1 00:00:35,160 --> 00:00:44,836 ♬~(テーマ音楽) 2 00:00:44,836 --> 00:00:52,310 ♬~ 3 00:00:52,310 --> 00:00:54,246 小さなといえば➡ 4 00:00:54,246 --> 00:00:59,484 明治初年の日本ほど 小さな国は なかったであろう。 5 00:00:59,484 --> 00:01:02,320 産業といえば 農業しかなく➡ 6 00:01:02,320 --> 00:01:06,658 人材といえば 300年の間 読書階級であった➡ 7 00:01:06,658 --> 00:01:10,328 旧士族しかなかった。 8 00:01:10,328 --> 00:01:13,665 明治維新によって 日本人は はじめて➡ 9 00:01:13,665 --> 00:01:17,535 近代的な 「国家」というものをもった。 10 00:01:17,535 --> 00:01:21,339 たれもが「国民」になった。 11 00:01:21,339 --> 00:01:23,639 不馴れながら… 12 00:01:31,449 --> 00:01:36,788 この いたいたしいばかりの昂揚が わからなければ➡ 13 00:01:36,788 --> 00:01:40,959 この段階の歴史は わからない。 14 00:01:40,959 --> 00:01:45,630 社会の どういう階層の どういう家の子でも➡ 15 00:01:45,630 --> 00:01:49,968 ある一定の資格を取るために 必要な記憶力と根気さえあれば➡ 16 00:01:49,968 --> 00:01:56,308 博士にも 官吏にも 軍人にも 教師にも なりえた。 17 00:01:56,308 --> 00:02:02,647 この時代の あかるさは こういう楽天主義から来ている。 18 00:02:02,647 --> 00:02:06,518 いまからおもえば じつに こっけいなことに➡ 19 00:02:06,518 --> 00:02:11,356 米と絹のほかに 主要産業のない この国家の連中が➡ 20 00:02:11,356 --> 00:02:15,994 ヨーロッパ先進国とおなじ 海軍を持とうとした。 21 00:02:15,994 --> 00:02:22,167 陸軍も同様である。 財政のなりたつはずがない。 22 00:02:22,167 --> 00:02:27,505 が ともかくも 近代国家を つくりあげようというのが➡ 23 00:02:27,505 --> 00:02:30,408 もともと 維新成立の大目的であったし➡ 24 00:02:30,408 --> 00:02:38,108 維新後の新国民たちの 少年のような希望であった。 25 00:02:41,152 --> 00:02:45,890 この物語は その小さな国が➡ 26 00:02:45,890 --> 00:02:51,463 ヨーロッパにおける もっともふるい 大国の一つ ロシアと対決し➡ 27 00:02:51,463 --> 00:02:57,268 どのように ふるまったかという 物語である。 28 00:02:57,268 --> 00:03:00,638 主人公は あるいは この時代の➡ 29 00:03:00,638 --> 00:03:04,309 小さな日本ということに なるかもしれないが➡ 30 00:03:04,309 --> 00:03:06,344 ともかくも われわれは➡ 31 00:03:06,344 --> 00:03:09,844 3人の人物のあとを 追わねばならない。 32 00:03:12,817 --> 00:03:18,323 四国は 伊予松山に 3人の男がいた。 33 00:03:18,323 --> 00:03:23,495 このふるい城下町に うまれた 秋山真之は➡ 34 00:03:23,495 --> 00:03:25,830 日露戦争が おこるにあたって➡ 35 00:03:25,830 --> 00:03:27,766 勝利は 不可能にちかいといわれた➡ 36 00:03:27,766 --> 00:03:31,436 バルチック艦隊をほろぼすにいたる 作戦をたて➡ 37 00:03:31,436 --> 00:03:34,472 それを実施した。 38 00:03:34,472 --> 00:03:40,145 その兄の秋山好古は 日本の騎兵を育成し➡ 39 00:03:40,145 --> 00:03:44,149 史上最強の騎兵といわれる コサック師団をやぶるという➡ 40 00:03:44,149 --> 00:03:47,285 奇蹟を遂げた。 41 00:03:47,285 --> 00:03:51,456 もうひとりは 俳句 短歌といった➡ 42 00:03:51,456 --> 00:03:54,492 日本の ふるい短詩型に 新風を入れて➡ 43 00:03:54,492 --> 00:04:00,492 その中興の祖となった 俳人 正岡子規である。 44 00:04:02,167 --> 00:04:06,805 かれらは 明治という時代人の体質で➡ 45 00:04:06,805 --> 00:04:11,476 前をのみ見つめながら あるく。 46 00:04:11,476 --> 00:04:15,346 のぼってゆく坂の上の青い天に➡ 47 00:04:15,346 --> 00:04:20,185 もし一朶の白い雲が かがやいているとすれば➡ 48 00:04:20,185 --> 00:04:25,824 それのみをみつめて 坂をのぼってゆくであろう。 49 00:04:25,824 --> 00:04:41,606 ♬~ 50 00:04:41,606 --> 00:04:44,943 (秋山信三郎)助けてやらにゃ。 51 00:04:44,943 --> 00:04:47,979 助けてやらにゃ。 52 00:04:47,979 --> 00:04:51,816 お~い! 信さん。 釣りに行かんか? 53 00:04:51,816 --> 00:04:55,120 弟か 妹が もうすぐ 生まれるんじゃ。 54 00:04:55,120 --> 00:04:59,624 ウチが助けてやらにゃ。 助けてやらにゃ…。 55 00:04:59,624 --> 00:05:06,297 「信さん」と言われた 秋山信三郎 好古が 10歳になった年の春➡ 56 00:05:06,297 --> 00:05:08,333 松山藩も 秋山家も➡ 57 00:05:08,333 --> 00:05:12,804 ひっくりかえってしまうという 事態がおこった。 58 00:05:12,804 --> 00:05:16,804 明治維新である。 59 00:05:19,310 --> 00:05:26,084 「朝廷に降伏せよ。 