1 00:02:48,010 --> 00:02:50,010 2 00:02:53,882 --> 00:02:55,884 (伝衛門) ひかるに 海を見せたかったのか。 3 00:02:55,884 --> 00:03:00,889 (猛)うん。 おじさん。 (伝衛門)うん? 4 00:03:00,889 --> 00:03:03,892 頼みがあるんだ。 (伝衛門)何だ? 言ってみろ。 5 00:03:03,892 --> 00:03:08,564 (猛)俺も男だ。 何か責任のある 仕事をさせてくれ。 6 00:03:08,564 --> 00:03:11,900 (伝衛門)責任のある仕事か。 うん。 7 00:03:11,900 --> 00:03:15,237 だったら 学校へ行け。 えっ? 8 00:03:15,237 --> 00:03:19,537 (伝衛門)お前は 9歳だから 尋常小学校に 通っているはずだ。 9 00:03:21,577 --> 00:03:23,912 学校って 行ったことないんだよ。 10 00:03:23,912 --> 00:03:29,585 ハハハ…。 これからの世の中 百姓も 学問が必要だ。 11 00:03:29,585 --> 00:03:32,254 一生懸命 勉強してこい。 12 00:03:32,254 --> 00:03:35,257 ありがとう。 13 00:03:35,257 --> 00:03:37,957 早速 手続きをしといてやる。 14 00:03:41,930 --> 00:03:45,867 (伝衛門)絹。 今日は 背中の流しは いらんぞ。 15 00:03:45,867 --> 00:03:48,467 (琴子)いいえ。 流させてください。 16 00:03:52,207 --> 00:03:54,876 (琴子) 湯かげんは いかがですか? 17 00:03:54,876 --> 00:03:56,545 何しに来たんだ? 18 00:03:56,545 --> 00:03:59,881 奥さまが お留守ですから 代わりに 流させていただきます。 19 00:03:59,881 --> 00:04:02,884 バカなこと言うな。 お前に そんなことはさせられん。 20 00:04:02,884 --> 00:04:05,220 流させてください。 21 00:04:05,220 --> 00:04:08,890 そうでなければ 大声を上げて 泣いてしまいます。 22 00:04:08,890 --> 00:04:12,227 だって 奥さまったら あんなに 仲のいいところを➡ 23 00:04:12,227 --> 00:04:14,229 見せつけるんですもの。 (伝衛門)バカ。 24 00:04:14,229 --> 00:04:16,231 (伝衛門)そんなことで 妬くヤツがあるか。 25 00:04:16,231 --> 00:04:19,234 (琴子)嫌です。 あんなことでも 嫌なんです。 26 00:04:19,234 --> 00:04:21,570 やめないか 琴子。 やめません。 27 00:04:21,570 --> 00:04:23,238 ずっと こうしていたいんです。 28 00:04:23,238 --> 00:04:25,938 ≪(絹)あなた。 お風呂で いらっしゃいますか? 29 00:04:27,909 --> 00:04:31,246 (絹)あっ! あっ…。 30 00:04:31,246 --> 00:04:32,914 いや。 今 琴子が わしの背中を…。 31 00:04:32,914 --> 00:04:36,251 流そうとしたら 断られました。 32 00:04:36,251 --> 00:04:39,921 それは 奥さまのお仕事だと おっしゃるんです。 33 00:04:39,921 --> 00:04:42,591 わたしの出る幕はありません。 34 00:04:42,591 --> 00:04:45,861 こんな バカな女 たたき出してください。 35 00:04:45,861 --> 00:04:49,865 あなたって かわいい人ね。 遠慮はいりません。 36 00:04:49,865 --> 00:04:51,867 この人の 背中 流してくださるんだったら➡ 37 00:04:51,867 --> 00:04:55,537 私が お礼を言います。 ありがとうございます。➡ 38 00:04:55,537 --> 00:04:58,937 あなたも お断りせずに 背中を 流していただきなさい。 