1 00:01:34,348 --> 00:01:54,335 ♬~ 2 00:01:54,335 --> 00:02:14,438 ♬~ 3 00:02:14,438 --> 00:02:29,169 ♬~ 4 00:02:29,169 --> 00:02:33,407 ♬~ 5 00:02:33,407 --> 00:02:41,707 ♬~ 6 00:02:45,486 --> 00:03:03,586 ♬~ 7 00:03:05,539 --> 00:03:07,825 ≫トン トン(ノック) ≫(与太郎)師匠➡ 8 00:03:07,825 --> 00:03:09,977 ≫お膳 お下げしやす。 (有楽亭八雲)うん。 9 00:03:09,977 --> 00:03:12,730 スーッ(ふすまの音) おはようさん。 10 00:03:12,730 --> 00:03:14,730 おはようございやす 師匠! 11 00:03:17,267 --> 00:03:19,586 あの~ これ…。 12 00:03:19,586 --> 00:03:23,540 書き物が忙しくてね。 いいから下げとくれ。 13 00:03:23,540 --> 00:03:25,540 へい。 14 00:03:28,345 --> 00:03:32,032 師匠 昼まで お時間 頂けませんか? 15 00:03:32,032 --> 00:03:35,653 稽古かい? へい! 16 00:03:35,653 --> 00:03:38,155 かまぁないよ。 17 00:03:38,155 --> 00:03:42,543 お前さん 寄席じゃあ 随分 評判が上がってるってなぁ。 18 00:03:42,543 --> 00:03:45,596 へい。 師匠の「居残り」見てから➡ 19 00:03:45,596 --> 00:03:48,265 もやもやしたもんが 吹っ飛んじまったみてぇで。 20 00:03:48,265 --> 00:03:50,834 そうかぇ。 そいじゃあ…。 21 00:03:50,834 --> 00:03:52,936 そいからね➡ 22 00:03:52,936 --> 00:03:56,256 二ヶ月後に かぶき座で 親子会やりますよ。 23 00:03:56,256 --> 00:03:59,693 ええ~~! あっ 声が大きい。 24 00:03:59,693 --> 00:04:01,729 書き損じたじゃないかぇ。 25 00:04:01,729 --> 00:04:04,865 そいじゃあ オイラの「居残り」 やっと認めてくださるんで? 26 00:04:04,865 --> 00:04:08,152 てめぇの「居残り」なんざ 聴けたもんじゃねぇや。 27 00:04:08,152 --> 00:04:12,072 うへ…。 先様からお話を頂いたんだ。 28 00:04:12,072 --> 00:04:14,842 頂いちまったら やるしきゃねぇだろう。 29 00:04:14,842 --> 00:04:17,661 こんな ありがてぇ話ぁ ねぇんだから。 30 00:04:17,661 --> 00:04:21,281 そんなことで 決められちまうんですかい? 31 00:04:21,281 --> 00:04:23,701 できっこねぇや… んなもん。 32 00:04:23,701 --> 00:04:26,270 前座のときとは訳が違いますぜ。 33 00:04:26,270 --> 00:04:30,657 ふふっ。 お前さんも分かってきたね。 34 00:04:30,657 --> 00:04:33,861 人前に出りゃあ どうとでもなるもんさ。 35 00:04:33,861 --> 00:04:37,765 ハコに合わせて 中身が 大きくなることだってあらぁな。 36 00:04:37,765 --> 00:04:39,800 へえ…。 37 00:04:39,800 --> 00:04:42,836 ♬~ 38 00:04:42,836 --> 00:04:44,888 [外:B20D4C6DE0912821D99C472B4DCC8328](助六)「お前も この商売で」…。 「お前も この商売で➡ 39 00:04:44,888 --> 00:04:47,925 飯 食おうってんなら 俺の面ぁ よく覚えとけ。➡ 40 00:04:47,925 --> 00:04:50,627 吉原でも千住でも どこでも 相手に仕手のねぇ➡ 41 00:04:50,627 --> 00:04:54,732 居残りを商売にしてる佐平次たぁ 俺のことよ。➡ 42 00:04:54,732 --> 00:04:57,234 楼へ帰って 旦那によろしく言ってくれ。➡ 43 00:04:57,234 --> 00:04:59,269 あばよ!」。 カチャ 44 00:04:59,269 --> 00:05:01,438 はぁ~あ。 45 00:05:01,438 --> 00:05:04,892 やっぱ 助六師匠の落語は面白ぇな。 46 00:05:04,892 --> 00:05:08,328 目の前に本物がいるみてぇだ。 47 00:05:08,328 --> 00:05:10,964 オイラの落語か…。 48 00:05:10,964 --> 00:05:13,917 我を出せって 師匠は言ってたけど…。 49 00:05:13,917 --> 00:05:17,704 んん~ 我か… オイラの我…。 