1 00:01:37,008 --> 00:01:39,043 (与太郎) 「仕事は いつから始まるんで?」。 2 00:01:39,043 --> 00:01:41,079 「だから 明日っからと言ったじゃねぇか」。 3 00:01:41,079 --> 00:01:43,079 「そいつぁ 困っちゃったなぁ」。 4 00:01:44,499 --> 00:01:47,299 (アマケン・回想)((君には 自分の落語が まだない!)) 5 00:01:49,637 --> 00:01:51,672 ヒューー(花火の音) 6 00:01:51,672 --> 00:01:54,509 ドン! ドーン! 7 00:01:54,509 --> 00:01:57,145 「おう! てめぇなんざ 丸太ん棒に違ぇねぇや!➡ 8 00:01:57,145 --> 00:01:59,163 血も涙も目も鼻もねぇ ちんけえとう➡ 9 00:01:59,163 --> 00:02:01,215 株っかじり 芋っ堀りめぇ!」。 10 00:02:01,215 --> 00:02:04,235 (樋口)いよっ 大棟梁!➡ 11 00:02:04,235 --> 00:02:07,922 また お稽古か。 最近 めっきり つきあい悪いから➡ 12 00:02:07,922 --> 00:02:09,941 舟にでも連れ込んじゃえば➡ 13 00:02:09,941 --> 00:02:12,243 逃げられまいと思ったのに。 14 00:02:12,243 --> 00:02:14,879 当たり前です 真打ちなんすから。 15 00:02:14,879 --> 00:02:17,648 何 そんなに焦ってんの? 16 00:02:17,648 --> 00:02:19,667 「てめっちに頭 下げるような おアニさんと➡ 17 00:02:19,667 --> 00:02:21,969 おアニさんの出来が 少~しばかり違うんでぇ!➡ 18 00:02:21,969 --> 00:02:24,021 黙って聞いてりゃ 増長して 御託が過ぎらぃ!➡ 19 00:02:24,021 --> 00:02:27,241 昔のことを忘れたか!? どこの町内のおかげでもって➡ 20 00:02:27,241 --> 00:02:29,961 大家とか町役とか 膏薬とか 言われるようになったんでぇ➡ 21 00:02:29,961 --> 00:02:32,847 バ~カ! 元のこと 知らねぇと思ってやんのか。➡ 22 00:02:32,847 --> 00:02:34,866 蛸の頭! あんにゃもんにゃ!➡ 23 00:02:34,866 --> 00:02:37,368 うぬは なんだ!」。 はぁ~。 24 00:02:37,368 --> 00:02:39,504 (樋口) その啖呵の文句って なんなの?➡ 25 00:02:39,504 --> 00:02:42,673 「ちんけえとう」? 「株っかじり」に「芋っ堀り」? 26 00:02:42,673 --> 00:02:45,543 「蛸の頭」に 極め付けは 「あんにゃもんにゃ」? 27 00:02:45,543 --> 00:02:47,578 センセー よく覚えたなぁ。 28 00:02:47,578 --> 00:02:50,648 このパート 好きなもんで 前に調べたんだ。 29 00:02:50,648 --> 00:02:53,451 けど 辞書にも載ってない。 なんて意味なのさ? 30 00:02:53,451 --> 00:02:56,788 さあ? 知らないでやってんの? 31 00:02:56,788 --> 00:02:58,823 教わったのを しゃべってるだけでぇ。 32 00:02:58,823 --> 00:03:01,142 はぁ~。 33 00:03:01,142 --> 00:03:03,578 知らないと 気が済まないたちなんだ。 34 00:03:03,578 --> 00:03:06,297 意味がどうだって お客は気にしねぇよ。 35 00:03:06,297 --> 00:03:09,350 (樋口) 書く方は そうはいかんのだ。 36 00:03:09,350 --> 00:03:12,170 なぜ 棟梁は ここで啖呵を切るんだろう? 37 00:03:12,170 --> 00:03:15,540 棟梁が啖呵を切る理由? 38 00:03:15,540 --> 00:03:18,442 考えたこともなかったな。 39 00:03:18,442 --> 00:03:22,747 そういや オイラ 一つだけ 師匠に褒められたことがあるんだ。 40 00:03:22,747 --> 00:03:25,750 「お前さんは耳がいい」って。 41 00:03:25,750 --> 00:03:28,085 聞いた言葉が すぐ交ざっちまう。 42 00:03:28,085 --> 00:03:30,137 さんざっぱら 直せって言われたんだけど➡ 43 00:03:30,137 --> 00:03:33,941 師匠に言わせりゃ それが 耳がいい証拠なんだってさ。 44 00:03:33,941 --> 00:03:35,977 (樋口)へえ~。 45 00:03:35,977 --> 00:03:39,614 落語の啖呵 甚句 唄なんかも すぐ覚えちゃう。 46 00:03:39,614 --> 00:03:42,200 耳がいいのは 落語家にゃ得なんだ。 47 00:03:42,200 --> 00:03:44,552 なるほど。 要は 意味なんかよりも➡ 48 00:03:44,552 --> 00:03:46,771 リズムで覚えろってことか。 49 00:03:46,771 --> 00:03:49,090 うまく言えたときなんかさぁ➡ 50 00:03:49,090 --> 00:03:51,209 歌ってるみてぇに気持ちいいんだ。 51 00:03:51,209 --> 00:03:54,378 落語やっててよかったな って思うよ。 52 00:03:54,378 --> 00:03:57,632 あんまり気持ちよくできると お客さんまで寝ててさ。 53 00:03:57,632 --> 00:04:00,132 そんときは オイラなんか しめたって思うね。 54 00:04:02,019 --> 00:04:04,755 オイラ 前座のとき 師匠の高座のソデで➡ 55 00:04:04,755 --> 00:04:07,141 イビキかいたことがあって…。 ええ~! 56 00:04:07,141 --> 00:04:11,162 結構な大舞台でさ。 