1 00:01:36,334 --> 00:01:39,737 (助六)♬ 粋な黒塀 見越しの松に 2 00:01:39,737 --> 00:01:43,341 (助六)♬ 仇な姿の 洗い髪 3 00:01:43,341 --> 00:01:47,212 (助六) ♬ 死んだはずだよ お富さん 4 00:01:47,212 --> 00:01:49,581 (助六)♬ 生きていたとは 5 00:01:49,581 --> 00:01:53,701 (助六)あれ? こんにゃろう また休んでやがんな。 6 00:01:53,701 --> 00:01:56,838 (有楽亭八雲)お前さんとの 年の差を ちっとは考ぇなよ。 7 00:01:56,838 --> 00:01:58,840 こちとら じいさんなんだ。 8 00:01:58,840 --> 00:02:01,709 どこへ 行こうってんです? 9 00:02:01,709 --> 00:02:04,112 底が 全然見えやしねぇ。 10 00:02:04,112 --> 00:02:06,231 ここは 一体…。 11 00:02:06,231 --> 00:02:09,367 まあ いろいろ 腑に落ちねぇだろうけどな。 12 00:02:09,367 --> 00:02:13,338 手っとり早く言やぁ お前さんは死んだんだ。 13 00:02:13,338 --> 00:02:16,457 死んだ? まさか。 14 00:02:16,457 --> 00:02:19,827 あたしゃ てめぇん家の縁側で…。 15 00:02:19,827 --> 00:02:21,829 そうそう。 見てたよ。 16 00:02:21,829 --> 00:02:24,582 信之助も ひと節やってたな。 17 00:02:24,582 --> 00:02:27,602 あいつは ほんとにかわいいよなぁ。➡ 18 00:02:27,602 --> 00:02:29,687 あのあと 急に容体が悪くなって➡ 19 00:02:29,687 --> 00:02:32,690 大騒ぎだったんだ。 車に乗りたがらねぇから➡ 20 00:02:32,690 --> 00:02:34,959 医者 呼んで そうこうする間に➡ 21 00:02:34,959 --> 00:02:37,712 こん睡状態。 万策尽きて➡ 22 00:02:37,712 --> 00:02:39,712 ぽっくりお陀仏さ。 23 00:02:41,182 --> 00:02:44,185 眠るみてぇな きれいな顔だったよ。 24 00:02:44,185 --> 00:02:48,806 みんなに見守られて お前さん 幸せ者だな。 25 00:02:48,806 --> 00:02:51,125 するってぇと お前さんは➡ 26 00:02:51,125 --> 00:02:55,747 寄席で見た死神かい? 助六さんじゃねぇんだろ? 27 00:02:55,747 --> 00:03:00,618 あれはな 途中から 死神に操られてたんだ。 28 00:03:00,618 --> 00:03:03,705 寄席に火ぃつけるなんざ とんでもねぇ野郎だ。 29 00:03:03,705 --> 00:03:07,992 今度 会ったら ただじゃおかねぇ あのじじい。➡ 30 00:03:07,992 --> 00:03:09,994 この世とあの世を 行き来できんのは➡ 31 00:03:09,994 --> 00:03:14,482 あいつだけだ。 ちょいと頼んで 連れてってもらったらよ➡ 32 00:03:14,482 --> 00:03:16,567 あいつ すっかり お前さんの落語の➡ 33 00:03:16,567 --> 00:03:18,987 ファンになっちめぇやがった。➡ 34 00:03:18,987 --> 00:03:21,622 死神ってのは 天寿を全うするヤツにゃ➡ 35 00:03:21,622 --> 00:03:26,127 取り憑けねぇんだ。 だから 焦って あんなことしやがったんだろう。 36 00:03:26,127 --> 00:03:31,349 じゃあ お前さんは まだ成仏してないってぇのかい? 37 00:03:31,349 --> 00:03:34,869 (助六) ふん…。 懐の財布を見てみろ。 38 00:03:34,869 --> 00:03:37,472 財布? ジャラ… 39 00:03:37,472 --> 00:03:40,975 なっ? すげぇだろ? 天寿を全うすりゃあ➡ 40 00:03:40,975 --> 00:03:43,644 死出の路銀を たっぷりもらえるんだ。 41 00:03:43,644 --> 00:03:46,464 金? そんなもんがいるのかい。 42 00:03:46,464 --> 00:03:50,351 あたぼうよ。 「地獄の沙汰も金次第」ってぇだろ。 43 00:03:50,351 --> 00:03:53,838 俺も成仏してぇけど 三途の川 渡ろうにも➡ 44 00:03:53,838 --> 00:03:58,459 何しろ すっからぴんで。 あたしに たかろうってのかい。 45 00:03:58,459 --> 00:04:01,212 ご名答! 46 00:04:01,212 --> 00:04:03,314 ひっ…。 47 00:04:03,314 --> 00:04:06,200 あれ? 殴らねぇ。 48 00:04:06,200 --> 00:04:10,722 はぁ… そんな気力 もうないよ。 49 00:04:10,722 --> 00:04:14,709 足場がぐらぐらして もう 足が追っつかねぇ。 50 00:04:14,709 --> 00:04:17,945 片目じゃ見ぇなくて 歩きづれぇし…。 51 00:04:17,945 --> 00:04:20,448 ああ~ やだやだ。 (助六)じじいってのは➡ 52 00:04:20,448 --> 00:04:22,700 めんどくせぇな。 53 00:04:22,700 --> 00:04:25,570 ちょいと 目ぇつぶってみな。 