1 00:00:02,233 --> 00:00:04,400 実の親に捨てられ 2 00:00:04,400 --> 00:00:07,300 落語家に入門させられた私は 3 00:00:07,300 --> 00:00:11,667 同じ日に入門した 同い年の少年と出会いました。 4 00:00:11,667 --> 00:00:16,067 アタシたちは共に稽古し 苦楽を共にして 5 00:00:16,067 --> 00:00:18,100 前座修業に明け暮れました。 6 00:00:18,100 --> 00:00:20,133 これ以上 差がついちまうのは嫌だ。 7 00:00:20,133 --> 00:00:22,767 食うものも着るものも なんにもねえ時だからこそ 8 00:00:22,767 --> 00:00:25,600 舌三寸の落語の腕の見せどころ! 9 00:00:25,600 --> 00:00:27,533 俺たちの時代が もう来てんだよ! 10 00:00:37,833 --> 00:00:39,300 お待たせしました。 11 00:00:46,700 --> 00:00:48,167 ねえ ボーイさん。 12 00:00:48,167 --> 00:00:49,533 ちょっと来て。 13 00:00:51,533 --> 00:00:52,667 ご用ですか? 14 00:00:52,667 --> 00:00:55,633 ちょっとぐらい おしゃべりしてもいいじゃない。 15 00:00:55,633 --> 00:00:57,500 追加のご注文ですか? 16 00:00:57,500 --> 00:01:01,967 分かってんでしょ? 私たちが アンタ目当てに来てることぐらい。 17 00:01:01,967 --> 00:01:03,267 決まってるねぇ。 18 00:01:03,267 --> 00:01:05,100 巴里の千両役者みてえだ。 19 00:01:05,100 --> 00:01:07,767 初太 ここには来るな ってぇたのに…。 20 00:01:07,767 --> 00:01:09,433 -いいじゃねえかよ。 -ダメだよ。 21 00:01:11,833 --> 00:01:14,033 そんな噺家丸出しで来られたら 22 00:01:14,033 --> 00:01:15,567 こっちの素性までバレちまうだろ。 23 00:01:15,567 --> 00:01:16,533 別にいいじゃねえかよ。 24 00:01:16,533 --> 00:01:17,967 ダメだよ。 25 00:01:17,967 --> 00:01:19,967 銀座の こんな うわっついた店で 働いてるのが 26 00:01:19,967 --> 00:01:23,200 -師匠に知られたら…。 -とにかく腹 減ったんだよ なっ。 27 00:01:29,433 --> 00:01:30,733 ほら。 28 00:01:32,333 --> 00:01:33,633 悪ぃね! 29 00:01:57,667 --> 00:02:00,433 「お前さん なんだって いきなり人の頭を殴るんだ」。 30 00:02:00,433 --> 00:02:01,733 「は~ どうも すみませんね。 31 00:02:01,733 --> 00:02:04,367 今ね 夢中で ドンドンドンドン たたいてるってぇとね 32 00:02:04,367 --> 00:02:07,267 いきなり 戸がスッと開いて 先生の頭が にゅっと出てきたんで 33 00:02:07,267 --> 00:02:10,433 思わず ポカッと やっちゃった んですよ。 勘弁してくんねえか。 34 00:02:10,433 --> 00:02:11,700 それより 先生 35 00:02:11,700 --> 00:02:13,967 黙って あっちに 一円おくれ」。 36 00:02:14,767 --> 00:02:16,567 黙って あっちに 一円おくれ…。 37 00:02:16,567 --> 00:02:18,233 ただいま。 38 00:02:18,233 --> 00:02:20,333 洋食屋の残飯は? 39 00:02:21,733 --> 00:02:23,467 今日は これしか出なかったよ。 40 00:02:24,667 --> 00:02:26,000 なんだ…。 41 00:02:27,233 --> 00:02:29,267 すぐ出ていくって言って 42 00:02:29,267 --> 00:02:31,800 一体 何年 居候 決め込もうってんだい。 43 00:02:31,800 --> 00:02:33,867 いいかげん家賃を入れてほしいね。 44 00:02:33,867 --> 00:02:35,600 男所帯は気兼ねもねえ。 45 00:02:35,600 --> 00:02:38,867 腹 減っても寒くっても ベラベラ しゃべってりゃ 気が紛れらぁ。 46 00:02:39,433 --> 00:02:41,500 日銭が無きゃ 生活できねえ。 47 00:02:41,500 --> 00:02:43,200 働きゃあ 稽古できねえ。 48 00:02:43,200 --> 00:02:45,333 稽古できなきゃ 寄席には呼ばれねえ。 49 00:02:45,333 --> 00:02:47,600 堂々巡りの火の車だよ。 50 00:02:47,600 --> 00:02:49,933 ちっとも落語を覚えられない。 51 00:02:49,933 --> 00:02:51,367 気の毒になぁ。 52 00:02:51,367 --> 00:02:53,633 俺なんか 明日 かけもち4軒。 53 00:02:53,633 --> 00:02:56,767 近々 ラジオに 出てみねえかって話もあんだ。 54 00:02:56,767 --> 00:02:58,900 最近 評判 良くってよぉ。 55 00:02:58,900 --> 00:03:02,733 この助六って名前 もらってから ずっと上りっ調子だ。 56 00:03:02,733 --> 00:03:05,767 おめさんも 一丁 どっかから 名前もらってみちゃ どうだい? 57 00:03:05,767 --> 00:03:10,233 アタシは 一生 菊比古でいいよ。 58 00:03:10,833 --> 00:03:12,633 おっと いけねえや… こんな時間だよ。 59 00:03:12,633 --> 00:03:14,500 夜席の紋付 また貸してくれ。 60 00:03:14,500 --> 00:03:18,198 お前さん 師匠から頂いた紋付を 直しに出してるって 61 00:03:18,228 --> 00:03:19,567 ありゃ うそだよね。 62 00:03:19,567 --> 00:03:22,067 おうよ 質に入れて飲んじまった。 63 00:03:22,067 --> 00:03:23,600 何してんだい 64 00:03:23,600 --> 00:03:25,567 バレたら破門だ。 65 00:03:25,567 --> 00:03:28,633 いくらでも見立ててやるから ちったぁ金ためりゃあいいのに。 66 00:03:28,633 --> 00:03:31,800 二ツ目に上がりたてで遊ばねえで いつ遊ぶってんだい。 67 00:03:31,800 --> 00:03:34,867 まあ 芸の肥やしってやつだなぁ。 68 00:03:37,933 --> 00:03:39,533 真面目だなぁ。 69 00:03:41,433 --> 00:03:42,728 つうか 今の借家に入ってから 70 00:03:42,759 --> 00:03:45,500 おめさんのケチっぷりは 尋常じゃねえよ。 71 00:03:45,500 --> 00:03:49,300 当たり前だよ。 生きるか死ぬかなんだ。 72 00:03:49,300 --> 00:03:53,033 今に 俺がよ ドカーンと売れるからよ。 73 00:04:00,267 --> 00:04:02,467 寒いと思ったら…。 74 00:04:03,033 --> 00:04:05,033 すきっ腹には こたえらぁねぇ。 75 00:04:06,067 --> 00:04:08,467 おい ちょっと 羽織 半分 貸してくれ。 76 00:04:08,467 --> 00:04:10,067 出番までには返すからよ。 77 00:04:12,233 --> 00:04:13,933 寒ぃ 寒ぃ。 78 00:04:15,646 --> 00:04:18,039 雪ってぇのは どうにも しょうがねえなぁ。 79 00:04:25,610 --> 00:04:27,683 お~さむこさむ…。 80 00:04:30,700 --> 00:04:33,367 降ってくるやつに 風が ぴゅ~! 