1 00:00:05,433 --> 00:00:08,433 (徳川家康(とくがわいえやす)) こんばんは 徳川家康です 2 00:00:09,433 --> 00:00:13,266 さて 明治(めいじ)元年も年末だ 3 00:00:15,066 --> 00:00:18,967 私の作った世界有数の大都市 “江戸(えど)”は― 4 00:00:19,967 --> 00:00:24,000 “東京”に変わるやいなや すっかり寂れてしまいました 5 00:00:25,533 --> 00:00:31,233 大名は国元へ帰り 商人や町人も多くが去り― 6 00:00:31,900 --> 00:00:35,633 100万人を超える人口は 半分以下になった 7 00:00:36,900 --> 00:00:41,800 一方… 私の隠居所でもあった駿府(すんぷ)では― 8 00:00:42,467 --> 00:00:46,567 まだ6歳の当主 徳川家達(いえさと)のもとに― 9 00:00:47,033 --> 00:00:49,934 行き場を失った幕臣や その家族など― 10 00:00:50,734 --> 00:00:54,100 10万人が一気に流れてきました 11 00:00:55,300 --> 00:01:00,700 とはいえ 徳川の石高は もとの10分の1 12 00:01:01,667 --> 00:01:05,967 多くが仕官できず 先の見込みもなく― 13 00:01:06,667 --> 00:01:09,467 フリーター状態と なってしまいました 14 00:01:11,433 --> 00:01:16,333 そんな中 篤太夫(とくだゆう)は… 15 00:01:17,934 --> 00:01:23,000 (平岡準(ひらおかじゅん))渋沢(しぶさわ)篤太夫に 駿府藩の勘定組頭を申しつける 16 00:01:25,667 --> 00:01:30,133 (準)仕官できてよかったのう 今日から早速励むように 17 00:01:31,867 --> 00:01:34,667 (渋沢篤太夫) いいえ お受けできませぬ 18 00:01:35,633 --> 00:01:36,667 (大久保一翁(おおくぼいちおう))うん? 19 00:01:37,000 --> 00:01:39,066 (篤太夫)某(それがし)は 民部公子(みんぶこうし)に頼まれ― 20 00:01:39,433 --> 00:01:43,100 上様のご返書を受け取りに 駿府に参ったのみでございまする 21 00:01:43,166 --> 00:01:44,367 (準) そのご返書なら 22 00:01:44,567 --> 00:01:46,300 当方から じかに差し出すゆえ 23 00:01:46,633 --> 00:01:48,800 そなたが持参する 必要はなくなった 24 00:01:50,767 --> 00:01:51,767 それは異なこと 25 00:01:52,767 --> 00:01:55,800 民部公子は “必ず届けよ”と仰せになられた 26 00:01:56,367 --> 00:01:58,333 上様のご様子を じかに聞きたいという― 27 00:01:58,400 --> 00:02:00,767 兄弟の情さえ かなえていただけぬとは― 28 00:02:00,967 --> 00:02:01,900 なんたる非情 29 00:02:01,900 --> 00:02:01,967 なんたる非情 30 00:02:01,900 --> 00:02:01,967 (準) いや しかし… 31 00:02:01,967 --> 00:02:02,600 (準) いや しかし… 32 00:02:02,600 --> 00:02:02,900 (準) いや しかし… 33 00:02:02,600 --> 00:02:02,900 (一翁)渋沢 34 00:02:02,900 --> 00:02:03,600 (一翁)渋沢 35 00:02:05,133 --> 00:02:09,333 そなたを駿府に残せとは 前様(さきさま)のお取り計らいだ 36 00:02:11,233 --> 00:02:15,767 そなたも平岡円四郎(ひらおかえんしろう)のことは 存じておるであろう 37 00:02:17,600 --> 00:02:20,800 水戸(みと)は 天狗党(てんぐとう)の一件が火種となり― 38 00:02:21,633 --> 00:02:26,000 武田耕雲斎(たけだこううんさい)の孫らが 報復に明け暮れているという 39 00:02:26,734 --> 00:02:28,533 今 そなたを水戸にやれば― 40 00:02:28,867 --> 00:02:31,266 きっと民部公子に 重く用いられよう 41 00:02:31,900 --> 00:02:36,300 さすれば 必ずや妬まれ 平岡の二の舞になりかねぬ 42 00:02:37,767 --> 00:02:41,033 その情けが そなたには分からぬか? 43 00:02:43,567 --> 00:02:44,567 (ため息) 44 00:02:46,533 --> 00:02:48,200 上様には かないませぬ 45 00:02:51,367 --> 00:02:54,533 某の思慮が足りず お恥ずかしい限り… 46 00:02:56,166 --> 00:02:59,300 それでは思(おぼ)し召しどおり とどまります 47 00:02:59,900 --> 00:03:01,734 うむ それがよい 48 00:03:04,767 --> 00:03:05,767 (篤太夫)しかし― 49 00:03:06,600 --> 00:03:10,367 勘定組頭への仕官は 辞退させていただきたい 50 00:03:10,834 --> 00:03:11,834 (準)は? 51 00:03:12,300 --> 00:03:17,133 今や 駿府徳川家は 70万石の大名にすぎず― 52 00:03:17,333 --> 00:03:20,934 そこに 800万石の頃からの 家臣たちが― 53 00:03:21,000 --> 00:03:22,900 養ってほしいと押し寄せている 54 00:03:24,367 --> 00:03:28,300 某は いっときでも 幕臣としていただいた― 55 00:03:28,533 --> 00:03:30,033 百姓の矜持(きょうじ)として― 56 00:03:30,834 --> 00:03:33,967 禄を頂くことなく この地で百姓か― 57 00:03:34,567 --> 00:03:35,934 あるいは商いをして― 58 00:03:37,033 --> 00:03:40,100 心穏やかに 余生を過ごしたく存じます 59 00:03:47,600 --> 00:03:49,633 (徳川慶喜(よしのぶ)) 百姓か商いをしたいだと? 60 00:03:50,200 --> 00:03:52,934 ははっ 仕官できず― 61 00:03:53,333 --> 00:03:56,800 食うに困る者も多くおるのだとは 申したのですが― 62 00:03:57,667 --> 00:04:00,834 “百姓の矜持”などと申しまして 63 00:04:02,133 --> 00:04:03,600 百姓の矜持… 64 00:04:08,800 --> 00:04:10,600 やはり おかしろき男だ 65 00:04:16,433 --> 00:04:20,133 (一翁)前様も あのようなお顔をなさるのだな… 66 00:04:21,133 --> 00:04:22,133 はあ 67 00:04:23,333 --> 00:04:25,000 渋沢か… 68 00:04:29,967 --> 00:04:30,967 (篤太夫)“民部公子様” 69 00:04:31,967 --> 00:04:35,000 “先日 先の上様に 拝謁がかない―” 70 00:04:35,767 --> 00:04:39,533 “万里も離れたパリにて 公儀が倒れたことを知り―” 71 00:04:40,233 --> 00:04:43,367 “さぞ苦労があっただろうと お言葉を頂きました” 72 00:04:53,300 --> 00:04:55,400 “水戸へと向かう 所存でありましたが―” 73 00:04:56,367 --> 00:04:58,300 “駿府での任を 命ぜられました” 74 00:04:59,867 --> 00:05:01,200 “忠義を尽くせず” 75 00:05:01,967 --> 00:05:03,834 “残念極まりなく 存じます” 76 00:05:05,734 --> 00:05:08,000 “どうか民部公子様と―” 77 00:05:08,300 --> 00:05:12,133 “また 某が幼き頃より敬う水戸の―” 78 00:05:12,967 --> 00:05:16,066 “この先のご多幸を お祈りしております” 79 00:05:18,467 --> 00:05:19,467 (徳川昭武(あきたけ))やはり… 80 00:05:20,166 --> 00:05:23,066 兄と渋沢との仲は スペシアルなのだな 81 00:05:32,100 --> 00:05:34,967 (貞芳院(ていほういん))殿 どうされました? 