ヒラメみてぇに謝ってたらよ➡ 57 00:04:11,162 --> 00:04:14,532 師匠が ひと言 「落語 聴いて寝入るなんざ➡ 58 00:04:14,532 --> 00:04:17,585 昼から 最高の贅沢じゃないかェ」。 59 00:04:17,585 --> 00:04:20,388 (与太郎・樋口)かっこいい~! ドーン! 60 00:04:20,388 --> 00:04:23,958 あんときゃ 首の皮一枚で破門だったんだ。 61 00:04:23,958 --> 00:04:26,277 (樋口) やっと昔話 してくれたね。➡ 62 00:04:26,277 --> 00:04:29,347 で どうして チンピラやってた君が落語を? 63 00:04:29,347 --> 00:04:31,382 なんでぇ こないだっから。 64 00:04:31,382 --> 00:04:35,069 さっき言ったろ。 性分なんだ。 65 00:04:35,069 --> 00:04:38,556 昔話なんて 先の週刊誌で こりごりなんだよ。 66 00:04:38,556 --> 00:04:41,709 ヒューー 67 00:04:41,709 --> 00:04:44,528 ドン! ドン! 68 00:04:44,528 --> 00:04:47,128 玉屋~‼ 69 00:04:48,416 --> 00:04:52,003 (小夏)ん? ねえ 今 与太の声 聞こえなかった? 70 00:04:52,003 --> 00:04:54,538 (お栄)そうかぇ? ふふふっ。➡ 71 00:04:54,538 --> 00:04:58,709 いとしい旦那様。 連れ合やいいのに 別々かい? 72 00:04:58,709 --> 00:05:02,163 (小夏)今日は お得意様の旦さんと 一緒なんだって。➡ 73 00:05:02,163 --> 00:05:05,950 最近 あいつ うちにいりゃ ずっと稽古か子守なんだから。➡ 74 00:05:05,950 --> 00:05:09,070 真打ちになって 伸び悩んでんのよ。 75 00:05:09,070 --> 00:05:11,870 女将さん 芸者さんでも紹介してあげて。 76 00:05:13,407 --> 00:05:16,994 (お栄)そんなときこそ 女房の出番じゃないか。 77 00:05:16,994 --> 00:05:19,547 精いっぱい 力になっておやりよ。 78 00:05:19,547 --> 00:05:21,599 (信之助)ああ~。 79 00:05:21,599 --> 00:05:24,001 (お栄) 聞いたときゃびっくりしたけど➡ 80 00:05:24,001 --> 00:05:27,505 蓋開けてみりゃ いい亭主じゃないか。 81 00:05:27,505 --> 00:05:30,605 あたしも ついぞ家庭なんて持てなかった。 82 00:05:32,109 --> 00:05:36,764 あたしや みよ吉さんの分まで 幸せになっとくれよ。 83 00:05:36,764 --> 00:05:40,084 (小夏) 女将さん 実は お願いがあって。 84 00:05:40,084 --> 00:05:43,070 (お栄)ん? (小夏)この産休のあと➡ 85 00:05:43,070 --> 00:05:45,473 料亭の仕事 辞めさせてほしいの。 86 00:05:45,473 --> 00:05:48,676 (お栄)辞めて どうするんだい? どうもしないよ。 87 00:05:48,676 --> 00:05:51,128 ちょっと考えてることがあるだけ。 88 00:05:51,128 --> 00:05:53,781 (お栄)どっか行こうってんじゃ ないだろうね? 89 00:05:53,781 --> 00:05:57,601 (小夏)まさか…。 (お栄)ごめんね。 90 00:05:57,601 --> 00:05:59,770 なんだか みよ吉っつぁんのとき➡ 91 00:05:59,770 --> 00:06:02,440 思い出しちまって…。 92 00:06:02,440 --> 00:06:04,508 あんなのと一緒にしないで。 93 00:06:04,508 --> 00:06:07,345 (お栄)そうだよね 違うよね。➡ 94 00:06:07,345 --> 00:06:11,716 あの人とは違う。 あんなふうに恋に溺れない。➡ 95 00:06:11,716 --> 00:06:15,152 てめぇの芯が一本 す~っと通って。 96 00:06:15,152 --> 00:06:19,874 八雲さんは よく こんないい娘に育ててくれたよ。 97 00:06:19,874 --> 00:06:22,610 やめてってば…。 98 00:06:22,610 --> 00:06:26,097 よう! おそろいで。 99 00:06:26,097 --> 00:06:28,499 (信之助)ああ~! 100 00:06:28,499 --> 00:06:32,086 へへっ クソ坊主 お前も来てたのか。 101 00:06:32,086 --> 00:06:34,086 はははっ。 102 00:06:35,423 --> 00:06:38,442 アネさん ちったぁ気分が晴れたかい? 103 00:06:38,442 --> 00:06:40,478 ずっと こもって子守してんだから➡ 104 00:06:40,478 --> 00:06:42,513 たまにゃパッと遊ばねぇと。 105 00:06:42,513 --> 00:06:46,017 (お栄) あら やだ。 似た者夫婦かい? 106 00:06:46,017 --> 00:06:48,803 女将さ~ん! ん?➡ 107 00:06:48,803 --> 00:06:52,206 板さん どうしたの? そんなにせいて。 108 00:06:52,206 --> 00:06:54,909 (板前) へえ。 店の前に刑事が来てて…。 109 00:06:54,909 --> 00:06:58,662 ちっ。 あのじじい どこで調べたんだか。 110 00:06:58,662 --> 00:07:00,765 (板前)もう 親分さん お見えになるってのに➡ 111 00:07:00,765 --> 00:07:03,367 どうしたら…。 (お栄)分かった。 急いで戻ろう。 112 00:07:03,367 --> 00:07:05,967 (板前)へえ。 ちょいと見てくるよ。 113 00:07:07,722 --> 00:07:10,908 (小夏)あたしも行ってくる。 