54 00:04:25,570 --> 00:04:27,705 ん? 55 00:04:27,705 --> 00:04:30,405 (助六)ひの ふの みっと。 56 00:04:32,210 --> 00:04:35,179 (助六)ほら 戻った。 57 00:04:35,179 --> 00:04:37,331 あっ…。 58 00:04:37,331 --> 00:04:39,700 (助六)こんなら 体は軽いだろ? 59 00:04:39,700 --> 00:04:43,454 了見一つで 好きな年になれるんだ ここは。➡ 60 00:04:43,454 --> 00:04:45,706 早く 先 進もうぜ。 61 00:04:45,706 --> 00:04:48,092 お楽しみが たっぷり待ってるよ。 62 00:04:48,092 --> 00:04:50,728 パンッ! (助六)痛っ! 63 00:04:50,728 --> 00:04:53,681 一人で歩けらぁ。 64 00:04:53,681 --> 00:04:56,818 坊は そうこなくっちゃ。➡ 65 00:04:56,818 --> 00:04:59,337 いざ行かん 死出の旅路へ。➡ 66 00:04:59,337 --> 00:05:03,207 その道中の…。 (2人)陽気なことを~! 67 00:05:03,207 --> 00:05:09,313 ♬ 嘘が浮世か 68 00:05:09,313 --> 00:05:13,835 ♬ 浮世が実か 69 00:05:13,835 --> 00:05:22,059 ♬ 夢ともなく 現ともなく 70 00:05:22,059 --> 00:05:25,563 ♬ 空々寂々 71 00:05:25,563 --> 00:05:27,565 店が出てきた。 (助六)この辺は➡ 72 00:05:27,565 --> 00:05:29,584 死んですぐだから 豪気になって➡ 73 00:05:29,584 --> 00:05:32,270 散財するヤツが多いんだ。 へえ~。 74 00:05:32,270 --> 00:05:35,056 (助六)間違ぇて 来て 引き返すバカも多いから➡ 75 00:05:35,056 --> 00:05:38,292 冥途の土産なんかも売ってるよ。 へえ~。 76 00:05:38,292 --> 00:05:41,929 (助六) あっ うまそうだなぁ。 なあ 坊…。 77 00:05:41,929 --> 00:05:46,050 あれ買ってくれ これ買ってくれって 言わねぇって約束したろ。 78 00:05:46,050 --> 00:05:48,050 (助六)まだ してねぇよ! 79 00:05:51,722 --> 00:05:56,043 ほんとに ここは あの世かい? みんな ばかに楽しそうだ。 80 00:05:56,043 --> 00:05:59,547 (助六)みんな この世の名残を 惜しんでるんだよ うん。➡ 81 00:05:59,547 --> 00:06:03,047 ほら 見えたぜ。 あのとっつきだ。 82 00:06:04,402 --> 00:06:06,904 銭湯? こっから入って➡ 83 00:06:06,904 --> 00:06:10,174 三途の川へ行く支度を整えるんだ。 84 00:06:10,174 --> 00:06:13,060 かかあとは ここでケンカしちまって…。 85 00:06:13,060 --> 00:06:16,297 この先で待ってるとは 思うんだけどよ。 86 00:06:16,297 --> 00:06:20,718 みよ吉さんかぇ? どうして 一緒じゃないかと思ってたんだよ。 87 00:06:20,718 --> 00:06:22,718 まあ まあ 入れ 入れ。 88 00:06:25,907 --> 00:06:28,409 (助六)広い風呂は オツでいいな。 89 00:06:28,409 --> 00:06:31,112 あれ? 子供じゃなくなってるよ。 90 00:06:31,112 --> 00:06:34,782 (助六)子供にゃ 風呂のよさが分かるめぇ。➡ 91 00:06:34,782 --> 00:06:40,154 ああ~ 極楽 極楽。 まだ 極楽にゃ早ぇだろ。 92 00:06:40,154 --> 00:06:42,273 じきに行けらぁ。➡ 93 00:06:42,273 --> 00:06:45,526 坊 見てみろ この腹の傷。 94 00:06:45,526 --> 00:06:50,398 かかあにやられたやつ お侍みてぇだろ。 はははっ。 95 00:06:50,398 --> 00:06:53,651 笑い事かい。 (助六)笑い事にしねぇと➡ 96 00:06:53,651 --> 00:06:55,736 やってらんねぇだろ。➡ 97 00:06:55,736 --> 00:06:58,389 あのかかあ しょっちゅうやってんだよ➡ 98 00:06:58,389 --> 00:07:01,792 包丁 持ち出して 「死んでやる!」ってな。➡ 99 00:07:01,792 --> 00:07:05,596 あの日にかぎって 変なとこで転びやがって➡ 100 00:07:05,596 --> 00:07:08,332 まったく あのバカ。 101 00:07:08,332 --> 00:07:12,520 あいつは ほんとに弱ぇ女だよ。 102 00:07:12,520 --> 00:07:16,757 すまなかったよ。 あたしが悪かった。 103 00:07:16,757 --> 00:07:20,011 未練がましく迎えになんざ 行かなきゃよかった。 104 00:07:20,011 --> 00:07:23,114 誰が悪いなんて話は 野暮だろ。 105 00:07:23,114 --> 00:07:27,885 俺たちのことは 三方一両損で痛み分けだ。➡ 106 00:07:27,885 --> 00:07:32,807 けどな 小夏のことを 何も考えてやれなかったな。➡ 107 00:07:32,807 --> 00:07:35,507 そこは お前さんに 感謝するしかねぇな。 108 00:07:36,944 --> 00:07:40,581 あいつを引き受けてくれて ありがとな。 