1 00:00:04,921 --> 00:00:08,692 やっぱり 最後に スペイン階段の上から➡ 2 00:00:08,692 --> 00:00:12,192 ローマの夜景を眺めてみよう。 3 00:00:14,598 --> 00:00:20,837 永遠の都 ローマ。 歌があり 芸術があり➡ 4 00:00:20,837 --> 00:00:26,237 すてきな心を持った人たちで いっぱいだ。 5 00:00:35,051 --> 00:00:44,051 (映写機の音) 6 00:00:50,867 --> 00:00:54,204 ♬~ 7 00:00:54,204 --> 00:01:01,077 四国は 伊予松山に 3人の男がいた。 8 00:01:01,077 --> 00:01:06,216 この ふるい城下町にうまれた 秋山真之は➡ 9 00:01:06,216 --> 00:01:08,718 日露戦争がおこるにあたって➡ 10 00:01:08,718 --> 00:01:10,654 勝利は 不可能に ちかいといわれた➡ 11 00:01:10,654 --> 00:01:14,524 バルチック艦隊を ほろぼすにいたる 作戦をたて➡ 12 00:01:14,524 --> 00:01:18,428 それを実施した。 13 00:01:18,428 --> 00:01:25,168 その兄の秋山好古は 日本の騎兵を育成し➡ 14 00:01:25,168 --> 00:01:29,105 史上最強の騎兵といわれる コサック師団をやぶるという➡ 15 00:01:29,105 --> 00:01:32,843 奇蹟を遂げた。 16 00:01:32,843 --> 00:01:36,713 もうひとりは 俳句 短歌といった➡ 17 00:01:36,713 --> 00:01:39,716 日本のふるい短詩型に 新風を入れて➡ 18 00:01:39,716 --> 00:01:45,716 その中興の祖となった 俳人 正岡子規である。 19 00:01:47,390 --> 00:01:52,195 かれらは 明治という時代人の体質で➡ 20 00:01:52,195 --> 00:01:56,066 前をのみ見つめながら あるく。 21 00:01:56,066 --> 00:02:00,537 のぼってゆく坂の上の青い天に➡ 22 00:02:00,537 --> 00:02:04,407 もし一朶の白い雲が かがやいているとすれば➡ 23 00:02:04,407 --> 00:02:10,547 それのみをみつめて 坂をのぼってゆくであろう。 24 00:02:10,547 --> 00:02:21,247 ♬~ 25 00:02:24,728 --> 00:02:27,397 東京へ移ってから➡ 26 00:02:27,397 --> 00:02:32,897 真之は 一度 子規を根岸の家へ 見舞に行った。 27 00:02:34,671 --> 00:02:37,574 (子規)すまんな 淳さん。 28 00:02:37,574 --> 00:02:41,444 この脚が 水を持ったように 膨れ上がって➡ 29 00:02:41,444 --> 00:02:45,444 1分も5厘も動かんのじゃ。 30 00:02:51,855 --> 00:02:59,729 (真之)ノボさん アシの顔は 見えるんか? 31 00:02:59,729 --> 00:03:07,029 ああ 見える。 男前じゃ。 32 00:03:12,175 --> 00:03:17,175 さあ どんどん食うとくれ。 33 00:03:25,755 --> 00:03:29,225 相変わらず 食いっ気は ガイじゃのう。 34 00:03:29,225 --> 00:03:33,096 (律)ここ4~5日 えろう苦しんで➡ 35 00:03:33,096 --> 00:03:37,834 食事も のどを… 通らんかったんじゃけど➡ 36 00:03:37,834 --> 00:03:42,834 今朝 奇跡のように 痛みが のうなったようで。 37 00:03:44,507 --> 00:03:52,849 アシは 今朝ほど 安らかな頭をもって➡ 38 00:03:52,849 --> 00:04:02,192 静かに この庭を眺めたことは 病気になって以来 ないぞな。 39 00:04:02,192 --> 00:04:04,527 ほうか。 40 00:04:04,527 --> 00:04:10,527 (せきこみ) おお すまん すまん。 41 00:04:17,040 --> 00:04:19,876 あの南向こうの家にはの➡ 42 00:04:19,876 --> 00:04:21,911 尋常2年くらいの 男の子がおってな➡ 43 00:04:21,911 --> 00:04:24,047 本の復習を始めたんじゃ。 44 00:04:24,047 --> 00:04:29,853 やがて 納豆売りが来たけん 買うてやりとうなった。 45 00:04:29,853 --> 00:04:34,691 ヘチマの葉が 秋風に ひらひらと動いて➡ 46 00:04:34,691 --> 00:04:39,496 秋の涼しさが 肌にしみた。 47 00:04:39,496 --> 00:04:46,369 それぞれに 一句 無性に作りとうなった。 48 00:04:46,369 --> 00:04:49,172 取りとめのない日常じゃが➡ 49 00:04:49,172 --> 00:04:58,681 その中に 何か 大切なもんが 潜んどるような気がしてのう。 