1 00:01:40,712 --> 00:01:42,747 タッ(携帯操作音) 2 00:01:42,747 --> 00:01:44,899 (有楽亭八雲・イヤホンからの音声) 「おっ母ぁ 羽織 出しとくれ」。 3 00:01:44,899 --> 00:01:46,918 (小雪)兄ぃ。 (イヤホンからの音声)「うるさいね➡ 4 00:01:46,918 --> 00:01:49,854 この人は」。 (小雪)ねえ!➡ 5 00:01:49,854 --> 00:01:53,791 信之助! むぅ~! 6 00:01:53,791 --> 00:01:56,861 わあ~~! (信之助)うわっ!➡ 7 00:01:56,861 --> 00:01:58,897 なんだ 小雪か。 8 00:01:58,897 --> 00:02:03,017 何してんの? こんなとこで また一人になって。 9 00:02:03,017 --> 00:02:05,987 (信之助) 母ちゃんと先生 話 長ぇから➡ 10 00:02:05,987 --> 00:02:08,556 明日のこけら落としのネタ さらってんです。 11 00:02:08,556 --> 00:02:10,592 (小雪)へえ~ 何 掛けんの? 12 00:02:10,592 --> 00:02:13,628 (信之助)「初天神」。 (小雪)簡単じゃん そんなの。 13 00:02:13,628 --> 00:02:17,248 (信之助)お前が聴いている 「初天神」とは 訳が違うんですよ。 14 00:02:17,248 --> 00:02:20,735 (小雪)つか 何? このプレイリスト。 八雲ばっかじゃん。 15 00:02:20,735 --> 00:02:23,137 (信之助) 八雲に間に合ってないなんて➡ 16 00:02:23,137 --> 00:02:25,156 お前 ほんと かわいそうですね。 17 00:02:25,156 --> 00:02:27,458 (小雪) 兄ちゃんだって ガキの頃だべ。 18 00:02:27,458 --> 00:02:30,512 ねえ 「出来心」やんなよ 父ちゃんの型で。➡ 19 00:02:30,512 --> 00:02:32,812 そっちのが 面白いじゃん。 20 00:02:34,148 --> 00:02:37,218 10人抜きで 二つ目になった天才とか言われて➡ 21 00:02:37,218 --> 00:02:39,754 図に乗ってんじゃない? 乗ってません。 22 00:02:39,754 --> 00:02:42,524 てか 小雪。 なんです その格好? 23 00:02:42,524 --> 00:02:46,594 (小雪)今日 高校の入学式だったんだよ~ん。 24 00:02:46,594 --> 00:02:49,113 かわいいべ? 25 00:02:49,113 --> 00:02:51,149 世界一かわいい。 26 00:02:51,149 --> 00:02:54,449 (小雪) やった~! 兄ぃ ありがとう。➡ 27 00:02:55,820 --> 00:02:59,324 お礼に すごいこと教ぇたげようか。 (信之助)なんです? 28 00:02:59,324 --> 00:03:03,177 母ちゃん めっちゃ怒ってたよ。 (信之助)やべっ…。 29 00:03:03,177 --> 00:03:05,713 チリン チリン… 30 00:03:05,713 --> 00:03:07,749 ども…。 31 00:03:07,749 --> 00:03:10,318 (小夏)どこ ほっつき歩いてんだ このバカ息子!➡ 32 00:03:10,318 --> 00:03:12,918 レコード会社の方 帰っちまったよ。 33 00:03:14,339 --> 00:03:16,591 さ~せん。 (小夏)こういうことで➡ 34 00:03:16,591 --> 00:03:19,427 顔覚えてもらうんだろ! (小雪)お兄ちゃん➡ 35 00:03:19,427 --> 00:03:21,863 明日のこけら落としのネタ さらってたんだよ。 36 00:03:21,863 --> 00:03:25,166 (信之助)いいって そういうの…。 (小夏)言い訳は聞きたかないよ。 37 00:03:25,166 --> 00:03:27,385 あんた 何 掛けるんだい? 38 00:03:27,385 --> 00:03:30,238 「初天神」っす。 そんなの なんで今更➡ 39 00:03:30,238 --> 00:03:32,590 さらってんだい! はい さ~せん。 40 00:03:32,590 --> 00:03:35,093 (樋口) ははははっ! 41 00:03:35,093 --> 00:03:38,429 小夏さんの啖呵は いつ聞いても 気持ちいいね。 42 00:03:38,429 --> 00:03:41,599 次は そういう新作でも作りますかな。 43 00:03:41,599 --> 00:03:44,052 おお~ 嫌だ。 やめて センセ。➡ 44 00:03:44,052 --> 00:03:48,072 今ある新作こなすんで 精いっぱいだよ。 45 00:03:48,072 --> 00:03:51,125 寄席が また出来るから 先生のおかげで➡ 46 00:03:51,125 --> 00:03:54,479 あたしも ようやく 高座に上がれる日が来ますわ。 47 00:03:54,479 --> 00:03:57,765 いえいえ 頑張ったのは 小夏さんですよ。 