --> 00:37:37,975 (篠)こちらに 瀬尾孫左衛門の墓が…・ 350 00:37:37,975 --> 00:37:41,675 あると聞きましたが…。 351 00:37:46,317 --> 00:37:49,617 吉右衛門様…! 352 00:37:55,326 --> 00:37:58,996 兄は 自害したのですか? 353 00:37:58,996 --> 00:38:01,899 追い腹を切った。 354 00:38:01,899 --> 00:38:06,804 役目を終えた孫左衛門は 抜け殻同然となり・ 355 00:38:06,804 --> 00:38:09,940 大石様の後を追った。 356 00:38:09,940 --> 00:38:15,940 同じ抜け殻でも 私は死にきれずにおる。 357 00:38:17,615 --> 00:38:21,615 死ぬるだけが忠義でしょうか。 358 00:38:24,488 --> 00:38:31,962 折角の命を なぜ粗末にするのですか? 359 00:38:31,962 --> 00:38:36,262 身内の悲しみは どうなります。 360 00:38:39,637 --> 00:38:45,976 私は 兄を失い あなたを失い・ 361 00:38:45,976 --> 00:38:50,676 主人を失いました。 362 00:38:52,850 --> 00:38:56,350 それでも こうして生きています。 363 00:38:58,989 --> 00:39:00,989 ご主人は? 364 00:39:05,262 --> 00:39:08,562 おととし 亡くなりました。 365 00:39:16,874 --> 00:39:19,874 渡したいものがある。 366 00:39:33,290 --> 00:39:40,631 14年前 江戸からの帰りに 駿府で買うた。 367 00:39:40,631 --> 00:39:46,631 だが 京へ戻ってみると そなたは姿を消しておった。 368 00:39:51,275 --> 00:39:56,180 今更とは思うが そなたのために買うたのだ。 369 00:39:56,180 --> 00:39:59,983 受け取ってはくれぬか? 370 00:39:59,983 --> 00:40:02,886 嫌です。 371 00:40:02,886 --> 00:40:06,586 昔の事は 思い出したくありません。 372 00:40:09,993 --> 00:40:15,993 それより なぜ 一緒に暮らそうと 言うては下さらぬのですか? 373 00:40:17,868 --> 00:40:23,006 あなたは言いました。 「もしも生きて帰れば・ 374 00:40:23,006 --> 00:40:27,306 大和郡山で静かに暮らそう」と。 375 00:40:29,880 --> 00:40:32,349 しかし 私は もう…。 376 00:40:32,349 --> 00:40:35,049 また 私を捨てるのですか? 377 00:40:39,022 --> 00:40:43,694 篠…。 卑怯者! 378 00:40:43,694 --> 00:41:17,994 ・~ 379 00:41:19,997 --> 00:42:53,997 ・~