1 00:00:06,355 --> 00:00:11,493 この時 初めて あんなにも嫌いだった英語が➡ 2 00:00:11,493 --> 00:00:16,365 はなの心に 優しく響いてきたのでした。 3 00:00:16,365 --> 00:00:22,365 ご機嫌よう。 さようなら。 4 00:00:33,081 --> 00:00:39,021 ♬~ 5 00:00:39,021 --> 00:00:46,321 <俺は 自分勝手に植物を育てる ベランダーだ> 6 00:00:49,164 --> 00:00:54,036 <なぜ 俺が 「俺」という1人称を使うのか。➡ 7 00:00:54,036 --> 00:01:01,176 それは 植物好き イコール 優しくて いい人という➡ 8 00:01:01,176 --> 00:01:06,515 世間の誤った認識を 正したいからだ。➡ 9 00:01:06,515 --> 00:01:11,854 何せ 俺は 世話は いい加減だし 知識も適当。➡ 10 00:01:11,854 --> 00:01:15,190 植物なんか 水さえやっときゃ なんとかなる。➡ 11 00:01:15,190 --> 00:01:18,527 …が モットーの人間だ。➡ 12 00:01:18,527 --> 00:01:24,199 そんな自分勝手な野郎でも 植物を愛する事はできる。➡ 13 00:01:24,199 --> 00:01:33,199 それで 俺は あえて乱暴な 「俺」という言葉を使っているのだ> 14 00:01:35,143 --> 00:01:39,481 <ある日の事 そんな俺のアイデンティティーを➡ 15 00:01:39,481 --> 00:01:44,152 根底から揺るがす事件が起きた。➡ 16 00:01:44,152 --> 00:01:49,491 これは ベランダの平和を乱そうとする 脅威に立ち向かった➡ 17 00:01:49,491 --> 00:01:56,791 俺という男の闘いの記録である> 18 00:01:58,500 --> 00:02:11,079 ♬~ 19 00:02:11,079 --> 00:02:34,379 ♬~ 20 00:02:38,807 --> 00:02:44,680 <4月 植物どもが あまりにも元気なもんだから➡ 21 00:02:44,680 --> 00:02:48,150 俺は 相変わらず忙しい。➡ 22 00:02:48,150 --> 00:02:51,486 一応 物書きなんぞを やってはいるが➡ 23 00:02:51,486 --> 00:02:57,826 もはや 本業が 何か 分からなくなるほどである。➡ 24 00:02:57,826 --> 00:03:03,699 あいつを ベランダに出して こいつを 部屋に取り込んで。➡ 25 00:03:03,699 --> 00:03:10,172 こいつを 窓際に移動させ あいつは 向こうのテーブルへ。➡ 26 00:03:10,172 --> 00:03:16,472 俺は まるで 野球の監督のように 采配を振るい続ける> 27 00:03:22,517 --> 00:03:25,420 あっ 入んないよ。 28 00:03:25,420 --> 00:03:33,462 <すると ソファーの横の棚に置く鉢が 無くなってしまった。➡ 29 00:03:33,462 --> 00:03:38,133 そこは 俺の休息に 最も貢献する場所で➡ 30 00:03:38,133 --> 00:03:42,804 お気に入りの鉢が 1つだけ 置かれなければならないと➡ 31 00:03:42,804 --> 00:03:45,474 決まっている。➡ 32 00:03:45,474 --> 00:03:50,345 だが 選手を あちこち移動させているうちに➡ 33 00:03:50,345 --> 00:03:55,345 肝心のエースが いなくなってしまった> 34 00:03:58,053 --> 00:04:01,490 <どの鉢を置いても しっくり来ない。➡ 35 00:04:01,490 --> 00:04:04,159 一旦 レフトに下げた選手を➡ 36 00:04:04,159 --> 00:04:08,830 今更 マウンドに呼ぶ訳には いかないだろう。➡ 37 00:04:08,830 --> 00:04:11,733 それでは 高校野球だ。➡ 38 00:04:11,733 --> 00:04:16,733 俺のプロ意識が許さないのである> 39 00:04:19,841 --> 00:04:24,513 ♬~ 40 00:04:24,513 --> 00:04:30,185 <俺は 早速 なじみの花屋に向かった。➡ 41 00:04:30,185 --> 00:04:32,788 もちろん 目的は植物。➡ 42 00:04:32,788 --> 00:04:35,457 他意はない> 43 00:04:35,457 --> 00:04:40,796 ♬~ 44 00:04:40,796 --> 00:04:45,467 いらっしゃいませ。 