1 00:00:33,840 --> 00:00:35,776 これが… パリ! 2 00:00:35,776 --> 00:00:40,247 パリ万博の幕府使節団に随行した篤太夫。 3 00:00:40,247 --> 00:00:45,419 進んだ西洋の文化に 驚きの連続でした。 4 00:00:45,419 --> 00:00:48,055 一方 日本では…。 5 00:00:48,055 --> 00:00:50,924 政権を帝に返上する。 6 00:00:50,924 --> 00:00:55,762 江戸幕府は 終焉の時を迎えていたのです。 7 00:00:55,762 --> 00:00:58,962 パリの篤太夫は まだ そのことを知りません。 8 00:01:03,837 --> 00:01:06,573 よいしょ! よいしょ! 9 00:01:06,573 --> 00:01:09,476 よいしょ! (尾高惇忠)よいしょ! よいしょ! 10 00:01:09,476 --> 00:01:11,776 よいしょ! よいしょ! 11 00:01:16,049 --> 00:01:19,753 (渋沢うた)どうぞ。 (惇忠)ありがとう うた。 12 00:01:19,753 --> 00:01:22,055 (渋沢市郎右衛門) もうすぐ正月だってのに➡ 13 00:01:22,055 --> 00:01:27,928 蔵に泥棒が入っちまったもんだから 新しい着物 縫ってやれなかったのう。 14 00:01:27,928 --> 00:01:30,597 (渋沢てい) まっさか あれには たまげたにい。 15 00:01:30,597 --> 00:01:33,500 そいでも とっさまが鎌持って➡ 16 00:01:33,500 --> 00:01:36,270 「出てげ~!」ってねぇ。 17 00:01:36,270 --> 00:01:41,775 (渋沢千代)へぇ。 お義父様のおかげで 無事にお正月を迎えられます。 18 00:01:41,775 --> 00:01:45,078 (渋沢ゑい)栄一がいなくなって もう5度目の正月だねぇ。 19 00:01:45,078 --> 00:01:48,615 (渋沢宗助)はぁ おおかた 村のことなんか忘れてるだんべ。 20 00:01:48,615 --> 00:01:52,085 (ゑい)え? はぁ まさかそんなこと…。 21 00:01:52,085 --> 00:01:54,021 ≪(杉浦愛蔵)失礼いたす。 22 00:01:54,021 --> 00:01:55,956 (渋沢まさ)え? お武家様? 23 00:01:55,956 --> 00:01:57,958 頭を低くしろ。 24 00:01:57,958 --> 00:02:01,762 (杉浦)あ 頭を上げてくだされ。 25 00:02:01,762 --> 00:02:05,399 某は 杉浦愛蔵と申すもの。 26 00:02:05,399 --> 00:02:10,037 杉浦様? 江戸で平九郎が世話になったという…。 27 00:02:10,037 --> 00:02:14,574 はい。 今日は パリから ご一家宛てに文が参りましたので➡ 28 00:02:14,574 --> 00:02:17,611 いきなりで大変失礼とは存じますが お届けに参りました。 29 00:02:17,611 --> 00:02:21,248 パリから文が? なんとうれしいこと。 30 00:02:21,248 --> 00:02:24,051 えぇ これは… どうぞ お上がりください。 31 00:02:24,051 --> 00:02:25,986 そうです。 どうぞ 狭いとこですが。 32 00:02:25,986 --> 00:02:28,889 いえ 立派なお宅で。 33 00:02:28,889 --> 00:02:31,425 あの お千代さんは…。 34 00:02:31,425 --> 00:02:33,360 あ…。 35 00:02:33,360 --> 00:02:37,860 あ… あなたが奥方のお千代さんですか。 36 00:02:39,599 --> 00:02:44,938 渋沢君は お千代さんからの文を 心待ちにしておりました。 37 00:02:44,938 --> 00:02:46,873 これを。 38 00:02:46,873 --> 00:02:50,073 あ… まことにありがとうございます。 39 00:02:53,613 --> 00:02:56,283 まぁ! これは? 40 00:02:56,283 --> 00:03:00,954 あぁ 上様の弟君 民部公子のホトガラフです。 41 00:03:00,954 --> 00:03:03,857 民部公子様? まぁ もったいない。 42 00:03:03,857 --> 00:03:07,227 ありがたいものを… うた。 うた ご覧なさい。 43 00:03:07,227 --> 00:03:10,731 とっさまのお仕えしている 民部公子様ですよ。 44 00:03:10,731 --> 00:03:14,231 (惇忠)ご立派なお姿だにぃ。 45 00:03:21,441 --> 00:03:25,045 ん? そっちは? 46 00:03:25,045 --> 00:03:27,045 あ いえ…。 47 00:03:28,915 --> 00:03:34,421 これ もしかして これは… 栄一かい? 48 00:03:34,421 --> 00:03:36,923 えっ…。 はあ~…。 これはこれは…。 