81 00:04:33,367 --> 00:04:35,700 顔へ ベタベタっと張り付く。 82 00:04:42,233 --> 00:04:43,967 腹 減ったなぁ。 83 00:04:43,967 --> 00:04:47,167 ああ 腹 減った…。 84 00:04:48,800 --> 00:04:51,933 貧乏暮らしは心底こたえたけれど 85 00:04:51,933 --> 00:04:54,967 落語をやめたいとは ちぃとも思いませんでした。 86 00:04:59,167 --> 00:05:01,067 早いとこ乱回し。 87 00:05:07,967 --> 00:05:09,667 菊。 88 00:05:09,667 --> 00:05:12,367 師匠 お早いですね。 89 00:05:12,367 --> 00:05:14,600 顔色が悪ぃんじゃねえのか? 90 00:05:14,600 --> 00:05:16,233 ちゃんと食ってるかい? 91 00:05:16,900 --> 00:05:18,467 そばでも取るか? 92 00:05:18,467 --> 00:05:20,533 師匠! ごちそうさまです! 93 00:05:20,533 --> 00:05:22,633 みんな 師匠が そば おごってくれるってよ! 94 00:05:22,633 --> 00:05:25,333 師匠 ありがとうございます! 95 00:05:25,333 --> 00:05:28,400 よせよ~! お前 一体 いくつ頼みゃいいんだよ! 96 00:05:28,400 --> 00:05:29,667 頂きます! 97 00:05:30,267 --> 00:05:35,300 このころの落語界は 今から思えば天国のようなころ。 98 00:05:35,300 --> 00:05:40,500 明治生まれの 神様みたいな お師匠方が まだまだ ご健勝で 99 00:05:40,500 --> 00:05:44,127 そんな人たちと こうして 軽口をたたき合うだけでも 100 00:05:44,157 --> 00:05:46,467 それは幸せな楽屋でした。 101 00:05:48,300 --> 00:05:51,667 こりゃ まずい菓子だね。 102 00:05:52,733 --> 00:05:55,067 落語人気も絶大で 103 00:05:55,067 --> 00:05:57,833 ポツリポツリと 前座も増えてきました。 104 00:05:58,333 --> 00:06:00,867 厳しい世界ではありましたが 105 00:06:00,867 --> 00:06:04,133 この場所に居て 落語家であり続けるためでしたら 106 00:06:04,133 --> 00:06:06,600 なんだって堪えられたのです。 107 00:06:08,700 --> 00:06:12,233 満州慰問で ますます 腕を上げた初太郎は 108 00:06:12,233 --> 00:06:15,867 若手の中では 一番の 注目株になっておりました。 109 00:06:16,300 --> 00:06:18,200 持ちネタも多く 110 00:06:18,200 --> 00:06:20,467 どこの寄席でも引っ張りだこ。 111 00:06:23,367 --> 00:06:26,233 その高座は 独特の熱を帯び 112 00:06:26,233 --> 00:06:30,167 来るお客が みるみるトリコになる 様子が小気味いいくらいでした。 113 00:06:35,200 --> 00:06:36,867 え~ どうも どうも。 114 00:06:36,867 --> 00:06:38,767 え~ こんな雪ん中ね 115 00:06:38,767 --> 00:06:41,467 こんな しみったれたとこに よく来ましたね。 116 00:06:42,500 --> 00:06:46,000 え~ 人というものは この欲というものがありまして。 117 00:06:46,000 --> 00:06:48,667 まあ あまり欲深いと こら いけませんねぇ。 118 00:06:48,667 --> 00:06:51,700 「欲深き人の心と ふる雪は 119 00:06:51,700 --> 00:06:55,667 積もるにつけて道を忘るる」 なんてぇことを言ってありまして。 120 00:06:56,767 --> 00:07:00,133 「ひゃ~く両 欲し~ぃ!」。 121 00:07:01,833 --> 00:07:04,467 「全く 静かにしろぃ」。 122 00:07:09,800 --> 00:07:10,967 「ここを開けろ」。 123 00:07:11,500 --> 00:07:12,533 「どうも どうも 124 00:07:12,533 --> 00:07:13,967 こりゃ 寒うございますな。 125 00:07:13,967 --> 00:07:16,233 どうぞ どうぞ お上がりくださいましね」。 126 00:07:17,267 --> 00:07:18,467 「許せよ」。 127 00:07:18,467 --> 00:07:23,200 入って参りましたのが 年の頃 二十五 六んなります浪人者。 128 00:07:23,200 --> 00:07:24,733 痩せぎすでございますも…。 129 00:07:24,733 --> 00:07:26,533 こっから地の語り。 130 00:07:26,533 --> 00:07:29,633 お侍と娘の姿形を丹念に語り 131 00:07:29,633 --> 00:07:32,100 ふたりの姿をくっきり描き出す。 132 00:07:32,100 --> 00:07:34,867 年の頃 十七 八んなります お嬢さん。 133 00:07:34,867 --> 00:07:38,700 どっか大家のお嬢さんといった 感じで色が抜けるように白い。 134 00:07:38,700 --> 00:07:41,567 鼻筋の通った どことなく品のあります 135 00:07:41,567 --> 00:07:43,400 まことに良いご器量で。 136 00:07:43,400 --> 00:07:46,267 「お嬢さん 危ねえから 足元 気を付けてくださいね」。 137 00:07:46,267 --> 00:07:48,933 娘の姿形をじっくり描いたから 138 00:07:48,933 --> 00:07:54,033 なんとなく しとやかで声の小さい お嬢さんなんだって分かる。 139 00:07:54,033 --> 00:07:57,100 雪の静けさが伝わって余計いい…。 140 00:07:58,133 --> 00:07:59,500 「大和屋さん!」。 141 00:08:01,867 --> 00:08:03,900 船頭 熊のグチ。 142 00:08:05,867 --> 00:08:08,800 「降ってきやがったよ おい…。 143 00:08:08,800 --> 00:08:12,633 でもよ 雪が積もるってえと 144 00:08:12,633 --> 00:08:14,533 花が咲いたように見えらぁ。 145 00:08:14,533 --> 00:08:16,333 明るくなってらあ 146 00:08:16,333 --> 00:08:18,300 -こりゃ どうもいいもんだねぇ」。 -うまいな…。 147 00:08:18,900 --> 00:08:21,567 「最前 身が妹と申したが 148 00:08:21,567 --> 00:08:23,833 あれは真っ赤な偽り。 149 00:08:23,833 --> 00:08:26,667 あの女を殺害せば 150 00:08:26,667 --> 00:08:29,067 たいそうな金もうけになる。 151 00:08:30,733 --> 00:08:32,400 お前も手伝え」。 152 00:08:32,400 --> 00:08:35,167 「ちょちょ… ちょっ 待ってくださいよ! 153 00:08:35,167 --> 00:08:36,800 なに言ってんですか!」。 154 00:08:37,833 --> 00:08:41,267 ここまでで お客は 熊に 十分 情がわいている。 155 00:08:41,267 --> 00:08:44,233 ぐうっと引き込まれて 156 00:08:44,233 --> 00:08:46,200 本気で心配してる顔だ。 157 00:08:46,200 --> 00:08:48,333 「しからば致し方ない。 158 00:08:48,333 --> 00:08:51,700 口外されては露見のおそれ。 159 00:08:51,700 --> 00:08:53,567 そのほうから先に」。 