1 00:00:11,800 --> 00:00:14,300 (渋沢平九郎(しぶさわへいくろう)) 御旗本(おんはたもと) 渋沢篤太夫(とくだゆう)が嫡男― 2 00:00:14,967 --> 00:00:16,734 渋沢平九郎! 3 00:00:16,800 --> 00:00:18,000 (銃声) 4 00:00:18,934 --> 00:00:19,934 (渋沢篤太夫)平九郎… 5 00:00:20,967 --> 00:00:24,033 (須永(すなが)虎之助(とらのすけ))成一郎(せいいちろう)さんは今や 箱館(はこだて)で戦っておる 6 00:00:25,033 --> 00:00:26,066 (渋沢成一郎)ああ~! 7 00:00:30,500 --> 00:00:31,500 して上様は? 8 00:00:32,834 --> 00:00:34,600 (川村恵十郎(かわむらえじゅうろう)) 水戸(みと)から駿府(すんぷ)に移られ― 9 00:00:35,633 --> 00:00:37,000 謹慎なさっている 10 00:00:42,734 --> 00:00:45,633 (徳川家康(とくがわいえやす)) こんばんは 徳川家康です 11 00:00:47,300 --> 00:00:51,066 篤太夫は6年ぶりのふるさとへと 向かっています 12 00:00:52,100 --> 00:00:57,400 ちなみに その付近を治めていた 岡部(おかべ)藩は もうない 13 00:00:59,133 --> 00:01:02,000 長年 徳川に仕えていた大名たちは― 14 00:01:02,300 --> 00:01:06,300 次々と 新政府とやらに恭順した 15 00:01:07,567 --> 00:01:13,734 そして 新政府とやらは 直轄地に府や県を置き― 16 00:01:14,834 --> 00:01:15,834 このように… 17 00:01:18,834 --> 00:01:22,800 なんて話は もう野暮(やぼ)ですかな 18 00:01:23,900 --> 00:01:28,533 いや まずは 篤太夫を見守りましょう 19 00:01:42,633 --> 00:01:44,000 (尾高長七郎(おだかちょうしちろう))よう 栄一(えいいち) 20 00:01:52,000 --> 00:01:53,000 長七郎! 21 00:01:56,433 --> 00:01:57,600 出迎えに来てくれたのか!? 22 00:01:58,367 --> 00:02:01,433 ハハハハ… どうした その頭は 23 00:02:03,400 --> 00:02:08,867 あぁ ハハハ… あぁ 24 00:02:12,367 --> 00:02:13,867 俺も変わっちまったが― 25 00:02:16,500 --> 00:02:17,867 日本も変わっちまった 26 00:02:21,667 --> 00:02:24,300 なんと多くの命が奪われたんだ 27 00:02:26,767 --> 00:02:30,533 まさか平九郎が… 28 00:02:38,233 --> 00:02:39,734 俺は一体何なんだ! 29 00:02:42,800 --> 00:02:46,800 幕府を倒そうとしたはずが 逆に幕府に仕え― 30 00:02:47,533 --> 00:02:50,900 あげく 幕府が倒され― 31 00:02:51,834 --> 00:02:54,667 世話になった者の多くが死に 離散し― 32 00:02:56,133 --> 00:03:00,834 今はもう主(あるじ)もいねぇ 喜作(きさく)は今も… 33 00:03:01,166 --> 00:03:04,600 相変わらず よくしゃべるのう 栄一 34 00:03:07,967 --> 00:03:09,166 それを俺に言うか? 35 00:03:12,166 --> 00:03:13,367 悔しいのは俺だ 36 00:03:16,033 --> 00:03:17,900 俺こそ 何も成し遂げられなかった 37 00:03:23,633 --> 00:03:24,633 (篤太夫)そんなことねぇ 38 00:03:25,934 --> 00:03:29,066 俺も喜作も お前を追って お前を目指して… 39 00:03:30,033 --> 00:03:31,200 横浜(よこはま)焼き討(う)ちの時も― 40 00:03:31,266 --> 00:03:33,033 お前の言葉がなければ 皆死んでいた 41 00:03:33,100 --> 00:03:36,567 (長七郎)だが お前は生きておる 42 00:03:41,333 --> 00:03:43,533 生き残った者には なすべき定めがあると― 43 00:03:44,233 --> 00:03:45,233 お前が言ったんだ 44 00:03:59,800 --> 00:04:00,867 (女中)ゑいさん これ! 45 00:04:00,934 --> 00:04:02,700 (女中)ありがとうございます! 46 00:04:02,767 --> 00:04:03,767 おっとっと… 47 00:04:03,834 --> 00:04:04,367 (女中たち) あぁ~! 48 00:04:04,367 --> 00:04:04,867 (女中たち) あぁ~! 49 00:04:04,367 --> 00:04:04,867 (女中)奥だいね はい… 50 00:04:04,867 --> 00:04:05,367 (女中)奥だいね はい… 51 00:04:05,433 --> 00:04:08,600 (渋沢市郎右衛門(いちろうえもん)) おいおいおい みんな慌てるない 52 00:04:09,066 --> 00:04:11,300 栄一が帰(けえ)ってくるのは どうせ夜だんべ 53 00:04:11,367 --> 00:04:13,600 今から そんなに慌ててどうする 54 00:04:14,033 --> 00:04:17,367 (渋沢ゑい)まぁ 慌ててるんは お前さんではありませんか 55 00:04:17,767 --> 00:04:19,400 (渋沢うた)じいさま 帯が 56 00:04:20,033 --> 00:04:23,033 お… いいんだ こりゃあこれで 57 00:04:23,100 --> 00:04:24,300 (三太(さんた))旦那さん! 58 00:04:25,400 --> 00:04:27,133 (三太)旦那さん 今 坊ちゃんが! 59 00:04:27,600 --> 00:04:29,767 (利吉(りきち))もう すぐそこまで 来られたそうで! 