1 00:00:33,400 --> 00:00:36,803 距離 4,600! 急ぎ 撃て! 2 00:00:36,803 --> 00:00:39,706 距離 4,600! 急ぎ 撃て! 3 00:00:39,706 --> 00:00:43,677 (砲撃音) 4 00:00:43,677 --> 00:00:54,821 ♬~ 5 00:00:54,821 --> 00:00:57,724 (真之)残念ですが ネボガドフ提督➡ 6 00:00:57,724 --> 00:01:00,160 ロシア艦隊は敗北し➡ 7 00:01:00,160 --> 00:01:05,031 現在 少なくとも 戦艦 装甲巡洋艦など➡ 8 00:01:05,031 --> 00:01:08,502 11隻が沈没しております。 9 00:01:08,502 --> 00:01:16,843 沈没した戦艦は スワロフ アレクサンドル3世 ボロジノ オスラービア…。 10 00:01:16,843 --> 00:01:35,143 ♬~ 11 00:01:42,802 --> 00:01:46,473 (映写機の音) 12 00:01:46,473 --> 00:01:52,345 四国は 伊予松山に 3人の男がいた。 13 00:01:52,345 --> 00:01:58,084 この ふるい城下町にうまれた 秋山真之は➡ 14 00:01:58,084 --> 00:02:00,487 日露戦争がおこるにあたって➡ 15 00:02:00,487 --> 00:02:02,422 勝利は 不可能に ちかいといわれた➡ 16 00:02:02,422 --> 00:02:05,659 バルチック艦隊を ほろぼすにいたる 作戦をたて➡ 17 00:02:05,659 --> 00:02:08,959 それを実施した。 18 00:02:10,530 --> 00:02:16,303 その兄の秋山好古は 日本の騎兵を育成し➡ 19 00:02:16,303 --> 00:02:19,839 史上最強の騎兵といわれる コサック師団をやぶるという➡ 20 00:02:19,839 --> 00:02:22,839 奇蹟を遂げた。 21 00:02:24,511 --> 00:02:29,015 もうひとりは 俳句 短歌といった➡ 22 00:02:29,015 --> 00:02:31,918 日本のふるい短詩型に 新風を入れて➡ 23 00:02:31,918 --> 00:02:37,918 その中興の祖となった 俳人 正岡子規である。 24 00:02:39,626 --> 00:02:44,297 かれらは 明治という時代人の体質で➡ 25 00:02:44,297 --> 00:02:48,468 前をのみ見つめながら あるく。 26 00:02:48,468 --> 00:02:52,138 のぼってゆく坂の上の青い天に➡ 27 00:02:52,138 --> 00:02:57,477 もし一朶の白い雲が かがやいているとすれば➡ 28 00:02:57,477 --> 00:03:03,350 それのみをみつめて 坂をのぼってゆくであろう。 29 00:03:03,350 --> 00:03:15,495 ♬~ 30 00:03:15,495 --> 00:03:20,367 ≪(号外売り1) 号外! 号外! 大勝利!➡ 31 00:03:20,367 --> 00:03:29,509 勝った 勝った! 我が連合艦隊は 日本海で バルチック艦隊を撃破せり! 32 00:03:29,509 --> 00:03:34,347 ≪(号外売り2)我が艦隊は 無傷! 敵艦隊は全滅せり!➡ 33 00:03:34,347 --> 00:03:39,319 これぞ 大和魂の大勝利なるぞ!➡ 34 00:03:39,319 --> 00:03:43,456 万歳! 万歳! 35 00:03:43,456 --> 00:03:49,329 (泣き声) 36 00:03:49,329 --> 00:04:05,645 ♬~ 37 00:04:05,645 --> 00:04:09,516 (多美)お母様! お母様! 38 00:04:09,516 --> 00:04:13,386 お母様! お母様! お母様! 39 00:04:13,386 --> 00:04:15,989 これ 号外が出て! 40 00:04:15,989 --> 00:04:20,827 大勝利! 真之さん 大勝利! 41 00:04:20,827 --> 00:04:26,700 ♬~ 42 00:04:26,700 --> 00:04:32,439 (貞)淳は? 淳は生きておるかね? 43 00:04:32,439 --> 00:04:35,341 はい 無事ですよ。 44 00:04:35,341 --> 00:04:42,115 お母さん 淳さん ちゃんと生きてます! 45 00:04:42,115 --> 00:04:45,415 あ~。 