109 00:07:40,581 --> 00:07:43,117 無責任 極まりねぇな。 110 00:07:43,117 --> 00:07:45,903 立派な跳ねっ返りに 育っちまったよ。 111 00:07:45,903 --> 00:07:48,789 けど お前さん 俺が死んだとき➡ 112 00:07:48,789 --> 00:07:52,093 「しめた~!」って思うことも いっぺぇあったろ?➡ 113 00:07:52,093 --> 00:07:54,345 目の上のたんこぶが取れてよ➡ 114 00:07:54,345 --> 00:07:58,165 落語うめぇヤツが 一人減ったし 八雲になれたし。 115 00:07:58,165 --> 00:08:01,936 そんなことで 人が死んでいい理由なんざ➡ 116 00:08:01,936 --> 00:08:04,772 この世にあるかい。 117 00:08:04,772 --> 00:08:07,975 絶対に あんなふうに死んだらダメだ。 118 00:08:07,975 --> 00:08:13,247 悲しいばっかりで いいことなんざ 一っつもねぇよ。 119 00:08:13,247 --> 00:08:16,100 悪い 悪い。 そして 結局➡ 120 00:08:16,100 --> 00:08:19,570 あたしゃ 一人には なりきれなかった。 121 00:08:19,570 --> 00:08:22,773 あんなに立派な家族まで 持っちまって➡ 122 00:08:22,773 --> 00:08:26,177 挙句の果てにゃ 落語にゃ見放されて➡ 123 00:08:26,177 --> 00:08:29,213 心中なんざ できなかったのさ。 124 00:08:29,213 --> 00:08:35,113 人間らしくて結構 結構。 ままならねぇのが人間だぁな 坊。 125 00:08:36,537 --> 00:08:40,391 そいで てめぇだけ 最後も幸せに死んだってぇんだ。 126 00:08:40,391 --> 00:08:42,426 みよ吉さんに あんなしどい仕打ちを➡ 127 00:08:42,426 --> 00:08:44,445 したてぇのに。 128 00:08:44,445 --> 00:08:47,632 あの人には きちんと会って謝りたいよ。 129 00:08:47,632 --> 00:08:49,800 はあ~。➡ 130 00:08:49,800 --> 00:08:53,437 みよ吉っつぁんなら すぐに会えると思うぜ。 131 00:08:53,437 --> 00:08:56,724 その前に 坊と行きてぇとこがあるんだ。 132 00:08:56,724 --> 00:08:58,724 ん? 133 00:09:00,544 --> 00:09:04,548 (助六)坊と ここへ来てねぇのが ずっと心に引っ掛かってよぉ。 134 00:09:04,548 --> 00:09:08,148 こりゃ驚ぇた。 こんなとこまであるんかぇ。 135 00:09:10,504 --> 00:09:12,804 この時代は風情があらぁな。 136 00:09:14,508 --> 00:09:17,945 (助六) さあ 坊 その財布 前に出しとけ。 137 00:09:17,945 --> 00:09:20,031 お大尽は すぐ見っかるぞ。 138 00:09:20,031 --> 00:09:25,403 ぬし 寄っていきなんし~。 ぬし 一服しなんし~。 139 00:09:25,403 --> 00:09:30,541 (助六) 大門くぐる助六に 煙管の雨がぁ➡ 140 00:09:30,541 --> 00:09:33,994 降るようだぁ~っと。 141 00:09:33,994 --> 00:09:38,449 へっ 気安く触るなぃ。 いい気味だな 坊。 142 00:09:38,449 --> 00:09:41,519 見ろよ このモテっぷり。 あたしらじゃなくて➡ 143 00:09:41,519 --> 00:09:43,771 財布がモテてんだよ。 144 00:09:43,771 --> 00:09:46,424 (助六)なあ あの奥のねえちゃん 花魁じゃねぇか?➡ 145 00:09:46,424 --> 00:09:49,026 こっち見てんぞ おい! 「三浦屋」の高尾か?➡ 146 00:09:49,026 --> 00:09:51,896 「朝日楼」の喜瀬川か? どの人だい? 147 00:09:51,896 --> 00:09:54,715 ほら あの右のヤツ。 (みよ吉)ちょいと➡ 148 00:09:54,715 --> 00:09:57,485 やっぱりここかい! この放蕩亭主。 149 00:09:57,485 --> 00:10:01,038 こちとら 必死でお茶くみやって 路銀 稼いでんじゃないかい。 150 00:10:01,038 --> 00:10:03,240 このボンクラ! みよ吉さん。 151 00:10:03,240 --> 00:10:05,609 ああ!? 何よ? 152 00:10:05,609 --> 00:10:07,795 久しぶり。 153 00:10:07,795 --> 00:10:11,198 あっ…。 菊さん。 154 00:10:11,198 --> 00:10:13,198 やだ 来てたの? 155 00:10:14,852 --> 00:10:18,406 そこのモジャモジャさん 早く どっか行ってちょうだい。➡ 156 00:10:18,406 --> 00:10:21,509 あたし 菊さんと二人で 話 したいの。 157 00:10:21,509 --> 00:10:23,627 いちばんいいとこで 邪魔しやがって➡ 158 00:10:23,627 --> 00:10:26,080 クソばばあ。 (みよ吉)なんか言った?➡ 159 00:10:26,080 --> 00:10:29,300 なけなしのお金あげてんだから 一杯 飲んできなよ。 160 00:10:29,300 --> 00:10:33,237 へえ へえ。 