1 00:00:02,667 --> 00:00:04,833 欲深き人の心と ふる雪は 2 00:00:04,833 --> 00:00:07,233 積もるにつけて道を忘るる…」 3 00:00:07,233 --> 00:00:09,333 死んで… 4 00:00:09,333 --> 00:00:10,700 一緒に。 5 00:00:17,667 --> 00:00:20,267 アタシは また… 6 00:00:20,933 --> 00:00:23,133 捨てられました。 7 00:00:50,633 --> 00:00:52,700 あんちゃん 出迎えなしか。 8 00:00:53,533 --> 00:00:55,433 当ては あんのかい? 9 00:00:55,433 --> 00:00:57,867 あるよ。 寄席へ行くんだ。 10 00:01:29,100 --> 00:01:31,900 いっぱいの おはこびで…。 11 00:01:33,033 --> 00:01:38,333 世の中ってものは 男と女でございます。 12 00:01:39,200 --> 00:01:41,933 今日は ひとつ 13 00:01:41,933 --> 00:01:45,200 心中のお噂を申し上げます。 14 00:02:06,800 --> 00:02:08,733 おう おいちゃん。 15 00:02:08,733 --> 00:02:11,333 これ 八雲先生の車だべ? 16 00:02:11,333 --> 00:02:14,267 いろいろ調べて やっと ここまで来たんだよ。 17 00:02:14,267 --> 00:02:17,267 -あの…。 -弟子にしてもらいてえんだ。 18 00:02:17,267 --> 00:02:20,200 八雲大先生に 弟子入りさせてもらうまでは…。 19 00:02:22,600 --> 00:02:24,900 テコでも ここを動かねえ。 20 00:02:24,900 --> 00:02:27,667 そういうことでしたら 残念ですが…。 21 00:02:30,000 --> 00:02:31,467 なんで? 22 00:02:31,467 --> 00:02:35,600 八代目は 弟子を 取ってらっしゃいません。 23 00:02:38,933 --> 00:02:42,767 そんじゃ この先 オイラ どうしたらいいんだよ! 24 00:02:42,767 --> 00:02:44,800 そう言われましても…。 25 00:02:44,800 --> 00:02:48,067 おいちゃん どうにか 口 利いてくれよ。 26 00:02:48,067 --> 00:02:50,133 なっ 頼むよ! 27 00:02:50,133 --> 00:02:51,967 俺ら友達だろ? 28 00:02:51,967 --> 00:02:53,700 ちょいと。 29 00:02:56,133 --> 00:02:59,500 ウチの松田が 何か失礼でも? 30 00:03:00,600 --> 00:03:03,100 大先生! 31 00:03:03,100 --> 00:03:06,133 -ちょっと! -やっと会えた! 32 00:03:06,900 --> 00:03:08,467 松田さん 33 00:03:08,467 --> 00:03:11,400 なんです? この与太郎は。 34 00:03:13,700 --> 00:03:16,667 オイラ アンタに一目ぼれしたんだ。 35 00:03:16,667 --> 00:03:19,467 1年前の刑務所落語慰問会で 36 00:03:19,467 --> 00:03:21,867 「死神」って噺を 演ってくれた時…。 37 00:03:21,867 --> 00:03:26,433 「千両で 命 売りやがった」。 38 00:03:26,433 --> 00:03:29,000 ろくでもねえ男が 死神に そそのかされて 39 00:03:29,000 --> 00:03:32,400 うまいこと もうけて そんで ゲラゲラ笑ってたら 40 00:03:32,400 --> 00:03:33,933 最後には ズルやって 41 00:03:33,933 --> 00:03:37,200 寿命の ろうそくが 消えちまうってんだからよ~。 42 00:03:37,200 --> 00:03:39,867 「ほお~ら… 43 00:03:39,867 --> 00:03:42,167 消えた」。 44 00:03:43,100 --> 00:03:47,133 つまり お前さんは 監獄帰りか。 45 00:03:48,433 --> 00:03:50,067 おう! 46 00:03:50,067 --> 00:03:51,767 本日 出たてだい! 47 00:03:51,767 --> 00:03:55,400 それにしちゃあ ずいぶん楽しげだねぇ。 48 00:03:55,400 --> 00:03:58,233 あきれた与太郎だ。 49 00:04:02,467 --> 00:04:04,067 刑務所 出たら 50 00:04:04,067 --> 00:04:07,400 今までに見た 一番偉ぇ人に ついてこうって決めてた。 51 00:04:07,400 --> 00:04:09,267 それが アンタだ! 52 00:04:12,100 --> 00:04:15,033 ま ま… 待ってくれ! 頼む! 53 00:04:15,033 --> 00:04:18,900 俺には 他に 居場所も 生きる道も ねえんだ! 54 00:04:30,300 --> 00:04:32,133 車に乗んな。 55 00:04:36,567 --> 00:04:38,100 ありがとうございます! 56 00:04:43,967 --> 00:04:45,133 「開けてくれ 開けてくれ! 57 00:04:46,333 --> 00:04:48,067 開けてくれ!」。 58 00:04:48,067 --> 00:04:49,467 「はい はい 59 00:04:49,467 --> 00:04:51,467 その声は 隣家の八っつぁんだな。 60 00:04:51,467 --> 00:04:55,233 待ちな 待ちな そう どんどん… たたいちゃいかん。 61 00:04:55,233 --> 00:04:56,933 ご近所に迷惑だ」。 62 00:05:00,567 --> 00:05:02,500 「ちょっと お待ちよ。 63 00:05:02,500 --> 00:05:04,767 うちの戸は やわに出来てんだから 64 00:05:04,767 --> 00:05:07,133 -そう 戸を どんどん…」。 -小夏。 65 00:05:07,133 --> 00:05:08,000 「痛い。 66 00:05:09,367 --> 00:05:13,333 -お前さん なんだって…」。 -小夏 いるんだろ。 67 00:05:20,767 --> 00:05:23,167 今日から ウチで面倒見るから 68 00:05:23,167 --> 00:05:25,367 いろいろ教えてやってくれ。 69 00:05:25,900 --> 00:05:27,467 どうもっす。 70 00:05:27,467 --> 00:05:29,500 面倒見るって? 71 00:05:29,500 --> 00:05:32,967 弟子 取ったんだ。 72 00:05:33,533 --> 00:05:35,067 今更 なに言ってんだ。 73 00:05:35,067 --> 00:05:36,533 弟子は 一生 取らねえって…。 74 00:05:36,533 --> 00:05:38,200 これは 小夏。 75 00:05:38,200 --> 00:05:40,667 かんしゃく持ちの ハネッカエリだけど 76 00:05:40,667 --> 00:05:42,633 まあ 悪いやつじゃないよ。 77 00:05:43,867 --> 00:05:45,300 ふざけんな! 78 00:05:48,467 --> 00:05:50,200 ちょっと… こっち。 79 00:05:54,867 --> 00:05:57,767 有楽亭助六。 80 00:05:57,767 --> 00:06:04,633 20年前に ご活躍なすった 希代の天才とも言われた名人です。 81 00:06:06,700 --> 00:06:10,700 小夏さんの実のお父さんです。 82 00:06:13,400 --> 00:06:15,133 戦後まもなく 83 00:06:15,133 --> 00:06:19,400 黄金期と呼ばれた落語界を 八代目と お二人で 84 00:06:19,400 --> 00:06:23,000 若手のホープとして支えてらした。 85 00:06:23,800 --> 00:06:28,467 師匠も助六さんも 噺家として 乗りに乗って 86 00:06:28,467 --> 00:06:31,267 さあ これからって時に 87 00:06:31,267 --> 00:06:35,267 助六さんは 鬼籍に入られて…。 88 00:06:35,267 --> 00:06:36,933 死んじまったのか? 89 00:06:38,200 --> 00:06:42,367 残された小夏さんは 他に身寄りもなかったことから 90 00:06:42,367 --> 00:06:45,967 八代目が お引き受けなすったというわけで。 91 00:06:49,467 --> 00:06:52,467 つまり 義理の父と娘みてえなもんか。 92 00:06:56,167 --> 00:06:57,500 与太郎 93 00:06:57,500 --> 00:06:59,067 ちょいと 顔 貸しな。 94 00:07:09,500 --> 00:07:12,033 悪いこたぁ言わないよ。 95 00:07:12,033 --> 00:07:14,567 弟子入りなんて諦めるんだね。 96 00:07:15,200 --> 00:07:17,100 姉御 そりゃねえっすよ。 97 00:07:17,100 --> 00:07:18,500 アネゴって呼ぶな。 98 00:07:18,500 --> 00:07:21,333 私まで ヤクザになった気になんだろ。 99 00:07:21,333 --> 00:07:23,367 オイラは ヤクザじゃねえですよ。 100 00:07:23,367 --> 00:07:25,367 じゃ なんで ムショ入ってたんだ。 101 00:07:25,367 --> 00:07:27,400 なんか しでかしたんだろ。 102 00:07:27,400 --> 00:07:29,667 してません。 103 00:07:29,667 --> 00:07:34,233 オイラはなんもしてねえのに刑務所 入ることになっちまったんすよ。 104 00:07:34,233 --> 00:07:37,100 あきれた与太郎だよ。 105 00:07:37,100 --> 00:07:38,700 その「与太郎」ってのは…。 106 00:07:38,700 --> 00:07:41,733 あんたみたいなやつが 落語に よく出てくるんだ。 107 00:07:41,733 --> 00:07:44,300 バカで まぬけな男のこと。 108 00:07:47,033 --> 00:07:51,467 ともかく あのオッサンが 本気で弟子なんか取るわけない。 109 00:07:52,033 --> 00:07:55,733 アイツは自分の芸を残そうなんざ 全然 考えちゃいない。 110 00:07:56,800 --> 00:07:58,433 言ってたんだよ 111 00:07:58,433 --> 00:08:01,133 落語と心中するって。 112 00:08:01,133 --> 00:08:04,233 落語と心中? 113 00:08:06,167 --> 00:08:09,767 だから ずっと 弟子も取らず 独りでやってる。 114 00:08:11,433 --> 00:08:14,500 アイツは てめえのことしか 考えてない。 115 00:08:14,500 --> 00:08:17,167 私は そういうとこが大っ嫌い。 