1 00:00:05,046 --> 00:00:10,046 夢にも思わず 帰りを待っている はなでした。 2 00:00:13,721 --> 00:00:17,721 きんつば 買ってきたのにな…。 3 00:00:20,394 --> 00:00:25,094 ごきげんよう。 さようなら。 4 00:00:36,243 --> 00:00:40,715 <5月 新緑の季節。➡ 5 00:00:40,715 --> 00:00:46,053 今日も 俺は ベランダで 植物どもの世話をする。➡ 6 00:00:46,053 --> 00:00:51,926 その中に 俺が 特に 大事にしている鉢がある。➡ 7 00:00:51,926 --> 00:00:56,397 金のなる木と サボテンだ。➡ 8 00:00:56,397 --> 00:01:01,268 この鉢を見て 不思議に思う人もいるだろう。➡ 9 00:01:01,268 --> 00:01:03,738 あまりにも無造作で➡ 10 00:01:03,738 --> 00:01:07,408 センスのかけらもない 植え方だからだ。➡ 11 00:01:07,408 --> 00:01:14,108 だが こいつらは 俺にとって 掛けがえのない存在なのである> 12 00:01:16,083 --> 00:01:37,371 ♬~ 13 00:01:37,371 --> 00:01:52,071 ♬~ 14 00:01:58,392 --> 00:02:02,062 <丈は5cmほどの陶器の鉢。➡ 15 00:02:02,062 --> 00:02:04,965 その小さな小さな世界は しかし➡ 16 00:02:04,965 --> 00:02:12,706 見る度に 俺に 何とも言えない 喜びを与えてくれる。➡ 17 00:02:12,706 --> 00:02:16,410 一つは 金のなる木。➡ 18 00:02:16,410 --> 00:02:21,749 葉の形が硬貨に似ている事から この名が付けられた。➡ 19 00:02:21,749 --> 00:02:26,449 まずは そこから 話をしよう> 20 00:02:31,091 --> 00:02:37,698 <ある日の事 俺は ベランダの溝を 完璧に掃除しようと思いつき➡ 21 00:02:37,698 --> 00:02:41,368 ビニール袋とゴム手袋 エプロンという➡ 22 00:02:41,368 --> 00:02:47,041 掃除のおばちゃんみたいな格好で 外に出た。➡ 23 00:02:47,041 --> 00:02:50,911 俺のように あれこれ鉢を置いていると➡ 24 00:02:50,911 --> 00:02:55,382 死んだ葉や土が 溝にたまる。➡ 25 00:02:55,382 --> 00:02:58,052 ましてや 独り身だから➡ 26 00:02:58,052 --> 00:03:03,724 恐らく 洗濯物から落ちた糸くずや ほこりが 泥などに絡みついて➡ 27 00:03:03,724 --> 00:03:07,394 薄気味悪い塊と なっていたりする。➡ 28 00:03:07,394 --> 00:03:11,065 俺は 片っ端から その塊をつかんでは➡ 29 00:03:11,065 --> 00:03:13,734 ビニール袋に放り込んでいた。➡ 30 00:03:13,734 --> 00:03:16,070 すると その中に➡ 31 00:03:16,070 --> 00:03:19,740 緑色の小さな物体が 潜んでいるではないか> 32 00:03:19,740 --> 00:03:21,675 うん? 33 00:03:21,675 --> 00:03:27,414 <最初 俺は そいつが何か分からず ひどく慌てた。➡ 34 00:03:27,414 --> 00:03:31,085 何なのだ? この緑の物体は。➡ 35 00:03:31,085 --> 00:03:34,955 ひょっとすると 謎の地球外生命体で➡ 36 00:03:34,955 --> 00:03:39,894 そのうち巨大化し 人類を 襲撃してくるかもしれない!➡ 37 00:03:39,894 --> 00:03:44,894 …という可能性がある事も 否定できない> 38 00:03:47,034 --> 00:03:51,705 <俺は この薄気味悪い物体が 何か確かめるべく➡ 39 00:03:51,705 --> 00:03:55,705 なじみの花屋に向かった> 40 00:03:58,379 --> 00:04:02,049 何なんでしょうか? これ。 ベランダにいたんですけど。 41 00:04:02,049 --> 00:04:04,385 ちょっ… よく見せて。 