1 00:02:48,244 --> 00:02:50,244 2 00:02:54,083 --> 00:02:56,085 (文彦)太郎が 一度 お前の帽子をかぶりたいってさ。 3 00:02:56,085 --> 00:02:57,753 貸してやれよ。 4 00:02:57,753 --> 00:03:00,089 (太郎)貸せよ。 (猛)嫌だ。 これは俺のだ。 5 00:03:00,089 --> 00:03:02,389 だけど 俺のお母様が 買ってやったものだ。 6 00:03:11,100 --> 00:03:13,102 おい! 7 00:03:13,102 --> 00:03:14,770 やめろ! 8 00:03:14,770 --> 00:03:16,470 もういい! 9 00:03:18,107 --> 00:03:19,775 バカヤロー! 10 00:03:19,775 --> 00:03:22,778 ざまあみろ。 やれ。 11 00:03:22,778 --> 00:03:24,478 おい。 何だよ? 12 00:03:26,115 --> 00:03:28,117 (孝一)身の程を知れ! みなしごが。 13 00:03:28,117 --> 00:03:31,117 (吾作)天罰てきめんだよ。 (文彦)行こうぜ。 14 00:03:39,128 --> 00:03:46,128 畜生! 畜生! あいつら許さねえ。 15 00:03:50,406 --> 00:03:53,742 一日も学校を休まないで 頑張るぞって考えてたんです 16 00:03:53,742 --> 00:03:57,079 (ひかる)じゃあ 約束。 一日も学校を休まないって 17 00:03:57,079 --> 00:03:59,079 ああ。 約束する 18 00:04:01,750 --> 00:04:06,088 ♬『Delight of my love』 19 00:04:06,088 --> 00:04:20,102 ♬~ 20 00:04:20,102 --> 00:04:40,122 ♬~ 21 00:04:40,122 --> 00:05:00,075 ♬~ 22 00:05:00,075 --> 00:05:20,095 ♬~ 23 00:05:20,095 --> 00:05:30,095 ♬~ 24 00:05:31,106 --> 00:05:34,777 (伝衛門)なぜ学校へ行かなかったか 心当たりはないか? 25 00:05:34,777 --> 00:05:36,445 ありません。 26 00:05:36,445 --> 00:05:39,782 (絹)あの子 学帽をかぶって あんなに喜んでいたのに。 27 00:05:39,782 --> 00:05:41,450 何があったのでしょう? 28 00:05:41,450 --> 00:05:43,118 理科の宿題で モンシロチョウを➡ 29 00:05:43,118 --> 00:05:47,056 捕まえてこなければ いけないのです。 出かけてきます。 30 00:05:47,056 --> 00:05:52,728 文彦。 朝日ヶ丘は分かるか? 31 00:05:52,728 --> 00:05:54,396 はい。 32 00:05:54,396 --> 00:05:58,734 あそこの南斜面は モンシロチョウの穴場だ。 33 00:05:58,734 --> 00:06:01,403 去年 お父様に 連れて行ってもらった所ですね。 34 00:06:01,403 --> 00:06:05,074 うん。 ケガせぬように 気を付けていってらっしゃい。 35 00:06:05,074 --> 00:06:07,674 はい。 いってまいります。 36 00:06:13,415 --> 00:06:17,753 スミレ畑の上を 何百羽ものモンシロチョウが➡ 37 00:06:17,753 --> 00:06:21,090 乱れ舞う姿は 見ものだ。 38 00:06:21,090 --> 00:06:24,426 ええ。 でも…。 39 00:06:24,426 --> 00:06:27,726 どうした? あっ いえ…。 何でもありません。 40 00:06:29,765 --> 00:06:38,440 文彦は三枝家の跡取り。 信じてやらねばならん。 41 00:06:38,440 --> 00:06:44,113 わしも 自分に そう言い聞かせているんだ。 42 00:06:44,113 --> 00:06:45,713 はい。 43 00:06:56,392 --> 00:07:00,062 ああ…。 何て言おうかな。 44 00:07:00,062 --> 00:07:02,398 ≪(吾作)しかし モンシロチョウの大群でしたね。 45 00:07:02,398 --> 00:07:04,400 ≪(文彦)お父様が 穴場を教えてくれたんだ。 46 00:07:04,400 --> 00:07:06,068 親なんて ごまかすの わけないんだ。 47 00:07:06,068 --> 00:07:07,736 (孝一)ここで いちばん 形がいいのを選びましょう。 