1 00:00:02,330 --> 00:00:05,070 (さだ)私の住んでる荒木荘で➡ 2 00:00:05,070 --> 00:00:09,740 炊事 洗濯 掃除をする そういう下働きの仕事をな。 3 00:00:09,740 --> 00:00:13,540 (喜美子)ここで女中やらせてもらいます。 川原喜美子と申します。 4 00:00:13,540 --> 00:00:16,410 よろしくお願いします。 (さだ)賄い付きよ? 5 00:00:16,410 --> 00:00:18,750 うわ~い! 6 00:00:18,750 --> 00:00:21,450 うわ~…。 (ふすまにぶつかる音) 7 00:00:23,620 --> 00:00:28,920 (ちや子)うう…。 何? 何!? 8 00:00:30,760 --> 00:00:35,460 (ちや子)何!? はあ はあ…。 9 00:00:38,500 --> 00:00:40,500 ♬~ 10 00:00:40,500 --> 00:00:49,580 ♬「涙が降れば きっと消えてしまう」 11 00:00:49,580 --> 00:00:58,790 ♬「揺らぐ残り火 どうかここにいて」 12 00:00:58,790 --> 00:01:08,230 ♬「私を創る 出会いもサヨナラも」 13 00:01:08,230 --> 00:01:10,600 ♬~ 14 00:01:10,600 --> 00:01:18,910 ♬「日々 恋をして 胸を焦がしたい」 15 00:01:18,910 --> 00:01:28,250 ♬「いたずらな空にも 悔やんでいられない」 16 00:01:28,250 --> 00:01:37,430 ♬「ほら 笑うのよ 赤い太陽のように」 17 00:01:37,430 --> 00:01:42,100 ♬「いつの日も雨に負けるもんか」 18 00:01:42,100 --> 00:01:50,570 ♬「今日の日も 涙に負けるもんか」 19 00:01:50,570 --> 00:01:54,780 「何や この子 新しく来る言うてた子か?➡ 20 00:01:54,780 --> 00:01:59,580 若いなあ。 どうせ続かんやろ」。 21 00:01:59,580 --> 00:02:05,050 「鼻の下にある あれ 鼻くそちゃう?➡ 22 00:02:05,050 --> 00:02:07,520 ハエや!」。 23 00:02:07,520 --> 00:02:11,060 「どうでもええわ。 あと10分寝よ」。 24 00:02:11,060 --> 00:02:13,360 あ…。 25 00:02:18,930 --> 00:02:47,630 ♬~ 26 00:02:49,430 --> 00:02:51,430 ちょっと ちょっと。 27 00:02:51,430 --> 00:02:55,630 ここ座って。 お話があるの。 28 00:02:57,310 --> 00:03:01,040 (さだ)まず 私から話すわ。 29 00:03:01,040 --> 00:03:06,380 あのな ここでの仕事やけど。 はい。 30 00:03:06,380 --> 00:03:12,720 ここは 賄い付きで お部屋を貸してるの。 はい。 31 00:03:12,720 --> 00:03:18,530 朝ごはんから始まって 生活のこまごましたこと➡ 32 00:03:18,530 --> 00:03:24,730 洗濯も掃除もしますいうて お家賃高めに頂いてるの。 33 00:03:24,730 --> 00:03:29,070 はい。 今は 私を含めて4人いてる。 34 00:03:29,070 --> 00:03:33,740 分かる? 大久保さんの後を引き継いで➡ 35 00:03:33,740 --> 00:03:39,250 あなた1人で 大人4人のお世話をするいうこと。 36 00:03:39,250 --> 00:03:41,750 はい。 無理や。 37 00:03:41,750 --> 00:03:46,620 (さだ)お父さんが「できる」言うから お願いすることにしたんやけど…。 38 00:03:46,620 --> 00:03:52,430 そんなん 親の欲目でっせ。 こんな子にできるわけあらへん。 39 00:03:52,430 --> 00:03:59,100 ごめんなあ。 もうちょっと 年いった大人の人がええ言うの。 40 00:03:59,100 --> 00:04:02,870 ちょっと待って下さい。 うち できます。 41 00:04:02,870 --> 00:04:09,040 信楽で ごはん炊いたり 大根たいたり 食事を毎日作ってたんです。 42 00:04:09,040 --> 00:04:11,380 掃除も洗濯もやってました。 43 00:04:11,380 --> 00:04:15,380 そら 何にもできへんとは 思てへんのやで? 44 00:04:15,380 --> 00:04:21,720 ほな 何で? 何でですか!? う~ん…。 