60 00:04:29,967 --> 00:04:31,000 (吉岡(よしおか)なか)え! 61 00:04:53,900 --> 00:04:56,767 (篤太夫)“国破れて山河在り”か… 62 00:04:59,700 --> 00:05:02,433 何もかも 変わっちまったかと思ったが― 63 00:05:04,834 --> 00:05:06,233 ここは何も変わらねぇ 64 00:05:22,000 --> 00:05:23,000 (市郎右衛門)ほい ほい… 65 00:05:29,567 --> 00:05:32,400 (うた) あれは どこかのお殿様ですか? 66 00:05:32,667 --> 00:05:37,133 いや うた あれが お前のとっさまだい 67 00:05:37,600 --> 00:05:41,734 ほれ どうする ハハハハ… 68 00:05:42,533 --> 00:05:44,633 お~い! 栄一! 69 00:05:45,867 --> 00:05:47,667 栄一! 70 00:05:48,834 --> 00:05:49,834 とっさま! 71 00:05:54,567 --> 00:05:55,867 (三太)坊ちゃん! 坊ちゃん! 72 00:05:56,400 --> 00:05:58,166 ハハハハハハハ! 73 00:05:58,834 --> 00:05:59,133 (三太)坊ちゃん! 74 00:05:59,133 --> 00:05:59,834 (三太)坊ちゃん! 75 00:05:59,133 --> 00:05:59,834 (篤太夫)おぉ! 76 00:05:59,834 --> 00:06:00,200 (篤太夫)おぉ! 77 00:06:00,800 --> 00:06:01,800 久しぶりだいなぁ! 78 00:06:01,967 --> 00:06:04,166 (栄一)久しぶりだのう! 79 00:06:05,700 --> 00:06:06,700 みんな変わんねぇのう 80 00:06:06,767 --> 00:06:08,900 (三太)いや~ 坊ちゃんは立派になって 81 00:06:09,533 --> 00:06:11,633 あぁ そうか… 82 00:06:14,467 --> 00:06:15,467 お千代(ちよ)… 83 00:06:21,200 --> 00:06:24,433 うた? うたか 84 00:06:27,100 --> 00:06:30,166 はぁ でっかくなったのう 85 00:06:33,700 --> 00:06:34,700 伝蔵(でんぞう) 86 00:06:37,033 --> 00:06:38,867 うた おいで 87 00:06:47,100 --> 00:06:49,667 うた! ハハハハハ! 88 00:06:50,567 --> 00:06:51,567 うた! 89 00:06:52,100 --> 00:06:53,133 (うた)とっさま! 90 00:06:53,200 --> 00:06:56,567 ああ そうだ とっさまだ! 91 00:06:58,233 --> 00:07:02,100 うた いい子にしてたか? 92 00:07:03,133 --> 00:07:05,266 ん? そうか ハハハハ… 93 00:07:12,133 --> 00:07:13,133 みっともねぇか? 94 00:07:17,100 --> 00:07:18,100 (渋沢千代)いいえ… 95 00:07:23,100 --> 00:07:24,100 いいえ 96 00:07:28,200 --> 00:07:29,600 お帰りなさいまし 97 00:07:40,500 --> 00:07:41,633 ただいま 98 00:07:54,400 --> 00:07:55,400 (ゑい)栄一! 99 00:07:56,333 --> 00:07:57,333 (なか)栄一! 100 00:07:58,066 --> 00:07:59,066 (ゑい)栄一! 101 00:07:59,834 --> 00:08:02,433 (女中たち)坊ちゃ~ん! 102 00:08:08,467 --> 00:08:09,467 ただいま! 103 00:08:10,233 --> 00:08:15,233 ♪~ 104 00:10:55,400 --> 00:11:00,467 ~♪ 105 00:11:08,066 --> 00:11:12,233 無事のお帰り おめでとうございます 106 00:11:13,800 --> 00:11:15,767 (篤太夫)何だい 改まって 107 00:11:17,734 --> 00:11:20,867 よかった かっさまも元気そうだ 108 00:11:22,467 --> 00:11:23,600 はあ どこがだいね 109 00:11:25,500 --> 00:11:27,633 あんたが 心配ばっかりかけるせいで― 110 00:11:29,266 --> 00:11:30,967 すっかり年をとっちまったよ 111 00:11:33,266 --> 00:11:35,066 ただいま かっさま 112 00:11:39,300 --> 00:11:42,033 (渋沢宗助(そうすけ)) はぁ なんてこったい ハハハ 113 00:11:42,667 --> 00:11:46,900 (宗助)表に馬まで連れて まるっきし お武家様じゃねぇか 114 00:11:47,133 --> 00:11:49,033 (篤太夫) 伯父さん! まさ伯母さん! 115 00:11:49,467 --> 00:11:53,867 (渋沢まさ)はぁ よくのうのうと 帰ってきたもんだよ 116 00:11:54,033 --> 00:11:57,500 勝手に出ていって あっち行ったり こっち行ったり 117 00:11:57,567 --> 00:11:59,834 (なか)そうだい 栄一 残ったこっちまで― 118 00:11:59,900 --> 00:12:01,800 “お前んとこの栄一は 変節漢だ”って― 119 00:12:01,867 --> 00:12:03,967 どれだけ陰口をたたかれたことか 120 00:12:05,400 --> 00:12:06,400 そうか 121 00:12:08,734 --> 00:12:09,734 すまなかった 122 00:12:10,367 --> 00:12:13,100 (市郎右衛門)まずはその話を ゆっくり聞かねぇとな 123 00:12:13,166 --> 00:12:17,233 (宗助)そうだ 無事に帰ってきて なんと めでてぇことか 124 00:12:17,300 --> 00:12:18,667 (渋沢てい:小声で) 何が めでてぇもんか 125 00:12:21,400 --> 00:12:22,700 (てい)何だい 自分だけ帰ってきて 126 00:12:24,967 --> 00:12:25,967 (なか)これ おてい 127 00:12:26,033 --> 00:12:27,066 兄さまが… 128 00:12:28,533 --> 00:12:31,266 兄さまが平九郎さんを 見立て養子になどしなければ… 129 00:12:33,166 --> 00:12:36,867 今頃 平九郎さんは 村で普通に暮らしてたんだに! 