1 00:00:08,901 --> 00:00:12,201 (前座)お客さん 来られますかね…。 2 00:00:13,772 --> 00:00:17,772 (与太郎)まだ 半分も 埋まってねえなんて…。 3 00:00:22,915 --> 00:00:25,584 オイラのせいだ…。 4 00:00:25,584 --> 00:00:29,254 アネさん オイラ その子の父親になれねえか? 5 00:00:29,254 --> 00:00:32,591 助六の名を 継がせて下さい。 6 00:00:32,591 --> 00:00:36,462 (八雲)名前なんかより 芸だよ。 7 00:00:36,462 --> 00:00:41,934 お前さん そろそろ 手前の落語ってのを見つけねえと。 8 00:00:41,934 --> 00:00:43,869 週刊誌? 9 00:00:43,869 --> 00:00:47,272 (アキコ)与太郎さん どうなっちゃうんでしょう…。 10 00:00:47,272 --> 00:00:51,610 (萬月)分かったよ 小夏ちゃんの子供の父親。 11 00:00:51,610 --> 00:00:56,910 オイラが昔いた組の… 組長? 12 00:00:58,484 --> 00:01:01,420 (松田)いやぁ… ハハハッ あっ おはようございます。 13 00:01:01,420 --> 00:01:03,555 おはようございます。 松田さん。 14 00:01:03,555 --> 00:01:06,892 今日は 師匠の 大事なお座敷なんじゃないですか? 15 00:01:06,892 --> 00:01:11,892 それが 昨日から 立て続けに キャンセルになってしまって。 16 00:01:13,765 --> 00:01:17,536 もう 気にするの やめましょうよ。 17 00:01:17,536 --> 00:01:23,242 もし 人が集まらなくても それは この雨のせいですよ。 18 00:01:23,242 --> 00:01:26,578 ・~(出囃子) 19 00:01:26,578 --> 00:01:31,450 <余計なことは考えるな。 集中しろ…。・ 20 00:01:31,450 --> 00:01:36,255 オイラの落語… オイラの落語…> 21 00:01:36,255 --> 00:01:38,190 よっ! 22 00:01:38,190 --> 00:01:42,190 (まばらな拍手) 23 00:01:45,264 --> 00:01:48,167 (拍手) 24 00:01:48,167 --> 00:01:53,605 本日は お足元の悪い中 誠に ありがとうございます。 25 00:01:53,605 --> 00:01:57,943 え~ こんな日は アタシも 家で道楽をしていたいもんですが…。 26 00:01:57,943 --> 00:02:00,846 ハハハハッ…。 27 00:02:00,846 --> 00:02:04,550 え~ 男の道楽は三道楽・ 28 00:02:04,550 --> 00:02:08,887 飲む 打つ 買う なんてぇことを言いましてね。 29 00:02:08,887 --> 00:02:13,759 「錦の褌? いいねぇ そらぁ。 えっ!・ 30 00:02:13,759 --> 00:02:20,232 あんなもん 褌に締めてごらんよ またぐらぁ 陽気でいいやねぇ」。 31 00:02:20,232 --> 00:02:24,102 さあ 宵のうちは 芸者 太鼓持ちを上げて どんちゃん騒ぎ。 32 00:02:24,102 --> 00:02:27,105 (小夏)与太郎が気になって。 どう? 33 00:02:27,105 --> 00:02:30,876 まるでダメです…。 やっぱり…。 34 00:02:30,876 --> 00:02:33,579 「かっぽれでも踊ろうじゃねえか!」。 35 00:02:33,579 --> 00:02:36,915 <落ち着け 自分の落語をやりゃいいんだ…。・ 36 00:02:36,915 --> 00:02:40,786 オイラの落語… オイラの落語…> 37 00:02:40,786 --> 00:02:44,590 「あっ ねえさんがた! 三味線でも頼むぜ!」。 38 00:02:44,590 --> 00:02:51,590 さあってえますと 連中が 裸になりやして~! 39 00:02:53,265 --> 00:02:56,935 よ~! おいとな~ よいよい! 40 00:02:56,935 --> 00:03:07,546 ・~(与太郎の歌声) 41 00:03:07,546 --> 00:03:10,215 なんてことを…。 42 00:03:10,215 --> 00:03:12,884 あのバカ…。 43 00:03:12,884 --> 00:03:22,894 ・~ 44 00:03:22,894 --> 00:03:25,230 すいませんでした! 45 00:03:25,230 --> 00:03:29,568 なんでぇ このバカは 来て いきなり。 46 00:03:29,568 --> 00:03:33,438 師匠のお座敷のキャンセル オイラのせいです。 47 00:03:33,438 --> 00:03:39,138 落ち込んで 刺青が消えるわけでもなし 何を気にしてんだか。 48 00:03:40,912 --> 00:03:46,212 背中の彫り物 見せてみな。 49 00:03:49,588 --> 00:03:53,258 いや… みっともねえ古傷で…。 50 00:03:53,258 --> 00:04:00,258 芸人なんて 見られてナンボだろ。 何を隠すことがあるんだい。 51 00:04:29,895 --> 00:04:37,595 筋彫りだけど 見事な鯉金じゃねえか。 52 00:04:43,442 --> 00:04:46,445 お前さんは・ 53 00:04:46,445 --> 00:04:51,917 過去と しっかり向き合わねえとならねえ。 54 00:04:51,917 --> 00:04:56,588 決別じゃなくて 抱えて生きろ。 55 00:04:56,588 --> 00:05:00,258 罪を忘れるな。 56 00:05:00,258 --> 00:05:07,532 それが 人間の業ってもんさ。 57 00:05:07,532 --> 00:05:16,541 ・~ 58 00:05:16,541 --> 00:05:19,444 ありがとうございます…! 59 00:05:19,444 --> 00:05:23,215 さあ 一杯 飲みましょうか。 60 00:05:23,215 --> 00:05:27,552 いえ すいませんけど 失礼させて頂きます。 えっ? 61 00:05:27,552 --> 00:05:30,455 飲むより 稽古がしたいんで! 62 00:05:30,455 --> 00:05:32,424 サイナラ! 63 00:05:32,424 --> 00:05:37,562 ・~ 64 00:05:37,562 --> 00:05:40,862 (戸の開閉音) 65 00:05:44,236 --> 00:05:59,785 ・~ 66 00:05:59,785 --> 00:06:02,721 ・(与太郎が稽古をする声) 元気になったみたいだね。 