1 00:02:47,486 --> 00:02:49,355 2 00:02:49,355 --> 00:02:57,655 ♬~ 3 00:02:59,365 --> 00:03:03,703 ♬『Delight of my love』 4 00:03:03,703 --> 00:03:23,055 ♬~ 5 00:03:23,055 --> 00:03:43,075 ♪ 6 00:03:43,075 --> 00:04:03,029 ♪ 7 00:04:03,029 --> 00:04:17,376 ♪ 8 00:04:17,376 --> 00:04:27,376 ♪ 9 00:04:29,355 --> 00:04:33,359 (伝衛門)わざわざ この三枝家に 何のご用ですかな? 10 00:04:33,359 --> 00:04:39,031 (勇作)昨夜は ウチの事務所の者が 失礼いたしました。 11 00:04:39,031 --> 00:04:42,368 小作人の借金ごときに 三枝家のご当主に➡ 12 00:04:42,368 --> 00:04:45,968 お出ましいただくとは 恐縮いたしております。 13 00:04:48,975 --> 00:04:53,646 (伝衛門)猛。 大河原さんに 腰掛けを。 14 00:04:53,646 --> 00:04:55,346 (猛)はい。 15 00:05:08,995 --> 00:05:12,665 昨夜も 私がお相手できれば よかったんですが➡ 16 00:05:12,665 --> 00:05:17,336 会社組織には それぞれ担当の係 というものがありまして➡ 17 00:05:17,336 --> 00:05:19,336 融通の利かんもんです。 18 00:05:21,674 --> 00:05:24,010 それで ご用件は? 19 00:05:24,010 --> 00:05:27,346 三枝さんが 小作人たちの借金を➡ 20 00:05:27,346 --> 00:05:30,683 肩代わりしてくださるというのは まことでございますか? 21 00:05:30,683 --> 00:05:35,354 小作人の借金は 三枝家の借金と同じ。 22 00:05:35,354 --> 00:05:39,692 はあ。 さすがは名門とうたわれた三枝家。 23 00:05:39,692 --> 00:05:45,297 成り上がりの大河原とは 一回りも二回りも 器が違う! 24 00:05:45,297 --> 00:05:49,597 器ではなくて 志が違うのです。 25 00:06:00,646 --> 00:06:03,346 借用書の原本です。 26 00:06:06,318 --> 00:06:09,989 元金の返済だけで 結構でございます。 27 00:06:09,989 --> 00:06:13,325 元金だけ? 十一の利息は? 28 00:06:13,325 --> 00:06:17,997 噂では 南方に進出されるとか。 それも白部村の発展のため➡ 29 00:06:17,997 --> 00:06:20,666 私財をなげうって取り組んで いらっしゃると聞いております。 30 00:06:20,666 --> 00:06:22,334 (伝衛門)はい。 31 00:06:22,334 --> 00:06:25,004 私 それを聞いて 感動いたしました。 32 00:06:25,004 --> 00:06:27,006 (伝衛門)「感動」? 感動です。 33 00:06:27,006 --> 00:06:30,009 村のため 民のため ひいては国家のために➡ 34 00:06:30,009 --> 00:06:31,677 そこまで尽くされる⇒ 35 00:06:31,677 --> 00:06:34,013 三枝さんの志にです。 36 00:06:34,013 --> 00:06:36,015 そんな三枝さんから 利息など取り立てては➡ 37 00:06:36,015 --> 00:06:38,017 私 罰が当たります。 38 00:06:38,017 --> 00:06:39,685 しかし 利息は利息…。 39 00:06:39,685 --> 00:06:42,021 いいえ。 頂くわけには まいりません。 40 00:06:42,021 --> 00:06:44,721 わたしに恥をかかせんでください。 41 00:06:48,294 --> 00:06:52,294 分かりました。 そこまで おっしゃるのなら 遠慮なく。 42 00:07:05,644 --> 00:07:08,314 これで 借金はすべて帳消しです。 43 00:07:08,314 --> 00:07:10,983 ご好意 痛み入ります。 