あ… どうも 店長。 45 00:04:45,467 --> 00:04:47,803 何? その残念そうな顔は。 46 00:04:47,803 --> 00:04:51,473 いやいや! 何 言ってんですか 店長。 47 00:04:51,473 --> 00:04:55,143 そんな 残念だなんて。 いいの いいの。 分かってるから。 48 00:04:55,143 --> 00:04:58,046 楓ちゃん ちょっと こっち お願い。 49 00:04:58,046 --> 00:05:01,016 (楓)は~い。 いや だから 僕は 純粋に 植物を…。 50 00:05:01,016 --> 00:05:04,486 いらっしゃいませ。 うわっ! あ…。 51 00:05:04,486 --> 00:05:08,356 花粉症は 大丈夫ですか? え? 花粉症? 52 00:05:08,356 --> 00:05:11,827 あっ! ああ~。 53 00:05:11,827 --> 00:05:16,827 おかげさまで 何か すっかり 治っちゃって。 ハハハハ! 54 00:05:18,500 --> 00:05:20,836 <…などと てれながら➡ 55 00:05:20,836 --> 00:05:26,708 俺の鋭い眼光は 既に 一つの鉢を捉えていた。➡ 56 00:05:26,708 --> 00:05:28,710 野梅だ。➡ 57 00:05:28,710 --> 00:05:31,446 花や枝も 小ぶりだが➡ 58 00:05:31,446 --> 00:05:37,119 香りのよさが特徴の盆栽である> 59 00:05:37,119 --> 00:05:41,990 あの~ ひょっとして 野梅 気になってます? 60 00:05:41,990 --> 00:05:47,129 あ… はい。 たまには いいかなと。 61 00:05:47,129 --> 00:05:52,000 でも 盆栽は 手入れも大変ですし ほかの鉢にした方が…。 62 00:05:52,000 --> 00:05:56,138 そうですよね。 63 00:05:56,138 --> 00:06:00,809 <確かに 盆栽という点は引っ掛かる。➡ 64 00:06:00,809 --> 00:06:04,679 俺には 全く 経験がないからだ。➡ 65 00:06:04,679 --> 00:06:09,151 しかし 野梅には ほかの植物にはない➡ 66 00:06:09,151 --> 00:06:12,821 威厳と風格があった> 67 00:06:12,821 --> 00:06:17,492 やっぱり これにします。 え… 大丈夫ですか? 本当に。 68 00:06:17,492 --> 00:06:22,164 大丈夫ですよ。 ハッハッハッハ! あっ。 69 00:06:22,164 --> 00:06:24,499 あっ! すい… すいません。 70 00:06:24,499 --> 00:06:26,835 <見くびらないでほしい。➡ 71 00:06:26,835 --> 00:06:29,171 俺は 都会のベランダー。➡ 72 00:06:29,171 --> 00:06:35,777 自分勝手に植物を育てる事には 自信があるのだ> 73 00:06:35,777 --> 00:06:42,651 ♬~ 74 00:06:42,651 --> 00:06:49,791 <俺は 家に帰り 早速 野梅を置いてみた。➡ 75 00:06:49,791 --> 00:06:52,694 すると どうだ。➡ 76 00:06:52,694 --> 00:06:56,464 こいつは 和の雰囲気を醸し出し➡ 77 00:06:56,464 --> 00:07:03,805 見る者に 落ち着きと安らぎを 与えてくれるではないか。➡ 78 00:07:03,805 --> 00:07:07,505 俺流采配 ズバリ!> 79 00:07:10,478 --> 00:07:16,151 <こうして 俺は しばらくの間 幸福感に浸り➡ 80 00:07:16,151 --> 00:07:20,822 野梅を眺めて 毎日を過ごした> 81 00:07:20,822 --> 00:07:32,122 ♬~ 82 00:07:37,305 --> 00:07:41,776 <「春眠 暁を覚えず」というが➡ 83 00:07:41,776 --> 00:07:47,449 俺の気分が すぐれないのは なにも 眠気のせいだけじゃない> 84 00:07:47,449 --> 00:07:50,352 ♬~ 85 00:07:50,352 --> 00:07:54,322 <鉢植えの梅は 時期が過ぎたあとに➡ 86 00:07:54,322 --> 00:07:58,460 細かく剪定しなくては ならない事は 知っていた。➡ 87 00:07:58,460 --> 00:08:01,796 ところが 俺は 花が落ちても➡ 88 00:08:01,796 --> 00:08:07,669 幻影の中で 在りし日の姿に 酔っていたのである。