1 00:02:47,013 --> 00:02:47,880 2 00:02:47,880 --> 00:02:50,550 (ひかる)猛。 このクッキー すごく おいしいのよ。 食べてみて。 3 00:02:50,550 --> 00:02:54,554 (猛)ダメです。 お願いですから 帰りましょう。 4 00:02:54,554 --> 00:02:58,558 食べさせてあげる。 ほら。 口を開けて。 5 00:02:58,558 --> 00:03:00,893 開けなさい。 6 00:03:00,893 --> 00:03:04,564 開けなさいったら 開けなさい! (戸が開く音) 7 00:03:04,564 --> 00:03:06,232 (戸田)お前ら 何をしてる? 8 00:03:06,232 --> 00:03:08,568 誰なの? 出て行きなさい! 9 00:03:08,568 --> 00:03:12,238 (桜井)生意気な娘だな。 お前たちは夫婦か? 10 00:03:12,238 --> 00:03:14,240 違います。 11 00:03:14,240 --> 00:03:17,910 (戸田)この男と 何か関係を 持っているのかな? うん? 12 00:03:17,910 --> 00:03:21,581 やめろ! 何だと! この野郎! 13 00:03:21,581 --> 00:03:26,981 てめえ。 警察だ! 逆らうと 逮捕するぞ! 14 00:03:29,589 --> 00:03:34,594 『Delight of my love』 15 00:04:59,879 --> 00:05:01,547 (桜井)警察だ。 お前たちは 16 00:05:01,547 --> 00:05:05,885 子供のくせに 町なかから イチャイチャとして 風紀を乱していた。 17 00:05:05,885 --> 00:05:08,554 嘘です。 そんなこと してません。 18 00:05:08,554 --> 00:05:12,558 しかも こんな怪しげな絵の 飾ってある場所に潜り込むとは 19 00:05:12,558 --> 00:05:16,562 言語道断だ! 風紀を乱した罪で 逮捕するぞ。 20 00:05:16,562 --> 00:05:18,898 これは ヨーロッパの有名な絵です。 21 00:05:18,898 --> 00:05:26,906 ハハッ。 生意気なお嬢さんよ。 警察の取調室でも威勢よく頼むぜ。 22 00:05:26,906 --> 00:05:30,242 何も悪いことしてないじゃないか。 なぜ逮捕されんだ!? 23 00:05:30,242 --> 00:05:35,915 甲府の繁華街を 二人で腕を組んで 歩いて その上 ここではイチャイチャと。 24 00:05:35,915 --> 00:05:37,583 十分に風紀を乱しておる! 25 00:05:37,583 --> 00:05:40,252 二人とも取り調べるから 同行しろ! 26 00:05:40,252 --> 00:05:45,191 (桜井)それとも 手錠を掛けようか? 27 00:05:45,191 --> 00:05:48,891 (戸田)おい! (崇子)あなた方は? 28 00:05:52,865 --> 00:05:55,534 (桜井)この二人を 警察に同行する。 29 00:05:55,534 --> 00:05:58,537 文句があるなら あんたも警察まで来い。 30 00:05:58,537 --> 00:06:01,540 (崇子)この ひかるさんは 私の弟子です。 31 00:06:01,540 --> 00:06:05,211 そして こっちの子は ひかるさんの忠実な下僕です。 32 00:06:05,211 --> 00:06:07,213 決して怪しいことはありません。 33 00:06:07,213 --> 00:06:08,881 (戸田)あんたは 一体? 34 00:06:08,881 --> 00:06:12,218 父は内閣の官房長も 務めた中条男爵です。 35 00:06:12,218 --> 00:06:15,554 私は 長女の中条崇子です。 36 00:06:15,554 --> 00:06:18,557 中… 中条男爵? 37 00:06:18,557 --> 00:06:20,559 しょっ 証拠は? 38 00:06:20,559 --> 00:06:24,959 疑うのなら 私を連行して 内務省に問い合わせなさい。 39 00:06:27,566 --> 00:06:29,566 (戸田)失礼しました。 40 00:06:32,238 --> 00:06:36,909 先生。 