39 00:05:00,542 --> 00:05:04,242 知らん! わしは 誰にも 背中を 流してもらわん。 40 00:05:06,214 --> 00:05:11,214 いたずら坊主みたい。 ねえ? ウフフ…。 41 00:05:12,888 --> 00:05:18,226 ♬『Delight of my love』 42 00:05:18,226 --> 00:05:32,574 ♬~ 43 00:05:32,574 --> 00:05:52,527 ♪ 44 00:05:52,527 --> 00:06:12,547 ♪ 45 00:06:12,547 --> 00:06:32,567 ♪ 46 00:06:32,567 --> 00:06:42,567 ♪ 47 00:06:43,912 --> 00:06:45,847 (お滝)お竹。 ヤマメは 焦がさぬようにな。 (竹)はい。 48 00:06:45,847 --> 00:06:50,185 (ひかる)お母さま どうして今日は お料理を こしらえているんです? 49 00:06:50,185 --> 00:06:52,854 せっかく 琴子さんが いらしたのよ。 50 00:06:52,854 --> 00:06:56,858 ひかるがお世話になった お礼の気持ち。 51 00:06:56,858 --> 00:06:59,194 (ひかる)お礼の気持ちか。 52 00:06:59,194 --> 00:07:03,532 (琴子)奥さま。 わたしにも 何か お手伝いさせてください。 53 00:07:03,532 --> 00:07:07,202 (絹)いいえ。 あなたは お客さまです。➡ 54 00:07:07,202 --> 00:07:10,872 それに この台所は 三枝家の者か 使用人以外は➡ 55 00:07:10,872 --> 00:07:16,545 立てぬことになっています。 ご遠慮くださいませ。 56 00:07:16,545 --> 00:07:19,945 (琴子)はい。 失礼しました。 57 00:07:29,224 --> 00:07:32,561 (猛)ごめんな。 俺が 勝手なマネをしたせいで➡ 58 00:07:32,561 --> 00:07:34,896 こんな目に 遭わせちまって。 59 00:07:34,896 --> 00:07:39,234 何 ナマ言ってんのよ。 わたしは 平気だよ。 60 00:07:39,234 --> 00:07:42,904 でも ここの おばさん けっこう 気が強いからな。 61 00:07:42,904 --> 00:07:46,508 そんなこと 言わないの。 お前は これからも ここの家の➡ 62 00:07:46,508 --> 00:07:49,511 やっかいになるんでしょ? まあな…。 63 00:07:49,511 --> 00:07:54,516 (ひかる) 琴子おばちゃん。 ごめんなさい。 64 00:07:54,516 --> 00:07:56,184 ひかるちゃんまで? 65 00:07:56,184 --> 00:08:00,522 お母さまが 台所で 仲間外れにして ごめんなさい。 66 00:08:00,522 --> 00:08:05,527 まあ。 気にしてくれて ありがとう。 でも いいのよ。 67 00:08:05,527 --> 00:08:08,530 ひかるちゃんの お母さまは まちがっていないわ。 68 00:08:08,530 --> 00:08:13,535 本当? 本当よ。 だから 安心して。 69 00:08:13,535 --> 00:08:16,538 良かった。 70 00:08:16,538 --> 00:08:20,538 お母さま 何作ってくれるのかな? 楽しみね。 71 00:08:26,882 --> 00:08:32,220 琴子。 こちらに 座りなさい。 猛も今夜は 琴子の隣だ。 72 00:08:32,220 --> 00:08:34,220 はい。 はい。 73 00:08:43,231 --> 00:08:47,502 琴子さん。 何もありませんが 召し上がれ。 74 00:08:47,502 --> 00:08:50,171 (琴子)ありがとうございます。 75 00:08:50,171 --> 00:08:55,844 では 文彦 ひかる。 いいな。 (ひかる・文彦)はい お父さま。 76 00:08:55,844 --> 00:09:00,181 (伝衛門)自然の恵みと 米や野菜を こしらえてくれた者たちに➡ 77 00:09:00,181 --> 00:09:05,181 感謝し いただきます。 (一同)いただきます。 78 00:09:08,189 --> 00:09:11,192 琴子さんも 旦那さまに 仕込まれたのね。 79 00:09:11,192 --> 00:09:14,863 (琴子)えっ? (絹)こうして食事を始めるのは➡ 80 00:09:14,863 --> 00:09:19,868 三枝家の伝統です。 当然ですわよね。 ええ。 81 00:09:19,868 --> 00:09:21,870 (絹)ねえ あなた。 (伝衛門)うん? 82 00:09:21,870 --> 00:09:25,540 (絹)文彦の 進路相談面接が 来週 木曜日にあるんですけど➡ 83 00:09:25,540 --> 00:09:28,209 ご都合 いかがでしょうか? 84 00:09:28,209 --> 00:09:32,547 来週の 木曜日か。 ご無理でしたら 私が参ります。 85 00:09:32,547 --> 00:09:36,885 何しろ 三枝家の長男の 将来に 関わることですし➡ 86 00:09:36,885 --> 00:09:40,221 私たち両親に 大きな責任があります。 87 00:09:40,221 --> 00:09:43,892 分かった。 大事なことだ。 あとで話そう。 88 00:09:43,892 --> 00:09:45,827 それから ひかるのことなんですけど。 89 00:09:45,827 --> 00:09:49,164 ひかる。 あなた 音楽が 大好きなのよね。 90 00:09:49,164 --> 00:09:50,832 はい。 大好きです。 91 00:09:50,832 --> 00:09:53,168 (絹)ひかるに お琴 習わせようかと 思うんですが➡ 92 00:09:53,168 --> 00:09:56,838 いかがでしょうか? (伝衛門)お琴?➡ 93 00:09:56,838 --> 00:10:00,175 それは 本人しだいだろう。 94 00:10:00,175 --> 00:10:04,512 ひかる。 どう? お琴を習ってみない? 95 00:10:04,512 --> 00:10:07,182 お琴って あんまり 好きじゃないの。 96 00:10:07,182 --> 00:10:09,184 (絹)あら どうして? 97 00:10:09,184 --> 00:10:12,520 ねえ 琴子おばちゃん。 はい。 何でしょう? 98 00:10:12,520 --> 00:10:15,523 横浜って どんな音楽が はやっているの。 99 00:10:15,523 --> 00:10:17,859 横浜って いろんな音楽があるぞ。 100 00:10:17,859 --> 00:10:20,862 東京よりも 新しい音楽が いっぱいあるんだ。 101 00:10:20,862 --> 00:10:22,462 なっ。 おじさ…。 102 00:10:28,203 --> 00:10:31,206 この茶わん蒸し うまい! 最高だ! あら。 103 00:10:31,206 --> 00:10:34,506 ひかるちゃんも 琴子おばちゃんも みんな食ってみろよ。 104 00:10:36,878 --> 00:10:42,884 うん。 ホントだ。 これは最高だ。 おいしい。 みんな食べてみろ。 105 00:10:42,884 --> 00:10:45,153 (お滝)旦那さま。 その茶わん蒸しは➡ 106 00:10:45,153 --> 00:10:50,825 奥さまがご自分で 旦那さまの お口に合わせて 作られたんです。 107 00:10:50,825 --> 00:10:52,494 そうか。 うん。 108 00:10:52,494 --> 00:10:55,163 (琴子)もう少し 甘みを 抑えたほうが➡ 109 00:10:55,163 --> 00:11:01,169 旦那さまのお好みですわ。 ねえ。 そうですよね? 110 00:11:01,169 --> 00:11:03,505 ひかるちゃん。 ジャズってかっこいいんだぜ。 111 00:11:03,505 --> 00:11:07,175 この前 歌っていた あの歌ね。 歌ってみてよ。 112 00:11:07,175 --> 00:11:09,844 よっしゃ。 じゃ一発いくか。 113 00:11:09,844 --> 00:11:12,514 (文彦)食事中だ。 歌など 歌うなんて 行儀悪いぞ。 114 00:11:12,514 --> 00:11:15,183 (伝衛門)いや かまわん。 