15万両の償金を さしだせ」。 60 00:05:26,084 --> 00:05:30,021 この支払いのために 藩の財政は底をつき➡ 61 00:05:30,021 --> 00:05:35,021 藩士の生活は困窮を極めた。 62 00:05:36,794 --> 00:05:43,635 10石取りの お徒士の家である 秋山家は とりわけ悲惨であった。 63 00:05:43,635 --> 00:05:46,938 すでに 4人の子がある。 64 00:05:46,938 --> 00:05:49,841 その養育費だけでも 大変であるのに➡ 65 00:05:49,841 --> 00:05:53,111 また 男児がうまれた。 66 00:05:53,111 --> 00:05:58,616 どっち? (秋山久敬)坊主。 67 00:05:58,616 --> 00:06:02,487 いけん。 それは いけんぞな。 68 00:06:02,487 --> 00:06:08,293 5人も どうやって育てりゃ ええんじゃ。 69 00:06:08,293 --> 00:06:13,631 寺へやるしか ないな。 それは いけんぞな! 70 00:06:13,631 --> 00:06:17,802 赤ん坊を寺にやるのは嫌ぞな。 71 00:06:17,802 --> 00:06:21,973 おっつけ ウチが勉強してな➡ 72 00:06:21,973 --> 00:06:27,478 お豆腐ほどのお金 こさえてあげるけん。 73 00:06:27,478 --> 00:06:30,178 豆腐ほどの? 74 00:06:39,123 --> 00:06:45,763 (赤ちゃんの泣き声) 75 00:06:45,763 --> 00:06:50,268 ウチが守ってやる。 76 00:06:50,268 --> 00:06:54,138 お前を守ってやるけん。 77 00:06:54,138 --> 00:07:12,957 ♬~ 78 00:07:12,957 --> 00:07:16,828 (秋山 貞)信さん。 こうしとると➡ 79 00:07:16,828 --> 00:07:21,299 あんたを産んだ時の事を 思い出すんよ。 80 00:07:21,299 --> 00:07:27,639 三月も 月足らずで おぶえんほど小さかった。 81 00:07:27,639 --> 00:07:30,541 それが 今じゃ…。 82 00:07:30,541 --> 00:07:35,380 この子も大きくなりそうじゃの。 83 00:07:35,380 --> 00:07:37,915 この子は 大きゅうなっても➡ 84 00:07:37,915 --> 00:07:44,589 一生 信さんには 頭が上がらんぞな。 85 00:07:44,589 --> 00:07:53,589 信さんは お前の恩人なんよ。 86 00:07:55,233 --> 00:07:57,233 ≪(おなら) 87 00:08:04,609 --> 00:08:12,350 父上も あんたには 頭が上がらん。 88 00:08:12,350 --> 00:08:15,953 豆腐のような金か…。 89 00:08:15,953 --> 00:08:18,990 一度は拝んでみたいもんじゃ。 90 00:08:18,990 --> 00:08:22,827 (秋山寛二郎) 豆腐? 腹いっぱい食いてえ。 91 00:08:22,827 --> 00:08:27,565 (秋山善四郎) アシも 腹いっぺえ食いてえ。 92 00:08:27,565 --> 00:08:31,235 (秋山鹿太郎) 皆 それを言わんこっちゃ。➡ 93 00:08:31,235 --> 00:08:36,574 言うたら 余計 腹が減って ひもじゅうなってしまうがな。➡ 94 00:08:36,574 --> 00:08:42,874 信 もう寝た方がええ。 はい すぐ寝ます。 95 00:08:44,449 --> 00:08:48,186 おやすみ。 96 00:08:48,186 --> 00:08:53,486 この子は 秋山淳五郎真之と名づけられた。 97 00:08:58,830 --> 00:09:02,266 戒田さんという旧藩士が➡ 98 00:09:02,266 --> 00:09:04,202 自分の屋敷のむかいに➡ 99 00:09:04,202 --> 00:09:06,771 銭湯をたてた。 100 00:09:06,771 --> 00:09:09,674 士族が 風呂屋になったというだけで➡ 101 00:09:09,674 --> 00:09:12,276 町中の評判になった。 102 00:09:12,276 --> 00:09:15,947 むろん 半分は悪評である。 103 00:09:15,947 --> 00:09:19,617 ところが 「風呂屋は まだいい。➡ 104 00:09:19,617 --> 00:09:23,287 秋山の坊ちゃんが風呂焚きに なっている」ということで➡ 105 00:09:23,287 --> 00:09:27,158 うわさを いっそう にぎわした。 106 00:09:27,158 --> 00:09:29,961 (戒田)信さん。➡ 107 00:09:29,961 --> 00:09:34,732 しゃんと薪をくべな いかんぞな。 すんません。 108 00:09:34,732 --> 00:09:38,569 天保銭1枚分 ちゃ~んと働いてもらわな。 109 00:09:38,569 --> 00:09:43,741 表の水まきは もう済んだんかな? これから。 110 00:09:43,741 --> 00:09:48,246 アシも侍じゃ。 好きで 風呂屋やっとるんじゃないけん。 111 00:09:48,246 --> 00:09:50,246 はい。 112 00:09:51,916 --> 00:09:55,420 秋山の坊ちゃん かわいい顔しとるくせに➡ 113 00:09:55,420 --> 00:09:57,920 少し阿呆じゃなもし。 バカ! 114 00:09:59,590 --> 00:10:05,096 おっ 侍の坊ちゃん。 今日も 人の垢取り稼業かや? 115 00:10:05,096 --> 00:10:08,933 「侍 侍」って 威張っとったが 土佐が来た時は➡ 116 00:10:08,933 --> 00:10:13,633 刀も抜けずに降参したけんのう。 (2人)のう! 117 00:10:22,480 --> 00:10:31,622 ♬「長州征伐 マの字にケの字 猫に紙袋に 後ではう」 118 00:10:31,622 --> 00:10:33,622 (秋山淳五郎)やめんか! 119 00:10:37,295 --> 00:10:39,295 うわ~! 