50 00:04:58,681 --> 00:05:07,681 どうやら アシにとって 世界とは 深いもののようじゃ。 51 00:05:11,861 --> 00:05:17,734 アシは 「病牀六尺」にある言葉が 好きじゃ。 52 00:05:17,734 --> 00:05:25,775 「草花の一枝を 枕元に置いて それを 正直に写生していると➡ 53 00:05:25,775 --> 00:05:32,682 造化の秘密が 段々 分かってくるような気がする」。 54 00:05:32,682 --> 00:05:36,953 あ… ああ…。 55 00:05:36,953 --> 00:05:41,658 (せきこみ) 56 00:05:41,658 --> 00:05:45,061 淳さんにとって…。 57 00:05:45,061 --> 00:05:48,731 淳さんにとって 世界は広い。 58 00:05:48,731 --> 00:05:55,531 アシには… 深いんじゃ。 59 00:05:57,740 --> 00:06:01,940 ロシアとは 戦をするんか? 60 00:06:06,182 --> 00:06:13,323 すれば 日本人の1割は 死ぬじゃろな。 61 00:06:13,323 --> 00:06:17,523 そんなに死ぬんか。 62 00:06:19,529 --> 00:06:25,201 軍人が 戦場で散らす命と…➡ 63 00:06:25,201 --> 00:06:31,307 こんな狭い病床で 散っていく命は➡ 64 00:06:31,307 --> 00:06:36,007 どう違うんじゃろうな? 65 00:06:39,082 --> 00:06:42,018 ちぃとも違わんじゃろう。 66 00:06:42,018 --> 00:06:50,160 違わんか。 どっちも ちっぽけな命じゃからのう。 67 00:06:50,160 --> 00:07:02,839 ♬~ 68 00:07:02,839 --> 00:07:07,510 どっちも掛けがえのない命じゃ。 69 00:07:07,510 --> 00:07:29,766 ♬~ 70 00:07:29,766 --> 00:07:35,572 淳さん 坊さんの件は どうなった? 71 00:07:35,572 --> 00:07:39,142 目の前で 部下を亡くして➡ 72 00:07:39,142 --> 00:07:45,582 「自分の責任じゃ 坊主になりたい」 言うとったじゃろ。 (せきこみ) 73 00:07:45,582 --> 00:07:48,582 答えは出たか? 74 00:07:51,788 --> 00:07:54,357 出ん。 75 00:07:54,357 --> 00:08:00,997 ほうか。 アシは とても 坊主にはなれんのう。 76 00:08:00,997 --> 00:08:03,297 (せきこみ) 77 00:08:06,569 --> 00:08:10,573 病床で 痛うて たまらん時は➡ 78 00:08:10,573 --> 00:08:16,346 一刻も早う 死なせておくれと叫ぶ。 79 00:08:16,346 --> 00:08:21,851 じゃが 痛みが晴れると とたんに 頭がさえ➡ 80 00:08:21,851 --> 00:08:27,290 写実の利いた ええ句が 次から次へと浮かんできて➡ 81 00:08:27,290 --> 00:08:30,660 もっともっと生きたいと願う。 82 00:08:30,660 --> 00:08:35,860 アシという人間は とことん現金な生き物じゃ。 83 00:08:49,178 --> 00:08:59,088 このままでは 死にきれんぞな…。 84 00:08:59,088 --> 00:09:03,026 アシの目指しとる 俳句詠み 正岡子規は➡ 85 00:09:03,026 --> 00:09:07,163 こんなもんでは ないんじゃ。 86 00:09:07,163 --> 00:09:10,363 当たり前じゃ。 87 00:09:12,669 --> 00:09:14,604 淳さんは どうじゃ? 88 00:09:14,604 --> 00:09:20,543 淳さんは ちっぽけな人間のまま 満足しとらんじゃろうな? 89 00:09:20,543 --> 00:09:29,719 アホ言うな。 アシじゃって いつか もっと でこうなって➡ 90 00:09:29,719 --> 00:09:36,159 ノボさんを追い抜いちゃるぞね。 おう。 91 00:09:36,159 --> 00:09:43,800 軍人を続けるか 坊さんになるか。 92 00:09:43,800 --> 00:09:49,305 淳さんは ちっぽけな人間では 耐えきれんほどの課題 背負うて➡ 93 00:09:49,305 --> 00:09:52,805 しっかり立っとるけんのう。 94 00:09:57,046 --> 00:10:06,723 淳さんは その答えが見つかるまで 死にきれんぞな。 95 00:10:06,723 --> 00:10:12,829 生きて… 生きて…➡ 96 00:10:12,829 --> 00:10:17,266 生き抜いておくれ…。 97 00:10:17,266 --> 00:10:19,666 ああ。 