➡ 89 00:08:07,669 --> 00:08:13,969 おかげで 全ての枝が伸び あられもない姿になってしまった> 90 00:08:15,810 --> 00:08:20,148 <一体 どうしたものか…。➡ 91 00:08:20,148 --> 00:08:23,051 …と その時> 92 00:08:23,051 --> 00:08:28,490 [無線] 93 00:08:28,490 --> 00:08:31,190 <誰だ?> 94 00:08:34,095 --> 00:08:36,998 あ もしもし 僕だけど。 95 00:08:36,998 --> 00:08:39,968 う~ん 久しぶり 久しぶり。 96 00:08:39,968 --> 00:08:44,105 今 ちょっと 近くに来たもんだからさ➡ 97 00:08:44,105 --> 00:08:48,777 これから ちょっと 遊びに行ってもいいかい? 98 00:08:48,777 --> 00:08:51,777 あ そう。 ありがとう。 99 00:08:55,116 --> 00:08:57,052 あっ! 100 00:08:57,052 --> 00:09:02,290 <花の名前が付いた名曲たち。 今回は この曲です> 101 00:09:02,290 --> 00:09:09,064 ♬「愛が終わる時 涙が こぼれたら」 102 00:09:09,064 --> 00:09:16,638 ♬「思う事はひとつ みんな空が好きさ」 103 00:09:16,638 --> 00:09:24,145 ♬「まるで僕たちは タンポポの胞子」 104 00:09:24,145 --> 00:09:30,952 ♬「たわむれてるだけ 空の下で」 105 00:09:30,952 --> 00:09:46,101 ♬~ 106 00:09:46,101 --> 00:09:52,974 ♬「レインコートに雨の雫が落ちて」 107 00:09:52,974 --> 00:10:00,448 ♬「笑顔浮かべた 君のことが好きさ」 108 00:10:00,448 --> 00:10:07,789 ♬「ラズベリーブルーの草原にでたら くちづけを交わす」 109 00:10:07,789 --> 00:10:15,130 ♬「あまりにも強い風の中で」 110 00:10:15,130 --> 00:10:17,799 ♬~ 111 00:10:17,799 --> 00:10:28,810 ♬「言葉より未来を信じた あの頃の僕たち二人」 112 00:10:28,810 --> 00:10:41,156 ♬「大切な何かをなくして ゆくような気がするよ」 113 00:10:41,156 --> 00:10:49,497 ♬「気付かないうちに 気付かないうちに」 114 00:10:49,497 --> 00:10:56,497 ♬~ 115 00:10:59,174 --> 00:11:04,045 <先ほど 電話で話していたのは 茂木梅吉といって➡ 116 00:11:04,045 --> 00:11:07,849 以前 勤めていた会社の先輩だ。➡ 117 00:11:07,849 --> 00:11:14,189 彼も 筋金入りのベランダーでは あるのだが 俺と違うのは➡ 118 00:11:14,189 --> 00:11:18,860 盆栽専門という その特殊性にある。➡ 119 00:11:18,860 --> 00:11:22,197 今 この状況においては➡ 120 00:11:22,197 --> 00:11:25,867 頼りがいのある人物と いえるだろう。➡ 121 00:11:25,867 --> 00:11:30,538 だが 一つ問題が…> 122 00:11:30,538 --> 00:11:32,838 (チャイム) 123 00:11:39,147 --> 00:11:43,017 はい。 「僕だよ」。 124 00:11:43,017 --> 00:11:46,317 はい 先輩 ちょっと お待ち下さい。 125 00:11:50,492 --> 00:11:53,828 ああ ご機嫌よう。 はい これ どら焼き。 126 00:11:53,828 --> 00:11:57,499 君 好物だったでしょう? どうも すいません。 127 00:11:57,499 --> 00:12:01,169 突然 お邪魔しちゃって 迷惑じゃない? 128 00:12:01,169 --> 00:12:03,838 何なら ここで帰るよ。 あ いやいや…。 129 00:12:03,838 --> 00:12:06,508 何 言ってんですか 先輩。 そんな事 言わず➡ 130 00:12:06,508 --> 00:12:09,177 ゆっくりしてって下さい。 そう。 131 00:12:09,177 --> 00:12:12,514 そこまで言われるんだったらね 上がらせてもらうよ。 