1 00:01:35,358 --> 00:01:55,378 ♬~ 2 00:01:55,378 --> 00:02:15,364 ♬~ 3 00:02:15,364 --> 00:02:29,145 ♬~ 4 00:02:29,145 --> 00:02:33,533 ♬~ 5 00:02:33,533 --> 00:02:41,633 ♬~ 6 00:02:45,511 --> 00:03:03,611 ♬~ 7 00:03:08,651 --> 00:03:11,351 (席亭)なんでも 原因が 分かんねぇってんだよ。 8 00:03:13,422 --> 00:03:16,209 コンロでも 電気でも 火鉢でもねぇ。 9 00:03:16,209 --> 00:03:20,279 そういうのは 不審火ってんで おとがめは なしでいいんだってよ。 10 00:03:20,279 --> 00:03:22,298 (小太郎)はぁ…。 11 00:03:22,298 --> 00:03:25,918 (席亭)寄席中 至る所に火元があったてぇんだ。➡ 12 00:03:25,918 --> 00:03:28,818 起きちまったことは しょうがねぇんだからな。 13 00:03:32,175 --> 00:03:36,612 (樋口)ちょっといい? 八雲師匠は お一人で 何をされてたの? 14 00:03:36,612 --> 00:03:40,766 (小太郎)私は いつものように 高座の支度をして…➡ 15 00:03:40,766 --> 00:03:43,352 そこに お一人で座ってらしたんです。 16 00:03:43,352 --> 00:03:46,956 ♬~ 17 00:03:46,956 --> 00:03:50,893 (小太郎)出ようと思ったら 声が聞こえてまいりました。 18 00:03:50,893 --> 00:03:53,963 落語をされていたと 思うんですが➡ 19 00:03:53,963 --> 00:03:57,550 その声が なんだか この世のものじゃないみたいで➡ 20 00:03:57,550 --> 00:04:02,622 無性に怖くなって 逃げるように出てしまったんです。 21 00:04:02,622 --> 00:04:05,091 (樋口)その演目は もしかして…。 22 00:04:05,091 --> 00:04:08,361 (萬月)先生! 余計な詮索は おやめやす。➡ 23 00:04:08,361 --> 00:04:11,631 そういうの こっちでは野暮って言うんやて。➡ 24 00:04:11,631 --> 00:04:14,350 僕にかて分かるわ。 (樋口)んん…。 25 00:04:14,350 --> 00:04:18,738 (萬月)高座の上のことは 芸人にしか分からしまへん。 26 00:04:18,738 --> 00:04:21,557 (樋口)やめてたじゃん。 (萬月)別にええやん。 27 00:04:21,557 --> 00:04:24,560 (アニさん) 終わりだ…。 お先 真っ暗だ。 28 00:04:24,560 --> 00:04:27,396 (与太郎)ん? アニさん。 29 00:04:27,396 --> 00:04:31,083 いたんですかい。 (アニさん)うち 近いからね。➡ 30 00:04:31,083 --> 00:04:34,570 職場が燃えてるのに 寝てられるかい。➡ 31 00:04:34,570 --> 00:04:37,823 知らなかったろ 君。 僕はね➡ 32 00:04:37,823 --> 00:04:41,394 最近 ここで もぎりのバイト やってんだ。 33 00:04:41,394 --> 00:04:44,196 落語だけじゃ食えないからさ。➡ 34 00:04:44,196 --> 00:04:48,296 でも ここにいるだけで 落語に しがみついてられたんだ。 35 00:04:49,986 --> 00:04:52,288 ここがなくなるってことは➡ 36 00:04:52,288 --> 00:04:55,841 そういうものも全部 パァになるってことさ。➡ 37 00:04:55,841 --> 00:04:59,395 人生終わりだ…。 何言ってんでぇ。 38 00:04:59,395 --> 00:05:03,849 なくなっちゃいねぇよ。 ほら 目ぇかっぽじって よく見ろぃ。 39 00:05:03,849 --> 00:05:07,687 はいはい。 人生に区切りがついたら➡ 40 00:05:07,687 --> 00:05:09,987 お前らみんな とっとと帰れ。 41 00:05:14,243 --> 00:05:16,429 はぁ~っと。 (席亭)与太ちゃん➡ 42 00:05:16,429 --> 00:05:19,415 今日は 片づけはいいよ。➡ 43 00:05:19,415 --> 00:05:22,702 こんな寒い中 すまなかったなぁ。 44 00:05:22,702 --> 00:05:25,471 救急車に 付き添ってやりたかったろ。➡ 45 00:05:25,471 --> 00:05:30,042 病院行ってやんなよ。 アネさんと松田さんもいるんで。 46 00:05:30,042 --> 00:05:32,695 それに こういうときに オイラが そばにいると➡ 47 00:05:32,695 --> 00:05:34,964 師匠 嫌がるんで。 