48 00:03:57,765 --> 00:04:00,001 史上初の女性落語家。 49 00:04:00,001 --> 00:04:02,687 あなたがいなきゃ 成り立たなかった。 50 00:04:02,687 --> 00:04:07,387 八雲師匠がいなくなって 落語界は 随分変わっちまった。➡ 51 00:04:09,294 --> 00:04:13,748 人が1人いなくなるだけで こんなに変わるのね。➡ 52 00:04:13,748 --> 00:04:17,385 男の人が作った落語の和を 壊したくない…➡ 53 00:04:17,385 --> 00:04:21,739 ずっと そう思ってたけど これだけ時代が変わって➡ 54 00:04:21,739 --> 00:04:25,360 先生とお父さんが 背中を押してくれて➡ 55 00:04:25,360 --> 00:04:29,597 あたしも いつの間にか 和に入っちゃってた。 56 00:04:29,597 --> 00:04:32,583 八雲師匠って そんなにすごかったの?➡ 57 00:04:32,583 --> 00:04:36,070 難しくて 何言ってるか 分かんないんだよな。➡ 58 00:04:36,070 --> 00:04:39,891 何回聴いても 父ちゃんの落語が世界一好き。➡ 59 00:04:39,891 --> 00:04:42,760 あたし 絶対 噺家になんか ならないんだ~。➡ 60 00:04:42,760 --> 00:04:45,160 だって 聴いてる方が楽しいもん。 61 00:04:46,531 --> 00:04:50,852 八代目の影響が 年々薄くなるのは さみしいものです。 62 00:04:50,852 --> 00:04:53,938 今年で もう十七回忌ですか。➡ 63 00:04:53,938 --> 00:04:58,026 いつか 信之助君にも 僕の新作に挑戦してほしいな。 64 00:04:58,026 --> 00:05:00,026 えっ…。 65 00:05:03,031 --> 00:05:07,085 (信之助) 先生の新作は とても好きです。➡ 66 00:05:07,085 --> 00:05:09,721 けど 私には まだ早いです。➡ 67 00:05:09,721 --> 00:05:12,857 二つ目ですから。 (樋口)ご謙遜を。➡ 68 00:05:12,857 --> 00:05:17,395 二つ目若手の会も 大変にぎわってると聞きました。➡ 69 00:05:17,395 --> 00:05:20,581 イケメン落語家。 異例の10人抜き。➡ 70 00:05:20,581 --> 00:05:22,850 そして 助六の孫。➡ 71 00:05:22,850 --> 00:05:25,753 売れっ子要素 満載ですな。 72 00:05:25,753 --> 00:05:28,723 看板は大きいほど 芸を磨かないと➡ 73 00:05:28,723 --> 00:05:31,609 お客様は また いらしてくださいませんから。 74 00:05:31,609 --> 00:05:35,029 私の落語は 真打ちになれてからです。 75 00:05:35,029 --> 00:05:40,351 ははははっ! ご機嫌を損ねてしまいましたな。 76 00:05:40,351 --> 00:05:44,051 さ~せん。 そろそろ おいとましますね。 77 00:05:45,523 --> 00:05:47,592 チリン チリン… 78 00:05:47,592 --> 00:05:49,627 そいじゃ 失礼します。 79 00:05:49,627 --> 00:05:52,180 夜にまた 挨拶回り 行くからね! 80 00:05:52,180 --> 00:05:54,899 (信之助)はい。 チリン チリン… 81 00:05:54,899 --> 00:05:59,337 信之助君は 八雲師の落語に だいぶ ご執心だそうで。 82 00:05:59,337 --> 00:06:01,355 なんだか オーラというか➡ 83 00:06:01,355 --> 00:06:04,158 たたずまいまで 八雲師に似てきましたね。 84 00:06:04,158 --> 00:06:08,596 子供の頃に言われたことも よく覚えてて 崇拝してるみたい。 85 00:06:08,596 --> 00:06:11,332 立派な八雲バカに育ちましたわ。 86 00:06:11,332 --> 00:06:14,118 十七回忌と こけら落とし。 87 00:06:14,118 --> 00:06:17,722 この大事な節目に 私の研究の集大成である➡ 88 00:06:17,722 --> 00:06:21,075 DVD「八雲全集」も いよいよ完成です。➡ 89 00:06:21,075 --> 00:06:24,712 それに合わせた八雲師の評伝も 佳境に入っている。 90 00:06:24,712 --> 00:06:26,981 その総仕上げに 一つ➡ 91 00:06:26,981 --> 00:06:29,267 あなたに 聞きたいことがあるんです。➡ 92 00:06:29,267 --> 00:06:31,302 評伝のためというより➡ 93 00:06:31,302 --> 00:06:34,902 僕が どう~しても知りたい というだけなんですがね。