1 00:00:03,721 --> 00:00:08,059 仕事 仕事 仕事 仕事 仕事 仕事~! 2 00:00:08,059 --> 00:00:09,994 何や この だらくそ! 3 00:00:09,994 --> 00:00:12,396 だらくそ だらくそ だらくそ だらくそ…。 4 00:00:12,396 --> 00:00:14,732 ふん! 5 00:00:14,732 --> 00:00:22,432 ♬~ 6 00:00:33,317 --> 00:00:40,925 ♬~ 7 00:00:40,925 --> 00:00:43,294 <俺は都会のマンションのベランダで➡ 8 00:00:43,294 --> 00:00:47,698 自分勝手に植物を育てるベランダーだ> 9 00:00:47,698 --> 00:00:51,569 <諸君らは 買った覚えのない鉢を発見し➡ 10 00:00:51,569 --> 00:00:54,569 仰天した事があるだろうか> 11 00:01:00,244 --> 00:01:04,744 <ある日の事 いつものようにベランダに出ると…> 12 00:01:06,684 --> 00:01:11,856 <何と 同じ鉢が 2つもあるではないか!> 13 00:01:11,856 --> 00:01:15,756 <ナス科の植物 バンマツリである> 14 00:01:17,428 --> 00:01:20,197 <ひと鉢 持っていたのは 覚えているが➡ 15 00:01:20,197 --> 00:01:24,197 2つに増えた理由が とんと思い出せない> 16 00:01:25,836 --> 00:01:28,236 <一体 なぜ?> 17 00:01:31,609 --> 00:02:08,109 ♬~ 18 00:02:16,120 --> 00:02:19,090 <ある意味 この時期は 一年を通して➡ 19 00:02:19,090 --> 00:02:23,190 最もベランダ-の腕が問われる 季節といえるだろう> 20 00:02:25,529 --> 00:02:28,232 <何しろ ついこの間まで➡ 21 00:02:28,232 --> 00:02:33,004 五月晴れだと浮かれていたのが 急に雨がちになる> 22 00:02:33,004 --> 00:02:35,906 <水をやらなくてもいいから 楽じゃないか➡ 23 00:02:35,906 --> 00:02:39,306 というやつはド素人だ> 24 00:02:41,045 --> 00:02:43,681 <湿気で表面がぬれて見えても➡ 25 00:02:43,681 --> 00:02:49,854 中が乾いていたりするから 注意が必要なのだ> 26 00:02:49,854 --> 00:02:52,690 < そんな毎日を 過ごしていた ある日➡ 27 00:02:52,690 --> 00:02:57,290 バンマツリが2つある事に気付いた> 28 00:02:59,463 --> 00:03:02,900 <正式には ニオイバンマツリというが➡ 29 00:03:02,900 --> 00:03:08,800 面倒くさいので俺は バンマツリと呼んでいる> 30 00:03:10,941 --> 00:03:15,179 < それにしても なぜ2つもあるのか?> 31 00:03:15,179 --> 00:03:20,985 <俺は 日照りや長雨 アブラムシどもと闘うのと同様の➡ 32 00:03:20,985 --> 00:03:28,392 または それ以上の情熱をもって 日々 ベランダの面積と闘っている> 33 00:03:28,392 --> 00:03:33,230 <置ける鉢の数が 限られているからだ> 34 00:03:33,230 --> 00:03:36,634 < したがって よほどの事情がないかぎり➡ 35 00:03:36,634 --> 00:03:42,034 同じ種類の鉢など 2つも買うはずがないのである> 36 00:03:43,707 --> 00:03:49,013 <俺は眠っていた記憶を 呼び覚ます事にした> 37 00:03:49,013 --> 00:04:07,398 ♬~ 38 00:04:07,398 --> 00:04:10,798 [ 回想 ] (2人)乾杯! 39 00:04:13,571 --> 00:04:16,173 あ~! (田中)あ~…。 40 00:04:16,173 --> 00:04:20,044 いや~ こないだは 大変な目に遭いましたよ! 41 00:04:20,044 --> 00:04:23,914 え? 何がですか? 「何がですか?」じゃないですよ! 42 00:04:23,914 --> 00:04:27,852 ほら! 刑事さんが来て 僕 連れていかれたじゃないですか! 