ありがとうございました。 ありがとうございます。 41 00:06:36,909 --> 00:06:39,912 ああいう連中は 権力の手先です。 42 00:06:39,912 --> 00:06:44,183 でも 怖いのは 世の中が 自由を恐れていることです。 43 00:06:44,183 --> 00:06:47,853 自由は 古い規制と道徳を否定します。 44 00:06:47,853 --> 00:06:52,191 今の世の中は 自由な恋愛も 認めようとしません。 45 00:06:52,191 --> 00:06:55,491 私も 過去 大きな傷を負わされました。 46 00:06:57,863 --> 00:07:01,534 まだまだ 欧米のような自由は 日本にはありません。 47 00:07:01,534 --> 00:07:06,872 でも どんな困難があっても 自分の 気持ちさえ しっかりしていれば 48 00:07:06,872 --> 00:07:09,872 負けることはないわ。 はい。 49 00:07:11,544 --> 00:07:14,213 あっ。 先生のカップを。 俺が…。 50 00:07:14,213 --> 00:07:15,913 わたしが取って来るわ。 51 00:07:18,551 --> 00:07:21,887 先生。 何でしょうか? 52 00:07:21,887 --> 00:07:27,187 私には 君のような人生って 想像もつかないわ。 53 00:07:32,898 --> 00:07:36,569 (ひかる)崇子先生って すてきね。 (猛)はい。 54 00:07:36,569 --> 00:07:41,574 ヨーロッパに遊学して バイオリンや フランス文学を勉強されて 55 00:07:41,574 --> 00:07:44,844 自由を満喫していらっしゃるわ。 ええ。 56 00:07:44,844 --> 00:07:47,513 あの刑事たちからも 一歩も引かずに 57 00:07:47,513 --> 00:07:49,849 ビシッと対決して やっつけちゃうんだもの。 58 00:07:49,849 --> 00:07:51,849 すてきだったわ。 59 00:07:53,519 --> 00:07:56,188 猛。 ありがとう。 60 00:07:56,188 --> 00:08:01,527 わたしのために 刑事に 刃向かってくれて うれしかったわ。 61 00:08:01,527 --> 00:08:03,863 俺は 情けないです。 62 00:08:03,863 --> 00:08:08,200 簡単に やられてしまって 悔しいです。 63 00:08:08,200 --> 00:08:13,539 相手は大人だったし 刑事よ。 しかたないじゃない。 64 00:08:13,539 --> 00:08:16,542 俺は 誰にも負けちゃ いけないんです。 65 00:08:16,542 --> 00:08:20,942 相変わらず 負けず嫌いね。 フッ。 66 00:08:23,215 --> 00:08:25,217 (絹)このとおりでございます。 67 00:08:25,217 --> 00:08:27,553 もう一度 文彦と 話し合ってくださいませ。 68 00:08:27,553 --> 00:08:31,891 (伝衛門)必要ない。 わしは 文彦を信じようとしてきた。 69 00:08:31,891 --> 00:08:35,895 高等学校に入り もっと成長して くれるものだと 思っていた。 70 00:08:35,895 --> 00:08:39,231 (絹)文彦には もう少し時間が 必要なのでございます。 71 00:08:39,231 --> 00:08:41,901 18歳は 立派な大人だ。 72 00:08:41,901 --> 00:08:44,503 では 女性のことも。 73 00:08:44,503 --> 00:08:47,840 そんなことを 言ってるのではない! 74 00:08:47,840 --> 00:08:51,510 あいつは 嘘で世の中を 渡っていけると思っている。 75 00:08:51,510 --> 00:08:57,850 あんなヤツが三枝家の当主に なったら 小作は皆 不幸になる。 76 00:08:57,850 --> 00:08:59,852 勘当しかない。 77 00:08:59,852 --> 00:09:03,152 では 三枝家の将来は どうなるのですか!? 78 00:09:07,526 --> 00:09:09,862 ただいま帰りました。 