➡ 94 00:06:36,624 --> 00:06:40,124 信之助君の本当の父親の話です。➡ 95 00:06:41,779 --> 00:06:44,832 与太さんは 親分さんだって決めつけている。➡ 96 00:06:44,832 --> 00:06:48,419 けど 僕は どうも そうは思えないんです。 97 00:06:48,419 --> 00:06:51,589 性分なもんで いろいろ調べたんですよ。 98 00:06:51,589 --> 00:06:54,392 養父と養女って 関係を破談にしても➡ 99 00:06:54,392 --> 00:06:57,462 法律では 婚姻を結べないんですって?➡ 100 00:06:57,462 --> 00:07:00,631 けど まあ 血のつながりはないわけですし➡ 101 00:07:00,631 --> 00:07:04,218 長年 連れ添ううちに そんな感情が…。➡ 102 00:07:04,218 --> 00:07:08,239 それなら 誰にも言えないのも 合点がいきます。➡ 103 00:07:08,239 --> 00:07:10,875 この仮定が もし本当なら 彼は➡ 104 00:07:10,875 --> 00:07:14,729 助六と八雲 両方の血を引く子供です。➡ 105 00:07:14,729 --> 00:07:17,815 興奮して身震いしますよ。➡ 106 00:07:17,815 --> 00:07:21,869 しかし これも 全く根拠のない 落語好きの妄言です。➡ 107 00:07:21,869 --> 00:07:26,057 言おうかどうか ずっと迷ってたんですが…。 108 00:07:26,057 --> 00:07:28,257 ねえ 小夏さん。 109 00:07:34,849 --> 00:07:39,520 あたくしは ぜ~ったいに 口を割りませんでしてよ。 110 00:07:39,520 --> 00:07:41,923 ああ~ ダメかぁ。 111 00:07:41,923 --> 00:07:44,826 親分さんも 女将さんも 八雲さんも逝っちゃって➡ 112 00:07:44,826 --> 00:07:49,597 あとは 私だけだもの。 地獄の果てまで持ってくわ。➡ 113 00:07:49,597 --> 00:07:53,518 私が信之助を産んだのは 助六のため。➡ 114 00:07:53,518 --> 00:07:56,854 そして 八雲のためです。 あの人に➡ 115 00:07:56,854 --> 00:08:00,525 落語をやり続けてよかったと 思ってもらうため。➡ 116 00:08:00,525 --> 00:08:02,793 それは間違いないわ。 117 00:08:02,793 --> 00:08:07,365 そして 私は 後悔なんて 一つもありません。➡ 118 00:08:07,365 --> 00:08:10,535 若い頃はね 八雲師に対しては➡ 119 00:08:10,535 --> 00:08:13,688 いろいろな感情が ねじくれてました。➡ 120 00:08:13,688 --> 00:08:17,288 憎しみも 執着も 嫉妬も 羨望も。➡ 121 00:08:18,726 --> 00:08:23,447 若い私には抱えきれないほど たくさんね。➡ 122 00:08:23,447 --> 00:08:29,020 けど それって 簡単にまとめたら 恋って感情だったんじゃない? 123 00:08:29,020 --> 00:08:34,392 そんな気持ち とうの昔に ドブに捨ててやったけどね。 124 00:08:34,392 --> 00:08:39,080 苦しくて つらくて… 若いって面倒ね。➡ 125 00:08:39,080 --> 00:08:41,749 一生 戻りたくないわ。 126 00:08:41,749 --> 00:08:44,535 あっ 嫌だ しゃべり過ぎね。 127 00:08:44,535 --> 00:08:47,071 この先は もう言わないわ。 128 00:08:47,071 --> 00:08:50,625 今は お父さんっていう 大事な相棒がいますから。 129 00:08:50,625 --> 00:08:53,261 このことは 与太さんや信之助君は? 130 00:08:53,261 --> 00:08:55,529 お父さんが 毎日のように➡ 131 00:08:55,529 --> 00:08:58,833 お前は自慢の息子だって言って 育ててるからね。 132 00:08:58,833 --> 00:09:01,269 ほんとに仲がいいの。 133 00:09:01,269 --> 00:09:04,138 水をさすなんてできないわ。 134 00:09:04,138 --> 00:09:07,358 そうですね。 当人しだいだ。 135 00:09:07,358 --> 00:09:09,393 (一同) わっしょい! わっしょい!➡ 136 00:09:09,393 --> 00:09:11,429 わっしょい! わっしょい!➡ 137 00:09:11,429 --> 00:09:13,447 わっしょい! わっしょい!➡ 138 00:09:13,447 --> 00:09:16,150 わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! 