43 00:04:27,852 --> 00:04:31,489 あ~ 植物刑事。 フッフフ。 44 00:04:31,489 --> 00:04:35,459 大体 ひげと眼鏡が証拠だ! っておかしくないですか? 45 00:04:35,459 --> 00:04:38,295 そんな事いったら え? ラース・フォン・トリアーだって➡ 46 00:04:38,295 --> 00:04:42,995 ひげと眼鏡ですよ! ですよね~! ハッハッハッ。 47 00:04:44,802 --> 00:04:49,640 あ これ ニオイバンマツリじゃないですか。 48 00:04:49,640 --> 00:04:54,111 ええ。 僕は略してバンマツリって呼んでます。 49 00:04:54,111 --> 00:04:57,014 バンマツリ… 何か➡ 50 00:04:57,014 --> 00:05:00,951 パン祭りみたいじゃないですか。 ハハハッ。 51 00:05:00,951 --> 00:05:06,357 僕は最近 タチアオイを買いましたよ。 え? タチアオイ? 52 00:05:06,357 --> 00:05:12,196 ええ。 花も大きいですしね。 53 00:05:12,196 --> 00:05:15,533 華やかっていうか ゴージャスというか…。 54 00:05:15,533 --> 00:05:18,569 あ 同じか! ハッハハハ。 ですね。 55 00:05:18,569 --> 00:05:21,172 だから 一日中 見てても 飽きないんですよ。 56 00:05:21,172 --> 00:05:24,909 は~… そうですか。 57 00:05:24,909 --> 00:05:28,245 <きっかけは田中だった> 58 00:05:28,245 --> 00:05:38,322 ♬~ 59 00:05:38,322 --> 00:05:42,860 <俺は早速 なじみの花屋に向かった> 60 00:05:42,860 --> 00:05:48,666 <田中の自慢話にあてられ タチアオイが欲しくなったからだ> 61 00:05:48,666 --> 00:06:05,166 ♬~ 62 00:06:12,423 --> 00:06:14,723 (立花)ハハッ。 63 00:06:27,638 --> 00:06:32,109 <あれ? いつもなら ここで楓さんが登場して➡ 64 00:06:32,109 --> 00:06:36,409 俺が ろうばいするのが お決まりのパターンなのだが…> 65 00:06:41,118 --> 00:06:44,455 (木下 楓)花束にして。 (樹)あ 花束。 花束か。 66 00:06:44,455 --> 00:06:46,390 あれ? 67 00:06:46,390 --> 00:06:49,226 鉢の方がいいですかね。 (樹)いや でも… あ~…➡ 68 00:06:49,226 --> 00:06:51,161 どっちがいいかな。➡ 69 00:06:51,161 --> 00:06:54,598 母ちゃんにあげるやつなんで そんな何か…。➡ 70 00:06:54,598 --> 00:06:58,469 まとめる事はできるんですか? これは ちょっと どうかな…。 71 00:06:58,469 --> 00:07:01,071 (樹)できないですかね? でも… いや やります。 72 00:07:01,071 --> 00:07:03,707 おい 樹! あ いらっしゃいませ。 73 00:07:03,707 --> 00:07:07,678 あ~… か… 楓さん どうも。 おっす。 74 00:07:07,678 --> 00:07:10,114 「おっす」じゃねえよ! お前 何やってんだよ。 75 00:07:10,114 --> 00:07:13,050 いや いいじゃん 別に。 来週 母ちゃんの誕生日だから➡ 76 00:07:13,050 --> 00:07:17,254 花でもあげようかと思ってさ。 あ~ もう そんな時期か。 77 00:07:17,254 --> 00:07:22,893 樹さん お母さん思いなんですね。 あ… いえ…。 78 00:07:22,893 --> 00:07:27,293 よくできた息子で 僕に似て。 ハッハハハ。 79 00:07:28,799 --> 00:07:32,703 あのな 俺のいない所で 楓さんと話すの禁止だからな! 80 00:07:32,703 --> 00:07:36,373 何だよ! それ。 ちっちぇえな! ちっちぇえって何だ! 81 00:07:36,373 --> 00:07:38,642 痛っ! あ…。 82 00:07:38,642 --> 00:07:40,577 あの…。 