120 00:10:42,166 --> 00:10:45,169 兄さんをバカにする奴は アシが許さん。 121 00:10:45,169 --> 00:10:50,308 お~ 怖! ほっとけ 淳。 弟は けんか好きの 屁っこきじゃ。 122 00:10:50,308 --> 00:10:54,145 秋山兄弟 臭うて たまらん。 米が食えんね。 123 00:10:54,145 --> 00:10:59,317 (3人)豆食って ブー! 臭 臭! 124 00:10:59,317 --> 00:11:01,252 なに~!? 125 00:11:01,252 --> 00:11:03,187 (3人)♬「長州征伐」 126 00:11:03,187 --> 00:11:05,887 淳! ♬「マの字にケの字」 127 00:11:16,334 --> 00:11:18,334 手伝え! 128 00:11:24,208 --> 00:11:31,282 兄さんみたいな学問好きが 中学にも行けんのは おかしい。 129 00:11:31,282 --> 00:11:34,185 寛二郎兄さんや 善四郎のように➡ 130 00:11:34,185 --> 00:11:37,154 養子に出されんだけ ありがたいと思わな。 131 00:11:37,154 --> 00:11:40,454 世の中は おかしいぞな。 132 00:11:42,293 --> 00:11:44,293 淳。 133 00:11:48,099 --> 00:11:56,307 これはのう アシが この世の中で 一番偉いと思うとる人の本じゃ。 134 00:11:56,307 --> 00:11:58,607 誰じゃ? 135 00:12:00,177 --> 00:12:07,318 福沢諭吉いう人じゃ。 福沢諭吉? 136 00:12:07,318 --> 00:12:12,490 うん。 福沢先生の書いた この「学問のすゝめ」にはの➡ 137 00:12:12,490 --> 00:12:15,326 こう書いてある。 138 00:12:15,326 --> 00:12:22,199 「一身独立して 一国独立す」。 139 00:12:22,199 --> 00:12:26,504 いっしんどくりつ? 140 00:12:26,504 --> 00:12:31,475 人 一人一人が独立して 初めて 国家が独立できる。 141 00:12:31,475 --> 00:12:33,775 そういう意味じゃ。 142 00:12:35,947 --> 00:12:40,785 お前には まだ ちいと難しいかもしれんがの。 143 00:12:40,785 --> 00:12:47,458 アシはな 金をためて 東京に出て 学問をして➡ 144 00:12:47,458 --> 00:12:53,658 いつか この人に会う。 それが アシの夢じゃ。 145 00:12:55,633 --> 00:13:00,805 親分! 親分! ノボさんが大変じゃ! 146 00:13:00,805 --> 00:13:04,605 早う! 早う! 147 00:13:06,310 --> 00:13:09,814 行くぞ~! (3人)オ~! 148 00:13:09,814 --> 00:13:20,324 ♬~ 149 00:13:20,324 --> 00:13:25,997 文芸史上 あれほど剛胆な 革新活動をした正岡子規も➡ 150 00:13:25,997 --> 00:13:31,268 幼少のころは「升さんほど 臆病な児もない」といわれた。 151 00:13:31,268 --> 00:13:34,605 (正岡 升)やめい! 侍が そんなに憎いんか!➡ 152 00:13:34,605 --> 00:13:37,942 300年 松山を守ってきたんは わしら 侍じゃ!➡ 153 00:13:37,942 --> 00:13:40,277 まげは 侍の魂ぞ。 154 00:13:40,277 --> 00:13:44,148 そんな魂 わしらが外しちゃる。 (升)やめんか! 155 00:13:44,148 --> 00:13:52,289 (正岡 律)兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 156 00:13:52,289 --> 00:13:56,794 ♬~ 157 00:13:56,794 --> 00:14:02,466 兄さんを いじめる奴は ウチが許さんけん! 面白い。 158 00:14:02,466 --> 00:14:06,466 どう許さんのじゃ? やってみろや! 159 00:14:08,806 --> 00:14:10,806 見参! 160 00:14:12,677 --> 00:14:14,679 (3人)見参! 161 00:14:14,679 --> 00:14:16,681 うお~! 162 00:14:16,681 --> 00:14:24,981 ♬~ 163 00:14:27,658 --> 00:14:33,931 正岡の家は 旧松山藩の御馬廻役であった。 164 00:14:33,931 --> 00:14:40,104 子規は 6つのときに 父をなくし 幼くして当主であった。 165 00:14:40,104 --> 00:14:46,610 (加藤恒忠)「孔子曰く 我 日に三度 我が身を省みる」。 166 00:14:46,610 --> 00:14:49,447 (一同)「孔子曰く」…。 167 00:14:49,447 --> 00:14:53,117 子規は 祖父が 松山第一の学者である➡ 168 00:14:53,117 --> 00:14:55,619 大原観山であるため➡ 169 00:14:55,619 --> 00:14:57,655 観山翁 みずからの手で➡ 170 00:14:57,655 --> 00:15:02,393 素読を教わるという幸運を享けた。 171 00:15:02,393 --> 00:15:06,797 (大原観山)升。 はい。 172 00:15:06,797 --> 00:15:09,133 「子 のたまわく」…。 173 00:15:09,133 --> 00:15:13,304 観山は 自分も ちょんまげのまま 生涯を通し➡ 174 00:15:13,304 --> 00:15:21,004 初孫の子規にも まげを切らさず 外出には 脇差一本を帯びさせた。 175 00:15:24,648 --> 00:15:32,348 もう そこら辺で ええぞな。 ほい ご苦労さん。 だんだん。 176 00:15:35,760 --> 00:15:41,265 ああ 信さん ひょっとしたら もう知っといでるかの? 177 00:15:41,265 --> 00:15:44,935 はあ? まだ お知りんのか。 