48 00:05:34,964 --> 00:05:39,364 あの人が生きてたことが 何よりの幸いだよ。 49 00:05:42,388 --> 00:05:44,407 (席亭)あんなふうに やけどを負っちゃあ➡ 50 00:05:44,407 --> 00:05:48,461 高座へ上がんのは ますます難しかろうが…➡ 51 00:05:48,461 --> 00:05:52,561 ここの大看板を長ぇこと 一人で背負ってくれたんだ。➡ 52 00:05:53,983 --> 00:05:58,283 恩こそあれ 恨みなんざ これっぽっちもねぇからな。➡ 53 00:05:59,922 --> 00:06:02,692 これからの 落語のことを考ぇると➡ 54 00:06:02,692 --> 00:06:06,846 途方に暮れちまうけど まっ 元気でいりゃ➡ 55 00:06:06,846 --> 00:06:10,816 落語なんざ どこだってできる。 なあ 与太公。➡ 56 00:06:10,816 --> 00:06:14,620 それが 俺たちの いちばんの強みだろ。 57 00:06:14,620 --> 00:06:16,620 最近 よく思うんだ。➡ 58 00:06:18,491 --> 00:06:21,791 お前がいてくれて ほんとによかったって。➡ 59 00:06:24,013 --> 00:06:26,882 じき 春だ。 60 00:06:26,882 --> 00:06:29,185 人さえいりゃ なんとかなる。 61 00:06:29,185 --> 00:06:38,344 ♬~ 62 00:06:38,344 --> 00:06:49,644 ♬~ 63 00:06:51,190 --> 00:06:55,945 (小夏)匂いがする。 いい匂い。 64 00:06:55,945 --> 00:06:58,898 だべ? オイラ 桜に匂いがあるなんて➡ 65 00:06:58,898 --> 00:07:02,068 知らなかったぜ。 師匠に お見舞いって➡ 66 00:07:02,068 --> 00:07:04,168 団子屋のおばちゃんに もらったんだ。 67 00:07:05,855 --> 00:07:09,925 はぁ~。 アネさん パート 12時からだっけ? 68 00:07:09,925 --> 00:07:13,662 うん そう。 いい仕事 見つかってよかったな。 69 00:07:13,662 --> 00:07:16,215 この喫茶店なら なじみだし 安心だべ。 70 00:07:16,215 --> 00:07:19,051 まったくよ。 寄席がなけりゃ➡ 71 00:07:19,051 --> 00:07:22,621 あのおっさんと二人で ずっと 家にいるしかないんだからさぁ。 72 00:07:22,621 --> 00:07:26,258 ほんとに いつまでたっても 仲が悪ぃな。 73 00:07:26,258 --> 00:07:28,994 (小夏)犬と猿みてぇなもんさ。 74 00:07:28,994 --> 00:07:31,764 師匠 あんなに かっこいいのに。 75 00:07:31,764 --> 00:07:35,117 (小夏)八雲バカには 分からねぇ感情だよ。➡ 76 00:07:35,117 --> 00:07:38,988 あのさ お団子 早く開けて。 まだ あったかいんだろ? 77 00:07:38,988 --> 00:07:42,024 へいへい。 アネさんの大好物➡ 78 00:07:42,024 --> 00:07:46,545 蜜たっぷりにしてもらいやしたぜ。 ちょいと たれてるよ! 79 00:07:46,545 --> 00:07:48,581 お~っとっとっと…。 (小夏)なめないで!➡ 80 00:07:48,581 --> 00:07:51,117 「初天神」じゃねぇんだから。 えへへへっ。 81 00:07:51,117 --> 00:07:53,117 そのまま持ってて。 82 00:07:55,054 --> 00:07:57,523 ふふふ~ん。 83 00:07:57,523 --> 00:08:01,323 ん? ふふふふっ なんでもねぇで~す。 84 00:08:03,979 --> 00:08:08,501 アネさん 最近 団子ブームか? しょっちゅう食ってんな。 85 00:08:08,501 --> 00:08:10,820 (小夏)しんちゃんときも そうだったんだわ。 86 00:08:10,820 --> 00:08:12,855 へえ~。 私➡ 87 00:08:12,855 --> 00:08:15,624 甘いもんが食べたくなるみたい。 88 00:08:15,624 --> 00:08:19,762 へえ~。 (小夏)ってなわけで よろしくな。 89 00:08:19,762 --> 00:08:23,749 何が? (小夏)何がじゃないよ 察しなよ。 90 00:08:23,749 --> 00:08:27,403 えっ 何が? (小夏)まだ分かんないのかい?➡ 91 00:08:27,403 --> 00:08:30,356 この与太郎は…。➡ 92 00:08:30,356 --> 00:08:32,756 面倒だから すっぱり言うよ。 93 00:08:34,026 --> 00:08:37,163 赤ん坊 できたの。 94 00:08:37,163 --> 00:08:39,198 えっ…。 