1 00:00:07,941 --> 00:00:14,615 これは 火星で活動を続ける 探査機から届いた映像である。 2 00:00:14,615 --> 00:00:20,320 太陽が沈み 火星に夜が訪れる。 3 00:00:24,958 --> 00:00:29,263 夜空に 一つの星が輝く。 4 00:00:30,831 --> 00:00:33,834 地球である。 5 00:00:38,305 --> 00:00:43,644 この星で 映像が発明されて 百年余り。 6 00:00:43,644 --> 00:00:50,350 映像は人類が蓄積した記憶である。 7 00:01:04,264 --> 00:01:10,570 21世紀最初の年 悪夢の記憶が刻まれた。 8 00:01:23,617 --> 00:01:26,520 (銃声) 9 00:01:26,520 --> 00:01:32,225 映像は 世界を引き裂き 底知れない憎悪を生み出した。 10 00:01:38,632 --> 00:01:44,638 映像は 時に時空を超えて 人々をつなぐ。 11 00:01:49,276 --> 00:01:53,280 大災害に見舞われた日本。 12 00:01:56,183 --> 00:02:02,189 その悲しみと痛みを 世界の人々が分かち合った。 13 00:02:04,257 --> 00:02:06,927 頑張れ 日本。 14 00:02:06,927 --> 00:02:12,632 誰もが撮影者となり 誰もが発信者となる時代。 15 00:02:14,267 --> 00:02:18,271 あらゆる出来事は映像化される。 16 00:02:20,140 --> 00:02:23,276 迷子になった子どもを見かけ➡ 17 00:02:23,276 --> 00:02:26,580 手を差し伸べる運転手。 18 00:02:30,150 --> 00:02:34,454 教室で起こった突然の出来事。 19 00:02:43,296 --> 00:02:46,600 愛する人との再会。 20 00:02:48,168 --> 00:02:53,874 人生のささやかな一場面も 世界の記憶となる。 21 00:02:59,646 --> 00:03:05,352 映像に込められたメッセージが 瞬時に世界を駆け巡る。 22 00:03:06,920 --> 00:03:14,628 喜び 怒り 憎悪 涙。 23 00:03:16,263 --> 00:03:21,134 名も知れぬ誰かが撮った映像が 秘められた事実を暴き➡ 24 00:03:21,134 --> 00:03:25,138 国を揺るがし 世界を変える。 25 00:03:29,810 --> 00:03:34,514 新たな映像の世紀が到来した。 26 00:03:37,951 --> 00:03:44,257 百年の時を 映像で追体験する 「新・映像の世紀」。 27 00:03:46,960 --> 00:03:52,265 私たちは なぜ 今 このような世界に生きているのか。 28 00:03:54,634 --> 00:04:00,240 その答えを 映像の中に探していく。 29 00:04:00,240 --> 00:04:11,585 ♬~ 30 00:04:11,585 --> 00:04:15,455 最終回は 21世紀。 31 00:04:15,455 --> 00:04:20,927 激動の時代を 発掘映像で追う。 32 00:04:20,927 --> 00:04:26,800 映像が 世界を引き裂き 世界をつなぐ。 33 00:04:26,800 --> 00:04:32,105 その巨大なパワーは 何をもたらすのだろうか。 34 00:04:54,628 --> 00:04:57,297 あの日から14年。 35 00:04:57,297 --> 00:05:02,302 光のツインタワーが この日も夜空を彩った。 36 00:05:05,572 --> 00:05:09,442 それは 3,000人もの犠牲者を出した➡ 37 00:05:09,442 --> 00:05:12,746 史上最大のテロ事件だった。 38 00:05:32,265 --> 00:05:37,270 いつもと変わらない 静かな朝だった。 39 00:05:48,615 --> 00:05:55,622 ローカルニュースは ワールドトレードセンターの 最後の姿を映していた。 40 00:06:02,162 --> 00:06:05,865 既に事件は始まっていた。 41 00:06:09,903 --> 00:06:14,574 アメリカ各地の空港の監視カメラには ハイジャック犯たちが➡ 42 00:06:14,574 --> 00:06:19,880 セキュリティーチェックを やすやすと くぐり抜ける様子が映されている。 