116 00:08:19,533 --> 00:08:20,967 よく分かんねえけど 117 00:08:20,967 --> 00:08:22,867 一つだけ分かった。 118 00:08:23,733 --> 00:08:27,867 アネさんも落語が大好きなんだね。 119 00:08:27,867 --> 00:08:30,533 -私? -好きなんだべ? 120 00:08:32,667 --> 00:08:35,667 女が 落語なんか できたって…。 121 00:08:35,667 --> 00:08:39,900 しゃべる方もできんの?すっげえ! 122 00:08:39,900 --> 00:08:41,800 一席 やってみてくれよ。 123 00:08:41,800 --> 00:08:43,300 図に乗るんじゃないよ。 124 00:08:43,300 --> 00:08:45,433 いった…。 125 00:08:46,467 --> 00:08:48,133 こちらです。 126 00:08:54,200 --> 00:08:56,533 狭いところですが。 127 00:08:56,533 --> 00:08:59,533 刑務所に比べりゃ 極楽よ。 128 00:09:00,100 --> 00:09:02,100 最高だね こりゃ! 129 00:09:06,733 --> 00:09:07,800 レコード? 130 00:09:07,800 --> 00:09:09,100 ああ いえ 131 00:09:09,100 --> 00:09:11,500 師匠の稽古です。 132 00:09:11,500 --> 00:09:16,367 落語には 小唄や三味線 踊りも必要ですからね。 133 00:09:17,900 --> 00:09:20,467 なんて ぜいたくなうちだ。 134 00:09:20,467 --> 00:09:23,400 じゃあ 私は これで。 135 00:09:26,867 --> 00:09:30,267 これ よかったら どうぞ。 136 00:09:31,033 --> 00:09:33,300 松田さん ありがとよ。 137 00:09:33,300 --> 00:09:34,733 いいえ。 138 00:09:35,500 --> 00:09:36,967 じゃあ お休みなさい。 139 00:10:01,100 --> 00:10:03,467 こんな いいもんが 140 00:10:03,467 --> 00:10:07,700 この世から なくなっちまうなんて 悲しいよなぁ。 141 00:10:58,167 --> 00:11:01,433 与太 次は小物屋。 142 00:11:01,433 --> 00:11:04,033 寄席の出番には まだ ちょっとある。 143 00:11:04,033 --> 00:11:05,533 遊ぶよ。 144 00:11:05,533 --> 00:11:06,700 へ~い! 145 00:11:06,700 --> 00:11:09,233 弟子ってえのは いいもんだ。 146 00:11:09,233 --> 00:11:13,533 こんなことなら もっと早くに 来てくれりゃあよかった。 147 00:11:14,900 --> 00:11:17,000 -こんにちは~。 -こんちは! 148 00:11:25,567 --> 00:11:27,800 -おはようございます。 -おはよう。 149 00:11:27,800 --> 00:11:29,367 -おはようございます。 -おはようございます。 150 00:11:30,867 --> 00:11:32,700 ここが楽屋。 151 00:11:34,000 --> 00:11:36,700 やあ やあ 八代目 ご機嫌麗しゅう。 152 00:11:36,700 --> 00:11:39,267 先日の名人会 感動 致しました。 153 00:11:39,267 --> 00:11:41,300 -まさに 極め尽くした…。 -邪魔。 154 00:11:41,300 --> 00:11:43,100 はい。 155 00:11:43,100 --> 00:11:44,967 では また 後ほど。 156 00:11:50,333 --> 00:11:51,733 誰ですか? 157 00:11:51,733 --> 00:11:55,333 演芸評論家。 アタシのファン。 158 00:11:57,733 --> 00:12:00,633 お前さんは 寄席ん中 見ておいで。 159 00:12:00,633 --> 00:12:05,100 人に会ったら 誰にでも 挨拶だけしときゃあいい。 160 00:12:05,100 --> 00:12:06,267 うす! 161 00:12:09,167 --> 00:12:10,500 おはようございます! 162 00:12:10,500 --> 00:12:12,067 与太郎と発しやす! 163 00:12:12,067 --> 00:12:16,433 以後 お見知りおきのほど よろしく お頼み申します! 164 00:12:16,433 --> 00:12:20,000 八雲師匠の内弟子に してもらったんだって? 165 00:12:20,000 --> 00:12:21,733 弟子は取らないって聞いてたのに 166 00:12:21,733 --> 00:12:24,233 どうやって弟子入りしたんですか? 167 00:12:24,233 --> 00:12:26,933 普通に 「お願いします」って。 168 00:12:26,933 --> 00:12:31,667 そういや どことなく似てるねぇ。 169 00:12:31,667 --> 00:12:33,200 誰とです? 170 00:12:33,200 --> 00:12:35,733 オイラ 誰かに似てるんですか? 171 00:12:36,533 --> 00:12:37,900 ちょっといい? 172 00:12:39,633 --> 00:12:41,200 手前 与太郎と発しやす! 173 00:12:41,200 --> 00:12:42,700 八雲師匠の弟子です! 174 00:12:42,700 --> 00:12:44,333 冗談だよね? 175 00:12:44,333 --> 00:12:45,933 本当です。 176 00:12:47,433 --> 00:12:50,000 八代目は 弟子を取りません。 177 00:12:50,000 --> 00:12:52,045 なぜなら 八代目の芸は 178 00:12:52,075 --> 00:12:54,560 「孤独でいてこそ芸が磨かれる」 という 179 00:12:54,590 --> 00:12:56,900 崇高なポリシーに基づいており 180 00:12:56,900 --> 00:12:59,667 だからこそ あの洗練された芸 181 00:12:59,667 --> 00:13:02,300 八代目の落語こそが 真の落語。 182 00:13:02,300 --> 00:13:05,600 まあ 中には助六こそ天才と言う やからもいるが 183 00:13:05,600 --> 00:13:08,867 あんな あてずっぽうは 落語じゃありません。 184 00:13:09,600 --> 00:13:11,600 助六って 確か…。 185 00:13:38,933 --> 00:13:43,433 困った時の神頼みなんてことを 申しますが。 186 00:13:43,433 --> 00:13:47,500 -「死神」だ! -あまりお付き合い したくない神様もあるようで 187 00:13:47,500 --> 00:13:51,933 「死のうたってなぁ 俺 初めて死ぬんだからなぁ 188 00:13:51,933 --> 00:13:53,733 死にようが分からねえけど 189 00:13:53,733 --> 00:13:56,400 どうやったら 死ねるんだろうなぁ」。 190 00:13:58,367 --> 00:14:01,133 「おせ~てやろうか」。 191 00:14:01,967 --> 00:14:03,733 「なんだい てめえは」。 192 00:14:06,367 --> 00:14:08,633 「死神だよ」。 193 00:14:08,633 --> 00:14:10,000 「死神? 194 00:14:10,000 --> 00:14:12,000 うわ そっちに行けよ 気味悪ぃなぁ おい 195 00:14:12,000 --> 00:14:13,667 どっかに行ってくれよ」。 196 00:14:13,667 --> 00:14:16,633 「そう じゃけんにするねえ。 197 00:14:17,733 --> 00:14:21,233 いっぺんしか言わねえよ。 198 00:14:21,233 --> 00:14:26,433 あじゃらかもくれん てけれっつのぱ。 199 00:14:27,067 --> 00:14:31,167 で 手を二つ ポンポンだ」。 200 00:14:33,567 --> 00:14:34,500 「これで… 201 00:14:34,500 --> 00:14:36,033 死神さん? 202 00:14:36,033 --> 00:14:37,500 死神さん?」。 203 00:14:40,067 --> 00:14:42,833 なるほど 消えちまった。 204 00:14:43,933 --> 00:14:45,967 「なんだい おめえは」。 205 00:14:45,967 --> 00:14:48,567 「死神だよ」。 206 00:14:49,067 --> 00:14:50,333 「死神? 207 00:14:50,333 --> 00:14:52,367 そっち行けよ 気味悪ぃな おい。 208 00:14:52,367 --> 00:14:53,667 どっか行ってくれよ」。 209 00:14:54,833 --> 00:14:57,367 「そう じゃけんにするねえ」。 210 00:14:58,200 --> 00:15:01,700 それ オッサンの「死神」だろ? 211 00:15:01,700 --> 00:15:04,167 1回 聞いただけで 覚えちゃったのかい? 212 00:15:05,500 --> 00:15:07,433 ムショで聞いたから 2回目だよ。 213 00:15:07,900 --> 00:15:09,967 好きなもんは 覚えちまう。 214 00:15:12,633 --> 00:15:15,033 バカも一芸ってやつだね。 215 00:15:16,967 --> 00:15:18,600 なあ アネさん 216 00:15:18,600 --> 00:15:22,067 オイラ 誰かに似てんのか? 217 00:15:22,067 --> 00:15:23,800 さあね…。 218 00:15:25,067 --> 00:15:29,333 それより アンタの「死神」は 落語じゃなくて コントだね。 219 00:15:29,333 --> 00:15:34,000 あの嫌みっぽい死神は オッサンが演るから味がある。 220 00:15:34,000 --> 00:15:38,533 うちの父ちゃんのは もっと軽い調子で演ってたけど。 221 00:15:40,067 --> 00:15:42,367 落語って 自分勝手に演ってもいいの? 222 00:15:42,367 --> 00:15:44,300 どうとでもね。 223 00:15:44,300 --> 00:15:48,300 じゃあ 演ってみてくれよ おやじさんの「死神」。 224 00:15:48,300 --> 00:15:49,533 嫌だ。 225 00:15:49,533 --> 00:15:52,267 頼むよ! さわりだけでいいからよ。 なっ! 226 00:15:53,533 --> 00:15:55,267 頼む! 227 00:15:57,233 --> 00:15:59,600 -ちょっとだけだぞ。 -よっしゃ~! 228 00:16:13,867 --> 00:16:15,967 「おせ~てやろうか」。 229 00:16:16,700 --> 00:16:18,667 「なんだい じいさん」。 