1 00:00:01,476 --> 00:00:06,176 ああ。 隠してるさ! 2 00:00:07,916 --> 00:00:11,587 ああ… うめえ。 やめちゃあ。 3 00:00:11,587 --> 00:00:14,256 やめちゃあ! 4 00:00:14,256 --> 00:00:21,129 この2人の関係は 戦時下でも ちっとも変わりませんね。 5 00:00:21,129 --> 00:00:25,129 ごきげんよう。 さようなら。 6 00:00:33,842 --> 00:00:37,579 (セミの声) 7 00:00:37,579 --> 00:00:40,482 ♬~ 8 00:00:40,482 --> 00:00:45,454 <暑い。 それにしても暑い。➡ 9 00:00:45,454 --> 00:00:49,591 エアコンが壊れ 部屋が 電子レンジの中みたいな状態に➡ 10 00:00:49,591 --> 00:00:52,494 陥ってしまった。➡ 11 00:00:52,494 --> 00:00:54,930 俺は 冷凍食品か!➡ 12 00:00:54,930 --> 00:00:59,801 …と叫んだところで 涼しくなるはずもない。➡ 13 00:00:59,801 --> 00:01:08,276 それで 修理をしている間 俺は散歩に出かけたという訳だ。➡ 14 00:01:08,276 --> 00:01:10,612 俺は この機会に➡ 15 00:01:10,612 --> 00:01:16,952 街なかの植物の状況を 観察しようと試みた。➡ 16 00:01:16,952 --> 00:01:19,855 そうした使命を 自分に課す事で➡ 17 00:01:19,855 --> 00:01:24,292 暑さという現実を 忘れたかったのだ> 18 00:01:24,292 --> 00:01:26,228 暑くない? 暑い。 19 00:01:26,228 --> 00:01:28,928 あっ アイス売ってるじゃん。 20 00:01:30,966 --> 00:01:32,901 あっ! 21 00:01:32,901 --> 00:01:35,804 (2人)あっ 痴漢のおじさん。 22 00:01:35,804 --> 00:01:38,407 そんな… 痴漢じゃありませんよ! 23 00:01:38,407 --> 00:01:40,909 じゃあ ここで 何してたのよ? 24 00:01:40,909 --> 00:01:45,781 女の子を物色してたんでしょう。 物色なんて そんな…! 25 00:01:45,781 --> 00:01:49,251 それより 君たち その服装は 何? 26 00:01:49,251 --> 00:01:52,587 いくら暑いからって 肌が出過ぎ! 27 00:01:52,587 --> 00:01:57,259 あっ また 嫌らしい目で見てる。 この変態! 28 00:01:57,259 --> 00:01:59,194 へ… 変態って! 29 00:01:59,194 --> 00:02:04,194 あっ! ア… イス~! 30 00:02:14,609 --> 00:02:22,284 ♬~ 31 00:02:22,284 --> 00:02:50,284 ♬~ 32 00:02:55,183 --> 00:02:57,119 <たまには こうして➡ 33 00:02:57,119 --> 00:03:01,590 ベランダの植物どもと 距離を置くのも いいものだ。➡ 34 00:03:01,590 --> 00:03:04,259 始終 一緒に暮らしていると➡ 35 00:03:04,259 --> 00:03:06,928 お互いの悪いところばかりが 目につき➡ 36 00:03:06,928 --> 00:03:12,601 出会った当初の新鮮さを 見失いがちだからだ> 37 00:03:12,601 --> 00:03:17,472 ♬~ 38 00:03:17,472 --> 00:03:23,945 <街を巡ると 家の前に 鉢を置いている光景を見かける。➡ 39 00:03:23,945 --> 00:03:26,848 下町に多いケースだ。➡ 40 00:03:26,848 --> 00:03:34,890 俺は それを路上派と呼び 勝手に親しみを感じている。➡ 41 00:03:34,890 --> 00:03:40,762 以前は それを ささやかな自慢と 解釈していた。➡ 42 00:03:40,762 --> 00:03:45,901 しかし 考えてみれば 俺も 無意識に➡ 43 00:03:45,901 --> 00:03:52,240 きれいな花を ベランダの最前線に 配置していた。