49 00:03:36,923 --> 00:03:40,761 (てい)まことに兄さまだで! (宗助)はぁ 栄一のやつ。 50 00:03:40,761 --> 00:03:43,430 あさましい。 51 00:03:43,430 --> 00:03:46,933 なんと あさましいお姿に…。 52 00:03:46,933 --> 00:03:49,836 どうかお返しください。 こんなもん誰にも見せられねぇ。 53 00:03:49,836 --> 00:03:52,806 あ いえ。 向こうでは既に皆 断髪しており…。 54 00:03:52,806 --> 00:04:00,947 しかし… あれほど嫌っておいでだった 異人と同じ姿形になられるとは…。 55 00:04:00,947 --> 00:04:02,883 (市郎右衛門)大丈夫だ。 56 00:04:02,883 --> 00:04:11,224 姿形が違っても 栄一は大和魂をなくしたりしやしねぇ。 57 00:04:11,224 --> 00:04:13,160 そうだい お千代。 58 00:04:13,160 --> 00:04:16,897 お願いだから あきれたりしねぇで 返事を書いてやっておくれ。 59 00:04:16,897 --> 00:04:19,900 坊ちゃんは坊ちゃんだいなぁ。 そうだに。 60 00:04:19,900 --> 00:04:31,044 ♬~ 61 00:04:31,044 --> 00:04:34,581 そして 年が明け…。 62 00:04:34,581 --> 00:04:37,918 (徳川昭武)我が 日本国の新年なり。➡ 63 00:04:37,918 --> 00:04:43,256 上様や公儀のますますの繁栄を祈り…。 64 00:04:43,256 --> 00:04:45,192 (フランス語で) 65 00:04:45,192 --> 00:04:47,992 (一同)ソンテ。 66 00:04:54,434 --> 00:04:57,070 (渋沢篤太夫)あぁ~。 67 00:04:57,070 --> 00:05:00,770 このシワシワした葡萄の酒にも ようやく慣れた。 68 00:05:06,546 --> 00:05:09,449 御用状!? (山内文次郎)御用状? 69 00:05:09,449 --> 00:05:12,219 安芸守様! 公儀の御用状が! 70 00:05:12,219 --> 00:05:14,219 (栗本鋤雲)御用状とな! 71 00:05:18,091 --> 00:05:22,229 (山髙信離)安堵した。 これでようやく 詳しきことが分かるのう。 72 00:05:22,229 --> 00:05:26,529 はい。 今頃 日の本がどうなっておるのか…。 73 00:05:30,937 --> 00:05:33,437 どうした? 何とある? 74 00:05:35,408 --> 00:05:39,208 「政態御変革…」。 75 00:05:43,583 --> 00:05:49,923 上様が… 政を朝廷に返上したと。 76 00:05:49,923 --> 00:05:54,223 (徳川慶喜)政権を帝に返上する。 77 00:05:55,795 --> 00:05:57,797 上様が? 78 00:05:57,797 --> 00:06:08,308 「去る10月 将軍家は 政権を朝廷にお返しいたし この先は…➡ 79 00:06:08,308 --> 00:06:14,881 この先は 薩摩などと一致し 政にあたる」と。 80 00:06:14,881 --> 00:06:18,552 (山髙)ざ… 戯言を! そんなことがあるわけがない。 81 00:06:18,552 --> 00:06:21,752 (栗本) さよう。 公儀が政を手放すはずなど…。 82 00:06:24,024 --> 00:09:14,724 ♬~ 83 00:09:32,212 --> 00:09:34,212 ボンジュール。 84 00:09:36,716 --> 00:09:38,716 (フランス語で) 85 00:09:41,554 --> 00:09:45,425 馬に フランス語で命を出すのにも ようやく慣れた。 86 00:09:45,425 --> 00:09:48,228 ははっ。 87 00:09:48,228 --> 00:09:54,033 民部公子様は まことに覚えがよいと ヴィレット殿も驚かれておりました。 88 00:09:54,033 --> 00:09:58,905 いや… まだ何も身についておらぬ。 89 00:09:58,905 --> 00:10:04,405 今 公儀が政を失ったとしたら 私はどうなる? 90 00:10:07,180 --> 00:10:11,880 私も… まだ ここで学びを続けたい。 91 00:10:14,354 --> 00:10:25,532 ♬~ 92 00:10:25,532 --> 00:10:31,404 この先は 月5, 000ドルの送金のみが頼りか…。 93 00:10:31,404 --> 00:10:43,383 ♬~ 94 00:10:43,383 --> 00:10:45,383 (ノック) 95 00:10:50,023 --> 00:10:52,223 エラール殿。 96 00:10:58,231 --> 00:11:00,166 (フランス語で) 97 00:11:00,166 --> 00:11:03,366 ムッシュ シブサワ。 98 00:11:06,906 --> 00:11:08,906 金…。 