67 00:06:02,721 --> 00:06:06,491 かわいそうなぐらい落ち込んでたけど よかった よかった。 68 00:06:06,491 --> 00:06:08,427 「すこ~しばかり違うんでぇ」。 69 00:06:08,427 --> 00:06:11,396 「何を 黙って聞いてりゃ 増長して ごたくが過ぎらぁ!・ 70 00:06:11,396 --> 00:06:15,534 こちとら でけえ声ってのは 地声なもんで まだまだ せり上がらぁ。・ 71 00:06:15,534 --> 00:06:19,204 蛸の頭 あんにゃもんにゃ」。 いよっ 大棟りょう! 72 00:06:19,204 --> 00:06:22,874 兄さん! 「大工調べ」? はい! 73 00:06:22,874 --> 00:06:26,211 よいしょ! あ~ スッキリした! 74 00:06:26,211 --> 00:06:29,114 相変わらずの声のでかさだね。 75 00:06:29,114 --> 00:06:32,551 なんだって そんな大声で お稽古すんだい? 76 00:06:32,551 --> 00:06:36,421 師匠に教わったんす! はじめは とにかく 腹の底から声を出せって。 77 00:06:36,421 --> 00:06:39,891 そうすりゃ 客席に 聞こえねえってこともなくなるし・ 78 00:06:39,891 --> 00:06:42,561 驚いて 顔を覚えて下さる。 79 00:06:42,561 --> 00:06:45,897 声の大小 落語の よしあしは やってりゃ そのうち分かるってさ。 80 00:06:45,897 --> 00:06:49,568 でも そんなの 前座のするこったろ。 いや はじめに教わったんで・ 81 00:06:49,568 --> 00:06:52,471 うれしくって なかなか抜けねぇんで。 82 00:06:52,471 --> 00:06:55,907 それが あの 今の落語の啖呵ってのかい? 83 00:06:55,907 --> 00:06:58,810 どんな意味なんだい? さあ? 84 00:06:58,810 --> 00:07:03,515 知らないで やってんのかい? 教わったのを しゃべってるだけでぇ。 85 00:07:03,515 --> 00:07:06,852 ハハッ あきれたねぇ。 86 00:07:06,852 --> 00:07:11,723 あっ そういえば 調べてきたよ。 うん? 小夏ちゃんの子供の父親。 87 00:07:11,723 --> 00:07:14,192 おぉ~! 88 00:07:14,192 --> 00:07:17,863 小夏ちゃん 高校時代は不良でならしてて・ 89 00:07:17,863 --> 00:07:21,199 一度 やっかいな もめ事が起きた時に・ 90 00:07:21,199 --> 00:07:24,870 八雲師匠が乗り出していって おさめたことがある。 91 00:07:24,870 --> 00:07:29,741 その時に挨拶をした相手が その人さ。 92 00:07:29,741 --> 00:07:32,441 親分ですか…? 93 00:07:35,514 --> 00:07:40,218 オッサンは? ああ… お出かけになりました。・ 94 00:07:40,218 --> 00:07:43,121 晩ごはん いらないって。・ 95 00:07:43,121 --> 00:07:46,121 もうすぐ出来ますからね。 96 00:07:50,862 --> 00:07:53,565 ・(呼び出し音) 97 00:07:53,565 --> 00:07:58,236 あっ 女将さん? 私。 98 00:07:58,236 --> 00:08:02,507 やっぱり あの人には ちゃんと話しておきたい。 99 00:08:02,507 --> 00:08:07,178 (萬月)…で どうやら 親分さんが よそと もめ事になりそうになった時に・ 100 00:08:07,178 --> 00:08:12,517 八雲師匠が お座敷に出て 相手方が 大いに喜んでくれて 事なきを得た。 101 00:08:12,517 --> 00:08:16,388 それ以来 八雲師匠のことも 小夏ちゃんのことも・ 102 00:08:16,388 --> 00:08:20,191 親分さんは ずいぶん気に入ったようなんだ。・ 103 00:08:20,191 --> 00:08:24,062 それで いろいろ調べると ちょうど 小夏ちゃんが妊娠したはずの時期に・ 104 00:08:24,062 --> 00:08:28,533 親分さんは箱根へ行ってて 小夏ちゃんも その宿に顔を出している。・ 105 00:08:28,533 --> 00:08:31,202 店の仲間もいたそうだが・ 106 00:08:31,202 --> 00:08:35,202 小夏ちゃんと親分が できてるって 信じてるやつまでいる。 107 00:08:36,875 --> 00:08:38,810 分かった。 108 00:08:38,810 --> 00:08:43,548 お前! あの親分さんが どういう人か…。 109 00:08:43,548 --> 00:08:46,885 兄さんは テレビに出る人間だ。 関わっちゃいけねえ。 110 00:08:46,885 --> 00:08:49,554 あとは オイラの問題だ。 そもそも お前・ 111 00:08:49,554 --> 00:08:53,425 どうして ヤクザやめて 噺家になった? あの親分さんと 昔 何があったんだ? 112 00:08:53,425 --> 00:08:56,895 昔話なんて こりごりなんだい。 113 00:08:56,895 --> 00:08:59,230 おい… 待て! 114 00:08:59,230 --> 00:09:02,530 表現者たるもの 隠し事なんかするんじゃない! 115 00:09:06,504 --> 00:09:11,804 隠し事のねえ人間なんて 色気がねえ。 116 00:09:16,514 --> 00:09:19,514 ・(小夏)失礼します。 117 00:09:26,191 --> 00:09:30,061 (組長)久しぶりだな 小夏。 118 00:09:30,061 --> 00:09:33,064 お客さん? 119 00:09:33,064 --> 00:09:37,535 まあ 構うな。 今日は どうしたい? 120 00:09:37,535 --> 00:09:42,235 お願いがあって来ました。 まあ 座れ。 121 00:09:49,147 --> 00:09:54,085 ・~ 122 00:09:54,085 --> 00:09:58,556 ・(小夏)私のおなかの 子供のことです。 123 00:09:58,556 --> 00:10:08,233 ・~ 124 00:10:08,233 --> 00:10:10,902 女将! 125 00:10:10,902 --> 00:10:14,239 (お栄)なんだい? 聞きたいことがある。 126 00:10:14,239 --> 00:10:18,910 親分とアネさんのことだ。 今はダメだよ。 127 00:10:18,910 --> 00:10:21,579 来てんのかい? 128 00:10:21,579 --> 00:10:24,482 ちょいと お待ちよ! 小夏も来てる…。 