79 00:09:09,862 --> 00:09:13,198 どこへ行っていたのです? アトリエ。 80 00:09:13,198 --> 00:09:16,869 崇子先生に お紅茶を ごちそうになっていたのです。 81 00:09:16,869 --> 00:09:19,204 そう。 82 00:09:20,873 --> 00:09:25,173 (伝衛門)はい。 もしもし。 三枝です。 はい。 83 00:09:28,547 --> 00:09:34,247 はあ。 それは 私どもの娘の ひかるに 間違いないのですか? 84 00:09:35,888 --> 00:09:38,891 (伝衛門)ええ。 分かりました。 85 00:09:38,891 --> 00:09:42,491 わざわざ お知らせいただき ありがとうございました。 86 00:09:44,496 --> 00:09:46,498 何があったのです? 87 00:09:46,498 --> 00:09:52,504 ひかる 猛。 警察の世話に なったというのは 本当か? 88 00:09:52,504 --> 00:09:55,507 警察の世話!? あぁ! 89 00:09:55,507 --> 00:09:58,177 (お滝)奥さま! お母さま! (伝衛門)絹! 90 00:09:58,177 --> 00:10:00,877 猛。 医者だ。 はい! 91 00:10:04,516 --> 00:10:07,519 (ひかる)お母さま。 ごめんなさい。 92 00:10:07,519 --> 00:10:11,857 でも わたしは 人に 恥じるようなまねはしていません。 93 00:10:11,857 --> 00:10:13,857 それは 信じてください。 94 00:10:16,195 --> 00:10:19,495 ええ。 信じるわ。 95 00:10:22,534 --> 00:10:25,537 わたしが どうしても お芝居を見たくなって 96 00:10:25,537 --> 00:10:28,874 一人で 甲府まで行ったんです。 97 00:10:28,874 --> 00:10:35,474 一人で お芝居を見終えて 劇場を 出たところに 猛がやって来て…。 98 00:10:37,216 --> 00:10:43,916 猛は家に帰ろうって言ったんですが わたしがアトリエに誘ったんです。 99 00:10:45,491 --> 00:10:50,829 アトリエで 紅茶の支度を していたら 刑事が…。 100 00:10:50,829 --> 00:10:54,500 今度から 見たい お芝居とかあったら 101 00:10:54,500 --> 00:10:56,835 私や お父さまに 言ってください。 102 00:10:56,835 --> 00:10:59,835 女中をお供に付けますから。 103 00:11:01,840 --> 00:11:03,842 いいですね。 104 00:11:03,842 --> 00:11:07,442 はい。 分かりました。 105 00:11:09,515 --> 00:11:11,517 それにしても 猛は…。 106 00:11:11,517 --> 00:11:15,521 お母さま。 猛は 全然 悪くはありません。 107 00:11:15,521 --> 00:11:19,858 すべて わたしのわがままが 引き起こしたことです。 108 00:11:19,858 --> 00:11:22,194 二度としませんから 109 00:11:22,194 --> 00:11:25,894 猛を責めるようなことは しないでください。 110 00:11:27,533 --> 00:11:31,537 分かりました。 少し休みます。 111 00:11:31,537 --> 00:11:35,874 じゃあ わたしは 子供のころ お母さまに歌っていただいた 112 00:11:35,874 --> 00:11:38,210 子守歌を歌います。 113 00:11:38,210 --> 00:11:54,827 「童は見たり 野なかのバラ 清らに咲ける…」 114 00:11:54,827 --> 00:11:56,495 (伝衛門)事情は どうあれ 115 00:11:56,495 --> 00:11:59,832 腕ずくでも ひかるを 連れて帰るべきだった。 116 00:11:59,832 --> 00:12:04,503 支那事変以降 いろんな規制が 厳しくなった。 117 00:12:04,503 --> 00:12:11,510 ひかるの将来を考えれば もう少し 慎重になってほしかったな。 