132 00:12:12,514 --> 00:12:16,851 どうぞ どうぞ。 あ 先に行くんだ…。 133 00:12:16,851 --> 00:12:18,851 はい。 134 00:12:22,190 --> 00:12:25,527 ご無沙汰してます 先輩。 135 00:12:25,527 --> 00:12:29,197 さっきから 先輩 先輩って言うの それ やめてくれる? 136 00:12:29,197 --> 00:12:31,799 僕は もう 君の上司でも 何でもないんだからさ。 137 00:12:31,799 --> 00:12:34,099 あ… すいません。 138 00:12:36,137 --> 00:12:38,806 あれ? スマホにしたんですか。 139 00:12:38,806 --> 00:12:41,709 おう。 今 当たり前だろ この時代。 140 00:12:41,709 --> 00:12:47,148 えっ? 君 まさか ガラケー? ええ まあ。 141 00:12:47,148 --> 00:12:52,820 <実は 去年 流行に乗って スマホを買ってはみたものの➡ 142 00:12:52,820 --> 00:12:57,492 使いこなせず ガラケーに戻したという経緯がある。➡ 143 00:12:57,492 --> 00:12:59,427 それに 俺は➡ 144 00:12:59,427 --> 00:13:03,364 こんな小さな機械ごときに 縛られたくはない。➡ 145 00:13:03,364 --> 00:13:07,835 便利さは 時に 人を退化させるからだ> 146 00:13:07,835 --> 00:13:11,172 へえ~ じゃあ 君 ツイートとかしないの? 147 00:13:11,172 --> 00:13:13,841 ええ しません。 ふ~ん。 148 00:13:13,841 --> 00:13:16,177 僕なんか フォロワー 10万人もいてさ➡ 149 00:13:16,177 --> 00:13:18,846 ちょっと つぶやくと リプが すごくて。 150 00:13:18,846 --> 00:13:22,517 あ ちょっと待って。 今 面白い事 考えちゃった。 151 00:13:22,517 --> 00:13:27,188 ツイートしようっと。 君さ どら焼き ここに置いてくれる? 152 00:13:27,188 --> 00:13:29,688 あ… はい。 153 00:13:31,459 --> 00:13:33,394 (シャッター音) よし 来た。 154 00:13:33,394 --> 00:13:35,330 君 入る? あ はい。 155 00:13:35,330 --> 00:13:39,030 どら焼きなめの 君で。 (シャッター音) 156 00:13:41,135 --> 00:13:45,807 え~ 「後輩の家で どら焼きなう」と。 157 00:13:45,807 --> 00:13:48,142 ねっ。 へ? 158 00:13:48,142 --> 00:13:51,479 それだけ? うん。 これだけ。 159 00:13:51,479 --> 00:13:53,815 あ~ もう リプ来てる。 160 00:13:53,815 --> 00:13:56,484 「どら焼きなうとか ウケる~」だって。 161 00:13:56,484 --> 00:14:00,784 ほら これ。 あ… ハハハ。 162 00:14:03,157 --> 00:14:05,827 時々 「くそウケる~」なんて 言われてね。 ああ。 163 00:14:05,827 --> 00:14:09,163 「くそ」なんて ちょっと その時は 腹立つんだけどね。 164 00:14:09,163 --> 00:14:11,499 「くそウケた」なんてね。 「くそウケた」はね…。 165 00:14:11,499 --> 00:14:13,799 「くそウケた」来ちゃった。 ああ。 166 00:14:16,371 --> 00:14:22,143 しかし あれだね。 相変わらず 植物だらけだね 君の部屋は。 167 00:14:22,143 --> 00:14:25,046 まあ 僕も 人の事は言えないけどさ。 168 00:14:25,046 --> 00:14:29,050 あ どう? ベランダの方は。 そこそこ やってます。 169 00:14:29,050 --> 00:14:31,452 あれ? 170 00:14:31,452 --> 00:14:33,788 あれ 野梅じゃない? 171 00:14:33,788 --> 00:14:36,124 あ はい。 172 00:14:36,124 --> 00:14:41,996 あ… 君 このだらしない枝ぶりは 一体 どうしたもんかね。 173 00:14:41,996 --> 00:14:44,799 こんな乱雑な鉢を 僕は 見た事ないよ。 174 00:14:44,799 --> 00:14:47,135 剪定は してたのかい? 