129 00:10:24,482 --> 00:10:28,920 (兄貴)おう。 兄貴…。 久しぶりだな。 130 00:10:28,920 --> 00:10:32,590 テレビじゃ ちょいちょい見てたけど 見ねえうちに なんだ この頭。 131 00:10:32,590 --> 00:10:35,493 奥に いるんだね? 132 00:10:35,493 --> 00:10:38,263 小夏ちゃんか? 133 00:10:38,263 --> 00:10:41,933 ずいぶん見知った仲なんだな? えっ? 134 00:10:41,933 --> 00:10:45,603 お前 何しに来た? ちょいと挨拶さしてもらいてえな。 135 00:10:45,603 --> 00:10:49,274 オイラ 大昔に 一回きりしか 会ったことねえんだ。 136 00:10:49,274 --> 00:10:52,177 やめろ…! 与太ちゃん! 137 00:10:52,177 --> 00:10:55,947 おめえみたいな下っ端が 会って話せるような人じゃねえぞ こら! 138 00:10:55,947 --> 00:11:00,647 下っ端じゃねえ! じき 真打でぇ! 139 00:11:06,558 --> 00:11:09,461 失礼します! 140 00:11:09,461 --> 00:11:13,898 突然の ご無礼 ご容赦下さい。 141 00:11:13,898 --> 00:11:17,769 師匠が いつも お世話になっております。 不肖 私も 少なからず・ 142 00:11:17,769 --> 00:11:21,239 昔に お世話になりまして 多少のご縁がございますんでぇ。 143 00:11:21,239 --> 00:11:24,142 ぶしつけながら 浴衣風情の はしたねえ格好のまま・ 144 00:11:24,142 --> 00:11:27,579 ご挨拶に上がらさせて頂きました。 145 00:11:27,579 --> 00:11:30,248 何しに…。 146 00:11:30,248 --> 00:11:34,586 アネさんこそ どうして ここに いるんだい? 147 00:11:34,586 --> 00:11:38,256 どうだっていいでしょ…。 148 00:11:38,256 --> 00:11:41,256 泣いてたね? 149 00:11:42,927 --> 00:11:45,830 ・(組長)いい挨拶だ。・ 150 00:11:45,830 --> 00:11:50,268 会いたかったよ 与太ちゃん。 151 00:11:50,268 --> 00:11:53,968 まあ いいや こっち来いよ。 152 00:11:59,277 --> 00:12:03,882 何回か 落語を 聞きに行ったことあるんだよ。 153 00:12:03,882 --> 00:12:07,752 八雲師匠との親子会だったか。 154 00:12:07,752 --> 00:12:13,224 めちゃくちゃだったけど 古くさくて いい落語だったなぁ。 155 00:12:13,224 --> 00:12:16,895 見て頂いてたなんて お恥ずかしいかぎりで。 156 00:12:16,895 --> 00:12:20,895 オイラが話をさせて頂くのは 10年以上ぶりです。 157 00:12:25,904 --> 00:12:28,807 顔も知らねえ幹部の代わりに・ 158 00:12:28,807 --> 00:12:32,243 オツトメ行ってこいって言いつけられた あの日以来で。 159 00:12:32,243 --> 00:12:34,943 兄貴 勘弁してくれ…! 160 00:12:36,581 --> 00:12:40,251 親分っつうのは 親も同然。 おめえ 親が どうなってもいいのか? 161 00:12:40,251 --> 00:12:44,122 兄貴… 頼むよ! がたがた言ってんじゃねえ! 162 00:12:44,122 --> 00:12:47,125 いいかげん聞きわけろ! 163 00:12:47,125 --> 00:12:50,895 怖くって ブルブル震えながら 引き受けたんす。 164 00:12:50,895 --> 00:12:54,265 あのころは 今以上にバカでした。 165 00:12:54,265 --> 00:12:58,136 そしたらね 刑務所にいるうちに・ 166 00:12:58,136 --> 00:13:02,540 たった一人の おやじが 病気で死んじまったんです。 167 00:13:02,540 --> 00:13:05,443 ガキのころに捨てられて・ 168 00:13:05,443 --> 00:13:09,743 親らしいことは 何一つ してもらっちゃいませんでしたけど。 169 00:13:11,883 --> 00:13:15,220 刑務所に入ろうが入るまいが・ 170 00:13:15,220 --> 00:13:19,557 どっちにしろ 後悔まみれの人生になりました。 171 00:13:19,557 --> 00:13:26,231 10代のころは 居場所がなくて 誘われるまま チンピラやって・ 172 00:13:26,231 --> 00:13:29,901 だけど…・ 173 00:13:29,901 --> 00:13:32,570 背中の彫りもんが・ 174 00:13:32,570 --> 00:13:36,241 今の人生に 邪魔でしょうがねえっていうのをね・ 175 00:13:36,241 --> 00:13:39,143 そんなの どうってことねえ・ 176 00:13:39,143 --> 00:13:43,114 そのまま生きりゃいいじゃねえかって 思わせてくれたのが・ 177 00:13:43,114 --> 00:13:45,917 落語です。 178 00:13:45,917 --> 00:13:50,588 ・あん時は ボコボコにされて 怖くて ブルブル震えてたのに・ 179 00:13:50,588 --> 00:13:54,259 今や こうやって サシで しゃべらしてもらえてる。 180 00:13:54,259 --> 00:13:57,929 生きてりゃあ こんな変なことも起こります。 181 00:13:57,929 --> 00:14:01,799 どうも おめえに ケンカ売られてる気がしてならねえ。 182 00:14:01,799 --> 00:14:04,736 オツトメ行ってくれたことにゃ 感謝してる。・ 183 00:14:04,736 --> 00:14:07,739 八雲師匠にも ずいぶん世話んなってる。・ 184 00:14:07,739 --> 00:14:11,476 だから 無傷で 足抜けさせてやったんじゃねえか。 185 00:14:11,476 --> 00:14:14,412 それで トントンじゃねえのか? 186 00:14:14,412 --> 00:14:18,216 アネさん! ちょっと! 187 00:14:18,216 --> 00:14:21,119 こうなったら はっきりさせとこうぜ。 188 00:14:21,119 --> 00:14:25,419 俺たちは 結婚します! 189 00:14:27,892 --> 00:14:31,229 なに言ってんの…! だから おなかの子のこと・ 190 00:14:31,229 --> 00:14:34,132 はっきりさせてもらわねえと どうにも気が済まねえんですよ。 