1 00:00:02,202 --> 00:00:04,938 (さだ)私の住んでる荒木荘で➡ 2 00:00:04,938 --> 00:00:09,610 炊事 洗濯 掃除をする そういう下働きの仕事をな。 3 00:00:09,610 --> 00:00:13,413 (喜美子)ここで女中やらせてもらいます。 川原喜美子と申します。 4 00:00:13,413 --> 00:00:16,283 よろしくお願いします。 (さだ)賄い付きよ? 5 00:00:16,283 --> 00:00:18,619 うわ~い! 6 00:00:18,619 --> 00:00:21,321 うわ~…。 (ふすまにぶつかる音) 7 00:00:23,490 --> 00:00:28,795 (ちや子)うう…。 何? 何!? 8 00:00:30,631 --> 00:00:35,335 (ちや子)何!? はあ はあ…。 9 00:00:38,372 --> 00:00:40,374 ♬~ 10 00:00:40,374 --> 00:00:49,449 ♬「涙が降れば きっと消えてしまう」 11 00:00:49,449 --> 00:00:58,659 ♬「揺らぐ残り火 どうかここにいて」 12 00:00:58,659 --> 00:01:08,101 ♬「私を創る 出会いもサヨナラも」 13 00:01:08,101 --> 00:01:10,470 ♬~ 14 00:01:10,470 --> 00:01:18,779 ♬「日々 恋をして 胸を焦がしたい」 15 00:01:18,779 --> 00:01:28,121 ♬「いたずらな空にも 悔やんでいられない」 16 00:01:28,121 --> 00:01:37,297 ♬「ほら 笑うのよ 赤い太陽のように」 17 00:01:37,297 --> 00:01:41,969 ♬「いつの日も雨に負けるもんか」 18 00:01:41,969 --> 00:01:50,444 ♬「今日の日も 涙に負けるもんか」 19 00:01:50,444 --> 00:01:54,648 「何や この子 新しく来る言うてた子か?➡ 20 00:01:54,648 --> 00:01:59,453 若いなあ。 どうせ続かんやろ」。 21 00:01:59,453 --> 00:02:04,925 「鼻の下にある あれ 鼻くそちゃう?➡ 22 00:02:04,925 --> 00:02:07,394 ハエや!」。 23 00:02:07,394 --> 00:02:10,931 「どうでもええわ。 あと10分寝よ」。 24 00:02:10,931 --> 00:02:13,233 あ…。 25 00:02:18,805 --> 00:02:47,501 ♬~ 26 00:02:49,302 --> 00:02:51,304 ちょっと ちょっと。 27 00:02:51,304 --> 00:02:55,509 ここ座って。 お話があるの。 28 00:02:57,177 --> 00:03:00,914 (さだ)まず 私から話すわ。 29 00:03:00,914 --> 00:03:06,253 あのな ここでの仕事やけど。 はい。 30 00:03:06,253 --> 00:03:12,592 ここは 賄い付きで お部屋を貸してるの。 はい。 31 00:03:12,592 --> 00:03:18,398 朝ごはんから始まって 生活のこまごましたこと➡ 32 00:03:18,398 --> 00:03:24,604 洗濯も掃除もしますいうて お家賃高めに頂いてるの。 33 00:03:24,604 --> 00:03:28,942 はい。 今は 私を含めて4人いてる。 34 00:03:28,942 --> 00:03:33,613 分かる? 大久保さんの後を引き継いで➡ 35 00:03:33,613 --> 00:03:39,119 あなた1人で 大人4人のお世話をするいうこと。 36 00:03:39,119 --> 00:03:41,621 はい。 無理や。 37 00:03:41,621 --> 00:03:46,493 (さだ)お父さんが「できる」言うから お願いすることにしたんやけど…。 38 00:03:46,493 --> 00:03:52,299 そんなん 親の欲目でっせ。 こんな子にできるわけあらへん。 39 00:03:52,299 --> 00:03:58,972 ごめんなあ。 もうちょっと 年いった大人の人がええ言うの。 40 00:03:58,972 --> 00:04:02,743 ちょっと待って下さい。 うち できます。 41 00:04:02,743 --> 00:04:08,915 信楽で ごはん炊いたり 大根たいたり 食事を毎日作ってたんです。 42 00:04:08,915 --> 00:04:11,251 掃除も洗濯もやってました。 43 00:04:11,251 --> 00:04:15,255 そら 何にもできへんとは 思てへんのやで? 44 00:04:15,255 --> 00:04:21,595 ほな 何で? 何でですか!? う~ん…。 