82 00:05:38,533 --> 00:05:39,533 (昭武)母上 83 00:05:40,266 --> 00:05:43,200 かつて“国を守る”と 最初に声を上げたのは― 84 00:05:43,667 --> 00:05:44,934 この水戸でありました 85 00:05:49,600 --> 00:05:50,900 長州(ちょうしゅう)や薩摩(さつま)も― 86 00:05:51,533 --> 00:05:54,734 あれほど父や水戸の教えを 尊んでいたというのに― 87 00:05:58,300 --> 00:06:02,200 今や水戸は 新しき政府の蚊帳の外 88 00:06:06,800 --> 00:06:11,266 しかし 我らにも まだ できることはございましょう 89 00:06:14,100 --> 00:06:15,100 (菊池平八郎(きくちへいはちろう))殿… 90 00:06:18,467 --> 00:06:19,600 前を向かねば 91 00:06:21,100 --> 00:06:23,600 パリで共に過ごした皆に 恥じぬよう 92 00:06:30,433 --> 00:06:35,133 そのお言葉 烈公(れっこう)もお喜びでございましょう 93 00:06:46,133 --> 00:06:48,166 (語り)こうして篤太夫は… 94 00:06:48,934 --> 00:06:53,300 駿府で 新しい道を歩み始めました 95 00:06:54,400 --> 00:06:59,400 ♪~ 96 00:09:39,700 --> 00:09:44,700 ~♪ 97 00:09:45,500 --> 00:09:48,567 (篤太夫)杉浦(すぎうら)は 駿府の学問所に勤めておるのか 98 00:09:48,934 --> 00:09:49,934 (杉浦愛蔵(あいぞう))あぁ 99 00:09:50,266 --> 00:09:51,934 幕臣の 子弟だけでなく 100 00:09:52,300 --> 00:09:53,500 身分を問わず 101 00:09:53,567 --> 00:09:55,133 漢学や洋学を 教えている 102 00:09:55,333 --> 00:09:57,667 (篤太夫)ふ~ん それはよい 103 00:09:58,667 --> 00:10:00,633 (杉浦) 僕は洋行できたからよかった… 104 00:10:03,433 --> 00:10:06,166 (小声で)禄もなく 扶持米(ふちまい)で食いつないでいる― 105 00:10:06,233 --> 00:10:08,166 元幕臣の方がずっと多い 106 00:10:09,333 --> 00:10:11,166 駿府に流れてきたものの― 107 00:10:12,233 --> 00:10:14,266 空き家や馬小屋に 泊まるほかなく― 108 00:10:15,166 --> 00:10:18,600 民から“お泊まりさん”と呼ばれ 厄介者(やっかいもの)扱いだそうだ 109 00:10:24,066 --> 00:10:25,066 川村(かわむら)様… 110 00:10:28,333 --> 00:10:29,467 (準)いた! 渋沢! 111 00:10:31,266 --> 00:10:33,033 (篤太夫) パリの支出の説明は終わりました 112 00:10:33,100 --> 00:10:34,800 (準)いいや 私は諦めぬぞ 113 00:10:34,967 --> 00:10:37,333 そなたを 勘定方に推薦したのは私だ 114 00:10:37,633 --> 00:10:38,800 かつて 謀反人の大沢(おおさわ)を 115 00:10:38,867 --> 00:10:40,667 捕縛した時の 肝の据わり方 116 00:10:40,834 --> 00:10:43,333 それのみならず あの詳しい勘定書(かんじょうがき) 117 00:10:43,700 --> 00:10:44,834 そなたよりほかに― 118 00:10:44,900 --> 00:10:47,200 駿府の勘定組頭に 適任の者はおらぬ! 119 00:10:47,266 --> 00:10:50,500 いえ! 某は 禄を頂く気はありませぬ 120 00:10:53,900 --> 00:10:58,133 頼む 今は太政官札で どうにかなっているが この先… 121 00:10:58,200 --> 00:10:59,200 太政官札? 122 00:11:00,400 --> 00:11:02,400 (三野村(みのむら)利左衛門(りざえもん)) 新政府様が出した― 123 00:11:03,066 --> 00:11:05,233 太政官札でございますよ 124 00:11:06,734 --> 00:11:09,033 その太政官札 見せてもらえますか? 125 00:11:10,800 --> 00:11:14,533 (準)これだ 新政府が 諸藩の財政を救うために― 126 00:11:14,867 --> 00:11:18,667 石高に応じて1石1両の割で 各藩に貸し付けたのだ 127 00:11:18,834 --> 00:11:19,834 利子は? 128 00:11:19,900 --> 00:11:21,967 年3分 13か年賦(ねんぷ)だ 129 00:11:23,000 --> 00:11:25,133 我が駿府藩は70万石なので― 130 00:11:25,600 --> 00:11:29,700 70万両のうち 取り急ぎ 年内に53万両を頂き… 131 00:11:29,767 --> 00:11:35,333 いや 財政を救うというのは 新政府とやらの建て前で― 132 00:11:35,400 --> 00:11:36,633 これは ただの借金です 133 00:11:37,533 --> 00:11:39,834 もし うっかり使い 返すことができなければ― 134 00:11:39,900 --> 00:11:41,200 駿府は破産しますぞ 135 00:11:41,266 --> 00:11:42,266 え? 136 00:11:42,333 --> 00:11:44,800 これらが全て 預かり金とは… 137 00:11:44,867 --> 00:11:48,033 しかし… もう半分ほど使ってしまった 138 00:11:50,066 --> 00:11:51,867 半分ほどとは 正確には? 139 00:11:51,934 --> 00:11:57,400 (準)正確に言えば 53万両のうち 28万両を既に使い… 140 00:11:58,000 --> 00:12:01,500 蔵に残る太政官札は25万両だ 141 00:12:02,166 --> 00:12:03,367 なんと 142 00:12:04,600 --> 00:12:06,467 それだけ多くの金を使い― 143 00:12:06,533 --> 00:12:10,367 この先 駿府に金が入ってくる 確かな見込みはあるのですか? 