191 00:14:34,132 --> 00:14:36,901 与太 やめな! い~や 言わせてもらう。 192 00:14:36,901 --> 00:14:39,601 いいから やめて! 嫌だ! 193 00:14:42,573 --> 00:14:47,245 頭 冷やせ クソガキ! 小夏が嫌がってんだろうが!・ 194 00:14:47,245 --> 00:14:50,245 てめえの正義で突っ走るんじゃねえ! 195 00:14:52,116 --> 00:14:55,119 お願いです 与太を許して…。 196 00:14:55,119 --> 00:14:59,590 ごめんなさい 迷惑かけて…。 私のせいです。 197 00:14:59,590 --> 00:15:02,890 ごめん… ごめんなさい。 198 00:15:04,862 --> 00:15:07,765 小夏…。 (小夏)ごめんなさい。 199 00:15:07,765 --> 00:15:12,537 やい やい やい やい やい! てめえら 勝手に解決すんな! 200 00:15:12,537 --> 00:15:15,537 オイラが納得いかねえんだよ! 201 00:15:17,208 --> 00:15:20,878 おい! すいません 失礼します。・ 202 00:15:20,878 --> 00:15:25,216 汚ねえナリで近寄るな。 こんなとこで死にてえか? 203 00:15:25,216 --> 00:15:29,887 死ぬわけにゃいかねえ。 師匠と約束したんだ。 204 00:15:29,887 --> 00:15:34,225 ・(組長)なに ごちゃごちゃ言ってんだ。 (兄貴)すいません。 205 00:15:34,225 --> 00:15:40,925 この際だ なんでも言ってみろ。 どうするかは それから考えてやる。 206 00:15:46,237 --> 00:15:49,907 よし 言ってやらぁ! てめえなんざ丸太ン棒でぇ! 207 00:15:49,907 --> 00:15:52,810 目も鼻もねえ 血も涙もねえ 義理人情を知らねえ・ 208 00:15:52,810 --> 00:15:55,580 のっぺらぼうな野郎だから 丸太ン棒ってんでぇっ。 209 00:15:55,580 --> 00:15:58,249 保助藤十郎 ちんけえとう 株っかじり 芋っぽりめ・ 210 00:15:58,249 --> 00:16:00,852 てめえっちになんか言われてなぁ 頭ぁ下げるような・ 211 00:16:00,852 --> 00:16:03,755 お兄いさんと お兄いさんの出来が すこ~しばかり違うんでぇっ。 212 00:16:03,755 --> 00:16:06,524 何を! 黙って聞いてりゃ増長して ごたくが過ぎらぁ! 213 00:16:06,524 --> 00:16:09,193 こちとら でけえ声ってのは 地声なもんでぇ・ 214 00:16:09,193 --> 00:16:11,529 まだまだ せり上がらぁ! 215 00:16:11,529 --> 00:16:14,866 この蛸の頭 あんにゃもんにゃあめえ! 216 00:16:14,866 --> 00:16:18,536 誰が なんと言おうと アネさんの おなかの子は オイラの子でぇ! 217 00:16:18,536 --> 00:16:21,439 正真正銘 天地くるりと 入れかわっても 譲らねぇ! 218 00:16:21,439 --> 00:16:24,876 いいか あとから くれっつったって ぜってぇあげねえど! 219 00:16:24,876 --> 00:16:26,811 な~んも疑うことはねえ。 220 00:16:26,811 --> 00:16:31,111 だから このハナシは 今日かぎり これっきりで おしめえだ! 221 00:16:36,487 --> 00:16:41,426 …てぇのが アタクシの言い分でございます。 222 00:16:41,426 --> 00:16:45,126 どうも お粗末さまでございました。 223 00:16:50,568 --> 00:16:53,568 啖呵売りか…。 224 00:16:55,440 --> 00:17:01,846 でけえ声で つるつる出やがるから 全く聞きほれちまった。 225 00:17:01,846 --> 00:17:05,183 商売道具 出されちゃなぁ。 226 00:17:05,183 --> 00:17:10,855 ・~ 227 00:17:10,855 --> 00:17:13,855 精進してきたんだな。 228 00:17:17,195 --> 00:17:20,531 いい噺家になった。 229 00:17:20,531 --> 00:17:34,879 ・~ 230 00:17:34,879 --> 00:17:40,551 なんてこと してくれたの? 余計な詮索するなって言ったでしょ。 231 00:17:40,551 --> 00:17:43,888 だけど… 黙ってられなかったんだ。 232 00:17:43,888 --> 00:17:48,759 アンタ バカなの!? 親分さんの怖さは知ってるでしょ? 233 00:17:48,759 --> 00:17:53,564 よ~く知ってるよ。 見ツくれよ これ。 234 00:17:53,564 --> 00:17:58,436 ・~ 235 00:17:58,436 --> 00:18:02,136 オイラは やっぱり 与太郎だね。 236 00:18:04,842 --> 00:18:12,717 親分さんには また 返しきれない恩義を作っちまいました。 237 00:18:12,717 --> 00:18:17,717 しかし あの与太郎 さすが 師匠の一番弟子だ。 238 00:18:20,391 --> 00:18:23,691 あのバカですか…。 239 00:18:25,530 --> 00:18:28,866 うれしそうだね。 240 00:18:28,866 --> 00:18:34,205 自分の落語ってぇのが 見えてきたのかもしれません。 241 00:18:34,205 --> 00:18:39,076 弟子ってぇのは 勝手に育つもんで…。 242 00:18:39,076 --> 00:18:44,215 ・~ 243 00:18:44,215 --> 00:18:50,087 あの人には… 私が むちゃなお願い しただけなんだから。 244 00:18:50,087 --> 00:18:53,224 アネさんが そうしたくって してるんだね? 245 00:18:53,224 --> 00:18:56,224 全部 覚悟して やってること。 246 00:18:59,096 --> 00:19:03,834 なら もう話してくれなくていい。 247 00:19:03,834 --> 00:19:07,705 世の中には 言葉にしねえ方がいいこともある。 248 00:19:07,705 --> 00:19:11,175 それが 人の和ってやつさ。 249 00:19:11,175 --> 00:19:16,847 人に なんて言われたって 自分で決めたことだし。 250 00:19:16,847 --> 00:19:22,186 でも… ほんとは怖いの。 