46 00:04:47,987 --> 00:04:54,694 そら よかった! はい。 よかった! 47 00:04:54,694 --> 00:04:58,131 よかった! 本当に よかった! 48 00:04:58,131 --> 00:05:19,819 ♬~ 49 00:05:19,819 --> 00:05:23,156 (中屋)閣下 東京より 電報が届いております。 50 00:05:23,156 --> 00:05:25,492 (好古)おう。 51 00:05:25,492 --> 00:05:40,440 ♬~ 52 00:05:40,440 --> 00:05:49,115 (雷鳴) 53 00:05:49,115 --> 00:05:58,124 満州の戦場で 好古は 母親の貞が 病没したという しらせを受けた。 54 00:05:58,124 --> 00:06:01,124 (雷鳴) 55 00:06:08,134 --> 00:06:11,134 (雷鳴) 56 00:06:14,641 --> 00:06:17,641 (雷鳴) 57 00:06:22,382 --> 00:06:25,351 (雷鳴) 58 00:06:25,351 --> 00:06:32,058 淳は 間に合うたかのう…。 59 00:06:32,058 --> 00:06:34,961 (汽笛) 60 00:06:34,961 --> 00:06:45,261 (せみの鳴き声) 61 00:06:59,118 --> 00:07:01,318 季子…。 62 00:07:05,992 --> 00:07:12,992 (季子)お帰りなさいませ。 よく ご無事で。 63 00:07:16,669 --> 00:07:18,869 うん。 64 00:07:26,145 --> 00:07:33,145 (ヒグラシの鳴き声) 65 00:08:29,475 --> 00:08:34,080 日本海の海戦に勝った事を お知らせしたら➡ 66 00:08:34,080 --> 00:08:41,421 本当に喜ばれて 一時は お元気になられたんです。➡ 67 00:08:41,421 --> 00:08:46,759 淳が帰ってくるまで うちは 決して死なん。➡ 68 00:08:46,759 --> 00:08:54,259 待っててやるのが 母の務めだって おっしゃって。 69 00:09:02,608 --> 00:09:12,118 姉さん 長い間 母が 本当にお世話になりました。 70 00:09:12,118 --> 00:09:19,459 いいえ。 大好きな お母様でしたから。 71 00:09:19,459 --> 00:09:51,391 ♬~ 72 00:09:51,391 --> 00:09:54,293 母さん。 73 00:09:54,293 --> 00:10:02,769 ♬~ 74 00:10:02,769 --> 00:10:06,439 母さん…➡ 75 00:10:06,439 --> 00:10:11,310 生きとるうちに帰ってこれんで➡ 76 00:10:11,310 --> 00:10:15,782 すんませんでした。 77 00:10:15,782 --> 00:10:25,458 ♬~ 78 00:10:25,458 --> 00:10:28,361 父さんに よろしくのう。 79 00:10:28,361 --> 00:10:34,467 貞 貞 言うて あの世でも 首を長うして➡ 80 00:10:34,467 --> 00:10:39,138 母さんを待っとるはずじゃけん。 81 00:10:39,138 --> 00:10:49,482 ♬~ 82 00:10:49,482 --> 00:10:55,354 母さん…➡ 83 00:10:55,354 --> 00:11:05,554 アシは 世の中のお役に 少しは立てたんじゃろうか。 84 00:11:10,503 --> 00:11:19,178 教えてくれんかのう… 母さん。 85 00:11:19,178 --> 00:11:44,337 ♬~ 86 00:11:44,337 --> 00:11:54,337 (虫の鳴き声) 87 00:12:45,131 --> 00:12:49,131 眠れませんか? 88 00:13:21,500 --> 00:13:24,300 真之さん…。 季子。 89 00:13:28,174 --> 00:13:30,174 はい。 90 00:14:03,476 --> 00:14:09,348 どちらへ? 散歩じゃ。 91 00:14:09,348 --> 00:14:17,490 こんな夜更けに… おやめなさいまし。 92 00:14:17,490 --> 00:14:24,190 寝つかれぬ。 気晴らしに ちょっと行ってくる。 93 00:14:34,440 --> 00:14:38,110 離せ。 