144 00:12:11,333 --> 00:12:12,333 (杉浦)やむをえまい 145 00:12:12,967 --> 00:12:16,233 我ら幕臣に金子や扶持米を 出さねばならぬのだ 146 00:12:18,700 --> 00:12:20,000 (準)頼む 渋沢 147 00:12:20,967 --> 00:12:22,467 駿府を救ってくれい 148 00:12:26,266 --> 00:12:29,200 (篤太夫)これ以上 藩の借金を増やさぬためには― 149 00:12:29,266 --> 00:12:33,000 この先 太政官札は もう 藩の費用とは思わず― 150 00:12:33,066 --> 00:12:34,767 別会計とされた方がよい 151 00:12:35,266 --> 00:12:40,266 そして 残りの25万両分の 拝借金である太政官札を― 152 00:12:40,800 --> 00:12:42,767 この渋沢に預けていただきたい 153 00:12:43,600 --> 00:12:45,400 (準)全て そなたに預けろと? 154 00:12:45,834 --> 00:12:47,133 (篤太夫)はい あ― 155 00:12:47,600 --> 00:12:50,066 皆さんも そのような所におらず どうぞ 入ってください 156 00:12:50,800 --> 00:12:54,667 (商人)いんや 我ら商人は ここで結構でごぜえます 157 00:12:55,200 --> 00:12:56,300 そうは言わず 158 00:13:01,633 --> 00:13:05,033 某は この駿府藩の預かり金と― 159 00:13:05,367 --> 00:13:09,667 ここにおられる商人の皆様の金を できるだけ多く集め― 160 00:13:10,500 --> 00:13:13,333 新しきことを始めたいと 思っております 161 00:13:14,066 --> 00:13:15,233 (萩原(はぎわら)四郎兵衛(しろべえ):小声で) また金かいね… 162 00:13:17,266 --> 00:13:18,767 西洋でいうところの… 163 00:13:20,834 --> 00:13:23,100 “コンパニー”を 始めさせていただきたい 164 00:13:23,600 --> 00:13:24,600 こんぱに? 165 00:13:25,066 --> 00:13:26,767 (篤太夫)日本で言うなら まあ… 166 00:13:27,333 --> 00:13:30,166 力を合わせて 元手を合わせる… 167 00:13:31,066 --> 00:13:32,600 合本の商い所 168 00:13:32,934 --> 00:13:34,000 (準)がっぽん…? 169 00:13:34,900 --> 00:13:38,433 西洋では 商人は己の金だけでなく― 170 00:13:38,500 --> 00:13:40,900 民から金を集めて 商売をしています 171 00:13:41,166 --> 00:13:45,133 (エラール・・ フランス語で) 小さな金が集まって 172 00:13:45,200 --> 00:13:47,633 大きな資本となる 173 00:13:47,834 --> 00:13:49,800 一人一人の金は小さくても― 174 00:13:50,066 --> 00:13:52,734 集めれば大きな金になる 175 00:13:53,500 --> 00:13:55,066 (エラール・・ フランス語で) 志はよくても 176 00:13:55,133 --> 00:13:58,633 一人では 出来そうにないことが 177 00:13:58,934 --> 00:14:02,300 一人一人の力が小さくて できぬことも… 178 00:14:02,767 --> 00:14:04,567 (フランス語で) 多くの人から 179 00:14:05,066 --> 00:14:10,600 少しずつ“金”を 集めることで可能になる 180 00:14:10,800 --> 00:14:14,100 (篤太夫)皆の力を合わせることで それが可能になる 181 00:14:15,767 --> 00:14:19,800 その商売が大きくなれば 利益もでっかくなる 182 00:14:21,000 --> 00:14:25,000 利益で拝借金を返納し 元手を出した者に― 183 00:14:25,233 --> 00:14:28,200 利が出た分の配当金も支払う 184 00:14:28,967 --> 00:14:31,867 領内を金がぐるぐると回りだし― 185 00:14:32,934 --> 00:14:35,033 国が潤っていく 186 00:14:35,800 --> 00:14:36,934 そういう仕組みです 187 00:14:38,333 --> 00:14:41,467 (準)よく分からぬが つまりは勘定所の務めを― 188 00:14:41,533 --> 00:14:43,066 引き受けて くれるということだな? 189 00:14:43,133 --> 00:14:44,133 (川村恵十郎(えじゅうろう))待て 190 00:14:45,834 --> 00:14:49,166 (恵十郎)我らに 商人と共に働けというのか? 191 00:14:51,967 --> 00:14:52,967 そうです 192 00:14:53,700 --> 00:14:56,533 西洋では 商人と武士は共に働いて… 193 00:14:56,600 --> 00:15:00,166 (幕臣)ふざけるな! さようなことができるか! 194 00:15:00,233 --> 00:15:01,233 (幕臣たち)そうだ! ふざけるな! 195 00:15:01,300 --> 00:15:02,300 いや しかし… 196 00:15:02,367 --> 00:15:05,934 渋沢様 お言葉じゃぁございまするが― 197 00:15:06,200 --> 00:15:08,233 不肖にも 何とも懐が厳しく… 198 00:15:08,300 --> 00:15:10,000 (篤太夫)いやいや これは御用金ではない 199 00:15:10,066 --> 00:15:11,400 必ずお返しします 200 00:15:11,467 --> 00:15:14,000 (幕臣)ケッ 何の話かと思えば 201 00:15:14,066 --> 00:15:16,100 (幕臣)商人風情と一緒にしおって 202 00:15:16,467 --> 00:15:17,333 (幕臣)帰るぞ 203 00:15:17,333 --> 00:15:17,467 (幕臣)帰るぞ 204 00:15:17,333 --> 00:15:17,467 (幕臣たち)おう 205 00:15:17,467 --> 00:15:18,333 (幕臣たち)おう 206 00:15:20,000 --> 00:15:21,166 お待ちくだされ! 