1 00:00:05,633 --> 00:00:06,967 (徳川慶喜(とくがわよしのぶ))渋沢篤太夫(しぶさわとくだゆう)よ 2 00:00:08,834 --> 00:00:09,834 (渋沢篤太夫)はっ 3 00:00:11,266 --> 00:00:12,367 よくやった 4 00:00:13,333 --> 00:00:14,333 ははっ! 5 00:00:14,834 --> 00:00:18,900 この道で 更なるお役に立てるよう 精進してまいります! 6 00:00:20,300 --> 00:00:22,900 (語り)一橋家(ひとつばしけ)の財政立て直しに― 7 00:00:23,066 --> 00:00:26,533 自分の居場所を見つけた 篤太夫でしたが… 8 00:00:28,266 --> 00:00:29,266 (徳川家茂(いえもち))う… 9 00:00:29,333 --> 00:00:30,333 (板倉勝静(いたくらかつきよ))上様? 10 00:00:31,300 --> 00:00:33,033 (板倉)上様… 上様! 11 00:00:33,533 --> 00:00:38,100 (語り)その運命が大きく 変わろうとしていました 12 00:00:52,633 --> 00:00:54,200 (家茂)一橋殿か? 13 00:00:55,867 --> 00:00:56,867 ははっ 14 00:00:58,000 --> 00:01:00,467 老中らから 私とお会いになれば― 15 00:01:00,533 --> 00:01:03,400 病が嵩(こう)じると 追いやられておりましたが― 16 00:01:04,333 --> 00:01:06,033 ようやくお目通りがかないました 17 00:01:07,767 --> 00:01:09,400 お好きな梨と葡萄(ぶどう)をお持ち… 18 00:01:09,467 --> 00:01:10,734 (家茂)一橋殿 19 00:01:12,734 --> 00:01:14,767 私は まだ死ねぬのじゃ 20 00:01:18,734 --> 00:01:23,333 今の徳川を残して死んでは 先の上様… 21 00:01:27,133 --> 00:01:28,200 またあの時― 22 00:01:29,967 --> 00:01:33,867 命をかけて私を立てた 井伊(いい)に面目が立たぬ 23 00:01:34,100 --> 00:01:36,300 (慶喜)上様! お体に障りまする 24 00:01:40,266 --> 00:01:41,433 それだけではない 25 00:01:43,367 --> 00:01:48,000 私は 天子様の妹君を 御台(みだい)に頂きながら― 26 00:01:48,066 --> 00:01:49,333 攘夷(じょうい)が果たせなかった! 27 00:01:51,233 --> 00:01:56,967 だからこそ 天子様が憎む 長州(ちょうしゅう)だけは倒さねばならぬのだ! 28 00:01:59,667 --> 00:02:01,533 あなたに その覚悟はあるか! 29 00:02:14,433 --> 00:02:18,633 先の上様や掃部頭(かもんのかみ)殿のお目は 確かであった 30 00:02:21,467 --> 00:02:22,467 ですから… 31 00:02:23,333 --> 00:02:26,333 必ずやご本復の後― 32 00:02:28,100 --> 00:02:29,500 徳川をお守りください 33 00:02:37,567 --> 00:02:38,834 私はずっと… 34 00:02:40,834 --> 00:02:45,200 あなたとこうして 腹を割って話してみたかった 35 00:02:50,367 --> 00:02:53,767 (荒い息遣い) 36 00:02:57,300 --> 00:02:59,600 (典医)一橋様 恐れながら… 37 00:02:59,767 --> 00:03:00,266 (典医)湯を! 38 00:03:00,266 --> 00:03:00,834 (典医)湯を! 39 00:03:00,266 --> 00:03:00,834 (家臣)はっ 40 00:03:00,834 --> 00:03:01,266 (家臣)はっ 41 00:03:04,934 --> 00:03:06,300 (語り)この3日後― 42 00:03:07,433 --> 00:03:12,934 第十四代将軍 徳川家茂は 亡くなりました 43 00:03:14,834 --> 00:03:16,133 (伝令)ご注進! ご注進! 44 00:03:16,667 --> 00:03:19,500 大坂(おおさか)より ご注進! 45 00:03:21,467 --> 00:03:24,734 (猪飼勝三郎(いかいかつさぶろう)) 何! 上様が身罷(みまか)られた!? 46 00:03:24,934 --> 00:03:26,700 (伝令)あっ ちょ… 猪飼様! 47 00:03:30,800 --> 00:03:33,066 猪飼様… 今 何と? 48 00:03:38,934 --> 00:03:40,967 (猪飼) しばらく喪は伏せるとのこと 49 00:03:41,200 --> 00:03:42,266 誰にも言うなよ 50 00:03:42,900 --> 00:03:45,367 ははっ しかし… 51 00:03:46,166 --> 00:03:49,800 (小声で)公方(くぼう)様は いまだお若く お世継ぎもおられなかったはず 52 00:03:51,633 --> 00:03:54,467 これから先 将軍家はどうなるのですか? 53 00:03:54,900 --> 00:03:56,100 (猪飼)ひょっとすると… 54 00:03:56,667 --> 00:03:59,900 いや ひょっとなどせずとも ほかに人はおらぬ 55 00:04:00,834 --> 00:04:04,533 我が殿が 将軍になるやもしれぬ 56 00:04:07,900 --> 00:04:08,900 え!? 57 00:04:09,533 --> 00:04:14,533 ♪~ 58 00:06:54,900 --> 00:06:59,900 ~♪ 59 00:07:00,667 --> 00:07:03,600 (徳川家康(いえやす)) こんばんは 徳川家康です 60 00:07:05,266 --> 00:07:07,533 今までも何度も言いましたが― 61 00:07:08,400 --> 00:07:12,567 徳川の世は 長らく戦のない時代だった 62 00:07:13,934 --> 00:07:19,367 徳川将軍14人の中で 戦の陣で亡くなったのは― 63 00:07:20,166 --> 00:07:22,633 この家茂ただ一人です 64 00:07:24,867 --> 00:07:28,533 ご苦労 本当にご苦労さんだった 65 00:07:31,200 --> 00:07:36,100 そして家茂の死によって 徳川の運命も― 66 00:07:36,800 --> 00:07:42,567 また 篤太夫の運命も 大きく動き出します 67 00:07:44,300 --> 00:07:46,300 (篤太夫)殿! 建白を! 68 00:07:46,367 --> 00:07:49,467 (猪飼)やめよ 殿は急ぎ 大坂に下られると申したであろう 69 00:07:49,767 --> 00:07:51,166 しかし 今言わねぇと― 70 00:07:51,600 --> 00:07:53,600 次いつ申し上げられるか 分かりませぬ 71 00:07:54,533 --> 00:07:55,533 殿! 72 00:07:55,967 --> 00:07:56,967 (猪飼)おい! 73 00:07:57,033 --> 00:07:59,133 将軍家を お継ぎになってはなりませぬ! 