99 00:11:20,920 --> 00:11:42,920 ♬~ 100 00:12:32,258 --> 00:12:36,758 役に立つ? この金が? 101 00:12:46,806 --> 00:12:51,945 二月になると 江戸から また御用状が届きました。 102 00:12:51,945 --> 00:12:57,083 上様は薩摩との衝突を避けるため京を出て 大坂城に引きあげた。➡ 103 00:12:57,083 --> 00:13:01,888 大坂城には 公儀の兵が集結しているそうだ。 104 00:13:01,888 --> 00:13:04,223 公儀の兵? 105 00:13:04,223 --> 00:13:06,726 じゃあ 成一郎たちも…。 106 00:13:06,726 --> 00:13:09,028 否! 107 00:13:09,028 --> 00:13:15,234 私は いまだに こんな報知がまこととは信じられぬ。 108 00:13:15,234 --> 00:13:22,909 「いよいよ逆賊御殲滅!」という 会心の報せが届くのを➡ 109 00:13:22,909 --> 00:13:25,409 待ち望むのみ! 110 00:13:28,581 --> 00:13:32,781 篤太夫宛ての文も送られてきました。 111 00:13:35,455 --> 00:13:39,058 (渋沢平九郎) 「遠くにいらっしゃる篤太夫様へ。➡ 112 00:13:39,058 --> 00:13:41,928 10月より江戸へ出て暮らしております。➡ 113 00:13:41,928 --> 00:13:48,067 今まで兄たちの陰に隠れて過ごしていた 最年少の私が➡ 114 00:13:48,067 --> 00:13:55,775 畏れ多くも見立て養子の命を頂くとは まことにありがたきこと。➡ 115 00:13:55,775 --> 00:14:01,080 お戻りになられるまで 文武に励みたいと思います」。 116 00:14:01,080 --> 00:14:03,716 そうか。 117 00:14:03,716 --> 00:14:09,016 平九郎… よかった。 118 00:14:11,224 --> 00:14:16,729 (惇忠) 「長七郎が罪を赦され 牢を出ました」。 119 00:14:16,729 --> 00:14:18,929 長七郎が? 120 00:14:20,600 --> 00:14:25,238 (惇忠)「しかし 獄で よほどひどい目に遭ったのか➡ 121 00:14:25,238 --> 00:14:29,409 以前のような快活さはありません。➡ 122 00:14:29,409 --> 00:14:35,281 日の本の世情も このような事態となり 私は…➡ 123 00:14:35,281 --> 00:14:41,754 私にも何かできぬものかと しきりに考えております。➡ 124 00:14:41,754 --> 00:14:44,791 惇忠」。 125 00:14:44,791 --> 00:14:47,491 あにぃ…。 126 00:14:50,063 --> 00:14:51,998 ボンソワー ムッシュ。 ボンソワー。 127 00:14:51,998 --> 00:14:54,298 ボンソワー ムッシュ。 ボンソワー。 128 00:14:58,604 --> 00:15:01,074 (ゑい)「篤太夫様。➡ 129 00:15:01,074 --> 00:15:06,546 あなたの文を とても喜んでおります」。 130 00:15:06,546 --> 00:15:08,881 かっさま。 131 00:15:08,881 --> 00:15:11,784 行ってくる。 行ってらっしゃいまし。 132 00:15:11,784 --> 00:15:17,890 (ゑい)「とっさまは変わらず 信州へ商いに出られ…➡ 133 00:15:17,890 --> 00:15:20,393 千代は頼もしく…」。 134 00:15:20,393 --> 00:15:23,229 ん? あれ? 135 00:15:23,229 --> 00:15:29,229 (ゑい)「うたは面白い盛りで おかげで私も息災です」。 136 00:15:30,903 --> 00:15:35,241 (ゑい)「あなたも時には お酒でも飲んで気を晴らし➡ 137 00:15:35,241 --> 00:15:40,413 くれぐれも お体を大切にしてください。➡ 138 00:15:40,413 --> 00:15:46,285 無事のお戻りを くれぐれもお祈りしております。➡ 139 00:15:46,285 --> 00:15:48,921 母より」。 140 00:15:48,921 --> 00:15:53,793 もう紺屋の商いの時節か。 141 00:15:53,793 --> 00:15:56,493 孝行もできず申し訳ねぇ…。 142 00:16:01,067 --> 00:16:03,267 お千代…。 143 00:16:10,376 --> 00:16:13,713 お千代の字だい。 144 00:16:13,713 --> 00:16:20,586 (千代)「長い道中であるにもかかわらず お手紙を下さり うれしく思います。➡ 145 00:16:20,586 --> 00:16:25,024 この度は 民部公子様のお写真を拝領いたし➡ 146 00:16:25,024 --> 00:16:31,230 ご立派なお姿で ありがたくお守りといたします。 