1 00:00:35,734 --> 00:00:44,734 (映写機の音) 2 00:00:51,883 --> 00:00:54,786 ♬~ 3 00:00:54,786 --> 00:01:01,893 四国は 伊予松山に 3人の男がいた。 4 00:01:01,893 --> 00:01:06,765 この ふるい城下町にうまれた 秋山真之は➡ 5 00:01:06,765 --> 00:01:09,401 日露戦争がおこるにあたって➡ 6 00:01:09,401 --> 00:01:11,336 勝利は 不可能に ちかいといわれた➡ 7 00:01:11,336 --> 00:01:15,207 バルチック艦隊を ほろぼすにいたる 作戦をたて➡ 8 00:01:15,207 --> 00:01:19,110 それを実施した。 9 00:01:19,110 --> 00:01:25,851 その兄の秋山好古は 日本の騎兵を育成し➡ 10 00:01:25,851 --> 00:01:29,788 史上最強の騎兵といわれる コサック師団をやぶるという➡ 11 00:01:29,788 --> 00:01:33,525 奇蹟を遂げた。 12 00:01:33,525 --> 00:01:37,395 もうひとりは 俳句 短歌といった➡ 13 00:01:37,395 --> 00:01:40,398 日本のふるい短詩型に 新風を入れて➡ 14 00:01:40,398 --> 00:01:46,398 その中興の祖となった 俳人 正岡子規である。 15 00:01:48,073 --> 00:01:52,878 かれらは 明治という時代人の体質で➡ 16 00:01:52,878 --> 00:01:56,748 前をのみ見つめながら あるく。 17 00:01:56,748 --> 00:02:01,219 のぼってゆく坂の上の青い天に➡ 18 00:02:01,219 --> 00:02:05,090 もし一朶の白い雲が かがやいているとすれば➡ 19 00:02:05,090 --> 00:02:11,229 それのみをみつめて 坂をのぼってゆくであろう。 20 00:02:11,229 --> 00:02:21,929 ♬~ 21 00:03:06,217 --> 00:03:09,554 (真之)兄さんは いつ会うても 兄さんのまんまじゃ。 22 00:03:09,554 --> 00:03:12,223 決して変わらん。 23 00:03:12,223 --> 00:03:15,560 アシは いつまでたっても➡ 24 00:03:15,560 --> 00:03:19,560 確かなもんが つかめんまま うろうろしとる。 25 00:03:21,232 --> 00:03:25,932 兄さんみたいに生きるには どうしたらええんじゃろか? 26 00:03:27,906 --> 00:03:33,178 (好古)淳。 この世に 確かなもんなどない。 27 00:03:33,178 --> 00:03:38,078 アシは 単純明快であろうと しとるだけじゃ。 28 00:03:49,527 --> 00:03:51,827 用か? 29 00:03:58,536 --> 00:04:05,536 アシ 予備門をやめよう思います。 30 00:04:07,879 --> 00:04:15,879 やめて 軍人になろうと思います。 海軍兵学校に入ります。 31 00:04:20,458 --> 00:04:25,458 なぜ そうしたいんか 短く言うてみい。 32 00:04:29,167 --> 00:04:32,070 このまま 予備門におったら➡ 33 00:04:32,070 --> 00:04:37,042 アシは 恐らく 第2等の学者になりますぞな。 34 00:04:37,042 --> 00:04:39,811 アシの学問は ニ流。 35 00:04:39,811 --> 00:04:43,715 学問をするんに必要な根気も 二流じゃ。 36 00:04:43,715 --> 00:04:49,187 根気も二流か。 はい。 37 00:04:49,187 --> 00:04:54,487 アシは どうも 要領が よすぎますけん。 38 00:04:58,196 --> 00:05:05,537 それに もうこれ以上 兄さんの 世話になることは できません。 39 00:05:05,537 --> 00:05:10,875 金のことなら心配せんでええ 言うたはずじゃ。 40 00:05:10,875 --> 00:05:14,746 そうではないんです。 41 00:05:14,746 --> 00:05:20,846 自主自立 一身独立です。 42 00:05:25,223 --> 00:05:32,831 兄さん。 アシは 世界の海に乗り出したい。 43 00:05:32,831 --> 00:05:38,503 海の向こうには アシの知らん でっかい世界が広がっとる。 44 00:05:38,503 --> 00:05:43,374 それを この目で見てみたい。 この胸で感じてみたい。 45 00:05:43,374 --> 00:05:49,180 今 心の底から そう思うとります。 