94 00:14:38,110 --> 00:14:41,410 嫌です。 95 00:14:43,449 --> 00:14:51,149 やっと お帰りになられたのに…。 96 00:14:53,459 --> 00:15:00,159 この日を どんなに 心待ちにしていた事か…。 97 00:15:08,474 --> 00:15:16,474 海軍を… 辞めようかと思う。 98 00:15:25,024 --> 00:15:30,324 死んだ人間を ぎょうさん 見過ぎた。 99 00:15:33,432 --> 00:15:43,142 アシは もう これ以上…➡ 100 00:15:43,142 --> 00:15:49,342 人が死ぬ事に耐えられん。 101 00:15:56,455 --> 00:16:06,132 (泣き声) 102 00:16:06,132 --> 00:16:10,002 坊さんになりたい。 103 00:16:10,002 --> 00:16:13,806 坊さんになって…➡ 104 00:16:13,806 --> 00:16:19,806 戦没者の供養を せにゃならん。 105 00:16:21,480 --> 00:16:25,151 対馬の海には➡ 106 00:16:25,151 --> 00:16:28,053 日本と ロシアの将兵が➡ 107 00:16:28,053 --> 00:16:32,353 ぎょうさん 沈んどる。 108 00:16:35,428 --> 00:16:43,102 アシは 坊さんになって➡ 109 00:16:43,102 --> 00:16:50,776 日本人も ロシア人も 等しゅう…➡ 110 00:16:50,776 --> 00:16:55,076 供養したい。 111 00:16:57,650 --> 00:17:16,469 (泣き声) 112 00:17:16,469 --> 00:17:33,953 ♬~ 113 00:17:33,953 --> 00:17:37,089 ロシアの帝政は➡ 114 00:17:37,089 --> 00:17:40,759 強大な軍事力を もつことによってのみ存在し➡ 115 00:17:40,759 --> 00:17:43,429 国内の治安を保ってきた。 116 00:17:43,429 --> 00:17:45,764 それが崩壊した以上➡ 117 00:17:45,764 --> 00:17:49,435 日露戦争は ロマノフ王朝そのものを➡ 118 00:17:49,435 --> 00:17:54,106 存亡の崖ぷちに 追い込んでしまったことになる。 119 00:17:54,106 --> 00:17:57,977 このとき ロシアに 講和を働きかけたのは➡ 120 00:17:57,977 --> 00:18:03,277 米国大統領 セオドア・ルーズベルトであった。 121 00:18:05,117 --> 00:18:08,621 日本側の講和の全権大使には➡ 122 00:18:08,621 --> 00:18:14,293 外務大臣の小村寿太郎が 任命された。 123 00:18:14,293 --> 00:18:25,638 ♬~ 124 00:18:25,638 --> 00:18:27,573 (ノック) 125 00:18:27,573 --> 00:18:44,590 ♬~ 126 00:18:44,590 --> 00:18:50,763 (桂)小村君 よろしく頼みますよ。 127 00:18:50,763 --> 00:18:57,563 日本国民は あなたに 全幅の信頼を寄せておりますぞ。 128 00:19:00,105 --> 00:19:02,942 (伊藤)君が 帰朝の折は➡ 129 00:19:02,942 --> 00:19:06,779 たとえ 誰ひとり 出迎える者なくとも➡ 130 00:19:06,779 --> 00:19:11,116 予だけは 必ず 小村君を迎えに出る。 131 00:19:11,116 --> 00:19:16,455 (山県)小村君 頼むぞ。 132 00:19:16,455 --> 00:19:25,798 (小村)ルーズベルトが どう出るかが 鍵になりましょうな。 133 00:19:25,798 --> 00:19:31,403 明治38年9月5日 ポーツマスで➡ 134 00:19:31,403 --> 00:19:35,274 日露講和条約が 調印された。 135 00:19:35,274 --> 00:19:43,015 しかし 日本は ロシアから 賠償金を得ることはできなかった。 136 00:19:43,015 --> 00:19:51,724 (群衆の抗議や怒りの声) 137 00:19:51,724 --> 00:19:56,629 ここに 大群衆が登場する。 