95 00:08:39,198 --> 00:08:43,035 ♬~ 96 00:08:43,035 --> 00:08:45,321 あんたの子だよ。 97 00:08:45,321 --> 00:08:50,326 ア ア… アネさ~ん! 98 00:08:50,326 --> 00:08:53,729 (小夏)家族が増えるよ。 うん…。 99 00:08:53,729 --> 00:08:57,766 (小夏)うれしいね 与太。 うん! 100 00:08:57,766 --> 00:09:00,619 うう~! うぅ…。 101 00:09:00,619 --> 00:09:03,255 (小夏)泣くんじゃないよ。 102 00:09:03,255 --> 00:09:07,293 よかったな… やっとだ。 うぅ…。 103 00:09:07,293 --> 00:09:11,881 うん。 うぅ… ううっ…。 104 00:09:11,881 --> 00:09:15,167 もう離れて。 着物 汚れんだろ。 105 00:09:15,167 --> 00:09:17,203 ああ~ すいやせん。 106 00:09:17,203 --> 00:09:22,274 ♬~ 107 00:09:22,274 --> 00:09:26,328 名前 何がいいかな? 師匠に付けてもらおっかな~。 108 00:09:26,328 --> 00:09:29,031 (小夏)出たよ 八雲バカ。 109 00:09:29,031 --> 00:09:31,634 お待たせ~。 先生! 110 00:09:31,634 --> 00:09:35,487 もう一人 八雲バカが来やがった。 ひひひっ。 111 00:09:35,487 --> 00:09:39,124 (小夏)じゃあ あたし そろそろ仕事始まるから。➡ 112 00:09:39,124 --> 00:09:42,361 今晩 夕飯は? 食べる~! 113 00:09:42,361 --> 00:09:45,297 夕方のラジオ 聴いてね。 今日は アネさんの➡ 114 00:09:45,297 --> 00:09:47,716 いっちゃん好きなネタ 掛けてやっからよぉ。 115 00:09:47,716 --> 00:09:51,616 うふふっ 楽しみ。 じゃあね。 116 00:09:53,155 --> 00:09:55,174 へへへっ。 よっ。 117 00:09:55,174 --> 00:09:58,227 いってぇな! 何すんだよ~。 118 00:09:58,227 --> 00:10:01,627 お幸せそうで。 えへへへっ! 119 00:10:05,067 --> 00:10:08,220 (樋口)ねえ 与太さん ラジオ 好評だってよ。 120 00:10:08,220 --> 00:10:11,257 ありがてぇや。 テレビに いくら出たって➡ 121 00:10:11,257 --> 00:10:14,393 好きな落語なんざ やらせてもらえねぇしな。 122 00:10:14,393 --> 00:10:17,947 落語をやらせてもらえんなら 俺ぁ どこだって飛んでくぜぇ。 123 00:10:17,947 --> 00:10:23,035 ひひひっ。 なあ 先生 新作って まだ作ってんの? 124 00:10:23,035 --> 00:10:27,089 なんと! ついに 新作に 興味を示してくれるのかい? 125 00:10:27,089 --> 00:10:30,059 初めてのことですなぁ。 なんべん言っても➡ 126 00:10:30,059 --> 00:10:32,161 のれんに腕押しで 君は もはや➡ 127 00:10:32,161 --> 00:10:36,548 完全に 古典派になったのかと 思っておりましたがねぇ。 128 00:10:36,548 --> 00:10:41,487 いや~ すばらしい傾向ですな。 たっくさん出来てるんですよ。 129 00:10:41,487 --> 00:10:43,539 タイトル 聞きます?➡ 130 00:10:43,539 --> 00:10:47,843 「たぬき売り」 「与太郎包丁」 「時間風呂」 「三文芝居」。 131 00:10:47,843 --> 00:10:51,714 与太さん用に作ったやつですよ。 まだまだあります。 132 00:10:51,714 --> 00:10:54,533 これからは 古典になりうる 新作というものを…。 133 00:10:54,533 --> 00:10:59,054 あのさ そういうんじゃなくて 女の人の落語ってねぇの? 134 00:10:59,054 --> 00:11:02,424 はあ? 女? 廓噺ってこと? 135 00:11:02,424 --> 00:11:05,694 いや そうじゃなくて 女の人がやった方が➡ 136 00:11:05,694 --> 00:11:07,963 面白くなんのもあんだろ? 137 00:11:07,963 --> 00:11:11,784 何それ? どういうこと? う~ん…➡ 138 00:11:11,784 --> 00:11:14,837 オイラにも うまく説明できねぇんだ。 139 00:11:14,837 --> 00:11:17,456 まあいいや。 いちばん上のやつ 見して。 140 00:11:17,456 --> 00:11:19,456 はい! 141 00:11:22,444 --> 00:11:24,444 う~ん…。 