50 00:05:17,704 --> 00:05:20,991 ああ~! 何なんだよ そらぁよ! 51 00:05:20,991 --> 00:05:23,026 (アニさん)親子会かぁ。➡ 52 00:05:23,026 --> 00:05:25,896 与太さんは 今や 落語界のホープだし➡ 53 00:05:25,896 --> 00:05:28,182 これは盛り上がること 間違いなしですね。 54 00:05:28,182 --> 00:05:31,602 そらなぁ。 八代目の いまだ衰えぬ芸には➡ 55 00:05:31,602 --> 00:05:34,688 常連のうるさ方だって 文句のつけようがねぇしな。 56 00:05:34,688 --> 00:05:37,141 こら すごい会になるよ。 57 00:05:37,141 --> 00:05:40,327 しかしな 完璧ってわけにゃいかねぇよな。 58 00:05:40,327 --> 00:05:43,430 なんだい? 人が景気いい話 してるってぇのに。 59 00:05:43,430 --> 00:05:46,917 いやね こんな大きな会で 落語が注目されんのは➡ 60 00:05:46,917 --> 00:05:50,420 あたしだって うれしいよ。 だけど 最近の八代目➡ 61 00:05:50,420 --> 00:05:53,323 ちょいと 声に張りがねぇ気がして。➡ 62 00:05:53,323 --> 00:05:55,893 お体の具合 あまり よくないんじゃないかって➡ 63 00:05:55,893 --> 00:05:59,797 心配してんだよ。 (師匠)そりゃ 年も年だしな。➡ 64 00:05:59,797 --> 00:06:01,832 しかたねぇっちゃ しかたねぇだろ。 65 00:06:01,832 --> 00:06:05,118 そうだろ? まあ 八代目のことだ➡ 66 00:06:05,118 --> 00:06:08,672 きっと大丈夫だ。 それより 俺ぁ 助六のヤツが➡ 67 00:06:08,672 --> 00:06:11,725 はめ外し過ぎねぇかのが 心配だよ。➡ 68 00:06:11,725 --> 00:06:15,128 聞いたかい? あの話。 ああ 例の。 69 00:06:15,128 --> 00:06:17,948 でも 何かの見間違いじゃないですか? 70 00:06:17,948 --> 00:06:19,950 立派な女将さんだっているのに…。 71 00:06:19,950 --> 00:06:23,303 分かってねぇな。 女房 子供がいるからこそ➡ 72 00:06:23,303 --> 00:06:25,823 男ってもんは…。 ≪おはようさん。 73 00:06:25,823 --> 00:06:27,891 大層な盛り上がりで。 74 00:06:27,891 --> 00:06:30,294 うちの与太郎が どうかしましたかな? 75 00:06:30,294 --> 00:06:33,797 ≪♬~(寄席囃子) 76 00:06:33,797 --> 00:06:36,197 (アニさん)師匠 実は…。 77 00:06:39,937 --> 00:06:42,189 (部長)与太ちゃ~ん! ん? 78 00:06:42,189 --> 00:06:44,791 部長さん どうも。 ご無沙汰してます。 79 00:06:44,791 --> 00:06:47,277 (部長) 相変わらず 引っ張りだこだね。➡ 80 00:06:47,277 --> 00:06:51,131 テレビ見てるよ。 寄席のことも 忘れないでいてくれて➡ 81 00:06:51,131 --> 00:06:53,267 ありがたいかぎりだよ。 82 00:06:53,267 --> 00:06:56,036 オイラは寄席の宣伝担当だからな。 83 00:06:56,036 --> 00:06:59,122 (部長)そうそう 今日はね…➡ 84 00:06:59,122 --> 00:07:01,525 見てくれ。 ついに刷れたんだ! 85 00:07:01,525 --> 00:07:04,494 むっは~! かっこいい~! 86 00:07:04,494 --> 00:07:09,233 我が大江戸落語協会の 威信を懸けた催しですからね。 87 00:07:09,233 --> 00:07:12,853 師匠と こんなふうに 並べる日が来るなんてな…。 88 00:07:12,853 --> 00:07:14,888 バン! (部長)いの一番に➡ 89 00:07:14,888 --> 00:07:16,940 ここに貼りに来たよ。➡ 90 00:07:16,940 --> 00:07:19,893 席亭に 特等席 取っといてもらったんだ。 91 00:07:19,893 --> 00:07:23,113 ≫(樋口)あっ 与太さん。 先生 どうも。 92 00:07:23,113 --> 00:07:25,999 (樋口)ポスター 出来たんですか。 かっこいいね~。 93 00:07:25,999 --> 00:07:29,570 (部長)先生 どうも。 (樋口)ああ これは どうも。 94 00:07:29,570 --> 00:07:33,206 えっ 顔見知りですかい? いつの間に? 95 00:07:33,206 --> 00:07:37,094 (樋口)落語の取材で 何度もお世話になってましてね。