207 00:15:22,567 --> 00:15:24,900 お待ちくだされ! ちょっと! 208 00:15:25,400 --> 00:15:30,867 (語り)篤太夫は その後も 旧幕臣や商人らの説得を続け… 209 00:15:32,300 --> 00:15:34,667 銀行と商社を兼ね備えた― 210 00:15:34,734 --> 00:15:37,934 商法會所(かいしょ)を設立しましたが… 211 00:15:38,734 --> 00:15:40,433 この合本の商いで― 212 00:15:40,500 --> 00:15:43,333 集めれば力になるのは 金だけではない 213 00:15:44,367 --> 00:15:46,967 それぞれの商売で 見聞きしたものを集めれば― 214 00:15:47,033 --> 00:15:49,433 それが そのまま でっけえ利益に変わります 215 00:15:49,500 --> 00:15:50,500 (準)なるほど 216 00:15:50,567 --> 00:15:53,467 更に こちらでは 従来の商いだけでなく― 217 00:15:53,533 --> 00:15:56,633 時節に見合った 新しき商いを始める者にも― 218 00:15:56,700 --> 00:15:58,934 金を貸し付け 後押しをしたい 219 00:15:59,400 --> 00:16:01,967 駿府の経済を盛り上げたいんです 220 00:16:02,767 --> 00:16:05,767 (準)しかし… 藩からは太政官札しか出せぬぞ 221 00:16:07,066 --> 00:16:08,066 分かっております 222 00:16:10,300 --> 00:16:11,633 はぁ… よし 223 00:16:11,967 --> 00:16:14,567 一度江戸に… じゃねえや 東京に行くぞ 224 00:16:15,100 --> 00:16:16,100 (役人)はっ 225 00:16:21,734 --> 00:16:26,400 (手代)ひい ふう みい よ いつ む なな や― 226 00:16:26,567 --> 00:16:27,767 ここのつ とお 227 00:16:30,567 --> 00:16:36,333 (手代)ひい ふう みい よ いつ む なな や ここのつ とお 228 00:16:36,934 --> 00:16:38,300 1万枚でよろしいでしょうか 229 00:16:38,734 --> 00:16:40,033 (手代)うむ 相違ない 230 00:16:41,400 --> 00:16:43,567 (三野村)これはこれは 渋沢様… 231 00:16:43,633 --> 00:16:46,700 あぁ ご無沙汰しております 三野村様 232 00:16:47,900 --> 00:16:50,567 駿府藩の命を受け 駿府にて 商いを 233 00:16:50,633 --> 00:16:51,800 始めることに なりました 234 00:16:51,867 --> 00:16:53,400 さようで ございますか 235 00:16:53,800 --> 00:16:56,600 商いを それはそれは 236 00:16:56,667 --> 00:17:01,367 ついては 三井(みつい)が作られたという この太政官札を― 237 00:17:02,200 --> 00:17:05,300 正金に換えていただけぬかと ご相談に参りました 238 00:17:05,900 --> 00:17:07,667 ほほう… 239 00:17:07,734 --> 00:17:11,433 これは相当な量ですな 240 00:17:14,333 --> 00:17:15,333 おい あれを 241 00:17:15,600 --> 00:17:16,600 (手代)へい 242 00:17:20,667 --> 00:17:22,767 (三野村)さてさて… 243 00:17:31,700 --> 00:17:32,700 うん… 244 00:17:39,100 --> 00:17:44,000 これぐらいの札となると… はい こんなもんでしょう 245 00:17:44,200 --> 00:17:45,233 (手代)へい 246 00:17:45,300 --> 00:17:46,467 おっしゃるとおり― 247 00:17:47,700 --> 00:17:53,233 三井は 新政府様の命で 家財まで売って― 248 00:17:53,767 --> 00:17:56,900 死に物狂いで これを発行しました 249 00:17:59,567 --> 00:18:01,567 官軍の戦でも― 250 00:18:02,667 --> 00:18:07,000 三井の手代がついていって 軍資金を払い続け― 251 00:18:07,066 --> 00:18:10,066 ほれ 天子様のご東幸(とうこう)でも― 252 00:18:10,400 --> 00:18:13,433 莫大(ばくだい)な御用金を払って 253 00:18:13,867 --> 00:18:15,133 なんと 254 00:18:16,600 --> 00:18:19,767 三井と新政府は そこまで懇意でありましたか 255 00:18:19,834 --> 00:18:23,967 懇意ねぇ 懇意 懇意か 256 00:18:24,600 --> 00:18:26,667 確かに懇意でござんす 257 00:18:27,333 --> 00:18:30,233 ですからもう 三井としては もはや― 258 00:18:31,166 --> 00:18:34,667 新政府様に潰れてもらっては困る 259 00:18:37,000 --> 00:18:38,000 (手代)失礼いたします 260 00:18:38,066 --> 00:18:40,333 はい どうぞ 正金でございます 261 00:18:40,400 --> 00:18:41,567 ありがとうございます 262 00:18:44,233 --> 00:18:45,233 あぁ… 263 00:18:50,500 --> 00:18:51,500 ん? 264 00:18:52,467 --> 00:18:58,166 いや 札の額面より 2割も安いではないか! 265 00:18:59,200 --> 00:19:01,700 今は それぐらいが 相場でござんしょ 266 00:19:01,767 --> 00:19:04,734 いや しかし せめてあと3分ほどは… 267 00:19:05,100 --> 00:19:09,367 ほほう… ふっかけるとは― 268 00:19:09,734 --> 00:19:12,533 二本差しのお方にしてはお珍しい 269 00:19:14,567 --> 00:19:18,433 その重いのは 商いをするには― 270 00:19:18,500 --> 00:19:21,100 さぞかし 邪魔でございましょうなぁ 271 00:19:24,133 --> 00:19:27,633 しかし まあ 今日のところは この額で ね 272 00:19:28,867 --> 00:19:31,200 いつかは 渋沢様は― 273 00:19:31,700 --> 00:19:36,200 商売敵になるやもしれませぬから 274 00:19:36,266 --> 00:19:37,700 お~ 怖っ 275 00:19:39,166 --> 00:19:40,600 じゃ ご苦労でござんした 276 00:19:54,333 --> 00:19:55,834 食えないおやじだ 277 00:19:58,600 --> 00:20:00,500 (篤太夫)まあ 正金は出来たんだ 278 00:20:01,333 --> 00:20:03,400 買い入れの元手としては十分だ 279 00:20:04,166 --> 00:20:06,700 よし 主に仕入れたいのは― 280 00:20:07,000 --> 00:20:12,300 よい米や茶を作るのに欠かせない 〆粕(しめかす) 干鰯(ほしか) 油粕(あぶらかす) それに糠(ぬか)だ 281 00:20:12,367 --> 00:20:13,367 (須永(すなが)虎之助(とらのすけ))へい 282 00:20:13,433 --> 00:20:16,433 〆粕は匂いのしねえやつは駄目だ 283 00:20:16,500 --> 00:20:19,900 油粕も なるべく 油っ気の少ないものを選べ 284 00:20:20,200 --> 00:20:22,000 (虎之助) 俺らに任せてくれい おい… 285 00:20:22,066 --> 00:20:23,066 (部下)はっ 286 00:20:23,133 --> 00:20:24,133 (虎之助)よし 行くべ 287 00:20:24,200 --> 00:20:25,200 (部下)はっ 288 00:20:37,533 --> 00:20:40,467 (五代才助(ごだいさいすけ)) 失礼だが この肥料はどうです? 