74 00:08:00,834 --> 00:08:01,834 (猪飼)止めよ! 止めよ! 75 00:08:02,266 --> 00:08:03,300 (篤太夫)今の公儀は― 76 00:08:03,667 --> 00:08:07,834 いくら賢明な殿が 一 二の修繕を加えようが― 77 00:08:08,133 --> 00:08:10,066 倒壊を免れることはできませぬ! 78 00:08:10,133 --> 00:08:12,300 (原市之進(はらいちのしん)) あやつ またあのような… 79 00:08:14,000 --> 00:08:15,333 (猪飼)渋沢 やめよ! 80 00:08:15,800 --> 00:08:16,934 (篤太夫)そしてそうなれば― 81 00:08:17,367 --> 00:08:20,166 非難は必ずや 殿のご一身に集まりましょう 82 00:08:21,367 --> 00:08:22,867 かつての某(それがし)のような― 83 00:08:23,166 --> 00:08:25,400 血の気の多い者が 国中から集まり― 84 00:08:25,934 --> 00:08:29,100 “殿を倒せ 倒せ”と 立ち上がるに決まっておる 85 00:08:32,000 --> 00:08:33,767 かように危ねぇと 分かっている道を― 86 00:08:34,400 --> 00:08:36,934 あえて進まれることわりが どこにございましょうか 87 00:08:46,467 --> 00:08:47,967 言いたいことは それだけか? 88 00:08:56,400 --> 00:08:57,400 (篤太夫)ははっ 89 00:08:58,600 --> 00:09:00,967 今となってはもう それ一つ― 90 00:09:01,700 --> 00:09:03,400 それのみにてございまする 91 00:09:05,200 --> 00:09:10,834 どうか どうか一橋にお残りください 92 00:09:13,033 --> 00:09:14,200 そして某に― 93 00:09:16,867 --> 00:09:18,900 あなた様を支えさせてください 94 00:09:45,367 --> 00:09:48,066 (松平乗謨(まつだいらのりかた))老中の多くが 一橋様を推しており… 95 00:09:48,133 --> 00:09:51,100 (天璋院(てんしょういん))ならぬ! 一橋はならぬ 96 00:09:54,667 --> 00:09:56,166 (天璋院) 跡目のことは私が… 97 00:09:57,500 --> 00:09:59,400 上様から じかに伺っておる 98 00:10:01,200 --> 00:10:03,066 私に万が一のことがあらば… 99 00:10:09,567 --> 00:10:13,567 田安(たやす)の亀之助(かめのすけ)殿を 跡目に定めていただきたいのです 100 00:10:14,000 --> 00:10:15,000 え? 101 00:10:16,166 --> 00:10:20,567 (天璋院)“田安亀之助殿と定めよ”との お言葉であった 102 00:10:21,433 --> 00:10:24,033 (乗謨) しかし 亀之助様はまだ幼く… 103 00:10:24,100 --> 00:10:26,734 控えよ! ご遺命であるぞ! 104 00:10:26,800 --> 00:10:27,800 (乗謨)ははっ! 105 00:10:36,066 --> 00:10:40,700 (天璋院)次の将軍は 慶喜殿が お世継ぎになるがよいと― 106 00:10:40,767 --> 00:10:44,033 申されたとは まことでございまするか? 107 00:10:44,100 --> 00:10:45,500 (和宮(かずのみや))天璋院様 108 00:10:48,133 --> 00:10:49,633 ご覧くださいませ 109 00:10:52,767 --> 00:10:56,033 お城にお戻りになられた― 110 00:10:57,533 --> 00:11:01,967 上様の亡骸(なきがら)と共に これが… 111 00:11:11,300 --> 00:11:15,467 (天璋院)まぁ 美しい唐織(からおり) 112 00:11:17,567 --> 00:11:18,700 織物など― 113 00:11:23,133 --> 00:11:25,667 上様がおられればこそのもの 114 00:11:28,400 --> 00:11:29,667 今はもう… 115 00:11:31,700 --> 00:11:35,333 (泣き声) 116 00:11:41,400 --> 00:11:43,433 (和宮)慶喜が継げばよい 117 00:11:47,133 --> 00:11:48,533 将軍など… 118 00:11:51,367 --> 00:11:53,667 将軍にさえならなければ― 119 00:11:55,400 --> 00:11:58,967 上様が あれほどお苦しみになることは― 120 00:12:00,133 --> 00:12:01,567 あらしゃられませなんだ 121 00:12:05,000 --> 00:12:06,000 次は… 122 00:12:08,333 --> 00:12:11,633 次は慶喜が苦しめばよいのです 123 00:12:22,500 --> 00:12:24,667 (板倉)急ぎ 一橋様には― 124 00:12:25,100 --> 00:12:29,033 将軍職ご相続のご決断を 頂かねばなりませぬ 125 00:12:29,800 --> 00:12:30,867 (松平定敬(さだあき))朝廷も我々も― 126 00:12:31,166 --> 00:12:33,166 一橋様以外おらぬと 思っております 127 00:12:33,233 --> 00:12:35,333 (松平容保(かたもり))しかり 越前(えちぜん)様も― 128 00:12:35,400 --> 00:12:37,300 “紀州(きしゅう)公 水戸(みと)公は頼りなく―” 129 00:12:37,567 --> 00:12:39,133 “田安公では幼すぎ―” 130 00:12:39,333 --> 00:12:41,600 “一橋様のほかにはおらぬ”と 申されておる 131 00:12:45,600 --> 00:12:49,867 徳川の世は もはや 滅亡するよりないのかもしれぬ 132 00:12:50,433 --> 00:12:52,667 (板倉)滅亡!? なんと! 133 00:12:52,734 --> 00:12:54,266 それは あまりのお言葉 134 00:12:54,333 --> 00:12:55,333 さようでございます 135 00:12:57,700 --> 00:12:58,700 (永井尚志(ながいなおゆき))そ… 136 00:12:59,100 --> 00:13:03,900 (永井)相続は 先の上様の ご遺命でございまする! 137 00:13:15,400 --> 00:13:18,033 上様は 病の中おっしゃられた 138 00:13:18,934 --> 00:13:24,934 この先 政務を一橋様に委任し ご自分は養生に専念したいと! 