行ってきますよ。 161 00:10:33,237 --> 00:10:36,837 30分だけだぞ。 お直しも なしだからな。 162 00:10:39,410 --> 00:10:43,063 いいのかぇ? あの人 あたしに やいてんじゃないの? 163 00:10:43,063 --> 00:10:45,499 いいの いいの 旦那なんて。 164 00:10:45,499 --> 00:10:48,669 愛想を振っても 一文にもなりゃしないわ。 165 00:10:48,669 --> 00:10:52,957 あんたも死んじゃったのね。 ご愁傷さま。 166 00:10:52,957 --> 00:10:56,510 みよ吉さん あたし お前さんに謝りたいことが…。 167 00:10:56,510 --> 00:10:58,879 やだ やめて。 168 00:10:58,879 --> 00:11:02,183 謝ってる菊さんなんて 見たくないわ。➡ 169 00:11:02,183 --> 00:11:05,970 死んじゃったら 惚れた腫れたも関係ないわ。➡ 170 00:11:05,970 --> 00:11:09,770 私 もう 女をやらなくて済んで 清々してんの。 171 00:11:13,327 --> 00:11:16,147 (みよ吉) 私ね 菊さんに振ってもらえて➡ 172 00:11:16,147 --> 00:11:18,232 よかったと思ってんの。 173 00:11:18,232 --> 00:11:21,302 所帯 持ってみたら ほんっとに大変。 174 00:11:21,302 --> 00:11:24,738 旦那なんて 嫌なとこばっかり目に付くし➡ 175 00:11:24,738 --> 00:11:27,641 菊さんと そんなふうになりたくないわ。 176 00:11:27,641 --> 00:11:31,846 あたしね 菊さんのことは 顔だけ見てりゃ満足なの。 177 00:11:31,846 --> 00:11:34,248 ねっ 菊さん。 178 00:11:34,248 --> 00:11:37,318 あなた おじいちゃんになっても かっこいいのね。 179 00:11:37,318 --> 00:11:39,318 そうかぇ。 180 00:11:42,606 --> 00:11:44,909 (みよ吉)けどね こっち来ても➡ 181 00:11:44,909 --> 00:11:48,128 小夏のことだけは 気にかかっちゃって。➡ 182 00:11:48,128 --> 00:11:50,498 腹いせみたいに産んだ子だけど➡ 183 00:11:50,498 --> 00:11:54,101 きっかけはどうあれ 自分の子だもの。➡ 184 00:11:54,101 --> 00:11:57,087 どうしたって かわいいのよ。➡ 185 00:11:57,087 --> 00:12:00,587 だけど あたし不器用だから 全然うまく愛せなかった。➡ 186 00:12:02,009 --> 00:12:04,044 あんなふうに ず~っと あたしのこと➡ 187 00:12:04,044 --> 00:12:06,463 恨ませちゃってたのが かわいそうで。 188 00:12:06,463 --> 00:12:09,617 ♬~ 189 00:12:09,617 --> 00:12:14,471 (みよ吉)あたし もっと みんなに優しくすればよかった。 190 00:12:14,471 --> 00:12:18,492 人間なんて 1人で生きられっこないんだから。 191 00:12:18,492 --> 00:12:21,212 たった1人に すがるんじゃなくって➡ 192 00:12:21,212 --> 00:12:24,512 みんなと上手に頼り合って 生きなくちゃいけなかったの。 193 00:12:27,167 --> 00:12:30,467 (みよ吉) あたしたち みんな間違ってたね。 194 00:12:32,439 --> 00:12:37,795 いや 正しい人間なんざ どこにもおりません。 195 00:12:37,795 --> 00:12:42,199 だからこそ 人は己を廃して 和を立てる。 196 00:12:42,199 --> 00:12:45,099 そういうのが美しいんです。 197 00:12:46,770 --> 00:12:50,808 えっ 菊さん おじいちゃんみたい。 198 00:12:50,808 --> 00:12:53,794 いや おじいちゃんですからね。 199 00:12:53,794 --> 00:12:56,814 ふふふっ。➡ 200 00:12:56,814 --> 00:12:59,400 ねえ 見て あのモジャモジャ。➡ 201 00:12:59,400 --> 00:13:02,836 30分 過ぎたのに ずっと待ってんだわ。 202 00:13:02,836 --> 00:13:06,136 あの人 優しいの バカが付くぐらい。 203 00:13:09,176 --> 00:13:11,195 (みよ吉)さあ! (助六)ん? 204 00:13:11,195 --> 00:13:15,795 (みよ吉)吉原なんてやめて 久々の再会をお祝いしましょ。 205 00:15:20,824 --> 00:15:23,644 (みよ吉)や~ね もう 雪がちらついてきたわ。➡ 206 00:15:23,644 --> 00:15:25,963 さっきまで 蛍が舞ってたのに。 207 00:15:25,963 --> 00:15:29,583 (助六)こんな日ぁ 鍋でもやって くぅ~っと一杯➡ 208 00:15:29,583 --> 00:15:31,902 内外から あったまりてぇな。 209 00:15:31,902 --> 00:15:34,905 けど 不思議だね。 この国の食べ物は➡ 210 00:15:34,905 --> 00:15:37,941 味も そっけもないんだよ。 (助六)そらまあ➡ 211 00:15:37,941 --> 00:15:42,763 さすがに みんな 死んでるからな。 