175 00:14:47,135 --> 00:14:50,805 いや それが ほっといたら こうなっちゃって。 176 00:14:50,805 --> 00:14:57,145 ああ… 枝が泣いてる。 何が いけなかったんでしょうか? 177 00:14:57,145 --> 00:15:01,482 君のせいだよ! 盆栽は そもそも ほかの植物とは違って➡ 178 00:15:01,482 --> 00:15:05,482 繊細な手入れが 必要なんだよ。 すいません。 179 00:15:10,825 --> 00:15:17,699 君は 旅行に行くのかね? え? はい たまに。 180 00:15:17,699 --> 00:15:23,404 植物は どうするんだ? その間。 ええ まあ➡ 181 00:15:23,404 --> 00:15:27,704 1日ぐらいなら 水やりしなくても 平気なんで こいつら。 182 00:15:29,510 --> 00:15:33,781 こいつら!? 君 盆栽を その辺の植物と一緒にするの➡ 183 00:15:33,781 --> 00:15:37,652 やめてくれないかな! 失敬じゃないか! すいません。 184 00:15:37,652 --> 00:15:40,655 片ときたりとも 目を離しちゃ 駄目なんだよ 盆栽からは。 185 00:15:40,655 --> 00:15:43,124 一に 剪定! 二に 剪定! 186 00:15:43,124 --> 00:15:46,794 ほんの数mm 枝が伸びただけでも その全体のバランスが崩れてしまう。 187 00:15:46,794 --> 00:15:49,130 いわば 芸術品なんだよ! 188 00:15:49,130 --> 00:15:52,467 あ… ホントに 申し訳ない。 189 00:15:52,467 --> 00:15:58,467 <うん? 何で 俺は 茂木に 謝らなければならないんだ?> 190 00:16:00,141 --> 00:16:05,480 僕なんかね 町内会の温泉旅行 毎年 欠席だよ。 毎年! 191 00:16:05,480 --> 00:16:09,150 もう 何年 温泉に入ってない事か。 あげくの果ては➡ 192 00:16:09,150 --> 00:16:11,819 自宅の風呂に 全国から取り寄せた 入浴剤入れて➡ 193 00:16:11,819 --> 00:16:15,490 そこに お盆 浮かべてさ 一人晩酌なんかしたりして➡ 194 00:16:15,490 --> 00:16:18,393 エア温泉旅行してるんだよ! 195 00:16:18,393 --> 00:16:22,163 バカみたい もう…。 はあ。 196 00:16:22,163 --> 00:16:27,034 <結局 この人は 何に怒っているのだ?> 197 00:16:27,034 --> 00:16:30,505 あ ごめん。 ごめん ごめん ごめん ごめん…。 198 00:16:30,505 --> 00:16:35,109 温泉… いや 盆栽の事になると つい 熱くなっちゃって。 199 00:16:35,109 --> 00:16:40,982 気に障ったかい? あ いえ… 大丈夫です ホントに。 200 00:16:40,982 --> 00:16:46,120 でも どうだろう? 君。 ねえ。 201 00:16:46,120 --> 00:16:49,457 この際さ 君も いい機会だから➡ 202 00:16:49,457 --> 00:16:52,360 本格的に 盆栽 やってみる気は ないかね? 203 00:16:52,360 --> 00:16:55,797 盆栽は いいよぉ。 ああ…。 204 00:16:55,797 --> 00:17:00,134 <出た。 茂木は 事あるごとに➡ 205 00:17:00,134 --> 00:17:03,805 俺を 盆栽の道に 引きずり込もうとするのだ> 206 00:17:03,805 --> 00:17:05,740 盆栽…。 はあ…。 207 00:17:05,740 --> 00:17:09,143 <いい加減な世話がモットーの 俺にとって➡ 208 00:17:09,143 --> 00:17:12,480 盆栽など できるはずがなかろう> 209 00:17:12,480 --> 00:17:15,480 盆栽…。 あ…。 210 00:17:20,822 --> 00:17:23,522 やめて…。 盆栽…。 あ…。 211 00:17:25,493 --> 00:17:28,396 それじゃあ 僕は これで 失敬するよ。 212 00:17:28,396 --> 00:17:31,299 すいません。 お構いも できず。 213 00:17:31,299 --> 00:17:34,769 気にしないでくれたまえ。 僕が 勝手に押しかけたんだから。 214 00:17:34,769 --> 00:17:36,769 それじゃ…。 