42 00:04:04,385 --> 00:04:08,055 わあ! 店長 危ない! 危ない? 43 00:04:08,055 --> 00:04:11,392 だって それ 人を襲うかもしれないし。 44 00:04:11,392 --> 00:04:13,327 (笑い声) 45 00:04:13,327 --> 00:04:17,264 何 言ってんですか。 SF映画の見過ぎですよ。 46 00:04:17,264 --> 00:04:20,401 これは 金のなる木の先端。 47 00:04:20,401 --> 00:04:23,304 えっ 金のなる木? 48 00:04:23,304 --> 00:04:27,741 以前 ベランダで 金のなる木を 育ててた事 ありませんか? 49 00:04:27,741 --> 00:04:30,644 あっ ありますけど。 50 00:04:30,644 --> 00:04:33,347 やっぱり。 金のなる木は➡ 51 00:04:33,347 --> 00:04:36,183 葉っぱを土に置いただけで 根を生やすぐらい➡ 52 00:04:36,183 --> 00:04:39,219 多肉植物の中でも 強い方なんですよ。 53 00:04:39,219 --> 00:04:42,690 多分 落ちた葉っぱが 溝にたまって➡ 54 00:04:42,690 --> 00:04:48,028 雨水と土から栄養をとって 生きていたんだと思いますけど。 55 00:04:48,028 --> 00:04:50,864 そんな事が…。 56 00:04:50,864 --> 00:04:54,368 <なんという生命力だ!> 57 00:04:54,368 --> 00:04:59,707 ちょ… ちょい ちょっと近い。 ちょっと近い 店長。 58 00:04:59,707 --> 00:05:07,581 <以来 俺は ベランダに 洗濯物を干すのをやめた。➡ 59 00:05:07,581 --> 00:05:12,720 これ以上 やつのような犠牲者を 出さないためだ。➡ 60 00:05:12,720 --> 00:05:17,057 …などと もっともらしい正義を かざしてみたものの➡ 61 00:05:17,057 --> 00:05:21,729 実のところ あの気色悪い塊の 掃除を二度としたくない。➡ 62 00:05:21,729 --> 00:05:25,029 …というのが本音だった> 63 00:05:26,600 --> 00:05:32,006 ♬~ 64 00:05:32,006 --> 00:05:37,706 <俺のベランダには 死者の土というのがある> 65 00:05:39,680 --> 00:05:43,350 <死んでいった植物の葉や根を 混ぜたら➡ 66 00:05:43,350 --> 00:05:50,050 土が肥えるのではないかと 勝手な解釈で作り上げた土だ> 67 00:05:52,359 --> 00:05:55,863 <俺は あの小さな鉢を選び➡ 68 00:05:55,863 --> 00:06:01,668 普通の土と 死者の土の オリジナルブレンドを作り上げ➡ 69 00:06:01,668 --> 00:06:04,668 そこに やつを置いた> 70 00:06:06,373 --> 00:06:09,710 <こうして 金のなる木は➡ 71 00:06:09,710 --> 00:06:15,710 新しい家で 緩やかな成長を始めたのである> 72 00:06:22,723 --> 00:06:28,723 <それから何週間かたった ある日の事> 73 00:06:30,397 --> 00:06:34,268 あ~! 74 00:06:34,268 --> 00:06:44,344 ♬~ 75 00:06:44,344 --> 00:06:46,344 え~! 76 00:06:48,015 --> 00:06:50,350 えっ!? 77 00:06:50,350 --> 00:06:53,020 えっ!? えっ!? 78 00:06:53,020 --> 00:06:55,355 え~っ!? 79 00:06:55,355 --> 00:07:01,695 <なんと 金のなる木の横から サボテンが顔を出していたのだ。➡ 80 00:07:01,695 --> 00:07:05,365 俺は戸惑い そして 仰天した。➡ 81 00:07:05,365 --> 00:07:10,365 一体 何なのだ? このサボテン野郎は> 82 00:07:12,039 --> 00:07:14,339 え~っ!? 83 00:07:17,377 --> 00:07:19,377 えっ!? 84 00:07:25,252 --> 00:07:33,861 ♬~ 85 00:07:33,861 --> 00:07:37,664 私は ショクダイオオコンニャク。 