251 00:19:22,186 --> 00:19:25,186 オイラといりゃあ 大丈夫! 252 00:19:27,058 --> 00:19:30,061 ありがと。 253 00:19:30,061 --> 00:19:35,061 アンタといたら 不幸だって思ってんのも バカバカしくなるもんね。 254 00:19:37,535 --> 00:19:40,535 一緒になってくれるね? 255 00:19:43,407 --> 00:19:48,546 よ~し! ハハハハッ アネさん! 256 00:19:48,546 --> 00:19:51,882 やっぱ やめる。 え~っ! 257 00:19:51,882 --> 00:19:55,553 アンタとじゃ あまりにも不安すぎんのよ。 258 00:19:55,553 --> 00:19:59,890 まだるっこしいな アネさんは! すぐ悪い方に考える! 259 00:19:59,890 --> 00:20:02,793 オイラに任しときゃ大丈夫だって! 260 00:20:02,793 --> 00:20:06,230 それは アンタの あわれみ。 同情なんて勘弁して。 261 00:20:06,230 --> 00:20:10,101 あわれみなんかじゃねえよぉ。 なんの情だか よく分かんねえけどよ・ 262 00:20:10,101 --> 00:20:14,105 とにかく アネさんは オイラにとって大事な人だ。 263 00:20:14,105 --> 00:20:18,809 ・~ 264 00:20:18,809 --> 00:20:21,579 元ヤクザのくせに。 265 00:20:21,579 --> 00:20:24,248 よく言うよ 元不良のくせに。 266 00:20:24,248 --> 00:20:26,183 刑務所帰りのくせに。 267 00:20:26,183 --> 00:20:29,120 誰の子か分からねえ子供 生もうとしてるくせに! 268 00:20:29,120 --> 00:20:31,589 あっ イッ…! バカ! 269 00:20:31,589 --> 00:20:35,259 アンタとなんか 絶対 結婚しない! 270 00:20:35,259 --> 00:20:40,131 あんだよ それっ! オイラの何がダメなんだよ! 271 00:20:40,131 --> 00:20:43,601 それに アネさん 今 ありがとうって! 272 00:20:43,601 --> 00:20:46,901 言ってないよ! 夢でも見てたんじゃないの? 273 00:20:48,939 --> 00:20:52,276 ゆ… 夢って…。 274 00:20:52,276 --> 00:20:54,612 ・(客の笑い声) 275 00:20:54,612 --> 00:20:56,947 もうちょっとですねぇ。 276 00:20:56,947 --> 00:20:59,850 与太郎って名前とも もうすぐ お別れして・ 277 00:20:59,850 --> 00:21:02,553 来週からは 助六ってことで。 278 00:21:02,553 --> 00:21:06,424 どうも 自分でも なじみが ねえんですが 今日 ここにいる皆さんは・ 279 00:21:06,424 --> 00:21:11,228 来週 オイラの真打披露興行 来てくれないと 化けて出るよっ! 280 00:21:11,228 --> 00:21:14,565 (松田)手ぬぐいの発注は これで。 281 00:21:14,565 --> 00:21:19,437 あっ それから これは パーティーの段取りです。 282 00:21:19,437 --> 00:21:23,240 見ておいて下さいね。 283 00:21:23,240 --> 00:21:26,577 師匠とアネさんは 元気かい? 284 00:21:26,577 --> 00:21:30,277 ええ もう おなかが こんなに。 285 00:21:31,916 --> 00:21:37,254 そういえば 与太郎さん 最近 あまり来て下さらないんですねぇ…。 286 00:21:37,254 --> 00:21:41,926 披露目の準備で バタバタしちまって。 くれぐれも ご無理ないように。 287 00:21:41,926 --> 00:21:46,626 おう… じゃあ また。 288 00:21:53,938 --> 00:22:08,638 ・~ 289 00:22:18,562 --> 00:22:21,862 春の雪だねぇ…。 290 00:22:30,574 --> 00:22:33,911 (ため息) 291 00:22:33,911 --> 00:22:39,611 だらしない… 風邪ひくよ。 292 00:23:10,548 --> 00:23:14,848 四季のあくびというのがありますなぁ。 293 00:23:17,421 --> 00:23:21,192 春のあくびなんてぇのは・ 294 00:23:21,192 --> 00:23:25,492 これは一人旅でございますな。 295 00:23:27,097 --> 00:23:30,568 田舎道なんか 歩いておりまして…。 296 00:23:30,568 --> 00:23:34,238 [ 回想 ] これは一人旅でございますな。 297 00:23:34,238 --> 00:23:37,575 田舎道かなんか歩いておりまして・ 298 00:23:37,575 --> 00:23:42,913 麦畑が青々して 菜の花が黄色く咲き乱れている。 299 00:23:42,913 --> 00:23:45,816 山は霞の帯を締め・ 300 00:23:45,816 --> 00:23:50,788 雲の中では ヒバリが さえずっていようというような。 301 00:23:50,788 --> 00:23:55,493 陽炎の立ち上る田圃道か何かを 歩いておりますと・ 302 00:23:55,493 --> 00:23:59,193 自然は 眠気も もよおして。 303 00:24:01,198 --> 00:24:04,101 「あ~あ」。 304 00:24:04,101 --> 00:24:09,540 なに!? お前さんが はなさねえんだろ。 305 00:24:09,540 --> 00:24:11,840 やだ! 306 00:24:18,215 --> 00:24:21,118 子供の時分は・ 307 00:24:21,118 --> 00:24:25,556 この噺をしたら 寝入っちまったもんだがねぇ。 308 00:24:25,556 --> 00:24:28,225 なんで 昼から居んのよ。 309 00:24:28,225 --> 00:24:31,562 与太の披露目の段取りで・ 310 00:24:31,562 --> 00:24:35,232 すっかり くたびれちまってねぇ。 311 00:24:35,232 --> 00:24:38,135 年寄りみたい。 312 00:24:38,135 --> 00:24:44,575 お前さん さんざっぱら いきまいて・ 313 00:24:44,575 --> 00:24:49,246 ついぞ アタシを殺しちゃくれねえなぁ。 314 00:24:49,246 --> 00:24:52,917 殺したいわよ 今も…。 315 00:24:52,917 --> 00:24:55,819 一生 許さない。