はい! 83 00:07:40,577 --> 00:07:46,250 今日は何か お探しですか? はい。 えっとですね…。 84 00:07:46,250 --> 00:07:50,421 <などと てれながら 俺の両目はしっかりと➡ 85 00:07:50,421 --> 00:07:53,891 タチアオイを捉えていた> 86 00:07:53,891 --> 00:07:57,695 <10センチはあろうかという ピンクの大きな花が➡ 87 00:07:57,695 --> 00:08:02,533 俺を 誘っているかのようだった> 88 00:08:02,533 --> 00:08:07,671 タチアオイですか? ちょっと 気になっちゃって。 89 00:08:07,671 --> 00:08:10,474 タチアオイは 日当たりのいい場所に置いて➡ 90 00:08:10,474 --> 00:08:13,444 水をやり過ぎなければ 世話は結構 簡単ですよ。 91 00:08:13,444 --> 00:08:15,779 え? 簡単? はい。 92 00:08:15,779 --> 00:08:17,715 へえ~…。 93 00:08:17,715 --> 00:08:22,553 <間近で見るタチアオイは 確かに華やかだった> 94 00:08:22,553 --> 00:08:25,353 < しかも世話が簡単ときた> 95 00:08:27,057 --> 00:08:30,957 <何て 俺好みの花だ> 96 00:08:32,596 --> 00:08:34,531 (藤村杏子)いらっしゃいませ。 97 00:08:34,531 --> 00:08:37,267 あら 樹君 こんにちは。 こんにちは。 98 00:08:37,267 --> 00:08:39,603 何? 昼間っから エロい顔になってんですか。 99 00:08:39,603 --> 00:08:41,538 いや エロい顔なんて してませんよ! 100 00:08:41,538 --> 00:08:45,743 エロかったでしょ 今! うるさいな! お前は。 え! 101 00:08:45,743 --> 00:08:47,678 親に向かってエロいとはなんだ! お前。 102 00:08:47,678 --> 00:08:50,280 父さん そんな子に 育てた覚えないぞ! ホント! 103 00:08:50,280 --> 00:08:54,485 早く帰って宿題しろ! 歯 磨け! もう…。 104 00:08:54,485 --> 00:08:59,456 < それにしても このタチアオイ 美しすぎる> 105 00:08:59,456 --> 00:09:03,193 <こいつがベランダで 咲いているところを想像し➡ 106 00:09:03,193 --> 00:09:07,164 俺は… 身もだえた> 107 00:09:07,164 --> 00:09:11,468 おやじ やめよう? おやじ… おやじ やめよう。 108 00:09:11,468 --> 00:09:13,470 おやじ おやじ 一回 ごめんな。 一回 ごめんな。➡ 109 00:09:13,470 --> 00:09:16,039 一回 ごめんな。 あ あ あ… あれ? 110 00:09:16,039 --> 00:09:18,409 ♬~ 111 00:09:18,409 --> 00:09:29,353 ♬~ 112 00:09:29,353 --> 00:09:33,323 ♬「花降る 花降る水辺」 113 00:09:33,323 --> 00:09:38,128 ♬~ 114 00:09:38,128 --> 00:09:42,433 ♬「花散る 花散る風で」 115 00:09:42,433 --> 00:09:47,271 ♬~ 116 00:09:47,271 --> 00:09:51,475 ♬「花降る 花降る水辺」 117 00:09:51,475 --> 00:09:56,313 ♬~ 118 00:09:56,313 --> 00:10:00,651 ♬「花散る 花散る風で」 119 00:10:00,651 --> 00:10:05,289 ♬~ 120 00:10:05,289 --> 00:10:08,926 ♬「そう」 121 00:10:08,926 --> 00:10:14,231 ♬「夢を見た」 122 00:10:14,231 --> 00:10:17,734 ♬「あの小さい蜘蛛」 123 00:10:17,734 --> 00:10:20,070 ♬「君みたいだった」 124 00:10:20,070 --> 00:10:22,973 ♬~ 125 00:10:22,973 --> 00:10:27,144 ♬「ah」 126 00:10:27,144 --> 00:10:32,616 ♬「蜘蛛の糸」 127 