44 00:07:10,983 --> 00:07:17,990 ぜひ 事業に成功してください。 わたしも陰ながら 応援してます。 45 00:07:17,990 --> 00:07:22,328 これは 私個人の気持ちです。 三枝家の新しい門出に➡ 46 00:07:22,328 --> 00:07:24,663 わたしからの はなむけだと思って お受け取りください。 47 00:07:24,663 --> 00:07:27,333 それは困る。 いいじゃないですか。 48 00:07:27,333 --> 00:07:29,001 たとえ これぐらいでも➡ 49 00:07:29,001 --> 00:07:36,342 三枝家の力になれると 喜んでるんですから。 では 失礼。 50 00:07:36,342 --> 00:07:38,010 (伝衛門)お待ちください。 大河原さん。 51 00:07:38,010 --> 00:07:40,410 (絹)あなた。 そんなもの もらうわけには…。 52 00:07:44,283 --> 00:07:46,619 (ひかる)困ります!⇒ 53 00:07:46,619 --> 00:07:48,919 こんなことされては困ります。 54 00:07:50,623 --> 00:07:52,625 (勇作)そんなに わたしの金が嫌ですか? 55 00:07:52,625 --> 00:07:54,325 離してください! 56 00:08:03,302 --> 00:08:06,639 今に 金が必要になって➡ 57 00:08:06,639 --> 00:08:09,939 わたしに頭を下げるときが くるかもしれない。 58 00:08:11,977 --> 00:08:14,977 そのときになって 後悔しても 遅い。 59 00:08:21,987 --> 00:08:27,993 お金は返したわ。 でも わたし 何だか怖い。 60 00:08:27,993 --> 00:08:29,693 お嬢さま…。 61 00:08:33,332 --> 00:08:38,671 お父さま お母さま。 三枝家は 本当に大丈夫なんでしょうか? 62 00:08:38,671 --> 00:08:41,674 新しい事業に手を付けるより 今までの暮らしを➡ 63 00:08:41,674 --> 00:08:44,009 続けていったほうが いいのではないですか? 64 00:08:44,009 --> 00:08:46,278 (伝衛門)計画は もう動き始めておる。 65 00:08:46,278 --> 00:08:49,281 小作人たちの借金も 清算しました。➡ 66 00:08:49,281 --> 00:08:52,284 もう 何も心配することは ありません。 でも…。 67 00:08:52,284 --> 00:08:54,620 (猛)奥さまの言うとおりです。 68 00:08:54,620 --> 00:08:58,290 大河原には 二度と 三枝家の敷居は またがせません。 69 00:08:58,290 --> 00:09:00,626 (伝衛門)心配するな ひかる。 70 00:09:00,626 --> 00:09:03,963 これで 銀行の融資が下りて 船を手に入れれば➡ 71 00:09:03,963 --> 00:09:06,966 すべて順調に動き始める。 そうじゃな 猛? 72 00:09:06,966 --> 00:09:08,666 はい。 73 00:09:10,302 --> 00:09:17,309 猛。 約束して。 何があっても三枝家を守るって。 74 00:09:17,309 --> 00:09:18,978 わたしを守るって。 75 00:09:18,978 --> 00:09:21,647 約束します。 どんなことがあっても➡ 76 00:09:21,647 --> 00:09:27,319 自分は三枝家を お嬢さまを お守りします。 77 00:09:27,319 --> 00:09:28,919 ありがとう。 猛。 78 00:09:37,329 --> 00:09:39,331 (静子)何で利息を 取り立てなかったんだい? 79 00:09:39,331 --> 00:09:41,667 元金だけじゃ もうけに ならないじゃないか。 80 00:09:41,667 --> 00:09:44,003 金貸しは 慈善事業で やってんじゃないんだよ。➡ 81 00:09:44,003 --> 00:09:46,939 分かってんのかい 勇作!? うるさい! 82 00:09:46,939 --> 00:09:48,607 俺には俺の考えがあって やってるんだ。 83 00:09:48,607 --> 00:09:50,609 横から よけいな口 挟まないでくれ。 