43 00:06:23,917 --> 00:06:26,820 そのころ ブッシュ大統領は➡ 44 00:06:26,820 --> 00:06:31,825 訪問先のフロリダで 日課の朝のジョギングに出かけていた。 45 00:06:42,936 --> 00:06:45,605 ハイジャック犯の第一声が➡ 46 00:06:45,605 --> 00:06:49,609 ボストンにある航空管制室に 飛び込んできた。 47 00:07:07,560 --> 00:07:12,866 航空管制官は直ちに軍に連絡した。 48 00:07:34,788 --> 00:07:39,259 これは ニューヨークの消防署を 密着取材していた➡ 49 00:07:39,259 --> 00:07:42,962 フランスの撮影クルーの映像である。 50 00:08:04,884 --> 00:08:10,590 テレビ局は CMを中断して 臨時ニュースを開始する。 51 00:08:21,434 --> 00:08:26,740 世界のテレビ局も 次々と中継を開始した。 52 00:08:28,575 --> 00:08:32,445 その時だった。 53 00:08:32,445 --> 00:08:38,451 2機目の突入の瞬間を 世界は リアルタイムで目撃した。 54 00:08:57,604 --> 00:09:02,876 訪問先の小学校で ブッシュ大統領が 第一報を受ける瞬間も➡ 55 00:09:02,876 --> 00:09:05,779 映像に記録された。 56 00:09:05,779 --> 00:09:09,215 首席補佐官は告げた。 57 00:09:09,215 --> 00:09:12,218 「2機目が突入しました」。 58 00:09:20,226 --> 00:09:22,562 それから7分間➡ 59 00:09:22,562 --> 00:09:27,567 大統領は 子どもたちの 絵本の朗読を聞き続けた。 60 00:09:36,109 --> 00:09:39,579 2機目の突入から56分後➡ 61 00:09:39,579 --> 00:09:44,584 ワールドトレードセンターは 地響きを立てて倒壊した。 62 00:09:51,591 --> 00:09:56,596 (悲鳴) 63 00:10:17,817 --> 00:10:24,524 3日後 ブッシュ大統領は 同時多発テロの現場を訪れた。 64 00:10:26,493 --> 00:10:33,500 テロとの戦いを宣言した 大統領の支持率は 90%に達する。 65 00:10:48,982 --> 00:10:54,320 テレビの通常番組は 1週間にわたって中止された。 66 00:10:54,320 --> 00:10:57,223 流れ続けるテロの映像によって➡ 67 00:10:57,223 --> 00:11:02,228 人々の恐怖と悲しみは 憎しみへと変わっていく。 68 00:11:04,931 --> 00:11:10,603 パレスチナ出身でニューヨーク在住の思想家 エドワード・サイードは➡ 69 00:11:10,603 --> 00:11:14,307 この状況に警鐘を鳴らした。 70 00:11:58,318 --> 00:12:02,922 アメリカは テロ組織 アルカイダの 引き渡しを拒む➡ 71 00:12:02,922 --> 00:12:06,626 アフガニスタンへの攻撃を 開始する。 72 00:12:09,262 --> 00:12:12,599 しかし その2時間後➡ 73 00:12:12,599 --> 00:12:17,904 世界のテレビ局の画面は 一つの映像で埋め尽くされた。 74 00:12:20,273 --> 00:12:24,611 アメリカの攻撃のタイミングに合わせて 送られてきた➡ 75 00:12:24,611 --> 00:12:30,316 アルカイダのリーダー オサマ・ビンラディンの ビデオメッセージである。 76 00:12:46,866 --> 00:12:50,837 圧倒的な軍事力を持つ アメリカに対し➡ 77 00:12:50,837 --> 00:12:55,141 ビンラディンが武器としたのは 映像だった。 78 00:12:57,310 --> 00:13:02,248 ビンラディンのメッセージをきっかけに 超大国 アメリカに対し➡ 79 00:13:02,248 --> 00:13:05,752 たまっていた憤懣を 爆発させるイスラム教徒が➡ 80 00:13:05,752 --> 00:13:09,455 世界各地に現れた。 