45 00:04:21,595 --> 00:04:26,800 うち 一生懸命 働きます! 46 00:04:33,774 --> 00:04:38,645 ここに お皿が3枚ある。 47 00:04:38,645 --> 00:04:43,950 この1枚は 家族のために磨きます。 48 00:04:43,950 --> 00:04:49,289 この1枚は 仕事やから磨きます。 49 00:04:49,289 --> 00:04:58,999 最後の1枚は 家族や仕事や関係なしに 一生懸命 心込めて磨きます。 50 00:05:00,567 --> 00:05:06,273 さあ どのお皿がきれいになるでしょうか? 51 00:05:11,077 --> 00:05:14,281 このお皿です。 52 00:05:20,787 --> 00:05:25,091 皆 おんなじや。 えっ? 53 00:05:25,091 --> 00:05:29,262 お皿なんか磨いたら きれいになるわ。 54 00:05:29,262 --> 00:05:31,198 ええ…? 55 00:05:31,198 --> 00:05:38,605 最初に言うたけど 大久保さんは 若い時から荒木家で女中さんやってたの。 56 00:05:38,605 --> 00:05:42,943 そのあと結婚して 4人のお子さん育て上げて➡ 57 00:05:42,943 --> 00:05:46,413 厳しいおしゅうとめさんも看取って➡ 58 00:05:46,413 --> 00:05:51,952 家の中のこと ず~っとやってきた人なの。 59 00:05:51,952 --> 00:05:58,291 一生懸命やったからて 仕事やから割り切ってやったからて➡ 60 00:05:58,291 --> 00:06:03,897 どんな気持ちでやったかて 人から見たら大して変わらん。 61 00:06:03,897 --> 00:06:07,367 何でか? 62 00:06:07,367 --> 00:06:13,740 誰にでもできる仕事やと 思われてまっさかいな。 63 00:06:13,740 --> 00:06:17,911 さだちゃんみたいに 乳あて…。 (さだ)ブラジャー。 64 00:06:17,911 --> 00:06:21,381 それの それの… あれの ほら…。 (さだ)デザイン。 65 00:06:21,381 --> 00:06:25,585 デザインして 皆から 「すてきや すてきや」って言われてる➡ 66 00:06:25,585 --> 00:06:27,621 仕事とはちゃいまっせ。 67 00:06:27,621 --> 00:06:32,092 信楽のお家の手伝いとも違います。 68 00:06:32,092 --> 00:06:36,096 褒めてくれるお母はんは いてへん。 69 00:06:38,265 --> 00:06:45,772 ここは 家族でも親戚でもない 赤の他人の寄り集まりや。 70 00:06:45,772 --> 00:06:49,643 仕事も暮らしぶりも いろいろや。 71 00:06:49,643 --> 00:06:54,948 あんたみたいな若い子には無理や。 そんなこと…。 72 00:06:54,948 --> 00:06:58,785 早速 あんな失態してしもうたやろ。 73 00:06:58,785 --> 00:07:01,688 あんな失態…? 74 00:07:01,688 --> 00:07:08,061 隣のふすま 倒したんやて?➡ 75 00:07:08,061 --> 00:07:12,232 あそこの部屋に住んでる ちや子さんいう人は➡ 76 00:07:12,232 --> 00:07:15,068 女やけど 新聞記者よ。➡ 77 00:07:15,068 --> 00:07:23,076 不規則な生活で 空いた時間に帰ってきて 体を休めてはるの。 78 00:07:28,581 --> 00:07:32,452 (大久保)断言します。➡ 79 00:07:32,452 --> 00:07:38,591 あんたには無理や。 信楽帰り。 80 00:07:38,591 --> 00:07:46,766 ♬~ 81 00:07:46,766 --> 00:07:50,103 あの! ふすまを倒して ほんまに すいませんでした! 82 00:07:50,103 --> 00:07:52,772 ああ…。 ほんまに… ほんまに すいませんでした! 83 00:07:52,772 --> 00:07:55,408 うち…。 ああ 自己紹介やったら明日にして。 84 00:07:55,408 --> 00:07:59,112 あ… それが…。 何? 新しい女中さんちゃうの? 85 00:07:59,112 --> 00:08:03,550 それが うちには務まらへんて 明日帰れ言われまして…。 86 00:08:03,550 --> 00:08:08,855 ほな 元気で。 元気なわけないやん。 87 00:08:10,423 --> 00:08:14,928 すみません。 行ってらっしゃいませ! 