289 00:20:40,533 --> 00:20:41,533 ん? 290 00:20:41,600 --> 00:20:42,934 (五代)稲作に使いたいんだが 291 00:20:46,367 --> 00:20:48,767 うん… こりゃ安物(やすもん)だな 292 00:20:50,633 --> 00:20:52,667 うん こっちの方がよい粘りです 293 00:20:52,734 --> 00:20:54,400 (五代)あぁ あいがたか 294 00:20:55,734 --> 00:21:00,100 大阪ん商人に頼まれたが 門外漢で難儀しておりました 295 00:21:01,600 --> 00:21:05,700 それから… その頭で 長くうろつかん方がよい 296 00:21:06,734 --> 00:21:10,633 この辺りは 荒っぽい官軍崩れが多か 297 00:21:11,633 --> 00:21:16,000 (小声で)あぁ… いかにも 東京は物騒になりましたのう 298 00:21:17,066 --> 00:21:20,233 (五代) 新政府が 官軍の兵に禄を払えず― 299 00:21:20,600 --> 00:21:23,533 商人や町人へのたかり ゆすりを 黙認しておる 300 00:21:24,433 --> 00:21:25,567 だから荒れたんです 301 00:21:27,667 --> 00:21:30,066 おいは 御一新さえかなえば― 302 00:21:30,700 --> 00:21:34,467 いよいよ国を富ませる新しか世が 始まるち思っちょった 303 00:21:34,533 --> 00:21:39,300 じゃっどん 上が変わっても 相変わらずの侍の世じゃ 304 00:21:39,633 --> 00:21:40,633 反吐(へど)が出る 305 00:21:41,033 --> 00:21:42,066 (店主)まいど! 306 00:21:42,133 --> 00:21:43,867 (五代)おう すまんが― 307 00:21:44,133 --> 00:21:45,300 こいを10俵もらえんか 308 00:21:45,367 --> 00:21:46,600 (店主)へぇ 10俵も! 309 00:21:46,667 --> 00:21:47,967 (五代)後で使いをよこすで 310 00:21:48,467 --> 00:21:49,533 薩摩ん五代じゃ 311 00:21:50,033 --> 00:21:51,033 (店主)へぇ 312 00:21:51,367 --> 00:21:53,100 では 世話にないもした 313 00:21:56,200 --> 00:21:57,133 五代… 314 00:21:57,200 --> 00:21:59,033 (モンブラン・・ フランス語で) 五代はすばらしい 315 00:21:59,400 --> 00:22:01,066 (田辺(たなべ)太一(たいち)) 薩摩の五代才助か! 316 00:22:01,433 --> 00:22:05,000 (向山一履(むこうやまかずふみ))薩摩じゃ! 薩摩とモンブランのせいで… 317 00:22:06,367 --> 00:22:08,900 お待ちくだされ… 待ってくれ! 318 00:22:09,300 --> 00:22:10,800 あの借款がなくなったせいで― 319 00:22:11,066 --> 00:22:12,834 公儀は新しい世を 作れなかったんだ 320 00:22:13,400 --> 00:22:14,433 あなたのせいで… 321 00:22:27,000 --> 00:22:28,333 (語り)血洗島(ちあらいじま)では… 322 00:22:29,200 --> 00:22:31,667 駿府へ向かう千代(ちよ)とうたの― 323 00:22:31,734 --> 00:22:34,333 引っ越しの準備が 行われていました 324 00:22:38,233 --> 00:22:40,333 (渋沢うた) ねえさま うたは とっさまに― 325 00:22:40,400 --> 00:22:43,100 お会いできるのは うれしいんだけんど― 326 00:22:43,400 --> 00:22:47,266 じいさまや ばあさま ねえさまと お別れするんは― 327 00:22:47,333 --> 00:22:49,166 さみしゅうございます 328 00:22:50,367 --> 00:22:54,300 (渋沢てい)はぁ うれしいこと 言ってくれるでねえか 329 00:22:56,033 --> 00:22:57,266 (渋沢ゑい)でもな うた 330 00:22:58,333 --> 00:23:02,967 うたが とっさまのそばにいたら とっさまは百人力だに 331 00:23:04,834 --> 00:23:09,033 とっさまには かっさまと うたが必要なんだで 332 00:23:11,600 --> 00:23:13,133 (渋沢千代)申し訳ねぇことです 333 00:23:14,233 --> 00:23:15,867 (千代) 跡継ぎの嫁であったはずが… 334 00:23:18,667 --> 00:23:20,000 (渋沢市郎右衛門(いちろうえもん)) 謝ることなんかねぇ 335 00:23:24,400 --> 00:23:26,834 (市郎右衛門) 家の務めも苦労させたが― 336 00:23:28,033 --> 00:23:29,233 向こうに行ったら― 337 00:23:30,500 --> 00:23:35,333 こっちより骨の折れることも あるかもしれねぇ 338 00:23:37,133 --> 00:23:38,133 無理はせず― 339 00:23:39,667 --> 00:23:43,467 体には十分 気を付くんだど 340 00:23:46,300 --> 00:23:47,300 へぇ 341 00:23:48,934 --> 00:23:49,934 これまで… 342 00:23:54,233 --> 00:23:57,033 まことに世話んなった 343 00:23:59,000 --> 00:24:02,867 栄一(えいいち)を どうかよろしくお願いします 344 00:24:06,633 --> 00:24:11,000 (千代)こちらこそ ありがとうございました 345 00:24:12,233 --> 00:24:15,367 (うた)こちらこそ ありがとうございました 346 00:24:17,333 --> 00:24:18,333 うた… 347 00:24:33,033 --> 00:24:34,033 (渋沢よし)お千代ちゃん 348 00:24:35,266 --> 00:24:36,266 (千代)およしちゃん 349 00:24:36,734 --> 00:24:39,934 (よし)聞いたよ 栄一さんから文が来たんだって 350 00:24:40,734 --> 00:24:41,767 駿府に来いって 351 00:24:43,834 --> 00:24:44,834 (千代)へぇ 352 00:24:46,700 --> 00:24:50,867 そうか さみしくなるなぁ 353 00:24:56,433 --> 00:24:57,433 (おはる)何 折ってんだい? 354 00:24:57,867 --> 00:25:00,600 (うた)カブト! とっさまにね あげるの 355 00:25:01,066 --> 00:25:02,166 (おはる)楽しみだいねぇ 356 00:25:02,400 --> 00:25:03,500 うん 楽しみ! 357 00:25:09,200 --> 00:25:14,400 (よし)昨日ね 作太郎(さくたろう)が 傷だらけになって帰ってきたんだ 358 00:25:18,066 --> 00:25:19,367 隣村の子に― 359 00:25:20,333 --> 00:25:23,000 “お前のとっさまは朝敵だ”って 罵られて― 360 00:25:24,700 --> 00:25:26,667 それで頭にきて けんかしたって 361 00:25:31,467 --> 00:25:35,767 今は はあ 天子様の御代(みよ)になったんだんべ? 