98 00:10:24,040 --> 00:10:32,181 アシも死なんぞ。 痛うて 痛うて 畳を のたうち回っても➡ 99 00:10:32,181 --> 00:10:38,054 アシは 俳句を詠む。 100 00:10:38,054 --> 00:10:45,154 まだまだ ええ句が 浮かんできよるんじゃ。 101 00:10:49,198 --> 00:10:58,875 (ヒグラシの鳴き声) 102 00:10:58,875 --> 00:11:15,224 ♬~ 103 00:11:15,224 --> 00:11:20,424 ウチは いかん妹なんじゃ。 104 00:11:23,900 --> 00:11:29,700 「兄さん もう死んでもええよ」。 105 00:11:31,340 --> 00:11:37,140 ウチ 時々 心の中で そう つぶやくんじゃ。 106 00:11:41,684 --> 00:11:45,084 もう 十分じゃ。 107 00:11:47,557 --> 00:11:52,357 もう 十分 苦しんだんじゃけん。 108 00:11:57,166 --> 00:12:01,737 兄さんの人生は 短うても➡ 109 00:12:01,737 --> 00:12:07,210 とてつもなく 濃い人生じゃったけん。 110 00:12:07,210 --> 00:12:12,081 もう 楽になってもええけん。 111 00:12:12,081 --> 00:12:15,181 じゃが…。 112 00:12:18,221 --> 00:12:26,521 兄さんは… どんなに苦しゅうても 生きようとするんじゃ。 113 00:12:28,231 --> 00:12:33,669 ウチが作った御飯を 残さず食べるんじゃ。 114 00:12:33,669 --> 00:12:39,175 草花帖は 絵で いっぱいに なっとるんじゃ。 115 00:12:39,175 --> 00:12:44,046 兄さんは どんどん 俳句を詠むんじゃ。 116 00:12:44,046 --> 00:13:11,407 ♬~ 117 00:13:11,407 --> 00:13:15,307 (ヒグラシの鳴き声) 118 00:13:20,550 --> 00:13:27,223 その日 真之は 横須賀に出張中であった。 119 00:13:27,223 --> 00:13:32,323 (カラスの鳴き声) 120 00:13:43,706 --> 00:13:49,178 (せきこみ) 121 00:13:49,178 --> 00:13:51,847 子規は 朝から具合悪く➡ 122 00:13:51,847 --> 00:13:54,183 医師が付きっきりであった。 123 00:13:54,183 --> 00:13:59,522 昼 虚子や碧梧桐を枕元に呼んだ。 124 00:13:59,522 --> 00:14:17,873 ♬~ 125 00:14:17,873 --> 00:14:21,173 (子規)「糸瓜咲て」。 126 00:14:25,214 --> 00:14:29,114 「痰のつまりし」。 127 00:14:35,825 --> 00:14:39,125 「仏かな」。 128 00:14:44,533 --> 00:14:48,633 (せきこみ) 129 00:14:53,175 --> 00:15:02,875 「痰一斗 糸瓜の水も 間にあはず」。 130 00:15:08,724 --> 00:15:17,500 「をとゝひの へちまの水も 取らざりき」。 131 00:15:17,500 --> 00:15:19,735 あ…。 132 00:15:19,735 --> 00:15:23,135 (荒い息) 133 00:15:36,185 --> 00:15:47,229 ♬~ 134 00:15:47,229 --> 00:15:52,101 (鳴き声) 135 00:15:52,101 --> 00:15:57,201 ♬~ 136 00:15:59,341 --> 00:16:03,079 (風鈴の音) 137 00:16:03,079 --> 00:16:07,049 (水滴の音) 138 00:16:07,049 --> 00:16:10,949 (風鈴の音) 139 00:16:29,872 --> 00:16:33,072 (八重)リーさん リーさん。 140 00:16:39,682 --> 00:16:41,982 清さん! 141 00:17:14,383 --> 00:17:16,683 兄さん。 142 00:17:21,023 --> 00:17:24,323 兄さん 兄さん。 143 00:17:28,697 --> 00:17:32,134 ねえ 兄さん どこにおるん? 144 00:17:32,134 --> 00:17:35,234 どこにおるんじゃ? 145 00:17:52,154 --> 00:17:56,854 兄さん 戻ってきてくだされ! 146 00:18:01,163 --> 00:18:04,863 そこに 死に神が おいでか? 147 00:18:08,037 --> 00:18:13,742 なら ウチのところに連れてきて。 148 00:18:13,742 --> 00:18:18,142 ウチが懲らしめてやるけん。 149 00:18:20,182 --> 00:18:25,855 兄さんは ウチが守ってあげるんじゃけん。 