46 00:05:49,180 --> 00:06:11,870 ♬~ 47 00:06:11,870 --> 00:06:15,206 淳。 はい。 48 00:06:15,206 --> 00:06:17,542 秋山家の先祖は➡ 49 00:06:17,542 --> 00:06:20,542 伊予水軍であることを 知っとるか? 50 00:06:22,881 --> 00:06:30,181 源平のころ 我が祖先は 既に 瀬戸内の海を暴れ回っとった。 51 00:06:35,160 --> 00:06:41,860 伊予人の中から出て 初めて日本海軍の士官になるか。 52 00:06:46,771 --> 00:06:52,710 兄さん… だんだん。 53 00:06:52,710 --> 00:07:08,059 ♬~ 54 00:07:08,059 --> 00:07:11,062 軍人になるということは➡ 55 00:07:11,062 --> 00:07:14,199 かれ自身が もっとも 快適であると おもっている➡ 56 00:07:14,199 --> 00:07:19,871 大学予備門の生活を すてることでもあった。 57 00:07:19,871 --> 00:07:26,871 子規の顔が うかんだ。 おもわず 涙がにじんだ。 58 00:07:34,152 --> 00:07:37,488 ノボさん 精が出るのう。 (子規)オフコース。 59 00:07:37,488 --> 00:07:43,995 おっ。 最近 英語が 自然に 口をついて出てきよるぞね。 60 00:07:43,995 --> 00:07:48,466 もう大丈夫じゃ。 落第はせん。 ほうか。 61 00:07:48,466 --> 00:07:51,169 淳さんと一緒に机を並べて 勉強を始めてから➡ 62 00:07:51,169 --> 00:07:55,540 もう 成績が うなぎ登りじゃ。 口には出さんが➡ 63 00:07:55,540 --> 00:08:00,378 淳さんの友情には いつも感謝しとる。 64 00:08:00,378 --> 00:08:05,078 恩返しに 必ず 淳さんを 追い抜いてみせるぞな。 65 00:08:06,851 --> 00:08:13,191 おう! ならば 競争じゃ。 寝た方が負けじゃ。 66 00:08:13,191 --> 00:08:18,891 よ~し 受けて立つ。 負けんぞな。 おう! 67 00:08:45,823 --> 00:08:49,523 ノボさん 話があるんじゃ。 68 00:08:55,500 --> 00:09:02,500 なかなか言えんかったが 実はの…。 69 00:09:12,517 --> 00:09:15,217 ノボさん。 70 00:09:31,202 --> 00:09:36,502 この月の最初の土曜日は 雨だった。 71 00:09:51,522 --> 00:09:56,022 淳さん 栗でも食わんか? 72 00:10:20,551 --> 00:10:23,051 何ぞな? 73 00:10:41,539 --> 00:10:47,712 「予は都合あり 予備門を退学せり。➡ 74 00:10:47,712 --> 00:10:54,318 志を変じ 海軍において身を立てんとす。➡ 75 00:10:54,318 --> 00:11:00,224 愧ずらくは 兄との約束を 反故にせしことにして➡ 76 00:11:00,224 --> 00:11:10,234 今より 海上へ去るうえは 再び 兄と相会うことなかるべし。➡ 77 00:11:10,234 --> 00:11:14,405 自愛を祈る」。 78 00:11:14,405 --> 00:12:16,234 ♬~ 79 00:12:16,234 --> 00:12:20,104 アシの勝ちじゃ。 80 00:12:20,104 --> 00:12:22,504 何でじゃ? 81 00:12:24,575 --> 00:12:28,913 アシは 寝とらんぞな。 82 00:12:28,913 --> 00:12:33,184 ちゃんと証拠があるぞ。 83 00:12:33,184 --> 00:12:35,184 あっ。 84 00:12:37,054 --> 00:12:39,524 ここにも。 85 00:12:39,524 --> 00:12:41,459 (笑い声) 86 00:12:41,459 --> 00:12:49,867 いつ? オー マイ ゴッド。 87 00:12:49,867 --> 00:13:08,119 ♬~ 88 00:13:08,119 --> 00:13:18,629 「いくさをも いとわぬ君が 船路には➡ 89 00:13:18,629 --> 00:13:31,829 風ふかば ふけ 波たゝば たて」。 90 00:13:37,715 --> 00:13:43,554 気張れ… 淳さん。 91 00:13:43,554 --> 00:14:11,354 ♬~ 92 00:14:17,421 --> 00:14:26,097 明治19年10月 真之は 築地の海軍兵学校に入校した。 