1 00:00:09,133 --> 00:00:11,500 お客さん 来られますかね…。 2 00:00:14,267 --> 00:00:16,967 まだ半分も埋まってねえなんて…。 3 00:00:23,133 --> 00:00:25,267 オイラのせいだ…。 4 00:00:25,267 --> 00:00:29,267 アネさん オイラ その子の父親になれねえか? 5 00:00:29,267 --> 00:00:32,167 助六の名を継がせて下さい。 6 00:00:32,167 --> 00:00:35,700 名前なんかより 芸だよ。 7 00:00:36,433 --> 00:00:41,733 お前さん そろそろ 手前の落語ってのを見つけねえと。 8 00:00:41,733 --> 00:00:43,367 週刊誌? 9 00:00:43,367 --> 00:00:46,867 与太郎さん どうなっちゃうんでしょう…。 10 00:00:46,867 --> 00:00:51,233 分かったよ 小夏ちゃんの子供の父親。 11 00:00:51,233 --> 00:00:54,933 オイラが昔いた組の… 12 00:00:54,933 --> 00:00:56,533 組長? 13 00:01:00,367 --> 00:01:02,300 -おはようございます。 -おはようございます。 14 00:01:02,300 --> 00:01:03,833 松田さん。 15 00:01:03,833 --> 00:01:06,300 今日は 師匠の 大事なお座敷なんじゃないですか? 16 00:01:06,300 --> 00:01:11,033 それが 昨日から 立て続けに キャンセルになってしまって。 17 00:01:13,900 --> 00:01:17,300 もう気にするの やめましょうよ。 18 00:01:17,300 --> 00:01:22,600 もし 人が集まらなくても それは この雨のせいですよ。 19 00:01:26,767 --> 00:01:28,900 余計なことは考えるな。 20 00:01:28,900 --> 00:01:31,300 集中しろ…。 21 00:01:31,300 --> 00:01:33,867 オイラの落語… 22 00:01:33,867 --> 00:01:35,533 オイラの落語…。 23 00:01:48,667 --> 00:01:53,467 本日は お足元の悪い中 誠に ありがとうございます。 24 00:01:53,467 --> 00:01:57,800 え~ こんな日は アタシも 家で道楽をしていたいもんですが… 25 00:02:02,533 --> 00:02:05,000 男の道楽は三道楽 26 00:02:05,000 --> 00:02:08,067 飲む 打つ 買う なんてぇことを言いましてね。 27 00:02:08,700 --> 00:02:13,333 「錦の褌? いいねぇ そらぁ。 えっ! 28 00:02:13,333 --> 00:02:18,000 あんなもん 褌に締めてごらんよ またぐらぁ 陽気でいいやねぇ」。 29 00:02:20,867 --> 00:02:24,033 さあ 宵のうちは 芸者 太鼓持ちを上げて どんちゃん騒ぎ。 30 00:02:24,033 --> 00:02:27,100 与太郎が気になって。 どう? 31 00:02:27,100 --> 00:02:29,300 まるで ダメです…。 32 00:02:29,300 --> 00:02:30,533 やっぱり…。 33 00:02:30,533 --> 00:02:33,167 「かっぽれでも 踊ろうじゃねえか!」。 34 00:02:33,167 --> 00:02:36,633 落ち着け 自分の落語をやりゃいいんだ…。 35 00:02:36,633 --> 00:02:39,567 オイラの落語… オイラの落語…。 36 00:02:41,000 --> 00:02:44,400 「ねえさんがた! 三味線でも頼むぜ!」。 37 00:02:44,400 --> 00:02:50,767 さあってえますと 連中が裸になりやして~! 38 00:03:07,700 --> 00:03:10,400 なんてことを…。 39 00:03:10,400 --> 00:03:12,233 あのバカ…。 40 00:03:23,333 --> 00:03:24,900 すいませんでした! 41 00:03:24,900 --> 00:03:29,067 なんでぇ このバカは 来て いきなり。 42 00:03:29,567 --> 00:03:33,533 師匠のお座敷のキャンセル オイラのせいです。 43 00:03:33,533 --> 00:03:36,733 落ち込んで 刺青が消えるわけでもなし 44 00:03:36,733 --> 00:03:38,733 何を気にしてんだか。 45 00:03:40,867 --> 00:03:45,367 背中の彫り物 見せてみな。 46 00:03:49,467 --> 00:03:51,300 いや… 47 00:03:51,300 --> 00:03:52,967 みっともねえ古傷で…。 48 00:03:52,967 --> 00:03:56,467 芸人なんて 見られてナンボだろ。 49 00:03:56,467 --> 00:03:59,533 何を隠すことがあるんだい。 50 00:04:29,733 --> 00:04:32,300 筋彫りだけど 51 00:04:33,300 --> 00:04:36,467 見事な鯉金じゃねえか。 52 00:04:43,826 --> 00:04:50,593 お前さんは 過去と しっかり向き合わねえとならねえ。 53 00:04:51,767 --> 00:04:55,533 決別じゃなくて 抱えて生きろ。 54 00:04:56,867 --> 00:05:00,133 罪を忘れるな。 55 00:05:00,133 --> 00:05:03,133 それが 56 00:05:03,133 --> 00:05:06,800 人間の業ってもんさ。 57 00:05:16,567 --> 00:05:18,533 ありがとうございます…! 58 00:05:19,733 --> 00:05:23,033 さあ 一杯 飲みましょうか。 59 00:05:23,033 --> 00:05:24,567 いえ。 60 00:05:24,567 --> 00:05:27,433 すいませんけど 失礼させて頂きます。 61 00:05:27,433 --> 00:05:30,200 飲むより 稽古がしたいんで! 62 00:05:30,200 --> 00:05:31,600 サイナラ! 63 00:05:59,933 --> 00:06:02,767 元気になったみたいだね。 64 00:06:02,767 --> 00:06:04,567 かわいそうなぐらい 落ち込んでたけど 65 00:06:04,567 --> 00:06:07,267 よかった よかった。 66 00:06:08,100 --> 00:06:10,733 「何を 黙って聞いてりゃ 増長して ごたくが過ぎらぁ! 67 00:06:10,733 --> 00:06:13,065 こちとら でけえ声ってのは 地声なもんで 68 00:06:13,095 --> 00:06:14,733 まだまだ せり上がらぁ。 