84 00:09:50,609 --> 00:09:52,278 お高くとまってる三枝を➡ 85 00:09:52,278 --> 00:09:54,280 徹底的にやり込める 機会だったじゃないか。 86 00:09:54,280 --> 00:09:57,616 それを利息も取らないなんて あきれて ものも言えないよ。 87 00:09:57,616 --> 00:09:59,285 (政之助)いいかげんにしないか。 静子。 88 00:09:59,285 --> 00:10:02,288 あんたは黙ってて! 三枝を土下座させて➡ 89 00:10:02,288 --> 00:10:05,624 借用書の束で 鼻っ面 ひっぱたいてやればよかったんだ。 90 00:10:05,624 --> 00:10:08,627 お前なら それくらいのことは やってくれると思ってたけどね。 91 00:10:08,627 --> 00:10:10,629 土下座させて 何になる? 92 00:10:10,629 --> 00:10:12,631 鼻っ面ひっぱたいて 何になるんだよ? 93 00:10:12,631 --> 00:10:15,301 胸のつかえが すーっと下りるじゃないか。 94 00:10:15,301 --> 00:10:19,305 せいぜい そんなところだろうな。 母さんの考えてるのは。 95 00:10:19,305 --> 00:10:23,309 俺は 先の先を考えて 行動してるんだ。 96 00:10:23,309 --> 00:10:26,979 何だって? いいから黙ってろ。 97 00:10:26,979 --> 00:10:31,317 そのうち 母さんのうっぷんを いっぺんに晴らさせてやるよ。 98 00:10:31,317 --> 00:10:34,987 母さんの目は 節穴じゃないよ。 お前は あのひかるとかいう➡ 99 00:10:34,987 --> 00:10:38,324 娘の前で いい格好がしたかったんだろ?⇒ 100 00:10:38,324 --> 00:10:42,328 この際だから忠告しておくけど 親心だと思って聞いておくれ。 101 00:10:42,328 --> 00:10:46,932 聞きたかないね。 あの娘は 一筋縄じゃいかないよ。 102 00:10:46,932 --> 00:10:50,269 外見がきれいな分 中身はタチが悪い。 103 00:10:50,269 --> 00:10:54,606 お嬢さまぶってるが あれは男を惑わせ➡ 104 00:10:54,606 --> 00:10:57,276 最後には破滅させる女だ。 105 00:10:57,276 --> 00:11:00,612 ハハハハハ。 何がおかしいの!? 106 00:11:00,612 --> 00:11:04,950 母さんに言われなくても 女なんて 星の数ほど知ってるさ。 107 00:11:04,950 --> 00:11:10,622 その自信が墓穴を掘るんだよ。 女っていう生き物はね➡ 108 00:11:10,622 --> 00:11:16,628 男が思っているよりも ずっとずっと 欲深いんだ。 気をお付け。 109 00:11:16,628 --> 00:11:21,633 好きな女と破滅すれば 本望なんじゃないか? 110 00:11:21,633 --> 00:11:25,304 勇作。 お前 本気かい? 111 00:11:25,304 --> 00:11:31,643 ああ。 本気だよ。 ひかるには そう思わせる何かがある。 112 00:11:31,643 --> 00:11:35,647 あんな女 会ったことがない。 お前…。 113 00:11:35,647 --> 00:11:41,320 親父。 俺はこの年になって 女にほれるっていうことが➡ 114 00:11:41,320 --> 00:11:44,590 どういうことか 初めて分かったよ。 115 00:11:44,590 --> 00:11:46,290 (政之助)勇作…。 116 00:11:47,926 --> 00:11:51,926 殺してやりたいほど ほれるってことをな。 117 00:11:53,599 --> 00:11:56,899 ♪ 118 00:11:58,604 --> 00:12:02,941 これは大河原商会の借用証書じゃ。 このために何人かの小作が➡ 119 00:12:02,941 --> 00:12:05,944 夜逃げしたのは おまんらも知ってると思う。 120 00:12:05,944 --> 00:12:09,948 この中にも まだ借金で 苦しんでいる者がおるはずじゃ。 121 00:12:09,948 --> 00:12:12,948 だが もう心配はいらん。 このとおりじゃ。 