139 00:13:28,967 --> 00:13:29,967 板倉 140 00:13:30,033 --> 00:13:31,033 はっ 141 00:13:31,633 --> 00:13:32,633 (慶喜)まことか 142 00:13:35,033 --> 00:13:36,033 ははっ… 143 00:13:38,066 --> 00:13:41,834 (永井)一橋様とて 実のところはお分かりのはずです 144 00:13:43,133 --> 00:13:46,800 日の本を救うには これよりほかに道はないのだと! 145 00:13:54,667 --> 00:13:55,667 (慶喜)なるほど 146 00:13:58,100 --> 00:14:00,166 もしその言が まことであるならば― 147 00:14:03,033 --> 00:14:04,333 私はこの先― 148 00:14:06,000 --> 00:14:09,200 私の思うように 徳川に 大鉈(おおなた)を振るうやもしれぬが― 149 00:14:11,400 --> 00:14:12,867 それで構わぬのだな? 150 00:14:15,000 --> 00:14:16,000 (永井)ははっ 151 00:14:18,900 --> 00:14:19,900 (板倉たち)はっ 152 00:14:28,967 --> 00:14:30,200 (語り)数日後… 153 00:14:31,166 --> 00:14:34,200 慶喜が 徳川宗家を相続 154 00:14:35,300 --> 00:14:40,066 次の将軍となることが 事実上決まりました 155 00:14:41,400 --> 00:14:45,700 (孝明(こうめい)天皇)家茂に代わり 速やかに追討の功を奏し― 156 00:14:46,400 --> 00:14:48,266 誠忠(せいちゅう)を励むべし 157 00:14:49,900 --> 00:14:52,633 (孝明天皇)御剣一腰(ぎょけんひとこし)これを与う 158 00:14:54,133 --> 00:14:56,800 必ず長州を討て 159 00:15:01,600 --> 00:15:02,600 ははっ 160 00:15:04,066 --> 00:15:06,367 (家臣)殿がご宗家を お継ぎになるそうじゃ! 161 00:15:06,433 --> 00:15:08,000 (家臣たち)おお! 162 00:15:08,066 --> 00:15:10,934 (家臣)俺たちがご直参の士(さむらい)になるとは! のう! 163 00:15:11,100 --> 00:15:12,300 (家臣)こんな誉れはない! のう! 164 00:15:12,367 --> 00:15:13,367 (須永虎之助(すながとらのすけ)) おお! 165 00:15:13,433 --> 00:15:14,433 そりゃすげぇ! 166 00:15:18,400 --> 00:15:20,033 (渋沢成一郎(せいいちろう)) 喜んでる場合ではねぇ! 167 00:15:22,000 --> 00:15:25,600 幕吏 幕吏と言っていた俺たちが 直臣(じきしん)とは… 168 00:15:26,433 --> 00:15:28,567 (市之進)おい 騒いでる場合ではないぞ 169 00:15:30,100 --> 00:15:33,467 殿がご宗家を継いだからには 先の公方様に代わり― 170 00:15:33,700 --> 00:15:36,467 長州を征討するのも このお家ということになる 171 00:15:37,967 --> 00:15:41,633 我らは直ちに大坂城に入り 長州を討つ 172 00:15:42,867 --> 00:15:44,166 長州を討つ? 173 00:15:46,367 --> 00:15:49,367 (市之進)出陣の軍勢 部署 名を申し伝える 174 00:15:53,467 --> 00:15:54,500 (虎之助)お! あった! 175 00:15:56,000 --> 00:15:59,967 俗事役で出陣だ 喜作(きさく)さんも一緒だと 176 00:16:03,200 --> 00:16:06,000 で 俗事役って何だい? 177 00:16:06,800 --> 00:16:09,200 戦う兵たちのあれこれを 助ける役だ 178 00:16:11,867 --> 00:16:14,800 (川村恵十郎(かわむらえじゅうろう)) 篤太夫 お主はこっちだ 179 00:16:21,333 --> 00:16:22,834 (篤太夫)御用人手附(てつけ)? 180 00:16:23,066 --> 00:16:26,800 (恵十郎)そうだ お主も 御用人方の補佐として本営に入れ 181 00:16:27,667 --> 00:16:30,600 (家臣)本営に… 渋沢! 大出世ではないか! 182 00:16:30,667 --> 00:16:33,967 いや しかし 某には勘定の役目が… 183 00:16:34,133 --> 00:16:35,533 (市之進)殿直々(じきじき)の命だ 184 00:16:37,000 --> 00:16:38,600 あれほど失礼を 申したというのに― 185 00:16:39,000 --> 00:16:41,000 殿は お主を 入り用と申されておる 186 00:16:41,734 --> 00:16:43,166 心して戦の支度をせよ 187 00:16:44,567 --> 00:16:45,667 皆も同様じゃ! 188 00:16:46,133 --> 00:16:47,200 (家臣たち)おお! 189 00:16:51,266 --> 00:16:52,667 (篤太夫)“一筆申し上げます” 190 00:16:54,333 --> 00:16:57,367 “あなた様を こちらへ呼ぶ日を楽しみにし―” 191 00:16:57,967 --> 00:16:59,934 “度々手紙を 送っておりましたが…” 192 00:17:00,633 --> 00:17:01,633 “この度―” 193 00:17:02,867 --> 00:17:07,367 “長州へ出陣される殿の お供をするよう命じられました” 194 00:17:09,900 --> 00:17:11,333 (渋沢ゑい)長州に出陣? 195 00:17:14,066 --> 00:17:17,633 (篤太夫)“武士となった上は 戦は常なること” 196 00:17:18,767 --> 00:17:19,967 “致し方ありません” 197 00:17:23,066 --> 00:17:24,500 “送った一包みは―” 198 00:17:26,133 --> 00:17:29,333 “私の形見のつもりの懐剣です” 199 00:17:31,533 --> 00:17:32,567 (ゑい)形見って… 200 00:17:48,934 --> 00:17:52,667 (渋沢市郎右衛門(いちろうえもん)) 栄一(えいいち)は侍となったんだ 201 00:17:54,834 --> 00:17:56,967 死ぬ覚悟なんだんべ 202 00:17:58,734 --> 00:17:59,734 そんな… 203 00:18:02,166 --> 00:18:05,133 (市郎右衛門) あいつは百姓じゃなく― 204 00:18:06,166 --> 00:18:09,767 志士として この国のために― 205 00:18:11,166 --> 00:18:14,133 命をささげる覚悟で 出ていったんだい 206 00:18:16,133 --> 00:18:19,400 (市郎右衛門) 一橋の殿様のお供となるとは― 207 00:18:20,667 --> 00:18:22,600 誉れなことじゃねぇか 208 00:18:23,066 --> 00:18:24,100 何が誉れだい 209 00:18:27,700 --> 00:18:28,967 こんなことになるんだったら― 210 00:18:30,500 --> 00:18:32,200 やっぱり 行がせなけりゃよかったんだ… 211 00:18:32,266 --> 00:18:34,734 (渋沢てい) かっさま しかたねぇんだ 212 00:18:35,834 --> 00:18:38,000 兄さまが己で選んだ道なんだから 213 00:18:40,734 --> 00:18:43,900 (渋沢うた) かっさま どうしたん? 