・ 316 00:24:55,819 --> 00:24:58,589 けど アンタを殺したら・ 317 00:24:58,589 --> 00:25:02,860 この子に アンタの落語を 聞かせられなくなるでしょ。 318 00:25:02,860 --> 00:25:05,860 それは嫌なの。 319 00:25:07,531 --> 00:25:12,870 ずぅ~っと待ってるんだよ。 320 00:25:12,870 --> 00:25:21,545 お前さんが アタシを殺してくれんのを。 321 00:25:21,545 --> 00:25:28,245 お前がいたから 手前じゃできなかった。 322 00:25:29,887 --> 00:25:37,187 今度は その腹のガキのために 死ねねえってぇのかい。 323 00:25:38,896 --> 00:25:45,196 アタシ… 怖い… 生むのが。 324 00:25:47,237 --> 00:25:54,912 もう ずっと 与太が来たら 部屋から出やしないね。 325 00:25:54,912 --> 00:25:58,912 ケンカでも してんのかい。 326 00:26:03,187 --> 00:26:08,187 プロポーズされたの 与太に。 327 00:26:10,861 --> 00:26:13,764 うれしかった。・ 328 00:26:13,764 --> 00:26:16,734 でも 断った…。 329 00:26:16,734 --> 00:26:26,410 与太を巻き込んで… 私 母さんと 同じになってるんじゃないかって…。 330 00:26:26,410 --> 00:26:31,110 私に流れる血が そうさせるのかと思うと…。 331 00:26:34,084 --> 00:26:38,889 (みよ吉)一緒に… 死んじゃおっか。 332 00:26:38,889 --> 00:26:42,760 すまん 坊… 頼んだよ。 333 00:26:42,760 --> 00:26:58,909 ・~ 334 00:26:58,909 --> 00:27:01,812 なんか言ってよ…。 335 00:27:01,812 --> 00:27:07,718 ・~ 336 00:27:07,718 --> 00:27:11,718 与太の真打披露…。 337 00:27:13,857 --> 00:27:17,728 初日は 必ず見に来なさいよ。 338 00:27:17,728 --> 00:27:27,204 ・~ 339 00:27:27,204 --> 00:27:30,107 行けるもんかい…。 340 00:27:30,107 --> 00:27:44,555 ・~ 341 00:27:44,555 --> 00:27:48,555 (ノック) はい! 342 00:27:50,427 --> 00:27:53,564 師匠! どうしたんすかぃ!? 343 00:27:53,564 --> 00:27:55,864 ああ… ちょっ…! 344 00:28:02,840 --> 00:28:06,176 あっ 今 お茶を…。 345 00:28:06,176 --> 00:28:10,047 初めて来たけど…・ 346 00:28:10,047 --> 00:28:14,047 なんだか懐かしいねぇ。 347 00:28:16,820 --> 00:28:23,527 ずっと昔 こんな部屋で アタシは・ 348 00:28:23,527 --> 00:28:27,197 「死神」を習った…。 349 00:28:27,197 --> 00:28:33,197 アタシが まだ 菊比古ってぇた時分だ。 350 00:28:35,873 --> 00:28:39,743 来週は真打披露。 351 00:28:39,743 --> 00:28:46,216 真打になったら もう お前さんに 稽古なんざ つけないよ。 352 00:28:46,216 --> 00:28:51,889 えっ…? 一つ 教え忘れてた。 353 00:28:51,889 --> 00:28:55,559 最後の稽古だ。 354 00:28:55,559 --> 00:28:59,259 一度っきゃあ やらねえよ。 355 00:29:01,832 --> 00:29:05,169 (ぶつぶつ つぶやく声) 356 00:29:05,169 --> 00:29:08,505 最後って…? (ぶつぶつ つぶやく声) 357 00:29:08,505 --> 00:29:13,205 師匠…。 今 思い出してんだよ。 358 00:29:24,521 --> 00:29:31,395 東京は芝の浜に まだ河岸がございました時分のお話で…。 359 00:29:31,395 --> 00:29:36,867 「ちょいと お前さん 起きとくれよ。・ 360 00:29:36,867 --> 00:29:39,203 お前さん」。 361 00:29:39,203 --> 00:29:42,105 <師匠が 芝浜を…?> 362 00:29:42,105 --> 00:29:44,875 「あいよ。・ 363 00:29:44,875 --> 00:29:50,747 なんだよ ええ? まだ夜も明けてねえじゃねえかよ」。 364 00:29:50,747 --> 00:29:54,885 「河岸 行っておくれよ」。 365 00:29:54,885 --> 00:29:57,788 「河岸?」。 366 00:29:57,788 --> 00:30:02,559 「なに言ってんだい ゆんべ約束したじゃないか。・ 367 00:30:02,559 --> 00:30:06,230 明日は 必ず商いに出るから…」。 368 00:30:06,230 --> 00:30:12,569 「ずっしりしてらぁ…。 砂でも へえってんのかなぁ…。・ 369 00:30:12,569 --> 00:30:15,869 汚ねえ財布だなぁ…」。 370 00:30:20,244 --> 00:30:26,244 「おっかぁ 開けろい。 おっかぁ 開けろい。 おっかぁ」。 371 00:30:27,918 --> 00:30:30,587 「お財布かい?」。 372 00:30:30,587 --> 00:30:33,257 「芝の浜で拾ったんだい」。 373 00:30:33,257 --> 00:30:38,595 「あたし 怖くなって そんなもの懐に入れたら・ 374 00:30:38,595 --> 00:30:42,933 お前さんとこの亭主は 手 後ろに回っちまうって。・ 375 00:30:42,933 --> 00:30:48,272 夢になっちまったんだよ…。 堪忍しておくれ…」。 376 00:30:48,272 --> 00:31:02,786 ・~ 377 00:31:02,786 --> 00:31:06,757 あとは 助六・ 378 00:31:06,757 --> 00:31:10,527 アンタの出番だ。 379 00:31:10,527 --> 00:31:21,527 ・~ 380 00:31:29,246 --> 00:31:32,916 こちらの方に こんなハンカチ。 赤~いハンカチです。 381 00:31:32,916 --> 00:31:36,253 この赤~いハンカチを 大体 ロープの真ん中へんに・ 382 00:31:36,253 --> 00:31:39,156 ギューっと しっかりと 結んじゃいましょう。 ギュー!・ 383 00:31:39,156 --> 00:31:42,592 1枚じゃ なんか寂しいですね。 