えっ? 114 00:07:10,908 --> 00:07:12,908 ん? 115 00:07:14,378 --> 00:07:17,978 んっ。 (樋口)あっ ちょっと…。 116 00:07:19,350 --> 00:07:21,736 ≫ガラガラガラ(戸の音) (アニキ)ん? 117 00:07:21,736 --> 00:07:24,422 はぁ はぁ はぁ…。 118 00:07:24,422 --> 00:07:28,325 (アニキ)おおっ 与太郎か? うわっ アニキ? 119 00:07:28,325 --> 00:07:30,361 女将さんとアネさんは? 120 00:07:30,361 --> 00:07:32,430 (アニキ) なんだ お前 一緒だったのか。➡ 121 00:07:32,430 --> 00:07:35,850 このあと 椋鳥組との会合予定だったんだ。 122 00:07:35,850 --> 00:07:38,753 刑事なんかいたら 一発で おじゃんだったぜ。➡ 123 00:07:38,753 --> 00:07:41,455 女将が根回ししてくれて なしになった。➡ 124 00:07:41,455 --> 00:07:43,657 こういう店は ありがてぇ。 125 00:07:43,657 --> 00:07:45,676 そうかい。 そりゃよかった。 126 00:07:45,676 --> 00:07:48,279 っていうか お前 久々だな。 127 00:07:48,279 --> 00:07:50,379 テレビじゃ ちょこちょこ見かけたけど。 128 00:07:52,283 --> 00:07:56,083 なんだ この頭。 しかも一丁前に 子連れか てめぇ。 129 00:07:57,505 --> 00:08:00,324 (アニキ) にしても 随分 甘ったりぃ顔して。 130 00:08:00,324 --> 00:08:02,877 お前に似てねぇな。 オイラの息子! 131 00:08:02,877 --> 00:08:06,530 女房はアネさんです! えっ こ… 小夏ちゃん…。 132 00:08:06,530 --> 00:08:10,251 ちょっと待て 頭が追いつかねぇな。 133 00:08:10,251 --> 00:08:12,837 アニキに なんか関係があるのかい。 134 00:08:12,837 --> 00:08:15,339 随分 見知った仲みてぇじゃねぇか。 135 00:08:15,339 --> 00:08:18,042 (アニキ)お前の件から うちのおやじと八雲さんが➡ 136 00:08:18,042 --> 00:08:21,879 よく ここで飲むようになって 俺も連れてきてもらってたんだ。➡ 137 00:08:21,879 --> 00:08:24,315 そんで ここで働いている 小夏ちゃんとも➡ 138 00:08:24,315 --> 00:08:26,634 ちょいちょい しゃべっててよ。 139 00:08:26,634 --> 00:08:29,653 けど まあ ここを贔屓にしてんのは➡ 140 00:08:29,653 --> 00:08:31,789 女将とおやじさんが できてんだよ。 141 00:08:31,789 --> 00:08:34,809 えっ? もちろん 奥さんも ちゃんといる。 142 00:08:34,809 --> 00:08:38,045 そのへんは 緩い人だからな。 いいか➡ 143 00:08:38,045 --> 00:08:42,082 今後は 全部 それが大前提で物を考えろ。 144 00:08:42,082 --> 00:08:44,985 なんで オイラ 釘 刺されてんのかなぁ。 145 00:08:44,985 --> 00:08:47,588 (アニキ)バカが 頭使わなくていいよ。 146 00:08:47,588 --> 00:08:50,441 極道通ったお前なら 分かんだろ? 147 00:08:50,441 --> 00:08:52,726 今 おやじさんは ここに いなさるんで? 148 00:08:52,726 --> 00:08:55,796 ああ? ちょいと挨拶さしてもらいてぇな。 149 00:08:55,796 --> 00:08:57,832 おい!➡ 150 00:08:57,832 --> 00:09:00,901 バカ。 お前みてぇな下っ端が➡ 151 00:09:00,901 --> 00:09:02,953 会って話せる人じゃねぇぞ! 152 00:09:02,953 --> 00:09:06,353 下っ端じゃねぇ! 真打ちでぃ。 153 00:09:11,645 --> 00:09:13,681 あははっ ああ~。 154 00:09:13,681 --> 00:09:16,181 与太!? あんた 何来てんのよ! 155 00:09:18,068 --> 00:09:20,104 なんで こんなとこ 突っ立ってんの? 156 00:09:20,104 --> 00:09:22,406 (小夏) 別に どうだっていいでしょ。 157 00:09:22,406 --> 00:09:24,606 アネさん 泣いてたね? 158 00:09:29,146 --> 00:09:31,146 ≫失礼しやす! 159 00:09:33,217 --> 00:09:35,936 突然のご無礼 ご容赦ください! 160 00:09:35,936 --> 00:09:38,505 師匠が いつも お世話になっておりやす! 161 00:09:38,505 --> 00:09:42,326 不肖 私も少なからず 昔に お世話になりまして➡ 162 00:09:42,326 --> 00:09:44,745 多少の縁がございますんでぇ➡ 163 00:09:44,745 --> 00:09:48,399 ぶしつけながら 浴衣風情の はしたねぇ格好のままで➡ 164 00:09:48,399 --> 00:09:51,752 ご挨拶に 上がらせていただきました! 165 00:09:51,752 --> 00:09:54,452 (親分) 聞きしに勝るでけぇ声だな。➡ 166 00:09:55,906 --> 00:10:00,394 いい挨拶だ。 会いたかったよ 与太ちゃん。➡ 167 00:10:00,394 --> 00:10:02,394 名前 変わったんだっけ? 168 00:10:04,498 --> 00:10:07,668 (親分) こっち来いよ。 花火がきれいだよ。 169 00:10:07,668 --> 00:10:10,087 もう~ なんだい 与太ちゃん➡ 170 00:10:10,087 --> 00:10:12,156 討ち入りかと思ったよ。 