81 00:13:25,138 --> 00:13:30,143 アメリカは テロとの戦いを拡大する。 82 00:13:33,813 --> 00:13:39,519 アフガニスタンに続き 2003年 イラクに侵攻。 83 00:13:42,522 --> 00:13:47,527 独裁者 フセインの像が倒される。 84 00:13:53,166 --> 00:13:57,970 イラク国民の喜びを伝えるニュース映像。 85 00:13:57,970 --> 00:14:02,575 この映像は アメリカの戦争には 正当性があると➡ 86 00:14:02,575 --> 00:14:06,579 世界にアピールするものとなった。 87 00:14:11,250 --> 00:14:14,587 (爆発音) 88 00:14:14,587 --> 00:14:18,291 戦争は終わらなかった。 89 00:14:21,928 --> 00:14:24,764 (爆発音) 90 00:14:24,764 --> 00:14:29,569 イラクは テロの泥沼と化していった。 91 00:14:32,405 --> 00:14:37,910 更に アメリカへの憎しみを かきたてる事件が起きる。 92 00:14:42,615 --> 00:14:48,921 イラク人のテロ容疑者など およそ4,000人が収容されていた… 93 00:14:52,959 --> 00:14:55,862 アメリカ兵の内部告発によって➡ 94 00:14:55,862 --> 00:15:01,567 収容者への虐待を示す写真が 明るみに出た。 95 00:15:04,237 --> 00:15:10,576 これは 当時 非公開だった 虐待の映像である。 96 00:15:10,576 --> 00:15:16,282 暴行 レイプなどが 度々 起きていた。 97 00:15:32,265 --> 00:15:37,103 アメリカ軍は 兵士たちを 拷問に駆り立てた要因の一つに➡ 98 00:15:37,103 --> 00:15:40,006 あるテレビ番組を挙げた。 99 00:15:40,006 --> 00:15:44,510 世界的な大ヒットドラマ「24」。 100 00:15:51,617 --> 00:15:58,324 「24」は イラク駐留のアメリカ兵の間で 大人気だった。 101 00:16:02,228 --> 00:16:08,901 主人公の秘密工作員は 暴力に訴え テロリストを尋問する。 102 00:16:08,901 --> 00:16:11,804 それが 兵士に悪影響を与えたと➡ 103 00:16:11,804 --> 00:16:17,810 アメリカ軍は テレビ局と制作会社に抗議した。 104 00:16:56,115 --> 00:17:00,720 虐待を知り イラクで巻き起こった 怒りのデモは➡ 105 00:17:00,720 --> 00:17:05,591 イスラム諸国に広がった。 106 00:17:05,591 --> 00:17:09,428 虐待が発覚して2週間後➡ 107 00:17:09,428 --> 00:17:14,133 インターネットに 一つの映像が公開された。 108 00:17:15,902 --> 00:17:18,804 イラクで働いていたアメリカ人が➡ 109 00:17:18,804 --> 00:17:22,775 アブグレイブ刑務所と 同じ色の囚人服を着せられ➡ 110 00:17:22,775 --> 00:17:26,479 殺害される映像である。 111 00:17:28,915 --> 00:17:32,385 テレビ局に 映像を送りつけるのではなく➡ 112 00:17:32,385 --> 00:17:36,589 独自のホームページからの発信だった。 113 00:17:48,768 --> 00:17:57,576 このテロ組織は 後に 自らを イスラミック ステートと名乗る。 114 00:18:11,357 --> 00:18:16,562 これは 2004年12月 一般の人が撮影した➡ 115 00:18:16,562 --> 00:18:19,065 マレーシアの浜辺。 116 00:18:19,065 --> 00:18:21,968 無邪気に遊ぶ子どもたちの 向こうから➡ 117 00:18:21,968 --> 00:18:25,571 高波が迫る。 118 00:18:25,571 --> 00:18:29,375 そして 次の瞬間…。 119 00:18:32,244 --> 00:18:37,750 スマトラ島沖地震による インド洋大津波である。 