48 00:07:07,736 --> 00:07:09,738 ああ。 49 00:07:09,738 --> 00:07:12,741 お前ら 許さん。 絶対 許さん! 50 00:07:12,741 --> 00:07:15,441 (文彦)逃げろ! 危ない! おい! 待て! 51 00:07:24,086 --> 00:07:27,423 (ひかる)猛君。 ここにあいつは来なかったか? 52 00:07:27,423 --> 00:07:30,092 あいつだけは許せねえ。 ぶっ殺してやるんだ! 53 00:07:30,092 --> 00:07:32,094 やめなさい。 そういうことを言うのは。 54 00:07:32,094 --> 00:07:34,096 今度ばかりは許せねえ! 55 00:07:34,096 --> 00:07:39,768 嫌いよ! そんな怖い目をして 乱暴する猛君は 大嫌いよ! 56 00:07:39,768 --> 00:07:42,104 わたしとの約束を どうして破ったのよ? 57 00:07:42,104 --> 00:07:43,772 「約束」? 58 00:07:43,772 --> 00:07:46,041 学校は 一日も休まずに 行くって言ったでしょう? 59 00:07:46,041 --> 00:07:48,711 忘れちゃったの? 60 00:07:48,711 --> 00:07:50,713 理由を言いなさい。 猛君。 61 00:07:50,713 --> 00:07:52,715 言えない。 62 00:07:52,715 --> 00:07:55,384 わたしとの約束を守れない人は 軽蔑するわ! 63 00:07:55,384 --> 00:07:58,053 ≪(文彦)こういうときは 家の中がいちばんさ。➡ 64 00:07:58,053 --> 00:08:02,653 お父様もお母様もいるし 治平だって徹だって守ってくれるさ。 65 00:08:04,393 --> 00:08:06,061 猛君! 66 00:08:06,061 --> 00:08:08,397 許さねえ! 67 00:08:08,397 --> 00:08:10,065 (太郎)野郎! (文彦)誰か助けて! 68 00:08:10,065 --> 00:08:11,734 文彦。 覚悟しろ! 69 00:08:11,734 --> 00:08:13,402 (治平)何してるだ。 こら! 誰か 助けて! 70 00:08:13,402 --> 00:08:15,070 こら! 文彦! 71 00:08:15,070 --> 00:08:17,740 ≪(文彦)助けて! どうしたんでしょう? 72 00:08:17,740 --> 00:08:19,408 お父さん! 助けてください。 73 00:08:19,408 --> 00:08:21,410 文彦 許さん! どうした? 74 00:08:21,410 --> 00:08:23,078 クソ野郎! 75 00:08:23,078 --> 00:08:24,747 待て! 訳を話せ。 76 00:08:24,747 --> 00:08:27,082 俺は こいつが許せないんだ! 77 00:08:27,082 --> 00:08:29,752 こいつはおかしいんです。 お父様。 何だと! 78 00:08:29,752 --> 00:08:32,421 落ち着け! 絹。 文彦をあっちへ連れて行け。 79 00:08:32,421 --> 00:08:34,421 はい。 文彦。 こちらにいらっしゃい。 80 00:08:38,093 --> 00:08:39,693 物騒な物をはずせ。 81 00:08:41,764 --> 00:08:43,766 何があったのか 訳を話せ。 82 00:08:43,766 --> 00:08:47,466 嫌だ! 男同士の落とし前をつけるんだ! 83 00:08:49,037 --> 00:08:51,707 呼吸を整えろ。 84 00:08:51,707 --> 00:08:54,107 目をつぶって深呼吸をするんだ。 85 00:08:57,713 --> 00:09:01,413 そして わしの質問に答えろ。 86 00:09:04,720 --> 00:09:07,420 どうだ? 話す気になったか? 87 00:09:09,057 --> 00:09:13,395 乱暴は許さん。 わしは これから出かける。 88 00:09:13,395 --> 00:09:17,733 帰って来るまでに 気持ちの整理をしておけ。 89 00:09:17,733 --> 00:09:20,736 帰って来たら文彦にも問いただす。 90 00:09:20,736 --> 00:09:26,408 お前が これほどまでに怒るのだ。 相当の訳があったに違いない。 91 00:09:26,408 --> 00:09:28,108 いいな? 92 00:09:43,425 --> 00:09:45,125 畜生! 93 00:09:49,031 --> 00:09:50,631 (猛)危ない! 94 00:10:05,047 --> 00:10:06,647 猛君! 95 00:10:08,717 --> 00:10:12,054 お兄様たちと 何かあったんでしょう? 