130 00:12:40,600 --> 00:12:44,867 平九郎さんは… 平九郎さんは… 131 00:12:44,934 --> 00:12:49,433 (市郎右衛門)おてい それは栄一も よぉく分かってる 132 00:12:56,066 --> 00:12:57,066 (なか)おてい 133 00:13:08,400 --> 00:13:09,567 (篤太夫)おていの言うとおりだ 134 00:13:15,166 --> 00:13:17,767 まずは先に 尾高に行ってこようと思う 135 00:13:18,500 --> 00:13:19,533 尾高のかっさまに… 136 00:13:20,367 --> 00:13:24,900 (宗助)いや 尾高は 日を改めて訪ねた方がいい 137 00:13:26,033 --> 00:13:28,633 今 誰もいねぇからねぇ 138 00:13:29,533 --> 00:13:30,533 (篤太夫)え? 139 00:13:31,233 --> 00:13:35,567 先月 長七郎が亡くなった 140 00:13:42,900 --> 00:13:44,300 (篤太夫)長七郎… 141 00:14:03,367 --> 00:14:04,367 (ゑい)はい 142 00:14:04,433 --> 00:14:06,633 (なか)うわ~ うんまげだに! 143 00:14:08,033 --> 00:14:09,433 よっ… はい 144 00:14:09,967 --> 00:14:14,533 東の家(ひがしんち)はもう 横浜に出て 生糸の商い始めたに 145 00:14:15,066 --> 00:14:16,600 異人の商人相手に― 146 00:14:17,000 --> 00:14:20,066 まっさか いい値で 売りさばいてやった 147 00:14:21,700 --> 00:14:25,967 横浜に行幸なされた天子様も 拝むことができたしねぇ 148 00:14:26,467 --> 00:14:29,033 もう思い残すこともねぇやねぇ 149 00:14:29,100 --> 00:14:30,934 ハハハ そうか 150 00:14:31,333 --> 00:14:34,400 (虎之助)おう あにき みんなに 鉄道の話をしてやってくんない 151 00:14:34,467 --> 00:14:37,867 (篤太夫) お 鉄道? おぉ あれはな― 152 00:14:39,333 --> 00:14:43,033 何棟も連なった長屋に それぞれ車輪がついてて― 153 00:14:43,100 --> 00:14:47,000 それが蒸気機関の仕組みで 黒い煙を吐きながら― 154 00:14:47,066 --> 00:14:49,633 鉄の道をダダダダダッて進むんだ 155 00:14:49,800 --> 00:14:51,033 (朔兵衛(さくべえ))じょうききかん? 156 00:14:51,100 --> 00:14:52,367 (権兵衛(ごんべえ))長屋が進む? 157 00:14:52,967 --> 00:14:55,266 (篤太夫) 壁一面には 障子ではなく― 158 00:14:55,333 --> 00:14:57,567 透き通ったガラスが はめ込んである 159 00:14:58,533 --> 00:15:01,467 あまりに透き通ってるもんで 民部公子(みんぶこうし)のお供の者が― 160 00:15:01,533 --> 00:15:03,200 こう 何度も頭をぶつけておった 161 00:15:03,266 --> 00:15:05,533 (笑い声) 162 00:15:06,233 --> 00:15:09,266 異人異人と嫌っていたが 異国には― 163 00:15:09,934 --> 00:15:12,266 これからも 大いに学ぶところがある 164 00:15:13,567 --> 00:15:14,867 そうだ 土産を買ってきたんだい 165 00:15:30,734 --> 00:15:36,367 栄一 お酒なら持ってぐから 早く座敷に戻んな 166 00:15:38,066 --> 00:15:40,100 みんな あんたの話を 聞きに来てんだ 167 00:15:42,467 --> 00:15:46,233 (なか)そうよ あの栄一が 公方(くぼう)様の弟君のお供で― 168 00:15:46,300 --> 00:15:47,967 異国まで行って帰ってきたって― 169 00:15:48,333 --> 00:15:51,000 村中が“めでてぇ めでてぇ”って 楽しみに待ってたんだ 170 00:15:54,166 --> 00:15:59,500 そうか 故郷というのはありがたいもんだ 171 00:16:03,100 --> 00:16:06,367 (なか)お千代も尾高で あんだけの不幸があったんだ 172 00:16:08,066 --> 00:16:10,900 あんたが帰ってきたことが せめてもの救いだに 173 00:16:14,333 --> 00:16:18,967 (ゑい)うたも 何かを察したんだか ずうっと暗(くれ)え顔してたんだが― 174 00:16:21,433 --> 00:16:25,033 それが あんたの文が届いてから パッと目が輝いて― 175 00:16:26,600 --> 00:16:28,967 毎日 指折り数えて待ってたんだよ 176 00:16:30,533 --> 00:16:31,533 そうか 177 00:16:33,200 --> 00:16:34,200 (てい)そうだ… 178 00:16:36,266 --> 00:16:37,834 うたが無邪気なもんで― 179 00:16:39,133 --> 00:16:41,033 みんな どんなに救われたか 知れねぇ 180 00:16:43,467 --> 00:16:44,467 (ゑい)そうだね 181 00:16:54,834 --> 00:16:57,300 (篤太夫) “あたんしおん あたんしおん” 182 00:16:57,367 --> 00:17:00,500 “どうぞ お急ぎお乗り込みください” 183 00:17:01,233 --> 00:17:05,000 そしたらよ お前 目の前の扉が ぐぐっと閉じられてよ 184 00:17:05,066 --> 00:17:06,800 え!? なぜ閉める? 