120 00:18:45,257 --> 00:18:51,263 市民が撮影した映像が 世界のニュースのトップを埋め尽くした。 121 00:19:01,540 --> 00:19:06,212 プロのカメラマンではなく 一般の人々が撮影した映像が➡ 122 00:19:06,212 --> 00:19:11,517 報道の主役となる 最初の出来事だった。 123 00:19:14,353 --> 00:19:18,557 このニュースを見ていた 一人のアメリカ人の若者が➡ 124 00:19:18,557 --> 00:19:23,863 その後 巨万の富を生む アイデアを思いついた。 125 00:19:52,091 --> 00:19:59,398 翌年 ジョード・カリムは 仲間と共に 動画投稿サイト YouTubeを開設した。 126 00:19:59,398 --> 00:20:03,102 自らが投稿した この18秒の映像が➡ 127 00:20:03,102 --> 00:20:09,809 今や 数十億クリップともいわれる YouTubeの最初の映像となった。 128 00:20:26,792 --> 00:20:29,428 当初は 動物や赤ちゃんの➡ 129 00:20:29,428 --> 00:20:32,798 かわいい映像を楽しむ場に すぎなかった。 130 00:20:32,798 --> 00:20:39,572 ♬~ 131 00:20:39,572 --> 00:20:42,141 だが その後…➡ 132 00:20:42,141 --> 00:20:45,811 誰もが自由に映像を発信できる ツールとして➡ 133 00:20:45,811 --> 00:20:49,448 急速に進化を遂げていく。 134 00:20:49,448 --> 00:20:58,257 ♬~ 135 00:20:59,992 --> 00:21:04,764 身体能力を極限まで追求する パルクールという遊び。 136 00:21:04,764 --> 00:21:09,268 YouTubeによって 世界的に広まった。 137 00:21:18,310 --> 00:21:23,115 自分の娘を 生まれた時から ずっと撮影し続けている➡ 138 00:21:23,115 --> 00:21:25,618 オランダ人の映像作品。 139 00:21:25,618 --> 00:21:29,321 世界で延べ5,000万人が見た。 140 00:21:36,629 --> 00:21:41,834 世界で最も有名な 普通の家族といわれた。 141 00:22:31,617 --> 00:22:38,123 ♬~ 142 00:22:41,293 --> 00:22:44,797 誰もが自由に 発信できるようになった映像は➡ 143 00:22:44,797 --> 00:22:48,300 国家のコントロールも超えていった。 144 00:22:54,506 --> 00:22:56,709 (銃声) 145 00:22:59,645 --> 00:23:05,751 イラクでは アメリカ軍のヘリコプターが 民間人を銃撃する映像が流出。 146 00:23:05,751 --> 00:23:08,754 世界から 非難を浴びた。 147 00:23:14,260 --> 00:23:16,929 アフガニスタンでは アメリカ兵が➡ 148 00:23:16,929 --> 00:23:22,101 ヘルメットに装備されたカメラの映像を 投稿することが流行。 149 00:23:22,101 --> 00:23:26,305 軍事情報の流出として 問題になった。 150 00:23:29,275 --> 00:23:31,277 (銃声) 151 00:23:35,147 --> 00:23:40,286 そして テロリストたちも インターネットを利用した。 152 00:23:40,286 --> 00:23:44,990 次々と投稿された 自爆テロの映像。 153 00:23:48,961 --> 00:23:52,298 (爆発音) 154 00:23:52,298 --> 00:23:59,004 テロリストの戦意を高揚させ 世界を恐怖に陥れた。 155 00:24:07,780 --> 00:24:13,252 1分間に数百時間というペースで 世界にあふれ続ける映像。 156 00:24:13,252 --> 00:24:18,957 その一つが 社会を大きく動かした。 157 00:24:20,759 --> 00:24:25,631 始まりは 2010年に ある同性愛者のカップルが投稿した➡ 158 00:24:25,631 --> 00:24:28,434 一本の映像だった。 