160 00:08:53,567 --> 00:08:55,567 「ちょちょちょ…!」。 161 00:08:55,567 --> 00:08:57,133 -てめえ! -「待ってくれよ!」。 162 00:08:57,133 --> 00:08:59,533 肘で突きやがって 163 00:08:59,533 --> 00:09:01,467 謝りは ねえのかよ! この野郎! 164 00:09:02,400 --> 00:09:05,533 おめえこそ バカみたいに 笑いやがって。 165 00:09:05,533 --> 00:09:07,833 川の向こうの おめえらだよ! おい! 166 00:09:07,833 --> 00:09:10,333 こっち見ろって おい! ケンカしてる場合じゃねえんだよ! 167 00:09:10,333 --> 00:09:13,233 俺は 今 殺されるかどうかの 瀬戸際なんだよ! 168 00:09:13,233 --> 00:09:15,167 ちょ…ちょい! 169 00:09:20,367 --> 00:09:23,067 なんてぇ度胸だ… 170 00:09:23,067 --> 00:09:24,833 噺が ぶち壊しになるのを 171 00:09:24,833 --> 00:09:29,000 とっさに笑いに変えて ケンカまで おさめちまった…。 172 00:09:29,000 --> 00:09:31,500 二ツ目の力じゃねえや…。 173 00:09:31,500 --> 00:09:34,167 「ガタガタ震えながら 値を決めておる。 174 00:09:34,167 --> 00:09:36,033 なかなか見上げた心掛けだな」。 175 00:09:41,633 --> 00:09:43,300 -おはようございます。 -ご苦労さまです。 176 00:09:44,033 --> 00:09:47,200 助六のやつ ずいぶん沸かしてるよ。 177 00:09:52,567 --> 00:09:53,967 「金!? ああ… 178 00:09:53,967 --> 00:09:56,200 頂きます 頂きます! 179 00:09:56,200 --> 00:09:57,533 いくら入ってんだろうなぁ これ。 180 00:09:59,200 --> 00:10:01,567 五十両の包みが二つ入ってらぁ。 181 00:10:01,567 --> 00:10:05,400 ありがてえ! 百両!」。 182 00:10:05,400 --> 00:10:08,700 …ってんで あまりに痛いんで目が覚めた。 183 00:10:08,700 --> 00:10:11,652 元の舟宿で てめえの急所を しっかり握ってたって 184 00:10:11,682 --> 00:10:13,100 バカなやつがあるもんで…。 185 00:10:13,567 --> 00:10:15,300 強欲は無欲に似たり 186 00:10:15,300 --> 00:10:17,133 夢金という一席で。 187 00:10:19,900 --> 00:10:21,600 すごい。 188 00:10:21,600 --> 00:10:25,433 迷ったら すぐダメになる噺だ。 189 00:10:25,433 --> 00:10:28,500 初太郎に迷いは全くなかった…。 190 00:10:36,733 --> 00:10:38,367 すごい拍手だね。 191 00:10:38,367 --> 00:10:40,467 どうでぃ 良かったろ? 192 00:10:40,467 --> 00:10:43,067 ああ 良かったよ。 193 00:10:43,067 --> 00:10:45,467 おめさんがケチだから おかげで実感こもったよ。 194 00:10:50,000 --> 00:10:52,233 お先に勉強させて頂きました。 195 00:10:52,233 --> 00:10:54,400 稽古にゃ 顔 出さねぇ 196 00:10:54,400 --> 00:10:57,500 アタシが教えた型じゃあねえ 噺を演る。 197 00:10:57,500 --> 00:11:00,600 初 勝手するのもほどほどにしろ。 198 00:11:00,600 --> 00:11:02,600 もう 初は やめてくださいよ。 199 00:11:02,600 --> 00:11:04,267 このあと 急いで上野なんで 200 00:11:04,267 --> 00:11:07,067 -失礼します。 -待ちな。 201 00:11:07,067 --> 00:11:09,300 アタシがやった紋付は どうした? 202 00:11:10,367 --> 00:11:11,533 どうも。 203 00:11:14,533 --> 00:11:16,767 「こんちはぁ 和尚さん いますか。 204 00:11:16,767 --> 00:11:18,033 和尚さん こんちはぁ」。 205 00:11:18,033 --> 00:11:21,000 「はいはい 八っつぁんじゃないか 珍しいな。 206 00:11:21,000 --> 00:11:21,967 なんか用かい?」。 207 00:11:21,967 --> 00:11:26,800 初太郎に比べて アタシは 全く人気が出ませんでした。 208 00:11:26,800 --> 00:11:29,200 芸の力では負けてないし 209 00:11:29,200 --> 00:11:32,767 師匠の型は アタシの方が ちゃんと こなせている。 210 00:11:32,767 --> 00:11:36,733 ですが どうにも お客に喜んでもらえない。 211 00:11:36,733 --> 00:11:40,333 初太郎との差は 誰が見ても歴然でした。 212 00:11:40,333 --> 00:11:42,233 「男の子。 213 00:11:42,233 --> 00:11:44,831 生まれた子供に こういうふうに育ってもらいたい。 214 00:11:44,861 --> 00:11:46,867 こういうふうに なってもらいたい…」。 215 00:11:58,067 --> 00:12:03,733 「…なんて 何か考えがあるんじゃないかい」。 216 00:12:03,733 --> 00:12:07,700 「そうっすねぇ 長生き してくれりゃあ 何も言う…」。 217 00:12:09,333 --> 00:12:12,833 確か 師匠の知り合いの…。 218 00:12:18,800 --> 00:12:20,233 おい 菊! 219 00:12:22,633 --> 00:12:25,767 助六ってのは化けもんだなぁ。 220 00:12:26,367 --> 00:12:29,233 あの調子なら すぐに真打だよ。 221 00:12:29,233 --> 00:12:32,400 菊も負けねえように 精進しねえとなぁ。 222 00:12:32,400 --> 00:12:33,233 はい。 223 00:12:33,233 --> 00:12:37,367 噺家には 年に関係なく 香盤という序列があります。 224 00:12:37,367 --> 00:12:39,800 先に真打になられたら 225 00:12:39,800 --> 00:12:42,298 アタシは初太郎のことを表向きは 226 00:12:42,328 --> 00:12:45,533 「助六師匠」と 呼ばなくてはなりません。 227 00:12:45,533 --> 00:12:49,567 初太郎と比べられる度に 落ち込み 悩み 228 00:12:49,567 --> 00:12:52,100 気持ちは焦るばかりでした。 229 00:12:54,733 --> 00:12:58,667 真ん中に木戸がございまして 表へ出ますってえと 230 00:12:58,667 --> 00:13:02,433 海から ぴゅ~っと冷たい風。 231 00:13:03,433 --> 00:13:06,767 す~っと桟橋が延びております。 232 00:13:11,600 --> 00:13:13,033 どうした 菊? 233 00:13:13,033 --> 00:13:15,200 さっきから ずっと うわの空で。 234 00:13:16,933 --> 00:13:19,500 稽古にならねえ 今日はしまいだ。 235 00:13:20,900 --> 00:13:24,667 それに こないだから ちっとも良くなってねぇ。 236 00:13:27,000 --> 00:13:29,667 すみません 稽古不足です。 237 00:13:29,667 --> 00:13:30,967 いや 238 00:13:30,967 --> 00:13:35,400 お前の場合 稽古のしすぎ 真面目すぎるんだ。 