69 00:06:14,733 --> 00:06:16,200 蛸の頭 あんにゃもんにゃ」。 70 00:06:16,200 --> 00:06:17,900 いよっ 大棟りょう! 71 00:06:19,267 --> 00:06:20,433 兄さん! 72 00:06:20,433 --> 00:06:22,333 -「大工調べ」? -はい! 73 00:06:24,367 --> 00:06:26,500 スッキリした! 74 00:06:26,500 --> 00:06:28,900 相変わらずの声のでかさだね。 75 00:06:28,900 --> 00:06:32,067 なんだって そんな大声で お稽古すんだい? 76 00:06:32,067 --> 00:06:33,633 師匠に教わったんす! 77 00:06:33,633 --> 00:06:36,367 はじめは とにかく 腹の底から声を出せって。 78 00:06:36,367 --> 00:06:39,933 そうすりゃ 客席に 聞こえねえってこともなくなるし 79 00:06:39,933 --> 00:06:42,167 驚いて 顔を覚えて下さる。 80 00:06:42,167 --> 00:06:45,467 声の大小 落語の よしあしは やってりゃ そのうち分かるってさ。 81 00:06:45,467 --> 00:06:47,800 でも そんなの 前座のするこったろ。 82 00:06:47,800 --> 00:06:49,067 はじめに教わったんで 83 00:06:49,067 --> 00:06:51,600 うれしくって なかなか抜けねぇんで。 84 00:06:51,600 --> 00:06:55,933 それが あの 今の 落語の啖呵ってのかい? 85 00:06:55,933 --> 00:06:57,933 どんな意味なんだい? 86 00:06:57,933 --> 00:06:58,867 さあ? 87 00:06:58,867 --> 00:07:01,333 知らないで やってんのかい? 88 00:07:01,333 --> 00:07:03,533 教わったのを しゃべってるだけでぇ。 89 00:07:03,533 --> 00:07:05,367 あきれたねぇ。 90 00:07:07,200 --> 00:07:09,033 あっ そういえば 調べてきたよ。 91 00:07:09,033 --> 00:07:11,567 小夏ちゃんの子供の父親。 92 00:07:14,300 --> 00:07:17,900 小夏ちゃん 高校時代は不良でならしてて 93 00:07:17,900 --> 00:07:21,067 一度 やっかいな もめ事が起きた時に 94 00:07:21,067 --> 00:07:24,400 八雲師匠が乗り出していって おさめたことがある。 95 00:07:24,400 --> 00:07:28,633 その時に挨拶をした相手が その人さ。 96 00:07:30,067 --> 00:07:31,633 親分ですか…? 97 00:07:36,000 --> 00:07:37,300 オッサンは? 98 00:07:38,533 --> 00:07:41,833 お出かけになりました。 晩ごはん いらないって。 99 00:07:43,000 --> 00:07:44,900 もうすぐ出来ますからね。 100 00:07:53,833 --> 00:07:56,700 女将さん? 私。 101 00:07:58,300 --> 00:08:01,633 やっぱり あの人には ちゃんと話しておきたい。 102 00:08:02,233 --> 00:08:06,633 …で どうやら 親分さんが よそと もめ事になりそうになった時に 103 00:08:06,633 --> 00:08:10,433 八雲師匠が お座敷に出て 相手方が大いに喜んでくれて 104 00:08:10,433 --> 00:08:12,100 事なきを得た。 105 00:08:12,100 --> 00:08:16,457 それ以来 八雲師匠のことも 小夏ちゃんのことも 106 00:08:16,487 --> 00:08:19,267 親分さんは ずいぶん気に入ったようなんだ。 107 00:08:19,900 --> 00:08:21,500 それで いろいろ調べると 108 00:08:21,500 --> 00:08:23,800 ちょうど 小夏ちゃんが 妊娠したはずの時期に 109 00:08:23,800 --> 00:08:25,598 親分さんは箱根へ行ってて 110 00:08:25,628 --> 00:08:28,267 小夏ちゃんも その宿に顔を出している。 111 00:08:28,267 --> 00:08:30,567 店の仲間もいたそうだが 112 00:08:30,567 --> 00:08:34,000 小夏ちゃんと親分ができてるって 信じてるやつまでいる。 113 00:08:36,633 --> 00:08:38,133 分かった。 114 00:08:38,133 --> 00:08:40,467 お前…! 115 00:08:40,467 --> 00:08:43,433 あの親分さんが どういう人か…。 116 00:08:43,433 --> 00:08:46,800 兄さんは テレビに出る人間だ。 関わっちゃいけねえ。 117 00:08:46,800 --> 00:08:48,000 あとは オイラの問題だ。 118 00:08:48,000 --> 00:08:51,100 そもそも お前 どうして ヤクザやめて 噺家になった? 119 00:08:51,100 --> 00:08:53,000 あの親分さんと 昔 何があったんだ? 120 00:08:53,000 --> 00:08:55,500 昔話なんて こりごりなんだい。 121 00:08:57,433 --> 00:08:58,767 待て! 122 00:08:58,767 --> 00:09:01,667 表現者たるもの 隠し事なんかするんじゃない! 123 00:09:06,667 --> 00:09:09,333 隠し事のねえ人間なんて 124 00:09:09,333 --> 00:09:11,133 色気がねえ。 125 00:09:16,900 --> 00:09:18,500 失礼します。 126 00:09:26,633 --> 00:09:30,500 久しぶりだな 小夏。 127 00:09:30,500 --> 00:09:32,467 お客さん? 128 00:09:33,533 --> 00:09:37,000 まあ 構うな。 今日は どうしたい? 129 00:09:37,800 --> 00:09:40,067 お願いがあって来ました。 130 00:09:40,067 --> 00:09:41,900 まあ 座れ。 131 00:09:54,200 --> 00:09:57,900 私のおなかの 子供のことです。 132 00:10:08,300 --> 00:10:10,000 女将! 133 00:10:11,400 --> 00:10:13,967 -なんだい? -聞きたいことがある。 134 00:10:13,967 --> 00:10:16,600 親分とアネさんのことだ。 135 00:10:16,600 --> 00:10:18,733 今は ダメだよ。 136 00:10:18,733 --> 00:10:20,467 来てんのかい? 