159 00:24:44,283 --> 00:24:48,954 2人のメッセージから勇気を得て ほかの同性愛者たちも➡ 160 00:24:48,954 --> 00:24:54,660 自分の つらい経験を 次々と投稿するようになる。 161 00:24:57,129 --> 00:24:59,331 合言葉は… 162 00:25:05,371 --> 00:25:11,910 そこに 毎週のように 投稿を続ける14歳の少年がいた。 163 00:25:11,910 --> 00:25:13,946 ジェイミー・ロドマイヤー君。 164 00:25:13,946 --> 00:25:19,151 同性愛を理由に 学校で 陰湿ないじめを受けていた。 165 00:25:50,649 --> 00:25:58,157 この映像を投稿した5日後 ジェイミー君は自ら命を絶った。 166 00:26:03,896 --> 00:26:06,231 彼の死を悲しむのは➡ 167 00:26:06,231 --> 00:26:10,235 身近な人たちだけに とどまらなかった。 168 00:26:25,250 --> 00:26:31,457 インターネットに寄せられた 映像やメッセージは 1万件を超えた。 169 00:26:40,099 --> 00:26:44,903 音楽界のスーパースターも 彼の死を悼んだ。 170 00:26:56,548 --> 00:27:36,355 ♬~ 171 00:27:38,090 --> 00:27:40,926 同性愛の人たちの苦しみを➡ 172 00:27:40,926 --> 00:27:45,731 理解しようとする人が 少しずつ増えていった。 173 00:27:49,101 --> 00:27:52,604 人々の間に 広く共感を呼んだ映像がある。 174 00:27:52,604 --> 00:27:56,108 双子の兄弟が 同性愛者であることを➡ 175 00:27:56,108 --> 00:28:00,412 父親に電話で告白する映像である。 176 00:29:01,707 --> 00:29:06,044 2015年6月 双子のロード兄弟は➡ 177 00:29:06,044 --> 00:29:08,947 YouTubeで輪を広げた 仲間たちと共に➡ 178 00:29:08,947 --> 00:29:12,751 アメリカ連邦最高裁の前にいた。 179 00:29:15,220 --> 00:29:20,726 この日 連邦最高裁は 同性婚禁止の法律を違憲とする➡ 180 00:29:20,726 --> 00:29:24,429 画期的な判決を下した。 181 00:29:34,072 --> 00:29:36,908 「イット・ゲッツ・ベター」が始まった 5年前には➡ 182 00:29:36,908 --> 00:29:41,580 5つの州とワシントンD.C.でしか 認められていなかった同性婚が➡ 183 00:29:41,580 --> 00:29:45,784 全米で認められた瞬間だった。 184 00:29:48,453 --> 00:29:52,224 この夜 ホワイトハウスは 運動の象徴である➡ 185 00:29:52,224 --> 00:29:55,427 レインボーカラーに ライトアップされた。 186 00:30:07,606 --> 00:30:12,477 2011年 一人の若者が発信した映像が➡ 187 00:30:12,477 --> 00:30:17,983 独裁国家を転覆させる 革命にまで結び付いた。 188 00:30:21,286 --> 00:30:27,492 北アフリカのチュニジアから始まった アラブの春である。 189 00:30:31,430 --> 00:30:36,635 きっかけは チュニジアの小さな町の 果物売りの若者が➡ 190 00:30:36,635 --> 00:30:39,438 露天での商売を 役人にとがめられ➡ 191 00:30:39,438 --> 00:30:44,443 抗議の焼身自殺を図ったことだった。 192 00:30:47,179 --> 00:30:49,981 その場面を目撃した人々が➡ 193 00:30:49,981 --> 00:30:55,987 役所に怒りをぶつける様子が 市民によって撮影された。 194 00:30:58,323 --> 00:31:04,329 地方都市の この事件を 地元メディアは報道しなかった。 195 00:31:27,786 --> 00:31:33,592 多くの人が 役人の横暴な 振る舞いに苦しめられてきた。 196 00:31:35,293 --> 00:31:39,164 怒りを共有した人々は 各地でデモを起こし➡ 197 00:31:39,164 --> 00:31:46,171 更に その映像が次々と投稿され 新たなデモを引き起こした。 