362 00:25:39,567 --> 00:25:40,567 それなんに― 363 00:25:44,500 --> 00:25:46,767 あの人は 何で まだ戦ってるんだい… 364 00:26:10,100 --> 00:26:10,900 (兵)しっかりしろ 365 00:26:11,000 --> 00:26:12,000 (看護兵)先生! 366 00:26:14,900 --> 00:26:16,600 (高松凌雲(たかまつりょううん)) この者はあちらへ! 367 00:26:16,667 --> 00:26:17,667 (看護兵)はっ! 368 00:26:17,734 --> 00:26:18,734 しっかりしろ! 369 00:26:18,800 --> 00:26:20,467 (看護兵)第二 小隊が戻ったぞ! 370 00:26:21,600 --> 00:26:22,633 戦況はどうなっている? 371 00:26:22,934 --> 00:26:25,800 (負傷兵) 我が軍は 松前(まつまえ)を放棄し敗走 372 00:26:26,400 --> 00:26:28,800 (負傷兵)木古内(きこない)に500の兵を残し― 373 00:26:29,567 --> 00:26:31,967 五稜郭(ごりょうかく)に引き返しました 374 00:26:33,233 --> 00:26:34,266 奥へ! 375 00:26:34,333 --> 00:26:35,333 (看護兵)はい! 376 00:26:38,967 --> 00:26:40,467 ここまでなのか…? 377 00:26:48,266 --> 00:26:52,800 (篤太夫)ここはな もとは この地のお代官様の屋敷だい 378 00:26:53,500 --> 00:26:56,133 向こうは とっさまたちが商いで使う 379 00:26:57,467 --> 00:26:58,467 そして… 380 00:27:02,133 --> 00:27:04,266 ここが 俺たちの部屋だ 381 00:27:05,100 --> 00:27:07,200 まぁ ここが… 382 00:27:07,266 --> 00:27:08,266 あぁ 383 00:27:09,133 --> 00:27:14,467 俺たちが 共に暮らす部屋だ うん 384 00:27:15,467 --> 00:27:16,934 ほら うた おいで 385 00:27:17,233 --> 00:27:18,266 ちっせ! 386 00:27:19,166 --> 00:27:23,000 じいさまのとこの お蚕様のお部屋よりも小せぇに 387 00:27:23,066 --> 00:27:24,066 これ うた 388 00:27:25,066 --> 00:27:27,233 うん… まぁ そのとおりだが… 389 00:27:31,467 --> 00:27:33,934 (千代)今日は 浅間(せんげん)神社に お参りしてきたんですよ 390 00:27:34,133 --> 00:27:37,633 石段が こぉんなに高(たけ)ぇんで たまげたにい 391 00:27:37,700 --> 00:27:40,066 そうか そんなに 高(たっけ)ぇんか 392 00:27:40,367 --> 00:27:44,367 はい 駿府のお人は 言葉がおかしかんべぇ 393 00:27:44,433 --> 00:27:45,433 ん? 394 00:27:45,500 --> 00:27:47,133 でも 一緒に遊んだ子には― 395 00:27:47,200 --> 00:27:50,100 うたの言葉の方がおかしいらぁと 言われました 396 00:27:50,333 --> 00:27:53,767 ハハハハハハ… そうか 397 00:27:54,734 --> 00:27:57,467 日本には 土地土地に いろんな言葉がある 398 00:27:57,934 --> 00:28:02,100 とっさまはな かつては京で いろんな国の者と会い― 399 00:28:02,166 --> 00:28:06,166 いろんな言葉を聞いたが 一番困ったのは薩摩言葉だ 400 00:28:06,433 --> 00:28:07,433 (うた)さつま? 401 00:28:07,500 --> 00:28:09,200 (篤太夫) ああ もう何言ってんだか― 402 00:28:09,600 --> 00:28:13,600 怒ってんだか 悲しんでんだか 何も分かんねぇんだ ハハハハ… 403 00:28:13,667 --> 00:28:16,166 (うた) とっさま 西郷(さいごう)様って知ってる? 404 00:28:19,567 --> 00:28:22,567 うわぁ~ なっから たくさん働いておられますなぁ 405 00:28:22,633 --> 00:28:24,400 これ… これ うた 406 00:28:24,700 --> 00:28:26,233 (篤太夫) だから要らぬと言ってるんです! 407 00:28:27,800 --> 00:28:30,800 ここでは 腰のものはお外しください 408 00:28:31,166 --> 00:28:33,133 なぜじゃ! なぜ某が― 409 00:28:33,200 --> 00:28:35,633 商人のような 格好をせねばならぬ? 410 00:28:35,867 --> 00:28:37,100 私も商人です 411 00:28:37,367 --> 00:28:41,133 それに 武士も商人も 上も下もない 412 00:28:42,300 --> 00:28:45,400 むしろ ここでは 商人の皆さんの方が手だれだ 413 00:28:46,033 --> 00:28:47,266 ほりゃ ほうや 414 00:28:49,734 --> 00:28:51,233 (篤太夫)そして あなた方も― 415 00:28:52,100 --> 00:28:55,633 商人だからと 卑屈になられては困る 416 00:28:55,700 --> 00:28:56,700 (商人)はい? 417 00:28:56,767 --> 00:28:58,400 金だけ もうければいいと― 418 00:28:58,900 --> 00:29:01,467 道理に背くようなことが あってはなりませぬ 419 00:29:02,433 --> 00:29:06,533 武士の皆さんには 刀を捨て 算盤(そろばん)勘定を 420 00:29:06,600 --> 00:29:10,734 商人の皆さんには この駿府の一端を担うという― 421 00:29:10,800 --> 00:29:12,400 矜持を持っていただきたい 422 00:29:13,367 --> 00:29:14,367 (商人)矜持? 423 00:29:15,166 --> 00:29:17,867 (幕臣)刀を捨て 算盤だと? 424 00:29:18,467 --> 00:29:20,266 渋沢 お主! 425 00:29:20,333 --> 00:29:22,300 曲がりなりにも この世は変わった 426 00:29:22,600 --> 00:29:27,100 これからは 武士も商人も 互いに よいところを認め合い― 427 00:29:27,300 --> 00:29:30,467 力を合わせて共に働くんです 428 00:29:33,266 --> 00:29:34,633 (萩原)ほりゃあ ほうだぁね 429 00:29:36,266 --> 00:29:39,333 駿府に お武家様らが たんとおいでになった際は― 430 00:29:39,400 --> 00:29:40,934 俺らも頭抱えました 431 00:29:41,834 --> 00:29:45,500 今まで以上に御用金を 頼りにされちゃあ たまらんわと 432 00:29:46,700 --> 00:29:50,100 ほいでも 合本が ええあんばいに転がりゃ― 433 00:29:50,967 --> 00:29:54,700 きっと日本中が まねすることにならぁ ハハ… 434 00:29:55,433 --> 00:29:56,433 おもろい 435 00:29:57,633 --> 00:30:01,433 渋沢様 この茶問屋 萩原四郎兵衛― 436 00:30:01,500 --> 00:30:05,000 この先は 矜持を持って ご協力いたしまする 437 00:30:06,100 --> 00:30:08,867 (篤太夫)おぉ 頼もしい 438 00:30:10,000 --> 00:30:11,000 (恵十郎)篤太夫 439 00:30:15,400 --> 00:30:16,433 (うた)あ とっさまが! 