171 00:10:12,156 --> 00:10:14,156 すいやせん。 172 00:10:17,962 --> 00:10:20,814 (お栄)親分さんとは 初対面かい? 173 00:10:20,814 --> 00:10:23,884 (親分)俺は 何回か 落語を聴いたことがあるんだよ。➡ 174 00:10:23,884 --> 00:10:27,154 めちゃくちゃだけど 古臭くて いい落語なんだ。 175 00:10:27,154 --> 00:10:30,324 見ていただいてたなんて お恥ずかしいかぎりで。 176 00:10:30,324 --> 00:10:32,476 オイラが 話させていただいてんのは➡ 177 00:10:32,476 --> 00:10:34,545 10年以上ぶりです。 178 00:10:34,545 --> 00:10:37,348 アニキの代わりに オツトメ行ってこいって➡ 179 00:10:37,348 --> 00:10:39,648 言いつけられた あの日以来で。 180 00:10:41,602 --> 00:10:43,737 (親分)そんなこともあったか。➡ 181 00:10:43,737 --> 00:10:47,537 ≪悪いが 舎弟の顔は いちいち覚えてられねぇんだ。 182 00:10:49,376 --> 00:10:53,697 まさか そいつが落語家になって 今 俺の前にいるなんて➡ 183 00:10:53,697 --> 00:10:56,900 夢にも思わねぇよな。➡ 184 00:10:56,900 --> 00:10:59,837 ふぅ~。 なあ 与太ちゃん➡ 185 00:10:59,837 --> 00:11:01,872 縁ってやつだなぁ。 186 00:11:01,872 --> 00:11:05,609 もちろん お忘れでしょうけど あんときゃ 下っ端風情が➡ 187 00:11:05,609 --> 00:11:09,196 だだこねて 行きたくねぇなんて ぬかしやがって➡ 188 00:11:09,196 --> 00:11:11,715 怒らせちまって すいやせんでした。 189 00:11:11,715 --> 00:11:14,702 なんせ 人の代わりで 罰を受けるなんざ➡ 190 00:11:14,702 --> 00:11:18,372 どう考えたって 道理に合わねぇ。 それでも➡ 191 00:11:18,372 --> 00:11:20,991 親がどうなってもいいのか なんて言われたんで➡ 192 00:11:20,991 --> 00:11:24,011 怖くって ブルブル震えながら 引き受けたんっす。 193 00:11:24,011 --> 00:11:27,411 あのころは 今以上に与太郎で バカでした。 194 00:11:28,782 --> 00:11:31,769 したらね 刑務所にいるうちに➡ 195 00:11:31,769 --> 00:11:35,389 たった一人のおやじが 病気で亡くなっちまったんっす。 196 00:11:35,389 --> 00:11:37,708 刑務所に入ろうが入るまいが➡ 197 00:11:37,708 --> 00:11:41,445 どちらにしろ 後悔まみれの人生になりやした。 198 00:11:41,445 --> 00:11:43,480 10代の頃は 考えなしに➡ 199 00:11:43,480 --> 00:11:46,266 誘われるまま チンピラやってたけど➡ 200 00:11:46,266 --> 00:11:48,319 後悔するくれぇなら➡ 201 00:11:48,319 --> 00:11:51,855 オイラは そんなこと やっちゃいけない人間だったんだ。 202 00:11:51,855 --> 00:11:55,555 背中の彫り物が 今の人生に邪魔でしょうがねぇ。 203 00:11:57,745 --> 00:12:01,548 っていうのをね そんなの どうってことはねぇ➡ 204 00:12:01,548 --> 00:12:04,535 そのまま生きりゃいいじゃねぇか って思わせてくれたのが➡ 205 00:12:04,535 --> 00:12:08,505 落語なんです。 あんときゃ 怖くて ブルブル震えてたのに➡ 206 00:12:08,505 --> 00:12:11,558 今ぁ こうやって サシで しゃべらせてもらってる。 207 00:12:11,558 --> 00:12:13,858 生きてりゃ こんな変なことも起こりますよ。 208 00:12:15,212 --> 00:12:19,700 ふん。 まあ それが 10年も前の恨みつらみ。 209 00:12:19,700 --> 00:12:21,935 出会いっぱなに たたいていい理由には➡ 210 00:12:21,935 --> 00:12:24,188 ならねぇよな。➡ 211 00:12:24,188 --> 00:12:28,542 どうも 俺は お前に ケンカ売られてる気がしてならねぇ。 212 00:12:28,542 --> 00:12:31,612 オツトメ行ってくれたことも 感謝してる。 213 00:12:31,612 --> 00:12:34,681 八雲師匠にも 随分 世話んなってるし➡ 214 00:12:34,681 --> 00:12:38,001 だから 無傷で 足抜けさしてやったじゃねぇか。 215 00:12:38,001 --> 00:12:41,171 それで トントンじゃねぇのか? そいとも 何か? 216 00:12:41,171 --> 00:12:43,871 ほかに 因縁つけてぇことでもあるのか。 217 00:12:45,275 --> 00:12:47,375 アネさん こっち来なよ! はっ! 218 00:12:49,780 --> 00:12:51,799 オイラ さっきから もしかしてって考えが➡ 219 00:12:51,799 --> 00:12:55,569 全然消えねぇんだ。 こうなったら はっきりさせとこうぜ。 220 00:12:55,569 --> 00:13:05,813 ♬~ 221 00:13:05,813 --> 00:13:08,098 親分には どうでもいいことでしょうけど➡ 222 00:13:08,098 --> 00:13:10,684 俺たちゃ こないだ 籍入れたんっす。 223 00:13:10,684 --> 00:13:14,972 この子は生まれて9か月。 11月23日生まれ。 