150 00:18:25,855 --> 00:18:28,455 (虚子)秉公と鼠骨に…。 151 00:18:33,662 --> 00:18:37,662 兄さん… 兄さん。 152 00:18:39,401 --> 00:18:43,101 誰が いじめとるん? 153 00:18:44,807 --> 00:18:49,678 兄さんを いじめる奴は ウチが許さんけん。 154 00:18:49,678 --> 00:18:52,081 ♬~ 155 00:18:52,081 --> 00:18:55,551 兄さん! 156 00:18:55,551 --> 00:19:05,194 ♬~ 157 00:19:05,194 --> 00:19:09,598 (泣き声) 158 00:19:09,598 --> 00:19:13,903 ♬~ 159 00:19:13,903 --> 00:19:20,142 (泣き声) 160 00:19:20,142 --> 00:19:24,680 ♬~ 161 00:19:24,680 --> 00:19:31,787 ノボよ よう頑張った。 162 00:19:31,787 --> 00:19:35,658 よう頑張ったのう。 163 00:19:35,658 --> 00:20:02,151 ♬~ 164 00:20:02,151 --> 00:20:10,859 「子規逝くや 十七日の 月明に」。 165 00:20:10,859 --> 00:20:19,568 ♬~ 166 00:20:19,568 --> 00:20:25,374 死んだか ついに。 長患いだったらしいな。 167 00:20:25,374 --> 00:20:28,677 惜しい文学者を亡くした。 168 00:20:28,677 --> 00:20:31,377 ちょっと ええですか。 169 00:21:33,842 --> 00:21:36,842 ありがとう。 170 00:22:15,217 --> 00:22:18,120 ♬~ 171 00:22:18,120 --> 00:22:24,359 子規は 開明期をむかえて 上昇しつつある国家を信じ➡ 172 00:22:24,359 --> 00:22:26,295 らくらくと肯定し➡ 173 00:22:26,295 --> 00:22:30,799 自分の壮気を そういう時代気分の上にのせ➡ 174 00:22:30,799 --> 00:22:34,670 時代の気分とともに 壮気が ふくらんでゆくことに➡ 175 00:22:34,670 --> 00:22:37,039 すこしの滑稽感も いだかず➡ 176 00:22:37,039 --> 00:22:40,909 その若い晩年において 死期を さとりつつも➡ 177 00:22:40,909 --> 00:22:44,313 その残された みじかい時間のあいだに➡ 178 00:22:44,313 --> 00:22:51,787 自分のやるべき仕事の量の 多さだけを苦にし 悲しんだ。 179 00:22:51,787 --> 00:23:03,532 ♬~ 180 00:23:03,532 --> 00:23:06,635 (鈴の音) 181 00:23:06,635 --> 00:23:19,214 ♬~ 182 00:23:19,214 --> 00:23:21,216 淳さんぞな。 183 00:23:21,216 --> 00:23:55,517 ♬~ 184 00:23:55,517 --> 00:23:59,154 これほど不幸な材料を 多く背負いこんだ男も➡ 185 00:23:59,154 --> 00:24:01,456 すくなかったろうが➡ 186 00:24:01,456 --> 00:24:05,027 しかし この男の楽天主義は➡ 187 00:24:05,027 --> 00:24:10,832 自分を不幸であるとは どうしても思えないようであった。 188 00:24:10,832 --> 00:24:15,437 明治という このオプティミズムの時代に➡ 189 00:24:15,437 --> 00:24:18,840 もっとも適合した資質を もっていたのは➡ 190 00:24:18,840 --> 00:24:22,444 子規であったかもしれない。 191 00:24:22,444 --> 00:25:03,144 ♬~ 192 00:25:44,793 --> 00:25:48,293 (鐘の音) 193 00:26:14,556 --> 00:26:17,256 (下駄の足音) 194 00:26:24,199 --> 00:26:29,971 その節は お忙しいところ ありがとうございました。 195 00:26:29,971 --> 00:26:32,741 もう落ち着かれましたか? 196 00:26:32,741 --> 00:26:38,146 毎日 墓前で泣いていたと 寺の住職から聞きました。 197 00:26:38,146 --> 00:26:45,446 もう四十九日も過ぎましたけん。 そうじゃのう。 198 00:26:50,492 --> 00:26:54,363 これから どうされるおつもりじゃ? 199 00:26:54,363 --> 00:26:57,332 松山には もう 家は ないけん➡ 200 00:26:57,332 --> 00:27:02,804 母と一緒に ずっと 根岸の家に おるつもりです。 201 00:27:02,804 --> 00:27:05,604 ほうですか。 