93 00:14:26,097 --> 00:14:29,700 この期に入った者は 55人であり➡ 94 00:14:29,700 --> 00:14:33,471 真之の入学試験の成績は 14番であった。 95 00:14:33,471 --> 00:14:35,771 (教官)入れ! 96 00:14:41,212 --> 00:14:47,912 (教官)よいか? 世俗の垢を すっかり洗い落とせ。 97 00:14:49,954 --> 00:14:53,391 (ラッパの音) 98 00:14:53,391 --> 00:14:57,691 (教官)起きろ! 99 00:14:59,830 --> 00:15:04,235 入校生たちを当惑させたのは 洋服であった。 100 00:15:04,235 --> 00:15:07,138 洋服は みな はじめてで➡ 101 00:15:07,138 --> 00:15:10,474 なかには シャツのボタンを どう はめていいか わからず➡ 102 00:15:10,474 --> 00:15:14,874 顔を真っ赤にして 苦心している者もいた。 103 00:15:23,554 --> 00:15:26,290 (ラッパの音) 104 00:15:26,290 --> 00:15:28,626 (教官)着け! 105 00:15:28,626 --> 00:15:32,530 さらに 一同の驚異だったのは➡ 106 00:15:32,530 --> 00:15:37,334 昼食に ライスカレーが出たことであった。 107 00:15:37,334 --> 00:15:43,507 その名前さえ知らぬ者が ほとんどだった。 108 00:15:43,507 --> 00:15:47,978 それほど この当時の 日本のふつうの生活と➡ 109 00:15:47,978 --> 00:15:51,782 海軍兵学校の生活には 差があった。 110 00:15:51,782 --> 00:15:55,386 (英語の授業) 111 00:15:55,386 --> 00:16:00,091 いわば この築地の一郭 5万坪だけが➡ 112 00:16:00,091 --> 00:16:06,391 生活様式として 外国であったといえるであろう。 113 00:16:13,637 --> 00:16:17,908 この言葉を 築地の兵学校の 生徒の胸に刻みつけたのは➡ 114 00:16:17,908 --> 00:16:23,908 英国からきた お雇い教師 アーチボールド・ルシアス・ダグラス少佐であった。 115 00:16:26,517 --> 00:16:30,387 英国は その国土こそ小さいが➡ 116 00:16:30,387 --> 00:16:36,160 その強大な艦隊と商船団によって 世界を支配した。 117 00:16:36,160 --> 00:16:42,960 日本は 英国を範とせよ ダグラスは いったのだろう。 118 00:16:45,402 --> 00:16:52,276 (一同)1 2 3 4 1 2 3 4…。 119 00:16:52,276 --> 00:17:01,519 ♬~ 120 00:17:01,519 --> 00:17:08,092 よ~し 伊予水軍の陣太鼓じゃ! 121 00:17:08,092 --> 00:17:13,764 ヨイヨイ ヨイヤッサ ヨイヤッサ ヨイヤッサ! 122 00:17:13,764 --> 00:17:16,667 (一同)ヨイヨイ ヨイヤッサ! 123 00:17:16,667 --> 00:17:19,637 (広瀬武夫)1 2…。 何だ? 124 00:17:19,637 --> 00:17:23,440 1 2 3 4 1 2 3…。 125 00:17:23,440 --> 00:17:27,778 (一同)ヨイヨイ ヨイヤッサ ヨイヤッサ! 126 00:17:27,778 --> 00:17:30,681 抜かれとる! 抜かれとる! 127 00:17:30,681 --> 00:17:34,385 (一同)ヨイヤッサ ヨイヤッサ! 抜かれとる~! 128 00:17:34,385 --> 00:17:36,320 (一同)ヨイヨイ ヨイヤッサ! 129 00:17:36,320 --> 00:17:38,255 1 2 3 4…。 130 00:17:38,255 --> 00:17:44,061 (一同)ヨイヨイ ヨイヤッサ ヨイヤッサ ヨイヤッサ! 131 00:17:44,061 --> 00:17:48,032 ♬~ 132 00:17:48,032 --> 00:17:51,936 櫂上げ! 櫂立て~! 133 00:17:51,936 --> 00:17:57,174 (一同)オ~! 134 00:17:57,174 --> 00:17:59,743 何じゃ? あいつは 誰かい! 135 00:17:59,743 --> 00:18:06,617 (一同)ワッショイ! ワッショイ! ワッショイ!➡ 136 00:18:06,617 --> 00:18:11,355 せ~の よいしょ! 137 00:18:11,355 --> 00:18:15,355 ≪(広瀬)うお~っ! 138 00:18:19,096 --> 00:18:21,065 うお~っ! 139 00:18:21,065 --> 00:18:23,968 貴様 国は どこなん? 140 00:18:23,968 --> 00:18:27,838 伊予松山 伊予水軍の出です! 