なんだか 口ざみしいね。 212 00:15:42,763 --> 00:15:45,549 (助六)そんなときにゃあ ぴったりの場所があるぜ。 213 00:15:45,549 --> 00:15:49,670 ♬~(寄席囃子) 214 00:15:49,670 --> 00:15:51,705 寄席だ。 215 00:15:51,705 --> 00:15:55,042 (助六)こないだ燃えちまったからな こっちぃ来たんだ。➡ 216 00:15:55,042 --> 00:15:57,077 最近 圓朝師が 10日間➡ 217 00:15:57,077 --> 00:16:00,030 「牡丹燈籠」を 続きでやって 大入りだ。➡ 218 00:16:00,030 --> 00:16:02,082 こっちは名人ぞろいだぜ。➡ 219 00:16:02,082 --> 00:16:05,002 看板を見てみろ。 みんな先代だぞ。 220 00:16:05,002 --> 00:16:07,037 末席に もう➡ 221 00:16:07,037 --> 00:16:09,523 あたしの名前まで あるのかい。 222 00:16:09,523 --> 00:16:12,226 二人の落語 聴きたいわ。➡ 223 00:16:12,226 --> 00:16:14,226 やって やって。 224 00:16:16,296 --> 00:16:20,067 ああ~ 懐かしい。 昔のまんまの造りだ。 225 00:16:20,067 --> 00:16:23,203 (助六)電気がねぇから 隙間っ風 ピュ~ピュ~吹いて➡ 226 00:16:23,203 --> 00:16:25,989 冷えきってやがらぁ。 俺が行って➡ 227 00:16:25,989 --> 00:16:28,876 この冷えきった寄席 あっためてやらぁ。➡ 228 00:16:28,876 --> 00:16:32,312 坊 何が聴きてぇ? なんでも。 229 00:16:32,312 --> 00:16:35,749 (助六)なんだい そりゃあ。 張り合いがねぇな もう。 230 00:16:35,749 --> 00:16:38,268 なんでもいいってんじゃないよ。 231 00:16:38,268 --> 00:16:42,206 助六の落語なら なんでも うれしいってことだよ。 232 00:16:42,206 --> 00:16:46,009 惚れ込んでやがるな。 へっ 座って聴いてろぃ。 233 00:16:46,009 --> 00:16:50,609 ♬~(寄席囃子) 234 00:16:52,633 --> 00:16:55,903 あれ? 小夏。 235 00:16:55,903 --> 00:16:57,955 (みよ吉)このお座布団にね➡ 236 00:16:57,955 --> 00:17:01,341 生前 いちばん 落語を 聴かせてあげたかった人のこと➡ 237 00:17:01,341 --> 00:17:03,477 1人だけ呼べるんだって。 238 00:17:03,477 --> 00:17:06,777 仏様って 粋なことなさるのね。 239 00:17:09,933 --> 00:17:12,133 なぁに? その顔。 240 00:17:15,572 --> 00:17:19,672 うん! ふふふっ。 241 00:17:22,613 --> 00:17:25,113 (みよ吉) 素直じゃないのよ この子。 242 00:17:26,834 --> 00:17:35,926 ♬~(出囃子) 243 00:17:35,926 --> 00:17:38,829 パチパチパチ…(拍手) (観客)助六! 244 00:17:38,829 --> 00:17:42,533 (拍手) 245 00:17:42,533 --> 00:17:44,585 (観客)待ってました! 246 00:17:44,585 --> 00:17:47,804 ♬~(出囃子) 247 00:17:47,804 --> 00:17:49,840 どうも どうも。 雪ん中➡ 248 00:17:49,840 --> 00:17:53,360 よくぞ こんな しみったれた所へ お運びいただきまして。➡ 249 00:17:53,360 --> 00:17:57,548 ここいらで ひとつ ぽっとあったまるお笑いを一席。➡ 250 00:17:57,548 --> 00:18:00,200 近頃んなって 突然 ド~ンと建ちました➡ 251 00:18:00,200 --> 00:18:03,320 この立派な寄席ですが ええ~ なんでも➡ 252 00:18:03,320 --> 00:18:06,089 火事になって こちらへ やってきたそうでございます。 253 00:18:06,089 --> 00:18:08,108 そんなことなら あっちぃ行って➡ 254 00:18:08,108 --> 00:18:10,143 立派なもんには もう どんどん どんどん➡ 255 00:18:10,143 --> 00:18:12,179 火ぃつけて 回りてぇってなもんでございます。 256 00:18:12,179 --> 00:18:14,214 (一同)ははははっ。 257 00:18:14,214 --> 00:18:17,251 (助六) 「火事は江戸の華」の例えどおり➡ 258 00:18:17,251 --> 00:18:20,637 江戸という街は 大変に 火事が多かったんだそうで。➡ 259 00:18:20,637 --> 00:18:24,241 そのため 各町とも 1軒から1人ずつ 番小屋へ出て➡ 260 00:18:24,241 --> 00:18:29,279 まあ いわゆる 旦那衆が 町内を見廻っていたそうですなぁ。 261 00:18:29,279 --> 00:18:31,481 「こんばんは どうも ご苦労さま」。 262 00:18:31,481 --> 00:18:33,500 「ああ~ ご苦労さまでございます。➡ 263 00:18:33,500 --> 00:18:35,836 ええ~ 大変に 今夜は お寒ぅございますな」。 