118 00:12:11,510 --> 00:12:14,179 申し訳ありませんでした。 119 00:12:14,179 --> 00:12:16,849 しかし 旦那さまの恩は 120 00:12:16,849 --> 00:12:19,852 一瞬たりとも 忘れたことはありません。 121 00:12:19,852 --> 00:12:26,525 猛。 お前だけは わしを裏切らんでくれよ。 122 00:12:26,525 --> 00:12:29,862 どんなことがあっても 裏切りません。 123 00:12:29,862 --> 00:12:35,162 誓ってくれるか? はい。 誓います。 124 00:12:38,203 --> 00:12:40,903 文彦は勘当した。 125 00:12:42,541 --> 00:12:46,545 三枝家の将来のことを 考え直さねばならん。 126 00:12:46,545 --> 00:12:48,547 しかし 今は 127 00:12:48,547 --> 00:12:52,551 灌漑工事を成功させることだけを 考えることにしよう。 128 00:12:52,551 --> 00:12:54,553 はい。 129 00:12:54,553 --> 00:12:59,224 おまんが いてくれて 本当によかったと思っている。 130 00:12:59,224 --> 00:13:03,228 今まで以上に おまんの力が頼りじゃ。 131 00:13:03,228 --> 00:13:07,232 ひかるの相手など 断っても 一向に かまわんぞ。 132 00:13:07,232 --> 00:13:09,932 はい。 そういたします。 133 00:13:20,913 --> 00:13:22,513 エイッ! 134 00:13:24,917 --> 00:13:28,587 <伝衛門の心には 文彦に対し 135 00:13:28,587 --> 00:13:34,987 激しい怒りと 裏切られた悲しみが 渦巻いていました> 136 00:13:39,865 --> 00:13:43,135 お花さん。 のどがカラカラだ。 何か飲ませてくれ。 137 00:13:43,135 --> 00:13:44,835 (お花)はい。 138 00:13:55,147 --> 00:13:57,482 (お花)はい。 どうぞ。 ありがとう。 139 00:13:57,482 --> 00:14:00,152 (お花)工事の予備調査って 大変なんでしょう? 140 00:14:00,152 --> 00:14:03,155 この暑さだし 皆 バテ気味なんだ。 141 00:14:03,155 --> 00:14:05,490 あっ そうだ。 あしたの弁当のおにぎりは 142 00:14:05,490 --> 00:14:07,159 梅干しと味噌に してくれないかな? 143 00:14:07,159 --> 00:14:08,859 はい。 分かりました。 144 00:14:21,840 --> 00:14:27,440 はい。 三枝ですが。 はい。 少しお待ちください。 145 00:14:29,514 --> 00:14:32,514 ひかるお嬢さま。 お電話です。 はい。 146 00:14:33,852 --> 00:14:36,521 どなたから? 古川知春さんからです。 147 00:14:36,521 --> 00:14:38,221 えっ。 148 00:14:44,463 --> 00:14:47,799 替わりました。 ひかるです。 149 00:14:47,799 --> 00:14:54,139 えっ? もう近くまで来ていると おっしゃっても 困ります。 150 00:14:54,139 --> 00:14:58,139 今日は ハイキングに 行く気分じゃないんです。 151 00:15:02,481 --> 00:15:04,483 分かりました。 152 00:15:04,483 --> 00:15:07,152 ごあいさつだけ させていただきます。 153 00:15:07,152 --> 00:15:10,155 村外れの一本杉で お待ちください。 154 00:15:10,155 --> 00:15:13,455 はい。 必ず参ります。 155 00:15:16,161 --> 00:15:20,499 お花。 出かけるわ。 (お花)では お供いたします。 156 00:15:20,499 --> 00:15:24,836 知春さんに ハイキングに誘われたけど お断りに行くだけよ。 でも。 