142 00:11:25,748 --> 00:11:28,033 分かんねぇ。 なんだよ それ! 143 00:11:28,033 --> 00:11:30,786 3行も 読んでないんじゃないかね 君は! 144 00:11:30,786 --> 00:11:34,189 落語ってのは 口に出して しゃべって➡ 145 00:11:34,189 --> 00:11:37,676 客の前に出して それを こねくり回して➡ 146 00:11:37,676 --> 00:11:41,776 なんべんも なんべんも失敗して そいから やっと始まんだよ。 147 00:11:43,265 --> 00:11:45,517 ついに 新作に取りかかってくれる気に➡ 148 00:11:45,517 --> 00:11:49,888 なったんですか? いや やらねぇな。 149 00:11:49,888 --> 00:11:53,425 師匠の目の黒いうちは 絶対にやらねぇ。 150 00:11:53,425 --> 00:11:56,528 オイラ 師匠に 嫌われたくねぇんだ。 151 00:11:56,528 --> 00:11:58,564 はぁ… そんなことじゃ➡ 152 00:11:58,564 --> 00:12:01,200 いつまでたっても 師匠を超えられんよ。 153 00:12:01,200 --> 00:12:03,700 そいでいいんだよ。 ん? 154 00:12:05,254 --> 00:12:09,491 オイラ 師匠の背中を見てんのが いちばん好きだ。 155 00:12:09,491 --> 00:12:12,928 師匠ってのは超えるもんじゃねぇ。 156 00:12:12,928 --> 00:12:17,528 別々の道を おんなじ方を見て 少し後ろを歩いてく。 157 00:12:19,201 --> 00:12:22,087 仲間ってぇたら変だけど➡ 158 00:12:22,087 --> 00:12:25,387 そうだな… 同志みてぇなもんだ。 159 00:12:26,809 --> 00:12:30,796 オイラは 師匠の落語を 生涯 愛していくよ。 160 00:12:30,796 --> 00:12:34,533 超えちまったら愛せねぇだろ? へへっ。 161 00:12:34,533 --> 00:12:37,933 愛せるもんは 多けりゃ多いほどいいんだ。 162 00:12:39,338 --> 00:12:41,338 ふふふっ。 163 00:14:44,780 --> 00:14:46,780 スゥー スゥー(嗅ぐ音) 164 00:14:53,722 --> 00:14:57,226 (有楽亭八雲) 桜 どこかで盗ってきたんかぇ? 165 00:14:57,226 --> 00:15:01,046 なわけねぇだろ。 団子屋のおばちゃんにもらったの。 166 00:15:01,046 --> 00:15:04,066 あんたへの お見舞いだと。 花見がしたいって➡ 167 00:15:04,066 --> 00:15:06,368 ずっと言ってたろ。 168 00:15:06,368 --> 00:15:10,068 そばへ持ってきとくれ。 起きて平気? 169 00:15:11,707 --> 00:15:14,407 今日は体が軽いんだよ。 170 00:15:17,312 --> 00:15:20,112 あぁ… もう 煩わしい。 171 00:15:24,686 --> 00:15:29,291 (小夏)痛む? 痛みはないよ。 172 00:15:29,291 --> 00:15:33,862 さっき しとっ風呂浴びたら 包帯を湿らしちまったんだ。 173 00:15:33,862 --> 00:15:38,884 (小夏)勝手に一人で入ったのかい。 危ないだろ。➡ 174 00:15:38,884 --> 00:15:40,884 ひなたへ移る? 175 00:15:51,613 --> 00:15:55,113 頭もボサボサ… くし やる? 176 00:15:57,302 --> 00:16:03,442 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] ♬~(三味線の演奏) 177 00:16:03,442 --> 00:16:05,961 そのラジオ 何なんだぇ。 178 00:16:05,961 --> 00:16:09,381 (小夏) このあと 与太が出るんだって。 179 00:16:09,381 --> 00:16:12,451 そうかぇ。 180 00:16:12,451 --> 00:16:17,789 この庭にも 桜くれぇ 植えてやりゃあよかったな。 181 00:16:17,789 --> 00:16:21,360 お前さんの 子供の時分に植えてりゃ➡ 182 00:16:21,360 --> 00:16:23,629 そろそろ見頃だったろうよ。 183 00:16:23,629 --> 00:16:25,647 何言ってやんでぇ。 184 00:16:25,647 --> 00:16:27,816 あたしのために してくれたことなんざ➡ 185 00:16:27,816 --> 00:16:32,754 一つもねぇだろ。 小さい頃 散髪してやったろ。 186 00:16:32,754 --> 00:16:35,557 そんだけじゃないか。 