今夜は無礼講だ。 115 00:11:15,183 --> 00:11:18,186 わしが許す。 歌ってみろ 猛。 116 00:11:18,186 --> 00:11:21,856 よっしゃ。 じゃ行くぞ。 せーの…。 (猛)♬『聖者の行進』 117 00:11:21,856 --> 00:11:27,195 「Oh when the saints go marching in」➡ 118 00:11:27,195 --> 00:11:31,866 「Oh when the saints go marching in」➡ 119 00:11:31,866 --> 00:11:36,866 「Yes I want to be in that number…」 120 00:11:45,480 --> 00:11:56,157 ♬~ 121 00:11:56,157 --> 00:12:06,167 ♬~ 122 00:12:06,167 --> 00:12:08,169 (竹)これから いったい どうなるずら? 123 00:12:08,169 --> 00:12:10,505 (末)美人2人が 一歩も譲らずの つばぜり合いだ。➡ 124 00:12:10,505 --> 00:12:12,507 身の毛がよだつ気がするな。 (竹)ああ。 125 00:12:12,507 --> 00:12:15,176 (お滝)旦那さまのお出かけですよ。 竹。 草履を出して。 (竹)はい。 126 00:12:15,176 --> 00:12:18,176 (お滝)お末。 人力車 見といで。 (末)はい。 127 00:12:22,517 --> 00:12:26,187 もしもし。 西郡の 29番を頼む。 128 00:12:26,187 --> 00:12:28,523 (琴子)お手伝いします。 何か 言いつけてください。 129 00:12:28,523 --> 00:12:31,192 (絹)気になさらないで。 いや。 何かお手伝いを…。 130 00:12:31,192 --> 00:12:32,861 慣れていないと 無理ですから。 131 00:12:32,861 --> 00:12:36,197 あっ。 帳場にある たばこと時計 取ってください。 はい。 132 00:12:36,197 --> 00:12:39,534 (伝衛門)あっ 三枝だ。 県知事が急に➡ 133 00:12:39,534 --> 00:12:41,536 かんがい工事の下見に 来ることになってな。➡ 134 00:12:41,536 --> 00:12:44,873 白部村からは わしが出る。 そっちからは あんたが出てくれ。 135 00:12:44,873 --> 00:12:46,541 足袋は 終わりました。 136 00:12:46,541 --> 00:12:50,241 ああ そうじゃ。 よろしく頼むぞ。 137 00:12:54,549 --> 00:12:57,886 (絹)旦那さま。 (伝衛門)琴子は? 何か用事か? 138 00:12:57,886 --> 00:13:00,889 いいえ。 (伝衛門) わしが帰るまで 居るんだぞ。 139 00:13:00,889 --> 00:13:03,558 はい。 (伝衛門)絹。 見送りは いいから➡ 140 00:13:03,558 --> 00:13:05,226 村長に 電話しといてくれ。 (絹)はい。⇒ 141 00:13:05,226 --> 00:13:07,228 「今 出ました」と お伝えすればよろしいんですね。 142 00:13:07,228 --> 00:13:09,928 そうだ。 (絹)行ってらっしゃいませ。 143 00:13:15,904 --> 00:13:19,908 お前にとっては 居心地のいい家なんだね。 144 00:13:19,908 --> 00:13:24,913 まあ いろいろあるけどね。 旦那さまは お前を➡ 145 00:13:24,913 --> 00:13:29,584 この家に 新しい風を 吹き込ませると 思っているんだ。 146 00:13:29,584 --> 00:13:31,584 そうかなあ。 147 00:13:33,254 --> 00:13:38,927 男同士は うらやましいな。 どうして? 148 00:13:38,927 --> 00:13:41,527 同じ夢を いっしょに 持てるじゃない。 149 00:13:43,264 --> 00:13:48,964 男と女は ダメさ。 独り占めしたくなるだけ。 150 00:13:51,539 --> 00:13:53,875 ごめん。 