215 00:17:38,439 --> 00:17:41,342 盆栽は いいよぉ~。 216 00:17:41,342 --> 00:17:44,342 じゃ 失礼します。 217 00:17:48,115 --> 00:17:50,115 (ため息) 218 00:17:59,460 --> 00:18:01,796 (チャイム) 219 00:18:01,796 --> 00:18:03,731 あっ。 220 00:18:03,731 --> 00:18:06,431 「盆栽は いいよぉ~」。 221 00:18:09,470 --> 00:18:16,811 ♬~ 222 00:18:16,811 --> 00:18:21,148 <南アフリカから移り住んできた 多肉植物の幻玉は➡ 223 00:18:21,148 --> 00:18:25,486 その奇妙な形から ツッパリたちに蔑まれていた> 224 00:18:25,486 --> 00:18:28,389 (火祭)おい 邪魔だよ! 225 00:18:28,389 --> 00:18:32,760 <唯一の親友 アボニアも 体のひねりが きき過ぎたのか➡ 226 00:18:32,760 --> 00:18:34,695 幻玉を遠ざける> 227 00:18:34,695 --> 00:18:36,631 (アボニア)あっ 幻玉。 228 00:18:36,631 --> 00:18:42,436 <そんな幻玉に オーロラは ひそかに思いを募らせていたが…> 229 00:18:42,436 --> 00:18:45,773 (幻玉)いいんだよ 僕なんか…。 230 00:18:45,773 --> 00:18:51,073 <幻玉は 自らの殻に 閉じ籠もるのであった> 231 00:18:53,447 --> 00:18:57,318 (オーロラ)幻玉君? 幻玉君 幻玉君! 232 00:18:57,318 --> 00:19:00,321 う… う~ん。 233 00:19:00,321 --> 00:19:04,091 オーロラ。 何が…? 234 00:19:04,091 --> 00:19:07,795 (オーロラ)あのあと 水蒸気の 浴び過ぎで 気を失ったのよ。➡ 235 00:19:07,795 --> 00:19:10,464 ほとんど 腐りかけてたわ。➡ 236 00:19:10,464 --> 00:19:13,134 1週間以上も 目を覚まさなくて➡ 237 00:19:13,134 --> 00:19:16,037 日の当たる場所に 置いたりしたんだけど…。➡ 238 00:19:16,037 --> 00:19:18,472 でも ホント よかった。 239 00:19:18,472 --> 00:19:22,143 ほっといてくれよ。 どうせ 生きてたって➡ 240 00:19:22,143 --> 00:19:24,812 つらい事ばかりなんだ。 241 00:19:24,812 --> 00:19:27,148 (オーロラ)そんな事ないわ。 242 00:19:27,148 --> 00:19:32,954 僕の何が分かるっていうんだ! こんな変な形に生まれた僕の…。 243 00:19:32,954 --> 00:19:35,423 どうして 僕なんか助けたんだ! 244 00:19:35,423 --> 00:19:37,358 (オーロラ)そんなの…。➡ 245 00:19:37,358 --> 00:19:42,058 どうして 分かってくれないの!? 幻玉君のバカ! 246 00:19:44,098 --> 00:19:48,769 オーロラ! 待って オーロラ! 247 00:19:48,769 --> 00:19:53,107 (オーロラ) バカ バカ バカ バカ バカ! 248 00:19:53,107 --> 00:19:55,776 (ゴーラム)ハイ ハイ ハイ ハイ! どうしちゃったのかな?➡ 249 00:19:55,776 --> 00:20:00,448 かわい子ちゃんよ。 相変わらず ハクイね~。 250 00:20:00,448 --> 00:20:03,117 (火祭)ゴーラム。 ここは 危険だ。➡ 251 00:20:03,117 --> 00:20:05,052 俺は ちょっと このスケに 話があるから➡ 252 00:20:05,052 --> 00:20:08,456 お前は 日当たりのいい所で ハッスルでもしとけ。 253 00:20:08,456 --> 00:20:11,456 (ゴーラム)合点承知之助! バイビー! 254 00:20:13,794 --> 00:20:18,466 オーロラ! あっ あれは…➡ 255 00:20:18,466 --> 00:20:21,369 オーロラと火祭。 256 00:20:21,369 --> 00:20:24,338 (火祭)オーロラ ちょっと話してもいいか? 257 00:20:24,338 --> 00:20:27,475 (オーロラ)何よ? 258 00:20:27,475 --> 00:20:32,146 (火祭)お前 何で あんなダサイやつ 助けたりすんだ? 