122 00:12:14,953 --> 00:12:16,955 (小作人たち)ああっ! 123 00:12:16,955 --> 00:12:19,625 (猛)小作の借金は 三枝家の借金だと➡ 124 00:12:19,625 --> 00:12:22,294 旦那さまが すべて 肩代わりしてくださったんだ。 125 00:12:22,294 --> 00:12:25,297 おまんらが これほどまでに 追い詰められていたとは➡ 126 00:12:25,297 --> 00:12:26,965 わしも知らなかった。 127 00:12:26,965 --> 00:12:31,303 地主として申し訳ないと思う。 許してくれ。 128 00:12:31,303 --> 00:12:32,971 (小作人)旦那さま! 129 00:12:32,971 --> 00:12:37,309 (小作人)申し訳が立たねえのは わしらのほうだ! 130 00:12:37,309 --> 00:12:39,645 (伝衛門)もう よい。 もう よいのじゃ。 131 00:12:39,645 --> 00:12:42,648 今 進めている 海運事業がうまくいけば➡ 132 00:12:42,648 --> 00:12:45,317 おまんらの暮らしも もっと よくなるはずじゃ。 133 00:12:45,317 --> 00:12:46,985 (小作人)海運事業? 134 00:12:46,985 --> 00:12:50,656 そうじゃ。 フィリピン シンガポール ボルネオ スマトラ。 135 00:12:50,656 --> 00:12:54,326 南方には 無尽蔵の鉱物資源が眠っている。 136 00:12:54,326 --> 00:12:57,663 それを船で日本に運搬するのじゃ。 137 00:12:57,663 --> 00:13:01,667 みんな これを見てくれ。 (小作人たち)おおっ。 138 00:13:01,667 --> 00:13:06,004 三枝家の いや みんなの船だぞ。 139 00:13:06,004 --> 00:13:09,007 いよいよ 新しい事業が動きだすんだ。 140 00:13:09,007 --> 00:13:12,010 (伝衛門)そこで おまんたちに 貸してある土地を担保に➡ 141 00:13:12,010 --> 00:13:15,013 銀行から融資を受けようと思う。➡ 142 00:13:15,013 --> 00:13:19,351 異議のある者は ここで 申し出てくれ。 遠慮はいらん。 143 00:13:19,351 --> 00:13:23,689 (治平)みんな! 旦那さまの ご好意を無にしねえで➡ 144 00:13:23,689 --> 00:13:27,693 力を合わせて新しい事業に 協力しようじゃねえか! 145 00:13:27,693 --> 00:13:29,695 (徹)旦那さまの言うことに まちがいはねえ。 146 00:13:29,695 --> 00:13:32,030 俺を南方へ連れてってください! 147 00:13:32,030 --> 00:13:34,032 (小作人)俺も! (小作人)俺も! 148 00:13:34,032 --> 00:13:37,369 なあ みんな! 新天地へ渡って 新しい白部村を開拓するべ! 149 00:13:37,369 --> 00:13:40,372 (小作人)おお! (小作人)そうだ! 150 00:13:40,372 --> 00:13:44,309 旦那さま…。 この事業は きっとうまくいく。 151 00:13:44,309 --> 00:13:48,647 きっと うまくいく。 はい。 自分も そう思います。 152 00:13:48,647 --> 00:13:50,315 文彦は? 153 00:13:50,315 --> 00:13:53,615 (お滝)それが さきほどまでは いらしたんですが…。 154 00:13:57,322 --> 00:13:59,658 (文彦)海運業を 起こすにあたっても➡ 155 00:13:59,658 --> 00:14:02,327 僕には ひと言の相談も なかったんですよ。 156 00:14:02,327 --> 00:14:06,999 それなのに いまさら呼びつけて 僕にどうしろっていうんだ。 157 00:14:06,999 --> 00:14:11,003 まあ いいじゃないですか。 文彦さんには 才能がある。 158 00:14:11,003 --> 00:14:14,339 たった一人で 文学の道を 切り開いていくんでしょう? 159 00:14:14,339 --> 00:14:16,008 今に お父さまだって➡ 160 00:14:16,008 --> 00:14:18,343 あなたの価値に 気づくときがきますよ。 