139 00:09:16,150 --> 00:09:20,021 わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! 140 00:09:20,021 --> 00:09:23,624 助六~! ≫おめでとう~! 141 00:09:23,624 --> 00:09:27,595 (与太郎)ありがとよ~! けどな➡ 142 00:09:27,595 --> 00:09:29,931 もう助六じゃねぇんだよ。 143 00:09:29,931 --> 00:09:33,234 ≪よっ 九代目! ≫八雲師匠! 144 00:09:33,234 --> 00:09:37,288 (小夏) お父さん 小雪! こっち見て! 145 00:09:37,288 --> 00:09:40,091 (萬月)あかんわ。 呼ばれたはんの見てたら➡ 146 00:09:40,091 --> 00:09:43,878 また腹立ってきた。 あない陽気で けったいなんは➡ 147 00:09:43,878 --> 00:09:46,280 八雲やおへん。 (樋口)萬月師匠➡ 148 00:09:46,280 --> 00:09:48,749 いいかげん諦めなさい。 149 00:09:48,749 --> 00:09:51,886 (萬月)見てみぃ。 みんな 与太郎はんしか見たはらへん。➡ 150 00:09:51,886 --> 00:09:54,322 せやさかい 開席と いっぺんに済ますなんて➡ 151 00:09:54,322 --> 00:09:58,025 反対したんや。 (樋口)今日は 特別なんですよ。➡ 152 00:09:58,025 --> 00:10:01,595 なんたって お客様 皆様 たっての希望ですから。 153 00:10:01,595 --> 00:10:04,865 (萬月)今 あそこにおられるんは彼だけ。➡ 154 00:10:04,865 --> 00:10:06,865 それは確かやな。 155 00:10:09,320 --> 00:10:12,020 ≪ああ~ 八雲師匠。 ん? 156 00:10:14,258 --> 00:10:17,812 おっ 松田さん! (小夏)松田さん? 157 00:10:17,812 --> 00:10:22,516 (松田)やあ うれしいな。 皆さん おそろいで。 158 00:10:22,516 --> 00:10:26,387 (小夏)お元気そうで。 おいくつになったの? 159 00:10:26,387 --> 00:10:31,726 (松田)95になっちまいました。 こんなうれしい日はありません。➡ 160 00:10:31,726 --> 00:10:35,926 みんな み~んな 師匠が つないでくれたおかげだ。 161 00:10:37,565 --> 00:10:41,652 八雲師匠 また こんな日に立ち会わせてくれて➡ 162 00:10:41,652 --> 00:10:45,690 ありがとうございます。 何言ってるんですか。 163 00:10:45,690 --> 00:10:49,276 松田さんがいなきゃ あたしゃ ここへ立っていられません。 164 00:10:49,276 --> 00:10:52,096 (松田)ああ~ 坊ちゃんは いねぇんですかい?➡ 165 00:10:52,096 --> 00:10:55,683 あたしゃ あの人のことが 心配で心配で。 166 00:10:55,683 --> 00:10:58,135 (小夏)楽屋こもって震えてんのよ。 167 00:10:58,135 --> 00:11:00,135 あんにゃろう…。 168 00:11:01,522 --> 00:11:03,708 (信之助) 「あら お父つぁん どうしたの?」。 169 00:11:03,708 --> 00:11:06,577 ≫坊! (信之助)はっ! あっ 助六師匠。➡ 170 00:11:06,577 --> 00:11:10,297 じゃなくて… 八雲師匠。➡ 171 00:11:10,297 --> 00:11:13,467 勝手に ネタさらってました。 さ~せん。 172 00:11:13,467 --> 00:11:16,567 ここだきゃあ いつもどおりでいいよ 坊。 173 00:11:19,890 --> 00:11:23,190 父ちゃん…。 うっ うぅ…。 174 00:11:24,545 --> 00:11:26,981 こけら落としの初席の➡ 175 00:11:26,981 --> 00:11:29,784 口上すぐあと…。 176 00:11:29,784 --> 00:11:32,436 大役すぎて めまいがしてきました。 177 00:11:32,436 --> 00:11:34,472 ったく お前さんは➡ 178 00:11:34,472 --> 00:11:38,275 腕はいいのに いつまでたっても ビビリだなぁ。 179 00:11:38,275 --> 00:11:42,063 おじぎをして 顔を上げたら みんなの顔 見回してみろ。 180 00:11:42,063 --> 00:11:44,882 ものすごくいい顔が見られるよ。 181 00:11:44,882 --> 00:11:47,134 待ちに待った 晴れの日の高座ってのぁ➡ 182 00:11:47,134 --> 00:11:49,134 そういうもんさ。 183 00:11:50,521 --> 00:11:52,540 はい。 