224 00:13:14,972 --> 00:13:18,609 アネさんが 必死で産んでくれた 助六さんの孫。 225 00:13:18,609 --> 00:13:20,627 助六さんの風貌 知ってますかい? 226 00:13:20,627 --> 00:13:23,747 この目元も癖っ毛も そっくりだろ。 227 00:13:23,747 --> 00:13:26,049 アネさんと合わせて うり三つ! 228 00:13:26,049 --> 00:13:29,803 よくよく見たら 親分さんも ちょいと雰囲気が似てねぇか? 229 00:13:29,803 --> 00:13:32,439 なあ アニキ? はぁ~。 230 00:13:32,439 --> 00:13:34,541 惚れちまうのも分かるってことさ。 231 00:13:34,541 --> 00:13:37,978 (小夏)与太 やめな。 それ以上 何も言うんじゃないよ! 232 00:13:37,978 --> 00:13:40,597 なんでぇ! おかしいだろ それ! 233 00:13:40,597 --> 00:13:42,597 (小夏)いいから やめて! 234 00:13:44,134 --> 00:13:46,904 むんっ! うわっ! 235 00:13:46,904 --> 00:13:49,206 頭冷やせ クソガキ!➡ 236 00:13:49,206 --> 00:13:51,575 小夏が嫌がってんだろうが。➡ 237 00:13:51,575 --> 00:13:54,595 てめぇの正義で 突っ走ってんじゃねぇ! 238 00:13:54,595 --> 00:13:59,383 はっ。 与太を許して お願いです! 239 00:13:59,383 --> 00:14:04,221 ごめんなさい 迷惑かけて。 私のせいです。 うっ…。 240 00:14:04,221 --> 00:14:07,808 ごめん… ごめんなさい。➡ 241 00:14:07,808 --> 00:14:10,227 うぅ…。 242 00:14:10,227 --> 00:14:12,227 やい やい やい! 243 00:14:14,031 --> 00:14:17,601 ぶっ! てめぇら勝手に解決すんな! 244 00:14:17,601 --> 00:14:20,187 オイラが納得いかねぇんだよ! 245 00:14:20,187 --> 00:14:24,758 ♬~ 246 00:14:24,758 --> 00:14:27,144 (アニキ)あっ 親分 すいやせん。 ちょっと失礼しやす。 247 00:14:27,144 --> 00:14:29,413 ああっ…。 248 00:14:29,413 --> 00:14:33,250 何考えてんだ! お前 こんなことで死にてぇのかよ! 249 00:14:33,250 --> 00:14:35,369 死ぬわきゃいかねぇ。 250 00:14:35,369 --> 00:14:38,872 絶対に 先に死なねぇって 師匠と約束したんでぇ。 251 00:14:38,872 --> 00:14:40,941 (アニキ)あっ? 252 00:14:40,941 --> 00:14:43,810 (親分) 何ごちゃごちゃ やってんだよ。➡ 253 00:14:43,810 --> 00:14:46,146 この際だ なんでも言ってみろ。➡ 254 00:14:46,146 --> 00:14:48,682 どうするかは それから考えてやるよ。 255 00:14:48,682 --> 00:15:07,182 ♬~ 256 00:17:12,492 --> 00:17:14,492 よし 言ってやらぁ! 257 00:17:16,396 --> 00:17:19,466 てめぇなんぞ 丸太ん棒でぇ! 血も涙もねぇ 目も鼻もねぇ➡ 258 00:17:19,466 --> 00:17:22,953 丸太ん棒みてぇなヤツだ。 呆助 ちんけえとう 株っかじり➡ 259 00:17:22,953 --> 00:17:25,505 この芋っ掘りめぇ! でけぇ面するない! 260 00:17:25,505 --> 00:17:28,792 黙って聞いてりゃ増長しやがって 御託が過ぎらぁ! 261 00:17:28,792 --> 00:17:30,811 こちとら でけぇ声は地声なんでぇ! 262 00:17:30,811 --> 00:17:32,979 まだまだ まだまだ せり上がらぁ! 263 00:17:32,979 --> 00:17:35,549 この蛸の頭に すっぱらべっちょに あんにゃもんにゃ! 264 00:17:35,549 --> 00:17:38,435 それからなぁ おまけに 馬の骨に 牛の骨➡ 265 00:17:38,435 --> 00:17:40,921 ひょうたんボックリコ~! 266 00:17:40,921 --> 00:17:45,275 誰が なんと言おうと あの子は オイラの息子でぇ! 267 00:17:45,275 --> 00:17:47,627 似てようが似てまいが 関係あるかい! 268 00:17:47,627 --> 00:17:51,131 いいか! あとから くれったって 絶対あげねぇど! 269 00:17:51,131 --> 00:17:53,684 なんにも疑うこたぁねぇ。 270 00:17:53,684 --> 00:17:57,484 だから この話は 今日かぎり これっきりで おしめぇだ! 271 00:17:59,973 --> 00:18:04,244 ってぇのが… 私の言い分でございます。 272 00:18:04,244 --> 00:18:06,244 お粗末さまでございました。 273 00:18:07,647 --> 00:18:11,118 (親分)ぷっ 啖呵売りか。➡ 274 00:18:11,118 --> 00:18:13,387 でけぇ声で つるつると出やがるから➡ 275 00:18:13,387 --> 00:18:15,822 全く聴き惚れちまった。 276 00:18:15,822 --> 00:18:18,275 商売道具 出されちゃあなぁ。➡ 277 00:18:18,275 --> 00:18:22,646 よく踏ん張ったな。 それが 男の優しさだよ。➡ 278 00:18:22,646 --> 00:18:27,501 なあ 真打ち 長ぇこと精進してきたんだな。➡ 279 00:18:27,501 --> 00:18:30,201 随分いい噺家になったじゃねぇか。 