230 00:16:18,667 --> 00:16:21,100 「死神だ」。 231 00:16:21,100 --> 00:16:23,067 「死神!? 232 00:16:25,400 --> 00:16:28,633 ほんとだ 死神だ。 233 00:16:28,633 --> 00:16:31,267 どっからどう見ても 死神だ。 234 00:16:31,267 --> 00:16:33,300 気味悪ぃから どっか行けよ。 235 00:16:33,300 --> 00:16:35,000 行けってんだよ。 236 00:16:35,000 --> 00:16:38,867 -おめえ 仕事もねえ 銭も ねえから…」。 -いい声だなぁ。 237 00:16:38,867 --> 00:16:41,567 りんとしてて よく通る。 238 00:16:42,000 --> 00:16:43,333 いい声だなぁ。 239 00:16:43,333 --> 00:16:45,000 よ~く通って気持ちがいいや。 240 00:16:50,200 --> 00:16:51,400 けど アネさん 241 00:16:51,400 --> 00:16:53,600 そんだけ しゃべれりゃ プロになれんだろ? 242 00:16:53,600 --> 00:16:56,933 やりゃいいじゃん。 なんで やんねえの? 243 00:16:57,800 --> 00:16:59,833 バカお言い。 244 00:16:59,833 --> 00:17:02,533 女真打ちなんざ 聞いたこともないよ。 245 00:17:03,333 --> 00:17:07,467 それに あのオッサンが 許すわきゃあないんだよ。 246 00:17:07,467 --> 00:17:09,000 ただいま。 247 00:17:09,767 --> 00:17:12,867 師匠! ちょっと いいですか? 248 00:17:15,933 --> 00:17:18,200 なんだい? 249 00:17:18,200 --> 00:17:21,533 そろそろ 師匠の落語を ちゃんと教わりてえ。 250 00:17:23,933 --> 00:17:26,967 オイラのことを可愛がってくれんのは ありがてえし うれしい。 251 00:17:27,733 --> 00:17:31,433 でも 芸のことも 厳しくたっていいから教えてくれ。 252 00:17:32,700 --> 00:17:34,633 それと もう一つ 253 00:17:36,067 --> 00:17:39,400 アネさんも 師匠に弟子入りしたいそうです。 254 00:17:39,867 --> 00:17:41,867 バカ なに 勝手に 話 作ってんだい! 255 00:17:41,867 --> 00:17:43,133 さっき言ってたろ? 256 00:17:43,133 --> 00:17:45,733 ほら こうするだけだ アネさん! 257 00:17:45,733 --> 00:17:46,933 お願いします! 258 00:17:53,100 --> 00:17:54,933 私…。 259 00:18:00,800 --> 00:18:03,833 アタシに 頭 下げんのかい。 260 00:18:04,367 --> 00:18:06,533 こりゃあ 見ものだ。 261 00:18:07,200 --> 00:18:09,200 ほら アネさん! 262 00:18:24,267 --> 00:18:27,833 コソコソ何かやってると思やぁ… 263 00:18:28,633 --> 00:18:31,733 全部 あの人のネタだねぇ。 264 00:18:32,633 --> 00:18:35,200 悪ぃかよ 好きなんだ! 265 00:18:42,300 --> 00:18:43,167 師匠! 266 00:18:43,167 --> 00:18:45,867 アタシに ケンカ 売ろうってのかい? 267 00:18:45,867 --> 00:18:47,767 不愉快な子だよ! 268 00:18:49,867 --> 00:18:52,133 アネさん! ダメだ! 269 00:18:52,133 --> 00:18:55,133 殺してやる! 仇討ちだよ! 270 00:18:55,133 --> 00:18:56,533 仇討ち? 271 00:18:57,133 --> 00:18:58,767 父ちゃんは… 272 00:18:58,767 --> 00:19:01,433 有楽亭助六は 273 00:19:01,433 --> 00:19:03,267 お前が殺したんだ! 274 00:19:29,300 --> 00:19:31,433 松田さん。 275 00:19:31,433 --> 00:19:33,933 師匠が 助六を殺したって 276 00:19:33,933 --> 00:19:35,800 どういうことだ? 277 00:19:38,400 --> 00:19:40,333 なあ 松田さん! 278 00:19:41,300 --> 00:19:44,900 このまま この家に 置いてもらいたかったら 279 00:19:44,900 --> 00:19:49,633 その話は 二度としない方が よろしいかと。 280 00:20:08,367 --> 00:20:13,800 「私 若旦那に捨てられたら 生きていけない。 281 00:20:13,800 --> 00:20:16,700 生きていたって しかたがない。 282 00:20:16,700 --> 00:20:18,733 生きていたくない…」。 283 00:20:20,133 --> 00:20:25,333 「若旦那 あの子に お三味線を こしらえてくださいましたでしょ。 284 00:20:26,033 --> 00:20:28,733 そのお三味線が届いたんですよ」。 285 00:20:31,100 --> 00:20:33,167 出ておいで。 286 00:20:43,933 --> 00:20:47,467 アタシは 稽古は しとりっきりでやりたい。 287 00:20:47,467 --> 00:20:51,867 もう 三月たつんだ。 いいかげん覚えておくれ。 288 00:20:51,867 --> 00:20:53,333 はい! 289 00:20:54,200 --> 00:20:55,767 いいかい 290 00:20:55,767 --> 00:20:58,567 アタシが協会に届け出すまで 291 00:20:58,567 --> 00:21:01,633 お前さんは 前座でもないんだよ。 292 00:21:01,633 --> 00:21:03,233 分かってます。 293 00:21:03,233 --> 00:21:05,567 届け出が出されるまでは見習い。 294 00:21:05,567 --> 00:21:08,133 だけど オイラ 早く 一人前になりてえ。 295 00:21:08,133 --> 00:21:10,733 頼む お願いします! 296 00:21:12,867 --> 00:21:17,433 明日 萬歳師匠と二人会だから ついといで。 297 00:21:18,300 --> 00:21:19,967 やった! 298 00:21:21,200 --> 00:21:24,167 萬歳師匠は 協会の会長 299 00:21:24,167 --> 00:21:26,267 アタシも世話になったお人だ。 300 00:21:26,267 --> 00:21:28,700 くれぐれも粗相のないように。 301 00:21:29,733 --> 00:21:31,333 合点承知之助! 302 00:21:42,033 --> 00:21:43,500 失礼します。 303 00:21:45,800 --> 00:21:49,167 八雲 今年も すまねえ。 304 00:21:49,167 --> 00:21:52,100 師匠 ご無沙汰しております。 305 00:21:53,900 --> 00:21:57,033 噂の弟子ってのは おまいさんか? 306 00:21:57,033 --> 00:21:58,967 はじめまして!与太郎と発しやす! 307 00:21:58,967 --> 00:22:00,533 どうぞ お見知りおき…。 308 00:22:05,667 --> 00:22:08,433 ずいぶんと威勢のいい与太郎だ。 309 00:22:09,867 --> 00:22:13,700 お前みてえな陰気な男には こんぐれぇ大雑把がちょうどいい。 310 00:22:14,700 --> 00:22:17,200 八雲の弟子ってこたぁ 311 00:22:17,200 --> 00:22:21,200 アタシにとっては 孫みてえなもんだ。 312 00:22:21,200 --> 00:22:24,233 おい 精進しな。 313 00:22:26,967 --> 00:22:29,900 萬月さん よろしく お願いしますよ。 314 00:22:29,900 --> 00:22:31,867 はい 師匠。 315 00:22:37,233 --> 00:22:40,367 せっかくだからな 新作でとも思ったんだが…。 316 00:22:48,867 --> 00:22:52,833 今日の 八代目の演目は 「たちきり」。 317 00:22:53,433 --> 00:22:59,667 芸者と恋仲になった若旦那が親に 反対されて蔵に閉じ込められる。 318 00:22:59,667 --> 00:23:03,533 会えないうちに 女は 恋い焦がれて死んでしまう。 319 00:23:03,533 --> 00:23:06,400 それを知った若旦那… 320 00:23:06,400 --> 00:23:09,767 その心情描写が切々と伝わる。 321 00:23:09,767 --> 00:23:12,500 何度 聞いても ため息が出る。 322 00:23:12,500 --> 00:23:15,600 あれが 本当の名人芸だ。 323 00:23:15,600 --> 00:23:16,800 そうさ 324 00:23:16,800 --> 00:23:18,933 オイラ 刑務所で いっぺん聞いた時から 325 00:23:18,933 --> 00:23:20,833 この人しかないって ピンと来たもんだ。 326 00:23:20,833 --> 00:23:22,800 刑務所? 327 00:23:22,800 --> 00:23:25,467 君 刑務所帰りなのか? 328 00:23:25,467 --> 00:23:27,033 おう。 329 00:23:27,033 --> 00:23:29,867 どうして 君なんかが…。 330 00:23:29,867 --> 00:23:34,500 僕は八代目に弟子入りをお願いして なんべんも断られてる。 331 00:23:35,667 --> 00:23:37,367 でも アンタ 萬歳師匠の…。 332 00:23:37,367 --> 00:23:39,933 おやじの芸には興味がない。 333 00:23:40,567 --> 00:23:43,667 実の親子なんですか…。 334 00:23:43,667 --> 00:23:48,233 八代目の落語が僕の理想の落語。 335 00:23:51,933 --> 00:23:53,967 小夏さんは元気? 336 00:23:54,633 --> 00:23:56,467 アネさんのことも知ってんのかい。 337 00:23:56,467 --> 00:24:00,267 弟子入りしたくて あの家に通い詰めてね。 338 00:24:00,267 --> 00:24:04,767 名人助六の忘れ形見で 名人八雲の養女。 339 00:24:04,767 --> 00:24:07,800 落語界のプリンセスの ような存在だ。 340 00:24:08,867 --> 00:24:12,433 羨ましいよ そんな家に住めるなんて 341 00:24:12,433 --> 00:24:14,867 嫉妬で どうにかなりそうだ。 342 00:24:15,900 --> 00:24:18,700 嫉妬すんのは オイラの方だい。 