86 00:07:37,664 --> 00:07:42,336 7年間で たった2日間しか 咲かないわ。 87 00:07:42,336 --> 00:07:45,239 大きさは 3m。 88 00:07:45,239 --> 00:07:48,675 ジャンボマックスより 大きい花よ。 89 00:07:48,675 --> 00:07:51,011 そんな事よりもよ! 90 00:07:51,011 --> 00:07:55,682 ラフレシアが世界最大とかいう 愚か者がいるらしいけど➡ 91 00:07:55,682 --> 00:08:00,020 冗談じゃないわ! ん~っ! 92 00:08:00,020 --> 00:08:04,358 まあ いいわ。 待ったわ~ 7年も。 93 00:08:04,358 --> 00:08:08,695 僅か2日間のために 花を咲かせる時が! 94 00:08:08,695 --> 00:08:11,598 アッハハ! ギャラリーもそろったわね。 95 00:08:11,598 --> 00:08:14,568 ついに この日が来たわ! 96 00:08:14,568 --> 00:08:20,040 7年に一度の ショーの始まりよ~! 97 00:08:20,040 --> 00:08:23,710 私が世界一よ! 98 00:08:23,710 --> 00:08:26,380 刮目しなさい 人間たちよ! 99 00:08:26,380 --> 00:08:31,218 私のもとに 集まりなさ~い! 虫たちよ~! 100 00:08:31,218 --> 00:08:41,918 そして 私の命を 絶やす事なく 広めなさ~いね! 101 00:08:47,334 --> 00:08:49,334 うわっ 臭え! 102 00:08:55,676 --> 00:09:00,013 <俺は ふいに飛び出してきた サボテンを眺めながら➡ 103 00:09:00,013 --> 00:09:03,350 しばらくの間 考えた。➡ 104 00:09:03,350 --> 00:09:11,050 そして 記憶の底に眠っていた ある衝撃的な事実を思い出した> 105 00:09:12,693 --> 00:09:16,363 あっ もしかして…。 106 00:09:16,363 --> 00:09:21,363 <それは 以前 南米に行った時の事だ> 107 00:09:25,038 --> 00:09:29,376 <俺は その時 サボテンの種を買った。➡ 108 00:09:29,376 --> 00:09:31,979 そして そいつを鉢に放り込み➡ 109 00:09:31,979 --> 00:09:36,850 今か今かと 成長を待ちわびていた。➡ 110 00:09:36,850 --> 00:09:42,623 だが サボテン野郎は 一向に芽を出さない> 111 00:09:42,623 --> 00:09:50,664 ♬~ 112 00:09:50,664 --> 00:09:54,334 <どうしたもんかと思って 土を混ぜ返し➡ 113 00:09:54,334 --> 00:10:00,007 必死の捜索をするも 影も形も見当たらない。➡ 114 00:10:00,007 --> 00:10:07,347 俺は ついに愛想を尽かし そいつを 死者の土に葬った。➡ 115 00:10:07,347 --> 00:10:15,047 そして 年月を経て あの時 偶然 交じっていたのだ> 116 00:10:19,926 --> 00:10:23,897 <種の野郎が生きていた事も 驚きだが➡ 117 00:10:23,897 --> 00:10:30,570 あの鉢に入れた死者の土の塊に 偶然入っていた事も 驚きだ。➡ 118 00:10:30,570 --> 00:10:37,044 しかも ベランダの溝からよみがえった 金のなる木の横から➡ 119 00:10:37,044 --> 00:10:40,044 顔を出すとは…> 120 00:10:42,916 --> 00:10:51,391 <こんな容赦のない奇跡が 俺のベランダで起きたのである。➡ 121 00:10:51,391 --> 00:10:56,263 これが 感動せずにいられるか> 122 00:10:56,263 --> 00:11:02,402 ♬~ 123 00:11:02,402 --> 00:11:07,741 <人生は 時に 予測もできない事が起こる。➡ 124 00:11:07,741 --> 00:11:12,612 数奇な運命をたどった 金のなる木とサボテンは➡ 125 00:11:12,612 --> 00:11:18,752 仲良く 一つの鉢にいる。