178 00:15:44,935 --> 00:15:53,277 大阪に びた一文かからぬ 学校が出来たぞなもし。 179 00:15:53,277 --> 00:15:57,148 タダの学校!? ああ。 180 00:15:57,148 --> 00:16:02,953 師範学校ちゅうもんらしい。 そじゃけど おかしいのう。 181 00:16:02,953 --> 00:16:06,824 信さんのお父上は 県の学務課に 行っとられるんじゃろ? 182 00:16:06,824 --> 00:16:12,296 何も申されぬとは どうされたかのう。 183 00:16:12,296 --> 00:16:16,296 まあ いっぺん 聞いとうみ。 184 00:16:27,311 --> 00:16:31,182 お帰りなさい。 お帰りなさい。 185 00:16:31,182 --> 00:16:35,182 父上は? 畑。 186 00:16:36,921 --> 00:16:43,594 ≪(久敬)よいやさ よいやさ! 187 00:16:43,594 --> 00:16:45,594 (貞)淳! 188 00:16:54,939 --> 00:16:58,609 ただいま 帰りました。 うん。 189 00:16:58,609 --> 00:17:02,479 戒田んとこの風呂屋 だいぶ もうかっとるようじゃな。 190 00:17:02,479 --> 00:17:08,285 侍が風呂屋商売などと 悪口をたたく輩も多いがの。 191 00:17:08,285 --> 00:17:12,957 立派なもんじゃ。 信も 少しは 金がたまったろ? 192 00:17:12,957 --> 00:17:17,957 風呂焚きの天保銭1枚じゃ たかが知れとります。 193 00:17:20,297 --> 00:17:23,200 信! よう聞け。 194 00:17:23,200 --> 00:17:29,006 古今の英雄 豪傑は 皆 貧乏の中から生まれた。 195 00:17:29,006 --> 00:17:34,578 つまり アシに働きがないのは 子のために やっておるのじゃ。 196 00:17:34,578 --> 00:17:39,917 親が偉すぎると 子は偉うならん。 食うだけは食わせる。 197 00:17:39,917 --> 00:17:44,088 それ以外の事は 自分で なんとかおし。 198 00:17:44,088 --> 00:17:46,924 物は言いようじゃ。 199 00:17:46,924 --> 00:17:50,794 父上 タダの学校の事 聞いとられますか? 200 00:17:50,794 --> 00:17:55,099 タダ? 何じゃ? 藪から棒に。 201 00:17:55,099 --> 00:17:57,601 大阪に師範学校が出来たと 聞いたんじゃけど➡ 202 00:17:57,601 --> 00:18:00,638 それは タダで入れる 学校じゃそうな。 203 00:18:00,638 --> 00:18:06,944 地獄耳じゃのう お前は。 ほいじゃ 本当の話なんじゃね!? 204 00:18:06,944 --> 00:18:09,280 父上は 県庁の学務課に お勤めじゃのに➡ 205 00:18:09,280 --> 00:18:11,615 何で 教えてくれなんだんですか!? 206 00:18:11,615 --> 00:18:15,953 学務課に勤めとるからこそ 家では 話はできんのじゃ。 207 00:18:15,953 --> 00:18:17,888 水くさいぞね。 208 00:18:17,888 --> 00:18:21,625 父上 タダの学校に 行かして下さい! 209 00:18:21,625 --> 00:18:24,528 どうしたら その学校に 入学できるんじゃ? 210 00:18:24,528 --> 00:18:28,299 タダなら 父上に 迷惑は かからんはずじゃ。 211 00:18:28,299 --> 00:18:32,903 明教館一の秀才が 風呂焚きじゃ 兄さんが かわいそうじゃ。 212 00:18:32,903 --> 00:18:39,203 お前は黙っとれ。 持ってけ。 早う! 213 00:18:41,612 --> 00:18:47,812 残念じゃが ここでは 何とも申されんのじゃ。 214 00:19:17,948 --> 00:19:24,948 用の向き 相分かった。 面を上げい。 215 00:19:27,958 --> 00:19:31,562 その方 いくつになる? 216 00:19:31,562 --> 00:19:37,562 16です。 16か…。 217 00:19:39,903 --> 00:19:47,411 無理じゃな。 年端が足りぬ。 師範学校の入学規定では➡ 218 00:19:47,411 --> 00:19:53,217 「19より上」となっておる。 3年ばかり 待て。 219 00:19:53,217 --> 00:19:55,586 3年も待てません! 220 00:19:55,586 --> 00:19:59,923 アシは 一日でも早う 学校行って 学問をしたいんです! 221 00:19:59,923 --> 00:20:03,594 そうか。 待てぬか。 222 00:20:03,594 --> 00:20:09,266 待てぬという事であれば しようがない。 223 00:20:09,266 --> 00:20:12,266 1つ 方法があるぞ。 224 00:20:17,775 --> 00:20:22,946 大阪ではの 師範学校の試験だけではのうて➡ 225 00:20:22,946 --> 00:20:27,117 小学校教員の試験も やっておる。 226 00:20:27,117 --> 00:20:37,127 それに合格すると 助教を拝命し 月給7円を賜る。 227 00:20:37,127 --> 00:20:44,802 しばらく教員をして 勉学に励むうちに 19になろう。 228 00:20:44,802 --> 00:20:48,639 その時 師範学校を受ければええ。 229 00:20:48,639 --> 00:20:51,308 旅費は? うん? 230 00:20:51,308 --> 00:20:55,979 大阪行きの旅費は どうなりましょう? 231 00:20:55,979 --> 00:21:00,851 いや それは 当然 私弁じゃな。 232 00:21:00,851 --> 00:21:04,988 おい どうするつもりじゃ? 233 00:21:04,988 --> 00:21:08,659 帰って 父と相談つかまつります。 234 00:21:08,659 --> 00:21:12,959 きっと 父が なんとかしてくれましょう。 