280 00:18:36,176 --> 00:18:38,779 ほいじゃあ 女将さん ぎゃあぎゃあ やかましく➡ 281 00:18:38,779 --> 00:18:41,848 失礼しました。 (お栄)ほんとよ まったく。➡ 282 00:18:41,848 --> 00:18:43,848 花火の日で よかったわね。 283 00:18:46,186 --> 00:18:48,186 (小夏)女将さん…。 284 00:18:49,639 --> 00:18:53,310 いいから 胸にしまっておきな。 285 00:18:53,310 --> 00:18:55,729 与太ちゃんが ああまで言ってくれたのを➡ 286 00:18:55,729 --> 00:18:58,415 むげにしたら 女が廃るだろう。 287 00:18:58,415 --> 00:19:00,915 (小夏)分かった。 ありがとう。 288 00:19:02,602 --> 00:19:06,006 アネさん もう帰る? もうちょっと お祭り…。 289 00:19:06,006 --> 00:19:08,406 ちょいと 顔貸しな。 えっ? 290 00:19:10,610 --> 00:19:13,280 (小夏)あんた なんてことしてくれたの?➡ 291 00:19:13,280 --> 00:19:15,665 余計な詮索は するなって言ったでしょ。 292 00:19:15,665 --> 00:19:17,768 やっぱり当たりだったかい。 293 00:19:17,768 --> 00:19:20,437 なんとなく そうじゃねぇかと思ってたんだ。 294 00:19:20,437 --> 00:19:22,489 (小夏) なんとなくで あんなことしたの? 295 00:19:22,489 --> 00:19:25,075 あんた バカなの? 親分さんの怖さは➡ 296 00:19:25,075 --> 00:19:28,495 よく知ってるでしょ。 よ~く知ってるよ。 297 00:19:28,495 --> 00:19:32,295 見つくれよ これ。 まだ 手が震えてらぁ。 298 00:19:35,318 --> 00:19:37,971 (小夏) あの人には 非は何もないのよ。➡ 299 00:19:37,971 --> 00:19:40,757 あたしが むちゃ言ってるだけなんだから。 300 00:19:40,757 --> 00:19:43,310 アネさんが そうしたくてしてるんだね? 301 00:19:43,310 --> 00:19:46,580 (小夏) 全部 覚悟して やってることよ。 302 00:19:46,580 --> 00:19:49,449 なら もう話してくれなくていいや。 303 00:19:49,449 --> 00:19:53,537 世の中には 言葉にしねぇ方がいいこともある。 304 00:19:53,537 --> 00:19:56,537 隠し事のねぇ人間なんて 色気がねぇ。 305 00:19:58,141 --> 00:20:01,011 (小夏)ほんとは怖くなってたの。 あたし➡ 306 00:20:01,011 --> 00:20:03,814 母さんと 同じに なってるんじゃないかって。➡ 307 00:20:03,814 --> 00:20:06,883 あたしに流れる血が そうさせるのかと思うと➡ 308 00:20:06,883 --> 00:20:10,437 心底 ぞっとした。 けど あんたといたら➡ 309 00:20:10,437 --> 00:20:14,024 不幸だって思ってんのも バカバカしくなりそう。 310 00:20:14,024 --> 00:20:17,711 ねえ 与太。 あんたの落語が聴きたいの。 311 00:20:17,711 --> 00:20:20,997 八雲とも助六とも違う あんたの落語が➡ 312 00:20:20,997 --> 00:20:24,518 これから どうなるのか 見てみたくなったんだ。 313 00:20:24,518 --> 00:20:26,518 オイラの落語…。 314 00:20:28,104 --> 00:20:30,624 ああ~ どんなんだと思う? 315 00:20:30,624 --> 00:20:35,445 (小夏)知るかい。 てめぇで考えな。 ふえぇ~~! 316 00:20:35,445 --> 00:20:38,014 じゃあ アネさん もうちょっと 縁日 見てこうか。 317 00:20:38,014 --> 00:20:40,417 (小夏)何 その手? 手ぇつなぐ。 318 00:20:40,417 --> 00:20:42,536 (小夏)人前で 手ぇつなごうとか言うヤツ➡ 319 00:20:42,536 --> 00:20:47,140 大嫌いなんだけど。 はははっ… すいやせん。 320 00:20:47,140 --> 00:20:50,176 つなぎたいときは あたしから言うよ。 321 00:20:50,176 --> 00:20:53,597 へえ…。 もう疲れた。 帰るね。 322 00:20:53,597 --> 00:20:56,750 お祭り! オイラ まだ見てない! 323 00:20:56,750 --> 00:21:00,570 (小夏)一人で見てきなよ。 ええ~! 324 00:21:00,570 --> 00:21:02,606 ≫(樋口)与太さ~ん。 えっ? 325 00:21:02,606 --> 00:21:06,443 もう終わったかね? あっ センセー。 いたんすかい? 326 00:21:06,443 --> 00:21:10,280 (樋口)なんだ その言いぐさ? ええ ええ おりましたよ。 327 00:21:10,280 --> 00:21:13,099 今のも ずっと聞いてたの? (樋口)さすがに悪いから➡ 328 00:21:13,099 --> 00:21:18,038 そこで 金魚すくいしてたがね。 君に差し上げましょう。 329 00:21:18,038 --> 00:21:20,991 2匹。 君と奥さんみたいだね。 330 00:21:20,991 --> 00:21:24,311 へへへへっ。 (樋口)バカ 嫌みだよ。 331 00:21:24,311 --> 00:21:28,498 そんなことより ついに 君は 自分の落語を見つけたね。 332 00:21:28,498 --> 00:21:32,335 えっ? そうなの? でないと あの啖呵 切れんだろ? 333 00:21:32,335 --> 00:21:34,671 啖呵? ああ~ あれな。 334 00:21:34,671 --> 00:21:37,173 オイラ あれで 一つ分かったんだ。 