141 00:18:27,838 --> 00:18:32,676 かれは 真之よりも1年上の生徒で➡ 142 00:18:32,676 --> 00:18:36,080 広瀬武夫といった。 143 00:18:36,080 --> 00:18:39,850 真之は この人物と親しくなり➡ 144 00:18:39,850 --> 00:18:45,650 のちに ある時期には 下宿を共にするほどになった。 145 00:18:53,163 --> 00:18:55,099 (藤井)秋山が フランスに!? 146 00:18:55,099 --> 00:18:59,069 (井口)メッケル先生のドイツではなく フランスか。 147 00:18:59,069 --> 00:19:02,840 (長岡)ほうじゃ。 松山の殿様が➡ 148 00:19:02,840 --> 00:19:07,378 今度 パリのサンシール陸軍士官学校に 入学なさるそうじゃ。 149 00:19:07,378 --> 00:19:12,778 そのお供にと 秋山に 白羽の矢が立ったっちゅう話じゃ。 150 00:19:15,853 --> 00:19:20,691 (藤井)ドイツに負けたフランスに留学して 今更 何が得られるんや? 151 00:19:20,691 --> 00:19:22,626 (井口)このままいけば➡ 152 00:19:22,626 --> 00:19:26,864 俺たちは 陸軍の中枢に 椅子が用意されるというのに➡ 153 00:19:26,864 --> 00:19:31,368 秋山は 殿様のために フランスで野たれ死にか。 154 00:19:31,368 --> 00:19:34,868 (長岡) メッケル先生なら こう言うのう。 155 00:19:44,014 --> 00:19:46,514 よう。 おお。 156 00:19:50,154 --> 00:19:56,927 当時 日本陸軍のすべての体制が ドイツ式に転換しようとしており➡ 157 00:19:56,927 --> 00:19:59,663 陸軍の秀才のことごとくが➡ 158 00:19:59,663 --> 00:20:04,535 ドイツ陸軍に留学しようという 情勢下にある。 159 00:20:04,535 --> 00:20:09,373 そのときに ただ一人の フランス派になってしまえば➡ 160 00:20:09,373 --> 00:20:12,073 どうなるか…。 161 00:20:27,524 --> 00:20:30,824 (藤野 漸) ご足労をかけたのう。 162 00:20:35,199 --> 00:20:42,539 定謨様におかれては ご学業は 大いに進捗なされ➡ 163 00:20:42,539 --> 00:20:53,183 来年 サンシール陸軍士官学校に 晴れて ご入学の運びとなられた。 164 00:20:53,183 --> 00:20:59,556 信さん そこでじゃ 折り入って 頼みがある。 165 00:20:59,556 --> 00:21:01,492 ははっ。 166 00:21:01,492 --> 00:21:08,492 若殿様のおそばに ついてくれんか。 167 00:21:13,103 --> 00:21:16,403 どうじゃ? 168 00:21:23,781 --> 00:21:31,488 信さんは このままゆけば 必ずや 陸軍大将になり➡ 169 00:21:31,488 --> 00:21:35,859 この国の将来を背負う お人じゃ。 170 00:21:35,859 --> 00:21:41,031 そのことは よう分かっとる。 171 00:21:41,031 --> 00:21:45,903 若殿様のお供をして フランスなぞへ行けば➡ 172 00:21:45,903 --> 00:21:54,878 出世の道から遠くなることも 重々 分かっとる。 173 00:21:54,878 --> 00:21:59,878 そこをまげての頼みじゃ。 174 00:22:01,752 --> 00:22:08,892 ぜひとも 伏してお願いをする。 175 00:22:08,892 --> 00:22:12,663 藤野 頭を下げる。 176 00:22:12,663 --> 00:22:31,463 ♬~ 177 00:22:34,518 --> 00:22:38,188 そうよのう…。 178 00:22:38,188 --> 00:22:42,059 もう…➡ 179 00:22:42,059 --> 00:22:46,864 もう 松山藩じゃ 殿様じゃというとる➡ 180 00:22:46,864 --> 00:22:51,201 ご時世ではない。 181 00:22:51,201 --> 00:22:54,104 じゃがのう 信さん➡ 182 00:22:54,104 --> 00:23:00,544 定謨様は わしにとっては やはり 若殿様じゃ。 