変なこと言って。 151 00:13:53,875 --> 00:13:58,875 ≪(足音) 152 00:14:00,882 --> 00:14:04,552 おかえり。 (ひかる)琴子おばちゃんは? 153 00:14:04,552 --> 00:14:06,952 学校 終わったの? うん。 154 00:14:11,559 --> 00:14:17,232 「ウエンディーはピーターパンの言葉を 信じることにしました。➡ 155 00:14:17,232 --> 00:14:21,236 ティンカーベルの 空飛ぶ粉を…」 お坊ちゃん おかえりなさい。 156 00:14:21,236 --> 00:14:24,906 お兄さま おかえり。 (文彦)お前 何してるんだ。 157 00:14:24,906 --> 00:14:27,909 ああ。 この『キング』の本 借りて 読んでたんだ。 158 00:14:27,909 --> 00:14:30,245 俺の『キング』を 誰が 貸すって言ったんだ? 159 00:14:30,245 --> 00:14:32,247 わたしが 貸してあげたのよ。 160 00:14:32,247 --> 00:14:34,582 この本は お前の物じゃない。 引っ込んでろ。 161 00:14:34,582 --> 00:14:36,918 でも…。 (文彦)うるさい! 162 00:14:36,918 --> 00:14:41,923 おい お前。 お父さまが 甘い顔 するからって 調子に乗るなよ。 163 00:14:41,923 --> 00:14:44,259 三枝家の一員とかなんとか いったって➡ 164 00:14:44,259 --> 00:14:48,529 身分というものがあるんだ。 身分をわきまえたら 俺の部屋に➡ 165 00:14:48,529 --> 00:14:50,531 勝手に 出入りすることは できないはずだ。 166 00:14:50,531 --> 00:14:53,201 お兄さま。 そんな言い方は ないと思うわ。 167 00:14:53,201 --> 00:14:56,537 (文彦)子供は 口出しするな! お坊っちゃま。 168 00:14:56,537 --> 00:14:59,207 もう少し 優しくしては いかがですか? 169 00:14:59,207 --> 00:15:01,209 妾のくせに 生意気言うな! 170 00:15:01,209 --> 00:15:06,547 おい。 人をバカにすんなよ。 (琴子)猛 やめなさい。 171 00:15:06,547 --> 00:15:08,883 わたしは お坊ちゃんの おっしゃるとおり➡ 172 00:15:08,883 --> 00:15:10,551 妾なんだから それでいいのよ。 173 00:15:10,551 --> 00:15:13,551 よくまあ 敷居がまたげたものだ。 174 00:15:17,558 --> 00:15:19,558 何てお兄さまなの! 175 00:15:21,229 --> 00:15:25,566 お嬢さま。 気になさらないでください。 176 00:15:25,566 --> 00:15:29,266 さあ 続きを読みましょうね。 うん。 177 00:15:37,245 --> 00:15:40,248 (文彦)何やってるんだ? 見れば 分かるだろ。 178 00:15:40,248 --> 00:15:42,917 お前 風呂 焚くの うまいんだってな?➡ 179 00:15:42,917 --> 00:15:45,853 猛。 今から 風呂 焚いてくれよ。 180 00:15:45,853 --> 00:15:47,855 おじさんが入るのは 夕方だ。 181 00:15:47,855 --> 00:15:50,191 俺が 今から入りたいんだ。➡ 182 00:15:50,191 --> 00:15:53,861 それとも お父さまの ご機嫌取りしか できないのか? 183 00:15:53,861 --> 00:15:57,532 お父さまは お前のことを正直者 だと思っているようだけど➡ 184 00:15:57,532 --> 00:16:00,201 しょせん ネコをかぶっているだけだ。 185 00:16:00,201 --> 00:16:04,205 分かったよ。 風呂がまに 水を張ってから 焚いてやるよ。 186 00:16:04,205 --> 00:16:07,542 (文彦)水はさっき徹が入れてた。 今すぐ焚け。 