えっ? 335 00:21:37,173 --> 00:21:39,509 「大工調べ」で 棟梁が 啖呵切る理由。 336 00:21:39,509 --> 00:21:41,561 何? 何? なんなの? 337 00:21:41,561 --> 00:21:44,681 ありゃな すっきりするからだ。 338 00:21:44,681 --> 00:21:48,201 ただ言いたくて言ってんだよ。 んん…。 339 00:21:48,201 --> 00:21:50,754 なんだよ その顔? まあいい。 340 00:21:50,754 --> 00:21:53,840 君が分かっていればいいんだ。 それより センセー。 341 00:21:53,840 --> 00:21:56,242 これやってるとこ 連れてってよ。 342 00:21:56,242 --> 00:21:58,342 オイラもやりたい! (樋口)うわっ! 343 00:21:59,713 --> 00:22:01,748 ≫トントン…(足音) ≫スーッ(ふすまの音) 344 00:22:01,748 --> 00:22:04,134 ≫ただいま戻りました。 (有楽亭八雲)ん? 345 00:22:04,134 --> 00:22:06,820 (松田) あっ 助六師匠 おかえりなさい。 346 00:22:06,820 --> 00:22:08,922 ふふ~ん! 347 00:22:08,922 --> 00:22:11,942 ハナ公~! (松田)花火は どうでした? 348 00:22:11,942 --> 00:22:14,978 どうって ありゃあ 混んでて 花火どころじゃねぇや。 349 00:22:14,978 --> 00:22:18,465 (松田)ここからも いくらか見えるんですよ。 350 00:22:18,465 --> 00:22:20,465 師匠 お土産。 351 00:22:22,052 --> 00:22:24,704 (松田) はあ~ 金魚。 涼しげですなぁ。 352 00:22:24,704 --> 00:22:26,840 暑気払いに ぴったりだろ。 353 00:22:26,840 --> 00:22:31,745 師匠 アネさん 赤ん坊とオイラ 家族4人分 とってきたんだ。 354 00:22:31,745 --> 00:22:34,164 あたしのは ねぇんですかい? 355 00:22:34,164 --> 00:22:38,264 えっ ちょ…。 だって 松田さん 孫までいるじゃねぇか。 356 00:22:40,036 --> 00:22:44,841 よく この縁側で 師匠に 耳かきしていただきやしたねぇ。 357 00:22:44,841 --> 00:22:47,410 あのころは とんでもねぇ失礼な野郎で➡ 358 00:22:47,410 --> 00:22:49,446 自分でも ぞっとしまさぁ。 359 00:22:49,446 --> 00:22:52,132 あの時分は お前さんのこたぁ➡ 360 00:22:52,132 --> 00:22:55,318 犬っころとしか思ってなかったよ。 361 00:22:55,318 --> 00:22:57,871 立場ってのは変わりますねぇ。 362 00:22:57,871 --> 00:23:02,271 落語ってのを知れば知るほど 師匠のすごさが 身にしみてます。 363 00:23:03,743 --> 00:23:07,213 いつかまた 立場が変わったら…➡ 364 00:23:07,213 --> 00:23:09,599 師匠に ちょっとでも近づけたら➡ 365 00:23:09,599 --> 00:23:13,620 また でっけぇ会場で 親子会がしてぇっす。 366 00:23:13,620 --> 00:23:16,639 嫌だ。 えっ? 367 00:23:16,639 --> 00:23:18,908 面倒。 あたしゃ➡ 368 00:23:18,908 --> 00:23:22,145 静かに てめぇの落語が できりゃいいんだ。 369 00:23:22,145 --> 00:23:26,766 もう大それたことをして 心 乱したくないんです。 370 00:23:26,766 --> 00:23:29,386 師匠が落語をするのは そのためですか。 371 00:23:29,386 --> 00:23:32,572 ご自分を高めるため。 372 00:23:32,572 --> 00:23:35,475 オイラの場合は 自分なんて どうだっていいんです。 373 00:23:35,475 --> 00:23:39,012 こんな世界一のバカ 高めたって屁にもならねぇ。 374 00:23:39,012 --> 00:23:41,031 オイラは とにかく 落語に出てくる人が➡ 375 00:23:41,031 --> 00:23:44,334 好きでたまらないんです。 どんなどん底にいたって➡ 376 00:23:44,334 --> 00:23:46,619 あいつらなら 這い上がってくらぁ。 377 00:23:46,619 --> 00:23:49,305 あいつらを みんなに紹介してぇんで。 378 00:23:49,305 --> 00:23:52,742 それが 落語のためってことかぇ。 379 00:23:52,742 --> 00:23:55,678 そいじゃ お前さんが やる意味がないじゃないか。 380 00:23:55,678 --> 00:23:58,832 へえ いいんです オイラのことなんか。 381 00:23:58,832 --> 00:24:01,284 考ぇられないね。 382 00:24:01,284 --> 00:24:04,187 お前さんは 我欲がなさ過ぎる。 383 00:24:04,187 --> 00:24:07,487 あり過ぎんのも なさ過ぎんのも問題だろ。 384 00:24:08,908 --> 00:24:12,508 親子会は やってやらぁ。 ええ~! 385 00:24:13,897 --> 00:24:17,984 ただし 「居残り」を覚えなさい。 えっ? 386 00:24:17,984 --> 00:24:20,537 あれは てめぇの我が出やすい。 387 00:24:20,537 --> 00:24:24,107 我を引き出すには 佐平次って男は うってつけだ。 388 00:24:24,107 --> 00:24:26,159 あの演じ分けを やってごらん。 389 00:24:26,159 --> 00:24:28,545 もっと 我を張りなさい。 