198 00:31:49,808 --> 00:31:52,844 大統領は デモの鎮静化をねらい➡ 199 00:31:52,844 --> 00:31:58,450 まだ息があった果物売りの若者を 病院に見舞った。 200 00:31:58,450 --> 00:32:04,256 その姿は 国営テレビで 大々的に放送された。 201 00:32:05,924 --> 00:32:09,394 しかし テレビカメラのない場所では➡ 202 00:32:09,394 --> 00:32:13,932 大統領の指示を受けた警官隊が デモ隊に発砲。 203 00:32:13,932 --> 00:32:22,107 (銃声) 204 00:32:22,107 --> 00:32:27,412 多くの人々が負傷し 死者も出た。 205 00:32:28,980 --> 00:32:37,689 その映像もまた インターネットに投稿され 国民の怒りを 更に増幅させた。 206 00:32:40,792 --> 00:32:46,298 デモ隊は 政府打倒を叫び始める。 207 00:32:53,371 --> 00:32:56,975 権力を前に 立ち上がる市民の勇気は➡ 208 00:32:56,975 --> 00:33:00,679 兵士たちにも伝播した。 209 00:33:03,248 --> 00:33:09,054 大統領からの発砲命令を 兵士たちは拒否。 210 00:33:12,757 --> 00:33:18,463 ついに 大統領は国外へ亡命した。 211 00:33:30,108 --> 00:33:34,412 若者が焼身自殺を図ってから 1か月足らずで➡ 212 00:33:34,412 --> 00:33:39,217 チュニジアの独裁政権は崩壊した。 213 00:33:45,957 --> 00:33:51,963 チュニジアの この動きは アラブ全土に連鎖していった。 214 00:34:01,239 --> 00:34:04,910 インターネットに投稿された この映像は➡ 215 00:34:04,910 --> 00:34:09,614 エジプト革命の決定打となったと いわれる。 216 00:34:31,770 --> 00:34:34,606 アラブの大国 エジプトでも➡ 217 00:34:34,606 --> 00:34:40,412 30年に及ぶ ムバラク政権が 3週間で崩壊した。 218 00:34:45,784 --> 00:34:48,420 だが アラブの春は➡ 219 00:34:48,420 --> 00:34:52,290 独裁政権に押さえ込まれていた 急進的な勢力を➡ 220 00:34:52,290 --> 00:34:55,493 解き放つことになった。 221 00:34:59,064 --> 00:35:03,568 エジプトでは 政治の混乱と治安の悪化の中➡ 222 00:35:03,568 --> 00:35:07,872 軍を後ろ盾とする政権が生まれた。 223 00:35:10,909 --> 00:35:12,944 リビアや シリアでは➡ 224 00:35:12,944 --> 00:35:16,948 アラブの春は 内戦に変わっていった。 225 00:35:21,553 --> 00:35:27,459 これは ロシアのメディアが 撮影した現在のシリアの映像。 226 00:35:27,459 --> 00:35:30,595 人影は ほとんど見えない。 227 00:35:30,595 --> 00:35:35,600 実に 国民の半数が難民となった。 228 00:36:08,733 --> 00:36:13,238 若者たちの絶望をのみ込み 膨れ上がっていったのが➡ 229 00:36:13,238 --> 00:36:20,245 過激派組織 IS イスラミック ステートだった。 230 00:36:28,253 --> 00:36:31,256 2013年4月。 231 00:36:31,256 --> 00:36:33,591 (爆発音) 232 00:36:33,591 --> 00:36:38,463 ボストンマラソンで 2つの爆弾が相次いで爆発。 233 00:36:38,463 --> 00:36:44,969 死者3人 負傷者300人が出る テロ事件が起こった。 234 00:36:49,140 --> 00:36:55,346 この事件の犯人を捕らえたのは 進化した映像技術だった。 235 00:36:59,284 --> 00:37:05,290 ボストンの街には 至る所に 監視カメラが設置されている。 