343 00:24:18,700 --> 00:24:21,700 生まれた時から 落語家の息子だなんてよ。 344 00:24:22,567 --> 00:24:25,000 助六に似てる? 345 00:24:27,033 --> 00:24:29,233 与太郎がですかい? 346 00:24:32,067 --> 00:24:35,700 おまいさんだって とっくに気付いているはずだ。 347 00:24:37,233 --> 00:24:41,167 顔だちじゃあねえ 様子が似ている。 348 00:24:41,967 --> 00:24:45,733 助六に似ているから 弟子に取ったんだろ? 349 00:24:48,000 --> 00:24:51,200 いや そんなこたぁ…。 350 00:24:52,033 --> 00:24:55,967 小夏ちゃん 今でも おまいさんの ことを恨んでいるのか? 351 00:24:58,767 --> 00:25:00,567 ええ。 352 00:25:03,567 --> 00:25:07,767 あの子の おっかさん みよ吉ってえたね。 353 00:25:08,700 --> 00:25:13,533 あの時分を知ってるってえ人間も ずいぶん少なくなってきた。 354 00:25:17,633 --> 00:25:23,800 あの若さで 二人一緒に おっちんじまうとはなぁ…。 355 00:25:47,967 --> 00:25:50,667 お嬢さん 何なさってるんです? 356 00:25:53,900 --> 00:25:55,833 懐かしいなぁ。 357 00:25:55,833 --> 00:25:58,600 あ~ これ 鹿芝居の時だ。 358 00:25:58,600 --> 00:25:59,967 鹿芝居? 359 00:25:59,967 --> 00:26:03,067 噺家のやる お芝居だから しかしばい。 360 00:26:03,067 --> 00:26:06,067 噺家の余興ですよ。 361 00:26:06,067 --> 00:26:09,133 こんなに仲良かったの? 362 00:26:09,133 --> 00:26:12,467 始終一緒で悪さばっかりして 363 00:26:12,467 --> 00:26:16,000 七代目に しょっちゅう 大目玉くらってましたよ。 364 00:26:17,300 --> 00:26:24,200 そんな二人が いまや 片方は 死んじまって 片方は名人で…。 365 00:26:24,200 --> 00:26:26,833 皮肉な話さ。 366 00:26:26,833 --> 00:26:28,867 お嬢さん…。 367 00:26:28,867 --> 00:26:33,000 松田さん 私ずっと考えてたんだ。 368 00:26:35,267 --> 00:26:39,367 本当は父ちゃんが「八代目八雲」を 継いでたんじゃないかって。 369 00:26:40,267 --> 00:26:46,733 「あの子は 布団の上に 起き上がりまして 370 00:26:46,733 --> 00:26:54,933 震える手で ひとばち シャーン あてました」。 371 00:26:57,300 --> 00:27:03,533 「小糸 いい音がするねって そう申しましたら 372 00:27:05,000 --> 00:27:10,600 あの子が 初めて うれしそうに笑いましてねぇ…」。 373 00:27:11,700 --> 00:27:14,233 「母さん… 374 00:27:16,133 --> 00:27:19,300 あたし もう疲れた…」。 375 00:27:21,033 --> 00:27:23,400 「知りませんでした… 376 00:27:23,400 --> 00:27:26,100 もし そうと分かっていたら 377 00:27:26,100 --> 00:27:29,300 あたしゃ 蔵の戸なんぞ 蹴破ってでも出てきたんだ」。 378 00:27:38,000 --> 00:27:41,967 「母さん… お三味線…」。 379 00:27:45,533 --> 00:27:55,867 「あの子が若旦那のお好きな黒髪 弾いてますねぇ…」。 380 00:28:00,233 --> 00:28:02,867 「小糸… 381 00:28:03,367 --> 00:28:05,733 小糸… 382 00:28:06,967 --> 00:28:13,467 自分の命を詰めてまで あたしの ことを想ってくれて ありがとう。 383 00:28:14,667 --> 00:28:17,833 あたしゃ 生涯 384 00:28:17,833 --> 00:28:21,167 妻と名のつく者は持たないから 385 00:28:21,767 --> 00:28:24,200 それで許しておくれ…」。 386 00:28:24,767 --> 00:28:28,033 本当に誰かに謝ってるみてえだ…。 387 00:28:30,767 --> 00:28:36,633 「きれいなところに お参りしてね…」。 388 00:28:44,200 --> 00:28:45,967 アネさん! アネさんも飲まないかい? 389 00:28:53,433 --> 00:28:56,067 小夏さん お久しぶりです。 390 00:29:08,833 --> 00:29:10,867 た~まや~! 391 00:29:12,967 --> 00:29:14,667 師匠! 花火! 392 00:29:17,800 --> 00:29:22,300 萬歳師匠 お加減は あまり芳しくないようですな。 393 00:29:24,000 --> 00:29:26,933 実は 高座に上がるのも 反対したんです。 394 00:29:27,367 --> 00:29:29,567 舌も回ってなかったし 395 00:29:29,567 --> 00:29:31,300 昔に比べると 声も…。 396 00:29:31,300 --> 00:29:34,100 アタシも アナタも いずれ そうなる。 397 00:29:35,200 --> 00:29:37,267 そうですね…。 398 00:29:38,433 --> 00:29:42,333 噺家ってのは罪な商売ですなぁ。 399 00:29:42,333 --> 00:29:46,600 死んじまったら 芸も何もかも 全部 持ってっちまう。 400 00:29:47,267 --> 00:29:50,533 こんなふうに こじんまりした芸はねえ。 401 00:29:51,833 --> 00:29:55,467 身近でなくなりゃ 一緒に終わり。 402 00:29:55,467 --> 00:29:57,567 それで いいんです。 403 00:30:04,267 --> 00:30:09,200 だったら パッと散った方が いくらか粋じゃ…。 404 00:30:09,200 --> 00:30:11,533 師匠! ねえ 師匠! 405 00:30:11,533 --> 00:30:13,100 なんだい! 406 00:30:13,100 --> 00:30:15,667 オイラの落語が聞きてえって。 407 00:30:15,667 --> 00:30:16,467 やっていいっすか? 408 00:30:16,467 --> 00:30:19,733 君 酔ってるね?師匠の前なのに。 409 00:30:19,733 --> 00:30:21,900 だって 師匠が飲んでいいって 言ったんだもん。 410 00:30:23,033 --> 00:30:25,933 -てめえで考えな。 -へい! 411 00:30:26,667 --> 00:30:28,033 やっていいって! 412 00:30:28,633 --> 00:30:30,200 本当ですか? 413 00:30:31,433 --> 00:30:32,833 楽しみだわ! 414 00:30:35,133 --> 00:30:37,467 おかえんなさ~い 若旦那! 415 00:30:37,467 --> 00:30:39,500 若旦那 おかえんなさ~い! 416 00:30:39,500 --> 00:30:42,346 あっ さだきち さだきち! おっ さだきち! 417 00:30:43,933 --> 00:30:45,833 ベロベロに酔っ払ってるし 418 00:30:45,833 --> 00:30:49,133 筋も台詞も めちゃくちゃですね。 419 00:30:49,133 --> 00:30:50,533 けど…。 420 00:30:50,533 --> 00:30:53,000 肩すかし くっちまうって。 421 00:30:53,767 --> 00:30:56,233 変な子ですねぇ。 422 00:30:58,000 --> 00:31:01,267 なんだか おかしくってしょうがない。 423 00:31:04,167 --> 00:31:06,933 「黙って あっしに一円おくれ」。 424 00:31:06,933 --> 00:31:09,133 「何なんだね お前さんは えっ? 425 00:31:09,133 --> 00:31:10,433 朝っぱらから 人を」。 426 00:31:11,033 --> 00:31:12,967 若旦那…。 427 00:31:14,867 --> 00:31:17,667 あんな落語は 我慢ならない。 428 00:31:17,667 --> 00:31:21,400 酔ってるわ 作法も技術も なってねえ。 429 00:31:21,400 --> 00:31:23,600 しかも 型は アタシのときてる。 430 00:31:24,267 --> 00:31:27,967 アタシの居ねえところでは 絶対に やるんじゃねえ。 431 00:31:29,067 --> 00:31:30,500 はい…。 432 00:31:30,500 --> 00:31:33,267 前座ってのは 修業中の身だ。 433 00:31:33,267 --> 00:31:37,200 それを ひとさまの前で 一席なんざぁ 生意気の極み。 434 00:31:37,200 --> 00:31:40,400 言語道断です。 435 00:31:40,400 --> 00:31:42,700 すいませんでした! 436 00:31:44,733 --> 00:31:50,167 そういうのは 二ツ目んなってから おやり。 437 00:31:51,500 --> 00:31:53,000 はい! 438 00:32:00,533 --> 00:32:06,033 お前さんは 本当に いじめがいも からかいがいも ねえな。 439 00:32:07,333 --> 00:32:09,200 はい? 440 00:32:09,200 --> 00:32:12,500 前座にしてやるって言ってんだよ。 441 00:32:12,500 --> 00:32:14,833 早く気付きやがれ。 442 00:32:16,767 --> 00:32:18,400 はい!? 443 00:32:20,600 --> 00:32:22,300 師匠! 444 00:32:25,100 --> 00:32:26,733 やめなさい。 445 00:32:32,700 --> 00:32:34,933 三味線の扱いも慣れてるし 446 00:32:34,933 --> 00:32:39,000 女中じゃなくて お座敷やった方が稼げるだろ? 447 00:32:39,000 --> 00:32:40,333 嫌です 448 00:32:40,333 --> 00:32:43,267 オッサンみたいなやつに 愛想 振りまくなんて。 449 00:32:43,267 --> 00:32:46,267 おっかさんとは まるで逆。 450 00:32:48,767 --> 00:32:50,367 女将さん 451 00:32:50,367 --> 00:32:53,033 母ちゃんと仲良かったんですよね? 452 00:32:53,033 --> 00:32:56,367 一緒に 芸者の修業してたからね。 453 00:32:57,900 --> 00:33:01,167 じゃあ あの事故のことも? 