214 00:18:56,400 --> 00:18:57,400 戦か… 215 00:19:02,967 --> 00:19:07,433 (語り)しかし 北九州(きたきゅうしゅう)で 善戦していた幕府軍が― 216 00:19:07,500 --> 00:19:10,967 小倉城(こくらじょう)を失って 逃げ出す事態となり… 217 00:19:12,333 --> 00:19:16,233 幕府の敗北は 決定的になりました 218 00:19:18,967 --> 00:19:21,667 もはやここまでだ 引き際であろう 219 00:19:24,700 --> 00:19:27,367 まだ終わっておりませぬ 進発いたしましょう 220 00:19:27,433 --> 00:19:29,867 (定敬)さよう 天子様に節刀(せっとう)を賜りながら― 221 00:19:29,934 --> 00:19:30,934 兵を出さぬとは… 222 00:19:31,000 --> 00:19:34,000 今や天子様以外 誰もこの戦を望んでおらぬのだ 223 00:19:34,834 --> 00:19:36,900 天子様にも お分かりいただかねばならぬ 224 00:19:38,100 --> 00:19:40,934 和睦の勅命をくださるよう 関白殿下にとりなしを頼め 225 00:19:41,000 --> 00:19:42,000 はっ 226 00:19:42,400 --> 00:19:43,700 長州に密使も送りたい 227 00:19:43,900 --> 00:19:46,967 (板倉)ははっ 軍艦奉行の 勝麟太郎(かつりんたろう)に行かせまする 228 00:19:58,133 --> 00:19:59,133 兄上… 229 00:20:02,967 --> 00:20:05,500 (孝明天皇) しかし何も思うようにならぬ 230 00:20:06,066 --> 00:20:09,700 国を閉ざすこともかなわず 長州を倒すこともできず… 231 00:20:13,000 --> 00:20:14,533 岩倉(いわくら)はどうしておる? 232 00:20:18,266 --> 00:20:22,734 (二条斉敬(にじょうなりゆき))岩倉は 和宮様を 徳川に嫁がせた賊臣にて… 233 00:20:22,800 --> 00:20:23,800 (孝明天皇)否 234 00:20:24,800 --> 00:20:29,500 岩倉には 朝廷を思う まことの心があった 235 00:20:31,000 --> 00:20:33,467 後醍醐(ごだいご)帝以来の力を 取り戻すには― 236 00:20:33,667 --> 00:20:37,200 公儀を取り込むがよいと 教えてくれたのも岩倉じゃ 237 00:20:38,633 --> 00:20:41,467 岩倉はどうしておるのか… 238 00:20:42,900 --> 00:20:44,200 (岩倉具視(ともみ)) お上(かみ)は… 239 00:20:44,633 --> 00:20:47,066 (岩倉)夷狄(いてき)が 来てから 急に 240 00:20:47,133 --> 00:20:48,533 日の本中の耳目を 241 00:20:48,600 --> 00:20:50,266 集められることに なった 242 00:20:52,200 --> 00:20:53,700 神風 起こしてくれやら 243 00:20:53,767 --> 00:20:55,400 尊王(そんのう)攘夷やら… 244 00:20:56,100 --> 00:21:00,767 けど あいにくお上は あんたんとこの国父様と違(ちご)うて― 245 00:21:01,533 --> 00:21:03,467 兵も金も何にも持ってない 246 00:21:05,200 --> 00:21:08,266 わしは 公儀を お上の踏み台にして― 247 00:21:08,467 --> 00:21:12,166 お上に それに見合うお力を つけて差し上げたかった 248 00:21:13,734 --> 00:21:18,000 ただ わしら公家は日本一頭が古い 249 00:21:18,934 --> 00:21:20,767 頑迷固陋(がんめいころう)で変わることを恐れ― 250 00:21:20,834 --> 00:21:23,333 見て見ぬふりして 蹴鞠(けまり)をするのが精いっぱい 251 00:21:23,834 --> 00:21:28,166 (トメ)せやのにこのお方 見て見ぬふりが苦手で 252 00:21:28,233 --> 00:21:29,300 やかましいな! 253 00:21:29,500 --> 00:21:31,567 ヒ~ッヒッヒ! 254 00:21:31,633 --> 00:21:33,967 (岩倉)はぁ しかし将軍がな… 255 00:21:34,433 --> 00:21:35,433 (大久保一蔵(おおくぼいちぞう))岩倉様 256 00:21:36,100 --> 00:21:40,567 我が薩摩(さつま)は うんにゃ 長州も既に幕府を捨て― 257 00:21:41,100 --> 00:21:44,500 天子様を戴(いただ)く世を 作りたかち考えちょいもす 258 00:21:47,867 --> 00:21:51,734 そうか! よう言うてくだされた! 259 00:21:53,066 --> 00:21:55,467 今こそ この長いこと続いた 武家の世を終わらせて― 260 00:21:56,734 --> 00:21:58,967 お上が王政復古を果たすのじゃ! 261 00:22:02,800 --> 00:22:05,934 (語り)慶喜が 徳川宗家を継いだことで… 262 00:22:06,300 --> 00:22:08,433 一橋家家臣の一部は― 263 00:22:08,600 --> 00:22:11,734 将軍家に 召し抱えられる運びとなり― 264 00:22:12,633 --> 00:22:14,567 篤太夫や成一郎らは― 265 00:22:14,867 --> 00:22:17,834 一橋家を 離れることになりました 266 00:22:19,667 --> 00:22:21,500 銀札のことは… 267 00:22:28,834 --> 00:22:29,834 (猪飼)渋沢 268 00:22:30,300 --> 00:22:32,133 (篤太夫)おお 猪飼様… 269 00:22:32,633 --> 00:22:33,633 ちっといいか 270 00:22:37,500 --> 00:22:41,433 私は 江戸(えど)の一橋家に 戻ることとなった 271 00:22:43,233 --> 00:22:44,233 そうですか… 272 00:22:45,500 --> 00:22:47,000 (猪飼)何だ そんな顔をして 273 00:22:47,800 --> 00:22:51,266 お主は宗家の御家人となるのだ もっと喜べ 274 00:22:51,767 --> 00:22:52,767 ははっ 275 00:22:55,734 --> 00:22:57,967 ここに仕えて2年半― 276 00:22:59,500 --> 00:23:01,000 身分は低くとも― 277 00:23:01,433 --> 00:23:06,633 平岡(ひらおか)様や猪飼様に 身に余るご温情を頂きました 278 00:23:07,800 --> 00:23:11,533 うむ 金も きちんと返してくれたしな 279 00:23:11,600 --> 00:23:13,000 あ~ ハハハハ… 280 00:23:15,400 --> 00:23:18,834 殿にも 何度も建白をさせていただき― 281 00:23:20,367 --> 00:23:22,100 艱難辛苦(かんなんしんく)しながらも― 282 00:23:23,000 --> 00:23:26,133 お家の懐を ととのえさせていただいて… 283 00:23:32,066 --> 00:23:33,333 これからだい 284 00:23:33,900 --> 00:23:34,967 これからもっと― 285 00:23:35,967 --> 00:23:38,834 一橋のお役に立つべえと 思っていたのに― 286 00:23:39,934 --> 00:23:42,567 それを なげうって 行かねばならねぇとは… 287 00:23:45,066 --> 00:23:46,233 (猪飼)やむをえまい 288 00:23:46,867 --> 00:23:48,233 そなたならきっと― 289 00:23:48,300 --> 00:23:51,533 宗家でも殿を助け よい働きができる 290 00:23:51,800 --> 00:23:53,500 いいや もう駄目だい 291 00:23:55,567 --> 00:23:59,266 ここを出りゃ 殿はもう上様です 292 00:24:01,233 --> 00:24:05,133 二度と じかに建言なんか届かねぇや 293 00:24:05,367 --> 00:24:08,266 もう… ああ~ 294 00:24:08,767 --> 00:24:12,867 (猪飼)泣くな ほら 泣くな 295 00:24:21,834 --> 00:24:25,033 (徳信院(とくしんいん))公儀の都合とはいえ ホッといたしました 296 00:24:26,800 --> 00:24:31,467 (徳信院)慶喜殿がお出になられ 美賀君(みかぎみ)まで大奥に入られては― 297 00:24:32,667 --> 00:24:33,834 この一橋も― 298 00:24:34,834 --> 00:24:39,200 どれほど寂しくなることかと 案じておりましたゆえ 299 00:24:40,633 --> 00:24:45,400 (美賀君)妾(わらわ)に御台所として 3000人の女を束ねるなど― 300 00:24:45,867 --> 00:24:47,300 土台無理な話 301 00:24:49,100 --> 00:24:52,834 それに たとえ大奥に入ったところで― 302 00:24:54,200 --> 00:24:58,000 殿は 京よりお戻りにはなられませぬ 303 00:25:07,800 --> 00:25:08,800 この先― 304 00:25:10,133 --> 00:25:15,467 もう共に暮らすことは あらしゃられませんのやろな 305 00:25:26,467 --> 00:25:29,166 (足音) 306 00:25:30,367 --> 00:25:32,066 (成一郎)栄一 行くぞ 307 00:25:33,033 --> 00:25:34,033 (篤太夫)おう 308 00:26:12,867 --> 00:26:14,900 (語り)幕府に 勤めることとなった 309 00:26:14,967 --> 00:26:16,300 篤太夫たちは 310 00:26:16,734 --> 00:26:19,533 陸軍奉行所の 書記官として 311 00:26:19,600 --> 00:26:21,033 働き始めました 312 00:26:22,133 --> 00:26:23,834 (歩兵頭)おぅい 書付(かきつけ)はどうした? 313 00:26:25,900 --> 00:26:28,300 (役人)おぅい 書付はどうした? 314 00:26:28,500 --> 00:26:30,333 (役人)おい あの書付は? 315 00:26:30,400 --> 00:26:31,500 (役人)書付 どうなった 316 00:26:32,767 --> 00:26:35,300 (森新十郎(もりしんじゅうろう)) おい新入り 早く持ってまいれ 317 00:26:38,000 --> 00:26:39,000 ははっ 318 00:26:42,066 --> 00:26:45,400 (篤太夫) やはりもう お目見えもかなわねぇ 319 00:26:47,166 --> 00:26:49,934 殿は 遠い遠いお方になっちまった 320 00:26:51,000 --> 00:26:52,000 (成一郎)あぁ 321 00:26:55,000 --> 00:26:56,567 面白くねぇなぁ 322 00:27:00,300 --> 00:27:01,467 (篤太夫) いっそ もう辞めちまうか 323 00:27:04,133 --> 00:27:08,000 しかし辞めたところでどうする? 324 00:27:11,200 --> 00:27:13,200 俺は 臣下として― 325 00:27:13,266 --> 00:27:16,233 殿をお守りしたいという志には 変わりはねぇ 326 00:27:18,734 --> 00:27:22,967 もう少し ここにおって… 何ができるかを考えてみたい 327 00:27:24,367 --> 00:27:26,967 フン 粋がりおって 328 00:27:28,533 --> 00:27:31,467 (成一郎) はあ? 粋がってなどおらぬ 329 00:27:32,633 --> 00:27:35,734 元来 お主は 男のくせに口ばかり達者で― 330 00:27:36,033 --> 00:27:37,400 武士には向いておらぬ 331 00:27:37,900 --> 00:27:41,367 辞めるなり 村で百姓に戻るなり 好きにせよ 332 00:27:42,934 --> 00:27:46,033 おめえ… 実は やっかんでんだんべ 333 00:27:46,667 --> 00:27:47,667 (成一郎)はあ? 334 00:27:47,734 --> 00:27:48,934 ヘッ そうか 335 00:27:49,867 --> 00:27:51,967 長州征討の時も おめえより俺の方が― 336 00:27:52,033 --> 00:27:53,834 ちっとんべ 重宝がられておったもんな 337 00:27:53,900 --> 00:27:55,400 (成一郎)バ… バカ言うな! 338 00:27:55,800 --> 00:27:58,467 なぜそんなことで 俺がお主をやっかむ? 339 00:27:58,533 --> 00:28:00,066 何が“お主”だい 340 00:28:01,133 --> 00:28:03,700 生意気に似合わねぇ武家言葉など 使いおって 341 00:28:04,266 --> 00:28:05,533 似合わねぇだと? 342 00:28:06,100 --> 00:28:10,333 おめえ… お主こそ 仕官して2年もたつのに― 343 00:28:10,400 --> 00:28:13,266 いつまで だんべぇ だんべぇ 言い続けるつもりだい 344 00:28:13,333 --> 00:28:15,400 はあ? だんべぇ だんべぇなんか 言ってねぇだんべぇ! 