➡ 44 00:03:52,240 --> 00:03:56,912 植物どもは 突如として 生の供宴を開始し➡ 45 00:03:56,912 --> 00:04:00,248 短い時の中で散っていく。➡ 46 00:04:00,248 --> 00:04:03,151 俺たちは そんなやつらを前にして➡ 47 00:04:03,151 --> 00:04:08,123 自分だけでは 存在の重みが 釣り合わないと考える。➡ 48 00:04:08,123 --> 00:04:14,262 一人の人間では この奇跡を受け止めきれない。➡ 49 00:04:14,262 --> 00:04:20,962 そう感じるからこそ 他者の目に 花をさらすのだ> 50 00:04:33,548 --> 00:04:37,886 <俺は 路上の植物たちに 夢中になるあまり➡ 51 00:04:37,886 --> 00:04:43,225 気が付くと 知らない路地に 迷い込んでしまった> 52 00:04:43,225 --> 00:05:14,925 ♬~ 53 00:05:18,593 --> 00:05:22,931 こんにちは。 あ… ど どうも…。 54 00:05:22,931 --> 00:05:25,600 こんにちは! 55 00:05:25,600 --> 00:05:32,874 暑いですね。 そ… そうですね。 56 00:05:32,874 --> 00:05:39,874 お散歩ですか? あ… ええ まあ。 57 00:05:41,883 --> 00:05:47,222 <行きずりの女性にまで 動揺してしまうとは…> 58 00:05:47,222 --> 00:05:51,559 (小声で)近づいちゃったりして…。 59 00:05:51,559 --> 00:05:55,897 <俺は そんな みっともない自分を ごまかすべく➡ 60 00:05:55,897 --> 00:06:02,897 植物の事について話しかけ 冷静さを保とうとした> 61 00:06:11,913 --> 00:06:17,213 花 お好きなんですか? はい。 62 00:06:19,254 --> 00:06:22,924 僕も好きです。 63 00:06:22,924 --> 00:06:26,261 あ はい。 64 00:06:26,261 --> 00:06:32,067 えっと え~ これは…。 65 00:06:32,067 --> 00:06:34,069 <初めて見る花だ。➡ 66 00:06:34,069 --> 00:06:40,208 しかし いきなり知らないでは あまりにも かっこ悪すぎる。➡ 67 00:06:40,208 --> 00:06:48,550 俺は いかにも知っている体で その場をしのぐ作戦に出た> 68 00:06:48,550 --> 00:06:50,885 確か これは え~…。 69 00:06:50,885 --> 00:06:53,221 アプテニアです。 あっ。 70 00:06:53,221 --> 00:06:59,094 ええ アプテニア。 はいはい。 原産は 確か…。 71 00:06:59,094 --> 00:07:03,565 え~っと インド。 あっ そう インド。 72 00:07:03,565 --> 00:07:06,468 …じゃないや。 あれ あの~ 南アフリカです。 73 00:07:06,468 --> 00:07:09,437 ですよね。 74 00:07:09,437 --> 00:07:13,575 僕も 南アフリカじゃないかなって 思ってたんです。 75 00:07:13,575 --> 00:07:15,910 ハッハッハッハ。 フフフ。 76 00:07:15,910 --> 00:07:20,248 <どうやら うまくいったようだ> 77 00:07:20,248 --> 00:07:29,591 ♬~ 78 00:07:29,591 --> 00:07:33,194 随分 多いですね。 79 00:07:33,194 --> 00:07:36,097 お花屋さんやるのが 夢なんです。 80 00:07:36,097 --> 00:07:39,868 お一人でですか? いえ 主人と2人で。 81 00:07:39,868 --> 00:07:44,739 あ~ そうですか。 ご主人と。 ハッハッハッハ。 82 00:07:44,739 --> 00:07:48,877 なので 今 2人で働いて お金ためて➡ 83 00:07:48,877 --> 00:07:52,547 来年辺りには お店 出せそうなんですよ。 