202 00:27:09,578 --> 00:27:12,547 淳さん。 203 00:27:12,547 --> 00:27:18,186 ウチ 学校に入ろう 思うとります。 204 00:27:18,186 --> 00:27:20,886 学校? 205 00:27:24,693 --> 00:27:29,998 兄さんには 「女子にも学問が必要じゃ」と➡ 206 00:27:29,998 --> 00:27:34,803 口酸っぱく言われたもんじゃ。 207 00:27:34,803 --> 00:27:38,140 もっと早うから勉強しとったら➡ 208 00:27:38,140 --> 00:27:42,540 兄さんの よき話し相手にも なれたかもしれん。 209 00:27:49,484 --> 00:27:53,722 随筆でも さんざんに書かれとった。 210 00:27:53,722 --> 00:27:57,492 「理詰めの女」「冷淡」➡ 211 00:27:57,492 --> 00:27:59,828 「かんしゃく持ち」。 ハハハハッ。 212 00:27:59,828 --> 00:28:04,828 泣きとうなったもんじゃ。 そこまで書くかのう。 213 00:28:08,503 --> 00:28:17,846 けど ウチが使いで遅うなると 心配で たまらんかったようじゃ。 214 00:28:17,846 --> 00:28:22,846 「いもうとの 帰り遅さよ 五日月」。 215 00:28:28,490 --> 00:28:31,793 もう一つ。 216 00:28:31,793 --> 00:28:37,666 「母と二人 いもうとを待つ 夜寒かな」。 217 00:28:37,666 --> 00:28:43,405 ♬~ 218 00:28:43,405 --> 00:28:46,408 ウチの宝物じゃ。 219 00:28:46,408 --> 00:28:56,818 ♬~ 220 00:28:56,818 --> 00:29:03,518 兄さんが死んで ようよう 肩の荷が下りました。 221 00:29:06,495 --> 00:29:09,495 清々しとる。 222 00:29:13,134 --> 00:29:16,234 淳さん。 223 00:29:18,507 --> 00:29:23,178 ウチ これからは➡ 224 00:29:23,178 --> 00:29:27,649 自分のために生きよう 思うとります。 225 00:29:27,649 --> 00:29:30,185 そうじゃな。 226 00:29:30,185 --> 00:29:34,185 ノボさんも それが一番ええと 思うてくれるはずじゃ。 227 00:29:36,358 --> 00:29:40,061 そうじゃろうか。 そうじゃ。 228 00:29:40,061 --> 00:29:43,961 アシも賛成じゃ。 229 00:29:46,001 --> 00:29:49,471 リーさんは偉いのう。 230 00:29:49,471 --> 00:29:59,071 ♬~ 231 00:30:01,416 --> 00:30:06,354 (せみの鳴き声) 232 00:30:06,354 --> 00:30:11,826 乃木希典中将は 2年前から陸軍を休職し➡ 233 00:30:11,826 --> 00:30:17,966 那須野で 妻 静子と共に 農夫の生活を送っていた。 234 00:30:17,966 --> 00:30:22,137 その乃木を 旧友の児玉源太郎中将が➡ 235 00:30:22,137 --> 00:30:24,539 激務を縫って 訪れた。 236 00:30:24,539 --> 00:30:29,110 (乃木)「なすこともなくて➡ 237 00:30:29,110 --> 00:30:33,815 那須野にすむ 吾は➡ 238 00:30:33,815 --> 00:30:43,415 なす 唐なすを食うて 屁をこく」。 239 00:30:47,295 --> 00:30:49,898 (笑い声) 240 00:30:49,898 --> 00:30:54,169 「自分の生涯は 山田の案山子である」と➡ 241 00:30:54,169 --> 00:30:58,740 しばしば この時期の 乃木希典は洩らしている。 242 00:30:58,740 --> 00:31:04,940 (児玉)乃木閣下 残念じゃが もう 屁ばかり こいてもおられんぞ。 243 00:31:08,717 --> 00:31:12,217 ロシアとの戦が近づいちょる。 244 00:31:21,296 --> 00:31:24,733 総理大臣の桂は ロシアと本気で やる気じゃ。 245 00:31:24,733 --> 00:31:29,137 それも この1~2年のうちにじゃ。➡ 246 00:31:29,137 --> 00:31:33,775 わしは 内務大臣として 戦費調達を仰せつかった。➡ 247 00:31:33,775 --> 00:31:35,875 これが難題じゃ。 248 00:31:44,452 --> 00:31:47,288 おいおい! そんなことしてもろたら 困る。 249 00:31:47,288 --> 00:31:49,588 さあ みんな 立って。 250 00:31:53,094 --> 00:31:57,932 総代の長谷川祖吉でございます。 