ただ…➡ 147 00:16:31,230 --> 00:16:36,930 お前様は以前と変わってしまい どうしたことか」。 148 00:16:39,939 --> 00:16:44,777 (千代)「あまりにあさましく 見るのもつらきこと。➡ 149 00:16:44,777 --> 00:16:48,648 異国になじまねばならぬとはいえ 心苦しく➡ 150 00:16:48,648 --> 00:16:55,054 どうか以前のような勇ましいお姿に お改めくださいますよう…➡ 151 00:16:55,054 --> 00:17:00,754 くれぐれもお願い申し上げます。 千代」。 152 00:17:04,864 --> 00:17:10,369 ハハ ハハハハハ…。 153 00:17:10,369 --> 00:17:13,406 ハハハハハ…。 154 00:17:13,406 --> 00:17:18,010 あ~ ハハハハハハ…。 155 00:17:18,010 --> 00:17:20,510 あ~…。 156 00:17:24,784 --> 00:17:28,284 会いてぇなぁ…。 157 00:17:31,224 --> 00:17:34,024 会いてぇ…。 158 00:17:36,095 --> 00:17:39,895 はぁ。 ああ…。 159 00:17:45,404 --> 00:17:48,441 (カション神父)横浜から届いた ニュースペーパーによれば➡ 160 00:17:48,441 --> 00:17:53,045 1月の初めごろ 京と大坂の間で戦があったと。 161 00:17:53,045 --> 00:17:55,545 (文次郎)何? 戦? 162 00:17:57,416 --> 00:17:59,916 御用状にもそうある。 163 00:18:02,855 --> 00:18:04,855 くそ! 164 00:18:08,194 --> 00:18:13,494 (栗本)今までの報せは うそ偽りではなかったのだ! 165 00:18:17,870 --> 00:18:26,545 「尾張様と越前様は 上様に 朝廷の政に加わるようお勧めしたが➡ 166 00:18:26,545 --> 00:18:35,021 上様は 天子様のおそばの悪者を除くため 上京を決められた。➡ 167 00:18:35,021 --> 00:18:39,725 正月2日 京に向け 先鋒隊を出発させたところ➡ 168 00:18:39,725 --> 00:18:45,398 突如として 薩摩の兵が砲弾を放ち…」。 169 00:18:45,398 --> 00:18:47,333 (保科俊太郎)薩摩が砲弾? 170 00:18:47,333 --> 00:18:49,902 「伏見 鳥羽をはじめ➡ 171 00:18:49,902 --> 00:18:57,777 淀 橋本で 3日夕方から7日朝まで 昼夜を問わず戦となり…➡ 172 00:18:57,777 --> 00:19:06,077 ついには全軍が敗走して 枚方 守口まで撤退」。 173 00:19:10,523 --> 00:19:17,697 「6日には… 恐れながら 上様が大坂を立ち退き➡ 174 00:19:17,697 --> 00:19:23,869 開陽丸にて江戸に戻られた」。 175 00:19:23,869 --> 00:19:29,208 上様が 船で江戸へ帰られたというのか。 176 00:19:29,208 --> 00:19:32,712 「朝廷は恐れながら➡ 177 00:19:32,712 --> 00:19:35,381 朝敵の名を上様に負わせ➡ 178 00:19:35,381 --> 00:19:39,719 関東征討の勅命を出し➡ 179 00:19:39,719 --> 00:19:44,590 兵隊を率いて 江戸へ向かうとの風説」。 180 00:19:44,590 --> 00:19:49,090 (菊池平八郎)バカな! あろうことか上様が朝敵とは! 181 00:19:53,232 --> 00:19:56,035 (高松凌雲)落ち着け。 182 00:19:56,035 --> 00:19:59,572 この地で騒いでも どうにもならぬ。 183 00:19:59,572 --> 00:20:04,844 しかし しかし… しかし! 184 00:20:04,844 --> 00:20:07,344 おのれ 薩摩め…。 185 00:20:08,848 --> 00:20:13,519 急ぎ民部公子にお知らせを! 186 00:20:13,519 --> 00:20:20,860 (栗本)民部公子には 上様からのご直書が同封してあって…。 187 00:20:20,860 --> 00:20:34,360 ♬~ 188 00:20:54,760 --> 00:20:58,060 渋沢です。 入れ。 189 00:21:03,035 --> 00:21:04,970 兄からの直書だ。 190 00:21:04,970 --> 00:21:09,809 大坂での顛末が書いてあった。 191 00:21:09,809 --> 00:21:13,679 「日本は内輪で 騒動をしている時節ではないゆえ➡ 192 00:21:13,679 --> 00:21:16,615 やむをえず このようにした。➡ 193 00:21:16,615 --> 00:21:22,254 せっかく参ったのであるから 急ぎ帰国する考えを抱くことなく➡ 194 00:21:22,254 --> 00:21:28,761 十分 留学の目当てを達するように」と 書いてある。 