1 00:00:05,148 --> 00:00:11,822 大好きな朝市の心の中にいるのは 自分ではない事を➡ 2 00:00:11,822 --> 00:00:16,122 ももは 知ってしまったのです。 3 00:00:17,694 --> 00:00:21,994 ごきげんよう。 さようなら。 4 00:00:33,710 --> 00:00:43,787 ♬~ 5 00:00:43,787 --> 00:00:46,456 <俺は 都会のベランダー。➡ 6 00:00:46,456 --> 00:00:52,329 それ以上でも それ以下でもない。➡ 7 00:00:52,329 --> 00:00:55,799 そろそろ 梅雨が心配になる季節だが➡ 8 00:00:55,799 --> 00:00:58,135 俺は違う。➡ 9 00:00:58,135 --> 00:01:01,471 むしろ 水やりの手間が省けるし➡ 10 00:01:01,471 --> 00:01:04,374 雨ごときで駄目になる 柔なやつらは➡ 11 00:01:04,374 --> 00:01:08,374 この都会で生きていく資格はない> 12 00:01:15,018 --> 00:01:22,759 <植物も 人間と同じで 甘やかすと ろくなやつにならない。➡ 13 00:01:22,759 --> 00:01:27,164 俺の背中を見て 勝手に育ちやがれ。➡ 14 00:01:27,164 --> 00:01:30,500 それが 俺のモットーだ> 15 00:01:30,500 --> 00:01:33,403 どや~! 16 00:01:33,403 --> 00:01:36,403 (チャイム) 17 00:01:40,110 --> 00:01:43,980 <何かと思ったら 誕生日のお祝いにと➡ 18 00:01:43,980 --> 00:01:48,785 別れたカミさんの子ども つまり 俺の息子から➡ 19 00:01:48,785 --> 00:01:53,123 芍薬をプレゼントされた。➡ 20 00:01:53,123 --> 00:01:57,794 息子といっても 今は 離れて暮らしているので➡ 21 00:01:57,794 --> 00:02:01,131 音信不通みたいなものだが。➡ 22 00:02:01,131 --> 00:02:05,131 珍しい事もあるもんだ> 23 00:02:06,803 --> 00:02:14,477 ♬~ 24 00:02:14,477 --> 00:02:43,177 ♬~ 25 00:02:54,784 --> 00:02:59,122 <部屋に置けば 極上の香りが広がり➡ 26 00:02:59,122 --> 00:03:03,793 花びらの塊に触れると その柔らかさは➡ 27 00:03:03,793 --> 00:03:07,664 あたかも ビロードのようだ> 28 00:03:07,664 --> 00:03:12,469 ♬~ 29 00:03:12,469 --> 00:03:17,974 <「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」➡ 30 00:03:17,974 --> 00:03:21,478 …という 美人の例えにもあるように➡ 31 00:03:21,478 --> 00:03:27,350 その あで姿は 麗しいの ひと言に尽きる> 32 00:03:27,350 --> 00:03:31,488 ♬~ 33 00:03:31,488 --> 00:03:36,092 <ゴージャスな花と 野性味を帯びた葉。➡ 34 00:03:36,092 --> 00:03:39,763 その2つを兼ね備えた 植物を前に➡ 35 00:03:39,763 --> 00:03:44,100 俺は 言葉を失う> 36 00:03:44,100 --> 00:03:52,776 ♬~ 37 00:03:52,776 --> 00:03:54,711 Shall we dance? 38 00:03:54,711 --> 00:04:00,116 <強いて言えば 獣。 美しき獣。➡ 39 00:04:00,116 --> 00:04:03,019 俺は 断言する。➡ 40 00:04:03,019 --> 00:04:08,458 胴体の先に秘めた 獣の重みと柔らかさ。➡ 41 00:04:08,458 --> 00:04:13,330 あるいは 獣にはありえない その美しさこそが➡ 42 00:04:13,330 --> 00:04:19,102 芍薬という植物の魅力なのだと> 43 00:04:19,102 --> 00:04:24,808 ♬~ 44 00:04:24,808 --> 00:04:27,711 あっ! ビビった! 45 00:04:27,711 --> 00:04:31,147 さっきから 何やってんの? え? 46 00:04:31,147 --> 00:04:35,018 <そこに立っていたのは 別れたカミさんの子ども➡ 47 00:04:35,018 --> 00:04:38,421 つまり 俺の息子だった> 48 00:04:38,421 --> 00:04:43,293 よう! よう! よう! 