345 00:28:15,467 --> 00:28:17,133 あ~ 言ってるだんべぇ! 346 00:28:17,700 --> 00:28:19,266 毎日なっから言ってるだんべぇ! 347 00:28:19,333 --> 00:28:21,233 おい! 誰か止めよ! 348 00:28:21,300 --> 00:28:22,333 何だと おめえ… 349 00:28:22,400 --> 00:28:24,200 (役人)おい… おい! 350 00:28:25,934 --> 00:28:27,300 おい 来いよ! 351 00:28:27,533 --> 00:28:28,533 (成一郎)勝負すっか! 352 00:28:43,266 --> 00:28:44,834 (新十郎) 謀反人でございまするか? 353 00:28:45,200 --> 00:28:48,433 (溝口勝如(みぞぐちかつゆき))あぁ 京都町奉行から掛け合いが来た 354 00:28:49,166 --> 00:28:51,967 京に滞留しておる大沢(おおさわ)という 御書院番士が― 355 00:28:52,133 --> 00:28:56,200 兵器鉄砲を多くととのえ 謀反の嫌疑ありとのこと 356 00:28:57,066 --> 00:29:02,133 ついてはこの大沢を捕縛するため 誰か わしの名代を務めよ 357 00:29:02,200 --> 00:29:04,700 (新十郎)そんな恐ろしい男を 捕らえるなどとは 358 00:29:04,767 --> 00:29:07,166 (歩兵頭)新選組にでも やらせたらどうですか 359 00:29:07,734 --> 00:29:12,567 (溝口)新選組を護衛にはつけるが 大沢は この陸軍支配のもの 360 00:29:12,834 --> 00:29:14,934 ここより名代を 出さぬわけにはまいらぬ 361 00:29:15,600 --> 00:29:17,867 新選組局長に 急ぎ報(しら)せねばならぬのだ 362 00:29:17,934 --> 00:29:22,200 そうだ 手前の組に元浪人がおりまする 363 00:29:23,066 --> 00:29:25,600 攘夷かぶれの気性の激しい男で― 364 00:29:26,533 --> 00:29:30,467 大坂の代官も 頭が上がらなかったとの風聞… 365 00:29:37,333 --> 00:29:38,333 ん? 366 00:29:40,800 --> 00:29:44,400 それでは 大沢源次郎(げんじろう)という者を訪ね― 367 00:29:44,900 --> 00:29:46,433 “ご不審の筋があるゆえ―” 368 00:29:46,500 --> 00:29:49,367 “奉行の名代をもって 捕縛し糺問(きゅうもん)する”と伝え― 369 00:29:49,433 --> 00:29:50,834 捕縛すればよろしいのですね 370 00:29:51,200 --> 00:29:53,100 (奉行所員) 間もなく護衛の新選組が… 371 00:29:53,166 --> 00:29:54,166 (土方歳三(ひじかたとしぞう))失礼する 372 00:29:55,233 --> 00:29:58,133 (歳三)拙者 新選組副長 土方歳三 373 00:29:59,400 --> 00:30:01,533 (奉行所員) ひ… 土方殿が 374 00:30:01,700 --> 00:30:03,033 じかに参られるとは 375 00:30:04,100 --> 00:30:06,266 あ… これが渋沢じゃ 376 00:30:06,967 --> 00:30:08,000 では 頼んだぞ 377 00:30:09,166 --> 00:30:10,934 (篤太夫)へ? いや… 378 00:30:11,333 --> 00:30:15,300 渋沢殿 貴殿を護衛する命を受けた 379 00:30:16,233 --> 00:30:17,767 はばかりながら ご安心くだされたい 380 00:30:20,667 --> 00:30:21,734 うむ 381 00:30:22,367 --> 00:30:25,100 ただいま 探索の者を遣わしてござる 382 00:30:26,734 --> 00:30:30,300 大沢が戻ればすぐに踏み込み 我らがひっ捕らえるゆえ― 383 00:30:30,533 --> 00:30:32,700 その上にて ご自分のご使命を達せられよ 384 00:30:33,133 --> 00:30:35,500 (篤太夫)ん? いや それはいかん 385 00:30:36,500 --> 00:30:40,533 まずは先に 私が大沢に 奉行の命を伝えるのが筋であろう 386 00:30:42,834 --> 00:30:45,000 まだ罪があるかどうかも 分からぬ者を― 387 00:30:45,367 --> 00:30:48,166 有無も言わさず縛り上げるは 道理に外れておる 388 00:30:48,767 --> 00:30:51,667 さような卑怯(ひきょう)な振る舞いは できませぬ 389 00:30:51,734 --> 00:30:52,734 (新選組たちの笑い声) 390 00:30:54,100 --> 00:30:55,633 (歳三)立派な御説(おせつ)ではあるが― 391 00:30:57,166 --> 00:30:59,633 向こうが剣を振り上げてきたら 何とされる? 392 00:31:00,233 --> 00:31:04,700 なんの それならば この渋沢にも腕はある 393 00:31:05,333 --> 00:31:06,333 しかし… 394 00:31:06,400 --> 00:31:08,834 さほどのことも お分かりにならねぇなら― 395 00:31:09,500 --> 00:31:12,166 護衛など要らぬ 一人で出向きまする 396 00:31:12,433 --> 00:31:14,934 (隊士) おい 勝手なことをするな! 397 00:31:23,667 --> 00:31:24,667 (隊士)ここのようです 398 00:31:25,433 --> 00:31:26,433 (歳三)うむ 399 00:31:28,500 --> 00:31:30,200 まことに一人でよろしいのだな? 400 00:31:31,700 --> 00:31:33,166 男に 二言はない 401 00:31:40,900 --> 00:31:42,233 しからば ご油断なく 402 00:32:11,233 --> 00:32:12,266 (篤太夫)頼もう! 403 00:32:17,100 --> 00:32:22,100 拙者 陸軍奉行支配調役(しらべやく) 渋沢篤太夫と申すもの 404 00:32:22,767 --> 00:32:24,900 大沢殿とご面会いたしたい 405 00:32:28,500 --> 00:32:31,467 (書生)主人は もはや 床につきましてございますが 406 00:32:31,533 --> 00:32:32,533 いや 407 00:32:32,800 --> 00:32:35,700 奉行所より火急の御用で参ったと お取り次ぎを 408 00:32:36,200 --> 00:32:37,200 (大沢源次郎)おい 409 00:32:38,233 --> 00:32:39,233 どうした? 410 00:32:41,367 --> 00:32:42,533 (篤太夫)大沢殿か 411 00:32:45,467 --> 00:32:47,066 ご不審の筋があるゆえ― 412 00:32:47,400 --> 00:32:50,767 陸軍奉行 溝口伊勢守(いせのかみ)様の名代をもって― 413 00:32:51,333 --> 00:32:52,767 捕縛し糺問いたす 414 00:32:53,867 --> 00:32:54,867 (大沢)捕縛…? 