00:10:32,616 --> 00:10:37,020 ♬「花揺る蓮まで垂れ下がって」 128 00:10:37,020 --> 00:10:44,495 ♬「苦しむ僕を引っ張り上げてよ」 129 00:10:44,495 --> 00:11:11,188 ♬~ 130 00:11:11,188 --> 00:11:15,125 ♬「花降る 花降る水辺」 131 00:11:15,125 --> 00:11:19,963 ♬~ 132 00:11:19,963 --> 00:11:24,301 ♬「花散る 花散る風で」 133 00:11:24,301 --> 00:11:29,139 ♬~ 134 00:11:29,139 --> 00:11:33,010 ♬「あらゆる あらゆる技で」 135 00:11:33,010 --> 00:11:37,981 ♬~ 136 00:11:37,981 --> 00:11:42,686 ♬「花びら 花びら咲かそう」 137 00:11:42,686 --> 00:11:52,686 ♬~ 138 00:12:01,738 --> 00:12:09,479 [ 回想 ] <俺はバンマツリ1号を放置し タチアオイに夢中になった> 139 00:12:09,479 --> 00:12:13,984 <ああ この美しさ そして 香り> 140 00:12:13,984 --> 00:12:16,520 <俺のテンションは ぶち上がり➡ 141 00:12:16,520 --> 00:12:21,020 これでもかというほど 愛し尽くした> 142 00:12:23,126 --> 00:12:25,062 は~…。 143 00:12:25,062 --> 00:12:31,468 <だが しばらくすると俺の足は ベランダから遠のいた> 144 00:12:31,468 --> 00:12:36,740 <美しすぎる鉢植え タチアオイは このがさつな俺と➡ 145 00:12:36,740 --> 00:12:39,640 釣り合わなかったのである> 146 00:12:41,678 --> 00:12:45,578 <俺は静かに身を引く事にした> 147 00:12:47,384 --> 00:12:51,321 <などと言いながら 美人は3日で飽きる➡ 148 00:12:51,321 --> 00:12:55,726 という例えのように世話に ちょっと飽きてしまった➡ 149 00:12:55,726 --> 00:12:58,926 というのが本音だった> 150 00:13:02,499 --> 00:13:05,202 <新たな植物を求めて➡ 151 00:13:05,202 --> 00:13:10,374 俺は なじみのない花屋に向かった> 152 00:13:10,374 --> 00:13:13,043 <タチアオイに飽きてしまった事を➡ 153 00:13:13,043 --> 00:13:16,643 楓さんに 知られたくなかったからだ> 154 00:13:23,520 --> 00:13:34,197 ♬~ 155 00:13:34,197 --> 00:13:36,199 (水奈月柑菜)いらっしゃいませ。 156 00:13:36,199 --> 00:13:40,404 あ… ど… どうも。 157 00:13:40,404 --> 00:13:43,907 植物お好きなんですか? 158 00:13:43,907 --> 00:13:47,707 はい。 好きです。 159 00:13:49,713 --> 00:13:51,715 あ…。 160 00:13:51,715 --> 00:13:55,452 <行きずりの花屋さんにまで ときめいてしまう➡ 161 00:13:55,452 --> 00:14:00,791 この性格を何とかしたいと 俺は切に願った> 162 00:14:00,791 --> 00:14:04,394 そ… そうですか。 163 00:14:04,394 --> 00:14:06,763 あの 何かお探しですか? 164 00:14:06,763 --> 00:14:11,601 あ えっとですね… 鉢植えで何かいいのはないかと。 165 00:14:11,601 --> 00:14:16,907 鉢植えですか… じゃあ…。 166 00:14:16,907 --> 00:14:33,790 ♬~ 167 00:14:33,790 --> 00:14:35,726 チッ…。 168 00:14:35,726 --> 00:14:41,498 何 見てんだ? この野郎! え… あ いや… え~? 169 00:14:41,498 --> 00:14:43,734 今 あたいの足 ガン見してただろうが! 170 00:14:43,734 --> 00:14:49,172 いや… 「あたい」って…。 いやいや 見てません! 