久しぶり~! 49 00:04:43,293 --> 00:04:45,993 寒っ。 50 00:04:53,970 --> 00:04:59,109 <名前は 樹木の樹と書いて 樹。➡ 51 00:04:59,109 --> 00:05:04,781 二十歳。 現在 浪人中の予備校生だ> 52 00:05:04,781 --> 00:05:09,119 あっ ところで お前 どうやって入った? 53 00:05:09,119 --> 00:05:13,790 前に 合鍵くれたじゃん。 いつでも来ていいからって。 54 00:05:13,790 --> 00:05:17,460 そうだっけ? うん そうだよ。 55 00:05:17,460 --> 00:05:20,797 そうか。 56 00:05:20,797 --> 00:05:24,467 あっ 芍薬 ありがとうな。 57 00:05:24,467 --> 00:05:27,137 覚えててくれたんだ 父さんの誕生日。 58 00:05:27,137 --> 00:05:33,743 いや 全然 忘れてた。 「大体 今月かな~?」ぐらいで。 59 00:05:33,743 --> 00:05:38,443 うん。 あ そう。 60 00:05:40,417 --> 00:05:43,319 <昔から こいつは こうだ。➡ 61 00:05:43,319 --> 00:05:46,756 何事にも 無関心で 好きなものといえば➡ 62 00:05:46,756 --> 00:05:50,756 音楽を聴く事くらいしかない> 63 00:05:53,096 --> 00:05:56,966 母さん 元気か? 64 00:05:56,966 --> 00:05:58,966 うん。 65 00:06:00,770 --> 00:06:04,641 あ そうか。 66 00:06:04,641 --> 00:06:09,446 <これ以上 会話が続かなくなった。➡ 67 00:06:09,446 --> 00:06:17,120 突然 家に来たという事は 何か 相談事でもあるのだろうか。➡ 68 00:06:17,120 --> 00:06:20,990 俺は この冷めた空気を打破すべく➡ 69 00:06:20,990 --> 00:06:26,796 プライベートな会話をして 緊張を解きほぐす作戦に出た> 70 00:06:26,796 --> 00:06:29,699 (せきばらい) 71 00:06:29,699 --> 00:06:31,634 彼女はいるのか? 72 00:06:31,634 --> 00:06:34,070 先週 振られたばっか。 73 00:06:34,070 --> 00:06:38,741 その話 やめてくれる? まだ 回復してねえから。 74 00:06:38,741 --> 00:06:42,078 あ… ごめん。 75 00:06:42,078 --> 00:06:45,078 <秒殺だ> 76 00:06:48,952 --> 00:06:52,722 えっと じゃあ…。 77 00:06:52,722 --> 00:06:58,428 予備校の夏期講習は いつからだ? 78 00:06:58,428 --> 00:07:01,097 <今度は どうだ。➡ 79 00:07:01,097 --> 00:07:07,437 「いつ」と振れば 「今でしょ」と 返してくるに違いない。➡ 80 00:07:07,437 --> 00:07:10,773 それで場が和むという寸法だ。➡ 81 00:07:10,773 --> 00:07:16,646 しかも 「予備校の」という伏線も 張っている> 82 00:07:16,646 --> 00:07:21,784 夏期講習… まだ 日程 出てねえな。 83 00:07:21,784 --> 00:07:25,121 …っていうか 大体 その振り 去年のじゃん。 84 00:07:25,121 --> 00:07:27,790 ハハハハハハ…。 85 00:07:27,790 --> 00:07:31,661 逆に ウケる。 ハハハハ…。 86 00:07:31,661 --> 00:07:35,598 <これだから 人間のガキは 駄目だ!➡ 87 00:07:35,598 --> 00:07:42,598 そこへいくと 植物は こんな 憎たらしい態度をとる事はない> 88 00:07:44,274 --> 00:07:48,077 父さん ちょっと出かけるから。 89 00:07:48,077 --> 00:07:50,747 どこ行くの? 90 00:07:50,747 --> 00:07:53,416 いいだろう どこだって。 91 00:07:53,416 --> 00:07:55,716 隠す事ないじゃん。 