235 00:21:19,002 --> 00:21:22,873 その方 よい父を持ったのう。 236 00:21:22,873 --> 00:21:26,877 はい。 ありがとうございます! 237 00:21:26,877 --> 00:21:32,950 (笑い声) 238 00:21:32,950 --> 00:21:39,823 ♬~ 239 00:21:39,823 --> 00:21:45,529 大阪ゆきは 年があらたまった正月になった。 240 00:21:45,529 --> 00:21:50,134 父上 母上 お元気で! 241 00:21:50,134 --> 00:21:56,640 信さ~ん! くれぐれも 体に 気ぃ付けてな~! 242 00:21:56,640 --> 00:21:59,340 お元気で! 243 00:22:02,513 --> 00:22:05,649 お元気で! 244 00:22:05,649 --> 00:22:11,522 ≪兄さん お元気で~! 245 00:22:11,522 --> 00:22:13,522 淳…。 246 00:22:17,261 --> 00:22:20,497 何じゃ? こりゃ。 兄さん! 247 00:22:20,497 --> 00:22:23,000 やんちゃも ほどほどに せえ。 248 00:22:23,000 --> 00:22:25,903 お前らも 精出して しっかり勉強おしよ。 249 00:22:25,903 --> 00:22:30,174 勉強のしあいっこを しようぞな。 (一同)オ~! 250 00:22:30,174 --> 00:22:36,280 淳 けんかもええが 学問に気張れ! 一身独立じゃ! 251 00:22:36,280 --> 00:22:38,215 (一同)オ~! 252 00:22:38,215 --> 00:22:41,151 兄さん! 兄さ~ん! 253 00:22:41,151 --> 00:22:57,851 ♬~ 254 00:23:03,974 --> 00:23:10,974 この年の4月 子規の祖父 大原観山が亡くなった。 255 00:23:12,983 --> 00:23:20,490 観山は まげを切らず 武士として その生涯を全うした。 256 00:23:20,490 --> 00:23:27,831 (一同)南無阿弥陀 南無阿弥陀…。 257 00:23:27,831 --> 00:23:32,831 (せみの鳴き声) 258 00:23:41,278 --> 00:23:43,278 痛…。 259 00:23:47,951 --> 00:23:51,288 最近 表に出てこんと思ったら➡ 260 00:23:51,288 --> 00:23:55,626 こんなとこに閉じ籠もって 何しとるん? 261 00:23:55,626 --> 00:24:00,826 ええもん作っとるんじゃ。 ええもんを。 (律)何? これ。 262 00:24:07,337 --> 00:24:12,476 (花火の音) (一同)うわ~ きれいじゃの! 263 00:24:12,476 --> 00:24:17,314 どうじゃ? どうじゃ? これが 花火いうもんじゃ。 264 00:24:17,314 --> 00:24:20,217 ガイじゃろ? ガイじゃのう! 265 00:24:20,217 --> 00:24:23,517 ガイじゃろ! もう一発じゃ。 266 00:24:29,660 --> 00:24:31,595 (一同)うわ~! 267 00:24:31,595 --> 00:24:34,498 (花火の音) 268 00:24:34,498 --> 00:24:39,498 あ~ きれいじゃのう。 269 00:24:41,938 --> 00:24:44,975 ノボさん 言うとったじゃろ? 270 00:24:44,975 --> 00:24:47,611 今は亡き じい様が 一番好きじゃったんは➡ 271 00:24:47,611 --> 00:24:50,611 松山の花火じゃと。 272 00:24:54,951 --> 00:24:59,951 何しろ ご維新のあと 花火は ご法度じゃったからな。 273 00:25:06,296 --> 00:25:11,968 ノボさん そのまげ ええ加減に 切ったら どうじゃ? 274 00:25:11,968 --> 00:25:14,871 まげは じい様の魂じゃ。 275 00:25:14,871 --> 00:25:18,842 まげ 切ってしもうたら じい様と 切れてしまうような気ぃする。 276 00:25:18,842 --> 00:25:21,311 いつかは 切らんならんぞな。 277 00:25:21,311 --> 00:25:25,182 じい様は もう許してくれるじゃろ。 278 00:25:25,182 --> 00:25:29,182 ノボさん 今度は 自分で 火つけてみいや。 279 00:25:30,987 --> 00:25:35,258 早う 行け! 早う やれ! 兄さん 早う! 280 00:25:35,258 --> 00:25:40,258 早う 行け! 早う! 早う 行け! 281 00:25:49,806 --> 00:25:52,106 ほら! 282 00:26:00,484 --> 00:26:03,620 (花火の音) 283 00:26:03,620 --> 00:26:05,620 うわ~。 284 00:26:07,290 --> 00:26:10,290 わ~ きれい! 285 00:26:11,962 --> 00:26:15,465 じい様…。 286 00:26:15,465 --> 00:26:18,301 (園田巡査)やめい!➡ 287 00:26:18,301 --> 00:26:22,472 おい こら! やめい やめい! 花火 やめい! 288 00:26:22,472 --> 00:26:26,810 花火は ご法度じゃ! 淳五郎か? 待っとれい! 289 00:26:26,810 --> 00:26:31,581 今 登っていくけん。 危ないぞな。 290 00:26:31,581 --> 00:26:33,517 逃げろ! すぐ行くぞ! 291 00:26:33,517 --> 00:26:35,517 ノボさん! (升)待って! 292 00:26:37,254 --> 00:26:39,189 申し訳ありません。 293 00:26:39,189 --> 00:26:44,995 お宅の坊主が元凶である事は 調べがついておる。 294 00:26:44,995 --> 00:26:47,898 火術方を務めておった家の 坊主が➡ 295 00:26:47,898 --> 00:26:53,270 倉から こっそり 火薬の調合書を持ち出しよった。 296 00:26:53,270 --> 00:26:56,106 そそのかしたんは お前じゃな? 