454 00:33:03,433 --> 00:33:06,267 ねえ 女将さん 知ってること教えて。 455 00:33:07,133 --> 00:33:09,733 ほんとは何が起きたのか ちゃんと知りたい。 456 00:33:10,600 --> 00:33:14,200 私 その場にいたのに 肝心な ことは なんにも覚えてなくて…。 457 00:33:14,200 --> 00:33:18,833 アンタがそんなんじゃ あの二人も 成仏しきれやしないじゃないか。 458 00:33:24,200 --> 00:33:28,500 過ぎたことに がんじがらめに なってちゃダメ。 459 00:33:29,367 --> 00:33:34,300 親の代わりに 八雲師匠がアンタを ここまで育ててくれて 460 00:33:34,300 --> 00:33:36,200 感謝しなきゃ。 461 00:33:38,067 --> 00:33:40,633 もう そんな顔は およし。 462 00:33:40,633 --> 00:33:43,500 いい女が 台なしだよ。 463 00:34:54,400 --> 00:34:57,167 名前というのは 大事なもんで。 464 00:34:57,167 --> 00:34:59,433 子供が生まれ 名前をつける。 465 00:34:59,433 --> 00:35:01,300 どういうふうに 名前をつけようかなんてのは 466 00:35:01,331 --> 00:35:04,531 いつの時代になっても 頭を 悩ませてるところでございまして…。 467 00:35:05,200 --> 00:35:07,600 「こんちはぁ 和尚さん いますか? 468 00:35:07,600 --> 00:35:09,167 こんちはぁ」。 469 00:35:09,167 --> 00:35:11,500 「はい はい。 お~ 八っつぁんじゃねえか 珍しいな。 470 00:35:11,500 --> 00:35:12,633 なんか用かい? 471 00:35:12,633 --> 00:35:14,133 まあまあ こっちへ お上がり」。 472 00:35:14,133 --> 00:35:16,433 「いえね 別に大した用って わけじゃねえんですけどね 473 00:35:16,433 --> 00:35:18,833 長屋でね お子さんが お生まれになりました」。 474 00:35:18,833 --> 00:35:21,267 「こいつは知らなかった。 一体 どちらで お生まれになった?」。 475 00:35:21,267 --> 00:35:23,967 「へぇ あっしんところで お生まれになりました」。 476 00:35:23,967 --> 00:35:26,233 「自分ところで お生まれになった ってやつがあるかい」。 477 00:35:27,367 --> 00:35:28,667 小夏ちゃん。 478 00:35:28,667 --> 00:35:30,767 お席亭 こんにちは。 479 00:35:30,767 --> 00:35:33,900 珍しいね。 与太郎ちゃん? 480 00:35:35,000 --> 00:35:39,367 見てよ 私が居るのも気付いてない。 481 00:35:39,367 --> 00:35:41,567 「食う寝る処に住む処 藪ら柑子のブラ柑子 482 00:35:41,567 --> 00:35:45,033 パイポ…のシューリンガン グーリンダイ ポンポコピーの…」。 483 00:35:45,033 --> 00:35:46,667 全く客が見えてない。 484 00:35:46,667 --> 00:35:48,033 起きなさいよ!学校 遅れるよ! 485 00:35:48,033 --> 00:35:49,933 全部 一人でやってるよ。 486 00:35:49,933 --> 00:35:52,833 「おばちゃ~ん 遅刻するから 先 行くよ」。 487 00:35:54,133 --> 00:35:57,500 「あんまり名前が長いから コブが引っ込んじゃった」。 488 00:36:18,867 --> 00:36:20,733 お席亭。 489 00:36:22,133 --> 00:36:25,000 お父ちゃんのこと 覚えてる? 490 00:36:29,833 --> 00:36:31,233 お願いします。 491 00:36:31,233 --> 00:36:32,500 小夏 492 00:36:32,500 --> 00:36:35,200 これ持って 萩の間に行っておくれ。 493 00:36:35,200 --> 00:36:36,400 はい。 494 00:36:43,033 --> 00:36:44,600 失礼致します。 495 00:36:50,433 --> 00:36:52,933 ちょいと 話があるんだ。 496 00:36:53,667 --> 00:36:55,667 仕事中だよ。 497 00:36:57,600 --> 00:36:59,900 アタシが 怖ぇかい? 498 00:37:17,433 --> 00:37:21,433 陰で コソコソ あの時のことを 探ってるんだって? 499 00:37:23,900 --> 00:37:28,633 アタシが お前の お父っつぁんを 殺したと思ってんなら それでいい。 500 00:37:29,600 --> 00:37:33,567 それで お前さんの気が済むってんなら 501 00:37:33,567 --> 00:37:36,800 いくらでも しょってやるよ。 502 00:37:37,867 --> 00:37:42,933 アタシを殺そうが何しようが お前さんの自由だ。 503 00:37:48,500 --> 00:37:50,733 だけどねぇ 504 00:37:51,933 --> 00:37:57,433 お前さんが 噺家になって アタシの鼻 明かそうって魂胆なら 505 00:37:57,433 --> 00:38:01,833 全身全霊をかけて 阻止する。 506 00:38:04,367 --> 00:38:05,300 なんで? 507 00:38:05,300 --> 00:38:08,100 不可能なのさ。 508 00:38:09,400 --> 00:38:12,433 女は 噺家には向かない。 509 00:38:13,900 --> 00:38:17,467 こればっかりは どうにもならねえ。 510 00:38:21,267 --> 00:38:24,233 父ちゃんの落語を 根絶やしにしたくない。 511 00:38:40,433 --> 00:38:43,933 よく 趣味道楽なんてことを 申しますが。 512 00:38:45,833 --> 00:38:47,433 「開けてくれ 開けてくれ! 513 00:38:47,433 --> 00:38:52,333 先生!お~い!開けてくれ~!」。 514 00:38:53,067 --> 00:38:55,200 「ちょいと お待ちよ 515 00:38:55,200 --> 00:38:57,500 うちの戸は やわに出来てんだから 516 00:38:57,500 --> 00:39:00,000 そう どんどん たたいちゃいかん」。 517 00:39:00,933 --> 00:39:02,067 「どうも すいません。 518 00:39:02,067 --> 00:39:04,500 今 夢中で どんどん どんどん たたいてるってえとね 519 00:39:04,531 --> 00:39:05,706 いきなり 戸が スッと開いて 520 00:39:05,737 --> 00:39:07,300 先生の頭が にゅっと出てきたんで 521 00:39:07,300 --> 00:39:08,867 思わず ポカッと やっちゃったんですよ。 522 00:39:08,867 --> 00:39:10,300 勘弁してくんねえなぁ。 523 00:39:10,300 --> 00:39:11,733 それより 先生 524 00:39:11,733 --> 00:39:14,333 黙って あっしに 一円おくれ」。 525 00:39:15,233 --> 00:39:16,867 「何なんだ お前さんは… えっ? 526 00:39:16,867 --> 00:39:19,933 朝っぱらから 人をたたき起こして 頭を殴って 527 00:39:19,933 --> 00:39:21,867 何が 一円おくれだ」。 528 00:39:21,867 --> 00:39:25,267 「上げ潮 南さあ」 529 00:39:25,267 --> 00:39:29,500 「カラスぱっと出て こらさのさあ」 530 00:39:29,500 --> 00:39:33,067 「骨があると さいさいさい」 531 00:39:33,067 --> 00:39:37,067 「ほら すちゃらかちゃん ほら すちゃらかちゃん」 532 00:39:37,067 --> 00:39:38,767 父ちゃん…。 533 00:39:42,267 --> 00:39:46,000 「こんな針で 骨が釣れるかよってんだ」。 534 00:39:46,733 --> 00:39:49,133 「あら この人 針 とっちゃったよ」。 535 00:39:50,500 --> 00:39:53,267 野ざらしで。 536 00:40:04,967 --> 00:40:07,800 助六は 今も… 537 00:40:09,300 --> 00:40:12,667 アタシん中で生きてる。 538 00:40:17,733 --> 00:40:25,467 お前さんの中の神様みてえな助六と おんなじにな。 539 00:40:40,433 --> 00:40:43,700 与太郎の子守 540 00:40:43,700 --> 00:40:47,600 お前さんも少しは やっておくれ。 541 00:40:47,600 --> 00:40:49,533 なんで 私が…? 542 00:40:50,100 --> 00:40:53,267 噺 教えろって しつけえんだ。 543 00:41:11,833 --> 00:41:13,633 ちょいと。 544 00:41:16,767 --> 00:41:19,200 ちょいと! 545 00:41:28,800 --> 00:41:30,733 与太。 546 00:41:30,733 --> 00:41:32,600 起きろ! 547 00:41:32,600 --> 00:41:34,633 -与太郎! -はい! はい! 548 00:41:35,900 --> 00:41:37,567 アネさん。 549 00:41:37,567 --> 00:41:39,800 アンタ うそついたね? 550 00:41:39,800 --> 00:41:41,800 ヤクザじゃねえって言ってたろ。 551 00:41:41,800 --> 00:41:44,367 その背中のもんは何なんだい! 552 00:41:50,167 --> 00:41:53,300 痛くって 筋彫りで やめちまった。 553 00:41:53,300 --> 00:41:55,800 オイラ 何もかも中途半端でよう。 554 00:41:55,800 --> 00:41:58,000 ヤクザも 途中で やめましたから 555 00:41:58,000 --> 00:41:59,367 元ヤクザっす。 556 00:41:59,367 --> 00:42:00,700 やっぱり そうなんじゃない! 557 00:42:02,600 --> 00:42:07,033 刑務所 行って お務めするかわりに すっぱり辞めさせてもらったんです。 558 00:42:17,633 --> 00:42:21,067 そんなもん しょってて バレた時 どうすんだい? 559 00:42:22,033 --> 00:42:24,100 寄席のみんなは もう知ってらぁ。 560 00:42:24,100 --> 00:42:27,067 訳 話したら ゲラゲラ笑ってくれました。 561 00:42:27,067 --> 00:42:31,267 落語の世界は ダメなやつにだって ちゃんと優しいんだ。 