187 00:16:07,542 --> 00:16:10,942 焚けばいいんだろう。 焚けば。 188 00:16:30,231 --> 00:16:32,900 (猛)おい。 何だよ。 お前ら いきなりよう。 189 00:16:32,900 --> 00:16:34,902 おい 文彦。 おい! (琴子)やめなさい。 190 00:16:34,902 --> 00:16:36,571 (孝一)うるせえ。 引っ込んでろ。 おい。 やめろよ。 191 00:16:36,571 --> 00:16:39,971 火事だ。 風呂が火事だ! おい やめろよ。 文彦。 急げ! 192 00:16:41,576 --> 00:16:45,179 おい 待て。 (琴子)猛。 火の始末が先だよ! 193 00:16:45,179 --> 00:16:47,849 ダメだ。 水だ! (徹)こっちだ!➡ 194 00:16:47,849 --> 00:16:51,185 これだ。 (火の消える音) 195 00:16:51,185 --> 00:16:53,521 ありがてえ。 助かった。 196 00:16:53,521 --> 00:16:57,525 (治平)風呂の空焚きなんかして 三枝の家を 火事にする気か! 197 00:16:57,525 --> 00:17:02,196 違う。 俺じゃなくって…。 (徹) うるせえ。 口答えするんじゃねえ。 198 00:17:02,196 --> 00:17:05,896 やめてください。 (治平) あんたが 口出すことじゃねえ。 199 00:17:13,875 --> 00:17:15,543 まちがいなく あのままじゃ 火事になってました。 200 00:17:15,543 --> 00:17:17,879 (絹)どういうことです? 水の入ってない風呂を焚けば➡ 201 00:17:17,879 --> 00:17:21,549 火事になるのは 分かっていますね。 ああ。 202 00:17:21,549 --> 00:17:24,552 治平と徹が 駆けつけてくれたから 良かったものの➡ 203 00:17:24,552 --> 00:17:28,222 この屋敷が 火事になれば 私たちだけが 困るのではなく➡ 204 00:17:28,222 --> 00:17:30,558 大勢の小作たちが 迷惑するのです。➡ 205 00:17:30,558 --> 00:17:34,562 お前のやったことは 昔で言えば 死罪にも当たる罪です。⇒ 206 00:17:34,562 --> 00:17:38,232 土下座して 皆の前で 謝りなさい! 207 00:17:38,232 --> 00:17:40,568 風呂に 水が入ってるかどうかも 確かめないで➡ 208 00:17:40,568 --> 00:17:45,840 空焚きをしたのは 俺だ。 でも 謝るつもりはない。 209 00:17:45,840 --> 00:17:48,509 お前 謝らないのですか? 210 00:17:48,509 --> 00:17:51,512 でなければ この家を 出て行くことに なりますよ。 211 00:17:51,512 --> 00:17:53,514 ちょっと 待ってください。 奥さま。 212 00:17:53,514 --> 00:17:55,183 ちゃんと 訳を 聞いてやってください。 213 00:17:55,183 --> 00:17:58,519 三枝の ウチの中のことについて 口出し無用です。 214 00:17:58,519 --> 00:18:00,855 わたし 見ていたんです。 215 00:18:00,855 --> 00:18:03,524 文彦お坊ちゃんが 「風呂に水が 入っている」と言って➡ 216 00:18:03,524 --> 00:18:06,194 空焚きを 命じたんです。 217 00:18:06,194 --> 00:18:10,865 文彦。 お前が命じたのですか? (文彦)違います。➡ 218 00:18:10,865 --> 00:18:14,869 僕は そんなことを した覚えはありません。 219 00:18:14,869 --> 00:18:17,869 本当ですね? はい。 220 00:18:20,541 --> 00:18:23,878 琴子さん。 私は文彦を信じます。 221 00:18:23,878 --> 00:18:28,216 謝りなさい! でなければ 許しません。 222 00:18:28,216 --> 00:18:32,220 お坊ちゃん。 ホントのことを 言ってください。