88 00:08:35,248 --> 00:08:39,252 (戸を閉めようとする音) 89 00:08:46,393 --> 00:08:49,396 うん? 90 00:08:53,266 --> 00:08:55,602 あ…。 91 00:08:55,602 --> 00:09:21,294 ♬~ 92 00:09:24,764 --> 00:09:30,069 最後に ごはんをごちそうになりました。 93 00:09:30,069 --> 00:09:35,275 …が 食欲なんてありません。 94 00:09:49,456 --> 00:09:52,158 はい。 95 00:10:08,808 --> 00:10:23,623 ♬~ 96 00:10:23,623 --> 00:10:31,297 ごはんはおいしく… しかし 悲しく…。 97 00:10:31,297 --> 00:10:43,877 ♬~ 98 00:10:43,877 --> 00:10:46,880 ハハハッ。 99 00:10:50,316 --> 00:10:57,624 最後には おいしくが勝ち ぱくぱく頂きました。 100 00:11:08,101 --> 00:11:16,409 大久保さんから おわびの手紙と お金の入った封筒を渡されました。 101 00:11:34,627 --> 00:11:40,967 荷造りした時に 入れた覚えのない物が入っていました。 102 00:11:40,967 --> 00:11:47,273 臭っ…! くっさ… 何!? 103 00:12:17,103 --> 00:12:20,607 (マツ)「喜美子へ。➡ 104 00:12:20,607 --> 00:12:26,279 余計なこと言うな 言われてるので 要点だけ書きます。➡ 105 00:12:26,279 --> 00:12:32,151 同封した葉書には こっちの住所と宛名が書いてある。➡ 106 00:12:32,151 --> 00:12:35,989 そのまま送れば お母ちゃんに届く。➡ 107 00:12:35,989 --> 00:12:39,826 魔法の葉書や。➡ 108 00:12:39,826 --> 00:12:46,132 用意したんは お母ちゃんちゃうで。 陽子さんたちです。➡ 109 00:12:46,132 --> 00:12:51,004 あんたのために縫うたブラウスと スカートと一緒に届けてくれました」。 110 00:12:51,004 --> 00:12:53,640  回想  (マツ)ありがとう。 111 00:12:53,640 --> 00:12:59,312 (マツ)「『信楽の人は みんな優しい』って お母ちゃんは言いました。➡ 112 00:12:59,312 --> 00:13:02,081 そしたら 陽子さんが言いました。➡ 113 00:13:02,081 --> 00:13:05,952 『頑張ってんの見てきたからや。➡ 114 00:13:05,952 --> 00:13:13,393 一生懸命お手伝いしてた喜美ちゃんを みんな よう見てきたからや』」。 115 00:13:13,393 --> 00:13:17,263  回想 (陽子)おはよう。 あっ おはようございます。 116 00:13:17,263 --> 00:13:20,266 寒いのう。 うん 寒いのう。 117 00:13:20,266 --> 00:13:25,138 ありがとう。 気張りや~。 118 00:13:25,138 --> 00:13:28,274 (泣き声) おんぶしたる。 おいで。 119 00:13:28,274 --> 00:13:31,177 はい よっこいしょ…。 120 00:13:31,177 --> 00:13:36,949 (マツ)「喜美子 どんなことでも 一生懸命やってたら➡ 121 00:13:36,949 --> 00:13:40,653 誰かが見ててくれてるんやな」。 122 00:13:45,291 --> 00:13:50,963 (マツ)「もひとつ。 お父ちゃんが 自分の手拭い入れとけ言いました。➡ 123 00:13:50,963 --> 00:13:53,866 わざと洗うてないの。➡ 124 00:13:53,866 --> 00:13:58,838 臭うて腹立つさかい 負けるもんかと 思うはずやって。➡ 125 00:13:58,838 --> 00:14:01,574 ほんまやろか?➡ 126 00:14:01,574 --> 00:14:06,746 そしたら それも魔法の手拭いや。➡ 127 00:14:06,746 --> 00:14:12,452 お父ちゃんの 働いた汗のにおいです」。 128 00:14:17,757 --> 00:14:22,628 (マツ)「ほな 体に気ぃ付けて頑張るんよ。➡ 129 00:14:22,628 --> 00:14:25,932 お母ちゃんより」。 130 00:14:25,932 --> 00:14:37,543 ♬~ 131 00:14:37,543 --> 00:14:40,780 くっさ! 132 00:14:40,780 --> 00:14:44,584 ああ… 臭い。 133 00:14:46,285 --> 00:14:50,590 臭い~!