➡ 126 00:11:18,752 --> 00:11:22,422 俺は やつらの生命力に敬意を表し➡ 127 00:11:22,422 --> 00:11:26,760 その鉢を 復活の鉢と名付け➡ 128 00:11:26,760 --> 00:11:31,598 一番 日の当たる場所に 置いている> 129 00:11:31,598 --> 00:11:44,598 ♬~ 130 00:11:47,714 --> 00:11:53,053 <花の名前が付いた名曲たち。 今回は この曲です> 131 00:11:53,053 --> 00:12:10,404 ♬~ 132 00:12:10,404 --> 00:12:22,015 ♬「春色の汽車に乗って 海に連れて行ってよ」 133 00:12:22,015 --> 00:12:32,025 ♬「煙草の匂いのシャツに そっと寄りそうから」 134 00:12:32,025 --> 00:12:39,366 ♬「何故 知りあった日から 半年過ぎても」 135 00:12:39,366 --> 00:12:44,237 ♬「あなたって手も握らない」 136 00:12:44,237 --> 00:12:50,010 ♬「I will follow you あなたに ついてゆきたい」 137 00:12:50,010 --> 00:12:55,715 ♬「I will follow you ちょっぴり 気が弱いけど」 138 00:12:55,715 --> 00:13:02,055 ♬「素敵な人だから」 139 00:13:02,055 --> 00:13:14,067 ♬「心の岸辺に咲いた 赤いスイートピー」 140 00:13:14,067 --> 00:13:32,367 ♬~ 141 00:13:36,022 --> 00:13:40,694 <俺の部屋には いくつか 特等席がある。➡ 142 00:13:40,694 --> 00:13:45,365 もちろん 植物にとっての話だ。➡ 143 00:13:45,365 --> 00:13:50,665 例えば 窓際の小さな棚の上> 144 00:13:52,239 --> 00:13:58,939 <この場所は 過去 幾多の名植物を 輩出してきた> 145 00:14:00,914 --> 00:14:05,385 <先月は クレマチスを置いていた。➡ 146 00:14:05,385 --> 00:14:10,724 薄い羽を風になびかせる チョウのような花を➡ 147 00:14:10,724 --> 00:14:13,627 俺は 気に入っていた。➡ 148 00:14:13,627 --> 00:14:17,597 だが 1つ問題があった。➡ 149 00:14:17,597 --> 00:14:22,068 散り際が 汚いのである> 150 00:14:22,068 --> 00:14:29,768 (掃除機の音) 151 00:14:31,878 --> 00:14:35,015 <花ばかりか 雌しべどもも➡ 152 00:14:35,015 --> 00:14:40,015 ちょっとした拍子に 崩れ去ってしまうのだ> 153 00:14:41,688 --> 00:14:43,623 <ガーデナーにとっては➡ 154 00:14:43,623 --> 00:14:47,360 それも 肥料の一つとして 看過できようが➡ 155 00:14:47,360 --> 00:14:51,031 こちとら 都会のベランダーである。➡ 156 00:14:51,031 --> 00:14:53,934 あちこちに散る花は 掃除も やっかいで➡ 157 00:14:53,934 --> 00:14:58,371 始末に負えない。➡ 158 00:14:58,371 --> 00:15:05,371 どこかに この特等席に見合う花は ないものか…> 159 00:15:10,717 --> 00:15:14,054 <俺には もう一つの顔がある。➡ 160 00:15:14,054 --> 00:15:16,723 フリーライターだ。➡ 161 00:15:16,723 --> 00:15:19,392 もともと こっちが本業なのだが➡ 162 00:15:19,392 --> 00:15:23,263 いつの間にか ベランダーとしての 活動が忙しくなってしまい➡ 163 00:15:23,263 --> 00:15:25,963 今日に至る> 164 00:15:29,069 --> 00:15:32,339 <今日は 園芸雑誌の取材で➡ 165 00:15:32,339 --> 00:15:37,010 ある人物に会う事になっていた。➡ 166 00:15:37,010 --> 00:15:41,881 世界的なフラワーアーティスト EIJIだ。