84 00:07:52,547 --> 00:07:55,884 そうですか。 それは よかった。 85 00:07:55,884 --> 00:07:59,584 あっ ありがとうございます。 86 00:08:01,222 --> 00:08:05,093 どうして お花屋さんを? 87 00:08:05,093 --> 00:08:09,097 あの… 心が きれいに なりたいんだったら➡ 88 00:08:09,097 --> 00:08:11,566 たくさん きれいなものを見なさいって➡ 89 00:08:11,566 --> 00:08:15,236 小さい頃から 両親に言われてまして。 90 00:08:15,236 --> 00:08:17,172 それに➡ 91 00:08:17,172 --> 00:08:20,909 つらい事があると 嫌な事ばっか 考えちゃうじゃないですか。 92 00:08:20,909 --> 00:08:26,209 だから お花に囲まれてたら 人に優しくできるかなって。 93 00:08:28,249 --> 00:08:32,520 それに きれいな花は たくさんの人に見てもらって➡ 94 00:08:32,520 --> 00:08:35,190 育ててほしいですから。 95 00:08:35,190 --> 00:08:40,862 ♬~ 96 00:08:40,862 --> 00:08:43,862 あ…。 97 00:08:47,535 --> 00:08:50,872 ご主人 いらっしゃるんですよね? 98 00:08:50,872 --> 00:08:52,872 はい。 はい。 99 00:08:56,544 --> 00:08:59,214 お気を付けて。 はい。 100 00:08:59,214 --> 00:09:04,552 <俺は 丁寧に挨拶し その場を後にした> 101 00:09:04,552 --> 00:09:09,224 ♬~ 102 00:09:09,224 --> 00:09:16,097 (風鈴の音) 103 00:09:16,097 --> 00:09:21,236 <「心をきれいに」か…> 104 00:09:21,236 --> 00:09:32,236 ♬~ 105 00:09:34,182 --> 00:09:41,856 ♬~ 106 00:09:41,856 --> 00:09:48,196 <それにしても この暑さ どうにかならないものか。➡ 107 00:09:48,196 --> 00:09:53,196 すると 俺の目の前に 銭湯が現れた> 108 00:09:57,205 --> 00:10:00,875 <暑い時に 熱い風呂に入る。➡ 109 00:10:00,875 --> 00:10:05,575 これこそ 最高ではないか> 110 00:10:12,220 --> 00:10:14,520 こんにちは。 1人。 111 00:10:18,893 --> 00:10:20,828 あっ。 112 00:10:20,828 --> 00:10:24,232 どうも。 約束 覚えててくれたんですね。 113 00:10:24,232 --> 00:10:26,167 や… 約束? 114 00:10:26,167 --> 00:10:28,102 言ってたじゃないですか こないだ。 115 00:10:28,102 --> 00:10:31,105 一緒に サウナ行きましょうよって。 えっ? 116 00:10:31,105 --> 00:10:37,245 <ま… まずい。 これでは 勘違いされてしまう。➡ 117 00:10:37,245 --> 00:10:40,148 いくら イケメンで 細マッチョだからって➡ 118 00:10:40,148 --> 00:10:43,585 俺は 男に興味はない。➡ 119 00:10:43,585 --> 00:10:47,885 なんとか 切り抜けなければ…> 120 00:10:49,924 --> 00:10:52,594 立花君 サウナ 行ってて。 121 00:10:52,594 --> 00:10:57,265 僕 コーヒー牛乳 先に飲む派だから。 122 00:10:57,265 --> 00:11:02,937 そうですか。 じゃあ 待ってます サウナで。 123 00:11:02,937 --> 00:11:13,237 ♬~ 124 00:11:16,284 --> 00:11:19,954 やっば! あ… 急用 出来たんで。 