415 00:32:58,600 --> 00:32:59,600 待て! 416 00:33:03,367 --> 00:33:06,667 (志士)幕臣のようじゃが 斬ってもよろしいですか 417 00:33:07,533 --> 00:33:09,233 (志士)構わぬ やれ! 418 00:33:15,567 --> 00:33:16,567 (志士)や~! 419 00:33:16,633 --> 00:33:17,633 (志士)あ~! 420 00:33:17,834 --> 00:33:18,834 (篤太夫)や~! 421 00:33:32,867 --> 00:33:33,867 (歳三)や~! 422 00:33:38,000 --> 00:33:39,266 (志士)し… 新選組! 423 00:33:39,333 --> 00:33:40,333 (歳三)しかり 424 00:33:40,867 --> 00:33:42,333 神妙に縛に就け 425 00:34:03,667 --> 00:34:04,667 土方殿… 426 00:34:05,734 --> 00:34:06,867 あっ あ… あ~! 427 00:34:17,100 --> 00:34:18,734 大事はござらんか 渋沢殿 428 00:34:19,200 --> 00:34:20,200 (篤太夫)ああ… 429 00:34:24,233 --> 00:34:25,233 (隊士)ほら! 430 00:34:30,100 --> 00:34:31,133 (篤太夫)ご苦労であった 431 00:34:32,433 --> 00:34:33,433 (歳三)うむ 432 00:34:36,834 --> 00:34:40,233 結局 働かせていただくことに なりましたな 433 00:34:40,533 --> 00:34:41,533 (篤太夫)うむ 434 00:34:43,033 --> 00:34:47,000 ただ もうちっと早く来るかと思ったぞ 435 00:34:48,467 --> 00:34:49,467 早く来る? 436 00:34:50,667 --> 00:34:53,500 お… お主らのお役目は 俺を守ることだ 437 00:34:53,900 --> 00:34:55,133 俺が斬られでもすりゃあ― 438 00:34:55,633 --> 00:34:58,967 天下にとどろく新選組の面目が 丸つぶれだ 439 00:35:00,734 --> 00:35:01,734 そうか 440 00:35:01,800 --> 00:35:02,800 うむ 441 00:35:06,834 --> 00:35:11,133 しかし 先ほどの貴殿のお覚悟は― 442 00:35:11,633 --> 00:35:14,033 武士として まことにごもっともの御説 443 00:35:16,200 --> 00:35:18,700 この土方 心服いたした 444 00:35:20,633 --> 00:35:23,600 これは貴殿の功 褒美でも受け取られるがよい 445 00:35:23,800 --> 00:35:26,800 いや 本音を言えば― 446 00:35:28,266 --> 00:35:30,100 名代などバカらしい話だ 447 00:35:33,333 --> 00:35:38,033 こんなもん お奉行様が じかに大沢に会い― 448 00:35:38,300 --> 00:35:40,900 腹割って真偽問いただせば それで済むんだい 449 00:35:41,567 --> 00:35:43,433 それを幕吏というのは― 450 00:35:44,467 --> 00:35:47,533 まこと旧弊を引きずり 風通しが悪(わり)ぃ 451 00:35:50,266 --> 00:35:53,433 そんなところに 己も入っちまうとは! 452 00:35:55,734 --> 00:35:58,533 俺たちもこうして ただ禄を食(は)んでるうちに― 453 00:35:58,600 --> 00:36:00,233 亡国の臣となるんだい 454 00:36:02,200 --> 00:36:06,033 亡国の臣だと? 貴様 ご直参のくせに何を! 455 00:36:06,100 --> 00:36:07,333 (篤太夫)構やしねぇだんべぇ 456 00:36:07,967 --> 00:36:10,834 明日には もう辞めておるやもしれぬ ハハ 457 00:36:13,567 --> 00:36:17,400 俺は もとは武州(ぶしゅう)の百姓だ 458 00:36:18,600 --> 00:36:19,600 百姓? 459 00:36:19,667 --> 00:36:20,667 (篤太夫)あぁ そうだ 460 00:36:21,667 --> 00:36:23,166 志を持って 461 00:36:23,767 --> 00:36:26,033 草莽(そうもう)の志士になるつもりが― 462 00:36:27,100 --> 00:36:28,967 一橋に仕官することになり― 463 00:36:30,000 --> 00:36:32,667 戦う覚悟を決めたかと思えば 戦はねぇし― 464 00:36:33,633 --> 00:36:36,633 やっとお役に立てる道を 見つけたかと思えば― 465 00:36:36,800 --> 00:36:38,233 その道も途絶え 466 00:36:38,400 --> 00:36:41,533 今じゃ 大っ嫌いだったはずの幕臣だで 467 00:36:41,734 --> 00:36:43,600 ハハハハ… 468 00:36:46,834 --> 00:36:48,967 喜作の言うとおりかもしんねぇな 469 00:36:50,667 --> 00:36:54,467 俺には お武家様など 合ってなかったのかもしれねぇ 470 00:36:57,066 --> 00:36:58,333 (歳三)なるほど 471 00:36:59,700 --> 00:37:02,166 それで先ほどから さような言葉であったのか 472 00:37:04,633 --> 00:37:07,367 ハッ… ハハハハハハ 473 00:37:08,166 --> 00:37:09,233 ハハハハ… 474 00:37:12,600 --> 00:37:13,834 合点がいった 475 00:37:17,133 --> 00:37:18,567 俺は 武州多摩(たま)の百姓だい 476 00:37:19,800 --> 00:37:22,867 なぬ? そう 多摩か! 477 00:37:22,934 --> 00:37:23,367 (歳三)おう 478 00:37:23,367 --> 00:37:23,934 (歳三)おう 479 00:37:23,367 --> 00:37:23,934 おぉ 俺は岡部(おかべ)だい 480 00:37:23,934 --> 00:37:24,367 おぉ 俺は岡部(おかべ)だい 481 00:37:24,433 --> 00:37:27,834 おぉ 熊谷(くまがや)の北の 薬の行商で行ったぞ 482 00:37:28,300 --> 00:37:29,934 多摩の地では 何が育つんだい? 