562 00:42:34,800 --> 00:42:37,169 オイラ 師匠に出会えて 落語に出会えて 563 00:42:37,200 --> 00:42:39,700 ほんっとうに果報もんだい。 564 00:42:41,933 --> 00:42:45,800 でも 師匠 全然 教えてくんねえんだよなぁ。 565 00:42:48,167 --> 00:42:49,900 なら 566 00:42:49,900 --> 00:42:52,967 覚えるだけなら 私が稽古してやる。 567 00:42:54,033 --> 00:42:57,067 素人芸だけど ねえよりマシだろ? 568 00:43:01,100 --> 00:43:02,467 「食う寝る処に住む処」。 569 00:43:02,467 --> 00:43:03,500 -「藪ら柑子のブラ柑子」。 -「パイポ パイポ…」。 570 00:43:03,500 --> 00:43:05,633 「藪ら柑子のブラ柑子」。 571 00:43:05,633 --> 00:43:07,433 はい そこから。 572 00:43:07,433 --> 00:43:09,233 「藪ら柑子のブラ柑子 573 00:43:09,233 --> 00:43:13,200 パイポ パイポ パイポの シューリンガン…」。 574 00:43:13,200 --> 00:43:14,833 長久命の長助…。 575 00:43:14,833 --> 00:43:16,867 はい もう一回 最初から。 576 00:43:17,900 --> 00:43:19,567 壽限無壽限無五劫の…。 577 00:43:28,667 --> 00:43:30,833 八つを頭に四人の子供がございます 578 00:43:30,833 --> 00:43:32,200 しちじゅ…。 579 00:43:32,200 --> 00:43:33,467 痛っ…! 580 00:43:33,467 --> 00:43:35,100 また詰まった。 581 00:43:35,100 --> 00:43:37,367 なんべん同じ間違えしてんだい! 582 00:43:37,367 --> 00:43:39,400 駒が ないよ。 583 00:43:39,400 --> 00:43:41,033 今日は おしまい。 584 00:43:41,733 --> 00:43:44,533 アネさんが おっかなすぎて ますます できねえんだよ。 585 00:43:44,533 --> 00:43:47,700 大体 なんで こんなネタ選んだんだい? 586 00:43:48,333 --> 00:43:51,433 まぬけな新米泥棒と 親分の噺ってのがさ 587 00:43:51,433 --> 00:43:54,133 どうも 昔のオイラに だぶって。 588 00:43:55,067 --> 00:43:58,967 アンタの落語には 人に聴かせようっていう気がない。 589 00:43:58,967 --> 00:44:02,000 ダラダラこなすだけで お客が置いてきぼりなんだ。 590 00:44:02,000 --> 00:44:04,633 口で言うのは簡単だけどよう…。 591 00:44:12,200 --> 00:44:13,733 兄貴! 592 00:44:15,867 --> 00:44:17,867 久しぶりだな。 593 00:44:17,867 --> 00:44:20,100 わざわざ オイラのこと 捜してくれたんだ。 594 00:44:20,100 --> 00:44:22,967 小せえ街だ 訳なかったよ。 595 00:44:28,667 --> 00:44:30,833 落語やってんだって? 596 00:44:31,967 --> 00:44:34,067 くだらねえ。 597 00:44:36,967 --> 00:44:39,400 また 命 張って 生きようぜ。 598 00:44:39,400 --> 00:44:41,100 いい話があるんだ。 599 00:44:41,100 --> 00:44:41,933 兄貴…。 600 00:44:41,933 --> 00:44:44,367 前みてえに ムショ行って 出てくるだけで 幹部。 601 00:44:44,367 --> 00:44:45,767 うそじゃねえ。 602 00:44:47,067 --> 00:44:49,467 俺ぁ 組 抜けたんだ。 603 00:44:49,467 --> 00:44:50,933 バカか おめえ。 604 00:44:50,933 --> 00:44:53,867 …んな簡単に 足抜けできると思ってんのか? 605 00:44:54,500 --> 00:44:57,767 -兄貴…。 -断れねえんだよ おめえは 俺の頼みを。 606 00:44:59,133 --> 00:45:01,067 だろ? 607 00:45:01,667 --> 00:45:03,900 アンタ 吉切組のチンピラだろ? 608 00:45:03,900 --> 00:45:06,300 -私は…。 -女は黙ってろ! 609 00:45:13,033 --> 00:45:15,233 オイラ… 610 00:45:15,800 --> 00:45:17,833 俺は 落語が やりてえ。 611 00:45:17,833 --> 00:45:21,200 なんで落語なんだよ。 そんな くだらねえもん。 612 00:45:21,867 --> 00:45:23,900 くだらなくねえ! 613 00:45:27,433 --> 00:45:29,967 お取り込み中 失礼。 614 00:45:29,967 --> 00:45:33,100 子供のケンカは もう おしまい。 615 00:45:33,600 --> 00:45:35,300 師匠…。 616 00:45:35,867 --> 00:45:39,367 ウチのが 昔 世話んなったってねぇ。 617 00:45:39,367 --> 00:45:42,600 ご挨拶が遅れまして。 618 00:45:42,600 --> 00:45:46,633 今 これの親代わり やらせてもらってるもんです。 619 00:45:49,267 --> 00:45:53,600 お前さんが ボロボロにして 捨てちまったのを 620 00:45:53,600 --> 00:45:57,067 なんの因果か アタシが拾っちまってねぇ。 621 00:45:59,833 --> 00:46:03,267 与太 寄席があるんだろ。 622 00:46:03,267 --> 00:46:05,600 とっとと支度しな。 623 00:46:07,567 --> 00:46:09,133 へい…! 624 00:46:10,367 --> 00:46:13,667 あとで 寄席ぇ顔を出すからね。 625 00:46:15,233 --> 00:46:17,700 この人 連れて。 626 00:46:20,467 --> 00:46:26,367 聴かしてやんな くだらねえ落語をね。 627 00:46:31,967 --> 00:46:33,300 へい! 628 00:46:47,233 --> 00:46:50,500 八代目 どういった風の吹き回しで? 629 00:46:50,500 --> 00:46:52,333 お席亭 すいませんね。 630 00:46:52,333 --> 00:46:56,367 今日の与太ばかりは 客席から見させておくれ。 631 00:47:02,600 --> 00:47:04,500 どうすりゃいい… 632 00:47:05,033 --> 00:47:07,633 兄貴を笑わせてぇ…。 633 00:47:07,633 --> 00:47:10,033 なんで落語かを伝えてぇ! 634 00:47:27,700 --> 00:47:31,200 どうも 本日は わざわざ 私のためなんぞに お越し頂きまして 635 00:47:31,200 --> 00:47:34,200 本当に ありがとうございます! 636 00:47:42,033 --> 00:47:44,767 「盗っ人にも三分の理」なんてぇ 言葉がございますが 637 00:47:44,767 --> 00:47:47,500 どうも 噺ん中に出てくる 泥棒なんてぇのには 638 00:47:47,500 --> 00:47:49,733 理に合わねえやつが多いようで。 639 00:47:49,733 --> 00:47:51,700 「出来心」 640 00:47:51,700 --> 00:47:54,967 あんだけトチってたのに あのアホ。 641 00:47:55,500 --> 00:47:58,300 「今のうちに 足 洗わせて 堅気にした方がいいってなぁ。 642 00:47:58,300 --> 00:48:00,733 どうする 堅気になっちまうか」。 643 00:48:01,433 --> 00:48:04,700 「でも せっかく こうやって 親分・子分の盃を頂戴したんですから 644 00:48:04,700 --> 00:48:06,400 まあ あっしも 料簡を入れ替えまして 645 00:48:06,400 --> 00:48:09,167 一生懸命 悪事に励みますから」。 646 00:48:11,033 --> 00:48:13,000 ウケた! 647 00:48:13,000 --> 00:48:15,167 オイラの噺が ウケてる! 648 00:48:17,900 --> 00:48:20,367 「なるほど 分かりました。 649 00:48:20,367 --> 00:48:23,167 すいません 風呂敷の大きいの あったら 貸して下さい」。 650 00:48:23,167 --> 00:48:24,400 「どうするんでぇい」。 651 00:48:24,400 --> 00:48:26,500 「盗んだものを 包んできますから」。 652 00:48:26,500 --> 00:48:28,800 「いいよ むこうので 包んでくりゃあ」。 653 00:48:28,800 --> 00:48:30,733 「でも 返しに行くのが面倒で」。 654 00:48:30,733 --> 00:48:32,733 「返さなくたっていいよ まぬけ。 655 00:48:32,733 --> 00:48:34,800 そんなの みんな とりっぱなしだ」。 656 00:48:34,800 --> 00:48:37,600 今日の与太ちゃん いいね。 657 00:48:37,600 --> 00:48:39,367 「分かったら 行ってこい」。 658 00:48:39,367 --> 00:48:42,567 「じゃあ 親分 そろそろ 空き巣を狙いに!」。 659 00:48:42,567 --> 00:48:46,433 「大きい声すんねえ! ないしょで行け」。 660 00:48:46,433 --> 00:48:47,300 「へい。 661 00:48:47,300 --> 00:48:48,867 あとは たんす」。 662 00:48:48,867 --> 00:48:51,167 「なんだい たんすなんぞ 持ってったのかい?」。 663 00:48:52,067 --> 00:48:53,667 「裏は 花色木綿」。 664 00:48:53,667 --> 00:48:55,900 「たんすに裏があるかよ」。 665 00:48:55,900 --> 00:48:57,333 「あとは 札で」。 666 00:48:57,333 --> 00:48:59,400 「おめえさんのとこに 札なんぞあったのか」。 667 00:48:59,400 --> 00:49:01,300 「裏は 花色木綿」。 668 00:49:01,300 --> 00:49:04,833 「札に 裏があるかよ! いい加減にしろ こんちくしょう!」 669 00:49:05,833 --> 00:49:08,433 「床下から 変な野郎が出てきやがった。 670 00:49:08,433 --> 00:49:10,967 なんだ おめえは。 671 00:49:10,967 --> 00:49:12,533 泥棒だな」。 