92 00:07:57,754 --> 00:08:01,624 花屋だよ。 花屋? 93 00:08:01,624 --> 00:08:05,628 ふ~ん。 暇だから 俺も ついてっていい? 94 00:08:05,628 --> 00:08:07,764 駄目だ それは! 95 00:08:07,764 --> 00:08:10,667 何で? 行ったら まずい事でもあんの? 96 00:08:10,667 --> 00:08:14,667 そ… そんな事 ある訳ないだろう! 97 00:08:17,106 --> 00:08:21,444 ♬~ 98 00:08:21,444 --> 00:08:26,783 <こうして 俺は 息子と 花屋に行くはめになった。➡ 99 00:08:26,783 --> 00:08:32,055 今日ばかりは かっこ悪いところを 見せる訳にはいかない> 100 00:08:32,055 --> 00:08:48,404 ♬~ 101 00:08:48,404 --> 00:08:51,074 うん…。 102 00:08:51,074 --> 00:08:59,749 ♬~ 103 00:08:59,749 --> 00:09:02,085 ここだ。 うわっ! 104 00:09:02,085 --> 00:09:05,421 やっば! めっちゃ 植物あんじゃん。 ああ。 105 00:09:05,421 --> 00:09:08,091 どうだ? すごいだろう。 106 00:09:08,091 --> 00:09:11,761 ここは 俺が なじみにしている花屋だ。 107 00:09:11,761 --> 00:09:16,099 まあ 品ぞろえがいいから 通ってやってんだけどな。 108 00:09:16,099 --> 00:09:18,768 いらっしゃいませ。 うわっ! あ あ…。 109 00:09:18,768 --> 00:09:23,106 何だよ それ。 「何だ」って 何だよ! 110 00:09:23,106 --> 00:09:27,443 <これでは 親のメンツが 丸潰れだ> 111 00:09:27,443 --> 00:09:29,779 あの… こちらは? 112 00:09:29,779 --> 00:09:34,617 ああ。 息子です 一応。 いや 一応って…。 113 00:09:34,617 --> 00:09:37,587 初めまして。 木下 楓です。 114 00:09:37,587 --> 00:09:42,358 樹です。 父が お世話になってます。 115 00:09:42,358 --> 00:09:46,729 じゃあ 俺 あっち行ってようかな。 うん。 116 00:09:46,729 --> 00:09:50,729 ごゆっくり。 何 言ってんだ お前! 117 00:09:52,402 --> 00:09:55,304 息子さん いらっしゃったんですね。 118 00:09:55,304 --> 00:10:02,745 ええ はい。 息子といっても 今は 離れて暮らしてますんで。 119 00:10:02,745 --> 00:10:06,082 その… 別れた女房のところで。 120 00:10:06,082 --> 00:10:09,752 あっ そうだったんですか。 すみません。 121 00:10:09,752 --> 00:10:13,089 いえ いいんです。 122 00:10:13,089 --> 00:10:17,960 <…などと バツイチ中年男の哀愁を 醸し出しながら➡ 123 00:10:17,960 --> 00:10:24,260 俺の両目は ある植物に くぎづけとなっていた> 124 00:10:28,638 --> 00:10:35,638 <鮮やかな色と 風船のように 膨らんだ花が 魅力的だ> 125 00:10:38,114 --> 00:10:41,784 これ カルセオラリアですよね。 126 00:10:41,784 --> 00:10:47,657 はい。 先週 入ったばっかりで。 そうですか。 127 00:10:47,657 --> 00:10:53,796 ♬~ 128 00:10:53,796 --> 00:10:56,699 どうかされましたか? あ いや…。 129 00:10:56,699 --> 00:11:01,699 何か ハエが飛んでたみたいで。 ハハハハハ! 130 00:11:04,140 --> 00:11:09,011 仲がいいんですね。 いや 全然ですよ。 131 00:11:09,011 --> 00:11:12,482 憎たらしいばっかりで。 132 00:11:12,482 --> 00:11:15,384 何か 羨ましいです。 133 00:11:15,384 --> 00:11:19,155 私 小さい時に 父を亡くしてるので➡ 134 00:11:19,155 --> 00:11:23,025 お父さんの事 あんまり よく覚えてなくて。 