239 00:13:36,833 --> 00:13:39,667 お前の落語には 隙がねえ。 240 00:13:39,667 --> 00:13:42,767 -隙? -そうよ。 241 00:13:42,767 --> 00:13:46,300 色気ってのは隙から生まれるんだ。 242 00:13:46,300 --> 00:13:47,967 いいかい 243 00:13:47,967 --> 00:13:51,367 完璧なものに色気は差さねえ。 244 00:13:51,367 --> 00:13:56,000 隙があるくれえの方が 愛嬌とか遊びがあっていいんだ。 245 00:13:56,867 --> 00:13:58,633 精進します。 246 00:14:00,100 --> 00:14:04,133 精進してたら遊べねえだろ。 247 00:14:04,133 --> 00:14:08,100 たまには バカになって 遊べって言ってんだよ。 248 00:14:08,100 --> 00:14:12,400 その方が 自分の落語を 見つけるためには手っとり早ぇ。 249 00:14:12,400 --> 00:14:14,600 自分の落語? 250 00:14:14,600 --> 00:14:18,267 お前は まだ 「自分の落語」 ってのを見つけてねえんだ。 251 00:14:18,833 --> 00:14:22,267 よし 今度 連れてってやる。 252 00:14:22,267 --> 00:14:23,867 どこにです? 253 00:14:40,000 --> 00:14:42,533 誰が あいつまで呼べって言った? 254 00:14:42,533 --> 00:14:44,667 すいません 口が滑って…。 255 00:14:55,033 --> 00:14:56,533 いらっしゃいませ。 256 00:15:00,600 --> 00:15:03,333 遅くなって ごめんなさい。 257 00:15:03,333 --> 00:15:05,600 うれしいわぁ 呼んでくださって。 258 00:15:05,600 --> 00:15:08,167 菊 みよ吉だ。 259 00:15:08,167 --> 00:15:10,000 満州で知り合ってな 260 00:15:10,000 --> 00:15:12,667 今は アタシが世話して 芸者やってんだ。 261 00:15:12,667 --> 00:15:14,433 はじめまして。 262 00:15:15,367 --> 00:15:18,167 みよ吉さん 無事に引き揚げて こられて よかったね。 263 00:15:18,167 --> 00:15:19,633 おかげさまで。 264 00:15:19,633 --> 00:15:22,667 初! お前は みよ吉とは しゃべんな! 265 00:15:22,667 --> 00:15:23,633 なんで? 266 00:15:23,633 --> 00:15:27,133 アタシは菊にいい女としゃべらせて やりたくて ここへ連れて来たんだ。 267 00:15:27,133 --> 00:15:28,733 なんだよ… ひいきだ ひいき! 268 00:15:28,733 --> 00:15:29,833 うるせえ 唐変木! 269 00:15:29,833 --> 00:15:30,900 あっち行ってろ! 270 00:15:30,900 --> 00:15:33,067 そんな邪けんにしねえで くださいよ。 271 00:15:33,067 --> 00:15:35,900 あっち行けってのが聞こえねえか この うすばか野郎が! 272 00:15:38,467 --> 00:15:40,133 おひとつ どうぞ。 273 00:15:49,933 --> 00:15:52,633 おもしろいのねぇ 落語家さんて。 274 00:15:53,500 --> 00:15:56,033 商売ですから。 275 00:16:19,033 --> 00:16:22,633 大丈夫? もどしちゃった方が 楽になるんじゃない? 276 00:16:23,467 --> 00:16:25,367 アタシは 酒は あんまり。 277 00:16:27,567 --> 00:16:31,167 踊りをやってたんでしょ? 今度 教えてくれない? 278 00:16:31,167 --> 00:16:33,100 師匠に 遊んでやれって? 279 00:16:33,100 --> 00:16:35,433 二人で話してみたいだけ。 280 00:16:35,433 --> 00:16:37,267 先生には 内緒で。 281 00:16:38,033 --> 00:16:39,733 内緒は まずいです。 282 00:16:39,733 --> 00:16:41,333 真面目! 283 00:16:41,967 --> 00:16:44,100 真面目の何が いけないんです? 284 00:16:44,100 --> 00:16:47,067 こないだ 寄席で あなたの落語 聴いたの。 285 00:16:50,333 --> 00:16:52,100 知ってますよ…。 286 00:16:53,700 --> 00:16:56,900 すごく好き。 アンタの落語。 287 00:16:57,867 --> 00:17:00,933 -師匠に見られたら…。 -いいじゃない 怒られたって。 288 00:17:00,933 --> 00:17:03,000 いっそ 二人で殺されちゃう? 289 00:17:05,900 --> 00:17:07,567 離してください。 290 00:17:09,467 --> 00:17:11,700 死ぬのなんて怖くない。 291 00:17:14,333 --> 00:17:17,167 一人で死ぬのは寂しいけど。 292 00:17:22,033 --> 00:17:23,733 大丈夫? 293 00:17:28,033 --> 00:17:29,567 あらあら…。 294 00:17:37,100 --> 00:17:41,267 雨竹亭の5月の余一会が あいてんだってさ。 295 00:17:43,933 --> 00:17:46,233 芝居やってみねえか? 296 00:17:46,233 --> 00:17:48,500 芝居? 297 00:17:48,500 --> 00:17:51,500 二ツ目 かき集めて 噺家の芝居 298 00:17:51,500 --> 00:17:52,933 鹿芝居。 299 00:17:55,233 --> 00:17:56,833 二ツ目だけじゃ…。 300 00:17:56,833 --> 00:17:59,733 いや 売れっ子の師匠 呼んじまったら 主役 張れねえだろ。 301 00:17:59,733 --> 00:18:03,600 今は何をやってでも まずは お客に顔 覚えてもらわねえと。 302 00:18:03,600 --> 00:18:06,367 人気が はじけりゃあ さっさと真打になれんだよ。 303 00:18:07,900 --> 00:18:10,200 いくらなんでも まだ早ぇよ。 304 00:18:10,800 --> 00:18:14,000 俺ぁ 八代目八雲を継ぐ! 305 00:18:14,000 --> 00:18:17,367 いつまでも 二ツ目なんかで グズグズしてらんねえや。 306 00:18:17,367 --> 00:18:19,467 いいから おめえも半口 乗れ! 307 00:18:21,167 --> 00:18:23,733 この話は 師匠には まだ内緒だ。 308 00:18:23,733 --> 00:18:25,233 分かったな。 309 00:18:29,700 --> 00:18:31,400 じゃあ 310 00:18:31,400 --> 00:18:33,500 一つ教えてくれ。 311 00:18:34,600 --> 00:18:37,000 こないだの女の人… 312 00:18:37,000 --> 00:18:39,633 みよ吉とかいう。 313 00:18:39,633 --> 00:18:41,300 みよ吉が どうした? 314 00:18:41,300 --> 00:18:44,400 師匠とは どういう間柄なんだ? 315 00:18:44,400 --> 00:18:47,067 どういうって 満州で知り合ったんだよ。 316 00:18:47,067 --> 00:18:48,700 それで? 317 00:18:48,700 --> 00:18:51,067 いや それ以上は よく分かんねえなぁ。 318 00:18:51,067 --> 00:18:54,400 俺と師匠が はぐれちまってる 間のことだからな。 