195 00:21:28,761 --> 00:21:31,461 どう思う? 渋沢。 196 00:21:33,599 --> 00:21:39,472 まことを申せば 全くもって解せませぬ。 197 00:21:39,472 --> 00:21:43,075 私もだ。 198 00:21:43,075 --> 00:21:47,075 しかし どうすればよいのかも分からぬ。 199 00:21:49,849 --> 00:21:52,818 文で お諫めになってはいかがでしょうか。 200 00:21:52,818 --> 00:21:55,087 諫める? 201 00:21:55,087 --> 00:21:58,290 文にて建白なされるのです。 例えば…➡ 202 00:21:58,290 --> 00:22:05,731 「政権を朝廷に返されたのなら なぜ兵を動かしたのですか」と。 203 00:22:05,731 --> 00:22:10,402 「また戦のご意思があって 兵を動かしたのなら➡ 204 00:22:10,402 --> 00:22:14,573 なぜ最後まで戦われなかったのか?➡ 205 00:22:14,573 --> 00:22:19,044 この先 必ず 臆病 暗愚と罵られると分かりながら➡ 206 00:22:19,044 --> 00:22:23,749 兵を置き去りにし 江戸へ戻られたのは いかなることでございましょう。➡ 207 00:22:23,749 --> 00:22:29,255 朝敵の汚名を着せられ追討軍に追われても 勇敢な家臣と共に戦わず➡ 208 00:22:29,255 --> 00:22:32,291 かようなありさまで 神祖三百年のご偉業を自ら捨てられ➡ 209 00:22:32,291 --> 00:22:36,491 東照大権現様に 何と申し開きをなされるおつもりか!」。 210 00:22:43,602 --> 00:22:47,302 うむ… 分かった。 211 00:22:55,781 --> 00:22:57,781 ははっ。 212 00:23:02,388 --> 00:23:11,397 四月 栗本たちが 一足先に日本へ帰ることとなりました。 213 00:23:11,397 --> 00:23:13,397 渋沢。 214 00:23:18,037 --> 00:23:21,237 民部公子は おなかがご丈夫ではない。 215 00:23:23,842 --> 00:23:26,779 困った時には これを。 216 00:23:26,779 --> 00:23:31,079 あぁ。 いろいろ世話になった。 217 00:23:33,419 --> 00:23:35,754 この先どうする? 218 00:23:35,754 --> 00:23:41,560 お主は公儀の御典医だろ。 219 00:23:41,560 --> 00:23:44,463 うむ。 220 00:23:44,463 --> 00:23:48,463 しかし私は ここに来られてよかった。 221 00:23:50,269 --> 00:23:55,140 (凌雲)医者はどこにいようが 相手が誰であろうが➡ 222 00:23:55,140 --> 00:23:59,612 平等に 正しい治療をするのみ。 223 00:23:59,612 --> 00:24:04,583 その真心を この地で見つけられた気がする。 224 00:24:04,583 --> 00:24:21,900 ♬~ 225 00:24:21,900 --> 00:24:30,909 篤太夫のもとに 幕府軍として戦っていた 成一郎からの文が届きました。 226 00:24:30,909 --> 00:24:38,417 (渋沢成一郎)「俺は淀 橋本の戦で 数か所を銃弾で負傷した。➡ 227 00:24:38,417 --> 00:24:44,590 幸いにも江戸へ戻れたが 薩摩 長州 土佐の勢いは盛んで➡ 228 00:24:44,590 --> 00:24:48,460 今や上様は どんな勅命も甘んじて受け入れると➡ 229 00:24:48,460 --> 00:24:53,760 上野 寛永寺で蟄居なされ 生きるか死ぬかの瀬戸際だ」。 230 00:24:58,937 --> 00:25:02,708 「しかし お前が国を離れて以来➡ 231 00:25:02,708 --> 00:25:09,214 上様が少しでも 尊王の大義に背いたことはない!➡ 232 00:25:09,214 --> 00:25:15,988 俺は上様の汚名を雪ぐため 旗本御家人の同志で同盟を結んだ。➡ 233 00:25:15,988 --> 00:25:18,891 きっと挽回の時が来る。➡ 234 00:25:18,891 --> 00:25:23,228 俺の今の願いは それのみだ。➡ 235 00:25:23,228 --> 00:25:29,034 3月8日。 成一郎」。 236 00:25:29,034 --> 00:25:56,234 ♬~ 237 00:26:11,210 --> 00:26:16,014 篤太夫は 幕府が各国に派遣していた留学生が➡ 238 00:26:16,014 --> 00:26:21,887 無事帰国できるよう なんとか取り計らいました。 239 00:26:21,887 --> 00:26:25,390 お ご苦労。 あぁ…。 240 00:26:25,390 --> 00:26:28,727 (川路太郎) ほう ここが民部公子のお屋敷か。 