45 00:04:21,720 --> 00:04:26,920 うち 一生懸命 働きます! 46 00:04:33,900 --> 00:04:38,770 ここに お皿が3枚ある。 47 00:04:38,770 --> 00:04:44,080 この1枚は 家族のために磨きます。 48 00:04:44,080 --> 00:04:49,420 この1枚は 仕事やから磨きます。 49 00:04:49,420 --> 00:04:59,120 最後の1枚は 家族や仕事や関係なしに 一生懸命 心込めて磨きます。 50 00:05:00,700 --> 00:05:06,400 さあ どのお皿がきれいになるでしょうか? 51 00:05:11,210 --> 00:05:14,410 このお皿です。 52 00:05:20,920 --> 00:05:25,220 皆 おんなじや。 えっ? 53 00:05:25,220 --> 00:05:29,390 お皿なんか磨いたら きれいになるわ。 54 00:05:29,390 --> 00:05:31,330 ええ…? 55 00:05:31,330 --> 00:05:38,730 最初に言うたけど 大久保さんは 若い時から荒木家で女中さんやってたの。 56 00:05:38,730 --> 00:05:43,070 そのあと結婚して 4人のお子さん育て上げて➡ 57 00:05:43,070 --> 00:05:46,540 厳しいおしゅうとめさんも看取って➡ 58 00:05:46,540 --> 00:05:52,080 家の中のこと ず~っとやってきた人なの。 59 00:05:52,080 --> 00:05:58,420 一生懸命やったからて 仕事やから割り切ってやったからて➡ 60 00:05:58,420 --> 00:06:04,030 どんな気持ちでやったかて 人から見たら大して変わらん。 61 00:06:04,030 --> 00:06:07,500 何でか? 62 00:06:07,500 --> 00:06:13,870 誰にでもできる仕事やと 思われてまっさかいな。 63 00:06:13,870 --> 00:06:18,040 さだちゃんみたいに 乳あて…。 (さだ)ブラジャー。 64 00:06:18,040 --> 00:06:21,510 それの それの… あれの ほら…。 (さだ)デザイン。 65 00:06:21,510 --> 00:06:25,710 デザインして 皆から 「すてきや すてきや」って言われてる➡ 66 00:06:25,710 --> 00:06:27,750 仕事とはちゃいまっせ。 67 00:06:27,750 --> 00:06:32,220 信楽のお家の手伝いとも違います。 68 00:06:32,220 --> 00:06:36,220 褒めてくれるお母はんは いてへん。 69 00:06:38,390 --> 00:06:45,900 ここは 家族でも親戚でもない 赤の他人の寄り集まりや。 70 00:06:45,900 --> 00:06:49,770 仕事も暮らしぶりも いろいろや。 71 00:06:49,770 --> 00:06:55,080 あんたみたいな若い子には無理や。 そんなこと…。 72 00:06:55,080 --> 00:06:58,910 早速 あんな失態してしもうたやろ。 73 00:06:58,910 --> 00:07:01,820 あんな失態…? 74 00:07:01,820 --> 00:07:08,190 隣のふすま 倒したんやて?➡ 75 00:07:08,190 --> 00:07:12,360 あそこの部屋に住んでる ちや子さんいう人は➡ 76 00:07:12,360 --> 00:07:15,200 女やけど 新聞記者よ。➡ 77 00:07:15,200 --> 00:07:23,200 不規則な生活で 空いた時間に帰ってきて 体を休めてはるの。 78 00:07:28,710 --> 00:07:32,580 (大久保)断言します。➡ 79 00:07:32,580 --> 00:07:38,720 あんたには無理や。 信楽帰り。 80 00:07:38,720 --> 00:07:46,900 ♬~ 81 00:07:46,900 --> 00:07:50,230 あの! ふすまを倒して ほんまに すいませんでした! 82 00:07:50,230 --> 00:07:52,900 ああ…。 ほんまに… ほんまに すいませんでした! 83 00:07:52,900 --> 00:07:55,540 うち…。 ああ 自己紹介やったら明日にして。 84 00:07:55,540 --> 00:07:59,240 あ… それが…。 何? 新しい女中さんちゃうの? 85 00:07:59,240 --> 00:08:03,680 それが うちには務まらへんて 明日帰れ言われまして…。 86 00:08:03,680 --> 00:08:08,980 ほな 元気で。 元気なわけないやん。 87 00:08:10,550 --> 00:08:15,050 すみません。 行ってらっしゃいませ! 