135 00:11:23,025 --> 00:11:25,828 あっ 気にしないで下さいね。 136 00:11:25,828 --> 00:11:28,731 お二人が あんまりにも 楽しそうだったので。 137 00:11:28,731 --> 00:11:31,731 あ いえ そんな…。 138 00:11:33,436 --> 00:11:36,773 楓ちゃん ちょっと あっち お願い。 139 00:11:36,773 --> 00:11:39,675 はい。 失礼します。 失礼します。 140 00:11:39,675 --> 00:11:42,645 近々 また…。 141 00:11:42,645 --> 00:11:46,783 いい息子さんですね。 あいつがですか? 142 00:11:46,783 --> 00:11:50,119 はい。 さっき ちゃんと挨拶してくれましたよ。 143 00:11:50,119 --> 00:11:53,456 挨拶ぐらい 犬だってしますよ。 144 00:11:53,456 --> 00:11:55,391 店長 お子さんは? 145 00:11:55,391 --> 00:11:59,328 中学生の男の子が 1人。 また これが 生意気で➡ 146 00:11:59,328 --> 00:12:03,132 毎日 ケンカばっかり。 147 00:12:03,132 --> 00:12:08,004 でも そうやって ケンカできるだけ 羨ましいです。 148 00:12:08,004 --> 00:12:10,807 僕なんか 久しぶりに会ったせいか➡ 149 00:12:10,807 --> 00:12:16,479 何 話していいんだか 正直 よく分かんなくて。 150 00:12:16,479 --> 00:12:20,817 すぐに話せるようになりますよ。 151 00:12:20,817 --> 00:12:23,517 …だといいんですけど。 152 00:12:32,428 --> 00:12:35,097 (樹)何 あの人に ほれてんの? 153 00:12:35,097 --> 00:12:38,000 バ…! 何 言ってんだ お前! 154 00:12:38,000 --> 00:12:41,437 大丈夫 大丈夫。 お母さんに ないしょにしといてやるから。 155 00:12:41,437 --> 00:12:45,308 関係ないだろ 母さんは! ハハハハハハ! 156 00:12:45,308 --> 00:12:48,110 笑い過ぎだぞ。 ハハハハ! 157 00:12:48,110 --> 00:12:50,446 <俺は分かっている。➡ 158 00:12:50,446 --> 00:12:57,119 こんな感じで はしゃいでる時は 大抵 悩んでいる時だ。➡ 159 00:12:57,119 --> 00:13:02,458 素直じゃないところは 俺譲りか> 160 00:13:02,458 --> 00:13:06,796 じゃあ… 帰ろっかな。 161 00:13:06,796 --> 00:13:09,131 ああ。 162 00:13:09,131 --> 00:13:13,431 あのさ…。 何だ? 163 00:13:20,142 --> 00:13:25,142 いや… 何でもない。 じゃあ。 164 00:13:29,151 --> 00:13:32,755 <「悩みでも あるんじゃないのか?」。➡ 165 00:13:32,755 --> 00:13:37,755 そのひと言が 言えなかった> 166 00:13:54,043 --> 00:13:56,343 ただいまと。 167 00:13:59,982 --> 00:14:02,752 <全く 俺ってやつは➡ 168 00:14:02,752 --> 00:14:08,752 植物には 強気なのに 人間には からっきしだ> 169 00:14:12,128 --> 00:14:16,799 (電子レンジの音) 170 00:14:16,799 --> 00:14:31,747 ♬~ 171 00:14:31,747 --> 00:14:38,087 <一人で食べる夕食は こんなに まずかったか> 172 00:14:38,087 --> 00:15:01,310 ♬~ 173 00:15:01,310 --> 00:15:08,084 <ともあれ 俺のベランダに カルセオラリアがやって来た> 174 00:15:08,084 --> 00:15:13,789 ♬~ 175 00:15:13,789 --> 00:15:18,461 <表が赤で 裏が黄色。➡ 176 00:15:18,461 --> 00:15:24,800 丸みを帯びた風船状のフォルムが 何とも愛らしい> 177 00:15:24,800 --> 00:15:27,470 ♬~ 178 00:15:27,470 --> 00:15:33,275 <触ってみると ペコッとへこむ。