96 00:10:12,054 --> 00:10:14,054 猛君を助けたいの。 97 00:10:17,392 --> 00:10:19,061 猛君! 98 00:10:19,061 --> 00:10:21,061 ワアアッ! 99 00:10:22,731 --> 00:10:25,131 畜生! 100 00:10:31,740 --> 00:10:34,076 この帽子…。 触んな! 101 00:10:34,076 --> 00:10:37,376 でも…。 それは俺のせいだから! 102 00:10:39,748 --> 00:10:41,448 そういうこと…。 103 00:10:44,086 --> 00:10:47,022 ひどいわ。 こんなことをするなんて。 104 00:10:47,022 --> 00:10:48,622 ほっといてくれよ。 105 00:10:51,026 --> 00:10:52,626 猛君! 106 00:10:56,698 --> 00:11:01,398 ひどい…。 ひどい…。 107 00:11:03,038 --> 00:11:04,706 もう一度 言えますか? 108 00:11:04,706 --> 00:11:08,043 お母様。 僕を信じてくれないんですか? 109 00:11:08,043 --> 00:11:10,045 言いなさい。 110 00:11:10,045 --> 00:11:13,715 はい。 今日 学校へ行くとき➡ 111 00:11:13,715 --> 00:11:15,384 あいつが小刀で あの学帽を➡ 112 00:11:15,384 --> 00:11:19,388 ずたずたにしているのを見ました。 そこで僕が注意をしたら➡ 113 00:11:19,388 --> 00:11:22,724 大きな声をあげて 飛びかかって来たのです。⇒ 114 00:11:22,724 --> 00:11:25,727 あいつは 僕が お父様とお母様に 言いつけると思って➡ 115 00:11:25,727 --> 00:11:27,727 暴力で脅そうとしたんです。 116 00:11:29,731 --> 00:11:31,731 嘘をつくのは やめなさい。 117 00:11:34,403 --> 00:11:37,406 以前 番小屋で 棚が崩れて⇒ 118 00:11:37,406 --> 00:11:40,409 まちがえば ひかるが命を落とす 事故がありました。 119 00:11:40,409 --> 00:11:42,409 覚えていますね? 120 00:11:44,079 --> 00:11:48,016 ええ…。 猛が体を張って ひかるを助けてくれました。 121 00:11:48,016 --> 00:11:53,016 あれは偶然ではありません。 あなたがやったのは知っています。 122 00:11:55,691 --> 00:11:59,091 (絹)どうして 猛の帽子を破ったりしたのです? 123 00:12:01,029 --> 00:12:04,032 お母様が 僕を裏切ったからです。 124 00:12:04,032 --> 00:12:06,034 えっ…? 125 00:12:06,034 --> 00:12:08,704 (文彦)何があっても 僕の味方だとおっしゃったのに➡ 126 00:12:08,704 --> 00:12:10,706 あんなヤツに 帽子を買ってやったことが➡ 127 00:12:10,706 --> 00:12:13,041 嫌で 許せなくて やったんです。➡ 128 00:12:13,041 --> 00:12:16,044 お父様と同じように あいつを三枝家の一員として➡ 129 00:12:16,044 --> 00:12:19,381 認めたことになります。 そんなこと 絶対に許せません! 130 00:12:19,381 --> 00:12:22,381 文彦…。 今のお母様は 大嫌いです! 131 00:12:34,396 --> 00:12:36,732 お母様! 132 00:12:36,732 --> 00:12:39,735 猛君は 帽子を…。 133 00:12:39,735 --> 00:12:41,435 (絹)分かっています。 134 00:12:43,071 --> 00:12:55,071 ♬~ 135 00:12:58,754 --> 00:13:01,757 (お滝)おまんが来てから この屋敷の中は災難ばかりだ! 136 00:13:01,757 --> 00:13:03,425 (治平)旦那様の 人のいいのにつけ込んで➡ 137 00:13:03,425 --> 00:13:05,093 まんまと入り込んだが➡ 138 00:13:05,093 --> 00:13:06,762 わしらは いつもお前を監視してる。 139 00:13:06,762 --> 00:13:09,097 (お滝)そのうち 何かしでかすのに決まってる。 