185 00:17:07,233 --> 00:17:09,867 50人ほどを乗せたその箱が… 186 00:17:10,266 --> 00:17:11,300 (利吉)箱が? 187 00:17:11,367 --> 00:17:12,600 ふわりと浮かんだ 188 00:17:13,100 --> 00:17:14,100 おっ! 189 00:17:14,166 --> 00:17:15,266 (三太・吉五郎(きちごろう))浮かんだ!? 190 00:17:15,700 --> 00:17:17,834 (まさ)また栄一のほら話だよ 191 00:17:17,900 --> 00:17:19,967 (篤太夫) ほら話じゃねえ まさ伯母さん 192 00:17:20,767 --> 00:17:23,200 ちっと お前さん お前さん! 193 00:17:23,767 --> 00:17:24,867 ふわりと浮かんだ 194 00:17:24,934 --> 00:17:25,767 (権兵衛)聞いてた! 195 00:17:25,767 --> 00:17:25,934 (権兵衛)聞いてた! 196 00:17:25,767 --> 00:17:25,934 聞いてた! 197 00:17:25,934 --> 00:17:26,767 聞いてた! 198 00:17:27,433 --> 00:17:29,233 (朔兵衛)あ~ 続き続き! 199 00:17:29,300 --> 00:17:30,567 おぅ そしたらよ お前― 200 00:17:30,633 --> 00:17:33,066 そのまま箱が ダ~ッて浮かんでってよ 201 00:17:33,133 --> 00:17:35,734 お前 すげえ高さまで お前 上がって― 202 00:17:35,800 --> 00:17:37,200 “死ぬじゃねえか!”つって 203 00:17:37,266 --> 00:17:40,300 “落ちたら死ぬじゃねえか! 殺す気か!”つって 204 00:17:58,700 --> 00:18:03,066 (足音) 205 00:18:09,734 --> 00:18:13,700 お千代 朝まで悪かった 206 00:18:15,900 --> 00:18:17,400 ようやくお前と話せる 207 00:18:31,200 --> 00:18:32,367 (千代)5月の終わりに… 208 00:18:35,734 --> 00:18:38,834 飯能(はんのう)の戦で喜作さんたちが 負けたという話が― 209 00:18:38,900 --> 00:18:40,367 村まで聞こえてきました 210 00:18:46,100 --> 00:18:50,567 3人とも もう死んでしまっただろうって― 211 00:18:52,734 --> 00:18:57,000 およしちゃんも私も ほとんど諦めてました 212 00:19:02,333 --> 00:19:03,333 そしたら… 213 00:19:08,433 --> 00:19:10,500 喜作さんと兄さまは 落ち延びたけど― 214 00:19:15,667 --> 00:19:16,700 平九郎が… 215 00:19:22,300 --> 00:19:25,266 敵兵に追われて 自ら命を絶ったとうわさが… 216 00:19:29,734 --> 00:19:34,166 (泣き声) 217 00:19:36,100 --> 00:19:37,500 (千代)私のせいです 218 00:19:42,000 --> 00:19:43,000 ずっと― 219 00:19:46,033 --> 00:19:50,200 お前様や兄さまたちの命が― 220 00:19:52,200 --> 00:19:55,333 何よりも一番大事だと― 221 00:19:57,934 --> 00:19:59,734 ずっと思っていたはずなのに… 222 00:20:01,400 --> 00:20:02,400 (千代)平九郎 223 00:20:03,934 --> 00:20:05,500 お前はもうお武家様だ 224 00:20:06,767 --> 00:20:12,000 何があっても 栄一さんに代わり 忠義の道を尽くすのですよ 225 00:20:14,967 --> 00:20:15,967 はい 226 00:20:17,300 --> 00:20:18,734 私のせいで… 227 00:20:21,834 --> 00:20:24,867 私のせいで 平九郎は… 228 00:20:28,734 --> 00:20:30,500 違う… 違う 229 00:20:32,900 --> 00:20:33,900 俺のせいだ 230 00:20:36,200 --> 00:20:40,700 俺の代わりに幕臣となることが こんなことに つながるなんて― 231 00:20:41,266 --> 00:20:43,033 あの時は 思い浮かべることもできなかった 232 00:20:48,934 --> 00:20:51,433 お前は悪くない 悪くない 233 00:20:55,667 --> 00:20:56,834 俺のせいだ 234 00:20:57,433 --> 00:21:03,500 (泣き声) 235 00:21:57,367 --> 00:21:59,700 (足音) 236 00:22:00,633 --> 00:22:02,867 (千代)あ… およしちゃん 237 00:22:09,166 --> 00:22:14,400 (篤太夫)つい数日前の話では 徳川方が箱館府兵を打ち破り― 238 00:22:15,567 --> 00:22:17,333 五稜郭(ごりょうかく)を攻め落としたと聞いた 239 00:22:18,734 --> 00:22:21,533 (渋沢よし) そうですか! よかった 240 00:22:23,367 --> 00:22:27,333 では 喜作さんたちは箱館に 新しい国を作れるんだいね? 241 00:22:31,834 --> 00:22:37,433 (よし)私 あの人が 船で東北に行くって聞いた時は― 242 00:22:39,800 --> 00:22:42,700 もう生きて戻る気は ねぇんだろうと思っていました 243 00:22:46,100 --> 00:22:51,133 あの人は ご公儀のために戦って 死ぬ気なんだって 244 00:22:55,200 --> 00:22:59,433 でも… 今 無事に勝利したと聞いて― 245 00:22:59,500 --> 00:23:00,633 安堵(あんど)いたしました 246 00:23:04,667 --> 00:23:07,367 きっと喜作さんも 奮起なされていることでしょう 247 00:23:09,834 --> 00:23:11,266 私も しっかりしねぇと! 