440 00:30:16,500 --> 00:30:17,500 (千代)静かに 441 00:30:23,433 --> 00:30:25,567 何から始めればよいのか 教えよ 442 00:30:39,367 --> 00:30:42,800 何から始めればよいのか 教えよ 443 00:30:43,433 --> 00:30:44,433 あ… 444 00:30:45,233 --> 00:30:46,233 (商人)へい! 445 00:30:47,767 --> 00:30:49,133 川村様… 446 00:30:53,266 --> 00:30:55,500 よし 我ら駿府が― 447 00:30:56,266 --> 00:30:59,633 新しき商いの 先駆けとなりましょう! 448 00:31:04,934 --> 00:31:09,600 (語り)こうして 篤太夫が手がけた 商法會所は軌道に乗り― 449 00:31:10,033 --> 00:31:13,133 順調に利益を 出すようになっていきました 450 00:31:17,433 --> 00:31:19,467 (篤太夫) おい! 何やってるんですか! 451 00:31:24,467 --> 00:31:27,100 (語り)一方 箱館(はこだて)では… 452 00:31:33,400 --> 00:31:36,166 (土方歳三(ひじかたとしぞう)) これを 日野(ひの)の家族に届けてくれ 453 00:31:38,066 --> 00:31:39,300 (市村鉄之助(いちむらてつのすけ))承知いたしました 454 00:31:43,000 --> 00:31:45,333 急げ 行け! 455 00:32:01,633 --> 00:32:03,967 (渋沢成一郎(せいいちろう)) 土方! まだ ここにいたのか! 456 00:32:04,533 --> 00:32:07,166 ここは勝ち目がない 早く五稜郭に戻れ! 457 00:32:07,233 --> 00:32:10,433 いや俺はこれ以上 死に後れるわけにはいかぬ 458 00:32:14,500 --> 00:32:17,033 この勢いでは 遅かれ早かれ 我らは負ける 459 00:32:17,900 --> 00:32:19,300 だとすれば せめて― 460 00:32:19,533 --> 00:32:22,533 新選組の名に恥じぬよう 潔く散り― 461 00:32:24,233 --> 00:32:28,633 胸を張って あの世で友と 酒を酌み交わしたい 462 00:32:35,066 --> 00:32:36,367 それならば 俺も… 463 00:32:36,433 --> 00:32:38,200 お主の友は生きると言ったぞ 464 00:32:38,800 --> 00:32:40,800 (篤太夫)いつかまた会った時に 恥じぬよう― 465 00:32:41,233 --> 00:32:42,233 俺もなるたけ― 466 00:32:43,266 --> 00:32:45,066 前を向いて 生きてみることにすんべぇ 467 00:32:49,734 --> 00:32:50,934 お主も 俺とは違う 468 00:32:52,500 --> 00:32:53,633 生のにおいがする 469 00:32:55,266 --> 00:32:56,333 お主は生きろ 470 00:32:56,400 --> 00:32:58,600 何を言う 俺は… 471 00:32:58,767 --> 00:33:01,100 生きて 日の本の行く末を見届けろ! 472 00:33:03,767 --> 00:33:04,767 ひょっとすると… 473 00:33:06,967 --> 00:33:08,700 その方が よほどつらいかもしれぬ 474 00:33:23,467 --> 00:33:24,500 行け 475 00:33:58,166 --> 00:33:59,166 (成一郎)うっ… 476 00:33:59,433 --> 00:34:00,500 ああ~! 477 00:34:08,500 --> 00:34:09,500 (部下)渋沢様…! 478 00:34:09,567 --> 00:34:10,567 (銃声) 479 00:34:41,266 --> 00:34:43,000 (歳三) お主の友は生きると言ったぞ 480 00:35:14,066 --> 00:35:16,200 (成一郎)うわぁ~! 481 00:35:19,033 --> 00:35:20,033 うっ… 482 00:35:23,967 --> 00:35:26,200 あぁ~! 483 00:35:27,667 --> 00:35:30,266 あぁ~! 484 00:35:38,834 --> 00:35:40,333 (語り)この数日後 485 00:35:40,533 --> 00:35:41,533 (銃声) 486 00:35:43,133 --> 00:35:45,100 (語り)五稜郭が開城 487 00:35:51,934 --> 00:35:57,000 全ての徳川の戦いが終わりました 488 00:36:08,367 --> 00:36:12,834 (部下) 渋沢様 今日はお会いにならぬと 489 00:36:18,667 --> 00:36:19,667 そうですか 490 00:37:33,133 --> 00:37:34,133 川村様 491 00:37:40,700 --> 00:37:44,367 箱館が 降伏したと… 492 00:37:47,867 --> 00:37:48,867 知っておる 493 00:37:55,767 --> 00:37:57,166 戦った幕府の皆は… 494 00:38:01,467 --> 00:38:03,133 成一郎は どうなったのでしょうか 495 00:38:08,266 --> 00:38:13,533 最後まで忠義を貫いたのであれば 本望であろう 496 00:38:18,333 --> 00:38:19,333 俺は― 497 00:38:24,233 --> 00:38:26,567 平岡様の命も守れず… 498 00:38:29,667 --> 00:38:31,166 戦でも死に損ない― 499 00:38:33,800 --> 00:38:37,367 徳川にささげられなかった 命を持て余して ここに来た 500 00:38:43,633 --> 00:38:44,700 皆 そうだ 501 00:38:47,300 --> 00:38:49,834 ただ禄が欲しくて 流れてきたのではない 502 00:39:03,633 --> 00:39:08,333 徳川のために 何かできぬかと… 503 00:39:18,100 --> 00:39:19,100 手伝います 504 00:39:47,467 --> 00:39:50,934 (伊藤博文(いとうひろぶみ))落ちよったぞ! ようやく箱館が落ちよったぁ! 