184 00:11:52,540 --> 00:11:55,176 あたしの 九代目 八雲襲名もね➡ 185 00:11:55,176 --> 00:11:59,497 この芸風じゃ反対も多いし 師匠からは 襲名に関しちゃあ➡ 186 00:11:59,497 --> 00:12:02,817 好きにしろとしか 言われちゃいねぇ。 187 00:12:02,817 --> 00:12:06,954 大名跡は 誰も継ぎたがらねぇのが噺家の常。 188 00:12:06,954 --> 00:12:10,691 けどな それじゃ お客様が 寂しいんだとよ。 189 00:12:10,691 --> 00:12:12,691 そう言われちゃあな。 190 00:12:14,095 --> 00:12:17,047 お前も あたしの弟子である以上➡ 191 00:12:17,047 --> 00:12:20,584 将来は そういうことに 巻き込まれるかもしれない。 192 00:12:20,584 --> 00:12:25,022 迷ったら 常に お客様のためを 何より考えなさい。 193 00:12:25,022 --> 00:12:28,309 それが 落語の将来にもつながるんだ。 194 00:12:28,309 --> 00:12:31,529 はい。 それに➡ 195 00:12:31,529 --> 00:12:34,215 助六が八雲を継ぐ…➡ 196 00:12:34,215 --> 00:12:37,518 それが お二人ともの 何よりの供養だ。 197 00:12:37,518 --> 00:12:41,418 なあ 坊 あたしは 今日で 助六は廃業だ。 198 00:12:43,941 --> 00:12:48,279 こいつを お前さんにやろう。 なんですか? 199 00:12:48,279 --> 00:12:50,664 あたしも いつの間に頂いたのか➡ 200 00:12:50,664 --> 00:12:52,983 よく覚えちゃいねぇんだ。 201 00:12:52,983 --> 00:12:56,337 もう ボロボロで 高座で使える代物じゃねぇ。 202 00:12:56,337 --> 00:13:00,658 ただ 大師匠が 大事になさってたこたぁ間違いない。 203 00:13:00,658 --> 00:13:03,894 お前が持つのが きっと ふさわしい。 204 00:13:03,894 --> 00:13:06,247 なんか 臭い…。 205 00:13:06,247 --> 00:13:08,247 オイラの臭いじゃねぇぞ。 206 00:13:11,485 --> 00:13:13,521 いい字だろ。 207 00:13:13,521 --> 00:13:15,921 風情のある いい扇子だ。 208 00:13:17,558 --> 00:13:19,558 (信之助)はい。 209 00:15:22,599 --> 00:15:24,618 (拍手) 210 00:15:24,618 --> 00:15:29,056 ≪カン!(拍子木の音) ≪とざい とうざい~! 211 00:15:29,056 --> 00:15:32,993 (拍手) 212 00:15:32,993 --> 00:15:35,029 本日は ご多忙のなか➡ 213 00:15:35,029 --> 00:15:37,298 ようこそ お越しくださいました。 214 00:15:37,298 --> 00:15:40,451 厚く御礼申し上げます。 215 00:15:40,451 --> 00:15:44,121 本日 皆様が そして 我々が待ち望んだ定席➡ 216 00:15:44,121 --> 00:15:47,808 雨竹亭が 再び開席いたします。 217 00:15:47,808 --> 00:15:51,128 ≫皆様のご協力 温かいご寄付➡ 218 00:15:51,128 --> 00:15:54,715 たくさんの方の思いで 先代にも引けを取らない➡ 219 00:15:54,715 --> 00:15:57,518 ≪美しく立派な寄席が 完成しました。 220 00:15:57,518 --> 00:16:00,387 上方の萬月師匠にも ご尽力いただきまして➡ 221 00:16:00,387 --> 00:16:02,473 とにかく ネタを掘り起こし➡ 222 00:16:02,473 --> 00:16:06,593 更には 落語家は 東西合わせて150人を超え➡ 223 00:16:06,593 --> 00:16:09,196 また 有望な若手も たくさん育ち…。 224 00:16:09,196 --> 00:16:12,866 寄席というのは 若手の研鑽場でございますから➡ 225 00:16:12,866 --> 00:16:17,488 彼らが 何より この寄席の復活を 喜んでくれております。 226 00:16:17,488 --> 00:16:20,140 また 史上初の女流落語家➡ 227 00:16:20,140 --> 00:16:23,944 こちらに おわします奥方です。 さっきから ずっと➡ 228 00:16:23,944 --> 00:16:26,697 監視されてる気がして なりませんが…。 229 00:16:26,697 --> 00:16:30,351 先代の二番弟子として 有楽亭小助六を➡ 230 00:16:30,351 --> 00:16:33,987 来年には 襲名させていただく 運びとなっております。 231 00:16:33,987 --> 00:16:36,540 これも また 新しい挑戦です。 