241 00:26:28,727 --> 00:26:33,398 そうだ。 帰国の船が出るまで この広間にて寝泊まりしてもらう。 242 00:26:33,398 --> 00:26:38,270 明日には オランダの学生たちも来るゆえ 狭くはなるが 旅の疲れを癒やすがよい。 243 00:26:38,270 --> 00:26:40,272 ここで? ベッドは? 244 00:26:40,272 --> 00:26:43,909 (山髙)布団はあるが ベッドはない。 数日ゆえ 我慢せよ。 245 00:26:43,909 --> 00:26:46,812 オウ ノウ! 人をフロアに じかに寝かせるとは➡ 246 00:26:46,812 --> 00:26:49,414 まったくケチだ。 まるで豚扱いじゃないか。 なぁ! 247 00:26:49,414 --> 00:26:51,350 なぁ! そうだ そうだ。 248 00:26:51,350 --> 00:26:54,586 オランダの学生も来るんだろう。 こんな待遇…。 249 00:26:54,586 --> 00:26:56,522 君たちも もっと何か言ってやれ。 250 00:26:56,522 --> 00:27:03,522 一体お主らは 今のお国元を 何と思っておられるのか? 251 00:27:05,230 --> 00:27:11,003 俺は 喜望峰回りの帆船で 帰らされようとするお主らを➡ 252 00:27:11,003 --> 00:27:14,373 そうした惨めな目に遭わねぇよう 計ってやった。 253 00:27:14,373 --> 00:27:17,276 これは ただ かわいそうだと思ってしたことじゃねぇ。 254 00:27:17,276 --> 00:27:19,244 国のためだ。 255 00:27:19,244 --> 00:27:24,082 学生をよこしておきながら 国の騒動で帰る始末もつけられず➡ 256 00:27:24,082 --> 00:27:33,559 荷物同様で送り返したとあっては 国の名誉に関わると思えばこそのこと。 257 00:27:33,559 --> 00:27:39,231 こっちとてこの先 公儀から 金が送られてくるかどうかも分からず➡ 258 00:27:39,231 --> 00:27:43,101 今ある金を大事に使ってる中➡ 259 00:27:43,101 --> 00:27:47,940 民部公子の金を どうにか削って計らってやってんだ。 260 00:27:47,940 --> 00:27:52,411 その苦労も意味も 察することができねぇとは! 261 00:27:52,411 --> 00:27:57,249 ただ知識を多く得れば 偉いとでも思ってんのか? 262 00:27:57,249 --> 00:28:03,689 公儀はこんな思慮の足りねぇ 性根の腐った者を育てるために➡ 263 00:28:03,689 --> 00:28:07,993 わざわざ苦しい懐から 学生を送ってきたのか? 264 00:28:07,993 --> 00:28:13,365 だとしたら俺は 公儀のために嘆く。 265 00:28:13,365 --> 00:28:16,702 大いに嘆くぞ! 266 00:28:16,702 --> 00:28:19,538 ここで嫌なら すぐさま出ていけ! 267 00:28:19,538 --> 00:28:22,441 し… 失礼を申しました! 268 00:28:22,441 --> 00:28:24,877 お国が戦というこの一大事に➡ 269 00:28:24,877 --> 00:28:27,546 よしんば どんな柔らけぇ床で 寝たとしても➡ 270 00:28:27,546 --> 00:28:30,449 臥薪嘗胆の心が あってしかるべきじゃねぇか! 271 00:28:30,449 --> 00:28:33,719 (董三郎)ははっ! 布団を敷こう。 ほら…。 272 00:28:33,719 --> 00:28:42,919 ♬~ 273 00:29:08,353 --> 00:29:10,689 平九郎 もうよい。 274 00:29:10,689 --> 00:29:12,624 (平九郎)大丈夫だ。 275 00:29:12,624 --> 00:29:27,706 ♬~ 276 00:29:27,706 --> 00:29:29,706 (銃声) 277 00:30:01,707 --> 00:30:05,007 山髙です。 入れ。 278 00:30:15,854 --> 00:30:20,554 新しき政府から公文が届きました。 279 00:30:28,867 --> 00:30:32,367 新しき政府…。 280 00:30:34,006 --> 00:30:36,708 何とあった? 281 00:30:36,708 --> 00:30:43,215 「今般御一新につき 民部公子も急ぎ帰朝せられよ」と。 282 00:30:43,215 --> 00:30:45,215 御一新…。 283 00:31:17,115 --> 00:31:22,754 いやしかし 民部公子は国を出る前 何があっても学問を続けるよう➡ 284 00:31:22,754 --> 00:31:26,425 上様に言いつかっておられた。 285 00:31:26,425 --> 00:31:28,425 (フランス語で) 286 00:31:43,275 --> 00:31:52,451 (雷鳴) 287 00:31:52,451 --> 00:32:06,565 (荒い息遣い) 288 00:32:06,565 --> 00:32:09,065 おてい…。 