183 00:23:00,544 --> 00:23:05,215 掛けがえのないお方じゃ。 184 00:23:05,215 --> 00:23:13,090 この命に代えて お守りせねばならぬ。 185 00:23:13,090 --> 00:23:18,762 フフフフッ フフフフッ。 186 00:23:18,762 --> 00:23:28,238 この老骨で どれほど お役に立てるか 心もとないが➡ 187 00:23:28,238 --> 00:23:33,510 信さんに断られたら…➡ 188 00:23:33,510 --> 00:23:39,510 わしが行くしかあるまい。 189 00:23:43,187 --> 00:23:50,060 いや 多忙の折 わざわざ 呼び出して➡ 190 00:23:50,060 --> 00:23:54,060 すまなんだのう。 191 00:24:00,304 --> 00:24:02,904 藤野様。 192 00:24:06,109 --> 00:24:12,509 身に余るお勤め さぞや松山の父も喜ぶと存じます。 193 00:24:16,753 --> 00:24:23,053 定謨様のお供は この秋山に お任せください。 194 00:24:29,199 --> 00:24:36,006 いった瞬間 陸軍における栄達をあきらめた。 195 00:24:36,006 --> 00:24:40,143 明治20年7月25日➡ 196 00:24:40,143 --> 00:24:45,015 フランスへ むかうべく 横浜を出帆した。 197 00:24:45,015 --> 00:24:49,786 頭に気をつけるんじゃ! 要注意。 198 00:24:49,786 --> 00:24:52,155 真之らの在学中➡ 199 00:24:52,155 --> 00:24:56,026 海軍兵学校が 移転することになった。 200 00:24:56,026 --> 00:25:00,831 広島県江田島にゆくという。 201 00:25:00,831 --> 00:25:06,637 真之の入校3年目のとしである。 202 00:25:06,637 --> 00:25:10,540 真之にとって 多少 ありがたかったのは➡ 203 00:25:10,540 --> 00:25:15,712 故郷の松山が 近くなったことである。 204 00:25:15,712 --> 00:25:21,551 ♬~ 205 00:25:21,551 --> 00:25:26,690 この夏 移転早々 休暇があった。 206 00:25:26,690 --> 00:25:29,192 (園田)えらいこっちゃ!➡ 207 00:25:29,192 --> 00:25:33,830 あの淳五郎が 帰ってきよるぞなもし!➡ 208 00:25:33,830 --> 00:25:37,467 うん? うわっ! すんません! 209 00:25:37,467 --> 00:25:40,167 バカもん! 210 00:25:53,016 --> 00:25:59,523 お前 本当に あの花火の淳五郎か? 211 00:25:59,523 --> 00:26:04,161 その節は ご迷惑をおかけしました。 212 00:26:04,161 --> 00:26:06,830 あっ はい。 こちらこそ。 213 00:26:06,830 --> 00:26:11,830 いや~ ご立派になられて…。 214 00:26:13,704 --> 00:26:17,174 お帰りなさい! 215 00:26:17,174 --> 00:26:21,874 おい 秋山の淳五郎さんが お帰りになられたぞな。 216 00:26:23,847 --> 00:26:27,751 秋山さんとこの淳さんが 帰っているという うわさは➡ 217 00:26:27,751 --> 00:26:31,722 少年たちに たちまち ひろがった。 218 00:26:31,722 --> 00:26:36,293 少年たちは英雄がすきで 真之のうわさを➡ 219 00:26:36,293 --> 00:26:41,698 あたかも いにしえの英雄の 逸話でも きくようにきいた。 220 00:26:41,698 --> 00:27:01,818 ♬~ 221 00:27:01,818 --> 00:27:11,161 (久敬)ヨ~イ ヨ~イ ヨ~イヤッサ ヨ~イヤッサ ヨ~イ ヨ~イ ヨ~イヤッサ。 222 00:27:11,161 --> 00:27:19,202 ヨイヨイ ヨイヤッサ…。 (子供たち)ヨイヤッサ ヨイヤッサ…。 223 00:27:19,202 --> 00:27:22,005 (貞)どうして 2人とも 声をかけなんだじゃろか。 224 00:27:22,005 --> 00:27:25,342 (久敬)往来の ど真ん中で 親子ご対面なんぞ➡ 225 00:27:25,342 --> 00:27:28,845 てれくさいがな。 のう 淳。 はい。 226 00:27:28,845 --> 00:27:33,683 (久敬)淳 お前は 何で 海軍を選んだんじゃ? 227 00:27:33,683 --> 00:27:39,122 アシん中には 伊予水軍の血ぃが 流れとりますけん。 