157 00:15:24,836 --> 00:15:28,173 お断りするのに 誰かがいたら 気を悪くするわ。 158 00:15:28,173 --> 00:15:32,173 身支度だけ 手伝ってちょうだい。 はい。 159 00:15:41,787 --> 00:15:46,087 もしもし 三枝ですが。 ああ。 和尚さんですか。 160 00:16:08,480 --> 00:16:11,880 (文彦)お母さま。 文彦。 161 00:16:13,485 --> 00:16:17,155 (文彦)お母さま。 このとおりです。 許してください。 162 00:16:17,155 --> 00:16:21,827 文彦。 おやめなさい。 男としての 誇りを失ってはなりません。 163 00:16:21,827 --> 00:16:27,165 いいえ。 僕は 勘当を許して ほしいとは 一切 思いません。 164 00:16:27,165 --> 00:16:30,502 ただ 僕のしでかしたことが 165 00:16:30,502 --> 00:16:33,839 お母さまに 悲しい思いを させたことを 謝りたいのです。 166 00:16:33,839 --> 00:16:38,844 この何日か お母さまが どんな 気持ちで過ごされたかを考え 167 00:16:38,844 --> 00:16:43,144 自分を責めていたのです。 文彦。 168 00:16:44,783 --> 00:16:48,787 僕は 当分の間 この寺で修行します。 169 00:16:48,787 --> 00:16:53,458 お父さまに許していただけるか どうかは 考えないことにします。 170 00:16:53,458 --> 00:16:56,795 文彦。 本気で 言っているのですね? 171 00:16:56,795 --> 00:17:02,467 はい。 和尚に 己の欲を捨てろと 諭されました。 172 00:17:02,467 --> 00:17:08,140 自我を捨て できるだけ澄み切った 境地に近づけるようにと 173 00:17:08,140 --> 00:17:11,810 思っています。 分かりました。 174 00:17:11,810 --> 00:17:15,814 その境地に達するまで 見守って待ちましょう。 175 00:17:15,814 --> 00:17:18,817 長居しては 修行の妨げになります。 176 00:17:18,817 --> 00:17:20,819 着替えを持って参りました。 177 00:17:20,819 --> 00:17:23,488 猛。 はい。 ここに。 178 00:17:23,488 --> 00:17:26,491 すまないね。 あとで 宿坊に運んでくれないか? 179 00:17:26,491 --> 00:17:28,160 かしこまりました。 180 00:17:28,160 --> 00:17:30,495 お酒は 和尚さんに 召し上がってもらいなさい。 181 00:17:30,495 --> 00:17:32,164 はい。 そう伝えます。 182 00:17:32,164 --> 00:17:36,501 私は せっかくですから お墓参りをして帰ります。 183 00:17:36,501 --> 00:17:39,838 修行に お励みなさい。 184 00:17:39,838 --> 00:17:41,838 はい。 185 00:17:54,453 --> 00:17:59,453 猛。 荷物 そこ置いて 灰皿 持って来てくれ。 はい。 186 00:18:01,460 --> 00:18:04,129 そろそろ おふくろが 来るころだと思って 187 00:18:04,129 --> 00:18:06,829 まじめに掃除して見せたんだ。 188 00:18:10,469 --> 00:18:12,169 疲れたよ。 189 00:18:17,809 --> 00:18:22,409 しかし 俺とお前のどっちが 悪人だと思う? 190 00:18:25,150 --> 00:18:30,822 世間は 皆 お前が善人で 俺が悪人だと思うだろうな。 191 00:18:30,822 --> 00:18:33,492 お前は すべて うまく立ち回り 192 00:18:33,492 --> 00:18:36,892 親父を すっかり 信用させちまった。 193 00:18:38,830 --> 00:18:41,130 大した悪人だよ。 194 00:18:44,102 --> 00:18:49,107 俺が こんなふうになったのも すべて お前のせいだ。 