672 00:49:12,533 --> 00:49:14,133 「あっ! いけねえ! 673 00:49:15,300 --> 00:49:17,733 長いこと失業致しておりまして。 674 00:49:17,733 --> 00:49:20,433 七十を頭に 四人の子供がございます」。 675 00:49:21,033 --> 00:49:24,700 これだ! 客との間! 676 00:49:24,700 --> 00:49:28,700 楽しい! 楽しい! 楽しい! 677 00:49:31,633 --> 00:49:35,700 兄さん アレに いいこと聞いてくれたねぇ。 678 00:49:36,633 --> 00:49:39,800 なんで落語なのかって。 679 00:49:43,367 --> 00:49:45,567 「出来心でございます」。 680 00:50:01,367 --> 00:50:04,200 師匠! 兄貴は? 681 00:50:04,200 --> 00:50:05,733 帰ったよ。 682 00:50:06,600 --> 00:50:09,667 もう お前さんに 用事はないってね。 683 00:50:10,267 --> 00:50:15,467 それに あたしゃ あの人の親分さんに貸しがある。 684 00:50:16,100 --> 00:50:19,133 話はつけとくから 安心しな。 685 00:50:19,133 --> 00:50:22,367 兄貴 笑ってくれてた! 686 00:50:23,667 --> 00:50:26,100 帰るよ。 687 00:50:26,100 --> 00:50:28,600 前座の おつとめ 行っといで。 688 00:50:30,300 --> 00:50:31,367 へい! 689 00:50:35,100 --> 00:50:36,900 お疲れさまでした。 690 00:50:36,900 --> 00:50:42,500 お前さん アレに 助六 仕込んでんのかい? 691 00:50:43,367 --> 00:50:48,100 すぐバレるってぇのに 全く不愉快だ。 692 00:50:52,133 --> 00:50:56,633 さっきの寄席の空気みたいなもんが おんなじだった。 693 00:50:59,200 --> 00:51:02,233 お互い 694 00:51:02,233 --> 00:51:06,767 おんなしような野郎に 引っ掛かるよう 695 00:51:06,767 --> 00:51:09,867 神様に つくられちまった。 696 00:51:41,567 --> 00:51:43,300 そんな…。 697 00:51:46,200 --> 00:51:48,533 何時だと思ってんだ! 698 00:51:49,300 --> 00:51:51,700 すげえよ 助六さんは。 699 00:51:51,700 --> 00:51:54,267 聴けば聴くほど ほれちまう。 700 00:51:54,267 --> 00:51:57,433 オッサンのより 全然 おもしれえだろ。 701 00:51:57,433 --> 00:52:01,467 そんなことねえよ。 師匠の落語だって最高だ。 702 00:52:01,467 --> 00:52:05,067 ただ オイラに できるかってぇと 話は別で。 703 00:52:05,067 --> 00:52:07,900 何しろ 師匠の噺は隙もねえし 704 00:52:07,900 --> 00:52:11,067 技術も頭も べらぼうに使うからよ。 705 00:52:11,067 --> 00:52:14,900 やっと 身の程ってやつが 分かってきたね。 706 00:52:16,067 --> 00:52:19,000 で 3日後は 何かける? 707 00:52:19,000 --> 00:52:20,467 3日? 708 00:52:20,467 --> 00:52:23,500 オッサンの独演会 前座で出るんだろ? 709 00:52:23,500 --> 00:52:25,800 あんな大きな劇場 初めてなんだから 710 00:52:25,800 --> 00:52:27,500 ちゃんと 体調 整えて。 711 00:52:27,500 --> 00:52:30,300 いけね… 忘れてた。 712 00:52:31,000 --> 00:52:33,467 すっかり忘れてた! 713 00:52:34,367 --> 00:52:35,900 「じゃあ なんですか 大家さん。 714 00:52:35,900 --> 00:52:37,767 年が二十歳で器量がよくて 715 00:52:37,767 --> 00:52:40,300 たんす長持ちくらい 持ってくるってんですか? 716 00:52:40,300 --> 00:52:42,833 -話が うますぎるねぇ」。 -おはようございます…。 717 00:52:44,367 --> 00:52:45,167 話が うますぎる…。 718 00:52:45,167 --> 00:52:49,967 え~ 垂乳根の胎内を出でしときは 鶴女 鶴女と申せしが 719 00:52:49,967 --> 00:52:53,967 これは幼名 成長の後 これを改め 千代女と申し 720 00:52:53,967 --> 00:52:57,733 はべるなり~。 721 00:52:58,400 --> 00:53:00,733 お付けを こしらえようと したんですが…。 722 00:53:00,733 --> 00:53:03,033 お付けを こしらえようと したんですが 具がございません。 723 00:53:03,667 --> 00:53:05,467 昔の長屋は重宝なもんで 724 00:53:05,467 --> 00:53:08,067 路地路地に…。 725 00:53:11,200 --> 00:53:14,033 路地路地に 小商人が 野菜なんぞ売りに参ります。 726 00:53:40,300 --> 00:53:43,533 「あっしは 八五郎ってえまして 727 00:53:43,533 --> 00:53:45,500 あの~がさつな男ではございますが 728 00:53:45,500 --> 00:53:48,900 これから一つ え~ 兄弟同様 729 00:53:48,900 --> 00:53:52,067 仲良く よ… よろしく お願いします」。 730 00:53:54,500 --> 00:53:56,800 「まだ お名前 うかがってねえんですが 731 00:53:56,800 --> 00:53:58,433 なんと おっしゃるんですか?」。 732 00:53:59,000 --> 00:54:02,833 「自らことの姓名は… 733 00:54:03,433 --> 00:54:07,033 父は もと京都の産にして 734 00:54:07,033 --> 00:54:11,067 姓は安藤 名を慶三 735 00:54:11,067 --> 00:54:14,067 あざ… 字… あざ…」。 736 00:54:15,767 --> 00:54:18,967 「字を五光と申せしが…」。 737 00:54:26,600 --> 00:54:28,133 はい はい。 738 00:54:29,533 --> 00:54:31,167 失礼致します。 739 00:54:34,533 --> 00:54:39,067 師匠 お先に勉強させて頂きます。 740 00:54:40,933 --> 00:54:42,933 今日は頼むよ。 741 00:54:42,933 --> 00:54:44,667 よろしく お願い致します。 742 00:54:47,100 --> 00:54:49,767 いやあ… その… 743 00:54:51,133 --> 00:54:53,400 なんと言いますか…。 744 00:54:53,400 --> 00:54:58,733 あのバカ 稽古やりすぎて 満足に寝てないらしい。 745 00:54:59,900 --> 00:55:03,000 寝不足で 集中できちゃいねえ。 746 00:55:03,000 --> 00:55:05,633 この「たらちね」は… 747 00:55:05,633 --> 00:55:08,500 助六師匠の丸パクリ。 748 00:55:09,800 --> 00:55:11,800 いいんですか? 749 00:55:15,000 --> 00:55:19,000 いい心持ちするわけがねえやなぁ。 750 00:55:28,300 --> 00:55:33,033 やっぱり 君には八代目の弟子を 名乗ってほしくない。 751 00:55:51,833 --> 00:55:56,533 え~ 今日は 開口一番から 名人でございました。 752 00:56:00,200 --> 00:56:02,400 もう お寒うございますねぇ。 753 00:56:02,400 --> 00:56:04,633 先日は 節分でございましたけれども。 754 00:56:07,167 --> 00:56:12,433 お先に… 勉強させて頂きました。 755 00:56:20,233 --> 00:56:21,700 師匠。 756 00:56:21,700 --> 00:56:24,600 話すこたぁない。 757 00:57:13,433 --> 00:57:16,800 乗りもんのない その昔 758 00:57:16,800 --> 00:57:21,567 振り分けの荷物 持って 単身 旅ぃ出て参ります。 759 00:57:21,567 --> 00:57:26,867 山道ぃさしかかる とっぷりと日が暮れて参りまして 760 00:57:27,600 --> 00:57:30,567 折しも どんより曇ってえた空から 761 00:57:30,567 --> 00:57:33,267 こぶしが舞うように 762 00:57:33,267 --> 00:57:38,700 さんさんさんさんさんさんさ…。 763 00:57:40,267 --> 00:57:44,067 降ってくるやつに 風が ぴゅ~うう~。 764 00:57:44,067 --> 00:57:47,633 顔へ ベタベタっと張り付く。 765 00:57:47,633 --> 00:57:51,733 辺りを見回しても 人家らしいものは見当たらない。 766 00:57:51,733 --> 00:57:54,933 こんな心細いことは ございませんで。 767 00:57:56,967 --> 00:57:59,700 「えらい雪んなってきた。 768 00:58:01,667 --> 00:58:04,267 人家も見当たらない。 769 00:58:04,267 --> 00:58:07,600 こんな所で野宿をしたら 凍え死んじまう…。 770 00:58:07,600 --> 00:58:09,867 なんとか助かりてえもんだ…。 771 00:58:09,867 --> 00:58:14,467 南無妙法蓮華経 妙法蓮華経…」。 772 00:58:15,667 --> 00:58:20,667 雪風のために笠を飛ばされまいと しっかりと手で抑え 773 00:58:20,667 --> 00:58:24,167 お題目を唱えながら 歩いて参りますと 774 00:58:24,167 --> 00:58:27,200 向こうに ふっと明かりがさした。 775 00:58:31,067 --> 00:58:32,800 「ありませんよ」。 776 00:58:33,567 --> 00:58:38,133 経験も技術も要る 難しい噺…。 777 00:58:38,133 --> 00:58:40,900 八代目の真骨頂だな…。 778 00:58:53,967 --> 00:59:00,733 「あのう 吹雪の中 道も分からず歩いて参りまして 779 00:59:00,733 --> 00:59:05,000 すっかり冷えきったところに 780 00:59:05,000 --> 00:59:11,600 外からは 焚火 腹ん中は 熱い玉子酒。 781 00:59:12,967 --> 00:59:16,567 急に酔いが回ってきたようで 782 00:59:16,567 --> 00:59:20,033 なんだか こうしてるのも つらいくらいで」。 