187 00:16:35,557 --> 00:16:38,427 こうして ぼんやり過ごしてると➡ 188 00:16:38,427 --> 00:16:41,530 そういうことばっかりに 気が付くんだ。 189 00:16:41,530 --> 00:16:45,083 落語以外のあらゆることをね。 190 00:16:45,083 --> 00:16:47,135 ほかにも いろいろ➡ 191 00:16:47,135 --> 00:16:50,935 してやりゃあよかったことが たくさんあらぁな。 192 00:16:52,557 --> 00:16:55,661 落語は もう おしまい? 193 00:16:55,661 --> 00:16:58,747 ああ。 もう怖くってね。 194 00:16:58,747 --> 00:17:01,900 (小夏)怖いって 母さんのこと? 195 00:17:01,900 --> 00:17:05,754 あんた そのうち 取り殺されるんじゃないのかい? 196 00:17:05,754 --> 00:17:08,307 お前さんは あの人のことを➡ 197 00:17:08,307 --> 00:17:11,343 少~し 思い違いしているね。 198 00:17:11,343 --> 00:17:16,615 みよ吉さんは あたしといるときは 大層 優しかったよ。 199 00:17:16,615 --> 00:17:20,819 あの人には 女の人の酸いも 甘いも➡ 200 00:17:20,819 --> 00:17:26,425 苦しみも ぬくもりも 冷たさも みんな教わった。 201 00:17:26,425 --> 00:17:32,025 そして 落語を与えてくれたのは ほかでもない助六さん。 202 00:17:34,683 --> 00:17:40,022 あたしの味気ない人生に 色を与えた二人だ。 203 00:17:40,022 --> 00:17:43,425 永遠に手が届かない二人…。 204 00:17:43,425 --> 00:17:47,979 (小夏)へえ~。 じゃあ どうして殺したの? 205 00:17:47,979 --> 00:17:52,484 さあ… どうしてかね。 206 00:17:52,484 --> 00:17:56,421 あたしゃ あの人と心中しようとしたんだ。 207 00:17:56,421 --> 00:17:59,725 それを身代わりになってくれた。 208 00:17:59,725 --> 00:18:05,625 そして あたしゃ死に損なって 一生かけて心中の罪を償ってる。 209 00:18:07,315 --> 00:18:09,515 そいだけのことさ。 210 00:18:15,207 --> 00:18:18,760 あんたも死にゃあよかったね。 211 00:18:18,760 --> 00:18:23,260 お前さん抱ぇて 死んでる暇なんかあるかい。 212 00:18:26,068 --> 00:18:31,957 じゃあ あたしがいなけりゃ そんなに苦しまなかった? 213 00:18:31,957 --> 00:18:37,357 お前さんのおかげで 後悔してる暇なんざ なかったよ。 214 00:18:38,830 --> 00:18:43,318 子供ってのぁ 本当に 毎日毎日 せわしなくて➡ 215 00:18:43,318 --> 00:18:47,556 いくら眺めてたって飽きねぇんだ。 216 00:18:47,556 --> 00:18:52,094 なあ 小夏 なんて顔してんだい。 217 00:18:52,094 --> 00:18:54,730 そんな目で見ないでおくれ。 218 00:18:54,730 --> 00:19:03,622 ♬~ 219 00:19:03,622 --> 00:19:08,276 どうしたんだぇ。 今日は やけに甘えるじゃねぇか。 220 00:19:08,276 --> 00:19:10,576 あたしの血が そうさせるのよ。 221 00:19:12,931 --> 00:19:17,819 ふんぎりは つけたってぇたろ。 そうだよ。➡ 222 00:19:17,819 --> 00:19:23,258 でも もう この気持ちに 名前なんて付けられない。 223 00:19:23,258 --> 00:19:28,163 憎んだり 甘えたり 泣いたり せわしないね。 224 00:19:28,163 --> 00:19:31,983 人間なんてなぁ そんなような 訳の分からねぇ➡ 225 00:19:31,983 --> 00:19:36,883 心持ちで出来てんだ 落語みてぇにな。 226 00:19:38,990 --> 00:19:42,661 あたしのこと 見捨てないで育ててくれて➡ 227 00:19:42,661 --> 00:19:46,948 ありがとう。 あいよ。 228 00:19:46,948 --> 00:19:50,252 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] ♬~(出囃子) 229 00:19:50,252 --> 00:19:53,121 (小夏)あっ 与太。 始まった。 230 00:19:53,121 --> 00:19:57,125 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] ええ~ どうも。 