140 00:13:09,097 --> 00:13:13,101 (徹)三枝家あってのわしらだ。 何があろうと坊っちゃんが正しい。 141 00:13:13,101 --> 00:13:16,438 (お滝)旦那様の手前 すぐに出て行けとは言わないが➡ 142 00:13:16,438 --> 00:13:18,106 もっと分をわきまえろ。 143 00:13:18,106 --> 00:13:21,109 (治平)坊っちゃんが黒と言ったら黒。 白と言ったら白なんだ。⇒ 144 00:13:21,109 --> 00:13:24,446 お前の立場では ひと言も 逆らえねえんだ。 分かったか? 145 00:13:24,446 --> 00:13:26,114 (お滝)お坊ちゃまと お嬢ちゃまとでは➡ 146 00:13:26,114 --> 00:13:30,452 おまんは身分が違うんだ。 同じだと思うんじゃない! 147 00:13:30,452 --> 00:13:32,152 ふざけんな! 148 00:13:36,124 --> 00:13:38,724 畜生! 文彦め! 149 00:13:40,796 --> 00:13:44,466 (山海)ハハハ。 どうした 猛? 荒れてるなあ。 150 00:13:44,466 --> 00:13:46,735 クソ坊主。 文彦は許さねえぞ。 151 00:13:46,735 --> 00:13:51,735 おい。 どうしたのう? 何があったんだよ? 152 00:13:53,408 --> 00:13:55,077 どうして お前はそうやって➡ 153 00:13:55,077 --> 00:13:58,080 人に牙ばかり むき出しているんだ? 154 00:13:58,080 --> 00:14:00,082 文彦が悪いからだ。 155 00:14:00,082 --> 00:14:04,086 とんがるばかりが男じゃないぞ。 うるせえ! 156 00:14:04,086 --> 00:14:07,089 フフフフ。 もっと大きな心を持てんのか? 157 00:14:07,089 --> 00:14:08,689 持てん! 158 00:14:11,093 --> 00:14:17,432 かわいそうになあ。 え? 細かなことに 一つ一つ腹を立て➡ 159 00:14:17,432 --> 00:14:21,436 怒りばかりに身を任せておったら 小粒な人間になっちまうんだよ。 160 00:14:21,436 --> 00:14:24,106 わけの分からんことを言うな。 このクソ坊主! 161 00:14:24,106 --> 00:14:28,110 ハハハ。 いいか? 文彦はな➡ 162 00:14:28,110 --> 00:14:32,114 お前に劣等感を持っとるから 意地悪をするんだよ。 163 00:14:32,114 --> 00:14:36,785 そんな小さな人間を 許すのが男じゃないか? 164 00:14:36,785 --> 00:14:38,785 絶対に許さん! 165 00:14:40,789 --> 00:14:46,728 人を憎むことしかできんヤツはな 敵ばかりを増やしてしまうんだ。 166 00:14:46,728 --> 00:14:50,732 いいか? お前が 人を好きにならなかったら➡ 167 00:14:50,732 --> 00:14:53,401 人は誰もお前を 好きにならんのだぞ。 168 00:14:53,401 --> 00:14:56,071 誰にも 好きになってもらわなくていい! 169 00:14:56,071 --> 00:15:01,076 うん。 よし。 お前の心根をたたき直してやる。 170 00:15:01,076 --> 00:15:07,082 少し待っておれ。 今な 警策を持って来る。 171 00:15:07,082 --> 00:15:09,082 お前に座禅を仕込んでやろう。 172 00:15:13,755 --> 00:15:17,455 どうして 誰も分かってくれねえんだよ! 173 00:15:22,430 --> 00:15:27,102 猛! お前 そんな物を持って どこへ出かけるつもりだ? 174 00:15:27,102 --> 00:15:30,772 文彦も お滝も 治平も みんな ぶっ殺しに行くんだ。 175 00:15:30,772 --> 00:15:32,774 喝! 176 00:15:32,774 --> 00:15:34,474 いてえな…。 177 00:15:36,778 --> 00:15:40,448 (猛)生臭坊主 何しやがる! 下ろせ! 178 00:15:40,448 --> 00:15:43,118 (山海)そこでしばらく 頭 冷やしてろ。⇒ 179 00:15:43,118 --> 00:15:48,723 よく覚えておけよ。 忍耐は苦し されど その実は甘い。 180 00:15:48,723 --> 00:15:52,060 我慢なんて嫌いだ。 下ろしやがれ! 