783 00:59:22,067 --> 00:59:24,533 「風が来て おかしいと思ったら 784 00:59:24,533 --> 00:59:27,800 野郎 勘付いたようだよ。 785 00:59:27,800 --> 00:59:30,700 お前の仇は あの旅人なんだからねぇ 786 00:59:30,700 --> 00:59:32,533 あたしが… 787 00:59:32,533 --> 00:59:35,567 あたしが 鉄砲で撃ち殺してやる!」。 788 00:59:36,667 --> 00:59:39,767 鉄砲っていうのが聞こえましたんで 789 00:59:39,767 --> 00:59:43,400 ズブリ ズブリ 790 00:59:43,400 --> 00:59:47,167 ズブリ ズブリ。 791 00:59:48,667 --> 00:59:52,733 降り積む雪ん中を夢中で逃げ出す。 792 00:59:52,733 --> 00:59:55,833 「あの向こうに 村があるかもしれない」。 793 00:59:55,833 --> 00:59:57,900 こけつまろびつ やってくる。 794 00:59:57,900 --> 00:59:59,700 ひょいっと見下ろす。 795 00:59:59,700 --> 01:00:01,667 きっ削いだような断崖。 796 01:00:01,667 --> 01:00:05,933 東海道は岩淵へ切って落とす 鰍沢の急流 797 01:00:05,933 --> 01:00:08,567 雪のため 水かさは増しておりまして。 798 01:00:10,200 --> 01:00:13,033 「えらいとこに出ちまった」。 799 01:00:15,800 --> 01:00:19,267 なんだか 変な寝息まで聞こえてきた。 800 01:00:19,967 --> 01:00:23,233 この辺は 熊も出るってぇたなぁ。 801 01:00:25,200 --> 01:00:30,833 振り返ると お熊が 火縄の火をちらちらさせながら 802 01:00:30,833 --> 01:00:38,667 「おおおお~い!」。 803 01:00:39,567 --> 01:00:43,000 「後ろは鉄砲 前は崖か。 804 01:00:43,000 --> 01:00:45,500 こんな所で撃ち殺されるぐらいなら 805 01:00:45,500 --> 01:00:47,367 身を投げた方が まだましだ。 806 01:00:47,367 --> 01:00:52,067 南無妙法蓮華経 妙法蓮華経…」。 807 01:00:52,700 --> 01:00:56,633 そおお~っと見上げる崖の上では 808 01:00:56,633 --> 01:00:59,967 お熊が鉄砲を腰だめに致しまして 809 01:00:59,967 --> 01:01:02,667 旅人の胸に十分に狙いをつける。 810 01:01:02,667 --> 01:01:04,567 「南無妙法蓮華経!」。 811 01:01:04,567 --> 01:01:07,500 お題目を唱えた途端に ターン! 812 01:01:07,500 --> 01:01:11,233 筒を離れた弾が 新助のまげっぷち かすって 813 01:01:11,233 --> 01:01:13,233 後ろの岩へ カチリ。 814 01:01:16,033 --> 01:01:19,000 「助かった! 815 01:01:19,000 --> 01:01:22,133 お材木のおかげだ」。 816 01:01:38,167 --> 01:01:41,267 与太さん。 与太さん! 817 01:01:44,567 --> 01:01:46,167 松田さん…。 818 01:01:47,800 --> 01:01:49,133 松田さん 819 01:01:49,133 --> 01:01:51,200 悪ぃけど すぐに帰りますよ。 820 01:01:51,200 --> 01:01:52,667 車 出しておくれ。 821 01:01:52,667 --> 01:01:54,100 はい。 822 01:01:55,633 --> 01:01:58,000 与太郎。 823 01:01:58,567 --> 01:02:02,100 お前さんは ウチに戻らなくてよろしい。 824 01:02:02,833 --> 01:02:04,900 破門だよ。 825 01:02:16,733 --> 01:02:19,600 師匠! 師匠! 826 01:02:20,733 --> 01:02:22,600 申し訳ありませんでした! 827 01:02:22,600 --> 01:02:24,700 よく眠れたろ。 828 01:02:24,700 --> 01:02:27,367 アタシの落語は退屈でさ。 829 01:02:27,367 --> 01:02:31,133 お前さん 助六に 弟子入りすりゃあいい。 830 01:02:31,133 --> 01:02:31,967 待ってくれ… 831 01:02:31,967 --> 01:02:35,267 -待って下さい! -ガキじゃねえんだ 聞き分けろ! 832 01:02:39,100 --> 01:02:42,733 オイラ 師匠に捨てられたら なんも なくなっちまう! 833 01:02:44,067 --> 01:02:45,633 そうかい。 834 01:02:47,200 --> 01:02:48,533 出しとくれ。 835 01:02:50,400 --> 01:02:54,367 師匠! 師匠! 836 01:03:03,333 --> 01:03:05,100 師匠! 837 01:03:21,933 --> 01:03:24,033 だから 言ったろ。 838 01:03:24,033 --> 01:03:26,533 ロクなやつじゃねえって。 839 01:03:27,333 --> 01:03:29,700 悪いのは 師匠じゃねえ。 840 01:03:33,233 --> 01:03:36,267 -ほら 立って。 -入れねえんだ。 841 01:03:37,833 --> 01:03:42,467 オイラ 師匠に破門されちまった。 842 01:03:44,367 --> 01:03:47,200 じゃあ なんで ここに? 843 01:03:47,200 --> 01:03:49,667 未練タラタラじゃねえか。 844 01:03:50,633 --> 01:03:54,200 そんなに好きなら 話つけてきなよ。 845 01:03:54,200 --> 01:03:56,100 男だろ。 846 01:04:11,500 --> 01:04:13,767 師匠 847 01:04:14,467 --> 01:04:17,167 口きいてくんねえのは ようく分かった。 848 01:04:18,833 --> 01:04:21,367 居ねえもんとして聞いて下さい。 849 01:04:23,967 --> 01:04:27,533 俺は 師匠に 心底 ほれてる。 850 01:04:27,533 --> 01:04:31,033 これは もう自分の根っこみてえな もんだから 変えようがねえ。 851 01:04:32,567 --> 01:04:38,067 でも 落語やらさせて もらってるうちに分かってきた。 852 01:04:40,533 --> 01:04:45,400 師匠の落語は 俺には絶対できねえんだって。 853 01:04:47,433 --> 01:04:51,867 死んだ助六師匠の落語の方が まだ近ぇ気もする。 854 01:04:52,467 --> 01:04:55,300 でも それが やりてえのか 855 01:04:55,300 --> 01:04:58,133 まだまだ 全然 分からねえんだ。 856 01:04:58,133 --> 01:05:00,533 分からねえから 857 01:05:01,600 --> 01:05:04,267 師匠のそばに 居させてもらいてえんです。 858 01:05:12,167 --> 01:05:16,167 師匠と落語のそばに 居させて下さい! 859 01:05:20,033 --> 01:05:23,033 俺には もう どこにも 行き場が ねえんです。 860 01:05:26,900 --> 01:05:30,567 ここで生きて 861 01:05:30,567 --> 01:05:33,867 ここに 居場所を作るしかねえんです! 862 01:05:47,967 --> 01:05:51,167 お願いします。 ここに居させて下さい! 863 01:05:53,033 --> 01:05:56,833 頼みます このとおりです! 864 01:05:59,933 --> 01:06:02,167 お願いします! 865 01:06:06,800 --> 01:06:10,733 居もしねえもんが べらべら よくしゃべりやがらぁ。 866 01:06:13,267 --> 01:06:17,833 お前さんが やりたい落語が何か 分からねえなら 867 01:06:17,833 --> 01:06:20,500 教えてやろうか? 868 01:06:25,400 --> 01:06:28,967 お前さん自身の落語だよ。 869 01:06:30,333 --> 01:06:33,667 破門しねえかわりに 870 01:06:33,667 --> 01:06:37,900 お前さんは アタシと 三つ約束しなけりゃあならないよ。 871 01:06:40,300 --> 01:06:42,367 三つ? 872 01:06:43,000 --> 01:06:47,633 二ツ目んなるまでは ウチで面倒見てやらぁ。 873 01:06:47,633 --> 01:06:49,433 それまでに 874 01:06:49,433 --> 01:06:54,367 アタシのと助六の落語を たたき込む。 全部 覚えろ。 875 01:06:55,367 --> 01:06:58,100 それが ひとつ。 876 01:07:01,100 --> 01:07:04,133 それと アタシはね 877 01:07:04,700 --> 01:07:08,933 助六と約束をして 果たせなかったことがある。 878 01:07:11,800 --> 01:07:15,900 「二人で落語の生き延びる道を 作ろう」ってねぇ…。 879 01:07:19,367 --> 01:07:23,167 どっちが 一人 欠けたって できねえことなんだ。 880 01:07:23,800 --> 01:07:26,600 だから この穴を埋めておくれ。 881 01:07:27,400 --> 01:07:29,600 これが ふたつ。 882 01:07:32,467 --> 01:07:35,600 落語 覚えんのは いいけど… 883 01:07:35,600 --> 01:07:38,267 そんな でけえ約束 884 01:07:38,267 --> 01:07:39,167 オイラ できんのか…。 885 01:07:39,167 --> 01:07:43,000 できねえ時ゃ もろとも心中だ。 886 01:07:49,100 --> 01:07:52,000 あとの一つは? 887 01:07:52,000 --> 01:07:54,400 絶対に… 888 01:07:56,267 --> 01:07:59,700 アタシより先に死なねえこと。 889 01:08:01,133 --> 01:08:05,533 いいね 約束だよ。 890 01:08:10,533 --> 01:08:14,867 小夏 お前さんも。 891 01:08:24,233 --> 01:08:30,367 ひとつ お前さん方に 話して聞かしてやろうか。 892 01:08:32,200 --> 01:08:38,000 あの人と アタシの約束の噺をさ。 893 01:08:45,767 --> 01:08:49,033 長ぇ夜になりそうだ。 894 01:08:51,000 --> 01:08:52,700 覚悟しな。 895 01:09:23,167 --> 01:09:27,767 © NHK / TELEPACK