➡ 96 00:07:37,094 --> 00:07:40,831 最近は 演芸記者のような仕事も よく やってるんだ。 97 00:07:40,831 --> 00:07:43,667 まったく道楽仕事だよ。 はははっ。 98 00:07:43,667 --> 00:07:47,220 へえ~ 先生は顔が広ぇな。 (樋口)ははっ いやいや。 99 00:07:47,220 --> 00:07:50,507 親子会も来てくれんだろ? (樋口)当たり前ですよ。➡ 100 00:07:50,507 --> 00:07:54,328 出版社経由で 正式に 取材を申し込んであるんです。 101 00:07:54,328 --> 00:07:57,114 (部長) ドカンと紹介してくださいよ! 102 00:07:57,114 --> 00:08:00,300 オイラを面白がって 寄席に来てくれる人たちが➡ 103 00:08:00,300 --> 00:08:03,887 ホールで師匠の落語 聴いたら びっくりすると思うんだ。 104 00:08:03,887 --> 00:08:07,324 そんで 落語も 好きになってくれたら最高だなぁ。 105 00:08:07,324 --> 00:08:11,528 ははっ。 自分よりも 落語を好きになってほしいわけか。 106 00:08:11,528 --> 00:08:13,931 与太さんらしい考え方だね。 107 00:08:13,931 --> 00:08:16,566 きっと そこに 鍵があるんじゃないかい? 108 00:08:16,566 --> 00:08:19,102 鍵? (樋口)自分の落語➡ 109 00:08:19,102 --> 00:08:21,471 まだ 見つけられてないんだろう? 110 00:08:21,471 --> 00:08:25,271 少しつきあってよ。 君の力になれると思うんだ。 111 00:08:27,894 --> 00:08:30,163 (樋口)ほら。 うえっ。 112 00:08:30,163 --> 00:08:32,699 歴代の名人たちの 「居残り」を集めて➡ 113 00:08:32,699 --> 00:08:36,136 テープに落とした。 音源として残っているものは➡ 114 00:08:36,136 --> 00:08:38,905 僕の知るかぎりでは これで全部だ。 115 00:08:38,905 --> 00:08:41,959 すげぇ! これ オイラのために? 116 00:08:41,959 --> 00:08:44,061 参考になるかと思いましてね。 117 00:08:44,061 --> 00:08:46,363 センセ~イ! あぁ…。➡ 118 00:08:46,363 --> 00:08:49,666 八雲師匠が 君に 「居残り」をやれって言った意味➡ 119 00:08:49,666 --> 00:08:52,319 なんとなく分かった気がするよ。 120 00:08:52,319 --> 00:08:55,756 僕も ここにある「居残り」を 聴いてみたんだけど➡ 121 00:08:55,756 --> 00:08:58,025 全部 違うんだ。➡ 122 00:08:58,025 --> 00:09:02,629 演者が何をもって粋とするかが 如実に出る噺なんだよ。➡ 123 00:09:02,629 --> 00:09:06,166 こんなにも 違いが出るもんなんですなぁ。 124 00:09:06,166 --> 00:09:10,487 へえ~。 師匠も 我が出る落語だって言ってました。 125 00:09:10,487 --> 00:09:13,023 だからこそ 君自身の居残り佐平次を➡ 126 00:09:13,023 --> 00:09:15,559 引き出せると思ったんだね。 127 00:09:15,559 --> 00:09:17,594 けど 僕からすれば➡ 128 00:09:17,594 --> 00:09:20,464 我を出すことも 一つの型にすぎない。 129 00:09:20,464 --> 00:09:22,499 ん? 130 00:09:22,499 --> 00:09:25,986 ははっ。 理屈で言っても分かんないか。 131 00:09:25,986 --> 00:09:28,388 何かに とらわれる必要はない。 132 00:09:28,388 --> 00:09:32,109 君が落語をどう思うか どうしたいか。➡ 133 00:09:32,109 --> 00:09:35,295 そこに 君の佐平次の答えは あるはずだよ。 134 00:09:35,295 --> 00:09:37,564 へい。 135 00:09:37,564 --> 00:09:41,118 [外:B20D4C6DE0912821D99C472B4DCC8328](名人)「ちきしょうめ。 ひでぇ野郎だ あいつ。➡ 136 00:09:41,118 --> 00:09:43,618 旦那! 大変でございます」…。 137 00:09:46,206 --> 00:09:48,225 (小夏)こら 信之助! (信之助)うわっ。 138 00:09:48,225 --> 00:09:50,925 (小夏)寝てなって言ったのに。 (信之助)は~い! 139 00:09:52,796 --> 00:09:54,831 ≫ドサッ はっ。 