88 00:08:35,380 --> 00:08:39,380 (戸を閉めようとする音) 89 00:08:46,520 --> 00:08:49,520 うん? 90 00:08:53,400 --> 00:08:55,730 あ…。 91 00:08:55,730 --> 00:09:21,430 ♬~ 92 00:09:24,890 --> 00:09:30,200 最後に ごはんをごちそうになりました。 93 00:09:30,200 --> 00:09:35,400 …が 食欲なんてありません。 94 00:09:49,580 --> 00:09:52,280 はい。 95 00:10:08,940 --> 00:10:23,750 ♬~ 96 00:10:23,750 --> 00:10:31,430 ごはんはおいしく… しかし 悲しく…。 97 00:10:31,430 --> 00:10:44,010 ♬~ 98 00:10:44,010 --> 00:10:47,010 ハハハッ。 99 00:10:50,450 --> 00:10:57,750 最後には おいしくが勝ち ぱくぱく頂きました。 100 00:11:08,230 --> 00:11:16,530 大久保さんから おわびの手紙と お金の入った封筒を渡されました。 101 00:11:34,760 --> 00:11:41,100 荷造りした時に 入れた覚えのない物が入っていました。 102 00:11:41,100 --> 00:11:47,400 臭っ…! くっさ… 何!? 103 00:12:17,230 --> 00:12:20,740 (マツ)「喜美子へ。➡ 104 00:12:20,740 --> 00:12:26,410 余計なこと言うな 言われてるので 要点だけ書きます。➡ 105 00:12:26,410 --> 00:12:32,280 同封した葉書には こっちの住所と宛名が書いてある。➡ 106 00:12:32,280 --> 00:12:36,120 そのまま送れば お母ちゃんに届く。➡ 107 00:12:36,120 --> 00:12:39,950 魔法の葉書や。➡ 108 00:12:39,950 --> 00:12:46,260 用意したんは お母ちゃんちゃうで。 陽子さんたちです。➡ 109 00:12:46,260 --> 00:12:51,130 あんたのために縫うたブラウスと スカートと一緒に届けてくれました」。 110 00:12:51,130 --> 00:12:53,770 [ 回想 ] (マツ)ありがとう。 111 00:12:53,770 --> 00:12:59,440 (マツ)「『信楽の人は みんな優しい』って お母ちゃんは言いました。➡ 112 00:12:59,440 --> 00:13:02,210 そしたら 陽子さんが言いました。➡ 113 00:13:02,210 --> 00:13:06,080 『頑張ってんの見てきたからや。➡ 114 00:13:06,080 --> 00:13:13,520 一生懸命お手伝いしてた喜美ちゃんを みんな よう見てきたからや』」。 115 00:13:13,520 --> 00:13:17,390 [ 回想 ] (陽子)おはよう。 あっ おはようございます。 116 00:13:17,390 --> 00:13:20,400 寒いのう。 うん 寒いのう。 117 00:13:20,400 --> 00:13:25,270 ありがとう。 気張りや~。 118 00:13:25,270 --> 00:13:28,400 (泣き声) おんぶしたる。 おいで。 119 00:13:28,400 --> 00:13:31,310 はい よっこいしょ…。 120 00:13:31,310 --> 00:13:37,080 (マツ)「喜美子 どんなことでも 一生懸命やってたら➡ 121 00:13:37,080 --> 00:13:40,780 誰かが見ててくれてるんやな」。 122 00:13:45,420 --> 00:13:51,090 (マツ)「もひとつ。 お父ちゃんが 自分の手拭い入れとけ言いました。➡ 123 00:13:51,090 --> 00:13:54,000 わざと洗うてないの。➡ 124 00:13:54,000 --> 00:13:58,970 臭うて腹立つさかい 負けるもんかと 思うはずやって。➡ 125 00:13:58,970 --> 00:14:01,700 ほんまやろか?➡ 126 00:14:01,700 --> 00:14:06,880 そしたら それも魔法の手拭いや。➡ 127 00:14:06,880 --> 00:14:12,580 お父ちゃんの 働いた汗のにおいです」。 128 00:14:17,890 --> 00:14:22,760 (マツ)「ほな 体に気ぃ付けて頑張るんよ。➡ 129 00:14:22,760 --> 00:14:26,060 お母ちゃんより」。 130 00:14:26,060 --> 00:14:37,670 ♬~ 131 00:14:37,670 --> 00:14:40,910 くっさ! 132 00:14:40,910 --> 00:14:44,710 ああ… 臭い。 133 00:14:46,410 --> 00:14:50,710 臭い~!