125 00:11:19,954 --> 00:11:22,290 やっば! 126 00:11:22,290 --> 00:11:24,290 やっば! 127 00:11:26,160 --> 00:11:30,460 やっば! ギリギリ セーフ! 128 00:11:41,776 --> 00:11:48,449 <花の名前が付いた名曲たち。 今回は この曲です> 129 00:11:48,449 --> 00:11:56,090 ♬~ 130 00:11:56,090 --> 00:12:07,602 ♬「忘れはしないよ 時が流れても」 131 00:12:07,602 --> 00:12:13,941 ♬「いたずらなやりとりや」 132 00:12:13,941 --> 00:12:25,953 ♬「心のトゲさえも 君が笑えばもう」 133 00:12:25,953 --> 00:12:33,761 ♬「小さく丸くなっていたこと」 134 00:12:33,761 --> 00:12:37,899 ♬~ 135 00:12:37,899 --> 00:12:43,771 ♬「かわるがわる のぞいた穴から」 136 00:12:43,771 --> 00:12:50,244 ♬「何を見てたかなぁ?」 137 00:12:50,244 --> 00:12:55,917 ♬「一人きりじゃ叶えられない」 138 00:12:55,917 --> 00:12:59,787 ♬「夢もあったけれど」 139 00:12:59,787 --> 00:13:13,935 ♬「さよなら 君の声を 抱いて歩いていく」 140 00:13:13,935 --> 00:13:19,807 ♬「ああ 僕のままで」 141 00:13:19,807 --> 00:13:26,107 ♬「どこまで 届くだろう」 142 00:13:32,420 --> 00:13:43,564 ♬~ 143 00:13:43,564 --> 00:13:46,901 <街には 路上派から派生した➡ 144 00:13:46,901 --> 00:13:50,238 ネオ路上派ともいうべき存在が たまにいる。➡ 145 00:13:50,238 --> 00:13:56,938 ミニ観葉植物や 小さな鉢植えを売る輩の事だ> 146 00:14:02,250 --> 00:14:09,924 <俺には 以前から気になっている ネオ路上派の青年がいた。➡ 147 00:14:09,924 --> 00:14:12,827 いつもは 遠目から 見るだけであったが➡ 148 00:14:12,827 --> 00:14:15,797 もっと間近で 植物を見たい➡ 149 00:14:15,797 --> 00:14:22,797 …という衝動を 今日の俺は 抑える事ができなかった> 150 00:15:00,241 --> 00:15:05,913 <ふと見ると ひときわ 俺の目を引く植物がいた。➡ 151 00:15:05,913 --> 00:15:08,249 モミジである。➡ 152 00:15:08,249 --> 00:15:12,119 糸のように細い茎に 緑の葉。➡ 153 00:15:12,119 --> 00:15:18,259 しなやかな枝に宿る 確かな生命。➡ 154 00:15:18,259 --> 00:15:20,928 俺は 即座に 欲しいと思った。➡ 155 00:15:20,928 --> 00:15:23,831 小さいながらも 凜とした たたずまいに➡ 156 00:15:23,831 --> 00:15:28,603 俺は すっかり 魅せられていたのだ> 157 00:15:28,603 --> 00:15:31,303 こんにちは。 158 00:15:33,875 --> 00:15:36,175 こんにちは。 159 00:15:37,745 --> 00:15:41,215 いつも ここで 店 出してますよね? 160 00:15:41,215 --> 00:15:44,886 はい 時々。 161 00:15:44,886 --> 00:15:47,221 お店じゃないんですが。 162 00:15:47,221 --> 00:15:53,521 えっ 店じゃない? じゃあ なぜ ここに? 163 00:15:58,833 --> 00:16:02,770 人や植物が存在するのに➡ 164 00:16:02,770 --> 00:16:05,770 理由が必要ですかね? 165 00:16:07,542 --> 00:16:11,913 ここに並べているのは 売り物じゃありません。 166 00:16:11,913 --> 00:16:17,251 見てもらってるんです 歩いてる人たちに。 