483 00:37:31,166 --> 00:37:32,166 忘れた 484 00:37:34,834 --> 00:37:38,233 俺は畑を耕し 行商をする暮らしに飽き足らず― 485 00:37:38,300 --> 00:37:39,633 この道を選んだんだ 486 00:37:41,200 --> 00:37:42,200 そうか 487 00:37:44,967 --> 00:37:49,333 武士となって国のために戦うのが 目当てであった 488 00:37:51,367 --> 00:37:53,633 お主と違って 後悔は少しもない 489 00:37:58,367 --> 00:38:02,600 日の本のために 潔く命を捨てるその日まで― 490 00:38:04,033 --> 00:38:05,533 ひたすら前を向くのみだ 491 00:38:08,834 --> 00:38:10,734 潔く命を捨てる? 492 00:38:13,867 --> 00:38:17,667 (歳三) この手で何十人と命を奪ってきた 493 00:38:22,367 --> 00:38:24,333 己の命に みじんも未練はない 494 00:38:28,066 --> 00:38:29,066 (篤太夫)そうか 495 00:38:30,633 --> 00:38:31,633 はぁ 496 00:38:32,800 --> 00:38:34,266 俺とは違(ちげ)ぇな 497 00:38:36,000 --> 00:38:39,533 俺は 行く手に詰まったり 迷ったりしてばかりだ 498 00:38:42,533 --> 00:38:43,533 でもまあ― 499 00:38:45,700 --> 00:38:48,567 日の本を守りたいという思いは 俺も同じだ 500 00:38:49,533 --> 00:38:52,967 それだけは俺も曲げねぇ 501 00:39:00,100 --> 00:39:01,100 (歳三)うむ 502 00:39:06,867 --> 00:39:08,533 拙者はこれより報告に戻る 503 00:39:11,000 --> 00:39:12,000 しからば御免 504 00:39:18,433 --> 00:39:19,433 俺も… 505 00:39:21,867 --> 00:39:23,800 土方殿と話せてよかった 506 00:39:27,000 --> 00:39:28,834 武州の風を思い出した 507 00:39:29,834 --> 00:39:33,533 あのころの 己の気持ちを 508 00:39:37,300 --> 00:39:39,200 いつかまた会った時に 恥じぬよう― 509 00:39:39,734 --> 00:39:40,767 俺もなるたけ― 510 00:39:41,767 --> 00:39:43,567 前を向いて 生きてみることにすんべぇ 511 00:39:45,567 --> 00:39:49,967 まあ百姓に戻ってるか 何になってるかは分かんねぇけんどな 512 00:39:53,166 --> 00:39:54,934 “生きる”か… 513 00:39:59,700 --> 00:40:02,700 あぁ いつか必ず 514 00:40:24,734 --> 00:40:26,100 (溝口)この度はご苦労であった 515 00:40:26,667 --> 00:40:27,667 ははっ 516 00:40:28,233 --> 00:40:29,233 渋沢成一郎 517 00:40:29,300 --> 00:40:30,300 はっ 518 00:40:30,367 --> 00:40:32,367 (溝口)そなたが 大沢を江戸に連れてまいれ 519 00:40:32,867 --> 00:40:33,867 ははっ 520 00:40:37,834 --> 00:40:41,600 (歳三)なんと… そこもとも渋沢と申されるか 521 00:40:42,066 --> 00:40:43,066 (成一郎)ん? 522 00:40:44,133 --> 00:40:45,133 フッ… ハハ 523 00:40:49,300 --> 00:40:53,633 (小栗忠順(おぐりただまさ))紀州や大奥も “一橋に将軍宣下(せんげ)を”と― 524 00:40:54,100 --> 00:40:55,934 朝廷に進言しておるようだ 525 00:40:57,734 --> 00:40:59,000 こうなれば― 526 00:41:00,266 --> 00:41:03,100 一橋が将軍になることは避けられまい 527 00:41:05,433 --> 00:41:06,433 (栗本鋤雲(くりもとじょうん))ええい! 528 00:41:10,100 --> 00:41:12,467 (栗本)まさか あのような男が 529 00:41:12,533 --> 00:41:13,867 武家の棟梁とは… 530 00:41:15,266 --> 00:41:18,266 いや かくなる上は― 531 00:41:19,567 --> 00:41:21,633 我らは公儀を守るのみ 532 00:41:23,000 --> 00:41:26,100 あの男を盾に お家を守るしかなかろう 533 00:41:26,166 --> 00:41:27,166 (栗本)しかし! 534 00:41:27,233 --> 00:41:31,500 (向山一履(むこうやまかずふみ)) 小栗殿 パリの博覧会はどうする? 535 00:41:31,867 --> 00:41:34,967 (田辺(たなべ)太一(たいち))ロッシュ殿より そろそろ公儀から誰を送るか― 536 00:41:35,333 --> 00:41:37,467 返事が欲しいとの 催促にてございまする 537 00:41:38,800 --> 00:41:41,400 しかたあるまい 一橋… 538 00:41:42,567 --> 00:41:43,567 いや 539 00:41:44,600 --> 00:41:47,834 上様になられるであろうお方に 相談してみよう 540 00:41:58,533 --> 00:41:59,533 (慶喜)パリか… 541 00:42:06,834 --> 00:42:07,834 市之進よ 542 00:42:07,900 --> 00:42:08,900 (市之進)ははっ 543 00:42:10,800 --> 00:42:12,066 渋沢はどうしておる? 544 00:42:22,367 --> 00:42:24,667 (語り)このあと訪れる転機を― 545 00:42:25,734 --> 00:42:29,367 篤太夫は まだ知りませんでした 546 00:42:33,700 --> 00:42:36,233 (市之進)お主に頼みたいのは パリへ参ることだ 547 00:42:36,500 --> 00:42:38,300 (成一郎)はぁ? フランス? 548 00:42:38,867 --> 00:42:40,900 (徳川昭武(あきたけ)) 精いっぱい勤めてまいりまする 549 00:42:41,166 --> 00:42:43,166 (杉浦愛蔵(すぎうらあいぞう)) 杉浦と呼び捨てでも構わぬぞ 550 00:42:43,400 --> 00:42:45,033 (福地源一郎(ふくちげんいちろう)) フランス人には気を付けろよ 551 00:42:45,233 --> 00:42:48,867 (小栗)確かお主は 攘夷倒幕を唱えておったとか 552 00:42:49,133 --> 00:42:50,133 (ゑい) ひょっとしたら 553 00:42:50,300 --> 00:42:51,667 この世で 顔を見ることも 554 00:42:51,734 --> 00:42:52,834 できねぇんだんべか 555 00:42:53,166 --> 00:42:55,834 (2人)己を責めて 人を責むるな 556 00:42:56,367 --> 00:42:58,500 某を パリに 行がせてください!