264 00:18:35,836 --> 00:18:38,372 「いや~ 寒ぅございますよ。➡ 265 00:18:38,372 --> 00:18:43,076 ええ~ 尾張屋さんに 相模屋さん これで 人数がそろいましたな。➡ 266 00:18:43,076 --> 00:18:45,245 どうです? こいだけ大勢いますからね➡ 267 00:18:45,245 --> 00:18:48,131 ふた組に分けまして 半分が廻ってる間➡ 268 00:18:48,131 --> 00:18:51,718 もう半分は ここで あったまって 最初の組が戻ったら 今度は➡ 269 00:18:51,718 --> 00:18:54,271 もうひと組が出てくってのは いかがでしょう?」。➡ 270 00:18:54,271 --> 00:18:58,992 「ほう~ なるほど。 それは 結構なお考えでございますなぁ」。➡ 271 00:18:58,992 --> 00:19:01,845 「では 一の組 行ってまいります。➡ 272 00:19:01,845 --> 00:19:05,832 おお… いや~ 寒ぅございますなぁ。➡ 273 00:19:05,832 --> 00:19:08,385 ええ~ さあ 皆さん 袖ぇ 手ぇ入れてねぇで➡ 274 00:19:08,385 --> 00:19:10,404 『火の用心』とか 『火の廻り』とか言って➡ 275 00:19:10,404 --> 00:19:14,041 歩かなくちゃならねぇ。 とっつぁん いい声で ひとつ頼みますよ」。 276 00:19:14,041 --> 00:19:16,576 「へへへっ あたしですかい?➡ 277 00:19:16,576 --> 00:19:20,063 昔 吉原で 火の廻りをしたことが ございましてね➡ 278 00:19:20,063 --> 00:19:23,934 刺子の長半纏ってね 豆絞りの手拭いを 首に巻いて➡ 279 00:19:23,934 --> 00:19:27,871 提灯に金棒を持ってね ええ こういった具合に➡ 280 00:19:27,871 --> 00:19:30,824 チャリ~ンと 廻ってごらんなさいよ。➡ 281 00:19:30,824 --> 00:19:32,993 もう あっちから こっちから➡ 282 00:19:32,993 --> 00:19:36,897 あっ 煙管の雨がぁ あっ 降るようでぇ~!」。➡ 283 00:19:36,897 --> 00:19:39,933 「いや 自慢話はいいんですよ。 早くやっとおくれよ」。 284 00:19:39,933 --> 00:19:44,504 「へい ようがす。 では… チャリ~ンと。➡ 285 00:19:44,504 --> 00:19:49,443 火のよう~~じ~ん!➡ 286 00:19:49,443 --> 00:19:52,896 あっ さっしゃりやしょ~」! 287 00:19:52,896 --> 00:19:55,015 (拍手) 288 00:19:55,015 --> 00:19:57,050 (小夏)名調子! 289 00:19:57,050 --> 00:19:59,369 (助六)「ただいま戻りました」。 「いや~ どうも➡ 290 00:19:59,369 --> 00:20:01,571 一の組の皆さん ご苦労さまでございます」。➡ 291 00:20:01,571 --> 00:20:04,408 「いや~ もう 外は 寒いの寒くないのってね」。➡ 292 00:20:04,408 --> 00:20:06,610 「さあ こっちで あったまって。 ええ ええ」。➡ 293 00:20:06,610 --> 00:20:10,347 「ええ~ では あたくしから? では ちょうだいいたします。➡ 294 00:20:10,347 --> 00:20:12,416 どうも お先に へへっ。➡ 295 00:20:12,416 --> 00:20:14,434 お~っとっとっと…。➡ 296 00:20:14,434 --> 00:20:18,739 いや いい色ですなぁ。 そして いい香りだ。➡ 297 00:20:18,739 --> 00:20:21,858 湯気でもって 酔っちまいそうですよ。➡ 298 00:20:21,858 --> 00:20:24,828 ふぅ~ ふぅ~ ふっふっふっ。➡ 299 00:20:24,828 --> 00:20:27,828 んんっ んんっ んんっ…➡ 300 00:20:29,249 --> 00:20:34,137 はぁ~! うまい!」。 (一同)ははははっ。 301 00:20:34,137 --> 00:20:38,137 「どこのですか? いや ばかに たちのいい酒ですなぁ。➡ 302 00:20:39,710 --> 00:20:42,763 えっ 何? だんだん 肉も煮えてきた?➡ 303 00:20:42,763 --> 00:20:46,616 こらぁ オツなもんで」。 「じゃあ すみません あたくしから。➡ 304 00:20:46,616 --> 00:20:50,303 ええ~ あたくし 猪なんてのは 初めてでございましてね。➡ 305 00:20:50,303 --> 00:20:54,624 ええ… ああ~ こら どうも 誠に結構でございますな うん。➡ 306 00:20:54,624 --> 00:20:58,995 へへへへっ。 大変 体にいいなんて伺いますが➡ 307 00:20:58,995 --> 00:21:03,800 どれ ひとつ…。 ふぅ~ ふぅ~ ふぅ~。➡ 308 00:21:03,800 --> 00:21:06,703 んんっ んんっ んんっ…➡ 309 00:21:06,703 --> 00:21:11,525 うまい! 死んだら こんなもんは食えませんな」。➡ 310 00:21:11,525 --> 00:21:14,561 「だいたい このネギというものはね うん➡ 311 00:21:14,561 --> 00:21:17,147 結構でございますよ うん。 