138 00:19:56,629 --> 00:20:02,768 大群衆の叫びは 平和の値段が 安すぎるというものであった。 139 00:20:02,768 --> 00:20:09,642 講和条約を破棄せよ 戦争を継続せよ と叫んだ。 140 00:20:09,642 --> 00:20:15,114 9月5日。 日比谷公園で ひらかれた全国大会は➡ 141 00:20:15,114 --> 00:20:18,450 参集する者 3万といわれた。 142 00:20:18,450 --> 00:20:24,123 かれらは暴徒化し 一時は無政府状態に おちいった。 143 00:20:24,123 --> 00:20:30,462 政府は ついに戒厳令を布かざるを 得なくなったほどであった。 144 00:20:30,462 --> 00:20:43,475 ♬~ 145 00:20:43,475 --> 00:20:46,378 勝利というのは 絶対のものではない。 146 00:20:46,378 --> 00:20:49,378 敗者が必要である。 147 00:20:51,817 --> 00:20:55,688 ロシアは みずからに敗けたところが多く➡ 148 00:20:55,688 --> 00:21:02,461 日本は そのすぐれた計画性と 敵軍の そのような事情のために➡ 149 00:21:02,461 --> 00:21:06,365 きわどい勝利を ひろいつづけたというのが➡ 150 00:21:06,365 --> 00:21:10,665 日露戦争であろう。 151 00:21:23,348 --> 00:21:26,848 (鐘の音) 152 00:21:31,090 --> 00:21:34,993 (鐘の音) 153 00:21:34,993 --> 00:21:38,993 ひとつの情景がある。 154 00:21:43,469 --> 00:21:49,808 連合艦隊が 横浜沖で 凱旋の観艦式を行った翌々日➡ 155 00:21:49,808 --> 00:21:55,808 真之は 朝 まだ 暗いうちに家を出た。 156 00:21:58,817 --> 00:22:02,817 おい! ≪は~い。 157 00:22:06,692 --> 00:22:10,429 飯 あるかなもし? 158 00:22:10,429 --> 00:22:13,832 飯じゃ 飯。 まだ 朝飯 食うとらんのじゃ。 159 00:22:13,832 --> 00:22:18,832 ダンゴなら ありますよ。 ほうか。 1皿くれ。 毎度あり。 160 00:22:25,444 --> 00:22:28,013 鶯横丁は すぐ そこじゃな? 161 00:22:28,013 --> 00:22:31,049 はい。 半丁ほど向こうです。 162 00:22:31,049 --> 00:22:34,787 正岡子規という人の うちがあるが 知っておいでか? 163 00:22:34,787 --> 00:22:37,456 まさおか? 正岡子規じゃ。 164 00:22:37,456 --> 00:22:40,492 さあ… 義太夫のお師匠さんか 何かですか? 165 00:22:40,492 --> 00:22:42,792 お待ち遠さま。 ああ。 166 00:22:49,802 --> 00:22:56,802 (豆腐売りのラッパの音) 167 00:22:59,812 --> 00:23:06,812 (豆腐売りのラッパの音) 168 00:23:15,360 --> 00:23:18,497 (豆腐売りのラッパの音) 169 00:23:18,497 --> 00:23:24,369 子規が死んで 3年が過ぎていた。 170 00:23:24,369 --> 00:24:09,481 ♬~ 171 00:24:09,481 --> 00:24:13,151 (律)どなたか いらっしゃったんじゃろか? 172 00:24:13,151 --> 00:24:20,025 (八重)あれは 淳さんみたようじゃったが…。 173 00:24:20,025 --> 00:24:51,990 ♬~ 174 00:24:51,990 --> 00:24:56,461 真之は そのあと 3kmの道を歩き➡ 175 00:24:56,461 --> 00:25:02,634 子規の菩提寺である 田端の大竜寺まで行っている。 176 00:25:02,634 --> 00:25:06,138 真之が この墓前に立ったとき➡ 177 00:25:06,138 --> 00:25:10,309 まだ 真鍮板にきざんだ墓誌の碑は できていなかったが➡ 178 00:25:10,309 --> 00:25:14,309 その草稿だけは できていた。 