一席 おつきあいを願いまして…。➡ 231 00:19:57,125 --> 00:19:59,795 ええ~ この… 道楽なんてぇますが。➡ 232 00:19:59,795 --> 00:20:02,697 十人寄ると気は十色といいます。➡ 233 00:20:02,697 --> 00:20:05,083 好物なんてのも 変わってまいりますな。➡ 234 00:20:05,083 --> 00:20:07,419 「どうです? 肉なんか つついて この~➡ 235 00:20:07,419 --> 00:20:10,422 ちょいと 一杯やろうっての どう?」。 236 00:20:10,422 --> 00:20:13,058 「野ざらし」! [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「嫌いかい?」。➡ 237 00:20:13,058 --> 00:20:15,327 「いえ 大好きです」。➡ 238 00:20:15,327 --> 00:20:17,662 「なんだよ。 じゃあ お前さんは?」。➡ 239 00:20:17,662 --> 00:20:19,714 「オイラは 煮魚の方が好き」。➡ 240 00:20:19,714 --> 00:20:22,818 「オイラは 菜っぱ!」。 「鳥だね この人ぁ。➡ 241 00:20:22,818 --> 00:20:26,254 お前さん どうだい?」。 「天ぷら! 天ぷら 天ぷら!」。➡ 242 00:20:26,254 --> 00:20:28,356 「分かったよ。 唾が掛かんねぇように➡ 243 00:20:28,356 --> 00:20:31,693 やってもらいてぇなぁ」。 「じゃあ 天ふら」。➡ 244 00:20:31,693 --> 00:20:35,497 「なんだってんだい そりゃ」。 てんで 変わってまいります。➡ 245 00:20:35,497 --> 00:20:37,866 道楽も また同じってんで…。➡ 246 00:20:37,866 --> 00:20:40,318 道楽の一つに 釣りってのがありまして➡ 247 00:20:40,318 --> 00:20:42,354 陸釣りなどをしてるってぇと➡ 248 00:20:42,354 --> 00:20:45,457 同じ釣り好きが 後ろへ回って見物だ。➡ 249 00:20:45,457 --> 00:20:48,927 大きな荷物をしょいながら 浮きと にらめっこ。➡ 250 00:20:48,927 --> 00:20:53,031 浮きの浮き沈みと同じように こう 首が動いちまってる。➡ 251 00:20:53,031 --> 00:20:56,885 「はあ~っと! あっ 餌 取られちまったな。➡ 252 00:20:56,885 --> 00:21:00,021 こう もう少し きゅったぁ できねぇのかい。➡ 253 00:21:00,021 --> 00:21:03,024 おいおいおい 右の竿 こら 右の竿!➡ 254 00:21:03,024 --> 00:21:06,011 なかなか いるじゃねぇか ここは」。➡ 255 00:21:06,011 --> 00:21:08,847 「うるせぇな この人ぁ。 どうでもいいだろう」。➡ 256 00:21:08,847 --> 00:21:10,999 「いやいやいや どうでもよくねぇんだよ。➡ 257 00:21:10,999 --> 00:21:14,870 どうにかしてくれ。 オイラ 忙しいんだよ」。➡ 258 00:21:14,870 --> 00:21:17,088 忙しかったら そんなことしねぇで➡ 259 00:21:17,088 --> 00:21:19,407 早く出かけりゃいいんで…。➡ 260 00:21:19,407 --> 00:21:22,410 「やいやい やいやい 先生。 先生 いるかい?」。➡ 261 00:21:22,410 --> 00:21:25,096 「どうした? だいぶ 朝からご立腹で」。➡ 262 00:21:25,096 --> 00:21:27,482 「ゆんべの女 どっから引っ張ってきやがった。➡ 263 00:21:27,482 --> 00:21:30,018 毎日 釣り竿 担いで 向島へ行きやがって。➡ 264 00:21:30,018 --> 00:21:32,170 世の中を去ってるなんて 言いやがって➡ 265 00:21:32,170 --> 00:21:34,589 どうも変だと思ってたんだ。 やい!➡ 266 00:21:34,589 --> 00:21:37,125 こちとら ゆんべは 一杯飲んで うたた寝よ。➡ 267 00:21:37,125 --> 00:21:39,261 夜中に 寒いってんで ひょいと目ぇ覚ますと➡ 268 00:21:39,261 --> 00:21:41,279 お前さんのところで ひそひそ声。➡ 269 00:21:41,279 --> 00:21:44,232 はて 先生は独り者。 相手のいようはずもなしと➡ 270 00:21:44,232 --> 00:21:47,636 聞き耳を立ててみると 相手の声が女。➡ 271 00:21:47,636 --> 00:21:50,221 それだよ ますます勘弁できねぇ。➡ 272 00:21:50,221 --> 00:21:52,474 ふだんに言う口と違うじゃねぇか」。 ふふっ。 