319 00:18:56,400 --> 00:18:59,000 満州は どんなだったんだい? 320 00:19:03,300 --> 00:19:05,300 地獄だった…。 321 00:19:10,033 --> 00:19:13,067 食うものも着るものもねえ。 322 00:19:13,067 --> 00:19:15,700 落語なんて できるわけもねえ。 323 00:19:16,667 --> 00:19:20,933 夜は もちろん 昼でも ソ連兵に 殺されるやつが ゴロゴロいて…。 324 00:19:24,067 --> 00:19:25,633 初! 325 00:19:27,467 --> 00:19:29,300 初じゃねえか! 326 00:19:30,100 --> 00:19:31,800 生きてたのか…! 327 00:19:31,800 --> 00:19:34,733 -師匠! 師匠! -初! 328 00:19:35,700 --> 00:19:38,633 物乞いをして生き延びてた俺が 329 00:19:38,633 --> 00:19:41,167 大連で師匠と再会した時 330 00:19:41,167 --> 00:19:43,533 横に あの女が居た。 331 00:19:45,333 --> 00:19:48,200 あそこに居た女は たいがい…。 332 00:19:48,200 --> 00:19:51,000 みよ吉も きっと 地獄を見たんだろうぜ。 333 00:19:55,300 --> 00:19:58,167 二人で会おうって言われたんだ。 334 00:19:59,067 --> 00:20:01,033 みよ吉に? 335 00:20:02,400 --> 00:20:07,500 師匠には内緒で二人きりでって。 336 00:20:07,500 --> 00:20:11,100 それで? 会うことにしたのか? 337 00:20:11,100 --> 00:20:14,267 -どう思う? -どうって おめえの 好きにすりゃいいじゃねえか。 338 00:20:14,267 --> 00:20:17,100 -だけど…。 -なんも気にするこたねえって。 339 00:20:17,100 --> 00:20:19,700 仮に満州で 師匠と みよ吉の間に 何かあったとしたって 340 00:20:19,700 --> 00:20:21,467 あん時は あん時だ。 341 00:20:22,700 --> 00:20:25,667 この世じゃなかったんだ あの時の満州は。 342 00:20:27,000 --> 00:20:29,100 死ぬのなんて怖くない。 343 00:20:29,100 --> 00:20:31,533 一人で死ぬのは寂しいけど。 344 00:20:42,900 --> 00:20:44,867 四隅を気にして。 345 00:20:47,600 --> 00:20:49,633 扇子の先を下げて。 346 00:20:56,633 --> 00:20:58,033 痛っ…。 347 00:20:58,033 --> 00:21:00,133 もうやだ 菊さん厳しいんだもの。 348 00:21:00,133 --> 00:21:02,433 芸事は厳しくしないと 上達しません。 349 00:21:02,433 --> 00:21:03,400 はい はい。 350 00:21:03,400 --> 00:21:04,867 「はい」は 一度で結構。 351 00:21:04,867 --> 00:21:06,500 は~い。 352 00:21:06,500 --> 00:21:08,400 もう一度 初めから。 353 00:21:12,333 --> 00:21:15,433 ねえ 三味線 弾いてよ 私 うたうから。 354 00:21:16,600 --> 00:21:18,267 はい。 355 00:21:24,267 --> 00:21:34,900 「梅が香を」 356 00:21:38,067 --> 00:21:43,000 「幸い」 357 00:21:43,600 --> 00:21:47,167 驚いた。 うまいね。 358 00:21:47,767 --> 00:21:50,467 昔 小唄は習ってたんだ。 359 00:21:50,467 --> 00:21:52,867 いつか寄席にも出てみたいな。 360 00:21:53,333 --> 00:21:55,433 目標があるのは いいこと。 361 00:21:55,433 --> 00:21:58,567 頑張れば 夢はきっとかないます。 362 00:22:05,167 --> 00:22:06,767 はい どうぞ。 363 00:22:11,700 --> 00:22:14,500 あなたと話してると あっという間。 364 00:22:15,000 --> 00:22:17,500 楽しくて 時間を忘れちゃう。 365 00:22:22,833 --> 00:22:25,800 他の男と 全然 違う。 366 00:22:25,800 --> 00:22:28,233 やらしい目で 私を見ないし。 367 00:22:30,633 --> 00:22:34,333 やだ… こういう時は ちゃんと受け止めるの。 368 00:22:35,367 --> 00:22:37,367 ごめん びっくりして。 369 00:22:39,733 --> 00:22:42,400 アンタ ほんとに おもしろいね。 370 00:22:47,767 --> 00:22:50,133 いいにおい…。 371 00:22:54,500 --> 00:22:56,333 もう帰らなきゃ。 372 00:22:57,833 --> 00:22:59,933 なんで? 373 00:22:59,933 --> 00:23:02,200 明日も稽古で早いんだ。 374 00:23:04,900 --> 00:23:08,133 男は先に帰るなんて言っちゃダメ。 375 00:23:08,133 --> 00:23:12,200 こういう時は「送ってって あげようか」って言うもんよ。 376 00:23:13,967 --> 00:23:16,067 遠回りだろ…。 377 00:23:16,067 --> 00:23:19,300 -もう… つれないわね。 -イテテテテテテ…。 378 00:23:21,233 --> 00:23:23,233 待って。 379 00:23:29,833 --> 00:23:32,400 また… 会ってね。 380 00:23:34,233 --> 00:23:36,333 きっとよ。 381 00:23:40,267 --> 00:23:43,500 水が低い方に流れるように 382 00:23:43,500 --> 00:23:47,633 アタシたちは 男と女の仲になっていきました。 383 00:23:52,767 --> 00:23:57,367 男とみられた上からぁ 窮屈な目をするだけ無駄だ。 384 00:23:57,833 --> 00:24:00,800 もし お侍さん お察しのとおり 385 00:24:00,800 --> 00:24:02,933 わっちゃあ 男さ。 386 00:24:02,933 --> 00:24:05,500 どなたも まっぴら。 387 00:24:05,500 --> 00:24:07,033 今 けえったよ。 388 00:24:07,033 --> 00:24:08,400 こんばんは! 389 00:24:08,400 --> 00:24:10,800 連れ込み宿にするつもりなら 390 00:24:10,800 --> 00:24:12,567 おひとり 五百円 頂きます。 391 00:24:12,567 --> 00:24:14,933 それが嫌なら 出てっておくれ。 392 00:24:14,933 --> 00:24:16,867 あたしゃ 芝居の稽古がしたいんだ。 393 00:24:16,867 --> 00:24:19,167 何よ 話が違うじゃない! 394 00:24:19,167 --> 00:24:20,900 金なんか無いよ! 395 00:24:20,900 --> 00:24:22,067 坊! 396 00:24:22,067 --> 00:24:23,833 さあ 行った 行った! 397 00:24:27,967 --> 00:24:30,933 芸の肥やしだって 毎日 食ってりゃ もたれちまう。 398 00:24:30,933 --> 00:24:34,400 -いいかげんにしときな。 -で~じょうぶだって。 399 00:24:34,400 --> 00:24:36,100 ひいきの お客でよ 400 00:24:36,100 --> 00:24:39,033 羽振りのいい お大尽がいてな。 