➡ 179 00:15:33,275 --> 00:15:36,746 小さな穴から 息を吹き込むと➡ 180 00:15:36,746 --> 00:15:39,746 元に戻る> 181 00:15:43,619 --> 00:15:47,757 <落ちた花は しばらく膨らんだままで➡ 182 00:15:47,757 --> 00:15:52,457 その姿は 金魚を思わせる> 183 00:15:54,096 --> 00:15:58,968 <何だか 陸に揚げられたようで ふびんに思った俺は➡ 184 00:15:58,968 --> 00:16:02,968 グラスの中で泳がせてみる> 185 00:16:05,441 --> 00:16:08,778 <水に浮いた花は 時折 揺れ➡ 186 00:16:08,778 --> 00:16:13,778 まさに 悠々たる魚の風情である> 187 00:16:19,121 --> 00:16:25,821 <俺は しばらくの間 その様子を ぼ~っと眺めていた> 188 00:16:33,069 --> 00:16:46,615 ♬~(祭り囃子) 189 00:16:46,615 --> 00:16:49,615 (チャイム) 190 00:16:55,091 --> 00:16:57,026 あっ。 191 00:16:57,026 --> 00:17:00,963 <モニターに映っていたのは 別れたカミさんの子ども➡ 192 00:17:00,963 --> 00:17:04,963 つまり 息子だった> 193 00:17:08,104 --> 00:17:11,006 今日は どうした? 194 00:17:11,006 --> 00:17:15,778 ううん 別に。 近くまで来たからさ。 195 00:17:15,778 --> 00:17:18,778 そうか。 196 00:17:25,121 --> 00:17:27,821 植物 面白い? 197 00:17:29,458 --> 00:17:32,061 どうした? 急に。 198 00:17:32,061 --> 00:17:37,933 別に いいじゃん。 何で 植物 育ててんの? 199 00:17:37,933 --> 00:17:43,072 それは お前… そこに植物があるからさ。 200 00:17:43,072 --> 00:17:47,072 真面目に聞いてんだけど。 あ ごめん。 201 00:17:48,944 --> 00:17:53,082 ひと言で言うなら…➡ 202 00:17:53,082 --> 00:17:55,985 生命の神秘だ。 203 00:17:55,985 --> 00:18:00,956 生命の神秘? ハハハ…。 スケールでかっ! 204 00:18:00,956 --> 00:18:06,095 植物ってやつは 人間の常識が通用しない。 205 00:18:06,095 --> 00:18:09,965 どんなに 一生懸命 世話しても 枯れるし➡ 206 00:18:09,965 --> 00:18:13,769 いい加減にやっても 咲く事がある。 207 00:18:13,769 --> 00:18:20,643 つまりだな うまくいかない事の方が多いんだ。 208 00:18:20,643 --> 00:18:24,780 あれ? 何の話だっけ? 今。 209 00:18:24,780 --> 00:18:28,117 何か よく分かんないけど➡ 210 00:18:28,117 --> 00:18:33,389 いいよな 打ち込める事があって。 211 00:18:33,389 --> 00:18:35,324 この間 花屋行った時も➡ 212 00:18:35,324 --> 00:18:38,324 めちゃくちゃ うれしそうだったもんな。 213 00:18:49,405 --> 00:18:52,074 ビールでも飲むか。 214 00:18:52,074 --> 00:18:54,074 え? 215 00:19:01,750 --> 00:19:05,450 じゃあ 乾杯。 乾杯。 216 00:19:12,761 --> 00:19:15,097 (2人)あ~! 217 00:19:15,097 --> 00:19:18,000 うわっ! 初めて ビールうまいって思った。 218 00:19:18,000 --> 00:19:22,000 ハハハッ! そうか。 うん。 219 00:19:24,106 --> 00:19:28,777 そういえば お前と こうやって ビール飲むの 初めてだったな。 220 00:19:28,777 --> 00:19:33,048 そうだっけ? ああ そうだ。 221 00:19:33,048 --> 00:19:36,919 まさか こんな日が来るとはな~。 222 00:19:36,919 --> 00:19:38,919 (2人の笑い声) 223 00:19:42,725 --> 00:19:46,025 (2人)あ~! 