179 00:25:17,983 --> 00:25:23,155 そこには 子規が そのみじかい生涯を費やした➡ 180 00:25:23,155 --> 00:25:27,025 俳句 短歌のことは 一字も触れられておらず➡ 181 00:25:27,025 --> 00:25:31,430 ただ 自分の名を書き 生国を書き➡ 182 00:25:31,430 --> 00:25:34,333 父の藩名と お役目を書き➡ 183 00:25:34,333 --> 00:25:36,768 母に養われたことを書き➡ 184 00:25:36,768 --> 00:25:38,704 つとめさきを書き➡ 185 00:25:38,704 --> 00:25:44,004 さらに 月給の額を書いて しめくくっている。 186 00:25:46,778 --> 00:25:50,115 (子規)「正岡常規➡ 187 00:25:50,115 --> 00:25:52,451 又の名は 処之助➡ 188 00:25:52,451 --> 00:25:54,386 又の名は 升➡ 189 00:25:54,386 --> 00:25:56,321 又の名は 子規➡ 190 00:25:56,321 --> 00:25:59,124 又の名は 獺祭書屋主人➡ 191 00:25:59,124 --> 00:26:02,794 又の名は 竹ノ里人➡ 192 00:26:02,794 --> 00:26:08,133 伊予松山に生れ 東京・根岸に住す➡ 193 00:26:08,133 --> 00:26:15,007 父 隼太 松山藩御馬廻加番たり 卒す➡ 194 00:26:15,007 --> 00:26:18,777 母 大原氏に養はる➡ 195 00:26:18,777 --> 00:26:22,314 日本新聞 社員たり➡ 196 00:26:22,314 --> 00:26:26,818 明治35年9月19日 没す➡ 197 00:26:26,818 --> 00:26:34,426 享年 36 月給 40円」。 198 00:26:34,426 --> 00:27:42,294 ♬~ 199 00:27:42,294 --> 00:27:45,931 (律)お母さん 雨! 200 00:27:45,931 --> 00:27:48,834 (八重)はい はい。 201 00:27:48,834 --> 00:27:55,640 ♬~ 202 00:27:55,640 --> 00:28:02,481 さっきのお人 間違いなく 淳さんじゃと思たんじゃが…。 203 00:28:02,481 --> 00:28:07,619 淳さんなら 軍艦に乗っておいでじゃけん➡ 204 00:28:07,619 --> 00:28:14,960 人違いじゃろう。 ほうかのう…。 205 00:28:14,960 --> 00:28:19,131 そうに決まっとります。 206 00:28:19,131 --> 00:29:01,106 ♬~ 207 00:29:01,106 --> 00:29:08,106 子規の墓前を後にした真之は 雨の坂を下った。 208 00:29:11,449 --> 00:29:17,789 道は 飛鳥山 川越へ通ずる 旧街道である。 209 00:29:17,789 --> 00:29:22,627 雨のなかで 緑が はるかに煙り 真之は ふと➡ 210 00:29:22,627 --> 00:29:29,968 三笠の艦橋からのぞんだ あの日の 日本海の海原を おもいだした。 211 00:29:29,968 --> 00:29:51,756 ♬~ 212 00:29:51,756 --> 00:29:57,756 真之は 結局 海軍を辞めなかった。 213 00:29:59,431 --> 00:30:02,767 ♬~(蓄音機「勧進帳」) 214 00:30:02,767 --> 00:30:08,440 余談ながら 明治期に入っての文章日本語は➡ 215 00:30:08,440 --> 00:30:12,777 日本そのものの国家と社会が 一変しただけでなく➡ 216 00:30:12,777 --> 00:30:18,116 外来思想の導入にともなって はなはだしく 混乱した。 217 00:30:18,116 --> 00:30:21,019 その混乱が 整備されてゆくについては➡ 218 00:30:21,019 --> 00:30:25,457 規範となるべき 天才的な文章を 必要とした。 219 00:30:25,457 --> 00:30:30,795 漱石も 子規も その規範になった人々だが➡ 220 00:30:30,795 --> 00:30:33,698 真之の文章も この時期での➡ 221 00:30:33,698 --> 00:30:38,670 そういう規範の役目をしたと いうべきであったろう。 222 00:30:38,670 --> 00:30:44,142 かれの文章が もっとも 光彩を放ったのは➡ 223 00:30:44,142 --> 00:30:48,442 「連合艦隊解散の辞」である。 