167 00:16:17,251 --> 00:16:19,186 見て? 168 00:16:19,186 --> 00:16:24,125 <ただ見てもらうためだけに こうして並べているとは…。➡ 169 00:16:24,125 --> 00:16:27,595 まさに 路上派のヌーベルバーグ。➡ 170 00:16:27,595 --> 00:16:30,932 とはいえ 俺も 都会のベランダー。➡ 171 00:16:30,932 --> 00:16:33,834 ここで 引き下がる訳にはいかない> 172 00:16:33,834 --> 00:16:55,890 ♬~ 173 00:16:55,890 --> 00:17:00,890 このモミジ 譲って頂けませんか? 174 00:17:04,231 --> 00:17:07,134 売り物じゃないんで。 175 00:17:07,134 --> 00:17:10,104 そこを なんとか。 176 00:17:10,104 --> 00:17:26,921 ♬~ 177 00:17:26,921 --> 00:17:32,621 駄目ですか。 分かりました。 178 00:17:45,406 --> 00:17:48,406 大事にしてくれますか? 179 00:17:50,144 --> 00:17:52,144 えっ? 180 00:17:57,218 --> 00:18:00,121 大事にしてくれますか? 181 00:18:00,121 --> 00:18:04,421 もちろんです。 でも どうして? 182 00:18:06,227 --> 00:18:09,897 僕にも分かりません。 183 00:18:09,897 --> 00:18:16,570 ただ あなたには 譲ってもいいような気がして。 184 00:18:16,570 --> 00:18:22,570 植物を見る目が ほかの人と違ってたから。 185 00:18:24,245 --> 00:18:27,915 ありがとうございます。 186 00:18:27,915 --> 00:18:31,585 おいくらですか? お金は いいです。 187 00:18:31,585 --> 00:18:35,856 いや… でも こちらの気が…。 188 00:18:35,856 --> 00:18:39,156 いいです 本当に。 でも…。 189 00:18:57,878 --> 00:19:01,178 大事にしてやって下さい。 190 00:19:05,553 --> 00:19:37,184 ♬~ 191 00:19:37,184 --> 00:19:42,056 <彼は いつまでも見送ってくれた。➡ 192 00:19:42,056 --> 00:19:48,529 その表情は どこか寂しげであった> 193 00:19:48,529 --> 00:19:59,229 ♬~ 194 00:20:16,223 --> 00:20:20,895 <譲ってもらったものの もし 枯らしでもしたら➡ 195 00:20:20,895 --> 00:20:25,232 彼の純情を踏みにじる事になる。➡ 196 00:20:25,232 --> 00:20:31,906 俺は かつてないプレッシャーを 感じていた。➡ 197 00:20:31,906 --> 00:20:35,576 選ばれし者の恍惚と不安。➡ 198 00:20:35,576 --> 00:20:38,576 2つ 我にあり> 199 00:20:42,917 --> 00:20:48,789 <いい加減な世話がモットーだとはいえ 今回だけは その戒律を破り➡ 200 00:20:48,789 --> 00:20:51,926 俺は 丁寧に世話をした。➡ 201 00:20:51,926 --> 00:20:54,595 …はずだった> 202 00:20:54,595 --> 00:21:07,174 ♬~ 203 00:21:07,174 --> 00:21:12,146 <何日かたつと モミジに 異変が起き始めた。➡ 204 00:21:12,146 --> 00:21:18,619 透明感のある緑の葉から 不穏な斑点が出てきたのだ。➡ 205 00:21:18,619 --> 00:21:22,289 いかん。 何かが起きている。➡ 206 00:21:22,289 --> 00:21:25,192 だが 俺は オロオロするばかりで➡ 207 00:21:25,192 --> 00:21:28,192 どうしていいのか分からない> 208 00:21:30,965 --> 00:21:36,665 <どうやら あの人に相談するしかなさそうだ> 209 00:21:43,244 --> 00:21:45,913 やあ どうも どうも。 