228 00:27:39,122 --> 00:27:45,122 ほうか… ほうか 水軍の血ぃか。 229 00:27:46,797 --> 00:27:50,667 兵学校のカッター競漕じゃ 1等 取りました。 230 00:27:50,667 --> 00:27:53,670 伊予水軍の口太鼓のおかげです。 231 00:27:53,670 --> 00:27:55,806 (貞)淳! 232 00:27:55,806 --> 00:27:59,676 もう 喧嘩は しとらんじゃろな? 233 00:27:59,676 --> 00:28:04,981 これから アシがするのは 国相手の喧嘩じゃ。 234 00:28:04,981 --> 00:28:09,319 力は とっとかんならん。 うん。 よう言うた。 235 00:28:09,319 --> 00:28:13,619 それだけが 心配じゃったぞね。 236 00:28:19,830 --> 00:28:22,499 みんなに 変わりはないかのう。 237 00:28:22,499 --> 00:28:25,402 ノボさんとこも 元気にしとるじゃろか。 238 00:28:25,402 --> 00:28:29,673 リーさんは どうしとりますか? だんなは 東京じゃそうじゃが➡ 239 00:28:29,673 --> 00:28:33,944 リーさんも 向こうにおられるんじゃろか。 240 00:28:33,944 --> 00:28:40,444 それがのう…。 どうしたんじゃ? 241 00:28:42,118 --> 00:28:49,118 去年 離縁して 今は また お母様と暮らしとられる。 242 00:28:50,827 --> 00:28:53,830 結婚しても 一人こっちに残って➡ 243 00:28:53,830 --> 00:28:58,668 向こうのご両親のお世話を しとられたんじゃが…。 244 00:28:58,668 --> 00:29:06,142 結局は 東京のだんな様とは 一緒に暮らさんうちに。 245 00:29:06,142 --> 00:29:11,014 (久敬)2年と もたんかったかのう。 246 00:29:11,014 --> 00:29:17,754 ほうですか。 じゃが 何で そげなことに? 247 00:29:17,754 --> 00:29:26,830 分からん。 軍人さんのおうちとは 気性が合わんかったんかのう。 248 00:29:26,830 --> 00:29:55,992 ♬~ 249 00:29:55,992 --> 00:29:59,462 (八重)よう来ておくれたなあ。 250 00:29:59,462 --> 00:30:01,398 リーさんは スイカが好きじゃったけん➡ 251 00:30:01,398 --> 00:30:04,801 食べてもらお 思いまして。 だんだん。 252 00:30:04,801 --> 00:30:08,972 律も すぐ戻ると思いますけん どうぞ 上がってつかあさい。 253 00:30:08,972 --> 00:30:12,809 船の時間がありますけん ここで失礼いたします。 254 00:30:12,809 --> 00:30:15,712 今 お茶でも入れますけん。 255 00:30:15,712 --> 00:30:17,681 だんだん。 256 00:30:17,681 --> 00:30:29,159 ♬~ 257 00:30:29,159 --> 00:30:34,831 本当に ご立派になられて。 258 00:30:34,831 --> 00:30:39,703 子供のころは 迷惑ばかりかけて。 とんでもない。 259 00:30:39,703 --> 00:30:45,542 淳さんのおかげで ノボも たくましゅうなりました。 260 00:30:45,542 --> 00:30:51,848 東京で ノボは 元気にしておりますじゃろか? 261 00:30:51,848 --> 00:30:57,520 実は アシが予備門をやめてから 会うとりません。 262 00:30:57,520 --> 00:31:00,857 もう1年になります。 263 00:31:00,857 --> 00:31:05,362 けど ノボさんのうわさは 風の便りに聞いとります。 264 00:31:05,362 --> 00:31:08,398 常盤会の宿舎で 文学好きの者を集めて➡ 265 00:31:08,398 --> 00:31:11,234 威勢よくやっとるそうです。 266 00:31:11,234 --> 00:31:18,234 そうそう この間 短冊を送ってくれたんぞな。 267 00:31:27,550 --> 00:31:31,421 ノボさんの手じゃ。 268 00:31:31,421 --> 00:31:42,499 「茶の花や 利休の像を 床の上」。 269 00:31:42,499 --> 00:31:50,173 「梅雨晴れや ところどころに蟻の道」。 270 00:31:50,173 --> 00:31:54,044 太政大臣になって帰ってくる なんぞと言うておったのに➡ 271 00:31:54,044 --> 00:31:57,047 俳句に夢中のようで。 