390 00:24:28,545 --> 00:24:30,563 落語で お前さんの意志が➡ 391 00:24:30,563 --> 00:24:32,663 ちぃとも見えないよ。 392 00:24:34,901 --> 00:24:38,505 ただなぁ うまい師匠が 今いねぇんだ。 393 00:24:38,505 --> 00:24:41,941 あたしも とうに諦めて 手放した噺で…。 394 00:24:41,941 --> 00:24:44,511 ちっ まあいい。 395 00:24:44,511 --> 00:24:46,511 ちょいと来てみな。 痛っ…。 396 00:24:48,114 --> 00:24:50,614 そこぃ お座んなさい。 へえ。 397 00:24:58,374 --> 00:25:00,474 ん? パチン 398 00:25:02,445 --> 00:25:06,816 ええ~ 遊びにも 上・中・下とございまして➡ 399 00:25:06,816 --> 00:25:09,502 上というのは 廓へは来ない客。 400 00:25:09,502 --> 00:25:12,572 上は来ず 中は昼来て昼帰り➡ 401 00:25:12,572 --> 00:25:14,607 下は夜来て朝帰り…。 402 00:25:14,607 --> 00:25:17,110 (心の声)≪えっ 「居残り」やってくれんの?≫ 403 00:25:17,110 --> 00:25:20,230 ≪オイラのために? ええ~ すげぇ!≫ 404 00:25:20,230 --> 00:25:23,766 「おうおう 世直しに 景気よく行こうじゃねぇか。➡ 405 00:25:23,766 --> 00:25:27,020 お前ら みんなで久々に 南に押し出そう」。 406 00:25:27,020 --> 00:25:29,289 「南って 品川ですかい?」。 407 00:25:29,289 --> 00:25:33,893 「おうよ。 女郎買いは吉原とばかり 相場が決まっちゃいねぇだろ。➡ 408 00:25:33,893 --> 00:25:36,312 お前ら 1両ずつ出せ。 あとの おあしは➡ 409 00:25:36,312 --> 00:25:38,598 みんな 俺が出してやる」…。 410 00:25:38,598 --> 00:25:42,018 ≪あれ? これ 助六師匠の「居残り」だ≫ 411 00:25:42,018 --> 00:25:45,371 「伊之どん! 火種 持ってきてくださいな」。 412 00:25:45,371 --> 00:25:47,891 「へい ただいま」。 「伊之どん➡ 413 00:25:47,891 --> 00:25:51,744 水持ってきておくんな」。 「へえ お待ちどおさま。➡ 414 00:25:51,744 --> 00:25:54,247 お手紙の上書き? ああ ようがす。➡ 415 00:25:54,247 --> 00:25:57,116 住所書き? よろしゅうございます」…。 416 00:25:57,116 --> 00:26:02,238 ≪すげぇ… すげぇ。 師匠の面影が まるでねぇ≫ 417 00:26:02,238 --> 00:26:04,457 ≪助六さん そのものだ≫ 418 00:26:04,457 --> 00:26:07,877 ≪生きて動いてたら こんな感じだったのか≫ 419 00:26:07,877 --> 00:26:10,146 はぁ はぁ…。 420 00:26:10,146 --> 00:26:13,633 ♬~ 421 00:26:13,633 --> 00:26:16,369 「お前も この商売で 飯食おうってんなら➡ 422 00:26:16,369 --> 00:26:18,972 俺の面ぁ 覚えとけ。 吉原でも千住でも➡ 423 00:26:18,972 --> 00:26:21,124 どこにも相手に仕手のねぇ➡ 424 00:26:21,124 --> 00:26:24,944 居残りを商売にしている佐平次たぁ 俺のことよ。➡ 425 00:26:24,944 --> 00:26:28,398 うちへ帰って 旦那に よろしく言っとくれ。 あばよ!」。 426 00:26:28,398 --> 00:26:32,218 「あっ おいおいおい! ちくしょうめ。➡ 427 00:26:32,218 --> 00:26:36,673 ひでぇ野郎だ あいつ。 旦那 大変でございます!」。 428 00:26:36,673 --> 00:26:39,292 「何? 居残り商売だと?➡ 429 00:26:39,292 --> 00:26:43,246 じゃあ 俺は 詐欺にかかったのか」。 430 00:26:43,246 --> 00:26:47,433 「へえ。 旦那の頭が 胡麻塩ですから」。 431 00:26:47,433 --> 00:26:53,940 (拍手) 432 00:26:53,940 --> 00:26:55,940 はぁ…。 433 00:26:59,729 --> 00:27:03,883 ≪「野暮なことを お言いでないよ。 今じゃ 刻限が悪いんだよ」。 434 00:27:03,883 --> 00:27:07,904 「だから言ったろ。 なんで早く ケリをつけねぇ」。 435 00:27:07,904 --> 00:27:11,040 「だってよ なんの因果か あいつの顔を見てると➡ 436 00:27:11,040 --> 00:27:14,477 どうも 舌先三寸に うまく丸め込まれちまう」。 437 00:27:14,477 --> 00:27:16,512 チリン チリン…(風鈴の音) ≪明かりが入ると➡ 438 00:27:16,512 --> 00:27:20,166 ≪がらりと変わる別世界。 20~30人の奉公人が➡ 439 00:27:20,166 --> 00:27:24,053 ≪働いちゃいるが 替り番や何かで 客が立て込むってぇと…。 440 00:27:24,053 --> 00:27:27,123 父ちゃんの落語が聞こえるよ。➡ 441 00:27:27,123 --> 00:27:29,623 ねっ 信ちゃん。 442 00:29:03,503 --> 00:29:11,828 ♬~ 443 00:29:11,828 --> 00:29:20,436 ♬~ 444 00:29:20,436 --> 00:29:26,576 次回 「昭和元禄落語心中 -助六再び篇-」 第4話。 445 00:29:26,576 --> 00:29:29,176 どうぞ ご贔屓 ご鞭撻のほどを。