➡ 167 00:15:41,881 --> 00:15:45,352 類いまれな美的センスを生かした アレンジで➡ 168 00:15:45,352 --> 00:15:50,223 世界中のファッション誌の表紙を 飾った男。➡ 169 00:15:50,223 --> 00:15:53,226 そんな 今をときめく人物に➡ 170 00:15:53,226 --> 00:15:56,696 読者からの悩み相談に 答えてもらったり➡ 171 00:15:56,696 --> 00:15:59,599 好きな花を教えてもらったりする というのが➡ 172 00:15:59,599 --> 00:16:03,370 今回の趣旨だ。➡ 173 00:16:03,370 --> 00:16:10,043 世界的な大物だからといって 俺の神経が高ぶる事はない。➡ 174 00:16:10,043 --> 00:16:13,380 依頼されたミッションを 確実に こなす。➡ 175 00:16:13,380 --> 00:16:18,718 それが ライターとしての俺のモットーだ。➡ 176 00:16:18,718 --> 00:16:23,590 その実 今回のギャラで 新しい鉢を買いたい。➡ 177 00:16:23,590 --> 00:16:29,290 …という あけすけな野望が なかった訳でもなかった> 178 00:16:31,064 --> 00:16:33,064 わおっ! 179 00:16:41,675 --> 00:16:46,546 モーニング…。 あっ おはようございます。 180 00:16:46,546 --> 00:16:50,684 あの~ 今日は 「月刊プランター」の取材で伺いました。 181 00:16:50,684 --> 00:16:55,021 おはようございます。 2時からでしたね。 182 00:16:55,021 --> 00:17:00,721 時間は 30分で お願いします。 彼は 時間に うるさいですから。 183 00:17:11,571 --> 00:17:15,709 ♬~ 184 00:17:15,709 --> 00:17:20,046 お待たせして すみません。 EIJIです。 185 00:17:20,046 --> 00:17:22,949 あ… よろしくお願いします。 よろしく。 186 00:17:22,949 --> 00:17:26,720 えっと これは 何の取材ですか? 187 00:17:26,720 --> 00:17:29,055 植物雑誌の取材です。 188 00:17:29,055 --> 00:17:32,659 なるほど。 OK OK。 何でも聞いて下さい。 189 00:17:32,659 --> 00:17:35,328 はい。 え~ それでは➡ 190 00:17:35,328 --> 00:17:39,199 そもそも どういった経緯で フラワーアーティストとして➡ 191 00:17:39,199 --> 00:17:41,899 活動をされるように なったんでしょうか? 192 00:17:44,003 --> 00:17:46,673 希望…。 193 00:17:46,673 --> 00:17:52,011 それ自体は 幸福の一つの形態に すぎないかもしれない。 194 00:17:52,011 --> 00:17:55,682 だけど それは 現世が もたらしうる➡ 195 00:17:55,682 --> 00:17:59,552 一番大きな幸福なのかもしれない。 196 00:17:59,552 --> 00:18:02,555 ジョン・レノンは そう言っています。 197 00:18:02,555 --> 00:18:06,025 つまり 僕は 生まれながらにして➡ 198 00:18:06,025 --> 00:18:09,696 その可能性を 花に見いだしたのです。 199 00:18:09,696 --> 00:18:12,365 はあ…。 200 00:18:12,365 --> 00:18:15,702 つまり 実家が 花屋だった訳です。 201 00:18:15,702 --> 00:18:20,573 あっ… ああ はい。 202 00:18:20,573 --> 00:18:24,711 <何が「つまり」なのか 全く分からなかったが➡ 203 00:18:24,711 --> 00:18:29,582 俺は とりあえず いい加減な相づちを打っておいた> 204 00:18:29,582 --> 00:18:35,655 なるほど。 では 読者からの お悩み相談にいきたいと思います。 205 00:18:35,655 --> 00:18:38,992 え~ 杉並区のMさんからです。 206 00:18:38,992 --> 00:18:43,992 「最近 鉢植えに 虫がついて 困っています」との事なんですが。 