251 00:31:57,932 --> 00:32:02,871 この村でも 今年 帝国軍人になる者が➡ 252 00:32:02,871 --> 00:32:08,543 2人おります。 ぶしつけとは存じましたが➡ 253 00:32:08,543 --> 00:32:15,150 高名な児玉閣下に ぜひ 一言 賜りたく➡ 254 00:32:15,150 --> 00:32:17,886 お伺いいたしました。 255 00:32:17,886 --> 00:32:21,386 そうか。 どこに おる? 256 00:32:23,625 --> 00:32:35,025 狩野村字石林7869番 大柴智太郎の 次男 隆二であります。 257 00:32:37,639 --> 00:32:45,180 同じく 8976番 菅野末吉の四男 彦造であります。 258 00:32:45,180 --> 00:32:49,951 ご苦労。 立派に務めを 果たされんことを祈る。 259 00:32:49,951 --> 00:32:51,986 (2人)はっ! 260 00:32:51,986 --> 00:32:54,756 そう 堅くならんでもええ。 さあ 上がってこい。 261 00:32:54,756 --> 00:32:56,756 一緒に 酒でもやろう。 262 00:33:00,228 --> 00:33:05,767 隆二 彦造 かまわん。 政吉。 263 00:33:05,767 --> 00:33:09,003 (政吉)はい。 さあさあ こっちさ こっちさ。 264 00:33:09,003 --> 00:33:13,808 われわれが 明治という世の中を ふりかえるとき➡ 265 00:33:13,808 --> 00:33:16,411 宿命的な暗さが つきまとう。 266 00:33:16,411 --> 00:33:21,249 貧困 つまり 国民所得のおどろくべき低さが➡ 267 00:33:21,249 --> 00:33:24,649 それに原因している。 268 00:33:26,721 --> 00:33:29,758 (政吉)隆二 じい様の具合は どうだ? 269 00:33:29,758 --> 00:33:33,027 はい 閣下のお薬のおかげで➡ 270 00:33:33,027 --> 00:33:36,531 草むしりもできるほど よくなりました。 271 00:33:36,531 --> 00:33:38,466 (乃木)そうか。 272 00:33:38,466 --> 00:33:40,468 (政吉)じい様は おめえを かわいがってたから➡ 273 00:33:40,468 --> 00:33:43,605 おめえが 兵に出て がっくりしなきゃええがなあ。 274 00:33:43,605 --> 00:33:48,443 はい。 彦造。 姉様は 無事 足利さ着いたか? 275 00:33:48,443 --> 00:33:52,313 はっ! 先日 葉書が届きました。 276 00:33:52,313 --> 00:33:56,184 紡績工場の人たちが 皆 親切にしてくれてるみてえで➡ 277 00:33:56,184 --> 00:33:58,119 安心いたしました。 278 00:33:58,119 --> 00:34:01,055 世話になった姉様じゃ。 279 00:34:01,055 --> 00:34:05,426 兵に行っても 手紙 出してやれよ。 280 00:34:05,426 --> 00:34:07,426 はっ! 281 00:34:09,164 --> 00:34:13,164 さあ もう この辺で。 はい。 282 00:34:23,745 --> 00:34:30,745 真之は 過労が重なり 胃腸を病んで入院していた。 283 00:34:33,354 --> 00:34:36,925 (多美)こんなカビ臭い本ばかり 病室に持ち込んで➡ 284 00:34:36,925 --> 00:34:41,095 体に障らないかしら? 兵学が大道楽といっても➡ 285 00:34:41,095 --> 00:34:44,495 胃腸をこわしてまで やらなくてもね。 286 00:34:46,835 --> 00:34:50,638 淳さんも こういう時 奥方様が いらっしゃれば。 287 00:34:50,638 --> 00:34:53,608 いれば 何です? 288 00:34:53,608 --> 00:34:56,444 私が こんなこと しなくてもいいのに。 289 00:34:56,444 --> 00:35:01,616 ああ…。 アシにだって 見舞いに 来てくれる女子ぐらいは おる。 290 00:35:01,616 --> 00:35:06,754 そろそろ 来るころじゃ。 えっ! 誰だか聞いてもよろしい? 291 00:35:06,754 --> 00:35:10,225 リーさんじゃ。 学校の帰りに 寄ってくれるそうじゃ。 292 00:35:10,225 --> 00:35:15,129 リーさんって あの 亡くなった正岡さんの妹さん。 293 00:35:15,129 --> 00:35:20,869 そうですか。 それじゃ 私は おいとまします。 294 00:35:20,869 --> 00:35:24,469 兄さんに よろしゅう 言うてください。 はい。 295 00:35:26,174 --> 00:35:30,274 淳さん。 当分 お豆は駄目ですよ。 