140 00:09:54,831 --> 00:09:56,867 ははははっ! ≪スーッ バン!(ふすまの音) 141 00:09:56,867 --> 00:09:58,885 あっ アネさん。 142 00:09:58,885 --> 00:10:01,204 なんだい 驚かせるんじゃないよ。 143 00:10:01,204 --> 00:10:03,306 へへっ へへへっ。 144 00:10:03,306 --> 00:10:06,193 (小夏) 何 笑ってんだい? 気色悪い。 145 00:10:06,193 --> 00:10:10,163 オイラ やっぱり 落語が好きだ。 (小夏)はっ? 146 00:10:10,163 --> 00:10:14,501 落語が好きで 落語に出てくるヤツらが大好きだ。 147 00:10:14,501 --> 00:10:16,501 自分のことより ずっとよ。 148 00:10:18,672 --> 00:10:22,092 そう。 いいかげんにして寝なよ。➡ 149 00:10:22,092 --> 00:10:24,578 親子会 もう あさってだろ。 痛っ。 150 00:10:24,578 --> 00:10:28,278 へい。 ヘへへへっ。 151 00:12:33,990 --> 00:12:36,042 ドン ドン ドン ドン…(太鼓の音) 152 00:12:36,042 --> 00:12:38,078 ドンドン ドンドン… 153 00:12:38,078 --> 00:12:41,348 ドンドンドン… 154 00:12:41,348 --> 00:12:43,567 パン パン(柏手) 155 00:12:43,567 --> 00:12:46,436 (小夏)失敗しませんように。 とちりませんように。➡ 156 00:12:46,436 --> 00:12:48,471 やらかしませんように…。 157 00:12:48,471 --> 00:12:51,057 アネさん 随分長ぇお祈りだな。 158 00:12:51,057 --> 00:12:53,860 (小夏)当たり前よ。 こんな大きいとこで➡ 159 00:12:53,860 --> 00:12:58,331 落語の鳴り物やれだなんて。 あたし まだ全然 下っ端なのに。➡ 160 00:12:58,331 --> 00:13:01,218 ほんとに えげつないじじいだわ。 161 00:13:01,218 --> 00:13:03,753 認めてくれてる ってことじゃねぇか。 162 00:13:03,753 --> 00:13:06,473 あんたの「居残り」だけでも 胃がキリキリするのに➡ 163 00:13:06,473 --> 00:13:08,842 もう吐きそう。 164 00:13:08,842 --> 00:13:12,512 (萬月)与太郎はん 小夏さん。 萬月アニさん! 165 00:13:12,512 --> 00:13:16,233 (萬月)親子会 おめでとうさん。 こんなとこいてええの?➡ 166 00:13:16,233 --> 00:13:19,302 坊ちゃん 大騒ぎして 松田はん 困ってはったで。 167 00:13:19,302 --> 00:13:21,802 (小夏)えっ!? あたし見てくるね。 168 00:13:23,456 --> 00:13:26,393 夫婦らしい見えて憎たらしいわ。➡ 169 00:13:26,393 --> 00:13:28,493 八雲師匠のとこ連れてってぇな。 170 00:13:31,898 --> 00:13:36,386 ここも懐かしいなぁ。 もう 10何年も たったんやな。 171 00:13:36,386 --> 00:13:38,421 八雲師匠の「鰍沢」と➡ 172 00:13:38,421 --> 00:13:41,007 あんたがアホしたことしか 覚えてへんわ。 173 00:13:41,007 --> 00:13:44,507 はははっ。 あんときゃ肝が冷えました。 174 00:13:46,546 --> 00:13:48,598 アニさん ちょっと待ってろな。 175 00:13:48,598 --> 00:13:52,135 タイミング外すと すげぇ怒ら…。 ≫与太! いるんだろ! 176 00:13:52,135 --> 00:13:54,771 ひっ… へい! 177 00:13:54,771 --> 00:13:56,790 どこ行ってたんだい。 178 00:13:56,790 --> 00:13:59,492 お前がいねぇから しっきりなしに人が来て➡ 179 00:13:59,492 --> 00:14:01,492 稽古ができねぇだろ! 180 00:14:03,296 --> 00:14:07,696 すいやせん…。 ほな 前から見させてもらいます。 181 00:14:12,022 --> 00:14:14,808 稽古は足りてんのかい? へい。 182 00:14:14,808 --> 00:14:18,862 そうかぇ。 ほかのことで 随分と忙しいってぇから➡ 183 00:14:18,862 --> 00:14:22,432 稽古が おろそかになってんのかと 思ってましたよ。 184 00:14:22,432 --> 00:14:26,319 へっ? お前さん 観音様の裏っ手の方➡ 185 00:14:26,319 --> 00:14:31,174 歩いてたってねぇ。 