➡ 223 00:18:32,220 --> 00:18:35,890 わたしは この目で見 この耳で 聞いていたんです。 224 00:18:35,890 --> 00:18:39,894 伝衛門の留守の間は 私の考えが 伝衛門の考えです。➡ 225 00:18:39,894 --> 00:18:41,894 口出し無用です。 226 00:18:44,499 --> 00:18:47,168 分かりました。 227 00:18:47,168 --> 00:18:51,506 猛。 土下座なんか するんじゃないよ。➡ 228 00:18:51,506 --> 00:18:56,511 やってもいないことを 謝れなんて 冗談じゃないよ! 229 00:18:56,511 --> 00:19:00,848 私は 旦那さまの 誇りのある 生き方に 惚れたんだ。➡ 230 00:19:00,848 --> 00:19:04,519 それと あの人は何事につけても 公平で➡ 231 00:19:04,519 --> 00:19:07,219 筋目の通らないことが 大嫌いな方さ。 232 00:19:09,524 --> 00:19:14,862 猛。 こんな鬼の住みか とっとと出て行こうよ。➡ 233 00:19:14,862 --> 00:19:16,864 なあに 心配することないよ。➡ 234 00:19:16,864 --> 00:19:20,164 お前 一人ぐらい わたしが育ててあげるよ。 235 00:19:22,203 --> 00:19:23,871 うん。 236 00:19:23,871 --> 00:19:28,543 そうですか。 どうなさろうと お2人の勝手ですけど➡ 237 00:19:28,543 --> 00:19:31,212 後ろ足で 砂をかけるような マネをなさるなら➡ 238 00:19:31,212 --> 00:19:33,214 覚悟はおありなんでしょうね。 239 00:19:33,214 --> 00:19:35,214 もちろんですとも 奥さま。 240 00:19:41,222 --> 00:19:44,922 俺 支度する。 (琴子)ああ しておいで。 241 00:19:49,497 --> 00:19:51,197 おじさん。 242 00:19:53,501 --> 00:19:59,501 2人で 何をやっているんだ? 琴子。 絹。 243 00:20:04,512 --> 00:20:09,850 猛と文彦に 問いただした。 悪いのは 文彦だ。➡ 244 00:20:09,850 --> 00:20:13,854 嘘をついて 風呂を焚かせ 吾作たちに➡ 245 00:20:13,854 --> 00:20:17,191 釜から あふれんばかりの 薪を 投げ込ませた。 246 00:20:17,191 --> 00:20:20,491 文彦は非を認め 反省を誓った。 247 00:20:22,863 --> 00:20:27,201 文彦が 嘘をついていたのは 途中で分かりました。➡ 248 00:20:27,201 --> 00:20:29,870 でも あの子の気持ちを 重んじたのです。 249 00:20:29,870 --> 00:20:35,543 そのことを指摘し あの子の誇りを 踏みにじる訳には まいりません。 250 00:20:35,543 --> 00:20:40,214 (絹)文彦は あなたのおっしゃる とおりこの家の総領息子です。 251 00:20:40,214 --> 00:20:42,817 だからじゃ…。 事あるたびに あの子を➡ 252 00:20:42,817 --> 00:20:46,821 猛やほかの者たちの前で しかっていたのでは➡ 253 00:20:46,821 --> 00:20:50,157 あの子の立場が なくなります。 254 00:20:50,157 --> 00:20:53,857 誇りある人間には 成長できません。 255 00:20:55,162 --> 00:21:05,462 私は 三枝伝衛門の妻。 そして文彦と ひかるの母です。 256 00:21:07,842 --> 00:21:12,442 文彦をりっぱな 三枝家の 跡取りにするのが 私の務め。 257 00:21:17,518 --> 00:21:22,918 あなたも 文彦のこと 考えてくださいませ。 258 00:21:24,525 --> 00:21:28,925 あの子が どんな気持ちで 猛を 受け入れようとしているのか。 259 00:21:31,198 --> 00:21:35,202 つらく 耐えられないことを 我慢しているのです。 