137 00:10:21,633 --> 00:10:22,967 ちょいと お待ちよ! 138 00:10:22,967 --> 00:10:25,300 小夏も来てる…。 139 00:10:25,300 --> 00:10:27,133 兄貴…。 140 00:10:27,133 --> 00:10:28,933 久しぶりだな。 141 00:10:28,933 --> 00:10:32,500 テレビじゃ ちょいちょい見てたけど 見ねえうちに なんだ この頭。 142 00:10:32,500 --> 00:10:34,533 奥に いるんだね? 143 00:10:35,867 --> 00:10:38,000 小夏ちゃんか? 144 00:10:38,000 --> 00:10:41,933 ずいぶん見知った仲なんだな? えっ? 145 00:10:41,933 --> 00:10:45,500 -お前 何しに来た? -ちょいと挨拶さしてもらいてえな。 146 00:10:45,500 --> 00:10:48,100 オイラ 大昔に 一回きりしか 会ったことねえんだ。 147 00:10:49,033 --> 00:10:50,467 やめろ…! 148 00:10:50,467 --> 00:10:52,267 与太ちゃん! 149 00:10:52,267 --> 00:10:55,600 おめえみたいな下っ端が会って 話せるような人じゃねえぞ こら! 150 00:10:55,600 --> 00:10:57,400 下っ端じゃねえ! 151 00:10:57,400 --> 00:10:59,833 じき 真打でぇ! 152 00:11:06,767 --> 00:11:08,200 失礼します! 153 00:11:09,833 --> 00:11:12,967 突然のご無礼 ご容赦下さい。 154 00:11:14,100 --> 00:11:15,958 師匠が いつも お世話になっております。 155 00:11:15,988 --> 00:11:19,033 不肖 私も 少なからず 昔に お世話になりまして 156 00:11:19,033 --> 00:11:21,067 多少のご縁がございますんでぇ。 157 00:11:21,067 --> 00:11:23,785 ぶしつけながら 浴衣風情の はしたねえ格好のまま 158 00:11:23,815 --> 00:11:26,300 ご挨拶に 上がらさせて頂きました。 159 00:11:27,367 --> 00:11:29,067 何しに…。 160 00:11:30,300 --> 00:11:33,867 アネさんこそ どうして ここに いるんだい? 161 00:11:34,467 --> 00:11:36,433 どうだっていいでしょ…。 162 00:11:38,433 --> 00:11:40,533 泣いてたね? 163 00:11:42,633 --> 00:11:45,433 いい挨拶だ。 164 00:11:45,433 --> 00:11:48,967 会いたかったよ 与太ちゃん。 165 00:11:50,700 --> 00:11:53,133 まあ いいや こっち来いよ。 166 00:11:59,533 --> 00:12:02,933 何回か 落語を 聞きに行ったことあるんだよ。 167 00:12:04,033 --> 00:12:08,000 八雲師匠との親子会だったか。 168 00:12:08,000 --> 00:12:12,567 めちゃくちゃだったけど 古くさくて いい落語だったなぁ。 169 00:12:13,100 --> 00:12:16,467 見て頂いてたなんて お恥ずかしいかぎりで。 170 00:12:16,467 --> 00:12:20,367 オイラが話をさせて頂くのは 10年以上ぶりです。 171 00:12:26,167 --> 00:12:28,496 顔も知らねえ幹部の代わりに 172 00:12:28,527 --> 00:12:31,700 オツトメ行ってこいって 言いつけられた あの日以来で。 173 00:12:32,133 --> 00:12:34,267 兄貴 勘弁してくれ…! 174 00:12:36,833 --> 00:12:40,033 親分っつうのは親も同然。 おめえ 親が どうなってもいいのか? 175 00:12:40,033 --> 00:12:41,533 兄貴… 頼むよ! 176 00:12:41,533 --> 00:12:43,833 がたがた言ってんじゃねえ! 177 00:12:43,833 --> 00:12:45,567 いいかげん聞きわけろ! 178 00:12:47,367 --> 00:12:50,267 怖くって ブルブル震えながら 引き受けたんす。 179 00:12:50,967 --> 00:12:54,000 あのころは 今 以上にバカでした。 180 00:12:54,000 --> 00:12:58,433 そしたらね 刑務所にいるうちに 181 00:12:58,433 --> 00:13:01,967 たった一人の おやじが 病気で死んじまったんです。 182 00:13:03,267 --> 00:13:05,539 ガキのころに捨てられて 183 00:13:05,569 --> 00:13:09,233 親らしいことは 何一つ してもらっちゃいませんでしたけど 184 00:13:12,267 --> 00:13:15,000 刑務所に入ろうが入るまいが 185 00:13:15,000 --> 00:13:18,000 どっちにしろ 後悔まみれの人生になりました。 186 00:13:19,367 --> 00:13:22,800 10代のころは 居場所がなくて 187 00:13:22,800 --> 00:13:26,300 誘われるまま チンピラやって 188 00:13:26,300 --> 00:13:29,067 だけど… 189 00:13:30,167 --> 00:13:35,900 背中の彫りもんが 今の人生に 邪魔でしょうがねえっていうのをね 190 00:13:35,900 --> 00:13:40,167 そんなの どうってことねえ そのまま生きりゃいいじゃねえか 191 00:13:40,167 --> 00:13:43,000 って思わせてくれたのが 192 00:13:43,000 --> 00:13:45,067 落語です。 193 00:13:46,333 --> 00:13:50,667 あん時は ボコボコにされて 怖くて ブルブル震えてたのに 194 00:13:50,667 --> 00:13:53,833 今や こうやって サシで しゃべらしてもらえてる。 195 00:13:53,833 --> 00:13:57,133 生きてりゃあ こんな変なことも起こります。 196 00:13:57,833 --> 00:14:02,033 どうも おめえに ケンカ 売られてる気がしてならねえ。 197 00:14:02,033 --> 00:14:04,400 オツトメ行ってくれたことにゃ 感謝してる。 198 00:14:04,400 --> 00:14:07,600 八雲師匠にも ずいぶん世話んなってる。 199 00:14:07,600 --> 00:14:11,167 だから 無傷で 足抜けさせてやったんじゃねえか。 200 00:14:11,167 --> 00:14:13,867 それで トントンじゃねえのか? 