207 00:18:45,865 --> 00:18:50,003 聞こえませんか? 花の声が。 208 00:18:50,003 --> 00:18:51,938 え? 209 00:18:51,938 --> 00:18:56,342 花や植物のみが有する 神秘的な能力。 210 00:18:56,342 --> 00:19:02,015 そのポテンシャルを最大限に引き出し アートの領域に踏み込みながら➡ 211 00:19:02,015 --> 00:19:06,352 彼らの生命が朽ちる事なく 光を当てる。 212 00:19:06,352 --> 00:19:09,255 それが 僕の仕事です。 213 00:19:09,255 --> 00:19:13,255 …と言いますと? 214 00:19:15,695 --> 00:19:19,566 つまり 殺虫剤を使用するという事です。 215 00:19:19,566 --> 00:19:22,035 はあ…。 216 00:19:22,035 --> 00:19:26,372 <さっきから こいつは 自分の事しか言いやがらない。➡ 217 00:19:26,372 --> 00:19:31,672 俺は 肝心の質問ができず 時間だけが過ぎていった> 218 00:19:33,179 --> 00:19:36,983 そろそろ時間です。 219 00:19:36,983 --> 00:19:40,854 あ でも まだ 最後の質問が…。 220 00:19:40,854 --> 00:19:45,325 これから パリに飛ばなくては いけないので。 221 00:19:45,325 --> 00:19:47,994 いや そこを なんとか…。 222 00:19:47,994 --> 00:19:52,866 僕は 時間外労働は しない主義です。 223 00:19:52,866 --> 00:19:57,337 <ああ これでは 記事に 穴があいてしまう。➡ 224 00:19:57,337 --> 00:20:00,673 …というより 今月は 新しい鉢植えを➡ 225 00:20:00,673 --> 00:20:05,545 購入できない事の方を 俺は悔やんだ。➡ 226 00:20:05,545 --> 00:20:10,350 しかし 次の瞬間 やつは おもむろに➡ 227 00:20:10,350 --> 00:20:15,221 懐中時計を巻き戻し こう言った> 228 00:20:15,221 --> 00:20:21,361 でも まだ あと15分ある。 さあ 次の質問は 何ですか? 229 00:20:21,361 --> 00:20:23,863 <こ… これは➡ 230 00:20:23,863 --> 00:20:29,369 ハードボイルドの象徴 チャールズ・ブロンソンが 日本のCMに出た時の➡ 231 00:20:29,369 --> 00:20:32,038 伝説的エピソード。➡ 232 00:20:32,038 --> 00:20:35,375 こいつ パクりやがったな。➡ 233 00:20:35,375 --> 00:20:39,245 …とは言いつつ ありがたい事は確かだ。➡ 234 00:20:39,245 --> 00:20:42,048 俺は 心にもない感謝の気持ちを述べ➡ 235 00:20:42,048 --> 00:20:44,748 その場を繕った> 236 00:20:46,386 --> 00:20:48,721 ありがとうございます! 237 00:20:48,721 --> 00:20:54,060 それでは EIJIさんの好きな花を 教えて頂けますか? 238 00:20:54,060 --> 00:21:00,400 いいでしょう。 僕は 全ての花を愛していますが➡ 239 00:21:00,400 --> 00:21:06,272 特に好きなのは アルストロメリアです。 240 00:21:06,272 --> 00:21:08,741 アルストロメリア。 241 00:21:08,741 --> 00:21:13,079 ご存じありませんか? とても ゴージャスな花で➡ 242 00:21:13,079 --> 00:21:15,982 インカのユリとも呼ばれています。 243 00:21:15,982 --> 00:21:18,682 インカのユリ…。 244 00:21:20,753 --> 00:21:23,453 インカのユリ! 