171 00:14:49,172 --> 00:14:53,844 たまたまですから! すいません すいません。 172 00:14:53,844 --> 00:14:57,714 あ… やだ~。 173 00:14:57,714 --> 00:15:00,617 ちょっと昔 やんちゃしてたもんで すいません。 174 00:15:00,617 --> 00:15:05,455 あ~ いや… いいんです。 あ~ びっくりした。 175 00:15:05,455 --> 00:15:08,458 で 何でしたっけ? あ あの… 鉢植えを。 176 00:15:08,458 --> 00:15:12,696 あ~ だったら…➡ 177 00:15:12,696 --> 00:15:15,232 こちらの ニオイバンマツリはいかがですか? 178 00:15:15,232 --> 00:15:18,935 いい香りがしますよ。 あ~…。 179 00:15:18,935 --> 00:15:23,774 <いかん! 俺は すでに ひと鉢持っている> 180 00:15:23,774 --> 00:15:26,176 < しかも それを放置したまま➡ 181 00:15:26,176 --> 00:15:29,746 タチアオイに熱を上げ 飽きたからといって➡ 182 00:15:29,746 --> 00:15:33,717 またバンマツリを買うなど あってはならない!> 183 00:15:33,717 --> 00:15:38,088 あ でも… バンマツリは ちょっと…。 184 00:15:38,088 --> 00:15:40,557 そうですか。 185 00:15:40,557 --> 00:15:44,928 私 この花 好きだったんですけど すいません。 186 00:15:44,928 --> 00:15:49,766 じゃあ 他の花を探しますね。 187 00:15:49,766 --> 00:15:53,637 <う… いじらしい> 188 00:15:53,637 --> 00:15:56,439 <こんな俺のために 花を探す彼女を➡ 189 00:15:56,439 --> 00:15:59,743 傷つけてはいけない> 190 00:15:59,743 --> 00:16:04,381 あ でも やっぱり このバンマ…。 あ…。 191 00:16:04,381 --> 00:16:08,285 お前よ~! ここは お触りバーじゃねえんだよ! 192 00:16:08,285 --> 00:16:10,620 あ 知ってます…。 いい加減にしねえと➡ 193 00:16:10,620 --> 00:16:14,420 締め落とすぞ! こら~! あ… ぐぐぐ…。 194 00:16:20,931 --> 00:16:25,402 ま… また… 別人格が…。 195 00:16:25,402 --> 00:16:31,107 あ すいません! 怒ると昔の血が騒いじゃって。 196 00:16:31,107 --> 00:16:35,679 ホントにすいません。 いやいやいや… い… いいんです。 197 00:16:35,679 --> 00:16:41,952 あ 僕 あの… バンマツリ買います。 え? 本当ですか? 198 00:16:41,952 --> 00:16:44,387 はい。 ありがとうございます。 199 00:16:44,387 --> 00:16:50,994 いや あの 実は前から バンマツリ欲しかったんです。 ハッハハハ。 200 00:16:50,994 --> 00:17:02,105 ♬~ 201 00:17:02,105 --> 00:17:04,107 ありがとうございます。 202 00:17:04,107 --> 00:17:10,107 <こうして俺はバンマツリ2号を 買ってしまった> 203 00:17:17,187 --> 00:17:21,625 <日ごとに暑さの増す 今日このごろ> 204 00:17:21,625 --> 00:17:25,625 <皆様 いかがお過ごしでしょうか> 205 00:17:30,133 --> 00:17:34,333 <こよいも私のつぶやきに おつきあい下さい> 206 00:17:37,774 --> 00:17:44,574 <草冠に「加える」と書いて…> 207 00:17:49,753 --> 00:17:56,660 <8画の世界から滴り落ちる その芳じゅんな潤い> 208 00:17:56,660 --> 00:17:59,262 <へたから ぶら下がる君は➡ 209 00:17:59,262 --> 00:18:05,068 ボディービルダーのように あでやかに黒光りしている> 210 00:18:05,068 --> 00:18:07,537 <インドが原産とされ➡ 211 00:18:07,537 --> 00:18:10,373 奈良時代に 日本にやってきた君は➡ 212 00:18:10,373 --> 00:18:13,973 親しみを込めて こう呼ばれていたね> 213 00:18:17,547 --> 00:18:19,916 <何で 「なすび」かって?