289 00:32:10,902 --> 00:32:14,102 (新政府兵)いたぞ! そこだ! 290 00:32:20,579 --> 00:32:26,579 水戸の殿が お亡くなりになったそうです。 291 00:32:30,055 --> 00:32:32,055 水戸様が? 292 00:32:38,797 --> 00:32:40,799 そうか。 293 00:32:40,799 --> 00:32:44,069 また それにより朝廷の思し召しで➡ 294 00:32:44,069 --> 00:32:47,939 民部公子様が水戸家を お継ぎになることが決まりました。 295 00:32:47,939 --> 00:32:50,609 私が水戸を? 296 00:32:50,609 --> 00:32:54,946 ははっ。 急ぎ日の本にお戻りいただきたいと。 297 00:32:54,946 --> 00:32:58,617 そんな…。 298 00:32:58,617 --> 00:33:01,520 これは何かの謀だ。 299 00:33:01,520 --> 00:33:05,891 民部公子様を どうにか国に戻そうとする 誰かの謀に違いない。 300 00:33:05,891 --> 00:33:09,761 しかし日本がどうなっているのか さっぱり分からん。 301 00:33:09,761 --> 00:33:14,032 御一新で江戸が おおかた焼き尽くされたとの風聞もある。 302 00:33:14,032 --> 00:33:16,032 (ドアが開く音) 303 00:33:17,903 --> 00:33:20,103 ロッシュ殿。 304 00:33:30,415 --> 00:33:32,415 ご苦労であった。 305 00:33:38,590 --> 00:33:43,290 (カション)「新しい政府を無視して 学問を続けましょう」。 306 00:34:00,278 --> 00:34:02,247 (カション)「今戻るのは危険です。 会津が…」。 307 00:34:02,247 --> 00:34:04,447 いいや。 308 00:34:08,987 --> 00:34:11,187 もう帰ろう。 309 00:34:17,395 --> 00:34:31,409 ♬~ 310 00:34:31,409 --> 00:34:33,409 (フランス語で) 311 00:34:37,916 --> 00:34:55,066 ♬~ 312 00:34:55,066 --> 00:35:02,207 もう この景色も見納めだな。 313 00:35:02,207 --> 00:35:08,013 徳川の宗家は 田安の亀之助殿が お継ぎになられたと聞いた。 314 00:35:08,013 --> 00:35:10,313 ははっ。 315 00:35:21,559 --> 00:35:26,398 渋沢。 私は…➡ 316 00:35:26,398 --> 00:35:28,733 水戸に帰るのが怖い。 317 00:35:28,733 --> 00:35:43,048 ♬~ 318 00:35:43,048 --> 00:35:49,421 日本に戻っても 私のそばにいてくれぬか。 319 00:35:49,421 --> 00:36:29,621 ♬~ 320 00:36:38,770 --> 00:36:44,409 おお エラール殿。 321 00:36:44,409 --> 00:36:46,409 (フランス語で) 322 00:36:58,923 --> 00:37:05,530 あなたの勧めで 国債と鉄道債を 6万5, 000フランずつ買った。 323 00:37:05,530 --> 00:37:08,566 国債の方は4分の利子がつき➡ 324 00:37:08,566 --> 00:37:12,003 鉄道の方は 相場が上がって4, 000フラン。 325 00:37:12,003 --> 00:37:16,541 日本でいう600両ももうけた勘定だ。 326 00:37:16,541 --> 00:37:18,841 ハハハハ…。 327 00:37:31,022 --> 00:37:32,957 しかり。 328 00:37:32,957 --> 00:37:37,729 皆の小さき一滴一滴が流れを作り 皆が幸せになる。 329 00:37:37,729 --> 00:37:44,429 こんなトレビアンな術があるのだと あなたは俺に教えてくれた。 330 00:37:48,039 --> 00:37:50,839 きゃぴたるそしある? 331 00:38:14,232 --> 00:38:18,536 つまり… 少しばかりの金も➡ 332 00:38:18,536 --> 00:38:24,036 一滴一滴合わせることで 大きな川になるということか。 333 00:38:46,598 --> 00:38:51,736 一人がうれしいのではなく 皆が幸せになる。 334 00:38:51,736 --> 00:38:56,536 一人一人の力で世を変えることができる。 335 00:39:01,746 --> 00:39:03,746 ハハ…。 336 00:39:05,350 --> 00:39:07,850 おかしれぇ。 337 00:39:10,688 --> 00:39:12,988 これだ。 