232 00:16:36,540 --> 00:16:39,843 この寄席に あたくしのような年寄りも➡ 233 00:16:39,843 --> 00:16:44,198 若手も 男も 女も➡ 234 00:16:44,198 --> 00:16:47,368 東西も 垣根なく➡ 235 00:16:47,368 --> 00:16:51,155 ゼロからスタートさせていただく 所存でございます。 236 00:16:51,155 --> 00:16:53,891 お客様の弥栄と この雨竹亭が➡ 237 00:16:53,891 --> 00:16:57,327 雨後の筍のごとく すくすくと育ちますよう➡ 238 00:16:57,327 --> 00:17:01,882 祈願を込めまして お手を拝借。 いよぉ~! 239 00:17:01,882 --> 00:17:05,386 パパパン パパパン パパパン パン よっ! 240 00:17:05,386 --> 00:17:08,055 パパパン パパパン パパパン パン 241 00:17:08,055 --> 00:17:11,592 はっ! パパパン パパパン パパパン パン 242 00:17:11,592 --> 00:17:15,028 (拍手) 243 00:17:15,028 --> 00:17:21,685 ♬~(出囃子) 244 00:17:21,685 --> 00:17:23,720 (小雪)ふふっ。 245 00:17:23,720 --> 00:17:27,620 (拍手) 246 00:17:30,360 --> 00:17:34,715 開席初日 初めのお席を 務めさせていただきます。 247 00:17:34,715 --> 00:17:39,019 五代目 有楽亭菊比古に ございます。➡ 248 00:17:39,019 --> 00:17:41,054 ≫「おっ母ぁ 羽織 出しとくれ。➡ 249 00:17:41,054 --> 00:17:43,457 ≫これから 初天神に お参りに行くんだよ」。➡ 250 00:17:43,457 --> 00:17:46,927 「あら そう。 じゃあ あの~ 金坊を連れてっとくれよ」。 251 00:17:46,927 --> 00:17:49,513 「嫌だ。 俺 あいつと行きたかねぇ」。 252 00:17:49,513 --> 00:17:51,682 「嫌だって 自分の子だろ!」。 253 00:17:51,682 --> 00:17:55,486 「あら お父つぁん どうしたの? 羽織なんて着ちゃってさ~。➡ 254 00:17:55,486 --> 00:17:58,288 あっ 分かった! 初天神 行くんだろ。➡ 255 00:17:58,288 --> 00:18:01,592 ねえ お願い。 あたいも連れてっておくれよ。➡ 256 00:18:01,592 --> 00:18:05,262 ねえ お願~い」。 「ダメだ!➡ 257 00:18:05,262 --> 00:18:07,281 お前は いっつも 外へ行くってぇと➡ 258 00:18:07,281 --> 00:18:10,350 あれ買っつくれ これ買っつくれって うるせぇんだから。➡ 259 00:18:10,350 --> 00:18:13,787 連れていかねぇ!」。 「連れてっておくれよ。➡ 260 00:18:13,787 --> 00:18:17,107 ねえ お父つぁん」。 「んっ…」。➡ 261 00:18:17,107 --> 00:18:21,061 「連れてって! あれ買っつくれ これ買っつくれって言わねぇから。➡ 262 00:18:21,061 --> 00:18:25,849 ねっ お願~い!」。 「びぃ~びぃ~うるせぇな。➡ 263 00:18:25,849 --> 00:18:29,486 分かったよ 連れてくよ」。 (観客たち)はははっ。 264 00:18:29,486 --> 00:18:33,290 「ああ~ ちくしょう。 まんまと 飴玉 買わされちまったよ。➡ 265 00:18:33,290 --> 00:18:36,590 ほれ 口開けてみろ。 あ~ん」。 266 00:18:38,879 --> 00:18:40,914 (信之助)「おう うめぇか?」。 267 00:18:40,914 --> 00:18:43,217 「うん うん。 おいしい!」。 268 00:18:43,217 --> 00:18:46,503 バシン! 「うぇ~ん!」。 269 00:18:46,503 --> 00:18:51,158 「おい こら! たたかれたくれぇで 泣くんじゃねぇよ」。 270 00:18:51,158 --> 00:18:54,444 「いきなり たたくから 飴玉 落っこったよ」。 271 00:18:54,444 --> 00:18:56,713 「何!? どこへ落とした?」。 272 00:18:56,713 --> 00:18:59,116 「おなかん中へ 落っこったぃ」。 273 00:18:59,116 --> 00:19:02,019 (観客たち)ははははっ。 274 00:19:02,019 --> 00:19:06,473 (拍手) 275 00:19:06,473 --> 00:19:10,093 出番 替わりまして トリを務めさせていただきます➡ 276 00:19:10,093 --> 00:19:13,430 九代目 有楽亭八雲でございます。 277 00:19:13,430 --> 00:19:16,083 へへへっ。 こりゃ 当分こなれねぇな。 