248 00:23:15,967 --> 00:23:16,967 およしちゃん… 249 00:23:24,300 --> 00:23:25,300 (土方歳三(ひじかたとしぞう))おい! 250 00:23:25,533 --> 00:23:26,900 (成一郎)おぉ 土方! 251 00:23:28,166 --> 00:23:28,900 (高松凌雲(たかまつりょううん))奥に! 252 00:23:28,900 --> 00:23:29,166 (高松凌雲(たかまつりょううん))奥に! 253 00:23:28,900 --> 00:23:29,166 (助手)はい! 254 00:23:29,166 --> 00:23:29,900 (助手)はい! 255 00:23:33,834 --> 00:23:35,367 (成一郎)松前(まつまえ)から戻ったんだな 256 00:23:36,066 --> 00:23:37,200 (歳三) このあと 五稜郭で 257 00:23:37,400 --> 00:23:39,200 蝦夷地(えぞち)平定の 祝賀会が開かれる 258 00:23:39,367 --> 00:23:41,300 (成一郎)そうか それは行かねば 259 00:23:41,500 --> 00:23:42,667 (凌雲)私は遠慮する 260 00:23:43,467 --> 00:23:44,600 (凌雲) 負傷者が増えるばかりで― 261 00:23:44,667 --> 00:23:45,867 人手も足りぬのだ 262 00:23:46,533 --> 00:23:48,233 のんきに 杯をあげる暇はない 263 00:23:48,567 --> 00:23:49,400 洗浄を頼む! 264 00:23:49,400 --> 00:23:49,567 洗浄を頼む! 265 00:23:49,400 --> 00:23:49,567 (助手)はい 266 00:23:49,567 --> 00:23:50,400 (助手)はい 267 00:23:54,834 --> 00:23:58,500 (歳三)あれは… 敵兵も治療しておるのか? 268 00:23:59,500 --> 00:24:02,867 (凌雲)怪我人(けがにん)に敵も味方も 富豪も貧乏人もない 269 00:24:07,433 --> 00:24:11,433 私は それを もう一人の渋沢と パリで学んだ 270 00:24:13,400 --> 00:24:17,834 (歳三)なるほど それが西洋式か 271 00:24:30,133 --> 00:24:31,133 (篤太夫)いやんばいす 272 00:24:34,767 --> 00:24:35,767 あにぃ… 273 00:24:40,700 --> 00:24:41,834 待ってくれ あにぃ 274 00:24:42,700 --> 00:24:43,700 頼む… 275 00:24:48,867 --> 00:24:52,700 (尾高惇忠(じゅんちゅう)) 俺とて お前と話がしたい 276 00:24:55,300 --> 00:24:59,367 しかし もう… 誰にも合わす顔がねぇ 277 00:25:02,900 --> 00:25:07,700 戦で死ぬことも 忠義を尽くすこともできず― 278 00:25:09,567 --> 00:25:11,533 一人 おめおめ生き残るとは… 279 00:25:11,600 --> 00:25:16,400 (篤太夫)いいや あにぃが戦で死なねぇでよかった 280 00:25:19,300 --> 00:25:20,567 生きててくれてよかった 281 00:25:24,800 --> 00:25:26,400 合わせる顔がねぇのは俺だ 282 00:25:31,600 --> 00:25:33,567 パリまで行って ようやく分かったんだ 283 00:25:36,900 --> 00:25:39,633 銃や剣を手に 戦をするんじゃねぇ 284 00:25:41,500 --> 00:25:45,967 畑を耕し 藍を売り 歌を詠み― 285 00:25:48,266 --> 00:25:53,934 皆で働いて励むことこそが 俺の戦い方だったんだ 286 00:25:56,767 --> 00:25:57,934 ようやく気付いて… 287 00:25:59,400 --> 00:26:03,467 お千代にも平九郎にも― 288 00:26:06,834 --> 00:26:09,367 とっさまにも かっさまにも 本当に申し訳ねぇ 289 00:26:10,867 --> 00:26:11,867 (惇忠)栄一… 290 00:26:12,133 --> 00:26:13,133 (篤太夫)俺は… 291 00:26:16,433 --> 00:26:21,500 この恥を胸に刻んで… いま一度 前に進みたい 292 00:26:25,467 --> 00:26:26,667 生きている限り… 293 00:26:36,266 --> 00:26:38,700 生きている限り… 294 00:27:03,800 --> 00:27:06,633 (長七郎)さぁ 前を向け 栄一! 295 00:27:10,667 --> 00:27:14,000 俺たちが かつて悲憤慷慨(ひふんこうがい)していた この世は崩れたぞ 296 00:27:16,300 --> 00:27:17,800 崩しっぱなしでどうする 297 00:27:23,734 --> 00:27:28,300 この先こそが お主の励み時だろう 298 00:27:34,800 --> 00:27:35,800 そうだいな 299 00:27:41,066 --> 00:27:42,066 そうだい 300 00:27:45,133 --> 00:27:50,166 生きていれば 新しい世のために できることはきっとある 301 00:27:53,800 --> 00:27:55,400 あぁ ハハハ… 302 00:27:57,467 --> 00:27:58,467 そうだい! 303 00:28:12,400 --> 00:28:16,133 (篤太夫)喜作を追って 箱館の軍に加わる気はありません 304 00:28:17,667 --> 00:28:21,333 知り合いに パリの知識があれば― 305 00:28:21,734 --> 00:28:23,700 新しい政府で勤め先があると― 306 00:28:23,767 --> 00:28:27,233 勧められましたが それも断りました 307 00:28:29,333 --> 00:28:30,367 まずは すぐにでも― 308 00:28:30,900 --> 00:28:33,533 駿府で謹慎なさっている 先の上様に― 309 00:28:33,600 --> 00:28:35,533 ご挨拶に伺いたいと 思っております 310 00:28:38,300 --> 00:28:39,700 その先のことは