161 00:14:18,343 --> 00:14:24,349 自分のことよりも 僕は 三枝の家のことが心配なんです。 162 00:14:24,349 --> 00:14:27,686 こんな田舎にいちゃあ 分からないかもしれないけど➡ 163 00:14:27,686 --> 00:14:31,690 東京じゃあ ミッドウェーで 日本が負けたらしい…。 164 00:14:31,690 --> 00:14:35,027 そういうことは 口が裂けても言わないほうがいい。 165 00:14:35,027 --> 00:14:37,696 分かってますよ。 166 00:14:37,696 --> 00:14:42,701 でも こんな時期に新天地を 目指すなんて 危険が多すぎます。 167 00:14:42,701 --> 00:14:45,971 そうは思いませんか? 大丈夫でしょう。 168 00:14:45,971 --> 00:14:48,974 あなたのお父さまは 先見の明がある お方ですから。 169 00:14:48,974 --> 00:14:51,643 ハハハハ。 大河原さん。 170 00:14:51,643 --> 00:14:55,943 万一のときは 父をよろしくお願いいたします。 171 00:14:58,984 --> 00:15:02,988 わたしでよかったら いつでも。 172 00:15:02,988 --> 00:15:08,994 本当ですか? ああ よかった。 これで安心だ。 173 00:15:08,994 --> 00:15:12,998 僕は あなたを 心から尊敬しますよ。 174 00:15:12,998 --> 00:15:15,334 大河原さん。 ありがとう。 175 00:15:15,334 --> 00:15:19,004 そんなことより あなたの二作目はどうなってます? 176 00:15:19,004 --> 00:15:21,006 出版するんだったら いくらでも援助しますよ。 177 00:15:21,006 --> 00:15:25,677 ホントですか? 実は ここに原稿があるんです。 178 00:15:25,677 --> 00:15:27,679 編集者は いいと言ってくれてるんですが➡ 179 00:15:27,679 --> 00:15:29,348 なかなか出版するまでは…。 180 00:15:29,348 --> 00:15:32,948 ぜひ 読んでみて いただけませんか? はあ。 181 00:15:42,694 --> 00:15:48,634 ほう。 これは すごい。 原稿の間から 文彦さんの才能が➡ 182 00:15:48,634 --> 00:15:53,305 キラキラ キラキラ こぼれ落ちるようだ。 ハハハハ。 183 00:15:53,305 --> 00:15:56,308 ハハハ。 ハハハハ。 184 00:15:56,308 --> 00:16:00,312 (タマミ)あら。 楽しそうね。 わたしも仲間に入れてくれない? 185 00:16:00,312 --> 00:16:05,317 ほら。 こちらがいつもお話してる 小説家の三枝先生だ。 186 00:16:05,317 --> 00:16:07,317 (タマミ)まあ すごい。 187 00:16:09,321 --> 00:16:14,660 先生。 わたしを 小説に書いてくださらない? 188 00:16:14,660 --> 00:16:18,664 僕が 小説に君を書くとしたら➡ 189 00:16:18,664 --> 00:16:24,002 もっと君のことを 知らなければならない。 ウフフ。 190 00:16:24,002 --> 00:16:26,402 (タマミ)アハハハ。 191 00:16:28,006 --> 00:16:36,014 ♪ 192 00:16:36,014 --> 00:16:39,017 (末)いよいよ 船の買い付けに 行かれるだね。 旦那さま。 193 00:16:39,017 --> 00:16:40,686 (竹)うまくいくといいだがな。 194 00:16:40,686 --> 00:16:44,289 (お滝)大丈夫だよ。 銀行がついてるんだから。 195 00:16:44,289 --> 00:16:46,958 (絹)朝食を召し上がっていただく 時間がありません。 196 00:16:46,958 --> 00:16:49,961 途中で食べやすいように 握り飯に しておくれ。 (お滝)はい。 197 00:16:49,961 --> 00:16:53,632 もうすぐ出発ですから 頼みますよ。 (お滝)はい。 198 00:16:53,632 --> 00:16:55,634 ≪(戸の開く音) 文彦! 199 00:16:55,634 --> 00:16:59,304 お母さま。 