201 00:14:13,867 --> 00:14:15,433 アネさん! 202 00:14:16,500 --> 00:14:18,167 ちょっと! 203 00:14:18,167 --> 00:14:20,667 こうなったら はっきりさせとこうぜ。 204 00:14:20,667 --> 00:14:23,167 俺たちは 205 00:14:23,167 --> 00:14:25,133 結婚します! 206 00:14:28,333 --> 00:14:29,600 なに言ってんの…! 207 00:14:29,600 --> 00:14:32,439 だから おなかの子のこと はっきりさせてもらわねえと 208 00:14:32,469 --> 00:14:33,967 どうにも気が済まねえんですよ。 209 00:14:33,967 --> 00:14:35,233 与太 やめな! 210 00:14:35,233 --> 00:14:36,400 い~や 言わせてもらう。 211 00:14:36,400 --> 00:14:38,333 -いいから やめて! -嫌だ! 212 00:14:43,233 --> 00:14:46,967 頭 冷やせ クソガキ! 小夏が嫌がってんだろうが! 213 00:14:46,967 --> 00:14:49,100 てめえの正義で 突っ走るんじゃねえ! 214 00:14:52,200 --> 00:14:54,900 お願いです 与太を許して…。 215 00:14:54,900 --> 00:14:56,767 ごめんなさい 迷惑かけて…。 216 00:14:56,767 --> 00:14:59,167 私のせいです。 217 00:14:59,167 --> 00:15:02,467 ごめん… ごめんなさい。 218 00:15:04,533 --> 00:15:06,267 小夏…。 219 00:15:06,267 --> 00:15:07,800 ごめんなさい。 220 00:15:10,267 --> 00:15:12,633 てめえら 勝手に解決すんな! 221 00:15:12,633 --> 00:15:15,067 オイラが納得いかねえんだよ! 222 00:15:18,767 --> 00:15:20,933 すいません 失礼します。 223 00:15:20,933 --> 00:15:25,067 汚ねえナリで近寄るな。 こんなとこで死にてえか? 224 00:15:25,067 --> 00:15:29,333 死ぬわけにゃいかねえ。 師匠と約束したんだ。 225 00:15:29,967 --> 00:15:32,300 なに ごちゃごちゃ言ってんだ。 226 00:15:32,300 --> 00:15:34,067 すいません。 227 00:15:34,067 --> 00:15:37,433 この際だ なんでも言ってみろ。 228 00:15:37,433 --> 00:15:40,200 どうするかは それから考えてやる。 229 00:15:46,567 --> 00:15:48,033 よし 言ってやらぁ! 230 00:15:48,033 --> 00:15:49,800 てめえなんざ丸太ン棒でぇ! 231 00:15:49,800 --> 00:15:52,808 目も鼻もねえ 血も涙もねえ 義理人情を知らねえ 232 00:15:52,839 --> 00:15:53,867 のっぺらぼうな野郎だから 233 00:15:53,867 --> 00:15:55,167 丸太ン棒ってんでぇっ。 234 00:15:55,167 --> 00:15:57,500 保助藤十郎 ちんけえとう 株っかじり 芋っぽりめ 235 00:15:57,500 --> 00:15:59,072 てめえっちになんか言われてなぁ 236 00:15:59,102 --> 00:16:01,000 頭ぁ下げるようなお兄いさんと お兄いさんの出来が 237 00:16:01,000 --> 00:16:03,000 すこ~しばかり違うんでぇっ。 238 00:16:03,000 --> 00:16:05,933 何を! 黙って聞いてりゃ増長して ごたくが過ぎらぁ! 239 00:16:05,933 --> 00:16:10,867 こちとら でけえ声ってのは地声な もんでぇ まだまだせり上がらぁ! 240 00:16:10,867 --> 00:16:14,400 この蛸の頭 あんにゃもんにゃあめえ! 241 00:16:15,167 --> 00:16:17,833 誰が なんと言おうと アネさんの おなかの子は オイラの子でぇ! 242 00:16:17,833 --> 00:16:20,500 正真正銘 天地くるりと 入れかわっても 譲らねぇ! 243 00:16:20,500 --> 00:16:24,267 いいか あとから くれっつったって ぜってぇあげねえど! 244 00:16:24,267 --> 00:16:26,133 な~んも疑うことはねえ。 245 00:16:26,133 --> 00:16:30,067 だから このハナシは 今日かぎり これっきりで おしめえだ! 246 00:16:36,600 --> 00:16:40,667 …てぇのが アタクシの言い分でございます。 247 00:16:41,367 --> 00:16:44,300 どうも お粗末さまでございました。 248 00:16:50,633 --> 00:16:53,100 啖呵売りか…。 249 00:16:55,933 --> 00:17:01,033 でけえ声で つるつる出やがるから 全く聞きほれちまった。 250 00:17:01,667 --> 00:17:04,400 商売道具 出されちゃなぁ。 251 00:17:10,767 --> 00:17:13,467 精進してきたんだな。 252 00:17:17,367 --> 00:17:20,000 いい噺家になった。 253 00:17:35,567 --> 00:17:37,200 なんてこと してくれたの? 254 00:17:37,200 --> 00:17:40,200 余計な詮索するなって 言ったでしょ。 255 00:17:40,200 --> 00:17:41,733 だけど… 256 00:17:41,733 --> 00:17:43,633 黙ってられなかったんだ。 257 00:17:43,633 --> 00:17:45,567 アンタ バカなの!? 258 00:17:45,567 --> 00:17:48,733 親分さんの怖さは知ってるでしょ? 259 00:17:48,733 --> 00:17:51,267 よ~く知ってるよ。 260 00:17:51,267 --> 00:17:52,833 見ツくれよ これ。 261 00:17:58,433 --> 00:18:01,400 オイラは やっぱり 与太郎だね。 262 00:18:04,767 --> 00:18:11,067 親分さんには また返しきれない 恩義を作っちまいました。 263 00:18:12,900 --> 00:18:17,200 しかし あの与太郎 さすが 師匠の一番弟子だ。 264 00:18:20,967 --> 00:18:23,367 あのバカですか…。 265 00:18:25,433 --> 00:18:28,267 うれしそうだね。 266 00:18:28,267 --> 00:18:34,067 自分の落語ってぇのが 見えてきたのかもしれません。 267 00:18:34,067 --> 00:18:38,400 弟子ってぇのは 勝手に育つもんで…。 