まだ… 311 00:28:41,233 --> 00:28:44,133 商売を始めるか 百姓をするか― 312 00:28:45,467 --> 00:28:49,900 先の上様にお会いした後に 一身の方針を定める所存です 313 00:28:53,200 --> 00:28:54,200 そうか 314 00:28:57,767 --> 00:29:00,200 それでこそ 俺の栄一だ 315 00:29:02,100 --> 00:29:06,066 お前がこの家を出ていく時 俺は― 316 00:29:07,266 --> 00:29:10,834 “あくまでも道理は踏み外さず―” 317 00:29:12,166 --> 00:29:14,433 “まことを貫いてくれ”と言ったが― 318 00:29:15,467 --> 00:29:19,800 お前はそれを きちんと守り通してくれた 319 00:29:21,533 --> 00:29:22,533 おかげで俺は― 320 00:29:24,066 --> 00:29:28,266 お前の父親だと 胸を張っていられる 321 00:29:34,066 --> 00:29:35,066 とっさま 322 00:29:37,533 --> 00:29:40,600 いろいろのご心配 ありがとうございます 323 00:29:45,166 --> 00:29:49,300 かっさま ありがとうございます 324 00:29:56,300 --> 00:29:59,367 それから これを… 325 00:30:02,133 --> 00:30:03,133 何だ? これは 326 00:30:04,333 --> 00:30:08,000 私が家を出る時 とっさまは 100両下さった 327 00:30:08,800 --> 00:30:12,400 まあ それを今 お返ししよう というわけではございませんが― 328 00:30:13,667 --> 00:30:17,834 まだ故郷に錦を飾るには 程遠い身にて― 329 00:30:18,500 --> 00:30:21,400 せめてもの土産として お納めください 330 00:30:24,233 --> 00:30:25,233 (ゑい)おやまぁ 331 00:30:25,667 --> 00:30:28,266 栄一の こういうことに堅いところは― 332 00:30:29,066 --> 00:30:31,600 お前様によく似てますねぇ 333 00:30:32,300 --> 00:30:34,800 バカ… 似てるもんか 334 00:30:37,066 --> 00:30:39,533 だけんど せっかくのことだ 335 00:30:40,500 --> 00:30:42,767 ありがたく頂いておこう 336 00:30:44,600 --> 00:30:50,066 ただ こうなったからには この金子は俺のものだ 337 00:30:51,300 --> 00:30:54,567 俺の好き勝手に使わせてもらうで 338 00:30:55,066 --> 00:30:56,233 え? 339 00:31:04,800 --> 00:31:05,800 え… 340 00:31:06,800 --> 00:31:07,800 (市郎右衛門)お千代 341 00:31:09,734 --> 00:31:13,467 お前は6年もの間― 342 00:31:15,000 --> 00:31:17,100 つらいことにも耐え忍んで― 343 00:31:18,734 --> 00:31:23,500 実にまめやかに この家のために尽くしてくれた 344 00:31:25,433 --> 00:31:29,433 そんなことは ふだん 恥ずかしくて言えねぇが― 345 00:31:31,333 --> 00:31:34,266 ずっと うれしく思ってた 346 00:31:36,500 --> 00:31:40,400 これは その褒美と思って とっといてくんない 347 00:31:40,700 --> 00:31:42,200 (千代)いえ そんな… 348 00:31:42,266 --> 00:31:43,266 いいんだよ 349 00:31:44,767 --> 00:31:46,333 ずっと寂しかったんべぇ 350 00:31:48,867 --> 00:31:52,667 なんに ちっとも不服も言わねぇで― 351 00:31:55,166 --> 00:31:56,500 よく耐えてくれたね 352 00:32:04,133 --> 00:32:05,133 お義母(かあ)様… 353 00:32:15,500 --> 00:32:16,900 ありがとうございます 354 00:32:31,900 --> 00:32:35,300 (篤太夫)あ~ また一から出直しだ 355 00:32:36,400 --> 00:32:37,533 どうなるんだんべなぁ 356 00:32:38,600 --> 00:32:41,967 “あやまちて あらためざる これを あやまちという” 357 00:32:43,066 --> 00:32:45,734 うた 孔子(こうし)様の言葉 覚えてんのか? 358 00:32:45,800 --> 00:32:46,800 へぇ 359 00:32:47,467 --> 00:32:53,100 そうか ハハハハハ… そうだ 360 00:32:53,834 --> 00:32:56,633 お前のとっさまは過ちばっかりだ 361 00:32:58,433 --> 00:33:02,967 何よりの過ちは お前たちと離れていたことだ 362 00:33:06,266 --> 00:33:09,900 行く道を定めたら 今度こそ共に暮らそう 363 00:33:12,667 --> 00:33:17,233 主も失い もはや どう生きるかも分からぬ 364 00:33:19,300 --> 00:33:22,767 どこに住むか 何になるかも分からねぇが― 365 00:33:25,633 --> 00:33:26,633 今度こそ 366 00:33:33,700 --> 00:33:34,700 へぇ 367 00:33:36,200 --> 00:33:38,066 とっさまと暮らせるの? 368 00:33:38,367 --> 00:33:39,100 おお 369 00:33:39,100 --> 00:33:39,367 おお 370 00:33:39,100 --> 00:33:39,367 わぁ! 371 00:33:39,367 --> 00:33:40,100 わぁ! 372 00:33:40,867 --> 00:33:41,433 や~! 373 00:33:41,433 --> 00:33:41,867 や~! 