えっ? どうして それを…。 186 00:14:31,174 --> 00:14:34,861 うわさなんざ 嫌でも 耳に入ってくるよ。 187 00:14:34,861 --> 00:14:37,480 狭ぇ町だ まったく。 188 00:14:37,480 --> 00:14:41,301 ああ…。 お前さん 所帯持ったってぇのに➡ 189 00:14:41,301 --> 00:14:43,570 まだ あんなとこで遊んでんのかい? 190 00:14:43,570 --> 00:14:48,058 芸の肥やしもいいけれど あんまり おおっぴらにはしなさんな。 191 00:14:48,058 --> 00:14:52,095 あっ あっ… 違うんです 師匠。 ん? 192 00:14:52,095 --> 00:14:55,682 すいやせん 余計な心配 かけちまって。 193 00:14:55,682 --> 00:14:58,601 あすこに通ってんのは そうじゃねぇんです。 194 00:14:58,601 --> 00:15:01,001 どうしても 今日までに仕上げたくて。 195 00:15:08,995 --> 00:15:16,436 ♬~ 196 00:15:16,436 --> 00:15:19,436 鯉金 仕上げてめぇりやした。 197 00:15:20,907 --> 00:15:24,961 もう 中途半端はしたくねぇんで。 198 00:15:24,961 --> 00:15:29,299 いい色が刺した。 立派なもんじゃねぇか。 199 00:15:29,299 --> 00:15:31,668 ほんとは 師匠のお名前も 入れてもらおうかと➡ 200 00:15:31,668 --> 00:15:36,139 思ったんすけど。 おお~ 嫌だ。 勘弁しとくれ。 201 00:15:36,139 --> 00:15:39,192 ♬~ 202 00:15:39,192 --> 00:15:43,747 師匠 「居残り」を伝えてくださって ありがとうございやす。 203 00:15:43,747 --> 00:15:46,347 誠心誠意 務めさせていただきやす。 204 00:15:47,667 --> 00:15:50,570 てめぇの我を 目いっぱい出しなさい。 205 00:15:50,570 --> 00:15:54,674 佐平次を通して 己が見えてくるはずだよ。 206 00:15:54,674 --> 00:15:59,396 オイラ 「居残り」をさしてもらって 分かったことが一つあります。 207 00:15:59,396 --> 00:16:03,199 師匠に教わった「居残り」を 軸にして いろんな大師匠のも➡ 208 00:16:03,199 --> 00:16:06,002 聴き比べさせて いただいたんですが➡ 209 00:16:06,002 --> 00:16:09,439 おんなじ佐平次が 一人もいねぇってことです。 210 00:16:09,439 --> 00:16:13,243 佐平次ってのは 佐平次を演じる 落語家の顔をして➡ 211 00:16:13,243 --> 00:16:15,278 噺に出てくるんすね。 212 00:16:15,278 --> 00:16:19,065 けどさ オイラのは そうじゃねぇんだ。 213 00:16:19,065 --> 00:16:21,985 我を張れったって 我がねぇのがオイラです。 214 00:16:21,985 --> 00:16:25,071 ♬~ 215 00:16:25,071 --> 00:16:28,771 自分のことは空っぽにして 佐平次兄ィになりたい。 216 00:16:30,560 --> 00:16:33,960 あたしの言うことが 間違ぇてるってぇのかい? 217 00:16:35,498 --> 00:16:38,535 そんなやり方じゃ 人様の心の芯まで➡ 218 00:16:38,535 --> 00:16:41,337 届きゃしないよ。 219 00:16:41,337 --> 00:16:45,792 へえ。 でも それがいいと思っちまった。 220 00:16:45,792 --> 00:16:48,795 これが正解かどうか ちっとも分かりません。 221 00:16:48,795 --> 00:16:51,831 けど このやり方が オイラにゃ いちばん楽しいんで。 222 00:16:51,831 --> 00:16:54,931 楽しい? 落語が? 223 00:16:57,053 --> 00:17:00,753 もういい… 好きにしな。 へい! 224 00:17:02,659 --> 00:17:08,481 ♬~(出囃子) 225 00:17:08,481 --> 00:17:10,667 (観客)待ってました! (観客)与太ちゃん! 226 00:17:10,667 --> 00:17:13,086 (観客)三代目! (観客)助六! 227 00:17:13,086 --> 00:17:16,489 (樋口)よっ! どうも どうも。 どうも~ ははっ。 228 00:17:16,489 --> 00:17:21,344 ♬~(出囃子) 229 00:17:21,344 --> 00:17:25,098 (拍手) 230 00:17:25,098 --> 00:17:29,085 そちら様も そちら様も そちら様も➡ 231 00:17:29,085 --> 00:17:32,672 本日は お寒い中 いっぱいのお運び 誠に➡ 232 00:17:32,672 --> 00:17:36,109 おありがとうございます。 