268 00:18:44,267 --> 00:18:49,200 あの人には…私が むちゃなお願い しただけなんだから。 269 00:18:50,400 --> 00:18:52,833 アネさんが そうしたくって してるんだね? 270 00:18:52,833 --> 00:18:55,733 全部 覚悟して やってること。 271 00:18:59,467 --> 00:19:03,700 なら もう話してくれなくていい。 272 00:19:03,700 --> 00:19:07,633 世の中には 言葉にしねえ方がいいこともある。 273 00:19:07,633 --> 00:19:09,667 それが 人の和ってやつさ。 274 00:19:11,233 --> 00:19:15,800 人に なんて言われたって 自分で決めたことだし。 275 00:19:16,867 --> 00:19:21,167 でも… ほんとは怖いの。 276 00:19:22,433 --> 00:19:24,733 オイラといりゃあ 大丈夫! 277 00:19:27,233 --> 00:19:29,900 ありがと。 278 00:19:29,900 --> 00:19:34,333 アンタといたら 不幸だって思ってん のもバカバカしくなるもんね。 279 00:19:37,467 --> 00:19:39,600 一緒になってくれるね? 280 00:19:43,367 --> 00:19:45,633 よ~し! 281 00:19:46,733 --> 00:19:48,600 アネさん! 282 00:19:48,600 --> 00:19:51,500 やっぱ やめる。 283 00:19:51,500 --> 00:19:54,367 アンタとじゃ あまりにも不安すぎんのよ。 284 00:19:56,067 --> 00:19:59,833 まだるっこしいな アネさんは! すぐ悪い方に考える! 285 00:19:59,833 --> 00:20:02,267 オイラに任しときゃ大丈夫だって! 286 00:20:02,267 --> 00:20:06,067 それは アンタの あわれみ。 同情なんて勘弁して。 287 00:20:06,067 --> 00:20:07,967 あわれみなんかじゃねえよぉ。 288 00:20:07,967 --> 00:20:10,000 なんの情だか よく分かんねえけどよ 289 00:20:10,000 --> 00:20:13,333 とにかく アネさんは オイラにとって大事な人だ。 290 00:20:19,367 --> 00:20:21,600 元ヤクザのくせに。 291 00:20:21,600 --> 00:20:23,967 よく言うよ 元不良のくせに。 292 00:20:23,967 --> 00:20:25,467 刑務所帰りのくせに。 293 00:20:25,467 --> 00:20:28,400 誰の子か分からねえ子供 生もうとしてるくせに! 294 00:20:29,600 --> 00:20:31,433 バカ! 295 00:20:31,433 --> 00:20:34,000 アンタとなんか 絶対 結婚しない! 296 00:20:35,667 --> 00:20:39,767 あんだよ それっ! オイラの何がダメなんだよ! 297 00:20:39,767 --> 00:20:43,133 それに アネさん 今 ありがとうって! 298 00:20:43,133 --> 00:20:46,033 言ってないよ! 夢でも見てたんじゃないの? 299 00:20:48,867 --> 00:20:51,167 ゆ… 夢って…。 300 00:20:55,167 --> 00:20:59,433 もうちょっとですねぇ 与太郎って 名前とも もうすぐ お別れして 301 00:20:59,433 --> 00:21:02,133 来週からは 助六ってことで。 302 00:21:02,133 --> 00:21:04,367 どうも 自分でも なじみが ねえんですが 303 00:21:04,367 --> 00:21:08,900 今日 ここにいる皆さんは来週 オイラの真打披露興行 来てくれないと 304 00:21:08,900 --> 00:21:11,000 化けて出るよっ! 305 00:21:11,000 --> 00:21:14,167 手ぬぐいの発注は これで。 306 00:21:14,167 --> 00:21:19,267 あっ それから これは パーティーの段取りです。 307 00:21:19,267 --> 00:21:21,367 見ておいて下さいね。 308 00:21:23,700 --> 00:21:26,067 師匠とアネさんは 元気かい? 309 00:21:26,067 --> 00:21:29,400 ええ もう おなかが こんなに。 310 00:21:31,767 --> 00:21:36,733 そういえば 与太郎さん 最近 あまり来て下さらないんですねぇ…。 311 00:21:36,733 --> 00:21:39,067 披露目の準備で バタバタしちまって。 312 00:21:39,067 --> 00:21:42,067 くれぐれも ご無理ないように。 313 00:21:43,867 --> 00:21:46,167 じゃあ また。 314 00:22:18,567 --> 00:22:21,333 春の雪だねぇ…。 315 00:22:34,100 --> 00:22:38,933 だらしない… 風邪ひくよ。 316 00:23:10,633 --> 00:23:14,500 四季のあくびというのが ありますなぁ。 317 00:23:17,767 --> 00:23:25,233 春のあくびなんてぇのは これは一人旅でございますな。 318 00:23:27,100 --> 00:23:30,867 田舎道なんか歩いておりまして…。 319 00:23:30,867 --> 00:23:34,133 -麦畑が青々して -これは一人旅でございますな。 320 00:23:34,133 --> 00:23:37,200 田舎道かなんか歩いておりまして 321 00:23:37,200 --> 00:23:39,233 麦畑が青々して 322 00:23:39,233 --> 00:23:42,900 菜の花が黄色く咲き乱れている。 323 00:23:42,900 --> 00:23:46,000 山は霞の帯を締め 324 00:23:46,000 --> 00:23:50,100 雲の中では ヒバリが さえずっていようというような。 325 00:23:51,133 --> 00:23:55,400 陽炎の立ち上る田圃道か何かを 歩いておりますと 326 00:23:55,400 --> 00:23:59,767 自然は 眠気も もよおして。 327 00:24:04,200 --> 00:24:06,367 なに!? 328 00:24:06,367 --> 00:24:09,267 お前さんが はなさねえんだろ。 329 00:24:09,767 --> 00:24:11,233 やだ! 330 00:24:18,200 --> 00:24:21,233 子供の時分は 331 00:24:21,233 --> 00:24:25,567 この噺をしたら 寝入っちまったもんだがねぇ。 332 00:24:25,567 --> 00:24:27,933 なんで 昼から居んのよ。 