私なんざはね➡ 312 00:21:17,147 --> 00:21:20,450 この… おかずがないときはね いつも ネギなんですよ➡ 313 00:21:20,450 --> 00:21:25,839 ええ ええ ええ。 このネギくらい 体にいいものはないってんでね➡ 314 00:21:25,839 --> 00:21:28,975 とにかくね ネギだけ食べてらぁ それでいいんですよ。 ネギ」。 315 00:21:28,975 --> 00:21:31,011 「ちょっと ああた ああた! さっきから➡ 316 00:21:31,011 --> 00:21:35,065 『ネギだ ネギだ』言ってますけどね 間に 肉が挟まってますよ」。 317 00:21:35,065 --> 00:21:37,100 「あれ? 見っかっちゃった?」。 318 00:21:37,100 --> 00:21:40,637 (観客たち)ははははっ! 319 00:21:40,637 --> 00:21:43,056 (助六)「何? 一滴も残っておらんのか?➡ 320 00:21:43,056 --> 00:21:46,676 分かった。 では 拙者 ひと廻りしてまいる。➡ 321 00:21:46,676 --> 00:21:49,463 その間に 二番を煎じておけ」。 322 00:21:49,463 --> 00:21:52,566 (観客たち)ははははっ! 323 00:21:52,566 --> 00:21:56,937 ♬~(受け囃子) 324 00:21:56,937 --> 00:22:03,537 (拍手) 325 00:22:04,995 --> 00:22:07,731 (助六) さあ 坊。 今度は お前さんの番。 326 00:22:07,731 --> 00:22:10,650 あたしゃ いいよ。 やりたくない。 327 00:22:10,650 --> 00:22:13,470 助六のあとに出たって 白けちまわぁ。 328 00:22:13,470 --> 00:22:16,470 (助六)若返って 度胸まで忘れちまったか? 329 00:22:20,076 --> 00:22:25,699 お前は立派に 八代目八雲を 務め上げたじゃねぇか。 330 00:22:25,699 --> 00:22:31,304 泣く子も黙る大名人になった。 俺の分までな。➡ 331 00:22:31,304 --> 00:22:33,340 坊 目ぇつぶれ。 332 00:22:33,340 --> 00:22:37,511 ♬~(出囃子) 333 00:22:37,511 --> 00:22:41,298 (助六)出囃子が鳴ってる。 出番だ。 334 00:22:41,298 --> 00:22:45,001 ひの ふの み。 335 00:22:45,001 --> 00:22:56,696 ♬~(出囃子) 336 00:22:56,696 --> 00:22:58,915 (観客)八代目! (観客)待ってました! 337 00:22:58,915 --> 00:23:01,701 (観客)たっぷり! ん? 338 00:23:01,701 --> 00:23:07,201 ♬~(出囃子) 339 00:23:09,075 --> 00:23:11,344 (信之助)ふふっ。 340 00:23:11,344 --> 00:23:13,380 ええ~ どうも。 341 00:23:13,380 --> 00:23:17,634 いっぱいのお運びで 誠に ありがとうございます。 342 00:23:17,634 --> 00:23:21,738 先刻 外で「本日来演!」の 札ぁ見まして➡ 343 00:23:21,738 --> 00:23:24,207 てめぇの名前を見て 冗談も➡ 344 00:23:24,207 --> 00:23:26,459 大概にしてほしいと 思いましたのは➡ 345 00:23:26,459 --> 00:23:29,012 初めてのことでして。 346 00:23:29,012 --> 00:23:32,599 まあ あたくしの名も 八代目になりました。 347 00:23:32,599 --> 00:23:35,569 八代てぇたら 大変な名跡です。 348 00:23:35,569 --> 00:23:38,205 名前てぇのは 大事なもんでして➡ 349 00:23:38,205 --> 00:23:41,107 どういう名前を ちょうだいするか➡ 350 00:23:41,107 --> 00:23:45,045 それで 人生まで 変わっちまうことも あるようで。 351 00:23:45,045 --> 00:23:48,832 斯くばかり 偽り多き世の中に➡ 352 00:23:48,832 --> 00:23:51,535 子のかわいさは真なりけり。 353 00:23:51,535 --> 00:23:54,137 「寿限無」という 子供のおうわさを一席。 354 00:23:54,137 --> 00:23:56,172 「寿限無」! やった~! 355 00:23:56,172 --> 00:23:59,672 「ねえ あんた 今日は産婆さんを呼んで➡ 356 00:24:01,027 --> 00:24:03,063 お湯を使わしてもらって 赤ん坊の名を付けて➡ 357 00:24:03,063 --> 00:24:05,232 お祝いするお七夜だよ。 お前さん 何か➡ 358 00:24:05,232 --> 00:24:07,601 名前 考えてあるかい?」。 359 00:24:07,601 --> 00:24:10,987 「そうだなぁ 与太郎なんてどうだい」。 360 00:24:10,987 --> 00:24:13,607 「嫌だよ! そんな」…。 あっ 父ちゃん! 361 00:24:13,607 --> 00:24:16,026 ふふっ。 ん? 362 00:24:16,026 --> 00:24:18,528 「寿限無 寿限無 五劫の摺り切れ➡ 363 00:24:18,528 --> 00:24:22,015 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末➡ 364 00:24:22,015 --> 00:24:25,602 食う寝るところに住むところ やぶらこうじのぶらこうじ➡ 365 00:24:25,602 --> 00:24:27,671 パイポパイポパイポの シューリンガン➡ 366 00:24:27,671 --> 00:24:29,706 シューリンガンの グーリンダイ」…。 