224 00:19:55,738 --> 00:20:01,438 お前 何か 悩みでもあんのか? 225 00:20:04,079 --> 00:20:07,779 う~ん…。 226 00:20:10,419 --> 00:20:14,119 実はさ…。 227 00:20:16,759 --> 00:20:23,432 俺 何のために勉強してんのか よく分かんないんだよね。 228 00:20:23,432 --> 00:20:30,773 予備校にも 一応 通ってるけど うわの空っていうか。 229 00:20:30,773 --> 00:20:37,646 もし 大学入ったとしても 別に やりてえ事とかねえし➡ 230 00:20:37,646 --> 00:20:43,352 将来 何になりてえとかもないし。 231 00:20:43,352 --> 00:20:49,052 …つうか 今の俺 何者でもないっていうかさ。 232 00:20:55,464 --> 00:20:58,801 そうか。 233 00:20:58,801 --> 00:21:03,472 <植物であれば 子株は 自らの生命力で➡ 234 00:21:03,472 --> 00:21:08,143 土に根を張り 生きていく。➡ 235 00:21:08,143 --> 00:21:12,815 だが 人間は そうはいかない。➡ 236 00:21:12,815 --> 00:21:18,487 ここは ひとつ 親の威厳を見せたいところだが➡ 237 00:21:18,487 --> 00:21:23,487 さて どう言ったもんか…> 238 00:21:32,034 --> 00:21:36,972 これな カルセオラリアっていうんだけどな➡ 239 00:21:36,972 --> 00:21:41,110 面白い形してんだろ。 うん 金魚みたい。 240 00:21:41,110 --> 00:21:44,012 これ 何で膨らんでんの? 241 00:21:44,012 --> 00:21:50,119 これな 空気が入ってんだよ。 へえ~。 242 00:21:50,119 --> 00:21:54,790 そういえば お前が小さい頃 縁日か何かで➡ 243 00:21:54,790 --> 00:21:58,460 金魚すくいが したいって言って 泣いた事があったな。 244 00:21:58,460 --> 00:22:01,130 そうだっけ。 うん。 245 00:22:01,130 --> 00:22:03,799 それで やってみたら 全然 取れなくて➡ 246 00:22:03,799 --> 00:22:08,470 また 泣いて。 思い出した! 247 00:22:08,470 --> 00:22:11,140 最後の一回だからって言われて やったら➡ 248 00:22:11,140 --> 00:22:14,140 1匹だけ釣れたんだよね。 249 00:22:15,811 --> 00:22:19,481 あの時 うれしそうだったな お前。 250 00:22:19,481 --> 00:22:22,481 めちゃくちゃ うれしかった。 251 00:22:24,153 --> 00:22:28,023 この花が落ちたらな 水に浮かべてやるんだ。 252 00:22:28,023 --> 00:22:31,960 そうすると まるで 金魚が 泳いでるみたいに見えるんだ。 253 00:22:31,960 --> 00:22:34,660 へえ~。 254 00:22:42,638 --> 00:22:48,110 いい大学 入れとか 立派な大人になれとか➡ 255 00:22:48,110 --> 00:22:51,780 俺は 偉そうな事は言えない。 256 00:22:51,780 --> 00:22:59,121 でもな 遊びでも何でも とにかく 目いっぱい やってみたらどうだ。 257 00:22:59,121 --> 00:23:02,991 この花みたいに 空気いっぱい吸い込んで➡ 258 00:23:02,991 --> 00:23:05,461 風船でも 金魚でも➡ 259 00:23:05,461 --> 00:23:09,798 何にでもなれるように 準備だけはしとけ。 260 00:23:09,798 --> 00:23:13,135 それで いざ やりたい事が出来たら➡ 261 00:23:13,135 --> 00:23:17,473 それを ガ~ッて吐き出せばいい。 262 00:23:17,473 --> 00:23:22,811 <決まった。 とっさのアドリブだったが➡ 263 00:23:22,811 --> 00:23:29,685 今 俺は カルセオラリアに絡めて いい事を言った。➡ 264 00:23:29,685 --> 00:23:35,090 あいつは きっと 感動して 泣いているに違いない。