> 214 00:18:19,916 --> 00:18:23,887 <夏に実がなる事から夏実> 215 00:18:23,887 --> 00:18:29,326 <汗ばむシャツがお似合いの女性を 思わせる その響き> 216 00:18:29,326 --> 00:18:35,598 < それが ちょっとだけ変わって なすび> 217 00:18:35,598 --> 00:18:38,468 <「な」しか合ってないって?> 218 00:18:38,468 --> 00:18:43,773 <細かい事 気にするもんじゃないよ> 219 00:18:43,773 --> 00:18:47,377 <君には いつも驚かされる> 220 00:18:47,377 --> 00:18:49,713 <スパゲッティの中の君➡ 221 00:18:49,713 --> 00:18:52,015 マーボーの中の君➡ 222 00:18:52,015 --> 00:18:53,950 漬け物の君➡ 223 00:18:53,950 --> 00:18:58,288 そして ただ焼いただけの君> 224 00:18:58,288 --> 00:19:03,259 <君は いつだって 何にだってなりえた> 225 00:19:03,259 --> 00:19:07,931 < そう! そんな君は植物界の名優➡ 226 00:19:07,931 --> 00:19:11,835 ロバート・デ・ニーロ> 227 00:19:11,835 --> 00:19:16,306 <役のために 過酷な減量 増量に励み➡ 228 00:19:16,306 --> 00:19:18,908 頭髪まで抜いた> 229 00:19:18,908 --> 00:19:24,908 <デ・ニーロの徹底した役作りを いつしか人は こう呼んだ…> 230 00:19:29,419 --> 00:19:32,622 <ああ… なす> 231 00:19:32,622 --> 00:19:38,322 <君も畑で デニーロ・アプローチをしていたのかな> 232 00:19:40,363 --> 00:19:45,268 <最後に君に こんな名前をあげるよ> 233 00:19:45,268 --> 00:19:48,468 <ナス・コルレオーネ!> 234 00:19:53,910 --> 00:20:09,092 ♬~ 235 00:20:09,092 --> 00:20:11,861 <これで俺のベランダに➡ 236 00:20:11,861 --> 00:20:16,261 2つのバンマツリが存在する理由が 判明した> 237 00:20:18,201 --> 00:20:25,742 <俺は無計画な自分を 責める代わりに 田中を責めた> 238 00:20:25,742 --> 00:20:30,342 < そもそも あいつが タチアオイを自慢したからだ> 239 00:20:32,515 --> 00:20:38,088 <ともあれ 俺は 2つのバンマツリの世話を始めた> 240 00:20:38,088 --> 00:20:41,624 <買ったばかりの2号は 元気だった> 241 00:20:41,624 --> 00:20:47,424 < しばらく放置していた1号は さすがに弱っていた> 242 00:20:50,433 --> 00:20:55,772 <だが俺は1号をふびんに思って 何となく水をやったりして➡ 243 00:20:55,772 --> 00:20:58,072 お茶を濁していた> 244 00:21:01,044 --> 00:21:06,844 < しかし ある日の事 ベランダに出た俺は仰天した> 245 00:21:09,352 --> 00:21:13,223 <何とバンマツリ1号が 突如として➡ 246 00:21:13,223 --> 00:21:16,123 花を咲かせたのだ> 247 00:21:19,996 --> 00:21:25,802 <だが 俺の心中は 穏やかではいられなかった> 248 00:21:25,802 --> 00:21:32,275 <花が回復する事で鉢が増え 結果 世話が大変になるという➡ 249 00:21:32,275 --> 00:21:39,575 ベランダーにありがちな悲劇に 俺は陥ってしまったのである> 250 00:21:42,852 --> 00:21:45,622 は… 駄目だ…。 