お水… お水ください。 200 00:16:59,304 --> 00:17:03,304 もう 頭がガンガンして 気持ちが悪い。 201 00:17:06,311 --> 00:17:08,611 (文彦)お水ください。 お母さま…。 202 00:17:10,649 --> 00:17:12,349 うわっ! 203 00:17:18,356 --> 00:17:20,692 (文彦)ハクション! 文彦。 204 00:17:20,692 --> 00:17:24,029 (文彦)やめてください お母さま。 僕は横浜へなんか 行きません。 205 00:17:24,029 --> 00:17:26,031 おまんが行かなくて どうするのです? 206 00:17:26,031 --> 00:17:29,034 何もしなくていいから お父さまに ついて横浜へ行きなさい。 207 00:17:29,034 --> 00:17:33,038 お兄さま。 また朝帰りなのね。 こんな大事なときに。 208 00:17:33,038 --> 00:17:35,040 (絹)ひかる。 手伝って。 文彦も横浜へ行きます。 209 00:17:35,040 --> 00:17:36,708 はい。 210 00:17:36,708 --> 00:17:40,378 行かないったら 行かないんだよ。 もう ほっといてくれよ! 211 00:17:40,378 --> 00:17:43,648 猛が行くんだから 何も 僕が行く必要ないでしょう!?➡ 212 00:17:43,648 --> 00:17:45,317 お父さまだって 僕なんかより➡ 213 00:17:45,317 --> 00:17:46,985 猛のほうが いいに決まってるんだから。 214 00:17:46,985 --> 00:17:49,988 猛は番頭。 お前は三枝家の跡取り息子です。 215 00:17:49,988 --> 00:17:51,656 重みが違います。 216 00:17:51,656 --> 00:17:54,326 お母さま。 ほっておきましょう。 217 00:17:54,326 --> 00:17:57,996 こんな子供みたいに だだをこねて ひがみっぽいお兄さまなんて➡ 218 00:17:57,996 --> 00:17:59,998 かえって 足手まといになるだけだわ。 219 00:17:59,998 --> 00:18:03,335 「ひがみっぽい」だと? そうじゃありませんか。 220 00:18:03,335 --> 00:18:07,005 何かっていうと 「猛が 猛が」って へそを曲げて。 221 00:18:07,005 --> 00:18:10,008 猛は 寝る間も惜しんで 働いてるのよ。 222 00:18:10,008 --> 00:18:14,012 学校にだって行けなかったけど 独学で勉強したの。 223 00:18:14,012 --> 00:18:17,349 三枝家のために 本当によくやってくれてるわ。 224 00:18:17,349 --> 00:18:20,352 お兄さまは 猛のそういうところを 知らないでしょう? 225 00:18:20,352 --> 00:18:23,021 ひかる。 もう いいわ。 下がりなさい。 226 00:18:23,021 --> 00:18:24,689 でも! (文彦)親父の命令に➡ 227 00:18:24,689 --> 00:18:28,389 ぺこぺこ従ってれば 三枝家のためになるのか? 228 00:18:30,028 --> 00:18:31,696 まちがってることは まちがってると➡ 229 00:18:31,696 --> 00:18:34,699 はっきり言うほうが 三枝家のためなんじゃないのか? 230 00:18:34,699 --> 00:18:37,035 お父さまが まちがってるって言うの? 231 00:18:37,035 --> 00:18:40,038 (文彦)こういう状況下で 新規の事業を立ち上げることが➡ 232 00:18:40,038 --> 00:18:43,975 どんなに危険なことか お前には分からんのだ。 233 00:18:43,975 --> 00:18:47,312 本気で新天地なんか 信じてるとしたら お笑いだね。 234 00:18:47,312 --> 00:18:49,314 (絹)文彦。 235 00:18:49,314 --> 00:18:52,317 お父さまのおっしゃることを 信じなさい。⇒ 236 00:18:52,317 --> 00:18:55,317 それが できないんだったら 三枝家の人間ではありません! 237 00:19:09,668 --> 00:19:12,337 お前の顔など もう 見たくはない。 