272 00:31:57,047 --> 00:32:01,047 ノボさんは やっぱり 俳句の道に…。 273 00:32:03,186 --> 00:32:07,057 リーさんは 元気にしておりますか? 274 00:32:07,057 --> 00:32:12,195 はい。 裁縫が とても上手になって。 275 00:32:12,195 --> 00:32:16,032 この着物も 律が縫うてくれたんぞなもし。 276 00:32:16,032 --> 00:32:18,068 ほうですか。 277 00:32:18,068 --> 00:32:22,806 淳さんの顔 見たら 律も えろう喜びます。 278 00:32:22,806 --> 00:32:26,806 もう帰ってくるはずなんじゃけど。 279 00:32:38,288 --> 00:32:48,288 (ヒグラシの鳴き声) 280 00:32:53,670 --> 00:32:56,172 (律)ただいま。 281 00:32:56,172 --> 00:33:02,512 一足違いじゃ。 今まで 淳さんがおいでたんよ。 282 00:33:02,512 --> 00:33:05,415 三津浜から広島へ お帰りになる言うて。 283 00:33:05,415 --> 00:33:10,415 すぐ追いかけたら 間に合うんじゃなかろうか。 284 00:33:25,568 --> 00:33:27,570 すぐ戻るけん! 285 00:33:27,570 --> 00:34:24,727 ♬~ 286 00:34:24,727 --> 00:34:27,864 リーさん! 287 00:34:27,864 --> 00:34:36,673 ♬~ 288 00:34:36,673 --> 00:34:41,373 ちいとも変わらんなあ リーさんは。 289 00:34:43,146 --> 00:34:47,817 ウチは 随分と変わってしもた。 290 00:34:47,817 --> 00:34:55,158 淳さんも。 これか? 291 00:34:55,158 --> 00:35:02,832 真っ白で ウチには まぶしい。 何 言うとる。 292 00:35:02,832 --> 00:35:07,704 もう 喧嘩なんか しとらんじゃろね? 293 00:35:07,704 --> 00:35:15,178 しとるわけないじゃろ。 アシは 海軍兵学校の生徒ぞな。 294 00:35:15,178 --> 00:35:24,478 (笑い声) 295 00:35:27,190 --> 00:35:31,060 喧嘩ばかりで 我慢が足らなんだんは➡ 296 00:35:31,060 --> 00:35:35,560 本当は ウチの方じゃけん。 297 00:36:00,490 --> 00:36:05,161 ウチ みんなに ないしょで➡ 298 00:36:05,161 --> 00:36:09,499 もう一度だけ 東京に行ったことがあるんよ。 299 00:36:09,499 --> 00:36:11,499 え? 300 00:36:14,170 --> 00:36:20,043 嫁いでも 主人と一緒に 暮らしたことなかったけん➡ 301 00:36:20,043 --> 00:36:25,782 思い切って 行ってしもたんじゃ。 302 00:36:25,782 --> 00:36:32,121 そしたら えらい怒られた。 303 00:36:32,121 --> 00:36:39,121 嫁は うちにおって しっかり 親の面倒見んで どうするいうて。 304 00:36:41,798 --> 00:36:45,468 ウチ 負けずに言い返したった。 305 00:36:45,468 --> 00:36:51,140 「ウチは 恒吉家と 一緒になったんじゃないけん。➡ 306 00:36:51,140 --> 00:36:56,140 忠道さんと一緒になったんじゃ」 いうて。 307 00:37:01,150 --> 00:37:04,053 そしたら…➡ 308 00:37:04,053 --> 00:37:11,253 「そんな勝手なことをする嫁は いらん」言われてしもた。 309 00:37:20,837 --> 00:37:25,708 ♬~ 310 00:37:25,708 --> 00:37:34,808 淳さん 昔 よう言うとったじゃろ。 311 00:37:37,787 --> 00:37:45,661 「一身独立せないかん」いうて。 ああ。 312 00:37:45,661 --> 00:37:56,639 ウチも 松山を出て 家族作って…➡ 313 00:37:56,639 --> 00:38:01,639 一身独立しよう 思たんじゃ。 314 00:38:08,651 --> 00:38:15,151 相変わらず やんちゃで 気が強いのう。 315 00:38:16,826 --> 00:38:25,168 じゃが そこが リーさんのええとこじゃ。 316 00:38:25,168 --> 00:38:32,168 おなごでも 必ず 一身独立できる。 