296 00:35:34,816 --> 00:35:39,654 真之は 子規の死後 兵学研究に没頭し➡ 297 00:35:39,654 --> 00:35:43,524 「能島流海賊古法」などを 読みふけった。 298 00:35:43,524 --> 00:35:49,824 (ノック) 秋山さんですね。 こちらへ どうぞ。 299 00:35:56,704 --> 00:36:00,575 (季子)ごぶさたいたしております。 300 00:36:00,575 --> 00:36:04,779 八代大佐から 少佐が ご病気と聞いて➡ 301 00:36:04,779 --> 00:36:09,550 お見舞いに伺いました。 お加減は いかがですか? 302 00:36:09,550 --> 00:36:12,387 あっ いや…。 303 00:36:12,387 --> 00:36:17,058 そんなに大したことないですけん。 金曜には 退院です。 304 00:36:17,058 --> 00:36:19,158 よかった。 305 00:36:21,262 --> 00:36:26,100 どうぞ。 恐れ入ります。 306 00:36:26,100 --> 00:36:39,080 ♬~ 307 00:36:39,080 --> 00:36:46,721 ♬~ 308 00:36:46,721 --> 00:36:50,591 桃を持ってまいりました。 いかがですか? 309 00:36:50,591 --> 00:36:52,527 はあ…。 310 00:36:52,527 --> 00:37:07,608 ♬~ 311 00:37:07,608 --> 00:37:12,113 何のご本を お読みですか? 312 00:37:12,113 --> 00:37:17,919 いや 能島流水軍の書です。 313 00:37:17,919 --> 00:37:21,255 水軍? 314 00:37:21,255 --> 00:37:26,055 秋山の家は 水軍の出なんです。 315 00:37:29,597 --> 00:37:33,234 この古文書には 目が ひらかれます。 316 00:37:33,234 --> 00:37:39,234 ここに 面白いことが 書いてあります。 ええと…。 317 00:37:42,010 --> 00:37:46,748 水軍の戦法には 虎陣と豹陣いうんがあって。 318 00:37:46,748 --> 00:37:50,448 虎と豹? ええ 虎と豹です。 319 00:37:52,587 --> 00:37:58,760 淳さん… いや 秋山少佐の部屋は どこじゃろうか? 320 00:37:58,760 --> 00:38:02,960 そこの病棟です。 だんだん。 321 00:38:06,467 --> 00:38:11,973 (季子)そういえば 虎と豹は 昔 夫婦といわれておりました。➡ 322 00:38:11,973 --> 00:38:18,746 虎が夫で 豹が妻です。 夫婦が協力して戦うんですか。 323 00:38:18,746 --> 00:38:26,020 まあ そんなとこです。 虎が本隊で 島陰か どこぞに隠れとる。 324 00:38:26,020 --> 00:38:29,924 豹が 敵の水域を いかにも弱々しく うろつき➡ 325 00:38:29,924 --> 00:38:34,162 敵が来るや 逃げると見せかけて 虎の方へ引き寄せるんじゃ。 326 00:38:34,162 --> 00:38:39,100 そこへ 虎が現れて たちまち かみ殺すという戦法じゃ。 327 00:38:39,100 --> 00:38:44,600 はい むけました。 いただきます。 328 00:38:48,209 --> 00:38:50,209 うまい! 329 00:38:52,213 --> 00:38:54,549 水軍戦法には➡ 330 00:38:54,549 --> 00:38:59,320 「舟を攻めずして 人心を攻める」 というんがあります。 331 00:38:59,320 --> 00:39:02,590 これは 孫子の考え方とも 共通しとるんです。 332 00:39:02,590 --> 00:39:07,995 (季子)私が聞いても よく分かりませぬ。 333 00:39:07,995 --> 00:39:09,997 いや~ 古書には➡ 334 00:39:09,997 --> 00:39:16,704 今にも通じることが ぎょうさん書いてあるんぞな。 335 00:39:16,704 --> 00:39:22,176 ほれ。 ほんだら これは どうじゃろうか? はい。 336 00:39:22,176 --> 00:39:27,949 ♬~ 337 00:39:27,949 --> 00:39:30,049 ごきげんよう。 338 00:39:31,853 --> 00:39:34,322 お待たせ。 339 00:39:34,322 --> 00:39:44,532 ♬~ 340 00:39:44,532 --> 00:39:49,632 リーさん! 危うく 見過ごすところじゃった。 341 00:39:51,305 --> 00:39:54,008 よう お似合いじゃ。 342 00:39:54,008 --> 00:39:57,612 ようやく ウチも学生ですけん。 343 00:39:57,612 --> 00:40:03,417 クラスでも 飛び抜けて年上で この格好も 恥ずかしいけど➡ 344 00:40:03,417 --> 00:40:06,354 うれしい方が先です。 