505 00:39:51,000 --> 00:39:51,500 (男性)おお! 506 00:39:51,500 --> 00:39:52,033 (男性)おお! 507 00:39:51,500 --> 00:39:52,033 (男性)ホンマか 伊藤さん! 508 00:39:52,033 --> 00:39:52,500 (男性)ホンマか 伊藤さん! 509 00:39:52,567 --> 00:39:53,967 (博文)これで 諸外国に対して 510 00:39:54,200 --> 00:39:55,800 わしらが正統な 日本政府じゃと 511 00:39:55,867 --> 00:39:56,867 胸を 張ることができる 512 00:39:56,934 --> 00:39:57,567 (男性)おお! 513 00:39:57,567 --> 00:39:57,934 (男性)おお! 514 00:39:57,567 --> 00:39:57,934 (博文)いよいよ こっからじゃ 515 00:39:57,934 --> 00:39:58,734 (博文)いよいよ こっからじゃ 516 00:40:00,133 --> 00:40:01,133 (大隈重信(おおくましげのぶ))そんとおりばい! 517 00:40:03,000 --> 00:40:04,000 こいも おいが― 518 00:40:04,433 --> 00:40:07,700 旧幕府のアメリカ船ば 買い取ることができたけんばい 519 00:40:08,633 --> 00:40:09,633 (重信) あいがなかぎ 520 00:40:10,066 --> 00:40:12,166 箱館の勝利は なかぁ! 521 00:40:12,233 --> 00:40:13,233 (博文)そうじゃ! 522 00:40:13,300 --> 00:40:16,033 ストーンウォールと 横須賀(よこすか)製鉄所を奪うたんはすごい 523 00:40:16,400 --> 00:40:18,633 佐賀の減らず口といやぁ 大隈さんじゃ 524 00:40:18,700 --> 00:40:20,133 アッハッハッハッハッハ… 525 00:40:20,200 --> 00:40:21,300 (大隈綾子(あやこ)) お前様ったら また 526 00:40:21,367 --> 00:40:22,767 そんな大きな声で 527 00:40:23,734 --> 00:40:25,233 (五代) のんきじゃなぁ 528 00:40:26,867 --> 00:40:29,200 参与ん横井(よこい)殿を切り刻んだ賊は― 529 00:40:29,433 --> 00:40:31,934 次は伊藤君の首を 狙っちょっちゅううわさじゃ 530 00:40:32,000 --> 00:40:34,433 ハハハハ… 五代さん また泊まっちょったんか 531 00:40:34,500 --> 00:40:35,533 おう 532 00:40:35,600 --> 00:40:38,000 五代さんも 大阪で刺されたと うわさになっちょったよ 533 00:40:38,066 --> 00:40:39,133 (五代)ん? フッ… 534 00:40:39,633 --> 00:40:43,000 こん五代は戦にも出ず 金もうけばっか しちょっち― 535 00:40:43,233 --> 00:40:44,934 薩摩でん 専らの悪評じゃ 536 00:40:45,000 --> 00:40:46,333 (重信)ハハハハハ… 537 00:40:46,400 --> 00:40:49,033 (綾子)まぁ 主人はいつも “頼りになるのは五代様”と― 538 00:40:49,100 --> 00:40:50,333 申しておりますのに 539 00:40:50,400 --> 00:40:51,400 うむ 540 00:40:52,100 --> 00:40:55,066 金といやぁ フランス政府から来とった― 541 00:40:56,000 --> 00:40:59,600 民部公子の旅館の賃料やなんかの 払い戻し金のことばってん 542 00:41:00,066 --> 00:41:02,667 エラール殿の送ってきた 1万5000両か 543 00:41:03,233 --> 00:41:04,567 いや 新政府の国庫に― 544 00:41:04,633 --> 00:41:06,200 入れてしまおうと 思うたばってん― 545 00:41:07,300 --> 00:41:09,433 そん一行の会計掛(がかり)が― 546 00:41:10,133 --> 00:41:12,934 “こりゃ 民部公子のために 徳川が出した金ゆえ―” 547 00:41:13,133 --> 00:41:15,900 “全部 駿府藩に引き渡すのが 筋や”と― 548 00:41:16,100 --> 00:41:17,266 言い張っとうらしかばい 549 00:41:17,934 --> 00:41:20,166 確かに 筋ではある 550 00:41:21,567 --> 00:41:25,000 ほぅ パリに そげな財務担当が… 551 00:41:26,400 --> 00:41:30,900 (五代)ムッシュー シブサワ 552 00:41:32,266 --> 00:41:35,200 (博文)駿府藩は今 商人と組んだ商いで― 553 00:41:35,266 --> 00:41:37,200 ようけ利を得ちょると いいよるしなぁ 554 00:41:37,266 --> 00:41:39,567 は? 商人と組んだ商い? 555 00:41:39,967 --> 00:41:44,200 そうじゃ せっかく東京から 徳川を追い出したっちゅうのに― 556 00:41:44,600 --> 00:41:47,367 駿府で力を蓄えるとなっちゃ 油断ができんと― 557 00:41:47,734 --> 00:41:49,000 木戸(きど)さんが案じておられた 558 00:41:50,300 --> 00:41:51,834 こん男の仕業らしい 559 00:41:55,200 --> 00:41:58,567 “駿府藩に 渋沢篤太夫というものあり” 560 00:42:00,800 --> 00:42:02,467 “民部公子に随行したが―” 561 00:42:02,934 --> 00:42:06,867 “自分一個の才覚で 4万両の利益を蓄え―” 562 00:42:07,367 --> 00:42:09,800 “この4万両を駿府藩内に配分” 563 00:42:09,867 --> 00:42:13,066 フランスで4万両の利ば蓄えた!? 564 00:42:15,834 --> 00:42:19,233 (五代) こんパリのシブサワと同じ男か? 565 00:42:20,367 --> 00:42:25,133 (重信) はぁ そがん男が駿府におるとは 566 00:42:27,100 --> 00:42:28,133 渋沢… 567 00:42:34,567 --> 00:42:37,467 (杉浦) 見せてやれ 幕臣の意地を! 568 00:42:37,533 --> 00:42:40,133 長州が徳川憎しと戦を… 569 00:42:40,200 --> 00:42:42,400 さもありなん! さもありなん! さもありなん! 570 00:42:42,467 --> 00:42:44,133 (博文)そうか 君もやったんか! 571 00:42:44,200 --> 00:42:45,867 (猪飼勝三郎(いかいかつさぶろう)) そうであったか! 572 00:42:45,934 --> 00:42:47,033 (美賀君(みかぎみ))よく 573 00:42:47,100 --> 00:42:49,033 生きていて くださりました 574 00:42:49,233 --> 00:42:50,233 (千代) お前様より 575 00:42:50,300 --> 00:42:52,133 口の立つ方が おられるとは 576 00:42:52,600 --> 00:42:54,333 この先は日本のために尽くせ 577 00:42:54,734 --> 00:42:57,133 とっさま ちゃんとお帰りになる? 578 00:42:57,200 --> 00:42:58,367 (篤太夫)当たりめえだ