181 00:15:52,060 --> 00:15:56,398 何でもかんでも 人を恨むこと しかできぬ この ばか者! 182 00:15:56,398 --> 00:16:01,403 いいか? 人は 自分一人で 生きているのではない。 183 00:16:01,403 --> 00:16:03,738 他人によって 生かされるのだ。 184 00:16:03,738 --> 00:16:06,074 こんなことされて 恨まなくて どうする! 185 00:16:06,074 --> 00:16:08,076 一生恨んでやるぞ。 クソ坊主! 186 00:16:08,076 --> 00:16:13,415 ハハハ。 その元気なら しばらくは もつだろう。 187 00:16:13,415 --> 00:16:16,418 ぶら下がってろ。 188 00:16:16,418 --> 00:16:21,423 おい クソ坊主。 待て! 縄 ほどけ! 戻ってこい! 189 00:16:21,423 --> 00:16:23,425 戻ってきて 縄 ほどけ! 190 00:16:23,425 --> 00:16:25,093 おしっこは大丈夫かな? 191 00:16:25,093 --> 00:16:27,429 おい! もう 一生憎んでやるぞ! 192 00:16:27,429 --> 00:16:33,435 そうですか。 猛をつるしましたか。 ハハハ。 そりゃ愉快だ。 193 00:16:33,435 --> 00:16:35,770 見ものじゃよ。 ハハハ。 194 00:16:35,770 --> 00:16:38,773 では あとで 見物といきますかな。 195 00:16:38,773 --> 00:16:42,777 (山海)きっと カラスと けんかでもしとるだろう。 196 00:16:42,777 --> 00:16:46,715 お二人とも 笑っておられる 場合ではございません。 197 00:16:46,715 --> 00:16:48,717 悪いのは文彦です。 198 00:16:48,717 --> 00:16:51,386 罰を受けなければならないのは 文彦のほうです。 199 00:16:51,386 --> 00:16:53,054 もっともじゃ。 200 00:16:53,054 --> 00:16:55,056 (絹)でしたら すぐに猛を 下ろしてくださいませ。 201 00:16:55,056 --> 00:16:57,392 (山海)いやいや。 しばらくは まだ あいつは➡ 202 00:16:57,392 --> 00:17:00,729 木につるしておいたほうが 猛のためになる。➡ 203 00:17:00,729 --> 00:17:06,067 あいつは 不屈の目を持っておる。 しかし その刃の➡ 204 00:17:06,067 --> 00:17:09,738 行く先をまちがえれば とんでもないヤツになりおる。 205 00:17:09,738 --> 00:17:13,408 わしは あいつを 野良犬だと思っていました。 206 00:17:13,408 --> 00:17:15,076 だが まちがっていました。 207 00:17:15,076 --> 00:17:16,745 と 言うと? 208 00:17:16,745 --> 00:17:19,748 傷ついた狼の子でした。 209 00:17:19,748 --> 00:17:23,752 育て方によっては 群れを率いる蒼き狼にもなるし➡ 210 00:17:23,752 --> 00:17:28,423 まちがえれば ただの暴れ者の はぐれ狼にもなります。 211 00:17:28,423 --> 00:17:30,423 (山海)そのとおりじゃ。 212 00:17:35,096 --> 00:17:39,434 おい カラス! ばかにすると 焼き鳥にしちまうぞ! 213 00:17:39,434 --> 00:17:42,370 (カラスの鳴き声) 214 00:17:42,370 --> 00:17:45,040 カーッ! 215 00:17:45,040 --> 00:17:49,044 こっち来い! カーッ! 216 00:17:49,044 --> 00:17:51,379 ハハハ。 ハハハ。 217 00:17:51,379 --> 00:17:55,383 男の方は どうして そうのんきで いられるのでございます? 218 00:17:55,383 --> 00:17:58,386 何がじゃ? 文彦です。 219 00:17:58,386 --> 00:18:01,723 文彦にどう罰を与え これから どう育てていったらいいのか➡ 220 00:18:01,723 --> 00:18:04,059 私には分からなくなりました。 221 00:18:04,059 --> 00:18:09,397 うん。 伝衛門。 お前は どう思うのじゃ? 222 00:18:09,397 --> 00:18:12,067 育て方は今までどおりでよいかと。 223 00:18:12,067 --> 00:18:16,404 父親は厳しく 母親は寛容に 慈悲に満ちて見守る。