345 00:40:06,354 --> 00:40:18,032 ♬~ 346 00:40:18,032 --> 00:40:21,869 先日のこと 気にして 来てくれたんじゃね。 347 00:40:21,869 --> 00:40:28,142 ああ そうじゃ。 せっかく 病院まで来てくれたのに➡ 348 00:40:28,142 --> 00:40:32,380 どうしたんじゃ思うてな。 349 00:40:32,380 --> 00:40:38,880 きれいな お人じゃった。 どっか ええとこのお嬢さんなんじゃね。 350 00:40:40,922 --> 00:40:46,727 妬いとるわけじゃないんぞね。 ウチ ほっとしたんじゃ。 351 00:40:46,727 --> 00:40:53,067 淳さんにも ようよう ええお相手が見つかった思うて。 352 00:40:53,067 --> 00:40:56,103 声かけて邪魔するわけにも いかんじゃろ。 353 00:40:56,103 --> 00:40:58,639 リーさん。 354 00:40:58,639 --> 00:41:03,811 ウチは 今 もう 毎日が新鮮な気分なんじゃ。 355 00:41:03,811 --> 00:41:05,813 学校で 授業 受けとると➡ 356 00:41:05,813 --> 00:41:11,118 ウチの人生 ようよう 始まったような気がするんよ。 357 00:41:11,118 --> 00:41:15,818 人よりも ずっと遅れてしもたけどな。 358 00:41:18,859 --> 00:41:22,659 これからが始まりじゃ 思うとります。 359 00:41:25,399 --> 00:41:42,450 ♬~ 360 00:41:42,450 --> 00:41:46,320 (騒ぐ声) 361 00:41:46,320 --> 00:41:51,158 (壮士)政府の腰抜け外交を見よ! 一体 あれは何だ? 362 00:41:51,158 --> 00:41:53,194 (一同)そうだ! 363 00:41:53,194 --> 00:42:00,468 やがて 満州から朝鮮 朝鮮から 日本へ 必ず 攻め込んでくる。 364 00:42:00,468 --> 00:42:03,404 日本政府は 戦争をおそれた。 365 00:42:03,404 --> 00:42:08,542 ロシアへの恐怖が 対露交渉のテンポを ゆるやかにしていたし➡ 366 00:42:08,542 --> 00:42:11,445 それが 国民一般の目には➡ 367 00:42:11,445 --> 00:42:15,816 ロシアに対する 哀願的態度に うつった。 368 00:42:15,816 --> 00:42:19,916 世論は 好戦的であった。 369 00:42:21,756 --> 00:42:28,056 日露開戦まで あと半年余りであった。 370 00:42:32,166 --> 00:42:38,706 (山本)戦えば 我が連合艦隊の 半分は 沈むじゃろう。 371 00:42:38,706 --> 00:42:40,641 おう 愉快じゃ! 372 00:42:40,641 --> 00:42:44,011 妻の季子でございます。 あっ…。 373 00:42:44,011 --> 00:42:47,048 (東郷)作戦参謀を お願いしたい。 374 00:42:47,048 --> 00:42:49,183 はっ! 375 00:42:49,183 --> 00:42:53,054 ♬「希望のつぼみが」 376 00:42:53,054 --> 00:42:59,694 ♬「遠くを見つめていた」 377 00:42:59,694 --> 00:43:06,867 ♬「迷い悩むほど」 378 00:43:06,867 --> 00:43:14,208 ♬「人は強さを掴むから」 379 00:43:14,208 --> 00:43:17,111 ♬「夢をみる」 380 00:43:17,111 --> 00:43:24,218 ♬「凛として旅立つ」 381 00:43:24,218 --> 00:43:32,026 ♬「一朶の雲を目指し」 382 00:43:32,026 --> 00:44:00,721 ♬~ 383 00:44:00,721 --> 00:44:07,027 ♬「凛として旅立つ」 384 00:44:07,027 --> 00:44:19,306 ♬「一朶の雲を目指し」 385 00:44:19,306 --> 00:44:25,206 ♬~ 386 00:45:33,113 --> 00:45:38,686 (田中)7 8 9 10。 387 00:45:38,686 --> 00:45:40,721 やった~! 388 00:45:40,721 --> 00:45:44,492 2014年10月26日➡ 389 00:45:44,492 --> 00:45:48,028 プロアドベンチャーレーサー 田中陽希は➡ 390 00:45:48,028 --> 00:45:52,199 北海道 利尻岳の頂に立った。 391 00:45:52,199 --> 00:45:57,071 日本百名山一筆書き踏破 達成の瞬間だ。 392 00:45:57,071 --> 00:45:59,707 気持ちの上でも 体の上でも➡