278 00:19:16,083 --> 00:19:18,185 (一同)ははははっ。 279 00:19:18,185 --> 00:19:21,655 師匠が亡くなって 随分と たちましたな。 280 00:19:21,655 --> 00:19:24,825 どこへ参りましても いまだに 八雲の弟子として➡ 281 00:19:24,825 --> 00:19:27,945 かわいがっていただける。 また あたくしも➡ 282 00:19:27,945 --> 00:19:32,432 師匠の話をさせていただくのが 大変 楽しゅうございます。 283 00:19:32,432 --> 00:19:35,068 この寄席は 先代と 造りを全く同じに➡ 284 00:19:35,068 --> 00:19:37,521 こしらえていただいたんです。 285 00:19:37,521 --> 00:19:40,157 はやり廃りてぇのも ございますが➡ 286 00:19:40,157 --> 00:19:43,961 変わらねぇもんも 必要でございます。 287 00:19:43,961 --> 00:19:48,699 神様の世も それは変わらぬようでして。 288 00:19:48,699 --> 00:19:52,185 「死神」というお噺の一節ですな。 289 00:19:52,185 --> 00:19:55,622 こけら落としには 少々 薄気味悪うございますが➡ 290 00:19:55,622 --> 00:20:00,022 師匠への手向けに 一席 おつきあいくださいますよう…。 291 00:20:04,248 --> 00:20:07,451 「いっ 一体 だ… 誰なんだ? あんた」。 292 00:20:07,451 --> 00:20:12,189 「あたしかい? あたしゃ死神だよ。➡ 293 00:20:12,189 --> 00:20:15,189 あたしが いいこと教ぇてやろうか?」。 294 00:20:18,011 --> 00:20:20,430 「そいじゃあ 布団を回しちまったせいで➡ 295 00:20:20,430 --> 00:20:22,466 旦那と あたしの寿命が➡ 296 00:20:22,466 --> 00:20:24,484 い… 入れ替わっちまった ってことかい?➡ 297 00:20:24,484 --> 00:20:26,987 ああ~ なんてこったぃ!➡ 298 00:20:26,987 --> 00:20:30,023 金はいいよ あたしゃ いらねぇから。➡ 299 00:20:30,023 --> 00:20:32,960 お前さんに み~んなあげる。 ねっ。➡ 300 00:20:32,960 --> 00:20:35,612 だから 元の寿命に 取っ替えてくれよ」。 301 00:20:35,612 --> 00:20:37,731 「ダ~メ」。 302 00:20:37,731 --> 00:20:40,334 「そんな不人情なこと 言わねぇでくれよ。➡ 303 00:20:40,334 --> 00:20:43,687 頼むよ なっ 死ぃちゃん もっぺんだけ。➡ 304 00:20:43,687 --> 00:20:46,857 ねっ? お金は まるっと返すから」。 305 00:20:46,857 --> 00:20:49,493 「しょうのねぇ野郎だ。➡ 306 00:20:49,493 --> 00:20:53,080 この燃えさしに ろうそくの火ぃ移してみろ。➡ 307 00:20:53,080 --> 00:20:57,680 しくじったら そのまま死ぬ。 いいな?」。 308 00:21:00,253 --> 00:21:03,690 「ろうそくの火を…」。 ゴクッ 309 00:21:03,690 --> 00:21:05,826 「上手に…」。 310 00:21:05,826 --> 00:21:08,612 「へへへへっ。➡ 311 00:21:08,612 --> 00:21:12,482 震えてるな。 震えると消ぇちまう。➡ 312 00:21:12,482 --> 00:21:15,869 消ぇたら死んじまうな」。 313 00:21:15,869 --> 00:21:19,523 「よしとくれよ! 黙ってろぃ!」。 314 00:21:19,523 --> 00:21:23,560 「ほ~ら 消ぇるよ。➡ 315 00:21:23,560 --> 00:21:27,260 消ぇるよ。 消ぇ…」。 316 00:21:28,732 --> 00:21:30,751 あっ…。 317 00:21:30,751 --> 00:21:37,791 ♬~ 318 00:21:37,791 --> 00:21:42,012 お前さんにも 見ぇるようになっちまったのかぇ。 319 00:21:42,012 --> 00:21:44,012 哀れだね。 320 00:21:46,817 --> 00:21:48,969 消ぇる。 321 00:21:48,969 --> 00:21:51,004 消ぇるよ。 322 00:21:51,004 --> 00:21:53,056 ふふふっ…。 323 00:21:53,056 --> 00:21:57,210 ほ~ら 消ぇた。 324 00:21:57,210 --> 00:22:01,410 ♬~ 325 00:22:13,810 --> 00:22:15,810 はっ! 326 00:22:18,615 --> 00:22:22,119 「なんだ… 夢か」。 