黄色いハンカチ。・ 384 00:31:42,592 --> 00:31:45,262 あっ いらっしゃいませ。 ハハッ。・ 385 00:31:45,262 --> 00:31:48,932 どうぞ ごゆっくりと お楽しみ頂きたいと思います。・ 386 00:31:48,932 --> 00:31:52,269 さあ さあ 緑色のハンカチあります。 このハンカチも同じように・ 387 00:31:52,269 --> 00:31:55,605 ロープの後ろですよ。 ほんとに絡め… ギュー!・ 388 00:31:55,605 --> 00:31:58,942 ほんとに絡めてます。 これで 3枚のハンカチが…。・ 389 00:31:58,942 --> 00:32:02,813 あっ でもね ハンカチ3枚 結んだだけじゃ 物足りないって・ 390 00:32:02,813 --> 00:32:05,749 そういう方 いるんですね。 そういう方のために・ 391 00:32:05,749 --> 00:32:08,752 ロープも絡めちゃいましょうか。 392 00:32:08,752 --> 00:32:14,224 ・~(出囃子) (拍手) 393 00:32:14,224 --> 00:32:19,563 (イネ)与太ちゃんがトリで めくりだけで 沸かせる日が来るとはねぇ…。 394 00:32:19,563 --> 00:32:27,904 ・~(出囃子) (拍手と歓声) 395 00:32:27,904 --> 00:32:43,453 (拍手) 396 00:32:43,453 --> 00:32:51,595 え~ 東京は芝の浜に まだ河岸がございました時分のお話で…。 397 00:32:51,595 --> 00:32:54,264 芝浜…? 398 00:32:54,264 --> 00:33:00,264 芝浜? 持ちネタだったか? しかも まくらなし? 399 00:33:02,072 --> 00:33:05,876 「大家さんに そう言われてね・ 400 00:33:05,876 --> 00:33:10,547 夢なんだって そう言ったら お前さん…・ 401 00:33:10,547 --> 00:33:15,218 どういう育ちしてんのか 馬鹿に素直で…・ 402 00:33:15,218 --> 00:33:18,918 夢になっちまったんだよ」。 403 00:33:22,559 --> 00:33:25,462 「堪忍しておくれ…。・ 404 00:33:25,462 --> 00:33:29,900 よかれと思って 嘘をついたんだよ。・ 405 00:33:29,900 --> 00:33:33,236 あの五十両…・ 406 00:33:33,236 --> 00:33:38,108 夢じゃなかったんだよ」。 「夢じゃなかったんだよ。・ 407 00:33:38,108 --> 00:33:41,111 堪忍しておくれって…・ 408 00:33:41,111 --> 00:33:46,583 すぐに お前さんに言おうと思ったんだよ。 でも怖くて…」。 409 00:33:46,583 --> 00:33:49,920 お父ちゃんの落語が聞こえるよ…。 410 00:33:49,920 --> 00:33:52,823 「もし 五十両 見せたら…。・ 411 00:33:52,823 --> 00:33:56,793 昼過ぎになって やっと お前さん 起きてきて 湯 行ったんじゃないか」。 412 00:33:56,793 --> 00:34:01,865 「何 言ってやんでぇ。 おらぁ おめえ 浜 行って 五十両 拾って…」。 413 00:34:01,865 --> 00:34:04,534 「夢でも見たんじゃないかい」。 414 00:34:04,534 --> 00:34:09,406 「ま… お手をお上げになって…。・ 415 00:34:09,406 --> 00:34:14,211 俺が 甲斐性がねえばかりに・ 416 00:34:14,211 --> 00:34:18,211 おめえに つれえ思いさしたなぁ…」。 417 00:34:19,883 --> 00:34:23,753 「俺が馬鹿だった。・ 418 00:34:23,753 --> 00:34:29,053 おめえは悪くねえよ。 俺が悪かった」。 419 00:34:31,228 --> 00:34:36,900 「このとおりだ。 勘弁してくれ…」。 420 00:34:36,900 --> 00:34:44,241 ・~ 421 00:34:44,241 --> 00:34:46,941 「お久しぶりです…」。 422 00:34:48,578 --> 00:34:51,481 「よそう…」。 423 00:34:51,481 --> 00:34:54,481 「呑まないのかい?」。 424 00:34:57,921 --> 00:35:04,221 「また 夢になるといけねえ」。 425 00:35:06,196 --> 00:35:10,066 (拍手と歓声) 426 00:35:10,066 --> 00:35:15,872 ありがとう~ ございました! ありがとう~! 427 00:35:15,872 --> 00:35:20,210 よっ 日本一! 助六! 428 00:35:20,210 --> 00:35:32,789 ・~ 429 00:35:32,789 --> 00:35:36,226 小夏 父ちゃんと母ちゃん どっちが好き? 430 00:35:36,226 --> 00:35:38,895 えっ? 父ちゃんが好き…! 431 00:35:38,895 --> 00:35:43,233 ちょっと… 母ちゃんが… あっ! ちょっと! 432 00:35:43,233 --> 00:35:46,570 どっちが好き? あっ。 433 00:35:46,570 --> 00:35:48,570 父ちゃん。 434 00:35:59,916 --> 00:36:02,519 お嬢さん…? 435 00:36:02,519 --> 00:36:05,855 お お… お嬢さん! あっ…。 436 00:36:05,855 --> 00:36:08,525 救急車を! はい! 437 00:36:08,525 --> 00:36:10,460 (小夏の うめき声) 438 00:36:10,460 --> 00:36:14,160 (助産師)頑張るのよ~。 もうちょっとよ もうちょっと もうちょっと。 はい…。 439 00:36:15,865 --> 00:36:18,535 ・(小夏の うめき声) 440 00:36:18,535 --> 00:36:20,870 どうなんだい! 441 00:36:20,870 --> 00:36:23,773 予定より早く… 逆子で・ 442 00:36:23,773 --> 00:36:27,744 もしかしたら 母体も赤ちゃんも 危ないかもしれないって…。 443 00:36:27,744 --> 00:36:32,482 八雲さんは? 私がいても しようがないからって…。 444 00:36:32,482 --> 00:36:34,782 (お栄)なんだい そりゃ…。 445 00:36:49,566 --> 00:36:53,436 名前というのは大事なもんで・ 446 00:36:53,436 --> 00:36:58,575 子供が生まれる。 名前をつける。 