パチ パチ パチ…(拍手) 233 00:17:36,109 --> 00:17:38,745 いや ついに来ちまったよ 今日という日が。 234 00:17:38,745 --> 00:17:41,498 (観客たち)ははははっ。 ええ~➡ 235 00:17:41,498 --> 00:17:45,301 皆々様のお手元へ 舞い込みましたる 紙切れ一片。 236 00:17:45,301 --> 00:17:47,337 ひょいと のぞいていただきますれば➡ 237 00:17:47,337 --> 00:17:49,889 そちらに 本日の演目が書いてございます。 238 00:17:49,889 --> 00:17:53,076 まずは 私めが お耳慣らしに「錦の袈裟」。 239 00:17:53,076 --> 00:17:57,096 続いて 師匠の「反魂香」。 そして あたしの「居残り」! 240 00:17:57,096 --> 00:18:00,033 (観客たち)ははははっ。 ちょいと そこの人➡ 241 00:18:00,033 --> 00:18:02,135 笑わねぇでくれるかい。 242 00:18:02,135 --> 00:18:05,238 ≪そのあとは いよいよ…。 (小夏・ハミング)♬ ふん ふん… 243 00:18:05,238 --> 00:18:09,442 ≫お前さんも 負けず劣らず緊張してるねぇ。 244 00:18:09,442 --> 00:18:11,694 (小夏)あんたのせいで 胃がキリキリだよ。 245 00:18:11,694 --> 00:18:15,098 はははっ ざまぁねぇな。 246 00:18:15,098 --> 00:18:18,384 お前さんに 大事な仕事がある。 あっ。 247 00:18:18,384 --> 00:18:22,956 「反魂香」で焚いとくれ。 主催さんには言ってある。 248 00:18:22,956 --> 00:18:25,091 鳴り物の入るような噺は➡ 249 00:18:25,091 --> 00:18:28,111 これくらいは したって 野暮はねぇだろ。 250 00:18:28,111 --> 00:18:32,081 お前さんなら いい頃合いも分かるだろ。 251 00:18:32,081 --> 00:18:34,081 頼んだよ。 あっ…。 252 00:18:35,501 --> 00:18:38,171 (観客たち)ははははっ。 253 00:18:38,171 --> 00:18:41,841 「でさぁ みんなで 吉原 行こうっての。➡ 254 00:18:41,841 --> 00:18:44,494 そんなの あたいだって 殊の外 行きたいよ」。 255 00:18:44,494 --> 00:18:47,764 ≫(観客たち)ははははっ。 256 00:18:47,764 --> 00:18:52,852 あの野郎 やけに バカバカ笑わしやがる。 257 00:18:52,852 --> 00:18:55,505 やりにくくてしかたねぇや。 258 00:18:55,505 --> 00:18:58,007 ≪「買えるわけないだろう」。 ≪(観客たち)ははははっ。 259 00:18:58,007 --> 00:19:02,328 ♬~(出囃子) 260 00:19:02,328 --> 00:19:13,489 (拍手) 261 00:19:13,489 --> 00:19:17,994 ♬~(出囃子) 262 00:19:17,994 --> 00:19:22,231 ええ~ ただいまのは お三味線でございまして➡ 263 00:19:22,231 --> 00:19:25,685 三味線てぇのは 大変 陽気なものでございます。 264 00:19:25,685 --> 00:19:30,089 おんなじ鳴り物でも 木魚とくると 陰気になってきますなぁ。 265 00:19:30,089 --> 00:19:34,143 ≫木魚をたたいて 都々逸 歌ったてぇ人は聞きませんが。 266 00:19:34,143 --> 00:19:37,797 まあ なんにでも 陰陽というものはございます。 267 00:19:37,797 --> 00:19:40,466 寂しいのは何かてぇますと➡ 268 00:19:40,466 --> 00:19:44,304 夜中の一つ鉦ってやつでして…。 269 00:19:44,304 --> 00:19:47,607 カーン… カーン…。 270 00:19:47,607 --> 00:19:51,277 幼子が形見に残す風車。 271 00:19:51,277 --> 00:19:56,265 「南無やぁ 南無南無 南無阿弥陀…」。 272 00:19:56,265 --> 00:19:58,701 カーン…。 273 00:19:58,701 --> 00:20:02,555 「隣の坊主が また 夜んなると 鉦たたいてやがる。➡ 274 00:20:02,555 --> 00:20:05,858 寂しくって オイラ 寝つかれねぇ。 ちくしょう!➡ 275 00:20:05,858 --> 00:20:08,394 忌々しいから 文句言ってやろう。