251 00:21:45,622 --> 00:21:57,734 ♬~ 252 00:21:57,734 --> 00:22:00,637 <一体 どうしたものか> 253 00:22:00,637 --> 00:22:04,440 <俺が考え事をしながら 歩いていると…> 254 00:22:04,440 --> 00:22:18,354 ♬~ 255 00:22:18,354 --> 00:22:22,054 もし。 そこのお方。 256 00:22:25,094 --> 00:22:29,899 何か お悩みですか? いえ… どうして それを? 257 00:22:29,899 --> 00:22:33,169 お顔を拝見すれば分かります。 258 00:22:33,169 --> 00:22:36,072 よかったら 占っていきませんこと? 259 00:22:36,072 --> 00:22:41,878 私 花占いをやっておりますのよ。 はあ…。 260 00:22:41,878 --> 00:22:46,249 <俺は占いというものを信じない> 261 00:22:46,249 --> 00:22:49,986 <だが 今の状況を鑑みるに➡ 262 00:22:49,986 --> 00:22:58,695 少しは参考になるかもしれない という考えが頭をよぎった> 263 00:22:58,695 --> 00:23:02,065 じゃあ ちょっとだけ。 264 00:23:02,065 --> 00:23:05,665 では こちらにお座り下さい。 はい。 265 00:23:07,670 --> 00:23:10,406 何についてのお悩みですの? 266 00:23:10,406 --> 00:23:12,875 はい。 実はですね➡ 267 00:23:12,875 --> 00:23:17,280 ニオイバンマツリという花を2つも 世話する事になってしまって➡ 268 00:23:17,280 --> 00:23:22,185 どうしたもんかと。 それは深刻な事態ですこと。 269 00:23:22,185 --> 00:23:25,455 分かりました。 では…。 270 00:23:25,455 --> 00:23:33,196 ♬~ 271 00:23:33,196 --> 00:23:36,032 は! あ! 272 00:23:36,032 --> 00:23:39,736 ニオイバンマツリ 見えました。 273 00:23:39,736 --> 00:23:44,574 植物というものは 持ち主の性格を 表すといわれております。 274 00:23:44,574 --> 00:23:47,377 植物を知るという事は➡ 275 00:23:47,377 --> 00:23:50,313 自分自身を知る という事になりますのよ。 276 00:23:50,313 --> 00:23:53,313 は~ そうなんですか。 277 00:24:00,923 --> 00:24:02,859 リピート アフター ミー! 278 00:24:02,859 --> 00:24:06,129 イエスタデー トゥデー アーンド トモロー! 279 00:24:06,129 --> 00:24:09,165 ノー! トゥモロー! トゥモロー! 280 00:24:09,165 --> 00:24:11,434 グッド! あ… はい。 281 00:24:11,434 --> 00:24:13,369 では 参ります。 282 00:24:13,369 --> 00:24:16,406 ニオイバンマツリの花言葉は…。 283 00:24:16,406 --> 00:24:19,306 ♬~ 284 00:24:22,078 --> 00:24:26,049 え 浮気? はい。 あなた様は➡ 285 00:24:26,049 --> 00:24:30,787 好色で浮気がち。 それが原因で➡ 286 00:24:30,787 --> 00:24:33,690 いつもトラブルに 巻き込まれておりませんこと? 287 00:24:33,690 --> 00:24:36,559 いやいや… ちょ ちょ… ちょっと待って下さいよ! 288 00:24:36,559 --> 00:24:41,331 僕が浮気がちだなんて そんな~ もう! 289 00:24:41,331 --> 00:24:46,736 <と 否定してはみたものの あのバンマツリ2号も➡ 290 00:24:46,736 --> 00:24:51,941 俺の移り気の激しさから 買ってしまったものだ> 291 00:24:51,941 --> 00:24:55,244 あ でも 花言葉がそうだからって➡ 292 00:24:55,244 --> 00:24:58,214 持ち主まで そうとは…。 占いは以上ですの。 293 00:24:58,214 --> 00:25:03,014 いや… いやいや 「ですの」って そんな~! 