➡ 224 00:18:16,404 --> 00:18:21,076 ただし 「正は正 非は非」と諭して。 225 00:18:21,076 --> 00:18:30,085 そこでじゃ 文彦には水行をさせろ。 春 夏 秋 冬もじゃ。 226 00:18:30,085 --> 00:18:33,755 なるほど。 水行ですか。 はい。 227 00:18:33,755 --> 00:18:38,426 あいつには 耐えることを 学ばせるのじゃ。 228 00:18:38,426 --> 00:18:42,426 文彦に足らんものは 己に克つ心じゃよ。 229 00:18:44,032 --> 00:18:47,702 和尚。 ありがとうございます。 では 早速。 230 00:18:47,702 --> 00:18:50,372 おいおい。 碁… 碁はどうするんじゃ? 231 00:18:50,372 --> 00:18:53,708 思い立ったが吉日ですから。 おい! 232 00:18:53,708 --> 00:18:55,710 (伝衛門)文彦! 233 00:18:55,710 --> 00:19:02,717 あれだよ。 えぇ? 直情径行。 なぁ。➡ 234 00:19:02,717 --> 00:19:05,720 お絹さんも 手が焼けることじゃろ? 235 00:19:05,720 --> 00:19:10,058 見て参ります。 (山海)ハハハ。 236 00:19:10,058 --> 00:19:15,063 文彦。 これは罰ではない。 わしとお前の修行じゃ。 237 00:19:15,063 --> 00:19:16,731 はい。 238 00:19:16,731 --> 00:19:18,733 お前は三枝家の長男じゃ。 239 00:19:18,733 --> 00:19:24,406 将来 多くの小作と その家族の 命を守る人間になる。 240 00:19:24,406 --> 00:19:26,408 はい。 自覚しています。 241 00:19:26,408 --> 00:19:31,746 責任は重大だ。 今のお前は弱すぎる。 242 00:19:31,746 --> 00:19:34,749 勝て。 弱い自分に勝つんだ。 243 00:19:34,749 --> 00:19:37,419 はい。 244 00:19:37,419 --> 00:19:43,358 己を振り返り 己に克つための修行じゃ。 いくぞ。 245 00:19:43,358 --> 00:19:45,058 はい。 246 00:19:50,698 --> 00:19:54,398 両手を合わせ 目を閉じ 何も考えるな。 247 00:19:57,705 --> 00:19:59,374 (伝衛門)えい! 248 00:19:59,374 --> 00:20:01,376 (お滝)お坊ちゃま。 おいたわしい。 249 00:20:01,376 --> 00:20:05,713 修行です。 そのようなことを 口にしてはなりませぬ。 250 00:20:05,713 --> 00:20:08,049 (伝衛門)もう一杯いくぞ。 文彦。 (文彦)はい! 251 00:20:08,049 --> 00:20:13,721 (山海の読経) 252 00:20:13,721 --> 00:20:17,421 (伝衛門)今度は わしの番じゃ。 (文彦)はい。 お父様 いきます! 253 00:20:20,728 --> 00:20:23,398 よし。 来い 文彦! 254 00:20:23,398 --> 00:20:26,734 (猛)おい カラスめ! ここまで来て 勝負しろ! 255 00:20:26,734 --> 00:20:29,404 この ばかカラスが! 256 00:20:29,404 --> 00:20:32,740 (ひかる)猛君! ひかるちゃん! 257 00:20:32,740 --> 00:20:35,410 待ってて! 258 00:20:35,410 --> 00:20:40,415 俺は平気だよ ひかるちゃん。 もう 俺は大丈夫だからさ。 259 00:20:40,415 --> 00:20:44,352 ひかるちゃん! もう いいよ。 大丈夫だから。 260 00:20:44,352 --> 00:20:49,023 あの子が来てから この家の中が大きく変わりました。 261 00:20:49,023 --> 00:20:54,696 生き生きとした活気がよみがえり ひかるが大きく成長しました。 262 00:20:54,696 --> 00:20:57,031 (伝衛門)そのとおりだ。 263 00:20:57,031 --> 00:21:02,704 私も あの子を見ていると 3年前に亡くした➡ 264 00:21:02,704 --> 00:21:06,374 猛を見ているような 気がすることがございます。 265 00:21:06,374 --> 00:21:08,074 うん。 266 00:21:09,711 --> 00:21:13,111 でも あの子は私が産んだ 三枝家の子供ではございません。 