447 00:36:58,575 --> 00:37:02,846 どういうふうに 名前をつけようかなんてぇのは・ 448 00:37:02,846 --> 00:37:09,185 いつの時代になっても 頭を悩ますところでございまして。 449 00:37:09,185 --> 00:37:15,525 「長屋でね お子さんが お生まれになりました」。 450 00:37:15,525 --> 00:37:19,396 (叫び声) 451 00:37:19,396 --> 00:37:25,201 私はいい! お願い…! この子を…・ 452 00:37:25,201 --> 00:37:28,201 この子だけは助けてっ…! 453 00:37:32,542 --> 00:37:35,445 (叫び声) 454 00:37:35,445 --> 00:37:38,415 アネさん…! 455 00:37:38,415 --> 00:37:41,885 「うちの 寿限無 寿限無・ 456 00:37:41,885 --> 00:37:50,226 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末…。・ 457 00:37:50,226 --> 00:37:55,899 パイポ パイポ パイポのシューリンガン グーリンダイ・ 458 00:37:55,899 --> 00:38:03,707 ポンポコピーのポンポコナーの 長久命の長助の野郎が・ 459 00:38:03,707 --> 00:38:11,181 頭をぶって 大きなコブをこしらえた。・ 460 00:38:11,181 --> 00:38:17,053 おじさんがな 薬つけてやるから・ 461 00:38:17,053 --> 00:38:21,191 こっちぃ おいで」。 462 00:38:21,191 --> 00:38:24,191 (赤ん坊の泣き声) 463 00:38:31,534 --> 00:38:34,234 おめでとうございま~す。 464 00:38:35,872 --> 00:38:39,872 アネさん…。 与太…。 465 00:38:41,544 --> 00:38:44,447 オイラの子だ…。 466 00:38:44,447 --> 00:38:50,887 ・~ 467 00:38:50,887 --> 00:38:53,587 与太。 468 00:38:55,225 --> 00:38:58,128 一緒になろう。 469 00:38:58,128 --> 00:39:00,830 いいのかい…? 470 00:39:00,830 --> 00:39:06,169 私 与太と この子を…・ 471 00:39:06,169 --> 00:39:10,039 助六の孫を育てたい。 472 00:39:10,039 --> 00:39:14,511 ・~ 473 00:39:14,511 --> 00:39:19,511 べらぼうめ… 合点承知だぃ…。 474 00:39:21,184 --> 00:39:27,524 この子の名前。 信じるの 信をつけたい。 475 00:39:27,524 --> 00:39:32,524 父ちゃんの名前から ひと文字もらいたい。 476 00:39:34,397 --> 00:39:38,868 分かった… 分かったよ…。 477 00:39:38,868 --> 00:39:46,168 信じるのが いちばんだって 父ちゃんの親が つけたんだと思う…。 478 00:39:49,212 --> 00:39:51,912 信ちゃん…。 479 00:39:54,083 --> 00:39:57,083 よぉ! 信坊! 480 00:40:00,557 --> 00:40:05,428 オイラが 信坊の… 父ちゃんだぃ! 481 00:40:05,428 --> 00:40:09,566 ・~ 482 00:40:09,566 --> 00:40:12,469 泣き虫な父ちゃんだね。 483 00:40:12,469 --> 00:40:20,910 ・~ 484 00:40:20,910 --> 00:40:26,910 師匠… オイラ アネさんと所帯を持ちたいです。 485 00:40:28,585 --> 00:40:32,922 いつの間に…? なんで? 486 00:40:32,922 --> 00:40:37,222 アタシに断ることじゃあないだろ。 487 00:40:39,262 --> 00:40:43,600 あの子が どう生きようと自由。 488 00:40:43,600 --> 00:40:48,271 けどね お前さんのことは・ 489 00:40:48,271 --> 00:40:53,610 どこに出したって恥ずかしくない弟子に 育て上げた。 490 00:40:53,610 --> 00:40:56,910 …ってぇ自負は ありますよ。 491 00:41:01,417 --> 00:41:06,117 もうひとつ お願いがあります。 492 00:41:07,891 --> 00:41:13,563 また このうちに ごやっかいになっても よろしいでしょうか。 493 00:41:13,563 --> 00:41:17,233 オイラ 家族になりてぇんだ。 494 00:41:17,233 --> 00:41:22,105 ずっと一人で生きてきた アネさんと 師匠の。 495 00:41:22,105 --> 00:41:28,845 それにはさ… また みんなで一緒に暮らさなくっちゃ。 496 00:41:28,845 --> 00:41:33,783 助六を名乗ったからって 代わりになんか なれっこねぇ。 497 00:41:33,783 --> 00:41:37,921 でも いつか 名前が なじみゃ・ 498 00:41:37,921 --> 00:41:43,259 二人の中の助六を きっと変えられる。 499 00:41:43,259 --> 00:41:51,134 ・~ 500 00:41:51,134 --> 00:41:55,271 好きにするさ…。 501 00:41:55,271 --> 00:41:57,941 はい! 502 00:41:57,941 --> 00:42:02,545 ああああ…! ああ…! 503 00:42:02,545 --> 00:42:19,562 ・~ 504 00:42:19,562 --> 00:42:23,433 ・~ 505 00:42:23,433 --> 00:42:27,433 少しだけ 思い出した…。 506 00:42:30,573 --> 00:42:36,446 25年前 父ちゃんと母ちゃんが死んだ夜のこと。 507 00:42:36,446 --> 00:42:39,146 (松田)師匠。 508 00:42:41,918 --> 00:42:47,790 助六さんと みよ吉さんが 亡くなった あの夜のこと…。 509 00:42:47,790 --> 00:42:52,562 オッサンの話は うそなんじゃないかって…。 510 00:42:52,562 --> 00:42:55,264 (松田)このまま ずっと・ 511 00:42:55,264 --> 00:42:57,934 本当のことを伏せたままで・ 512 00:42:57,934 --> 00:43:00,269 いいんでしょうか…。 513 00:43:00,269 --> 00:43:05,108 ・~ 514 00:43:05,108 --> 00:43:10,108 知りたいんだ… 本当のことを。