294 00:25:06,756 --> 00:25:11,561 え? お金 取るんですの? 295 00:25:11,561 --> 00:25:17,161 商売ですの。 いくらですか? 296 00:25:19,902 --> 00:25:23,306 5,000円ですの。 いや それは さすがに➡ 297 00:25:23,306 --> 00:25:29,206 高いんじゃないんですの? だって… ちょっと…。 298 00:25:30,880 --> 00:25:33,750 お客様が お金を払ってくれない時は➡ 299 00:25:33,750 --> 00:25:36,319 どうしたらよいこと? 300 00:25:36,319 --> 00:25:39,322 (携帯電話からの声) 警察に通報しましょう。 301 00:25:39,322 --> 00:25:43,960 あ いやいや 分かりました。 分かりましたから! 302 00:25:43,960 --> 00:25:45,960 もう…。 303 00:25:51,801 --> 00:25:55,571 これでいいんですの? これで。 304 00:25:55,571 --> 00:26:03,671 ありがとうですの。 こちらこそですの。 もう…。 305 00:26:15,625 --> 00:26:18,125 もし。 そこのお方。 306 00:26:19,796 --> 00:26:21,731 僕ですか? 307 00:26:21,731 --> 00:26:24,033 よかったら 占っていきませんこと? 308 00:26:24,033 --> 00:26:26,033 ええ いいですよ。 309 00:26:28,871 --> 00:26:33,671 何か お悩みはありますか? いや 特にないです。 310 00:26:43,186 --> 00:26:47,723 <全く… あんなネガティブな占いなど あるものか!> 311 00:26:47,723 --> 00:26:53,823 <と憤りながらも 俺は やつらの世話を続けた> 312 00:26:59,135 --> 00:27:10,379 ♬~ 313 00:27:10,379 --> 00:27:16,719 < そうこうしているうちに 俺は ある事に気付いた> 314 00:27:16,719 --> 00:27:22,058 <色の配列が毎日 変化するのだ> 315 00:27:22,058 --> 00:27:24,527 <昨日まで紫だった花が➡ 316 00:27:24,527 --> 00:27:31,627 まるで漂白剤でもかけたように 翌日には真っ白になる> 317 00:27:33,536 --> 00:27:39,236 < そして 別のつぼみから また 紫の花が咲く> 318 00:27:41,944 --> 00:27:46,616 < その色の配列は その日 その時にしか➡ 319 00:27:46,616 --> 00:27:49,216 見る事はできない> 320 00:27:51,554 --> 00:27:55,157 <2つの色が交錯するバンマツリは つまり➡ 321 00:27:55,157 --> 00:28:01,957 容赦なく過ぎていく時間を 一瞬に閉じ込めているのだ> 322 00:28:05,234 --> 00:28:07,537 <人生は短い> 323 00:28:07,537 --> 00:28:09,539 <過去にとらわれず➡ 324 00:28:09,539 --> 00:28:14,343 日々訪れる瞬間を 大切に生きなさい> 325 00:28:14,343 --> 00:28:22,418 <バンマツリ1号2号は そんな事を 俺に教えてくれたのだ> 326 00:28:22,418 --> 00:28:26,589 <などと もっともらしい理屈を並べ➡ 327 00:28:26,589 --> 00:28:31,294 俺は 2つも同じ鉢を 買ってしまった不祥事を➡ 328 00:28:31,294 --> 00:28:36,294 忘却のかなたに置き去りにした> 329 00:28:38,000 --> 00:28:40,536 <さて 次は➡ 330 00:28:40,536 --> 00:28:43,205 どんな植物を 買おうか> 331 00:28:43,205 --> 00:29:21,377 ♬~ 332 00:29:21,377 --> 00:29:28,377 ♬~ 333 00:30:33,315 --> 00:30:37,887 風の中に➡ 334 00:30:37,887 --> 00:30:41,757 土の匂いに➡ 335 00:30:41,757 --> 00:30:46,395 もう一度 日本を見つける。 336 00:30:46,395 --> 00:30:51,095 私を 見つける。