195 00:18:49,107 --> 00:18:51,776 お前が三枝の家に来てから 196 00:18:51,776 --> 00:18:55,113 親父は 何かにつけて 俺とお前とを比較した。 197 00:18:55,113 --> 00:18:59,113 長男に生まれてきた俺の気持ちが お前には分かるか!? 198 00:19:02,454 --> 00:19:11,463 勉強も お前はガリ勉をして 高等小学校で1番の成績をあげた。 199 00:19:11,463 --> 00:19:14,163 俺も 一生懸命やった。 200 00:19:16,134 --> 00:19:19,434 なのに はるかに及ばなかった! 201 00:19:21,139 --> 00:19:27,145 なのに 中学に上がろうとせず 家の使用人になることを選んだ。 202 00:19:27,145 --> 00:19:31,445 その謙虚さに 親父は ますますほれ込んだ。 203 00:19:35,487 --> 00:19:37,489 俺は お前の野心を知っているぞ。 204 00:19:37,489 --> 00:19:40,492 野心なんかありません。 用がなければ 帰ります。 205 00:19:40,492 --> 00:19:44,429 ひかるをだまし そのまま婿に なれると思ったら 大間違いだ。 206 00:19:44,429 --> 00:19:46,765 そんなこと 一度だって 考えたことありません。 207 00:19:46,765 --> 00:19:50,435 お前は 親父が気まぐれで 拾ってきた みなしごなんだ。 208 00:19:50,435 --> 00:19:54,835 それを忘れんな。 忘れたことはありません。 209 00:19:58,777 --> 00:20:04,783 もう夏休みだし 俺は ここで しばらく骨休みをする。 210 00:20:04,783 --> 00:20:07,786 親父に言いたければ 好きにしろ。 211 00:20:07,786 --> 00:20:11,456 文彦さん。 俺に説教でもするつもりか? 212 00:20:11,456 --> 00:20:15,794 これ以上 旦那さまも奥さまも 悲しませるようなことは 213 00:20:15,794 --> 00:20:17,394 おやめください。 214 00:20:19,130 --> 00:20:20,830 ふざけんな! 215 00:20:26,805 --> 00:20:30,809 何も 許してやってくれと 言ってるのではございません。 216 00:20:30,809 --> 00:20:33,478 寺へ行って 文彦の様子を 見てくださいと 217 00:20:33,478 --> 00:20:35,146 お願いしてるの…。 くどい! 218 00:20:35,146 --> 00:20:38,817 たった4、5日の修行で 人間が変わったりするか。 219 00:20:38,817 --> 00:20:41,753 お前のそういう甘いところが 文彦をダメにしてるんだ。 220 00:20:41,753 --> 00:20:43,353 まだ分からんのか。 221 00:20:45,090 --> 00:20:50,428 猛。 お前からも 文彦の様子を お話しして。 お願いします。 222 00:20:50,428 --> 00:20:54,432 (伝衛門)どうだ 猛。 お前の目に 文彦は どういうふうに映る? 223 00:20:54,432 --> 00:20:58,436 言ってみろ。 はい。 224 00:20:58,436 --> 00:21:03,108 (伝衛門)どうだ? 奥さまのおっしゃるとおりです。 225 00:21:03,108 --> 00:21:06,808 文彦は 当分 寺で 修行をしたいと申しております。 226 00:21:11,449 --> 00:21:14,786 文彦の決意は 本物だと思うか? 猛。 227 00:21:14,786 --> 00:21:16,454 本物だと思います。 228 00:21:16,454 --> 00:21:21,459 今度こそ本気なのです あの子は。 信じてやってくださいませ。 229 00:21:21,459 --> 00:21:25,859 (雷鳴) 230 00:21:27,465 --> 00:21:29,865 嵐になるな。 231 00:21:35,473 --> 00:21:39,811 (伝衛門)どうした 猛? 失礼します。 232 00:21:39,811 --> 00:21:42,111 (絹)どうしたのでしょう? 