260 00:21:35,202 --> 00:21:41,208 そのうえ 文彦の誇りを 傷つけるわけには まいりません。 261 00:21:41,208 --> 00:21:47,481 和尚の言ったように 個性に合った 育て方をするのは 難しい。 262 00:21:47,481 --> 00:21:52,820 だが絹。 文彦には 「正は正。 非は非」として➡ 263 00:21:52,820 --> 00:21:55,156 諭してやらねばならん。 264 00:21:55,156 --> 00:21:58,159 (伝衛門)あいつの目が 曇ったまま成長すれば➡ 265 00:21:58,159 --> 00:22:03,159 泣かされるのは 小作たちだ。 お前だって 分かっては いよう。 266 00:22:06,834 --> 00:22:09,837 2人とも まるで子供じゃ。⇒ 267 00:22:09,837 --> 00:22:16,510 琴子。 この家が 鬼の住みかだとは ちと 言いすぎだ。➡ 268 00:22:16,510 --> 00:22:19,513 絹が怒るのも 無理はない。 269 00:22:19,513 --> 00:22:23,513 絹。 いつもの おまんらしさは どうした? 270 00:22:27,188 --> 00:22:33,861 聞いてくれ。 わしの人生は 毎日が 戦いだと思っている。 271 00:22:33,861 --> 00:22:38,532 その戦いを 支えてくれるのが 正妻である 絹であり➡ 272 00:22:38,532 --> 00:22:42,870 ホッとした 安らぎを 与えてくれるのが 琴子じゃ。➡ 273 00:22:42,870 --> 00:22:46,207 2人とも わしにとって 三枝家にとって➡ 274 00:22:46,207 --> 00:22:48,907 欠かすことのできぬ存在だ。 275 00:22:51,212 --> 00:22:57,512 (伝衛門)三枝家のために つまらん女の意地を 張り合うな。 276 00:23:00,554 --> 00:23:03,224 もう限界です。 277 00:23:03,224 --> 00:23:04,892 どこへ行く? 278 00:23:04,892 --> 00:23:07,192 (絹)心のはかりが 壊れてしまいました。 279 00:23:10,898 --> 00:23:13,234 お暇 いただかせて いただきます。 280 00:23:13,234 --> 00:23:14,934 (伝衛門)何だと! 281 00:23:17,571 --> 00:23:19,571 旦那さま。 282 00:23:22,243 --> 00:23:25,579 ああ。 ほっとけ。 283 00:23:25,579 --> 00:23:37,925 ♬~ 284 00:23:37,925 --> 00:23:39,593 (猛)おかえり ひかるちゃん。 285 00:23:39,593 --> 00:23:42,530 ほら。 花を摘んできたの。 琴子おばちゃんに あげるんだ。 286 00:23:42,530 --> 00:23:44,198 きっと喜ぶよ。 287 00:23:44,198 --> 00:23:49,198 猛君にも ひとつあげるね。 はい。 ありがとう。 288 00:23:51,205 --> 00:23:53,541 お母さま 帰りました。 おかえり。 289 00:23:53,541 --> 00:23:56,210 あのね。 これを琴子おばちゃんに あげるんだ。 290 00:23:56,210 --> 00:23:57,878 ひかる。 いっしょに行きましょう。 291 00:23:57,878 --> 00:23:59,880 どこへ行くんですか? いいから 行きましょう。 292 00:23:59,880 --> 00:24:05,219 いや! ひかる ごめんなさい。 293 00:24:05,219 --> 00:24:08,556 お母さま。 294 00:24:08,556 --> 00:24:10,558 どうしたのかしら? 295 00:24:10,558 --> 00:24:27,908 ♬~ 296 00:24:27,908 --> 00:24:47,528 ♬~ 297 00:24:47,528 --> 00:24:51,532 <ひかるの 幼い心の中には➡ 298 00:24:51,532 --> 00:24:55,532 言いしれぬ不安が 広がっていったのでした>