333 00:24:27,933 --> 00:24:34,233 与太の披露目の段取りで すっかり くたびれちまってねぇ。 334 00:24:35,433 --> 00:24:37,600 年寄りみたい。 335 00:24:37,600 --> 00:24:44,600 お前さん さんざっぱら いきまいて 336 00:24:44,600 --> 00:24:48,867 ついぞ アタシを殺しちゃくれねえなぁ。 337 00:24:48,867 --> 00:24:52,100 殺したいわよ 今も…。 338 00:24:53,267 --> 00:24:55,800 一生 許さない。 339 00:24:55,800 --> 00:24:58,100 けど アンタを殺したら 340 00:24:58,100 --> 00:25:01,733 この子に アンタの落語を 聞かせられなくなるでしょ。 341 00:25:03,067 --> 00:25:05,433 それは嫌なの。 342 00:25:07,167 --> 00:25:11,133 ずぅ~っと待ってるんだよ。 343 00:25:13,033 --> 00:25:19,900 お前さんが アタシを殺してくれんのを。 344 00:25:21,700 --> 00:25:27,033 お前がいたから 手前じゃ できなかった。 345 00:25:29,400 --> 00:25:35,833 今度は その腹のガキのために 死ねねえってぇのかい。 346 00:25:38,733 --> 00:25:40,600 アタシ… 347 00:25:41,333 --> 00:25:44,633 怖い… 生むのが。 348 00:25:47,067 --> 00:25:53,233 もう ずっと 与太が来たら 部屋から出やしないね。 349 00:25:55,200 --> 00:25:57,733 ケンカでも してんのかい。 350 00:26:03,600 --> 00:26:07,000 プロポーズされたの 与太に。 351 00:26:11,267 --> 00:26:13,467 うれしかった。 352 00:26:14,400 --> 00:26:16,700 でも 断った…。 353 00:26:16,700 --> 00:26:20,333 与太を巻き込んで… 354 00:26:20,333 --> 00:26:25,300 私 母さんと同じに なってるんじゃないかって…。 355 00:26:26,900 --> 00:26:31,000 私に流れる血が そうさせるのかと思うと…。 356 00:26:34,300 --> 00:26:38,167 一緒に… 死んじゃおっか。 357 00:26:38,167 --> 00:26:40,767 すまん 坊… 358 00:26:40,767 --> 00:26:42,467 頼んだよ。 359 00:26:59,100 --> 00:27:01,100 なんか言ってよ…。 360 00:27:08,100 --> 00:27:10,867 与太の真打披露…。 361 00:27:13,633 --> 00:27:17,167 初日は 必ず見に来なさいよ。 362 00:27:27,633 --> 00:27:29,700 行けるもんかい…。 363 00:27:46,800 --> 00:27:48,200 はい! 364 00:27:50,567 --> 00:27:53,033 師匠! どうしたんすかぃ!? 365 00:28:03,200 --> 00:28:04,700 今 お茶を…。 366 00:28:06,467 --> 00:28:09,167 初めて来たけど… 367 00:28:10,467 --> 00:28:13,367 なんだか懐かしいねぇ。 368 00:28:16,733 --> 00:28:19,267 ずっと昔 369 00:28:20,567 --> 00:28:25,600 こんな部屋で アタシは 「死神」を習った…。 370 00:28:27,233 --> 00:28:31,867 アタシが まだ 菊比古ってぇた時分だ。 371 00:28:35,633 --> 00:28:38,400 来週は真打披露。 372 00:28:39,633 --> 00:28:42,500 真打になったら 373 00:28:42,500 --> 00:28:45,800 もう お前さんに 稽古なんざ つけないよ。 374 00:28:47,100 --> 00:28:51,400 一つ 教え忘れてた。 375 00:28:52,000 --> 00:28:54,400 最後の稽古だ。 376 00:28:55,600 --> 00:28:58,400 一度っきゃあ やらねえよ。 377 00:29:04,900 --> 00:29:06,833 最後って…? 378 00:29:08,200 --> 00:29:09,700 師匠…。 379 00:29:09,700 --> 00:29:12,467 今 思い出してんだよ。 380 00:29:24,933 --> 00:29:30,267 東京は芝の浜に まだ河岸が ございました時分のお話で…。 381 00:29:31,700 --> 00:29:36,733 「ちょいと お前さん 起きとくれよ。 382 00:29:36,733 --> 00:29:38,833 お前さん」。 383 00:29:38,833 --> 00:29:41,467 師匠が 芝浜を…? 384 00:29:44,333 --> 00:29:46,867 「なんだよ ええ? 385 00:29:46,867 --> 00:29:49,600 まだ夜も 明けてねえじゃねえかよ」。 386 00:29:51,233 --> 00:29:53,733 「河岸 行っておくれよ」。 387 00:29:55,300 --> 00:29:57,433 「河岸?」。 388 00:29:57,433 --> 00:30:02,400 「なに言ってんだい ゆんべ約束したじゃないか。 389 00:30:02,400 --> 00:30:05,133 明日は必ず商いに出るから…」。 390 00:30:06,033 --> 00:30:09,067 「ずっしりしてらぁ…。 391 00:30:09,067 --> 00:30:12,567 砂でも へえってんのかなぁ…。 392 00:30:12,567 --> 00:30:15,200 汚ねえ財布だなぁ…」。 393 00:30:20,700 --> 00:30:23,100 「おっかぁ 開けろい。 394 00:30:23,100 --> 00:30:25,433 おっかぁ 開けろい おっかぁ」。 395 00:30:27,967 --> 00:30:30,133 「お財布かい?」。 396 00:30:30,133 --> 00:30:32,300 「芝の浜で拾ったんだい」。 397 00:30:32,967 --> 00:30:36,100 「あたし 怖くなって 398 00:30:36,100 --> 00:30:38,592 そんなもの 懐に入れたら 399 00:30:38,622 --> 00:30:42,733 お前さんとこの亭主は 手 後ろに回っちまうって。 400 00:30:42,733 --> 00:30:46,033 夢になっちまったんだよ…。 401 00:30:46,033 --> 00:30:47,733 堪忍しておくれ…」。 