273 00:21:52,474 --> 00:21:55,574 えらく威勢のよすぎる八五郎だね。 274 00:21:57,045 --> 00:21:59,581 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「ご存じのように わしは釣り好き。➡ 275 00:21:59,581 --> 00:22:02,367 彼岸中のハゼは 中気のまじないになるから➡ 276 00:22:02,367 --> 00:22:04,669 ぜひ頼むと お前さんに言われたのが➡ 277 00:22:04,669 --> 00:22:07,455 頭にあったので 釣り竿をかたげ➡ 278 00:22:07,455 --> 00:22:10,992 向島に出かけたが 昨日は魔日というのか➡ 279 00:22:10,992 --> 00:22:13,445 雑魚一匹 掛からん。 ああ~ こういう日は➡ 280 00:22:13,445 --> 00:22:16,047 殺生してはならん。 戒めと思うて➡ 281 00:22:16,047 --> 00:22:19,668 釣り糸を巻いていると 折から夕暮れ➡ 282 00:22:19,668 --> 00:22:23,471 浅草弁天山で 打ち出す暮れ六つの鐘が➡ 283 00:22:23,471 --> 00:22:29,194 陰にこもって ものすごく ぼ~ん ぼぉ~~ん」…。 284 00:22:29,194 --> 00:22:31,980 与太の「野ざらし」 おっかしいのよ➡ 285 00:22:31,980 --> 00:22:34,799 どこまでもバカバカしくってさぁ。 286 00:22:34,799 --> 00:22:38,053 おなかの子に障るんじゃないかぇ。 287 00:22:38,053 --> 00:22:40,422 大丈夫よ あいつの子だし。 288 00:22:40,422 --> 00:22:44,909 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「あれが幽霊かい? ふ~ん それにしても いい女だね 先生。➡ 289 00:22:44,909 --> 00:22:47,445 あんないい女だったら 幽霊でも お化けでも➡ 290 00:22:47,445 --> 00:22:50,515 かまわねぇや。 向島… 向島 行きゃあ➡ 291 00:22:50,515 --> 00:22:52,634 まだ その骨はあるのかね?➡ 292 00:22:52,634 --> 00:22:56,154 竿を担いで向島~。➡ 293 00:22:56,154 --> 00:22:59,858 このやろう 骨は釣れるかい?➡ 294 00:22:59,858 --> 00:23:03,578 骨ぅ~ 骨ぅ~!➡ 295 00:23:03,578 --> 00:23:05,630 えっ? 餌が付いてなけりゃあ➡ 296 00:23:05,630 --> 00:23:08,149 釣れっこありません? 何を言ってやんでぇ。➡ 297 00:23:08,149 --> 00:23:10,935 連れっ子も ままっ子もあるかい なんも知らねぇくせに。➡ 298 00:23:10,935 --> 00:23:12,971 素人は 黙って引っ込んでろってんだ。➡ 299 00:23:12,971 --> 00:23:15,023 こうやってやりゃあ 鐘が ぼ~んと鳴るだろう。➡ 300 00:23:15,023 --> 00:23:17,726 葦が がさがさっとくらぁ 烏が ばっと出てくりゃあ➡ 301 00:23:17,726 --> 00:23:21,426 こっちのもんだ。 べらぼうめ こっちは それを待ってるんだい」。 302 00:23:23,498 --> 00:23:27,085 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「♬ 鐘が ぼんと鳴ぁりゃさ」 (信之助)♬ 鐘が ぼんと鳴ぁりゃさ 303 00:23:27,085 --> 00:23:30,722 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「♬ あげ~しお みなみさぁ」 (信之助)♬ あげ~しお みなみさぁ 304 00:23:30,722 --> 00:23:35,293 ♬ からすが ぱっと出~りゃ こりゃさのさぁ 305 00:23:35,293 --> 00:23:38,596 (信之助) ♬ 骨があぁる さいさいさい 306 00:23:38,596 --> 00:23:41,116 信之助! うっ…。➡ 307 00:23:41,116 --> 00:23:45,920 だって じいじが お花見したいって言ってたもん。 308 00:23:45,920 --> 00:23:49,741 信之助 もっとやんな。 あっ。 309 00:23:49,741 --> 00:23:52,794 たくさん見しとくれ。 310 00:23:52,794 --> 00:23:55,530 ははっ。 「かき回すってのはな➡ 311 00:23:55,530 --> 00:23:57,866 こうやるんでぇ!」。 ははっ。 312 00:23:57,866 --> 00:23:59,901 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「ありゃ こりゃだめだ。