374 00:33:41,433 --> 00:33:41,867 ハハハハハハハ… 375 00:33:41,867 --> 00:33:42,934 ハハハハハハハ… 376 00:33:43,567 --> 00:33:47,233 うた お前 かわいいな ハハ… 377 00:33:47,800 --> 00:33:50,667 うた 見てろよ いくぞ 378 00:33:52,567 --> 00:33:54,900 よっ よっ よっ よっ おっ おっ おっ… 379 00:33:54,967 --> 00:33:57,233 お~ すごい! 380 00:33:57,300 --> 00:33:59,967 (篤太夫)よっ よっ よっ よっ よっ よっ 危ねぇ! 381 00:34:00,667 --> 00:34:01,700 ほら ほら ほら… 382 00:34:01,767 --> 00:34:03,467 すごい! 383 00:34:06,367 --> 00:34:10,934 (語り)篤太夫は 慶喜(よしのぶ)のいる駿府に向かいました 384 00:34:12,300 --> 00:34:14,900 幕府の直轄領だった駿府は― 385 00:34:15,266 --> 00:34:17,166 慶喜 そして― 386 00:34:17,233 --> 00:34:20,233 江戸(えど)を追われた 徳川家家臣たちの― 387 00:34:20,467 --> 00:34:22,567 受け皿になっていたのです 388 00:34:22,834 --> 00:34:26,000 (篤太夫)そちらは この度の洋行の報告書と― 389 00:34:26,400 --> 00:34:30,100 民部公子のため買い求めた 物品調度の目録 390 00:34:30,433 --> 00:34:33,834 そして 費用の余り金 1万両でございます 391 00:34:34,100 --> 00:34:35,133 (平岡準(ひらおかじゅん))余り金? 392 00:34:35,200 --> 00:34:36,467 (大久保一翁(おおくぼいちおう)) 1万両? 393 00:34:36,734 --> 00:34:37,734 (篤太夫)ははっ 394 00:34:38,667 --> 00:34:44,500 また こちらは 民部公子から 先の上様へのご直書(じきしょ)でございます 395 00:34:46,100 --> 00:34:49,800 上様に お目通りがかなわぬゆえ これをお渡しし― 396 00:34:50,567 --> 00:34:54,767 お返事を 必ず水戸へ 届けるようにと申しつかりました 397 00:34:57,033 --> 00:35:00,166 (語り)数日後 篤太夫は― 398 00:35:00,467 --> 00:35:03,767 慶喜のいる宝台院(ほうだいいん)に 呼ばれました 399 00:35:15,567 --> 00:35:18,734 (襖(ふすま)の開閉音) 400 00:35:18,800 --> 00:35:20,433 あ 寺のお方ですか 401 00:35:20,967 --> 00:35:24,066 かたじけないが少し炭を 足していただけないだろうか 402 00:35:24,333 --> 00:35:26,300 少し冷えるゆえ もし上様が… 403 00:35:28,934 --> 00:35:29,934 上様! 404 00:35:34,834 --> 00:35:35,867 今 お座布団を… 405 00:35:35,934 --> 00:35:36,367 (徳川慶喜)いや 406 00:35:36,367 --> 00:35:36,967 (徳川慶喜)いや 407 00:35:36,367 --> 00:35:36,967 いやしかし このような 408 00:35:36,967 --> 00:35:37,367 いやしかし このような 409 00:35:37,433 --> 00:35:38,266 古びた畳に… 410 00:35:38,266 --> 00:35:38,834 古びた畳に… 411 00:35:38,266 --> 00:35:38,834 いいや このままでよい 412 00:35:38,834 --> 00:35:39,767 いいや このままでよい 413 00:36:18,333 --> 00:36:19,333 なぜ… 414 00:36:22,767 --> 00:36:24,200 なぜ こうなってしまわれたのか… 415 00:36:30,934 --> 00:36:36,533 政の返上はともかく 鳥羽(とば)や伏見(ふしみ)の戦にしても― 416 00:36:36,967 --> 00:36:38,900 なんとか ほかに手の打ちようが… 417 00:36:38,967 --> 00:36:42,967 (慶喜)今更 過ぎ去ったことを とやかく申しても― 418 00:36:44,500 --> 00:36:46,066 詮方(せんかた)ないことではないか 419 00:36:49,567 --> 00:36:54,133 私は そなたの嘆きを聞くために 会ったのではない 420 00:36:56,133 --> 00:36:57,133 そなたが― 421 00:36:57,967 --> 00:37:01,333 昭武(あきたけ)のフランスでの様子を 告げ報(しら)せに来たと聞き― 422 00:37:03,834 --> 00:37:05,633 それで会おうと参ったのであるぞ 423 00:37:17,000 --> 00:37:18,000 ははっ 424 00:37:18,834 --> 00:37:19,834 恐れ入りました 425 00:37:27,900 --> 00:37:32,633 民部公子は この2年で 大いなる飛躍を遂げられました 426 00:37:34,767 --> 00:37:39,000 じかにお顔を拝してお話ができぬ 苦しいお心の内を― 427 00:37:39,500 --> 00:37:42,734 上様に伝えてほしいと 申しておいででした 428 00:37:46,300 --> 00:37:47,300 そうか 429 00:37:47,633 --> 00:37:48,633 (篤太夫)ははっ 430 00:37:51,033 --> 00:37:54,133 それでは いま一度 この渋沢が― 431 00:37:54,800 --> 00:37:58,300 旅のご様子を余すことなく お話しさせていただきます 432 00:37:59,800 --> 00:38:02,100 うむ 聞こう 433 00:38:03,100 --> 00:38:04,100 (篤太夫)ははっ 434 00:38:05,133 --> 00:38:09,367 まずはナポレオン三世 謁見式でのご勇姿(ゆうし)… 435 00:38:09,900 --> 00:38:14,600 いや