401 00:24:39,033 --> 00:24:41,200 今日は 大勢 連れて来てくれて 402 00:24:41,200 --> 00:24:43,767 鹿芝居のテケツも だいぶ はけた。 403 00:24:43,767 --> 00:24:45,600 二ツ目だけの会なのに? 404 00:24:45,600 --> 00:24:47,833 いや 俺の人気は大したもんよ。 405 00:24:47,833 --> 00:24:51,533 坊の方は どうなんだい? テケツは さばけてんのか? 406 00:24:51,533 --> 00:24:53,167 ぼちぼち…。 407 00:24:53,167 --> 00:24:55,800 心配すんな。 408 00:24:55,831 --> 00:24:59,131 俺が おめえの分まで さばいてやるからよ。 409 00:25:08,800 --> 00:25:11,300 神様は不公平だ。 410 00:25:11,933 --> 00:25:14,067 遊んでんのに 腕ぇ上げて 411 00:25:14,067 --> 00:25:17,900 仕事もらえて お客にもウケて 412 00:25:17,900 --> 00:25:20,200 初太郎ばっかり。 413 00:25:20,200 --> 00:25:22,433 今日は だいぶ気が立ってんなぁ。 414 00:25:22,433 --> 00:25:24,667 まあ ふだん 世話になってるからなぁ。 415 00:25:24,667 --> 00:25:26,333 よし… 416 00:25:27,267 --> 00:25:31,267 八つ当たりでも いくらでも ぶん投げな。 417 00:25:32,567 --> 00:25:33,600 よし来い! 418 00:25:33,600 --> 00:25:36,433 このころのアタシは 何事も 419 00:25:36,433 --> 00:25:40,533 「初太郎」という物差しを通してでしか 見られなくなっておりました。 420 00:25:41,167 --> 00:25:46,233 腕があって 人気がある テケツも売れる。 421 00:25:46,233 --> 00:25:50,133 ひがんで 女々しくなっている私を 受け止める度量もある。 422 00:26:00,000 --> 00:26:02,800 菊さ~ん どうしたの? 423 00:26:07,500 --> 00:26:10,033 芝居の道具を借りに。 424 00:26:10,033 --> 00:26:13,667 参ったわ せっかく 髪を結ってもらったのに。 425 00:26:13,667 --> 00:26:16,567 ねえ すぐそこなの。 送ってよ。 426 00:26:17,800 --> 00:26:19,500 お稽古しなきゃ。 427 00:26:19,500 --> 00:26:21,367 また落語? 428 00:26:21,367 --> 00:26:23,467 明日は芝居やるんだ。 429 00:26:24,933 --> 00:26:26,533 菊さんが お芝居? 430 00:26:26,533 --> 00:26:28,500 どんな話か聞かせて。 431 00:26:31,333 --> 00:26:33,400 もう ここから出られないもん。 432 00:26:44,533 --> 00:26:46,900 だいぶ上手になったね。 433 00:26:51,833 --> 00:26:54,100 雨で足が痛む。 434 00:26:54,100 --> 00:26:55,833 さすっとくれよ。 435 00:27:10,667 --> 00:27:14,533 しょぼくれてんね。 なんかあった? 436 00:27:16,500 --> 00:27:19,567 落語… 437 00:27:19,567 --> 00:27:22,800 もしかして 向いてないのかもしれない。 438 00:27:23,600 --> 00:27:25,400 どうして? 439 00:27:26,667 --> 00:27:29,500 時々 分からなくなるんだ。 440 00:27:33,500 --> 00:27:36,267 俺は 誰のため… 441 00:27:37,400 --> 00:27:40,700 なんのために落語をやってるのか。 442 00:27:41,200 --> 00:27:43,633 私のために やってよ。 443 00:27:45,333 --> 00:27:47,633 ここじゃないのかもしれない。 444 00:27:50,300 --> 00:27:53,167 アタシの居場所は…。 445 00:28:00,767 --> 00:28:02,467 菊さん 魅力的だし 446 00:28:02,467 --> 00:28:04,467 しゃべってる姿が とっても きれい。 447 00:28:04,467 --> 00:28:06,833 そんなもん 落語に必要あるかい。 448 00:28:06,833 --> 00:28:10,000 必要なのは愛きょう。 それが 致命的に ねえ。 449 00:28:14,700 --> 00:28:17,333 初太郎には かなわねえんだ。 450 00:28:18,733 --> 00:28:21,533 悔しいけど 451 00:28:21,533 --> 00:28:25,000 どんなに努力しても その差が埋まらねえ。 452 00:28:25,000 --> 00:28:27,733 自分で作るもんなんじゃない? 453 00:28:30,700 --> 00:28:34,900 自分の居場所は 自分で作るしかない。 454 00:28:39,067 --> 00:28:41,900 ねえ 明日は何やるの? 455 00:28:44,767 --> 00:28:47,167 弁天小僧…。 456 00:28:47,167 --> 00:28:50,233 楽しみ! きっと すっごく きれいよ。 457 00:28:50,233 --> 00:28:52,133 私 お化粧やったげる! 458 00:28:52,133 --> 00:28:53,767 みよちゃん。 459 00:28:54,500 --> 00:28:56,200 みよちゃん。 460 00:28:58,000 --> 00:28:59,533 お客さん? 461 00:29:00,333 --> 00:29:03,733 こちら お栄ちゃん。 いろいろ教えてもらってるんだ。 462 00:29:04,767 --> 00:29:06,267 どうも。 463 00:29:06,267 --> 00:29:08,267 もしかして 七代目の? 464 00:29:08,267 --> 00:29:10,600 お弟子さんの菊比古さん。 465 00:29:10,600 --> 00:29:13,267 七代目と女将さんには内緒ね。 466 00:29:13,267 --> 00:29:14,833 ちょっと。 467 00:29:16,233 --> 00:29:19,433 修業の身なのに この家に お客さん 連れ込んだ 468 00:29:19,433 --> 00:29:21,933 なんて知られたら大ごとだよ。 469 00:29:21,933 --> 00:29:23,800 大丈夫。 470 00:29:23,800 --> 00:29:26,567 菊さんは そんなんじゃない。 471 00:29:50,067 --> 00:29:52,267 らっしゃいらっしゃい!はいはい! 472 00:29:52,267 --> 00:29:54,000 はい どうぞ! 473 00:29:54,000 --> 00:29:58,367 今 一番 勢いのある 噺家たちによる お芝居だよ! 474 00:29:58,367 --> 00:30:00,533 鹿芝居! 475 00:30:02,033 --> 00:30:03,900 松田さん 入りは どうだい? 476 00:30:03,900 --> 00:30:07,033 ちょっとちょっと ほら 上々ですよ。 477 00:30:07,033 --> 00:30:09,600 ビラ いっぱい配りましたからね。 478 00:30:09,600 --> 00:30:11,633 悪いねぇ 人手が足りなくてよ。 479 00:30:11,633 --> 00:30:13,133 いいんですよ。 480 00:30:13,133 --> 00:30:16,900 でも 若手ばかりで よくぞ ここまで。 481 00:30:21,300 --> 00:30:22,700 どうしたい お前ら。 482 00:30:22,700 --> 00:30:24,467 なんだか異様な雰囲気で。 