245 00:21:28,628 --> 00:21:34,300 <夏の足音が近づいてきた 今日このごろ➡ 246 00:21:34,300 --> 00:21:39,300 皆様 いかがお過ごしでしょうか> 247 00:21:43,009 --> 00:21:47,709 <今宵も 私のつぶやきに おつきあい下さい> 248 00:21:49,716 --> 00:21:53,052 <草冠に➡ 249 00:21:53,052 --> 00:21:58,052 んんんんと んんんんと書いて…> 250 00:22:04,063 --> 00:22:11,571 <16画の世界に秘められた 刺激的な その響き。➡ 251 00:22:11,571 --> 00:22:14,607 中国や ヒマラヤ地方が原産で➡ 252 00:22:14,607 --> 00:22:19,312 日本では 鳥取砂丘で 多く栽培されている。➡ 253 00:22:19,312 --> 00:22:25,418 風雪にも負けず 厳しい環境で 寡黙に耐え抜いてきた君は➡ 254 00:22:25,418 --> 00:22:31,118 植物界のいぶし銀 木戸 修> 255 00:22:34,694 --> 00:22:40,566 <仏教の修行の場では 食べる事を禁じられていたね。➡ 256 00:22:40,566 --> 00:22:45,266 ただ 臭いからという理由で…> 257 00:22:47,707 --> 00:22:54,047 <ああ 君なしのカレーなど 僕には考えられない。➡ 258 00:22:54,047 --> 00:22:58,347 福神漬が なんぼのもんじゃい!> 259 00:23:01,387 --> 00:23:05,258 <僕は知っている。➡ 260 00:23:05,258 --> 00:23:07,727 こてんぱんに やられても➡ 261 00:23:07,727 --> 00:23:14,067 最後は 脇固めで勝利を収める 木戸 修のように➡ 262 00:23:14,067 --> 00:23:19,767 君が 紫色の花を 辺り一面に咲かせる事を…> 263 00:23:27,413 --> 00:23:30,083 <そう 教えてくれた君に➡ 264 00:23:30,083 --> 00:23:33,383 ひと言 言わせておくれ> 265 00:23:36,689 --> 00:23:43,029 <薤… スパシーバ!> 266 00:23:43,029 --> 00:23:51,729 ♬~ 267 00:23:53,372 --> 00:23:56,709 アルストロメリア インカのユリ…。 268 00:23:56,709 --> 00:24:03,583 <帰り道 俺は アルストロメリアの事で 頭が いっぱいだった。➡ 269 00:24:03,583 --> 00:24:08,321 気が付けば なじみの花屋に 足が向かっていた> 270 00:24:08,321 --> 00:24:15,728 アルストロメリア インカのユリ。 アルストロメリア インカのユリ。 271 00:24:15,728 --> 00:24:19,728 アルストロメリア インカのユリ。 272 00:24:22,602 --> 00:24:27,073 <あった。 これが アルストロメリア。➡ 273 00:24:27,073 --> 00:24:33,073 確かに ゴージャスで 肉食獣的な野性味を帯びている> 274 00:24:34,680 --> 00:24:39,352 <なんて 俺好みの花だ> 275 00:24:39,352 --> 00:24:41,687 いらっしゃいませ。 276 00:24:41,687 --> 00:24:44,023 あ 店長。 277 00:24:44,023 --> 00:24:47,527 「あ 店長」って…。 リアクション薄くないですか? 278 00:24:47,527 --> 00:24:51,030 楓ちゃんの時と違って。 そんな事ありませんよ。 279 00:24:51,030 --> 00:24:54,700 それにしても さっきから見てたら エロい顔しちゃって。 280 00:24:54,700 --> 00:24:57,603 な… エロい顔なんてしてませんよ! 281 00:24:57,603 --> 00:25:00,573 昼間っから 何考えてんだか。 まあ いいわ。 282 00:25:00,573 --> 00:25:04,377 楓ちゃん ちょっと こっち お願いしていい? 283 00:25:04,377 --> 00:25:07,713 (楓)は~い。 まだ 心の準備が…。 284 00:25:07,713 --> 00:25:10,049 いらっしゃいませ。 あ… ええ。 285 00:25:10,049 --> 00:25:16,389 あっ アルストロメリアですか? 何か 気になっちゃって。 286 00:25:16,389 --> 00:25:21,060 これ インカのユリっていうんですよね。 