もっと初め 船に乗られたその時から― 436 00:38:15,266 --> 00:38:17,333 民部公子は立派なご様子でした 437 00:38:18,633 --> 00:38:22,867 揺れる船をものともせず 堂々と 水戸の侍たちを引き連れ― 438 00:38:23,266 --> 00:38:25,266 その美しき立ち姿に― 439 00:38:25,700 --> 00:38:29,200 あまたの外国人の客たちも 感嘆し見とれておりました 440 00:38:29,834 --> 00:38:33,834 また カッフェなる異国の飲み物が 供された折も― 441 00:38:34,166 --> 00:38:37,533 慣れぬ味に顔をしかめる 供の者をよそに― 442 00:38:38,000 --> 00:38:43,233 西洋茶碗(せいようぢゃわん)をゆったりと口に運ばれ その優雅なこと 443 00:38:44,734 --> 00:38:48,834 お仕えする者として また大和男(やまとおのこ)として― 444 00:38:49,300 --> 00:38:51,100 まことに誇らしゅうございました 445 00:38:52,300 --> 00:38:53,300 ハハハハ… 446 00:39:00,166 --> 00:39:03,633 製鉄所の溶鉱炉や反射炉 それから兵器廠(へいきしょう)― 447 00:39:03,900 --> 00:39:07,000 もう見るもの見るもの とてつもない大きさで… 448 00:39:07,900 --> 00:39:09,000 あ そうだい 449 00:39:09,066 --> 00:39:11,200 とてつもないと言えば ヴィレットだ 450 00:39:11,667 --> 00:39:14,433 民部公子に帝王学を教授すると 451 00:39:14,500 --> 00:39:16,867 それがもう こんな大男で 452 00:39:17,867 --> 00:39:20,033 そのヴィレットが 何かと言うと― 453 00:39:20,100 --> 00:39:22,900 “ナポレオンが ナポレオンが”と 威張りくさる 454 00:39:23,233 --> 00:39:26,433 剣つき鉄砲を見せ “この剣一つとっても―” 455 00:39:26,500 --> 00:39:28,233 “日本の刀より―” 456 00:39:28,300 --> 00:39:31,500 “武器としての値打ちが高い” などと のたまったゆえ― 457 00:39:31,567 --> 00:39:34,767 “笑止! 日本の刀が どれほどの働きを致すか―” 458 00:39:35,066 --> 00:39:38,667 “ご存じもなく勝手なご批判 片腹痛(いと)うござる”と― 459 00:39:38,934 --> 00:39:41,567 某(それがし)も 朱鞘(しゅざや)の太刀を手に 立ち上がった 460 00:39:41,800 --> 00:39:43,900 民部公子が 止めてくださらなければ― 461 00:39:43,967 --> 00:39:46,033 今にも 決闘になるところでございました 462 00:39:50,066 --> 00:39:51,066 あ… 463 00:39:56,567 --> 00:39:58,767 大変失礼いたしました 464 00:40:04,000 --> 00:40:05,000 ハハハ… 465 00:40:11,266 --> 00:40:15,233 まあとにかく 何から何まで目新しく― 466 00:40:16,033 --> 00:40:21,133 それまで何も知らなかった己が 大層ちっぽけに思えました 467 00:40:29,934 --> 00:40:30,934 (慶喜)渋沢よ 468 00:40:31,900 --> 00:40:32,900 ははっ 469 00:40:34,900 --> 00:40:39,400 万里の異国にあって 公儀の瓦解(がかい)にあい― 470 00:40:41,000 --> 00:40:44,300 さぞ苦しく 骨を折ったことであろう 471 00:40:49,700 --> 00:40:53,834 この度 昭武が 障りなく帰国できたのも― 472 00:40:55,667 --> 00:40:57,266 ひとえに そなたのおかげだ 473 00:41:00,667 --> 00:41:01,667 礼を申す 474 00:41:26,266 --> 00:41:27,300 (篤太夫)上様! 475 00:41:35,100 --> 00:41:36,100 いや― 476 00:41:40,500 --> 00:41:42,066 もう何も申し上げますまい 477 00:41:44,200 --> 00:41:48,500 しかし… しかし― 478 00:41:54,333 --> 00:41:56,734 どんなにご無念だったことで ございましょう 479 00:42:33,900 --> 00:42:37,100 (五代才助(ごだいさいすけ))“駿府藩に 渋沢篤太夫というものあり” 480 00:42:37,400 --> 00:42:38,200 渋沢… 481 00:42:38,200 --> 00:42:38,400 渋沢… 482 00:42:38,200 --> 00:42:38,400 (一翁)渋沢か… 483 00:42:38,400 --> 00:42:39,600 (一翁)渋沢か… 484 00:42:39,667 --> 00:42:42,233 (大隈重信(おおくましげのぶ))4万両の利ば蓄えた!? 485 00:42:42,300 --> 00:42:43,734 (篤太夫)西洋でいうところの― 486 00:42:43,800 --> 00:42:46,033 “コンパニー”を 始めさせていただきたい 487 00:42:46,100 --> 00:42:46,834 (萩原(はぎわら)四郎兵衛(しろべえ))おもろい 488 00:42:46,834 --> 00:42:47,100 (萩原(はぎわら)四郎兵衛(しろべえ))おもろい 489 00:42:46,834 --> 00:42:47,100 (慶喜)やはり おかしろき男だ 490 00:42:47,100 --> 00:42:48,633 (慶喜)やはり おかしろき男だ 491 00:42:48,867 --> 00:42:51,000 生きて日の本の行く末を見届けろ 492 00:42:51,200 --> 00:42:53,467 (よし)あの人は 何で まだ戦ってるんだい… 493 00:42:54,333 --> 00:42:55,433 (恵十郎) 徳川のために… 494 00:42:56,300 --> 00:42:57,800 (準) 駿府を救ってくれい