338 00:39:15,360 --> 00:39:18,860 俺が探し求めてきたのは これだ! 339 00:39:25,537 --> 00:39:30,375 俺は今まで 異人は皆 敵だと思ってた。 340 00:39:30,375 --> 00:39:34,575 そのことを心からわびる。 341 00:39:37,549 --> 00:39:40,585 フフ…。 342 00:39:40,585 --> 00:39:44,322 こうなっては ここで得たことも➡ 343 00:39:44,322 --> 00:39:49,561 日本に戻って 生かせるかどうかも分からねぇ。 344 00:39:49,561 --> 00:39:52,061 しかし…。 345 00:40:08,680 --> 00:40:10,615 期待しています。 346 00:40:10,615 --> 00:40:13,815 おぉ! ハハハハハ…。 347 00:40:18,990 --> 00:40:21,059 ハハハハハハ…。 ハハハハ。 348 00:40:21,059 --> 00:40:24,529 ハハハハハ…。 349 00:40:24,529 --> 00:40:30,001 先に日本に帰国した 水戸藩士の井坂たちが➡ 350 00:40:30,001 --> 00:40:35,001 昭武を迎えに 再びパリへやって来ました。 351 00:40:38,743 --> 00:40:41,012 (井坂泉太郎)出たな 渋沢。 352 00:40:41,012 --> 00:40:44,215 我らは お主を斬ってでも 民部公子を連れて帰るぞ! 353 00:40:44,215 --> 00:40:47,885 ハハハハハハ。 354 00:40:47,885 --> 00:40:51,389 髷だ 髷だ。 355 00:40:51,389 --> 00:40:55,226 よく来た。 はるばるよく来たな。 356 00:40:55,226 --> 00:40:59,564 やめろ! 気色悪い! 放せ! 357 00:40:59,564 --> 00:41:02,600 ハハハ…。 (井坂)放せと言っとるだろ! 358 00:41:02,600 --> 00:41:24,055 ♬~ 359 00:41:24,055 --> 00:41:28,055 ムッシュ シブサワ。 おぉ ハハハハ…。 360 00:41:44,942 --> 00:41:56,454 ♬~ 361 00:41:56,454 --> 00:42:01,793 来た時は あれほど 豪勢な一行だったのにのう。 362 00:42:01,793 --> 00:42:03,793 はい…。 363 00:42:43,468 --> 00:43:20,905 ♬~ 364 00:43:20,905 --> 00:43:25,743 こうして篤太夫たちは…➡ 365 00:43:25,743 --> 00:43:29,743 日本へと帰っていきました。 366 00:43:32,250 --> 00:43:34,585 栄一が横浜に着いたと! 367 00:43:34,585 --> 00:43:36,621 かっさま うれしそう。 368 00:43:36,621 --> 00:43:40,391 上様! お逃げになられたとは何事じゃ。 369 00:43:40,391 --> 00:43:43,594 あっという間に負けた! 平九郎! 370 00:43:43,594 --> 00:43:46,430 言え! 平九郎はどうした! 371 00:43:46,430 --> 00:43:50,301 俺たちは 何のために生まれてきたんだんべなぁ? 372 00:43:50,301 --> 00:43:53,204 まことの戦はこれからざんすよ。 373 00:43:53,204 --> 00:43:56,904 わしら商人の戦いは。 374 00:44:03,848 --> 00:44:06,250 東京都台東区。 375 00:44:06,250 --> 00:44:12,590 江戸時代 上野公園の敷地のほとんどが 寛永寺の境内でした。 376 00:44:12,590 --> 00:44:18,390 園内には 今も 寛永寺の建物が点在しています。 377 00:44:23,601 --> 00:44:29,401 根本中堂が建つこの地で 慶喜は謹慎しました。 378 00:44:33,277 --> 00:44:41,452 渋沢喜作が設立に携わった彰義隊は 慶喜警護のため 上野に集結。 379 00:44:41,452 --> 00:44:46,624 慶喜が江戸を去ったあとも 解散しなかったことにより➡ 380 00:44:46,624 --> 00:44:51,295 ついには 上野戦争が勃発しました。 381 00:44:51,295 --> 00:44:59,637 最新の武器と兵力を誇る新政府軍を前に 彰義隊は壊滅。 382 00:44:59,637 --> 00:45:05,937 弾痕が残る寛永寺の黒門は 円通寺に移築されています。 383 00:45:07,445 --> 00:45:16,245 当時の円通寺の住職が 上野に放置された 彰義隊士の亡骸を埋葬し供養しました。 384 00:45:18,022 --> 00:45:24,262 激しく抵抗を続ける 旧幕府軍と新政府軍との戦いは➡ 385 00:45:24,262 --> 00:45:28,062 全国へと広がっていきました。 386 00:45:34,805 --> 00:45:54,505 ♬~