233 00:21:43,748 --> 00:21:45,417 (雷鳴) 234 00:21:45,417 --> 00:21:47,117 こっちよ。 235 00:21:53,425 --> 00:21:55,425 (知春)真っ暗だ。 236 00:22:02,767 --> 00:22:06,767 あっ 火が…。 大丈夫だ。 237 00:22:38,803 --> 00:22:44,809 ひかるさん。 ぬれたのを ふかないと 風邪をひいてしまう。 238 00:22:44,809 --> 00:22:46,809 ありがとう。 239 00:22:52,150 --> 00:22:56,450 しかし 急に天気が変わったね。 240 00:22:58,156 --> 00:23:00,492 ええ。 241 00:23:00,492 --> 00:23:04,496 ハイキングに出かけなくて よかったね。 242 00:23:04,496 --> 00:23:09,167 行っていれば どうなっていたか。 243 00:23:09,167 --> 00:23:11,503 考えただけで ぞっとするよ。 244 00:23:20,178 --> 00:23:24,878 もう一度 考え直してくれないか? 245 00:23:27,519 --> 00:23:31,856 ですから おつきあいはできません。 246 00:23:31,856 --> 00:23:34,192 何度おっしゃっても 同じです。 247 00:23:34,192 --> 00:23:36,194 俺は真剣なんだ! 248 00:23:36,194 --> 00:23:38,196 (雷鳴) 249 00:23:38,196 --> 00:23:41,496 そんな目で見るなよ。 250 00:23:43,802 --> 00:23:45,470 来ないで。 251 00:23:45,470 --> 00:23:48,473 怖がらなくてもいい。 いや! 来ないで! 252 00:23:48,473 --> 00:23:52,143 いや! やめて! いや! うるさい! 253 00:23:52,143 --> 00:23:56,147 やめて! やめて! 254 00:23:56,147 --> 00:24:00,819 いや! 助けて! 本気で好きなんだ! 255 00:24:00,819 --> 00:24:05,490 やめて! いや! いや! いや! 256 00:24:05,490 --> 00:24:08,159 やめろ! 猛! 257 00:24:08,159 --> 00:24:09,859 離れろよ! 258 00:24:12,497 --> 00:24:14,499 俺を殴るつもりか? 259 00:24:14,499 --> 00:24:18,169 野良犬とは 立場が違うことを忘れるな。 260 00:24:18,169 --> 00:24:23,508 俺を殴れば 山梨には いられなくなるぞ。 261 00:24:23,508 --> 00:24:28,908 お前は使用人。 俺とは違うんだよ! 262 00:24:30,515 --> 00:24:33,518 おら! おら! 猛! やめて! 263 00:24:33,518 --> 00:24:35,186 おら! やめて! 264 00:24:35,186 --> 00:24:38,857 おら! おら! やめて! 265 00:24:38,857 --> 00:24:43,857 おら! おら! やめて! やめてー! 266 00:24:47,866 --> 00:24:50,201 一生 わたしを守ってくれる? 267 00:24:50,201 --> 00:24:51,870 はい。 268 00:24:51,870 --> 00:24:54,539 (お花)お嬢さまを好きになったら 不幸になるだけよ。 269 00:24:54,539 --> 00:24:56,541 身分は越えられないのよ。 270 00:24:56,541 --> 00:24:58,877 猛を好きになっては いけないのですか? 271 00:24:58,877 --> 00:25:00,545 (絹)いけません! どうしてですか? 272 00:25:00,545 --> 00:25:05,216 (崇子)あなたたちの恋が真実なら 二人の心を一つにして貫くのよ。 273 00:25:05,216 --> 00:25:07,886 ・~ 274 00:25:07,886 --> 00:25:09,554 むしゃぶりつきなさい。 275 00:25:09,554 --> 00:25:11,554 俺とお前は 同じ人間だ。