➡ 276 00:20:08,394 --> 00:20:11,264 お坊さん! ちょいと開けてくんねぇ。➡ 277 00:20:11,264 --> 00:20:15,585 お坊さん!」。 「おや お隣の八五郎さん。➡ 278 00:20:15,585 --> 00:20:18,721 ただいま開けますので 少々お待ちください。➡ 279 00:20:18,721 --> 00:20:22,258 夜分遅くに なんの御用入りですかな?」。 280 00:20:22,258 --> 00:20:26,763 「何か御用か? なんで 夜になって そうやって 鉦たたくんだい?➡ 281 00:20:26,763 --> 00:20:29,482 長屋の者が寝つかれねぇで 困ってんだよ」。 282 00:20:29,482 --> 00:20:33,569 「これは 誠に お耳障りで 相すいません。➡ 283 00:20:33,569 --> 00:20:37,256 これも 亡き妻の 回向のためでございまして。➡ 284 00:20:37,256 --> 00:20:40,643 ええ~ 私 これでも 若い時分は侍で➡ 285 00:20:40,643 --> 00:20:43,479 島田重三郎と申しました。➡ 286 00:20:43,479 --> 00:20:47,400 若気の至りで踏み入った吉原で 出会いましたのが➡ 287 00:20:47,400 --> 00:20:51,100 当時 全盛 『三浦屋』の高尾大夫。➡ 288 00:20:52,622 --> 00:20:57,477 いかなる過世の縁やら 互いに 真を明かし合い➡ 289 00:20:57,477 --> 00:20:59,996 末は 夫婦と言い交わし➡ 290 00:20:59,996 --> 00:21:05,668 末の松山 末かけて 互いに 起請を誓い合い…。➡ 291 00:21:05,668 --> 00:21:09,639 その後 高尾は 仙台侯に身請けされたが➡ 292 00:21:09,639 --> 00:21:13,192 拙者に操立てて 威勢に従わぬ。➡ 293 00:21:13,192 --> 00:21:17,563 それがため 三股川にて お手討ちと相なった。➡ 294 00:21:17,563 --> 00:21:20,500 それが不憫で 毎夜 回向の折➡ 295 00:21:20,500 --> 00:21:24,670 この 魂返す反魂香を焚いて 弔っておる。➡ 296 00:21:24,670 --> 00:21:29,625 この反魂香も あと僅かゆえ 何とぞ しばし ご容赦を」。 297 00:21:29,625 --> 00:21:34,163 「はあ~ そうかい。 そらぁ知らなかった。➡ 298 00:21:34,163 --> 00:21:36,999 じゃあ ここで一つ その反魂香というのを➡ 299 00:21:36,999 --> 00:21:39,769 くべてみつくれ。 本当に出やがるか➡ 300 00:21:39,769 --> 00:21:42,822 この目で見てみてぇや」。 「う~ん…➡ 301 00:21:42,822 --> 00:21:45,858 疑念を晴らすには やむをえぬこと。➡ 302 00:21:45,858 --> 00:21:47,858 一粒だけじゃ」。 303 00:21:50,163 --> 00:21:52,982 「かよう 火鉢に入れますと…」。 304 00:21:52,982 --> 00:21:57,170 ♬~(地囃子) 305 00:21:57,170 --> 00:22:02,825 「おお… そちゃ女房 高尾じゃないか」。 306 00:22:02,825 --> 00:22:08,064 「お前は 島田じゅうざ様。➡ 307 00:22:08,064 --> 00:22:11,567 取り交わせし反魂香。➡ 308 00:22:11,567 --> 00:22:16,305 香の切れ目が 縁の切れ目。➡ 309 00:22:16,305 --> 00:22:22,628 あだにゃあ焚いてぇ くだしゃんすなぁ」。 310 00:22:22,628 --> 00:22:25,164 「そりゃ焚くまいと思えども➡ 311 00:22:25,164 --> 00:22:30,870 そなたの顔が見たきゆえ 俗名 高尾!➡ 312 00:22:30,870 --> 00:22:35,174 頓証菩提 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…」。 313 00:22:35,174 --> 00:22:39,774 ♬~(地囃子) 314 00:22:41,197 --> 00:22:43,232 「なんでぇ あのしみったれ➡ 315 00:22:43,232 --> 00:22:46,068 少し分けてくれたって いいじゃねぇか。➡ 316 00:22:46,068 --> 00:22:48,621 あんなもん見せられたら お前 俺だって➡ 317 00:22:48,621 --> 00:22:51,958 3年前に亡くした かかあに 会いたくなっちまったよ。➡ 318 00:22:51,958 --> 00:22:53,993 こんなときは生薬屋だな」。 319 00:22:53,993 --> 00:22:56,996 トン トン トン 「お~い 薬屋さん!➡ 320 00:22:56,996 --> 00:22:59,031 いけねぇな どうも…。 