297 00:26:56,106 --> 00:26:59,609 わしがやったという 証拠がありますか? 淳! 298 00:26:59,609 --> 00:27:02,946 お前らが いっつも つるんで 悪さをしちょるのは➡ 299 00:27:02,946 --> 00:27:04,881 松山じゅうが 知っとる事ぞ。 300 00:27:04,881 --> 00:27:10,620 なら もうちっと うまく捕まえにゃ。 バカもん! 301 00:27:10,620 --> 00:27:14,791 警察相手に 何を言う!? この 不届き者めが! 302 00:27:14,791 --> 00:27:17,627 申し訳ありません! 303 00:27:17,627 --> 00:27:21,327 厳重に 説諭するように! 304 00:27:25,368 --> 00:27:28,568 (園田)帰るぞ! 305 00:27:30,807 --> 00:27:33,607 申し訳ありません。 306 00:28:39,242 --> 00:28:44,581 淳。 私も死にます。 307 00:28:44,581 --> 00:28:50,253 お前も これで胸を突いて お死に! 308 00:28:50,253 --> 00:28:52,953 さあ! 309 00:29:11,274 --> 00:29:16,974 ごめんなさい。 許して下され。 310 00:29:23,286 --> 00:29:29,986 ≪(升)淳さん。 淳さん おるかの? 入るぞな。 311 00:29:34,230 --> 00:29:38,068 ≪(貞)あれま ノボさん! どうしたんだな?➡ 312 00:29:38,068 --> 00:29:43,068 淳! 淳! 早う来とうみ。 313 00:29:47,243 --> 00:29:49,179 ノボさん! 314 00:29:49,179 --> 00:29:53,879 今 切ってきた。 似合うとるじゃろか? 315 00:29:57,587 --> 00:30:02,459 ノボさんにも ようよう ご維新が やって来よった。 316 00:30:02,459 --> 00:30:07,459 ノボさん! よう似合うとるがな。 317 00:30:20,276 --> 00:30:24,276 多くの武士が死んだ。 318 00:30:27,150 --> 00:30:31,988 この歴史劇を進行するために 支払われた莫大な経費は➡ 319 00:30:31,988 --> 00:30:38,128 すべて諸大名が 自腹を切ってのことであった。 320 00:30:38,128 --> 00:30:44,000 そのお返しが 領地をとりあげ 武士は すべて失業という➡ 321 00:30:44,000 --> 00:30:47,637 廃藩置県となった。 322 00:30:47,637 --> 00:30:54,937 なんのための明治維新だったのか かれらは思ったであろう。 323 00:30:57,313 --> 00:31:03,186 これが他日 各地に士族の反乱をよんだ。 324 00:31:03,186 --> 00:31:06,990 その最大にして 最後の反乱だったのが➡ 325 00:31:06,990 --> 00:31:09,893 西南戦争である。 326 00:31:09,893 --> 00:31:14,664 明治10年2月 西郷隆盛が➡ 327 00:31:14,664 --> 00:31:20,003 薩摩士族 1万2,000に擁せられて 立ちあがった。 328 00:31:20,003 --> 00:31:24,340 この戦いの規模は 大変なものであった。 329 00:31:24,340 --> 00:31:30,680 九州各地の旧藩の士族が呼応し 総勢3万にも たっした。 330 00:31:30,680 --> 00:31:35,285 薩摩を中心とする 日本最強の 士族たちが死ぬことによって➡ 331 00:31:35,285 --> 00:31:40,156 12世紀以来 七百年のサムライというものは➡ 332 00:31:40,156 --> 00:31:43,156 滅んだのである。 333 00:31:50,834 --> 00:31:55,972 真之の少年時代のなかで 最大の事件といえば➡ 334 00:31:55,972 --> 00:31:59,272 兄 好古の帰省であった。 335 00:32:04,314 --> 00:32:09,819 好古は 目標どおり 大阪の師範学校を卒業すると➡ 336 00:32:09,819 --> 00:32:18,328 その後 東京へ渡り さらに タダ つまり 官費の学校へ入学した。 337 00:32:18,328 --> 00:32:22,198 陸軍士官学校である。 338 00:32:22,198 --> 00:32:27,670 ちゃんと 挨拶をおし。 兄さんは お前の恩人ぞな。 339 00:32:27,670 --> 00:32:31,007 何じゃ? そりゃ。 アシが生まれた時➡ 340 00:32:31,007 --> 00:32:35,007 兄さんのおかげで 寺にやられずに済んだちゅう話だ。 341 00:32:36,813 --> 00:32:39,115 (酒屋)毎度あり! 毎度! 342 00:32:39,115 --> 00:32:42,152 (魚屋)特上の鯛 お届けに上がりましたけん。 343 00:32:42,152 --> 00:32:44,788 (酒屋)とびっきりの酒 持ってきましたけん。 344 00:32:44,788 --> 00:32:48,124 何ぞね? 何ぞね? 何かの間違いと違うんかい? 345 00:32:48,124 --> 00:32:52,962 途中で頼んでおいたんじゃ。 どうも! 毎度! 346 00:32:52,962 --> 00:32:55,865 (貞)あっ いえ あの… ちょっと! 347 00:32:55,865 --> 00:33:01,304 母上 ええんじゃ。 払いは もう済ませとりますけん。 348 00:33:01,304 --> 00:33:06,643 ほんなら 父上 飲みましょうぞ。 うん。 349 00:33:06,643 --> 00:33:12,643 兄さん だんだん! 頂きます! (2人)頂きます! 350 00:33:17,287 --> 00:33:22,826 うまいのう! (升)うまいのう! 351 00:33:22,826 --> 00:33:25,728 淳さんちで ごちそうになるの 初めてじゃ。 352 00:33:25,728 --> 00:33:30,333 あ 痛…。 (笑い声) 353 00:33:30,333 --> 00:33:35,605 父上。 