267 00:21:15,383 --> 00:21:19,053 (絹)文彦が 何かにつけ ひがみやすく➡ 268 00:21:19,053 --> 00:21:23,053 意地悪をしてしまうのも 分からなくはないのです。 269 00:21:25,059 --> 00:21:30,064 すべて猛のせいではない。 わしの配慮が足らんせいもある。 270 00:21:30,064 --> 00:21:33,401 文彦も真剣に 生きようとしております。 271 00:21:33,401 --> 00:21:35,403 さっきの水行のときの➡ 272 00:21:35,403 --> 00:21:40,074 あの悲壮な目は 文彦の覚悟が にじみ出ておりました。 273 00:21:40,074 --> 00:21:43,074 ああ。 分かっていたよ。 274 00:21:44,679 --> 00:21:46,347 あなたは➡ 275 00:21:46,347 --> 00:21:49,017 将来 猛を 文彦を助ける人間にしたいと➡ 276 00:21:49,017 --> 00:21:53,688 おっしゃいましたが はたして そうなるでしょうか? 277 00:21:53,688 --> 00:21:57,025 (伝衛門)そういうふうに 二人を育てるつもりだ。 278 00:21:57,025 --> 00:22:00,625 ムリです。 猛は狼です。 279 00:22:03,031 --> 00:22:07,368 (絹)狼は きっと 鎖には つながれてはおりません。 280 00:22:07,368 --> 00:22:11,668 文彦にも 狼を押さえつける 度量などございません。 281 00:22:15,043 --> 00:22:18,713 狼だからこそ 私は怖いのです。 282 00:22:18,713 --> 00:22:25,113 文彦 ひかる 猛の将来を考えると 震えがくるのです。 283 00:22:29,057 --> 00:22:35,730 和尚の教えを請いながら もう少し広い気持ちで➡ 284 00:22:35,730 --> 00:22:38,733 文彦の成長を見守ろう。 285 00:22:38,733 --> 00:22:42,133 はい。 そうは思いますが…。 286 00:22:48,743 --> 00:22:53,081 ひかるちゃん。 もう やめてくれ。 手が血だらけじゃねえかよ。 287 00:22:53,081 --> 00:22:55,083 ひかるちゃん。 もう やめてくれ。 288 00:22:55,083 --> 00:22:57,085 猛君。 もうすぐよ。 待ってて。 289 00:22:57,085 --> 00:22:59,420 お願いだから やめてくれよ! 290 00:22:59,420 --> 00:23:04,092 わたし 何でもないわ。 猛君。 頑張って。 291 00:23:04,092 --> 00:23:05,760 ひかるちゃん…。 292 00:23:05,760 --> 00:23:07,762 もうすぐ。 もうすぐ! 293 00:23:07,762 --> 00:23:23,444 ♬~ 294 00:23:23,444 --> 00:23:28,116 (猛)ひかるちゃん。 しみないか? 痛いだろう? 295 00:23:28,116 --> 00:23:31,116 大丈夫よ。 これくらい。 何でもないよ。 296 00:23:32,787 --> 00:23:36,457 俺のために こんな手になって ごめんな。 297 00:23:36,457 --> 00:23:41,796 猛君。 文彦お兄様を許してくれる? 298 00:23:41,796 --> 00:23:46,401 もう どうでもいいことさ。 許してくれないの? 299 00:23:46,401 --> 00:23:49,404 もう 何もかも とっくに忘れちまったよ。 300 00:23:49,404 --> 00:23:51,104 ありがとう。 301 00:23:52,740 --> 00:23:56,740 俺 今日のこと 一生忘れないよ。 302 00:24:08,423 --> 00:24:10,425 痛くないか? 303 00:24:10,425 --> 00:24:12,425 少し 痛い。 304 00:24:14,095 --> 00:24:18,395 そうだ。 傷には つばをつけるのが いちばん 効くんだ。 305 00:24:20,101 --> 00:24:31,446 ♪ 306 00:24:31,446 --> 00:24:33,146 やっぱり けだものね。 307 00:24:34,782 --> 00:24:36,451 ガルルル。 308 00:24:36,451 --> 00:24:38,786 <猛 9歳。 ひかるは7歳の➡ 309 00:24:38,786 --> 00:24:43,725 春の暖かい日ざしがまぶしい 午後のことでした> 310 00:24:43,725 --> 00:24:57,125 ♬~