➡ 313 00:23:59,901 --> 00:24:02,320 もう 釣りは やめて この人見てる方が面白ぇや」。 314 00:24:02,320 --> 00:24:04,906 (信之助)こうやるんでぇ! [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「先生んとこへ来た骨は➡ 315 00:24:04,906 --> 00:24:09,427 年が若すぎるなぁ」…。 ねえ お願いがあるんだけど。 316 00:24:09,427 --> 00:24:11,463 なんだぇ。 317 00:24:11,463 --> 00:24:14,666 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「きっと こんなふうに来るよ。 『カランコロン カラ~ン』」…。 318 00:24:14,666 --> 00:24:17,585 弟子にしてください。 319 00:24:17,585 --> 00:24:21,089 ははははっ。 320 00:24:21,089 --> 00:24:25,126 寝転がりながら 言うヤツがありますか。 321 00:24:25,126 --> 00:24:28,426 いいのね? はい。 322 00:24:30,498 --> 00:24:32,584 やった! 323 00:24:32,584 --> 00:24:48,950 ♬~ 324 00:24:48,950 --> 00:24:50,985 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「『そばへ行ってもいいの?』」。 (信之助)「『行ってもいいの?』。➡ 325 00:24:50,985 --> 00:24:53,021 『ああ いいとも 座ってくんな』」。 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「『ああ いいとも』」…。 326 00:24:53,021 --> 00:24:55,056 (信之助) 「『じゃあ そうさせてもらうよ』。➡ 327 00:24:55,056 --> 00:24:58,910 ってんで 骨が つ~んと来て あたしの脇ぃべたっと座る。➡ 328 00:24:58,910 --> 00:25:02,864 あれ? ご覧よ。 水たまり ぺったり座っちゃった!」。 329 00:25:02,864 --> 00:25:05,984 はははっ。 ふふっ。 330 00:25:05,984 --> 00:25:08,019 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「あぁ~あ あの人」…。 (信之助)「あぁ~あ あの人➡ 331 00:25:08,019 --> 00:25:10,019 てめぇの顎を釣っちまった」。 [外:6481AA074865672B97996C8989BEC66F] 「てめぇの顎を釣っちまった」。 332 00:25:13,892 --> 00:25:18,480 ♬~ 333 00:25:18,480 --> 00:25:21,866 ≫(助六) 「乱菊や 狐にもせよ この姿。➡ 334 00:25:21,866 --> 00:25:26,287 ≫ゆうべの娘が うちへ すぅ~っと 入ってきたと思いなよ 八っつぁん。➡ 335 00:25:26,287 --> 00:25:29,257 ≫『私は 向島に かばねを さらしておりました者。➡ 336 00:25:29,257 --> 00:25:31,309 ≫あなたの唱えた 句の徳によりまして➡ 337 00:25:31,309 --> 00:25:34,095 ≫今日 初めて 浮かぶことができました。➡ 338 00:25:34,095 --> 00:25:38,149 ≫恩返しに そのおみ足なりとも おさすりいたしましょうか』」。 339 00:25:38,149 --> 00:25:42,487 ♬~ 340 00:25:42,487 --> 00:25:46,191 ≫(助六)「カラ~ン コロ~ン カラ~ン コロ~ン➡ 341 00:25:46,191 --> 00:25:50,612 コンコン!」。 「向島から いらしたの?」。➡ 342 00:25:50,612 --> 00:25:53,982 いよっ 骨さん 遅かったね。➡ 343 00:25:53,982 --> 00:25:56,584 待ちくたびれたぜ。➡ 344 00:25:56,584 --> 00:25:58,736 ようこそ冥途へ。➡ 345 00:25:58,736 --> 00:26:00,755 さあ 行くぜ。 346 00:26:00,755 --> 00:26:20,341 ♬~ 347 00:26:20,341 --> 00:26:40,361 ♬~ 348 00:26:40,361 --> 00:27:00,398 ♬~ 349 00:27:00,398 --> 00:27:20,351 ♬~ 350 00:27:20,351 --> 00:27:29,351 ♬~ 351 00:29:04,739 --> 00:29:09,694 (助六)次回 「昭和元禄落語心中 -助六再び篇-」。 352 00:29:09,694 --> 00:29:11,729 第11話。 353 00:29:11,729 --> 00:29:14,529 (助六・菊比古) どうぞ ご贔屓 ご鞭撻のほどを。