アシは 騎兵科に行く事にしましたけん。 354 00:33:35,605 --> 00:33:41,277 騎兵…。 秋山家は 代々 徒士目付の家柄じゃ。 355 00:33:41,277 --> 00:33:44,614 馬に乗る上士に 憧れでも あったんか? 356 00:33:44,614 --> 00:33:49,285 アシの 腕と脚が長いとこが どうやら見込まれたようです。 357 00:33:49,285 --> 00:33:52,188 さすがは 兄さんじゃ。 358 00:33:52,188 --> 00:33:57,961 信 お前 何で 軍人の道を選んだんじゃ? 359 00:33:57,961 --> 00:34:02,131 アシは まず 食う事を 考えとりますけん。 360 00:34:02,131 --> 00:34:06,931 士官学校は タダの上に 小遣いまで くれますけん。 361 00:34:10,306 --> 00:34:15,178 「人は 生計の道を講ずる事に まず 思案すべきである。➡ 362 00:34:15,178 --> 00:34:21,017 一家を養い得て 初めて 一郷と国家のために尽くす」。 363 00:34:21,017 --> 00:34:26,322 父上の教えです。 ほう… ほうか! ああ。 364 00:34:26,322 --> 00:34:29,993 まあ 飲め。 ありがとうございます。 365 00:34:29,993 --> 00:34:33,596 風呂焚きを やめさせたんは 正しかったのう。 366 00:34:33,596 --> 00:34:36,099 アシの先見の明じゃ。 367 00:34:36,099 --> 00:34:39,099 よう言うわい。 淳! 368 00:34:40,970 --> 00:34:46,442 父上。 アシが少尉になったら 淳は小学校を出ます。 369 00:34:46,442 --> 00:34:51,314 金を送るけん 淳を 中学に入れてやって下され。 370 00:34:51,314 --> 00:34:55,618 こんな暴れん坊 中学なんぞより 寺にでも…。 371 00:34:55,618 --> 00:35:00,618 父上! これは約束ぞな。 372 00:35:02,292 --> 00:35:07,797 (升)ええのう。 ええ兄さんを 持って 淳さんは幸せぞな。 373 00:35:07,797 --> 00:35:10,700 (律)羨ましい。 374 00:35:10,700 --> 00:35:17,700 (笑い声) 375 00:35:25,982 --> 00:35:30,653 余談ながら 「猿」という みじめな あだなが➡ 376 00:35:30,653 --> 00:35:34,924 この当時の日本人に 冠せられている。 377 00:35:34,924 --> 00:35:38,261 容貌が 猿に似ているということも あるが➡ 378 00:35:38,261 --> 00:35:42,598 要するに 「ヨーロッパ文明を 猿まねしようとする民族」➡ 379 00:35:42,598 --> 00:35:45,298 という意味であろう。 380 00:35:47,270 --> 00:35:52,942 アジアにあっては 日本国だけが 勃然として西洋化を志し➡ 381 00:35:52,942 --> 00:35:57,280 産業革命による 文明の主潮に乗ろうとした。 382 00:35:57,280 --> 00:36:02,952 旧文明のなかにいるアジアから見れば 狂気とみえたであろうし➡ 383 00:36:02,952 --> 00:36:09,625 ヨーロッパ人からみれば 笑止な 猿まねと思えたにちがいない。 384 00:36:09,625 --> 00:36:15,298 しかし 当の日本と日本人は 大まじめであった。 385 00:36:15,298 --> 00:36:19,469 産業と軍需は 西洋よりも おくれていた。 386 00:36:19,469 --> 00:36:22,305 それを 一挙に まねることによって➡ 387 00:36:22,305 --> 00:36:25,641 できれば 一挙に身につけ それによって➡ 388 00:36:25,641 --> 00:36:30,313 西洋同様の富国強兵のほまれを 得たいとおもった。 389 00:36:30,313 --> 00:36:35,151 いや ほまれというような ゆとりのある心情ではなく➡ 390 00:36:35,151 --> 00:36:38,588 西洋をまねて 西洋の力を身につけねば➡ 391 00:36:38,588 --> 00:36:44,927 中国同様の 亡国寸前の状態に なると おもっていた。 392 00:36:44,927 --> 00:36:48,765 日本の この おのれの過去を かなぐりすてた➡ 393 00:36:48,765 --> 00:36:56,065 すさまじいばかりの西洋化には この国の存亡が賭けられていた。 394 00:36:59,776 --> 00:37:05,281 真之も子規も松山中学校に入った。 395 00:37:05,281 --> 00:37:07,950 みんな 聞いとくれ! 396 00:37:07,950 --> 00:37:11,821 民権自由の演説会じゃ! 聞いとくれ! 397 00:37:11,821 --> 00:37:15,625 中学4年のころ 子規は 当時はやりの➡ 398 00:37:15,625 --> 00:37:20,325 自由民権運動の演説に 熱中していた。 399 00:37:25,301 --> 00:37:30,173 自由 いずくにか ある。 400 00:37:30,173 --> 00:37:33,576 薩長の藩閥政治は 排撃せねばならん。 401 00:37:33,576 --> 00:37:37,747 言論の自由を求めて 官憲の横暴と戦おう! 402 00:37:37,747 --> 00:37:43,047 自由は 民衆固有の権利じゃ! 403 00:37:44,620 --> 00:37:48,257 当時 この種の民間政論は➡ 404 00:37:48,257 --> 00:37:52,095 全国でも 愛媛が さかんなほうであったろう。 405 00:37:52,095 --> 00:37:58,968 なにぶん 自由民権運動の 本場のような 土佐にちかい。 406 00:37:58,968 --> 00:38:12,782 (笛の音) 407 00:38:12,782 --> 00:38:17,286 往来の ど真ん中で こげな 政治集会は許されん! 408 00:38:17,286 --> 00:38:19,222 (一同)何じゃ? こら~! 