238 00:19:12,337 --> 00:19:16,637 東京なり甲府へなり 好きなところへ行ってしまえ。 239 00:19:19,010 --> 00:19:24,683 お父さま! もし… もし 失敗したら どうするんですか? 240 00:19:24,683 --> 00:19:28,983 大崎さんと組んだ仕事で 失敗したことは一度もない。 241 00:19:34,025 --> 00:19:39,425 失敗を恐れる者は 未熟者と相場は決まっておる。 242 00:19:43,635 --> 00:19:45,335 (ひかる)猛。 243 00:19:49,975 --> 00:19:52,310 行ってまいります。 244 00:19:52,310 --> 00:19:55,981 お父さまのこと くれぐれも頼みます。 245 00:19:55,981 --> 00:19:57,681 安心してください。 246 00:20:00,652 --> 00:20:03,652 お守り。 247 00:20:05,657 --> 00:20:07,993 覚えてる? 248 00:20:07,993 --> 00:20:12,693 8年前 横浜の海で お前が わたしに言ってくれた言葉。 249 00:20:18,336 --> 00:20:21,339 (猛)自分も 仕事に打ち込みます。➡ 250 00:20:21,339 --> 00:20:24,939 誰にも後ろ指をさされない りっぱな男になってみせます 251 00:20:27,345 --> 00:20:29,681 (ひかる)猛… 252 00:20:29,681 --> 00:20:31,681 それまで 待っていてください 253 00:20:42,961 --> 00:20:47,632 わたし うれしい。 お前が努力をして➡ 254 00:20:47,632 --> 00:20:51,970 お父さまを支えてくれる人間に なってくれて。 255 00:20:51,970 --> 00:20:57,370 お嬢さま。 今が頑張りどころなんです。 256 00:20:59,311 --> 00:21:01,311 これを やり遂げれば…。 257 00:21:02,981 --> 00:21:13,325 (バイオリンの音色) 258 00:21:13,325 --> 00:21:23,335 (バイオリンの音色) 259 00:21:23,335 --> 00:21:27,672 (拍手) 260 00:21:27,672 --> 00:21:31,009 (要助)今日のひかる先生 いつもと違ってた。 261 00:21:31,009 --> 00:21:35,013 (昭子)わたし 何だか泣きたくなっちゃった。 262 00:21:35,013 --> 00:21:37,413 ありがとう。 うれしいわ。 263 00:21:41,019 --> 00:21:43,288 どうしたの 健次君? 264 00:21:43,288 --> 00:21:45,623 先生の演奏 退屈だった? 265 00:21:45,623 --> 00:21:49,294 こいつ もうすぐ南方へ 行っちゃうから べそかいてんだよ。 266 00:21:49,294 --> 00:21:50,962 ええ? 267 00:21:50,962 --> 00:21:52,630 (健次)父ちゃんと 母ちゃんと いっしょに➡ 268 00:21:52,630 --> 00:21:55,633 新天地へ行くんだ。 本物の船に乗るんだ。 269 00:21:55,633 --> 00:22:00,305 でも 俺 みんなと別れるのが…。 270 00:22:00,305 --> 00:22:05,310 そう。 大丈夫よ。 271 00:22:05,310 --> 00:22:08,313 仕事がうまくいったら また帰って来れるんだから。 272 00:22:08,313 --> 00:22:11,649 先生も そのうち会いに行くわ。 ねっ。 273 00:22:11,649 --> 00:22:16,321 ホント? うん。 先生 嘘ついたことある? 274 00:22:16,321 --> 00:22:18,621 はい。 指切りげんまん。 275 00:22:23,328 --> 00:22:25,663 ≪(戸の開く音) 276 00:22:25,663 --> 00:22:28,333 大河原さん。 こんにちは。 ひかるさん。 277 00:22:28,333 --> 00:22:31,336 今日は あなたに お願いがあって やって来ました。 278 00:22:31,336 --> 00:22:35,673 こちらは 甲府連隊の岩原中佐です。 279 00:22:35,673 --> 00:22:38,009 (岩原)岩原です。 