402 00:31:03,033 --> 00:31:06,067 あとは 助六 403 00:31:07,133 --> 00:31:09,700 アンタの出番だ。 404 00:31:29,033 --> 00:31:32,133 こちらの方に こんなハンカチ。 赤~いハンカチです。 405 00:31:32,133 --> 00:31:35,967 この赤~いハンカチを 大体 ロープの真ん中へんに 406 00:31:35,967 --> 00:31:38,100 ギューっと しっかりと 結んじゃいましょう。 ギュー! 407 00:31:38,100 --> 00:31:40,833 1枚じゃ なんか寂しいですね。 408 00:31:40,833 --> 00:31:42,533 黄色いハンカチ。 409 00:31:42,533 --> 00:31:44,838 いらっしゃいませ。 410 00:31:44,868 --> 00:31:48,667 どうぞ ごゆっくりと お楽しみ頂きたいと思います。 411 00:31:48,667 --> 00:31:50,800 さあ さあ 緑色のハンカチあります。 412 00:31:50,800 --> 00:31:53,467 このハンカチも同じように ロープの後ろですよ。 413 00:31:53,467 --> 00:31:55,833 ほんとに絡め… ギュー! 414 00:31:55,833 --> 00:31:58,900 ほんとに絡めてます。 これで 3枚のハンカチが…。 415 00:31:58,900 --> 00:32:01,452 でもね ハンカチ3枚 結んだだけじゃ 416 00:32:01,482 --> 00:32:03,700 物足りないって そういう方 いるんですね。 417 00:32:03,700 --> 00:32:07,467 そういう方のために ロープも絡めちゃいましょうか。 418 00:32:14,500 --> 00:32:18,900 与太ちゃんがトリで めくりだけで 沸かせる日が来るとはねぇ…。 419 00:32:45,300 --> 00:32:51,167 東京は芝の浜に まだ河岸が ございました時分のお話で…。 420 00:32:51,167 --> 00:32:53,133 芝浜…? 421 00:32:54,100 --> 00:32:57,567 芝浜? 持ちネタだったか? 422 00:32:57,567 --> 00:32:59,567 しかも まくらなし? 423 00:33:02,100 --> 00:33:05,500 「大家さんに そう言われてね 424 00:33:05,500 --> 00:33:09,100 夢なんだって そう言ったら お前さん… 425 00:33:10,767 --> 00:33:15,200 どういう育ちしてんのか 馬鹿に素直で… 426 00:33:15,200 --> 00:33:17,967 夢になっちまったんだよ」。 427 00:33:22,667 --> 00:33:25,300 「堪忍しておくれ…。 428 00:33:25,300 --> 00:33:29,100 よかれと思って 嘘をついたんだよ。 429 00:33:29,800 --> 00:33:34,567 あの五十両… 夢じゃなかったんだよ」。 430 00:33:34,567 --> 00:33:36,833 「夢じゃなかったんだよ。 431 00:33:38,433 --> 00:33:40,867 堪忍しておくれって… 432 00:33:40,867 --> 00:33:46,567 すぐに お前さんに言おうと 思ったんだよ。 でも怖くて…」。 433 00:33:46,567 --> 00:33:49,500 お父ちゃんの落語が聞こえるよ…。 434 00:33:49,500 --> 00:33:52,333 「もし 五十両 見せたら…。 435 00:33:52,333 --> 00:33:54,398 昼過ぎになって やっと お前さん 起きてきて 436 00:33:54,428 --> 00:33:56,100 湯 行ったんじゃないか」。 437 00:33:56,100 --> 00:33:58,167 「何 言ってやんでぇ。 438 00:33:58,167 --> 00:34:01,533 おらぁ おめえ 浜 行って 五十両 拾って…」。 439 00:34:01,533 --> 00:34:03,433 「夢でも見たんじゃないかい」。 440 00:34:06,300 --> 00:34:08,633 「お手をお上げになって…。 441 00:34:09,467 --> 00:34:12,967 俺が 甲斐性がねえばかりに 442 00:34:14,367 --> 00:34:17,500 おめえに つれえ思いさしたなぁ…」。 443 00:34:19,700 --> 00:34:22,433 「俺が馬鹿だった。 444 00:34:23,500 --> 00:34:26,467 おめえは悪くねえよ。 445 00:34:26,467 --> 00:34:28,967 俺が悪かった」。 446 00:34:31,200 --> 00:34:36,200 「このとおりだ。 勘弁してくれ…」。 447 00:34:44,400 --> 00:34:46,567 「お久しぶりです…」。 448 00:34:48,167 --> 00:34:50,100 「よそう…」。 449 00:34:51,833 --> 00:34:54,067 「呑まないのかい?」。 450 00:34:58,267 --> 00:35:03,167 「また 夢になるといけねえ」。 451 00:35:10,467 --> 00:35:16,133 ありがとう~ ございました! ありがとう~! 452 00:35:16,133 --> 00:35:18,100 よっ 日本一! 453 00:35:18,100 --> 00:35:19,500 助六! 454 00:35:32,833 --> 00:35:34,533 小夏 455 00:35:34,533 --> 00:35:36,833 父ちゃんと母ちゃん どっちが好き? 456 00:35:37,600 --> 00:35:39,367 父ちゃんが好き…! 457 00:35:39,367 --> 00:35:41,433 母ちゃんが… あっ! 458 00:35:41,433 --> 00:35:43,133 ちょっと! 459 00:35:43,133 --> 00:35:44,600 どっちが好き? 460 00:35:46,900 --> 00:35:48,400 父ちゃん。 461 00:36:00,433 --> 00:36:02,167 お嬢さん…? 462 00:36:02,167 --> 00:36:04,767 お… お嬢さん! 463 00:36:06,067 --> 00:36:07,867 -救急車を! -はい! 464 00:36:10,533 --> 00:36:13,367 頑張るのよ~。 もうちょっとよ もうちょっと… はい…。 465 00:36:18,933 --> 00:36:20,533 どうなんだい! 466 00:36:20,533 --> 00:36:23,400 予定より早く… 逆子で 467 00:36:23,400 --> 00:36:27,800 もしかしたら 母体も赤ちゃんも 危ないかもしれないって…。 468 00:36:27,800 --> 00:36:29,533 八雲さんは? 