483 00:30:29,533 --> 00:30:32,433 -もういい? -あん… しゃべっちゃダメ。 484 00:30:32,433 --> 00:30:35,267 もっと もっと きれいに 化けさせてあげるから。 485 00:30:38,000 --> 00:30:39,867 はい できた。 486 00:30:40,700 --> 00:30:42,000 どれどれ? 487 00:30:43,167 --> 00:30:45,733 こりゃあ いいなぁ 客も喜ぶぜ。 488 00:30:45,733 --> 00:30:47,067 なんでぇ。 489 00:30:47,067 --> 00:30:50,933 小せえ小屋だけどよ いっぱい来てくだすった。 490 00:30:50,933 --> 00:30:53,367 心底 満足させてやりてえなぁ。 491 00:31:03,333 --> 00:31:04,333 帰る…。 492 00:31:06,233 --> 00:31:08,300 芝居なんか やったことねえし 493 00:31:08,300 --> 00:31:09,633 どうせ ウケるわけがねえ。 494 00:31:09,633 --> 00:31:12,333 で~じょうぶだって。 さんざっぱら稽古したろ? 495 00:31:12,333 --> 00:31:14,367 衣装が重いし 苦しいし。 496 00:31:14,367 --> 00:31:15,967 これじゃ 舞台で吐いちまう。 497 00:31:31,000 --> 00:31:34,267 私は 大きなお座敷に出る時にね 498 00:31:35,633 --> 00:31:38,467 はじめに お客を見渡してやるの。 499 00:31:39,333 --> 00:31:42,000 そしたら 怖いことなんか なくなるの。 500 00:31:50,200 --> 00:31:51,900 なあ 兄弟 501 00:31:51,900 --> 00:31:54,133 そろそろ 腹 据えろ。 502 00:31:54,133 --> 00:31:56,400 その面 見せつけてやんな。 503 00:31:56,400 --> 00:31:58,767 そしたら 客なんか ついてくんだよ。 504 00:32:25,033 --> 00:32:28,733 お嬢様! お嬢様! 505 00:32:30,533 --> 00:32:32,233 お嬢様! 506 00:33:06,167 --> 00:33:08,400 これ 四十八 507 00:33:08,400 --> 00:33:12,367 浜松屋というのは どこじゃぞいのぉ。 508 00:33:12,367 --> 00:33:16,467 つい向こうに見えます 呉服店でござりまする。 509 00:33:16,467 --> 00:33:22,533 婚礼の支度じゃということは 必ず言うてたもるなや? 510 00:33:23,133 --> 00:33:25,967 申してもよいではござりませぬか。 511 00:33:25,967 --> 00:33:31,100 それでも わたしゃ 恥ずかしいわいな。 512 00:33:31,100 --> 00:33:34,100 言うて悪くは申しますまい。 513 00:33:34,100 --> 00:33:37,667 お嬢様 おいでなされませ。 514 00:33:44,800 --> 00:33:46,700 みんな見てる…。 515 00:33:46,700 --> 00:33:49,500 何なんだ この感覚ぁ…。 516 00:33:49,500 --> 00:33:53,833 アタシが動くと お客の気も動く…。 517 00:33:57,133 --> 00:34:02,933 おう 兄貴。 もう化けちゃあいられねえ。 518 00:34:03,867 --> 00:34:09,767 おらぁ 尻尾を… 出しちゃうぜ。 519 00:34:11,533 --> 00:34:15,767 アタシが見せると お客が見てくれる。 520 00:34:16,267 --> 00:34:20,167 アタシの… 骨の髄まで…。 521 00:34:23,233 --> 00:34:28,067 知らざぁ言ってぇ… 522 00:34:28,067 --> 00:34:30,567 聞かせやしょう…。 523 00:34:30,567 --> 00:34:31,900 待ってました! 524 00:34:31,900 --> 00:34:39,867 名さへ由縁の弁天小僧 菊之助とは… 525 00:34:42,533 --> 00:34:47,867 俺の~こと~だ! 526 00:34:48,333 --> 00:34:51,900 日本一!菊比古! 527 00:35:00,233 --> 00:35:01,800 大成功だ! 528 00:35:01,800 --> 00:35:03,367 聞いたか あの拍手! 529 00:35:03,367 --> 00:35:05,733 おめえは すげぇよ! やって良かったなぁ! 530 00:35:06,700 --> 00:35:09,500 写真機 借りられました。 ほら! 531 00:35:10,767 --> 00:35:12,633 さあ ここ 二人 並んで。 532 00:35:12,633 --> 00:35:15,033 こんな格好 残したかねえや。 533 00:35:15,033 --> 00:35:16,367 いいから やれって。 534 00:35:16,367 --> 00:35:19,133 いいですか? 寄ってくださいよ。 535 00:35:19,900 --> 00:35:21,867 さあ 寄ってください。 536 00:35:23,067 --> 00:35:24,367 いいですか? 537 00:35:25,167 --> 00:35:26,867 はい。 538 00:35:27,533 --> 00:35:29,200 もう一枚 撮りますから…。 539 00:35:29,200 --> 00:35:30,867 -笑ってるか? -だから 一枚でいいんだよ。 540 00:35:30,867 --> 00:35:33,300 せっかくですから ちょっと もう一枚 撮りましょうよ。 541 00:35:33,300 --> 00:35:35,900 -なんの せっかくだよ。 -ちょっと待ってください。 542 00:35:40,167 --> 00:35:41,867 打ち上げ来りゃいいのに。 543 00:35:42,767 --> 00:35:46,000 菊さんに 終わったら帰れって 言われたのよ。 544 00:35:46,000 --> 00:35:47,867 夜道は危ねえ。 送ってくよ。 545 00:35:47,867 --> 00:35:49,467 大丈夫よ。 546 00:35:49,467 --> 00:35:52,300 打ち上げ ダンナ方の相手しなきゃでしょ。 547 00:35:54,300 --> 00:35:58,000 菊さんに また ゆっくりって伝えて。 548 00:36:04,433 --> 00:36:06,967 あなた 549 00:36:06,967 --> 00:36:08,800 意外と優しいのね。 550 00:36:08,800 --> 00:36:11,233 菊さんとは大違い だろ? 551 00:36:21,600 --> 00:36:23,033 かい性なしが… 552 00:36:23,033 --> 00:36:26,633 女ひとりで帰すたぁ どういう料簡でぇ! 553 00:36:28,300 --> 00:36:29,800 勝手だろ。 554 00:36:29,800 --> 00:36:32,533 お前 兄弟子の言うこたぁ ちゃんと聞けよ。 555 00:36:32,533 --> 00:36:34,400 誰が兄弟子だい。 556 00:36:35,333 --> 00:36:37,400 弟子入りは アタシの方が先なんだよ。 557 00:36:37,400 --> 00:36:39,433 門くぐったのは俺の方が…。 558 00:36:42,000 --> 00:36:43,567 今日は やめよう。 559 00:36:43,567 --> 00:36:47,367 気分がいいんだ。 ケンカは よそうぜ。 560 00:36:51,000 --> 00:36:53,500 今日の客の顔 良かったなぁ…。 561 00:36:53,500 --> 00:36:55,400 坊のおかげだ。 562 00:36:56,267 --> 00:36:59,267 まるで満州で見た 兵隊さんの顔だった。 563 00:37:00,133 --> 00:37:03,200 なんだい そりゃ。 聞いたことないよ。 