236 00:37:08,093 --> 00:37:13,798 その映像を分析していくと 不審な人物が浮かび上がった。 237 00:37:13,798 --> 00:37:18,570 警察が注目したのは 帽子をかぶり リュックを背負った➡ 238 00:37:18,570 --> 00:37:21,873 2人組の若者である。 239 00:37:25,243 --> 00:37:29,581 若者の一人が 画面左上にいる。 240 00:37:29,581 --> 00:37:34,252 遠くで 1つ目の爆弾が爆発。 241 00:37:34,252 --> 00:37:39,924 人々が それに気をとられている中 彼だけが立ち去った。 242 00:37:39,924 --> 00:37:42,227 そして…。 243 00:37:44,796 --> 00:37:49,601 爆発後 若者は リュックを持っていない。 244 00:37:49,601 --> 00:37:54,305 この映像が 犯人特定の決め手となった。 245 00:37:58,610 --> 00:38:02,480 そして 逃走する犯人を捉えたのは➡ 246 00:38:02,480 --> 00:38:07,785 赤外線によって温度を感知する サーマルカメラであった。 247 00:38:10,889 --> 00:38:18,196 民家の庭のボートに隠れた犯人を サーマルカメラは シート越しに見つけた。 248 00:38:26,437 --> 00:38:31,142 テロ事件は 5日で解決した。 249 00:38:36,581 --> 00:38:40,251 世界では 2億5,000万台の監視カメラが➡ 250 00:38:40,251 --> 00:38:43,254 稼働しているといわれる。 251 00:38:45,123 --> 00:38:47,926 至る所に置かれたカメラが➡ 252 00:38:47,926 --> 00:38:52,931 私たちの一挙手一投足を 見つめている。 253 00:39:00,205 --> 00:39:05,210 テロ組織も 映像技術を進化させている。 254 00:39:10,215 --> 00:39:15,887 ISの一連の映像は スタジオで撮影されたといわれる。 255 00:39:15,887 --> 00:39:19,557 ハッカーが公表した この映像によれば➡ 256 00:39:19,557 --> 00:39:26,264 合成もできる巨大なセット 照明機材も そろっている。 257 00:39:30,902 --> 00:39:33,805 ISには メディア部門があり➡ 258 00:39:33,805 --> 00:39:39,510 報道機関などで働いた経験のある 欧米人が所属している。 259 00:39:42,247 --> 00:39:48,553 彼らは 兵士の何倍もの収入を 保障されているという。 260 00:39:52,590 --> 00:39:58,296 プロパガンダ映像には 少年兵も多く登場する。 261 00:40:02,267 --> 00:40:05,937 ISが 次の世代まで続くものだと➡ 262 00:40:05,937 --> 00:40:09,641 印象づけるねらいがあると 見られる。 263 00:40:13,611 --> 00:40:20,618 ISには 世界各国から 2万人もの戦闘員が集まっている。 264 00:40:22,287 --> 00:40:24,622 こうしたプロパガンダ映像が➡ 265 00:40:24,622 --> 00:40:30,328 今もインターネットを通じて 増殖を続けている。 266 00:40:42,173 --> 00:40:44,943 2015年3月。 267 00:40:44,943 --> 00:40:48,646 国連本部に招かれた 一人の歌手がいる。 268 00:40:48,646 --> 00:40:51,983 (歓声) 269 00:40:51,983 --> 00:40:55,853 アメリカの歌手 ファレル・ウィリアムス。 270 00:40:55,853 --> 00:40:59,657 彼が歌った「HAPPY」という歌が 世界を結び➡ 271 00:40:59,657 --> 00:41:04,662 幸せを運んだとして その功績をたたえられた。 272 00:41:17,942 --> 00:41:21,279 ♬~ 273 00:41:21,279 --> 00:41:25,950 「HAPPY」は 世界に新しいムーブメントを起こした。 274 00:41:25,950 --> 00:41:28,853 その曲に合わせて 自分が踊る映像を➡ 275 00:41:28,853 --> 00:41:33,825 YouTubeに投稿することが 爆発的に流行した。 