469 00:36:29,533 --> 00:36:32,233 私がいても しようがないからって…。 470 00:36:32,233 --> 00:36:34,100 なんだい そりゃ…。 471 00:36:49,600 --> 00:36:53,333 名前というのは大事なもんで 472 00:36:53,333 --> 00:36:58,467 子供が生まれる。 名前をつける。 473 00:36:58,467 --> 00:37:02,567 どういうふうに 名前をつけようかなんてぇのは 474 00:37:02,567 --> 00:37:07,933 いつの時代になっても 頭を悩ますところでございまして。 475 00:37:08,933 --> 00:37:14,633 「長屋でね お子さんが お生まれになりました」。 476 00:37:20,133 --> 00:37:21,967 私はいい! 477 00:37:21,967 --> 00:37:23,333 お願い…! 478 00:37:23,333 --> 00:37:25,200 この子を… 479 00:37:25,200 --> 00:37:27,400 この子だけは助けてっ…! 480 00:37:36,200 --> 00:37:37,367 アネさん…! 481 00:37:38,600 --> 00:37:41,733 「うちの 寿限無 寿限無 482 00:37:41,733 --> 00:37:43,500 五劫の擦り切れ 483 00:37:43,500 --> 00:37:49,133 海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末…。 484 00:37:49,133 --> 00:37:55,779 パイポ パイポ パイポの シューリンガン グーリンダイ 485 00:37:55,809 --> 00:37:59,333 ポンポコピーのポンポコナーの 486 00:37:59,333 --> 00:38:03,467 長久命の長助の野郎が 487 00:38:03,467 --> 00:38:10,333 頭をぶって 大きなコブをこしらえた。 488 00:38:10,333 --> 00:38:19,267 おじさんがな 薬つけてやるから こっちぃ おいで」。 489 00:38:32,233 --> 00:38:34,067 おめでとうございま~す。 490 00:38:35,533 --> 00:38:37,267 アネさん…。 491 00:38:37,267 --> 00:38:39,267 与太…。 492 00:38:41,933 --> 00:38:44,233 オイラの子だ…。 493 00:38:51,267 --> 00:38:53,300 与太。 494 00:38:54,967 --> 00:38:57,300 一緒になろう。 495 00:38:58,733 --> 00:39:00,467 いいのかい…? 496 00:39:00,467 --> 00:39:05,267 私 与太と この子を… 497 00:39:06,200 --> 00:39:09,200 助六の孫を育てたい。 498 00:39:14,467 --> 00:39:18,467 べらぼうめ… 合点承知だぃ…。 499 00:39:21,033 --> 00:39:23,700 この子の名前 500 00:39:23,700 --> 00:39:26,667 信じるの 信をつけたい。 501 00:39:27,833 --> 00:39:31,967 父ちゃんの名前から ひと文字もらいたい。 502 00:39:34,400 --> 00:39:38,100 分かった… 分かったよ…。 503 00:39:38,967 --> 00:39:42,667 信じるのが いちばんだって 504 00:39:42,667 --> 00:39:46,300 父ちゃんの親が つけたんだと思う…。 505 00:39:49,367 --> 00:39:51,500 信ちゃん…。 506 00:39:54,667 --> 00:39:56,733 よぉ! 信坊! 507 00:40:00,933 --> 00:40:04,800 オイラが信坊の… 父ちゃんだぃ! 508 00:40:09,467 --> 00:40:12,467 泣き虫な父ちゃんだね。 509 00:40:20,833 --> 00:40:22,967 師匠… 510 00:40:22,967 --> 00:40:26,700 オイラ アネさんと 所帯を持ちたいです。 511 00:40:28,533 --> 00:40:30,167 いつの間に…? 512 00:40:30,167 --> 00:40:32,000 なんで? 513 00:40:33,033 --> 00:40:36,367 アタシに断ることじゃあないだろ。 514 00:40:39,300 --> 00:40:43,333 あの子が どう生きようと自由。 515 00:40:43,333 --> 00:40:48,300 けどね お前さんのことは 516 00:40:48,300 --> 00:40:53,425 どこに出したって 恥ずかしくない弟子に育て上げた 517 00:40:53,455 --> 00:40:56,000 …ってぇ自負は ありますよ。 518 00:41:01,500 --> 00:41:05,400 もうひとつ お願いがあります。 519 00:41:07,667 --> 00:41:12,467 また このうちに ごやっかいに なっても よろしいでしょうか。 520 00:41:13,667 --> 00:41:16,933 オイラ 家族になりてぇんだ。 521 00:41:16,933 --> 00:41:21,367 ずっと一人で生きてきた アネさんと 師匠の。 522 00:41:22,133 --> 00:41:24,233 それにはさ… 523 00:41:26,400 --> 00:41:28,767 また みんなで 一緒に暮らさなくっちゃ。 524 00:41:28,767 --> 00:41:33,533 助六を名乗ったからって 代わりになんか なれっこねぇ。 525 00:41:33,533 --> 00:41:37,867 でも いつか 名前が なじみゃ 526 00:41:37,867 --> 00:41:42,600 二人の中の助六を きっと変えられる。 527 00:41:51,100 --> 00:41:53,467 好きにするさ…。 528 00:41:55,467 --> 00:41:57,067 はい! 529 00:42:23,267 --> 00:42:27,333 少しだけ 思い出した…。 530 00:42:30,467 --> 00:42:33,300 25年前 531 00:42:33,300 --> 00:42:36,400 父ちゃんと母ちゃんが 死んだ夜のこと。 532 00:42:36,400 --> 00:42:38,533 師匠。 533 00:42:41,833 --> 00:42:46,800 助六さんと みよ吉さんが 亡くなった あの夜のこと…。 534 00:42:48,200 --> 00:42:52,400 オッサンの話は うそなんじゃないかって…。 535 00:42:52,400 --> 00:42:59,100 このまま ずっと 本当のことを 伏せたままでいいんでしょうか…。 536 00:43:05,233 --> 00:43:09,967 知りたいんだ… 本当のことを。