317 00:38:34,610 --> 00:38:38,781 アシは そう思うがのう。 318 00:38:38,781 --> 00:38:42,652 絶対に そう思う。 319 00:38:42,652 --> 00:39:02,805 ♬~ 320 00:39:02,805 --> 00:39:08,678 また遊びに来る。 アシは すぐそこにおるけん。 321 00:39:08,678 --> 00:39:19,155 ♬~ 322 00:39:19,155 --> 00:39:26,455 淳さ~ん! ええ海軍さんに なっておくれんかの~! 323 00:39:28,164 --> 00:39:32,164 リーさんも 元気でな! 324 00:39:35,438 --> 00:39:43,179 淳さんも。 お元気で! 325 00:39:43,179 --> 00:40:02,665 ♬~ 326 00:40:02,665 --> 00:40:07,803 「淳 元気でやっておるか?➡ 327 00:40:07,803 --> 00:40:17,513 フランスに来て1年。 金を切り詰め やっと 自分の馬が買えた。➡ 328 00:40:17,513 --> 00:40:22,818 馬丁も雇わねばならんし 飼い葉代も馬鹿にはならんが➡ 329 00:40:22,818 --> 00:40:28,491 貧乏神は 生来 この好古の友じゃ。➡ 330 00:40:28,491 --> 00:40:33,362 大した苦にもならず 大威張りで暮らしとる。➡ 331 00:40:33,362 --> 00:40:37,833 心配は無用じゃ。➡ 332 00:40:37,833 --> 00:40:42,171 先日 フランス語しか分からんかった アシの愛馬が➡ 333 00:40:42,171 --> 00:40:44,840 伊予弁も 分かるようになってのう。➡ 334 00:40:44,840 --> 00:40:51,180 この時ほど うれしかったことはない。➡ 335 00:40:51,180 --> 00:40:58,854 淳よ 実は ドイツの馬術より フランスの方が優れておる。➡ 336 00:40:58,854 --> 00:41:01,524 硬直したドイツの乗馬より➡ 337 00:41:01,524 --> 00:41:04,860 馬のリズムに合わせて乗る フランス式の方が➡ 338 00:41:04,860 --> 00:41:08,364 長時間の乗馬に 耐えられるんじゃ。➡ 339 00:41:08,364 --> 00:41:13,536 このフランスで 愛馬を乗りこなす うちに 分かったんじゃ。➡ 340 00:41:13,536 --> 00:41:18,207 今まで フランスを ドイツの下に 置いとった 我が陸軍の偏見が➡ 341 00:41:18,207 --> 00:41:22,545 払拭された思いじゃ。➡ 342 00:41:22,545 --> 00:41:27,216 アシは 日本に帰ったら フランスの乗馬術を取り入れ➡ 343 00:41:27,216 --> 00:41:32,916 日本の騎兵を 世界に 負けないものにするつもりじゃ」。 344 00:41:34,857 --> 00:41:40,496 明治23年1月 パリにある好古は➡ 345 00:41:40,496 --> 00:41:45,167 本国から あたらしい命令を うけとった。 346 00:41:45,167 --> 00:41:50,039 官費留学に きりかえるということである。 347 00:41:50,039 --> 00:41:54,176 要するに 日本陸軍は➡ 348 00:41:54,176 --> 00:41:57,847 この 満30になったかならずの 若い大尉に➡ 349 00:41:57,847 --> 00:42:00,750 騎兵建設についての 調べのすべてを➡ 350 00:42:00,750 --> 00:42:03,750 依頼したようなものであった。 351 00:42:05,521 --> 00:42:11,861 秋山好古は 一人で すべてを ひきうけた。 352 00:42:11,861 --> 00:42:14,764 ♬~ 353 00:42:14,764 --> 00:42:20,536 この分野だけでなく 他の分野でも すべて そういう調子であり➡ 354 00:42:20,536 --> 00:42:25,708 明治初年から中期にかけての 小所帯の日本の おもしろさは➡ 355 00:42:25,708 --> 00:42:29,708 このあたりにあるであろう。 356 00:42:34,483 --> 00:42:37,086 早う その汚いもん 隠さんかい! 357 00:42:37,086 --> 00:42:41,357 「短気は損気」「急がば回れ」。 358 00:42:41,357 --> 00:42:44,660 (菊池)ノボさん? 359 00:42:44,660 --> 00:42:50,466 (東郷平八郎)艦を操り 戦をすっとは 人でごわす。 360 00:42:50,466 --> 00:44:25,766 ♬~