564 00:37:03,933 --> 00:37:08,200 兵隊さんに落語を聞かせてやると 心底 喜んでくれてさ。 565 00:37:08,200 --> 00:37:11,400 娯楽に飢えきってるから 大歓迎してくれんだ。 566 00:37:12,833 --> 00:37:17,500 いずれは人を殺したり 殺されたりするっていう兵隊さんがさ 567 00:37:17,500 --> 00:37:19,867 今日みたいな顔でよ。 568 00:37:19,867 --> 00:37:22,067 うれしそうにさぁ。 569 00:37:23,800 --> 00:37:27,567 あの兵隊さんたち 何人が生きて帰れたかねぇ。 570 00:37:27,567 --> 00:37:30,467 俺ぁ あの顔が大好きでよ。 571 00:37:31,600 --> 00:37:33,767 そんで 俺は決めたんだ。 572 00:37:36,467 --> 00:37:39,767 俺ぁ 人のために落語をやるんだ。 573 00:37:41,400 --> 00:37:43,533 そう決めたんだ。 574 00:37:45,267 --> 00:37:47,200 なあ 坊 575 00:37:48,533 --> 00:37:50,533 おめえは どうなんだい? 576 00:38:23,600 --> 00:38:27,233 お前は まだ自分の落語ってのを 見つけてねえんだ。 577 00:38:27,233 --> 00:38:30,100 俺ぁ 人のために落語をやるんだ。 578 00:38:33,633 --> 00:38:36,633 アタシの落語は なんのため? 579 00:38:41,233 --> 00:38:44,067 お願いします。 ここに居させてください! 580 00:38:44,067 --> 00:38:48,067 自分の居場所は 自分で作るしかない。 581 00:39:25,600 --> 00:39:28,467 アタシの居場所は 582 00:39:28,467 --> 00:39:30,533 アタシが作る。 583 00:39:34,167 --> 00:39:38,933 品川の新宿に 白木屋という 女郎屋がございまして。 584 00:39:38,933 --> 00:39:41,933 ここの板頭を務めておりました お染さん 585 00:39:41,933 --> 00:39:44,000 まあ 昔は大変 売れたんですが 586 00:39:44,000 --> 00:39:47,133 だんだん トシをとってきて シワが目立つようになった。 587 00:39:47,133 --> 00:39:51,767 そうなると お客は正直ですから お染さんから離れていく。 588 00:39:51,767 --> 00:39:55,533 移り替えという時期になりますと たいそう お金がいります。 589 00:39:55,533 --> 00:39:58,700 若い売れっ子連中は みんな 済ましておりますが 590 00:39:58,700 --> 00:40:03,233 店で移り替えを済ましていないのが お染さんひとりきり。 591 00:40:04,033 --> 00:40:08,367 「くやしいっ もう こんな みっともないこと 592 00:40:08,367 --> 00:40:11,467 移り替えが できないくらいなら 死んじゃう。 593 00:40:11,467 --> 00:40:14,567 でも あたし ひとりで死んだら 594 00:40:14,567 --> 00:40:19,233 お染は お金の都合がつかなくて 死んだ そう言われるから 595 00:40:19,233 --> 00:40:22,633 誰か相手を見つけて一緒に死のう。 596 00:40:22,633 --> 00:40:26,767 そうすれば 心中と浮き名が立って いいだろう。 597 00:40:26,767 --> 00:40:29,367 誰がいいかねぇ。 598 00:40:29,367 --> 00:40:31,300 この人なんか いいんだけどねぇ。 599 00:40:31,300 --> 00:40:33,433 親ひとり子ひとりだからねぇ 600 00:40:33,433 --> 00:40:36,067 死なしちゃうと かわいそうだねぇ」。 601 00:40:37,467 --> 00:40:41,067 「この人は 子供が 五人もいるんだよねぇ。 602 00:40:41,067 --> 00:40:43,967 なんでこんな所に来るんだろう」。 603 00:40:44,867 --> 00:40:47,367 「これも死なしちゃうと しょうがないねぇ」。 604 00:40:49,200 --> 00:40:50,200 七代目 605 00:40:50,200 --> 00:40:53,300 菊坊がよ なんだか化けたようだぜ。 606 00:40:56,567 --> 00:40:58,033 「この人に決めた」。 607 00:40:58,500 --> 00:41:01,000 「実はね お足がいるの」。 608 00:41:01,000 --> 00:41:03,633 「金? いくらありゃいいんだよ。 いくらだよ 609 00:41:03,633 --> 00:41:05,667 百両かい? 二百両かい?」。 610 00:41:05,667 --> 00:41:08,133 「あら 頼もしい。 611 00:41:08,133 --> 00:41:09,400 五十両」。 612 00:41:09,400 --> 00:41:12,800 「五十両? そりゃあ大金だ」。 613 00:41:12,800 --> 00:41:14,167 「ほら ご覧よ。 614 00:41:14,167 --> 00:41:18,600 だからさ お前さんに こしらえてとは言わないよ。 615 00:41:18,600 --> 00:41:23,200 でもねぇ 移り替えができないんじゃ みっともないから 616 00:41:23,200 --> 00:41:26,333 あたしゃ死んじゃおうと 思ってんの。 617 00:41:26,333 --> 00:41:31,500 だけど お前さんとは 夫婦の約束をしたろ? ねえ? 618 00:41:32,333 --> 00:41:35,700 独りで死んじゃ悪いと思ってさ。 619 00:41:35,700 --> 00:41:38,633 あたしが死んじゃったら お前さん」。 620 00:41:39,833 --> 00:41:42,019 「かわいそうなやつだと思って 621 00:41:42,049 --> 00:41:45,833 折れた線香の一本でも 手向けておくれ」。 622 00:41:46,767 --> 00:41:48,800 「お前 死んじゃうのか? 623 00:41:48,800 --> 00:41:51,533 お前が死ぬんだったら 俺も死ぬよ」。 624 00:41:51,533 --> 00:41:53,933 なんのための落語。 625 00:41:53,933 --> 00:41:56,467 てめえの居場所をこさえるため。 626 00:41:56,467 --> 00:41:59,467 ここに居ても大丈夫だと思うため。 627 00:41:59,467 --> 00:42:02,400 自分が自分でいるため。 628 00:42:02,400 --> 00:42:06,567 作るんだ てめえで てめえの居場所を。 629 00:42:07,833 --> 00:42:10,600 さあ この金蔵を 逃がしちゃいけないってんで 630 00:42:10,600 --> 00:42:13,600 ふだん そっけない お染は 大変な もてなしようで。 631 00:42:13,600 --> 00:42:18,233 明くる朝になるってえと 金さん ぽ~っとしちゃって 632 00:42:18,233 --> 00:42:23,200 「あの女のためなら 命は いらねえ」。 633 00:42:24,167 --> 00:42:27,467 このあと 仕返しに参ります 634 00:42:27,467 --> 00:42:30,400 品川心中の上でございます。 635 00:42:36,133 --> 00:42:37,933 これが… 636 00:42:37,933 --> 00:42:39,967 アタシの落語。 637 00:42:57,133 --> 00:43:00,300 菊さん 今日はすごく良かったよ。 638 00:43:00,300 --> 00:43:02,333 なんか あったんですか? 639 00:43:03,400 --> 00:43:04,933 内緒。 640 00:43:25,067 --> 00:43:29,033 © NHK / TELEPACK