224 00:32:14,499 --> 00:32:41,126 ♬~ 225 00:32:41,126 --> 00:32:49,801 明治39年1月 乃木の第三軍が 満州から凱旋した。 226 00:32:49,801 --> 00:33:02,380 ♬~ 227 00:33:02,380 --> 00:33:05,350 (児玉)乃木よ。 228 00:33:05,350 --> 00:33:11,823 ハハハハハッ。 乃木のじじいよ。 229 00:33:11,823 --> 00:33:15,160 お主 その格好で 陛下に拝謁するのは➡ 230 00:33:15,160 --> 00:33:17,829 いかがなものかのう。 231 00:33:17,829 --> 00:33:22,829 戦場のホコリに まみれておるじゃないか。 232 00:33:25,503 --> 00:33:32,944 ようやく終わったのう。 また 生き長らえた。 233 00:33:32,944 --> 00:33:35,244 (乃木)うむ。 234 00:33:39,717 --> 00:33:47,125 これから先 一体 どうなるかのう。 235 00:33:47,125 --> 00:33:52,797 ひとつ じっくりと 見届けねばなるまいのう。 236 00:33:52,797 --> 00:33:59,471 何一つ 変わりはせぬ。 237 00:33:59,471 --> 00:34:03,241 そうかのう? 238 00:34:03,241 --> 00:34:07,111 うむ。 239 00:34:07,111 --> 00:34:10,811 そうかのう…。 240 00:34:18,490 --> 00:34:35,440 ♬~ 241 00:34:35,440 --> 00:34:40,311 維新後 日露戦争までという 30年余りは➡ 242 00:34:40,311 --> 00:34:44,449 文化史的にも 精神史のうえからでも➡ 243 00:34:44,449 --> 00:34:49,320 ながい日本の歴史のなかで じつに特異である。 244 00:34:49,320 --> 00:34:53,020 これほど楽天的な時代はない。 245 00:34:54,792 --> 00:34:59,130 むろん 見方によっては そうではない。 246 00:34:59,130 --> 00:35:01,799 庶民は 重税にあえぎ➡ 247 00:35:01,799 --> 00:35:06,671 国権は あくまで重く 民権は あくまで軽く➡ 248 00:35:06,671 --> 00:35:09,474 足尾の鉱毒事件があり➡ 249 00:35:09,474 --> 00:35:13,144 女工哀史があり 小作争議がありで➡ 250 00:35:13,144 --> 00:35:16,481 そのような 被害意識のなかからみれば➡ 251 00:35:16,481 --> 00:35:19,150 これほど暗い時代は ないであろう。 252 00:35:19,150 --> 00:35:25,490 しかし 被害意識でのみ みることが 庶民の歴史ではない。 253 00:35:25,490 --> 00:35:32,297 ♬~ 254 00:35:32,297 --> 00:35:36,297 明治は よかったという。 255 00:35:38,069 --> 00:35:43,775 「降る雪や 明治は遠くなりにけり」という➡ 256 00:35:43,775 --> 00:35:48,646 中村草田男の 澄みきった 色彩世界がもつ明治が➡ 257 00:35:48,646 --> 00:35:51,649 一方にある。 258 00:35:51,649 --> 00:35:59,123 ♬~ 259 00:35:59,123 --> 00:36:09,467 この物語は その日本史上類のない 幸福な楽天家たちの物語である。 260 00:36:09,467 --> 00:36:14,339 楽天家たちは そのような 時代人としての体質で➡ 261 00:36:14,339 --> 00:36:20,111 前をのみ見つめながら あるく。 262 00:36:20,111 --> 00:36:23,815 のぼってゆく坂の上の青い天に➡ 263 00:36:23,815 --> 00:36:29,153 もし一朶の白い雲が かがやいているとすれば➡ 264 00:36:29,153 --> 00:36:35,960 それのみをみつめて 坂をのぼってゆくであろう。 265 00:36:35,960 --> 00:36:45,260 ♬~ 266 00:36:53,778 --> 00:37:00,118 何十年ぶりかのう お前と こうして釣りをするのは。 