409 00:38:19,222 --> 00:38:24,922 責任者は 誰じゃ? 責任者は 誰じゃ? 410 00:38:26,629 --> 00:38:31,234 (笑い声) 411 00:38:31,234 --> 00:38:35,571 すんません こぼしてしもた。 412 00:38:35,571 --> 00:38:42,245 秋山 また お前か! お前がおると 必ず 松山に騒ぎが起きる。 413 00:38:42,245 --> 00:38:45,915 これは 政治集会じゃないぞね。 414 00:38:45,915 --> 00:38:48,417 ただ 歌って踊るために 集まっとるだけじゃ。 415 00:38:48,417 --> 00:38:51,921 そうじゃの? ノボさん。 おう そのとおりじゃ! 416 00:38:51,921 --> 00:38:54,257 (一同)そうじゃ そうじゃ! 417 00:38:54,257 --> 00:39:00,257 「民権数え歌」 いくぞな~。 (一同)オ~! 418 00:39:06,269 --> 00:39:10,940 園田巡査も 一緒に踊られい。 楽しゅうなるぞ。 419 00:39:10,940 --> 00:39:16,445 ♬「一つとせ 人の上には人ぞなき」 420 00:39:16,445 --> 00:39:22,952 ♬「権利に変わりはないからは この人じゃもの」 421 00:39:22,952 --> 00:39:25,288 ♬「二つとせ」 422 00:39:25,288 --> 00:39:32,094 ♬「ふた言目には 逮捕する 偉ぶるばかりで 能はなし」 423 00:39:32,094 --> 00:39:34,897 ♬「この巡査殿」 424 00:39:34,897 --> 00:39:37,733 (笛の音) 425 00:39:37,733 --> 00:39:41,237 本官を侮辱すると なんぼ 松山中学の生徒でも➡ 426 00:39:41,237 --> 00:39:45,575 本当に逮捕するぞな。 逮捕するならアシを先に逮捕せい。 427 00:39:45,575 --> 00:39:49,245 園田巡査も 松山のお人じゃろ! 松山のお人じゃったら➡ 428 00:39:49,245 --> 00:39:53,115 薩長の藩閥政治に 腹の立たん者は おらんはずじゃ! 429 00:39:53,115 --> 00:39:57,119 アシらはの 横暴な政府に 何も言えん 大人たちが➡ 430 00:39:57,119 --> 00:40:01,757 もどかしくて 情けのうて たまらんのじゃ! 431 00:40:01,757 --> 00:40:07,263 じゃから こうして 恥も外聞もなく 歌い踊っておる。 432 00:40:07,263 --> 00:40:10,600 (園田)法律が 法律が分からん お前ら学生の方が➡ 433 00:40:10,600 --> 00:40:13,502 もどかしくて情けないぞな! 法律が何じゃ!? 434 00:40:13,502 --> 00:40:16,772 法律は何じゃ!? 法律は法律じゃ! 435 00:40:16,772 --> 00:40:19,609 解散せねば 本官は お前を しょっぴかねばならん。 436 00:40:19,609 --> 00:40:21,544 さあ 来い! 437 00:40:21,544 --> 00:40:30,253 ♬「三つとせ 民権自由のよく分かる」 438 00:40:30,253 --> 00:40:36,959 (律)兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さ~ん! 439 00:40:36,959 --> 00:40:43,633 兄さん どこぞな? 兄さ~ん! 440 00:40:43,633 --> 00:40:46,302 兄さん どこぞな~? 441 00:40:46,302 --> 00:40:50,802 ここじゃ! 律 ここじゃ! ここじゃ ここじゃ。 442 00:40:53,175 --> 00:40:57,913 痛い痛い… 痛い! 443 00:40:57,913 --> 00:41:01,150 兄さんに 何をするぞな! 444 00:41:01,150 --> 00:41:05,821 兄さんを いじめる奴は ウチが許さんけん! 445 00:41:05,821 --> 00:41:10,326 別に いじめておる訳じゃ ないけん。 あんたの兄さんがな➡ 446 00:41:10,326 --> 00:41:14,196 自由民権運動に かぶれての ほんでな ここでな…。 447 00:41:14,196 --> 00:41:18,200 兄さん 加藤の叔父様から 手紙が来とるぞな。 448 00:41:18,200 --> 00:41:21,400 なに 来たか! 449 00:41:35,484 --> 00:41:40,323 松山の自由民権も 今日が仕納めじゃ。 450 00:41:40,323 --> 00:41:42,792 どうした? ノボさん。 分かれば よろしい。 451 00:41:42,792 --> 00:41:45,127 アシも 手荒なまねは したくないけんの。 452 00:41:45,127 --> 00:41:47,163 じゃが おねえちゃん 力 強いのう。 453 00:41:47,163 --> 00:41:50,466 「来るつもりなれば この文 到着次第➡ 454 00:41:50,466 --> 00:41:56,272 即日にも 御決行 可なり候」。 455 00:41:56,272 --> 00:42:03,479 やったぞ 淳さん。 東京じゃ! 加藤の叔父の許しが出た。 456 00:42:03,479 --> 00:42:09,985 東京へ行くぞな! 東京じゃ! 457 00:42:09,985 --> 00:42:13,656 「なにをするにも東京だ」 という気分が➡ 458 00:42:13,656 --> 00:42:20,356 日本列島の津々浦々の 若い者の胸を あわだたせていた。 459 00:42:21,997 --> 00:42:28,997 まことに小さな国が 開化期を迎えようとしている。 460 00:42:31,807 --> 00:42:33,943 目指すは 海の向こうじゃ! 461 00:42:33,943 --> 00:42:37,813 男子は 生涯 たった一事を成せば足る。 462 00:42:37,813 --> 00:42:43,953 「日本紳士は 博愛精神に富み 弱きを助け 強きをくじく。➡ 463 00:42:43,953 --> 00:42:50,126 常に 法をよりどころにして 正義を貫く」。 464 00:42:50,126 --> 00:44:25,326 ♬~