259 00:20:32,146 --> 00:20:36,017 (オーロラ)何でって そんな事 あなたに関係ないでしょ。 260 00:20:36,017 --> 00:20:39,820 (火祭)まさか お前! 261 00:20:39,820 --> 00:20:45,159 (オーロラ)好きなの…。 幻玉君の事が 好きなの!➡ 262 00:20:45,159 --> 00:20:47,828 火祭君こそ 何で 彼の事 いじめるの? 263 00:20:47,828 --> 00:20:52,500 (火祭)何でって…。 実は 俺は…。 264 00:20:52,500 --> 00:20:57,838 ごめん オーロラ。 僕には…。 265 00:20:57,838 --> 00:20:59,774 (アボニア)幻玉。 266 00:20:59,774 --> 00:21:03,511 <複雑に絡み合う 多肉植物たちの愛。➡ 267 00:21:03,511 --> 00:21:06,414 火祭は オーロラに 何を伝えようとしたのか。➡ 268 00:21:06,414 --> 00:21:11,714 そして アボニアは なぜ 幻玉を見つめるのか> 269 00:21:17,058 --> 00:21:23,197 <もはや 野梅を剪定するしかないのか。➡ 270 00:21:23,197 --> 00:21:27,868 俺が 思案に暮れながら 歩いていると…。➡ 271 00:21:27,868 --> 00:21:32,707 あれは いつぞやのアボカド娘。➡ 272 00:21:32,707 --> 00:21:38,145 俺を痴漢呼ばわりした 無礼なギャルどもだ。➡ 273 00:21:38,145 --> 00:21:42,016 見つかったら 面倒だ。➡ 274 00:21:42,016 --> 00:21:47,016 俺は しばらく身を隠す事にした> 275 00:21:49,757 --> 00:21:54,161 ヤバイ。 それは ヤバイよ。 やっぱ ヤバイかな? 276 00:21:54,161 --> 00:22:02,036 <野梅? あんな小娘の分際で 野梅について語っているのか?> 277 00:22:02,036 --> 00:22:06,507 彼氏 部活やめた反動で 急に 太りだしちゃってさ➡ 278 00:22:06,507 --> 00:22:09,176 あれじゃ ただのシケメンだよ。 279 00:22:09,176 --> 00:22:11,112 <シクラメン?> 280 00:22:11,112 --> 00:22:16,517 う~ん もう それはさ 切るしかないよ。 切るしか。 281 00:22:16,517 --> 00:22:18,853 切る…。 やっぱね。 282 00:22:18,853 --> 00:22:21,756 <きき… 切る?➡ 283 00:22:21,756 --> 00:22:25,192 シクラメンは さておき 今 確か➡ 284 00:22:25,192 --> 00:22:29,864 「野梅を切るしかない」とか 言っていたような。➡ 285 00:22:29,864 --> 00:22:36,470 まあ 若者なら そうした暴走も 青春の1ページとして許されよう。➡ 286 00:22:36,470 --> 00:22:42,143 だが 俺は それなりに 人生経験を積んだ 中年男。➡ 287 00:22:42,143 --> 00:22:46,814 あんな小娘に後押しされて 剪定する訳にはいかんだろう!> 288 00:22:46,814 --> 00:22:50,484 (枝が折れる音) うん? 何か 今 変な音しなかった? 289 00:22:50,484 --> 00:22:56,357 そういえば さっきから 誰かに見られてる気が…。 290 00:22:56,357 --> 00:23:04,832 ♬~ 291 00:23:04,832 --> 00:23:08,502 あっ! あの時の痴漢! 292 00:23:08,502 --> 00:23:11,405 いや… 違います。 293 00:23:11,405 --> 00:23:16,377 何が違うのよ。 今だって 私たちを 嫌らしい目で見てたくせに! 294 00:23:16,377 --> 00:23:19,513 嫌らしいなんて そんな…。 295 00:23:19,513 --> 00:23:22,416 じゃ… じゃあ 何してたのよ!? 296 00:23:22,416 --> 00:23:26,387 いや そそ… それはですね え~っと…。 297 00:23:26,387 --> 00:23:33,460 あっ 熱が出てきた。 インフルエンザかもしれない。 298 00:23:33,460 --> 00:23:36,363 ゲホッ! ゲホッ! ゲホッ! ちょっと! うつさないでよ! 