267 00:37:00,118 --> 00:37:06,991 いや 兄さんと釣りをした事なぞ 一度もないぞね。 268 00:37:06,991 --> 00:37:16,668 そうか? そうじゃったかのう…。 そうじゃ。 一度もない。 269 00:37:16,668 --> 00:37:21,305 ハハハハッ。 貧乏で 貧乏で➡ 270 00:37:21,305 --> 00:37:26,644 兄さんは 釣りなぞして遊んで おった事なぞ なかったでしょう。 271 00:37:26,644 --> 00:37:34,085 そうか。 それはもう 貧しかったからのう。 272 00:37:34,085 --> 00:37:38,785 お前は よう遊んじょったがのう。 273 00:37:40,758 --> 00:37:47,932 兄さん だんだん。 なんの なんの。 274 00:37:47,932 --> 00:37:55,932 お前は ようやった。 ようやったよ。 275 00:38:12,457 --> 00:38:17,457 この先 一体 どうなるじゃろうなあ。 276 00:38:23,101 --> 00:38:26,101 お前にも 分からんか。 277 00:38:37,615 --> 00:38:43,615 急がねば 一雨 来るやもしれんぞね。 278 00:38:46,924 --> 00:38:52,724 それは 急がねばならんな。 279 00:38:55,933 --> 00:38:58,436 お! 280 00:38:58,436 --> 00:39:05,309 あ! あ~ やられた。 アハハハハッ! 281 00:39:05,309 --> 00:39:13,918 ♬~ 282 00:39:13,918 --> 00:39:21,959 秋山真之の生涯は かならずしも 長くはなかった。 283 00:39:21,959 --> 00:39:29,834 大正7年2月4日 満49歳で没した。 284 00:39:29,834 --> 00:39:35,506 臨終のとき あつまっていた ひとびとに➡ 285 00:39:35,506 --> 00:39:38,743 「みなさん いろいろ お世話になりました。➡ 286 00:39:38,743 --> 00:39:43,581 これから 独りでゆきますから」といった。 287 00:39:43,581 --> 00:39:48,920 それが 最期のことばだった。 288 00:39:48,920 --> 00:40:00,097 ♬~ 289 00:40:00,097 --> 00:40:05,903 好古は やや長命した。 290 00:40:05,903 --> 00:40:10,741 陸軍大将で退役したあとは 故郷の松山に戻り➡ 291 00:40:10,741 --> 00:40:16,741 私立の北予中学という 無名の中学の校長をつとめた。 292 00:40:18,449 --> 00:40:22,249 校長先生 おはようございます。 おはよう。 293 00:40:23,955 --> 00:40:27,458 昭和5年11月。 294 00:40:27,458 --> 00:40:35,333 死の床についた好古は 数日 うわごとを言いつづけた。 295 00:40:35,333 --> 00:40:40,037 鉄嶺は まだか。 296 00:40:40,037 --> 00:40:44,809 (荒い息) 297 00:40:44,809 --> 00:40:53,150 馬 引け…。 前進じゃ。 298 00:40:53,150 --> 00:41:01,150 お父様は まだ 満州の荒野を さまよってらっしゃるわ。 299 00:41:06,163 --> 00:41:15,873 馬 引け…。 ゆくぞ。 300 00:41:15,873 --> 00:41:19,677 奉天へ! 301 00:41:19,677 --> 00:41:37,795 (荒い息) 302 00:41:37,795 --> 00:41:41,465 あなた…➡ 303 00:41:41,465 --> 00:41:46,304 馬から落ちてはいけませんよ。 304 00:41:46,304 --> 00:41:58,004 (荒い息) 305 00:42:00,851 --> 00:42:07,491 (長く息を吐く) 306 00:42:07,491 --> 00:42:44,491 ♬~ 307 00:42:50,468 --> 00:44:25,468 ♬~ 308 00:45:35,332 --> 00:45:39,136 (岩合)足そろえて いいね~! ねえ! 309 00:45:39,136 --> 00:45:44,136 前足出して かわいい ニャン。 310 00:45:46,477 --> 00:45:51,148 岩合さん 大好きなポーズ。