367 00:24:29,706 --> 00:24:32,375 (八雲・小夏・信之助) 「グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナーの➡ 368 00:24:32,375 --> 00:24:34,678 長久命の長助」。 369 00:24:34,678 --> 00:24:36,696 「南無阿弥陀仏」。 370 00:24:36,696 --> 00:24:40,267 「おい その『ナンマイダー』は 余計だよ。 縁起でもねぇ」。 371 00:24:40,267 --> 00:24:44,967 (観客たち)ははははっ! 372 00:24:48,475 --> 00:24:52,479 (助六)船頭まで付いて 立派な舟だなぁ 坊。 373 00:24:52,479 --> 00:24:57,584 三途の川ってのぁ ひでぇヤツは 泳いで渡んなきゃならねぇんだ。 374 00:24:57,584 --> 00:25:00,837 徳が高ぇってのは いいこと尽くしだな。 375 00:25:00,837 --> 00:25:06,226 お前さん方は どうなんだい? どうして 一緒に来られないの? 376 00:25:06,226 --> 00:25:09,529 (助六) 路銀がたまったら すぐ行くよ。 377 00:25:09,529 --> 00:25:11,831 ほんとに大丈夫かぇ? 378 00:25:11,831 --> 00:25:16,936 大丈夫だって。 小夏と しん坊は ちゃ~んと あっちぃ帰ったよ。 379 00:25:16,936 --> 00:25:19,673 かかあは 泣き顔は見せたくねぇからって➡ 380 00:25:19,673 --> 00:25:24,711 見送りは来ねぇとさ。 へっ! 女ってのぁ 薄情だな。 381 00:25:24,711 --> 00:25:28,148 そいで 一人で来てくれたのかぇ。 382 00:25:28,148 --> 00:25:31,935 信さんは優しいね。 383 00:25:31,935 --> 00:25:34,971 (助六)ちっ… なあ 坊➡ 384 00:25:34,971 --> 00:25:39,092 お前さんは 落語が好きで 人を愛した。 385 00:25:39,092 --> 00:25:41,361 そして よく生き抜いた。 386 00:25:41,361 --> 00:25:43,663 おかげで 俺も成仏できらぁ。 387 00:25:43,663 --> 00:25:47,334 ♬~ 388 00:25:47,334 --> 00:25:49,602 そんな顔するんじゃねぇ。 389 00:25:49,602 --> 00:25:52,205 いつか また会える。 390 00:25:52,205 --> 00:25:54,224 信さん。 391 00:25:54,224 --> 00:25:57,477 ♬~ 392 00:25:57,477 --> 00:26:00,830 指切り。 (助六)うん。 393 00:26:00,830 --> 00:26:05,702 ♬~ 394 00:26:05,702 --> 00:26:07,721 じゃあね。 395 00:26:07,721 --> 00:26:19,549 ♬~ 396 00:26:19,549 --> 00:26:22,819 ≫八雲師匠。 ん? 397 00:26:22,819 --> 00:26:25,872 (松田)ははっ。 ま… 松田さん! 398 00:26:25,872 --> 00:26:30,310 どうしたんだい? お前さんも 一緒に来ちまったのかぇ? 399 00:26:30,310 --> 00:26:33,596 (松田)それが あたしにも よく分からねぇんです。➡ 400 00:26:33,596 --> 00:26:36,766 師匠のご病床のお世話をしてて➡ 401 00:26:36,766 --> 00:26:40,303 うとうととしたとこまでは 覚えてんですけどね。 402 00:26:40,303 --> 00:26:43,573 どうなっちまうんでしょうか あたしゃ…。 403 00:26:43,573 --> 00:26:46,773 最後にお会いできて 幸いですけどね。➡ 404 00:26:48,144 --> 00:26:52,732 師匠のお見送りは あたしの大事な仕事ですから➡ 405 00:26:52,732 --> 00:26:56,603 仏様が お慈悲を かけてくだすったんでしょうかね。 406 00:26:56,603 --> 00:27:00,473 何がなんだか分からないよ こっちの世界は。 407 00:27:00,473 --> 00:27:03,777 師匠 楽しゅうございましたな。 408 00:27:03,777 --> 00:27:07,347 長い間 お世話になりました。 409 00:27:07,347 --> 00:27:09,347 はい。 410 00:27:11,201 --> 00:27:14,370 「四方の山々 雪 解けて➡ 411 00:27:14,370 --> 00:27:17,273 水かさ増さる大川の➡ 412 00:27:17,273 --> 00:27:19,976 上げ潮南で➡ 413 00:27:19,976 --> 00:27:23,763 ザブ~リザブリと 水の音」。 414 00:27:23,763 --> 00:27:30,263 ♬~ 415 00:29:04,664 --> 00:29:09,669 (松田)次回 「昭和元禄落語心中 -助六再び篇-」➡ 416 00:29:09,669 --> 00:29:11,704 第12話。 417 00:29:11,704 --> 00:29:14,304 (与太郎) どうぞ ご贔屓 ご鞭撻のほどを。