299 00:23:36,363 --> 00:23:39,800 もう 行こう 行こう! やっぱ 危ないよ あの人! 300 00:23:39,800 --> 00:23:41,800 ゲホッ! 301 00:23:52,379 --> 00:23:56,150 <あんなギャルども ちょろいもんだ。➡ 302 00:23:56,150 --> 00:24:01,822 とはいえ 俺は まだ躊躇していた。➡ 303 00:24:01,822 --> 00:24:04,725 一たび 剪定などしようものなら➡ 304 00:24:04,725 --> 00:24:10,497 もはや ボタニカル・ライフではなく 盆栽だ。➡ 305 00:24:10,497 --> 00:24:14,835 それは 俺から ベランダーの称号を奪い➡ 306 00:24:14,835 --> 00:24:21,175 単なる 盆栽初心者に 成り下がる事を意味する。➡ 307 00:24:21,175 --> 00:24:26,046 そもそも 俺は 盆栽が嫌いな訳ではない。➡ 308 00:24:26,046 --> 00:24:29,516 むしろ 好きになる体質を 自覚しているだけに➡ 309 00:24:29,516 --> 00:24:34,355 これまで 歯止めをかけてきたのだ。➡ 310 00:24:34,355 --> 00:24:39,055 やるなら 今しかない!> 311 00:24:42,796 --> 00:25:11,825 ♬~ 312 00:25:11,825 --> 00:25:16,497 <人生が 選択と結果の繰り返しならば➡ 313 00:25:16,497 --> 00:25:21,368 この選択は とてつもなく大きな意味を持つ。➡ 314 00:25:21,368 --> 00:25:25,506 もし 俺が 盆栽を始めれば➡ 315 00:25:25,506 --> 00:25:29,376 これまでみたいな いい加減な世話は許されない。➡ 316 00:25:29,376 --> 00:25:32,112 ベランダの鉢を 全て手放し➡ 317 00:25:32,112 --> 00:25:36,984 代わりに 松や梅が並ぶ事になるだろう。➡ 318 00:25:36,984 --> 00:25:41,789 そして 暇さえあれば 品評会に出向き➡ 319 00:25:41,789 --> 00:25:45,659 「やあ お宅の枝ぶりは 見事ですなぁ」➡ 320 00:25:45,659 --> 00:25:49,659 …などと 言いだしかねない> 321 00:25:51,799 --> 00:25:56,670 <それでも やるのか?> 322 00:25:56,670 --> 00:26:14,054 ♬~ 323 00:26:14,054 --> 00:26:19,493 <いや できない! やつらを手放す事など➡ 324 00:26:19,493 --> 00:26:23,364 俺には できない> 325 00:26:23,364 --> 00:26:37,064 ♬~ 326 00:26:47,121 --> 00:26:52,793 <こうして 俺は まさに 盆栽初心者となる一歩手前で➡ 327 00:26:52,793 --> 00:26:56,463 危機を脱する事ができた。➡ 328 00:26:56,463 --> 00:26:58,399 だが…> 329 00:26:58,399 --> 00:27:00,801 [無線] 330 00:27:00,801 --> 00:27:15,349 ♬~ 331 00:27:15,349 --> 00:27:20,487 <俺は 日々 誘惑と闘っている。➡ 332 00:27:20,487 --> 00:27:27,361 果たして いつまで 持ちこたえる事ができるのか。➡ 333 00:27:27,361 --> 00:27:33,067 最近 自信が揺らぎつつある> 334 00:27:33,067 --> 00:28:52,412 ♬~ 335 00:28:52,412 --> 00:28:58,118 [無線](呼び出し音) 336 00:28:58,118 --> 00:29:06,460 [無線]俺は 今 電話に出られない。 用件のある方 メッセージをどうぞ。 337 00:29:06,460 --> 00:29:09,129 盆栽。 338 00:29:09,129 --> 00:29:20,129 ♬~ 339 00:30:33,080 --> 00:30:36,450 ♬~ 340 00:30:36,450 --> 00:30:39,920 う~ん 輝いてる! 341 00:30:39,920 --> 00:30:43,223 ロシアの古都 サンクトペテルブルク。 342 00:30:43,223 --> 00:30:47,123 夏の太陽が出迎えてくれた。 343 00:30:49,563 --> 00:30:53,200 おっ ライオン。 口で橋を支えてくれてる。 344 00:30:53,200 --> 00:30:56,300 ふふっ ありがと!