280 00:22:38,009 --> 00:22:41,679 申し訳ありません。 わたし 用事がありますので。 281 00:22:41,679 --> 00:22:44,682 あっ いや。 お時間は取らせません。 壮行会への ご出席の➡ 282 00:22:44,682 --> 00:22:48,353 返事さえいただければ すぐに退散いたします。 283 00:22:48,353 --> 00:22:50,021 「壮行会」? 284 00:22:50,021 --> 00:22:51,689 (岩原)実は このたび➡ 285 00:22:51,689 --> 00:22:54,359 甲府の連隊が 大陸へ 移動することになりましてな。 286 00:22:54,359 --> 00:22:58,029 その壮行会を大河原さんが 開いて くださることになったんです。 287 00:22:58,029 --> 00:23:01,366 どうでしょう? お国のために働く兵隊さんを➡ 288 00:23:01,366 --> 00:23:05,370 ひかるさんのバイオリンで 激励していただけませんか? 289 00:23:05,370 --> 00:23:08,373 そんなこと 急に言われても…。 290 00:23:08,373 --> 00:23:13,044 (岩原)アトリエでバイオリンの 練習とは 優雅なものですな。➡ 291 00:23:13,044 --> 00:23:16,047 国民が一丸となって➡ 292 00:23:16,047 --> 00:23:18,716 食うや食わずで 頑張っているというのに。 293 00:23:18,716 --> 00:23:22,387 岩原中佐が じきじきに お願いに 上がったんですよ。 ひかるさん。 294 00:23:22,387 --> 00:23:24,055 (岩原)嫌なら嫌で結構。 295 00:23:24,055 --> 00:23:26,055 お国のためだ! 296 00:23:28,393 --> 00:23:32,693 分かりました。 わたしで お役に立てるなら。 297 00:23:36,401 --> 00:23:38,403 (絹)お前一人で 大丈夫かしら? 298 00:23:38,403 --> 00:23:42,340 大河原の旅館なら きっぱり断れば よかったのに。 299 00:23:42,340 --> 00:23:46,010 軍人さんに お断りするわけにはいきません。 300 00:23:46,010 --> 00:23:52,016 皆さん 戦地へ行かれるんです。 真心込めて 演奏して参ります。 301 00:23:52,016 --> 00:23:56,688 お父さまや 猛の いないときに限って こんな…。 302 00:23:56,688 --> 00:24:00,688 (末)お嬢さま。 お迎えが参りました。 303 00:24:08,032 --> 00:24:10,702 (ひかる)行ってまいります。 304 00:24:10,702 --> 00:24:15,039 行ってらっしゃい。 ≪(高田)では。 305 00:24:15,039 --> 00:24:16,739 よろしくお願いいたします。 306 00:24:23,715 --> 00:24:26,415 ≪[℡] 307 00:24:28,052 --> 00:24:31,723 (電話の呼び出し音) 308 00:24:31,723 --> 00:24:34,058 (高田)さあ 参りましょう。 309 00:24:34,058 --> 00:24:40,398 ≪[℡] 310 00:24:40,398 --> 00:24:46,398 ♬~ 311 00:24:48,339 --> 00:24:51,009 あのとき なぜ わしに ついてきた? 312 00:24:51,009 --> 00:24:54,409 旦那さまは なぜ 俺を拾ったんですか? 313 00:24:55,680 --> 00:24:57,682 何をするんですか!? 314 00:24:57,682 --> 00:25:00,018 (静子)母さん お前の願い かなえてやるよ。 315 00:25:00,018 --> 00:25:02,020 さあ。 好きなように抱いておしまい。 316 00:25:02,020 --> 00:25:05,023 おい 貴様! お嬢さまを どこへやった!? 317 00:25:05,023 --> 00:25:07,025 何だと? とぼけるんじゃない! 318 00:25:07,025 --> 00:25:09,694 ひかるお嬢さまを返せ! 319 00:25:09,694 --> 00:25:11,994 (文彦) いい人じゃないか 大河原さんは。