276 00:41:33,825 --> 00:41:40,298 その数は 世界150か国以上 2,000本に及んだ。 277 00:41:40,298 --> 00:41:56,647 ♬~ 278 00:41:56,647 --> 00:42:03,454 映像は やがて 試練に立ち向かう 人々からのメッセージとなっていった。 279 00:42:03,454 --> 00:42:14,932 ♬~ 280 00:42:14,932 --> 00:42:18,803 悲しみと憎悪が渦巻く 過酷な場所でも➡ 281 00:42:18,803 --> 00:42:22,807 人々は 「HAPPY」を踊った。 282 00:42:22,807 --> 00:42:30,114 ♬~ 283 00:42:56,307 --> 00:43:01,012 ♬~ 284 00:43:05,917 --> 00:43:09,253 2015年9月。 285 00:43:09,253 --> 00:43:13,558 また一つの映像が 世界を動かした。 286 00:43:15,593 --> 00:43:20,932 トルコの海岸に打ち上げられた 小さな体。 287 00:43:20,932 --> 00:43:24,602 シリア難民の一家が 生きるため➡ 288 00:43:24,602 --> 00:43:29,307 ひそかに ヨーロッパに 入国しようとした末の悲劇だった。 289 00:43:32,477 --> 00:43:36,614 この痛ましい映像を前に 世界中の人々が➡ 290 00:43:36,614 --> 00:43:41,619 難民を積極的に受け入れるよう 声を上げた。 291 00:43:45,289 --> 00:43:50,294 国家も 人種も 宗教も超えた。 292 00:44:03,241 --> 00:44:06,144 だが 混迷を深める世界は➡ 293 00:44:06,144 --> 00:44:08,913 そこから抜け出す道を 見いだせず➡ 294 00:44:08,913 --> 00:44:12,917 今も多くの命が 失われ続けている。 295 00:44:16,254 --> 00:44:18,923 テロの恐怖と新たな憎しみが➡ 296 00:44:18,923 --> 00:44:22,927 また ばらまかれた。 297 00:44:33,271 --> 00:44:38,976 これは パリ同時多発テロの 3日後の映像である。 298 00:44:41,145 --> 00:44:46,284 広場に イスラム教徒の男性が 目隠しをして立っていた。 299 00:44:46,284 --> 00:44:50,288 足元には こう書かれていた。 300 00:45:06,571 --> 00:45:11,242 憎しみの連鎖を断ち切ろうとする この ささやかな試みも➡ 301 00:45:11,242 --> 00:45:14,545 世界に発信された。 302 00:45:19,917 --> 00:45:22,220 2日後の映像。 303 00:45:23,788 --> 00:45:29,794 この試みに加わるイスラム教徒が 次々と現れた。 304 00:45:35,933 --> 00:45:43,641 映像は 時に世界を引き裂き 時に世界をつなぐ。 305 00:45:48,279 --> 00:45:52,984 映像が誕生してから百年余り。 306 00:46:08,899 --> 00:46:16,240 それは 人類が蓄積してきた 膨大な記憶である。 307 00:46:16,240 --> 00:46:40,931 ♬~ 308 00:46:40,931 --> 00:46:47,638 今 映像は世界を動かす 巨大なパワーを持った。 309 00:46:49,940 --> 00:46:55,646 誰もが撮影者となり 誰もが発信者となる。 310 00:46:57,615 --> 00:47:00,518 新しい映像の世紀に➡ 311 00:47:00,518 --> 00:47:05,523 私たちは どんな記憶を 刻んでいくのだろうか。 312 00:47:13,898 --> 00:47:21,205 インターネットに映像を投稿し 自らの命を絶ったジェイミー君の両親。 313 00:47:28,245 --> 00:47:30,581 ジェイミー君の映像は➡ 314 00:47:30,581 --> 00:47:36,287 今も世界の誰かに 励ましを与え続けている。 315 00:48:19,897 --> 00:48:54,198 ♬~