歩いてたら➡ 321 00:22:59,031 --> 00:23:02,368 香の名前 忘れちまった。 何があるんだい?➡ 322 00:23:02,368 --> 00:23:05,004 んん~ 何? 何? 越中富山の…➡ 323 00:23:05,004 --> 00:23:07,039 反魂丹!➡ 324 00:23:07,039 --> 00:23:10,126 それだ! それ 300くれ。➡ 325 00:23:10,126 --> 00:23:14,564 どうでぇ 300も買ってやったぞ あのしみったれ坊主。➡ 326 00:23:14,564 --> 00:23:17,934 今度は 逆に 俺が寝かせねぇからな。➡ 327 00:23:17,934 --> 00:23:22,288 さあ おうめ~ 出ておいで~と。➡ 328 00:23:22,288 --> 00:23:25,388 いとしい おうめ~…」。 329 00:23:26,843 --> 00:23:37,136 ♬~(地囃子) 330 00:23:37,136 --> 00:23:39,722 あっ…。 331 00:23:39,722 --> 00:23:41,757 (みよ吉)ふふっ。 332 00:23:41,757 --> 00:23:44,243 うっ! (小夏)はっ! 333 00:23:44,243 --> 00:23:48,631 はぁ はぁ はぁ はぁ…。 334 00:23:48,631 --> 00:23:50,900 「お… おかしいな。➡ 335 00:23:50,900 --> 00:23:54,487 煙ばかりで 出てきゃしねぇ…」。 336 00:23:54,487 --> 00:23:58,591 トン トン トン 「ちょいと はっつぁん 開けとくれ」。 337 00:23:58,591 --> 00:24:02,378 「なんだ… 表から 堂々と来やがるのかい」。 338 00:24:02,378 --> 00:24:05,998 「いや あたしゃ 隣の おさきだよ。➡ 339 00:24:05,998 --> 00:24:09,535 さっきから きな臭ぇのは おまはんとこだね」。 340 00:24:09,535 --> 00:24:12,104 (観客たち)ははははっ。 341 00:24:12,104 --> 00:24:15,191 「反魂香」という… お噺でした。 342 00:24:15,191 --> 00:24:27,453 (拍手) 343 00:24:27,453 --> 00:24:29,453 キィーン…(ハウリング) 師匠! 344 00:24:32,341 --> 00:24:34,510 (みよ吉)菊さん。 345 00:24:34,510 --> 00:24:40,967 ♬~ 346 00:24:40,967 --> 00:24:45,321 (心の声) ≪いとしい いとしい 俺の…≫ 347 00:24:45,321 --> 00:24:47,673 はぁ はぁ…。 348 00:24:47,673 --> 00:24:58,334 ♬~ 349 00:24:58,334 --> 00:25:01,804 ≪あたしゃ まだ あの人に➡ 350 00:25:01,804 --> 00:25:04,404 未練があるってぇのかい?≫ 351 00:25:06,192 --> 00:25:08,511 ≪冗談じゃねぇや≫ 352 00:25:08,511 --> 00:25:15,584 ♬~ 353 00:25:15,584 --> 00:25:18,337 んん… あっ。 354 00:25:18,337 --> 00:25:22,692 ♬~ 355 00:25:22,692 --> 00:25:24,927 ははっ…。 356 00:25:24,927 --> 00:25:27,430 (助六)どうして来たぃ? 357 00:25:27,430 --> 00:25:31,567 お前さん やっと口利いたね。 358 00:25:31,567 --> 00:25:36,772 あっ みよ吉さんは? ここは どこなんだい? 359 00:25:36,772 --> 00:25:40,109 このろうそくは 何なんです? 360 00:25:40,109 --> 00:25:44,109 極楽か? そいとも地獄かい? 361 00:25:46,699 --> 00:25:50,299 (助六)坊 すまねぇ。 ああっ! 362 00:25:53,039 --> 00:25:56,439 うっ ううっ… ああ…。 363 00:26:01,380 --> 00:26:21,333 ♬~ 364 00:26:21,333 --> 00:26:41,320 ♬~ 365 00:26:41,320 --> 00:27:01,357 ♬~ 366 00:27:01,357 --> 00:27:21,343 ♬~ 367 00:27:21,343 --> 00:27:29,643 ♬~ 368 00:29:02,995 --> 00:29:11,337 ♬~ 369 00:29:11,337 --> 00:29:18,160 ♬~ 370 00:29:18,160 --> 00:29:24,600 次回 「昭和元禄落語心中 -助六再び篇-」 第6話。 371 00:29:24,600 --> 00:29:28,000 どうぞ ご贔屓 ご鞭撻のほどを。