➡ 265 00:23:35,090 --> 00:23:40,762 俺は 誇らしげに 息子の方を見た> 266 00:23:40,762 --> 00:23:43,665 あれ? 267 00:23:43,665 --> 00:23:47,436 え? 今 何か言った? 268 00:23:47,436 --> 00:23:52,736 あ いや… 何でもな~い。 あ そう。 269 00:24:02,784 --> 00:24:10,659 ♬~ 270 00:24:10,659 --> 00:24:14,129 (樹)なあ。 何だ? 271 00:24:14,129 --> 00:24:18,800 俺の名前って 誰が付けたの? 俺だよ。 272 00:24:18,800 --> 00:24:23,672 うそだ。 お母さん 自分だって言ってたよ。 273 00:24:23,672 --> 00:24:29,811 まあ 正確に言えば 半々だな。 半々って 何だよ。 274 00:24:29,811 --> 00:24:34,082 いや 母さんが ジュリーのファンでな。 うん。 275 00:24:34,082 --> 00:24:36,985 俺は 当時から 植物好きだったから➡ 276 00:24:36,985 --> 00:24:41,423 それで 樹と書いて 樹にしたんだ。 277 00:24:41,423 --> 00:24:46,295 何だよ それ。 大体 ジュリー 俺 世代じゃねえし。 278 00:24:46,295 --> 00:24:51,433 あ でも ちゃんと意味もあるんだよ。 279 00:24:51,433 --> 00:24:58,774 将来 大きくなって 葉をいっぱい 空に向かって広げてほしい。 280 00:24:58,774 --> 00:25:02,774 そんな でっかい人間に なってほしくてな。 281 00:25:05,113 --> 00:25:07,813 そうなんだ。 282 00:25:12,988 --> 00:25:15,757 じゃあ 帰るわ。 283 00:25:15,757 --> 00:25:20,757 そうか。 また いつでも来ていいからな。 284 00:25:22,464 --> 00:25:25,367 分かった。 285 00:25:25,367 --> 00:25:28,067 じゃあ。 286 00:25:45,687 --> 00:25:48,687 おやじ! 287 00:25:50,626 --> 00:25:55,764 俺 いっぱい 空気吸ってみるよ! 288 00:25:55,764 --> 00:26:03,105 いっぱい いっぱい 空気吸って➡ 289 00:26:03,105 --> 00:26:07,105 でっかい人間になるから! 290 00:26:08,777 --> 00:26:11,680 じゃあな! 291 00:26:11,680 --> 00:26:17,786 ♬~ 292 00:26:17,786 --> 00:26:21,657 あいつ…。 293 00:26:21,657 --> 00:26:25,657 気を付けて帰れよ! 294 00:26:29,398 --> 00:26:33,735 分かってるよ! もう ガキじゃねえし! 295 00:26:33,735 --> 00:26:41,610 ♬~ 296 00:26:41,610 --> 00:26:48,283 <また会えるというのに 俺たちは 大声を出し合った。➡ 297 00:26:48,283 --> 00:26:53,088 永遠の別れでもなかろうに> 298 00:26:53,088 --> 00:26:58,427 ♬~ 299 00:26:58,427 --> 00:27:04,727 <あいつは 見えなくなるまで 一度も振り向かなかった> 300 00:27:06,768 --> 00:27:13,642 <それでいい。 前に向かって走るんだ> 301 00:27:13,642 --> 00:27:45,607 ♬~ 302 00:27:45,607 --> 00:27:50,907 <俺は 家に帰り ベランダで一人 乾杯した> 303 00:27:53,081 --> 00:27:58,754 <カルセオラリアの赤い花が 気持ちよさそうに➡ 304 00:27:58,754 --> 00:28:03,625 いつまでも 風に揺れていた> 305 00:28:03,625 --> 00:29:26,625 ♬~ 306 00:30:33,708 --> 00:30:40,782 ♬~ 307 00:30:40,782 --> 00:30:45,287 空の下に広がっている 緑のじゅうたん。 308 00:30:45,287 --> 00:30:49,287 さすが ルーマニア。 農業国なんだなあ。 309 00:30:52,794 --> 00:30:55,697 向かっているのは ブカレスト。 310 00:30:55,697 --> 00:31:01,697 かつて「東欧のプチパリ」と呼ばれた 首都にして由緒ある古都だ。