ごきげんよう。 210 00:21:45,913 --> 00:21:48,816 いや 珍しいね 君の方から連絡くれるなんて。 211 00:21:48,816 --> 00:21:51,785 はい これ どら焼き。 ああ ありがとうございます。 212 00:21:51,785 --> 00:21:55,589 実は 困った事が起きまして…。 何だね? 一体。 213 00:21:55,589 --> 00:21:57,925 モミジの事なんですが。 214 00:21:57,925 --> 00:22:02,596 モミジ。 そうか! ついに 君も…。 215 00:22:02,596 --> 00:22:04,531 あ いやいや… そうじゃないんです。 216 00:22:04,531 --> 00:22:06,934 とりあえず 見て下さい。 はい はい。 217 00:22:06,934 --> 00:22:10,271 せかすな せかすな せかすな。 ハハハッ。 ついに 君もね…。 218 00:22:10,271 --> 00:22:14,571 いやいやいや…。 せいて せいて! はい はい! 219 00:22:20,281 --> 00:22:24,618 う~ん これは…。 220 00:22:24,618 --> 00:22:28,289 はい。 最初は 元気だったんですが…。 221 00:22:28,289 --> 00:22:32,893 君 これ ここに ずっと置いてたのかね。 はい。 222 00:22:32,893 --> 00:22:37,765 まずいよ それは 君。 半日陰は いいとして➡ 223 00:22:37,765 --> 00:22:42,236 もっと 風通しのいい所に 置いてあげないと。 224 00:22:42,236 --> 00:22:44,936 すいません。 225 00:22:46,907 --> 00:22:49,576 水やりは どれぐらい? 226 00:22:49,576 --> 00:22:52,479 1日に 2回くらい。 227 00:22:52,479 --> 00:22:54,448 辛いな~。 228 00:22:54,448 --> 00:22:57,448 えっ どら焼き 辛いですか? 229 00:23:00,921 --> 00:23:04,258 君は 何を言ってるんだ。 ええ? 230 00:23:04,258 --> 00:23:07,928 辛いっていうのは 水やりの回数が少ないっていう➡ 231 00:23:07,928 --> 00:23:12,599 盆栽用語だよ。 もっと多く あげないと。 232 00:23:12,599 --> 00:23:15,502 モミジは 水を好むんだよ。 233 00:23:15,502 --> 00:23:19,273 そうなんですか。 すいません。 234 00:23:19,273 --> 00:23:23,143 これは… うどんこ病だね。 235 00:23:23,143 --> 00:23:27,948 えっ うどん食べたい? このタイミングで? 236 00:23:27,948 --> 00:23:31,618 君は 何だい。 今日 ずっと ボケ続けないと➡ 237 00:23:31,618 --> 00:23:36,223 誰かに 殺すとか 言われてんのかね。 違うでしょ? 238 00:23:36,223 --> 00:23:38,158 うどんこ病っていうのは➡ 239 00:23:38,158 --> 00:23:41,562 うどん粉みたいに 葉や茎が白くなる症状の事だよ。 240 00:23:41,562 --> 00:23:43,497 放っとくと 光合成ができなくなって➡ 241 00:23:43,497 --> 00:23:45,899 枯れちゃうんだよ。 まだ初期段階だから➡ 242 00:23:45,899 --> 00:23:48,235 その葉は ちぎって捨てなさい。 243 00:23:48,235 --> 00:23:55,109 ありがとうございます。 先輩… 何か いつもと違う! 244 00:23:55,109 --> 00:23:58,879 ♬~ 245 00:23:58,879 --> 00:24:01,782 僕を見くびらないでくれたまえ。 246 00:24:01,782 --> 00:24:04,251 僕が 何年 エア温泉で我慢して➡ 247 00:24:04,251 --> 00:24:07,087 盆栽なんかの…。 ぼぼ… 盆栽なんかじゃない! 