287 00:25:21,060 --> 00:25:26,933 <俺は ついさっき仕入れたネタを 自分の知識のように言い放った。➡ 288 00:25:26,933 --> 00:25:32,004 初めて見た事を 悟られたくなかったからだ> 289 00:25:32,004 --> 00:25:35,341 よく ご存じですね。 290 00:25:35,341 --> 00:25:38,678 この花 豹柄みたいな模様が あるんですけど➡ 291 00:25:38,678 --> 00:25:40,713 ペルーにある クスコっていう町は➡ 292 00:25:40,713 --> 00:25:44,016 豹の姿をかたどって 設計されたという話を➡ 293 00:25:44,016 --> 00:25:46,919 聞いた事があります。 294 00:25:46,919 --> 00:25:53,919 きっと インカ帝国の時代から 咲いていたんでしょうね~。 295 00:25:57,563 --> 00:26:00,366 <インカのユリか…。➡ 296 00:26:00,366 --> 00:26:07,039 こいつこそ 俺が探し求めていた花だ> 297 00:26:07,039 --> 00:26:22,388 ♬~ 298 00:26:22,388 --> 00:26:25,725 <やはり ぴったりだ。➡ 299 00:26:25,725 --> 00:26:33,332 この野性味は まさに豹。 窓際の豹だ。➡ 300 00:26:33,332 --> 00:26:37,670 あまりのセクシーさに 俺は 自分を抑える事ができず➡ 301 00:26:37,670 --> 00:26:42,341 ついつい 水やりを多めにしてしまう。➡ 302 00:26:42,341 --> 00:26:47,213 おいおい それでは 根腐れを 起こしてしまうではないか。➡ 303 00:26:47,213 --> 00:26:51,684 …と 自らを 戒めなければならないほど➡ 304 00:26:51,684 --> 00:26:56,684 俺は この花に ほれ込んだ> 305 00:26:58,557 --> 00:27:06,232 <しかし こいつは ある時から バラバラと崩れ始めた。➡ 306 00:27:06,232 --> 00:27:10,369 少しでも触ると 花びらや 雌しべどもが➡ 307 00:27:10,369 --> 00:27:12,705 散ってしまうのである。➡ 308 00:27:12,705 --> 00:27:20,379 しかも その散り際が 美しくなかった。➡ 309 00:27:20,379 --> 00:27:25,379 これでは クレマチスと同じではないか> 310 00:27:28,254 --> 00:27:36,329 <情熱が失望に変わる瞬間の なんと残酷な事か…> 311 00:27:36,329 --> 00:27:48,908 ♬~ 312 00:27:48,908 --> 00:27:50,876 シャキ~ン! 313 00:27:50,876 --> 00:27:58,017 <あれ以来 インカのユリは 毎日のように床を汚してみせる。➡ 314 00:27:58,017 --> 00:28:02,688 そうする事で やつは ぜい弱な都会っ子の俺に➡ 315 00:28:02,688 --> 00:28:06,559 何か大事な事を教えようと しているのかもしれない。➡ 316 00:28:06,559 --> 00:28:11,859 …とでも思わないと 正気ではいられなかった> 317 00:28:13,699 --> 00:28:19,572 <ああ 窓際に合う花は どこにあるのか。➡ 318 00:28:19,572 --> 00:28:23,709 そんな事を考えながら 今日も 俺は➡ 319 00:28:23,709 --> 00:28:28,381 こうして掃除機をかけている> 320 00:28:28,381 --> 00:29:20,381 ♬~ 321 00:30:33,305 --> 00:30:36,709 ♬~ 322 00:30:36,709 --> 00:30:43,315 青空を 長~い橋が渡ってる。 ん~ アメリカだねぇ! 323 00:30:43,315 --> 00:30:49,115 大きな川の向こうに 大きな街。 あれが フィラデルフィアかぁ。 324 00:30:51,757 --> 00:30:55,995 アメリカ ペンシルベニア州の歴史の街。 325 00:30:55,995 --> 00:30:58,998 合衆国誕生の地として親しまれ➡ 326 00:30:58,998 --> 00:31:03,298 ワシントンが建設されるまでは 首都だった事もあるんですって。