248 00:24:07,087 --> 00:24:10,924 盆栽の世話をしてきたと 思ってるんだい。 249 00:24:10,924 --> 00:24:13,827 盆栽は いい…。 250 00:24:13,827 --> 00:24:17,431 そうか…。 盆栽は いいよぉ~。 251 00:24:17,431 --> 00:24:21,931 光合成できなくなっちゃうんだ。 そうか。 252 00:24:24,605 --> 00:24:29,305 触ってるんだったら 葉 ちぎんなさいよ。 そうですね。 253 00:24:30,944 --> 00:24:34,548 そばこ病ってのも あるのかな? ないですよね? 254 00:24:34,548 --> 00:24:36,848 ちぎんなさいよ! あ~ はい はい。 255 00:24:40,421 --> 00:24:44,558 <俺は 早速 風通しをよくし➡ 256 00:24:44,558 --> 00:24:47,895 斑点がついた葉を取り除き➡ 257 00:24:47,895 --> 00:24:51,565 水やりの回数を増やした。➡ 258 00:24:51,565 --> 00:24:56,265 このままでは あの青年に 顔向けができない> 259 00:25:11,585 --> 00:25:13,921 <あれから 何日か たって➡ 260 00:25:13,921 --> 00:25:19,259 残された葉に 緑色が戻ってきた。➡ 261 00:25:19,259 --> 00:25:22,162 そのうち こいつは➡ 262 00:25:22,162 --> 00:25:25,599 自分が どんな木として 生きるのかを示し➡ 263 00:25:25,599 --> 00:25:30,599 葉を しなやかに広げる事だろう> 264 00:25:32,406 --> 00:25:35,409 <こいつは 自らの意思で➡ 265 00:25:35,409 --> 00:25:40,881 一緒に生きる事を 選んでくれたのだ> 266 00:25:40,881 --> 00:25:49,223 ♬~ 267 00:25:49,223 --> 00:26:04,571 はあ はあ はあ はあ はあ…。 268 00:26:04,571 --> 00:26:08,442 ♬~ 269 00:26:08,442 --> 00:26:14,915 <翌日 俺は あの青年に会いに行った。➡ 270 00:26:14,915 --> 00:26:20,254 モミジが無事である事を 報告したかったのだ> 271 00:26:20,254 --> 00:26:28,595 ♬~ 272 00:26:28,595 --> 00:26:32,895 <しかし 彼の姿はなかった> 273 00:26:34,868 --> 00:26:40,168 <まるで 最初から いなかったかのように> 274 00:26:56,890 --> 00:27:21,582 ♬~ 275 00:27:21,582 --> 00:27:26,920 <あの青年が どこに行ったのかは 分からない。➡ 276 00:27:26,920 --> 00:27:33,527 俺は俺で 植物という存在の 耐えられない重さを➡ 277 00:27:33,527 --> 00:27:38,227 今 ひしひしと感じている> 278 00:27:40,200 --> 00:27:44,071 <愛情がなければ 育てられない。➡ 279 00:27:44,071 --> 00:27:50,071 だが 愛情だけでは 育てられない> 280 00:27:51,812 --> 00:27:57,551 <悔恨の情と喜びは いつも隣り合わせだ。➡ 281 00:27:57,551 --> 00:28:05,892 植物を愛するという事は きっと そういう事なのだ> 282 00:28:05,892 --> 00:28:14,568 (花火の音) 283 00:28:14,568 --> 00:29:21,902 ♬~ 284 00:29:21,902 --> 00:29:28,902 ♬~ 285 00:30:35,776 --> 00:30:40,247 アーチの石橋に すてきな楼閣。 286 00:30:40,247 --> 00:30:44,947 レースみたいな屋根の飾り きれいだなあ。 287 00:30:46,586 --> 00:30:51,586 ここは 中国貴州省の 山あいの街 鎮遠。 288 00:30:53,260 --> 00:30:58,131 歴史がありそうな石造りの建物 並んでる。