327 00:22:22,119 --> 00:22:25,555 ははっ! (一同)ははははっ! 328 00:22:25,555 --> 00:22:30,560 (拍手) 329 00:22:30,560 --> 00:22:37,860 ♬~(受け囃子) 330 00:22:41,922 --> 00:22:45,409 (松田)はぁ… いい季節ですな。➡ 331 00:22:45,409 --> 00:22:48,995 師匠は いいご時分に逝きなすった。➡ 332 00:22:48,995 --> 00:22:52,866 あたしゃ あのとき 彼岸まで お見送りしたんですよ。 333 00:22:52,866 --> 00:22:55,419 (樋口)はいはい もう行っちゃダメですよ。 334 00:22:55,419 --> 00:22:57,487 へへっ。 (松田)ここへは➡ 335 00:22:57,487 --> 00:23:01,508 七代目とも よ~く花見に来たんですよ。 336 00:23:01,508 --> 00:23:04,628 まだ 戦争も始まる前だ。 337 00:23:04,628 --> 00:23:08,098 (樋口)昔の話 もう少し お聞かせください。 338 00:23:08,098 --> 00:23:11,485 (松田)実は あたしゃ 噺家になりたかったんです。 339 00:23:11,485 --> 00:23:13,987 (樋口) はあ~! そうだったんですか。 340 00:23:13,987 --> 00:23:16,990 (松田)14の時分に入門して。➡ 341 00:23:16,990 --> 00:23:19,443 ところが この性格ですから➡ 342 00:23:19,443 --> 00:23:22,512 一向に芽が出ませんでな。➡ 343 00:23:22,512 --> 00:23:24,714 諦めて 廃業しようとしましたら➡ 344 00:23:24,714 --> 00:23:27,814 七代目のお計らいで 使っていただいたんです。 345 00:23:30,537 --> 00:23:35,108 (松田)そのあと 家にやってきた 初太郎さんと坊ちゃんの面倒を➡ 346 00:23:35,108 --> 00:23:38,028 見させていただくことに なりまして。➡ 347 00:23:38,028 --> 00:23:41,164 お二人は 華も才もあって➡ 348 00:23:41,164 --> 00:23:45,051 水と油のような 正反対のご性分でしたが➡ 349 00:23:45,051 --> 00:23:48,722 お優しいからか 気は合ってらしてね。➡ 350 00:23:48,722 --> 00:23:51,324 どんどん出世なさるのを 横で見ていて➡ 351 00:23:51,324 --> 00:23:55,612 胸がすく思いでした。 あたしができなかったことを➡ 352 00:23:55,612 --> 00:23:58,612 み~んな かなえてくださるんですから。 353 00:24:00,317 --> 00:24:05,288 まさか お二人とも 見送ることになるとは…。➡ 354 00:24:05,288 --> 00:24:09,843 少し 長生きをし過ぎましたな。➡ 355 00:24:09,843 --> 00:24:12,896 八代目は 小夏さんを お引き取りになってから➡ 356 00:24:12,896 --> 00:24:14,931 ふさぎ込んじまってね。 357 00:24:14,931 --> 00:24:21,204 ♬~ 358 00:24:21,204 --> 00:24:23,890 (松田)そういや あのこたぁ…。 359 00:24:23,890 --> 00:24:26,827 (樋口) ああ 四国で聞いた話ですか。 360 00:24:26,827 --> 00:24:29,362 言えるわけないじゃないですか。 361 00:24:29,362 --> 00:24:33,517 よかった。 ず~っと ないしょですよ。 362 00:24:33,517 --> 00:24:35,886 生きてりゃ どうしても言えねぇことなんざ➡ 363 00:24:35,886 --> 00:24:40,086 いくらでも出てくらぁ。 しょうがねぇなぁ 人間てのは。 364 00:24:42,225 --> 00:24:46,696 みんな お優しいから あんなことになっちまった。➡ 365 00:24:46,696 --> 00:24:50,667 けど あたしゃ 長生きした甲斐がありました。➡ 366 00:24:50,667 --> 00:24:54,020 まさか こんな光景が見られるなんて…。 367 00:24:54,020 --> 00:25:03,547 ♬~ 368 00:25:03,547 --> 00:25:14,791 ♬~ 369 00:25:14,791 --> 00:25:16,826 (樋口)結局 八雲師は➡ 370 00:25:16,826 --> 00:25:19,863 落語と心中は できませんでしたな。➡ 371 00:25:19,863 --> 00:25:24,217 師匠が 気まぐれに あなたという未練を残した。➡ 372 00:25:24,217 --> 00:25:29,055 たった一人で滅ぼせるなら たった一人でも復活しうる。 373 00:25:29,055 --> 00:25:33,526 戦争があろうと 時代が変わろうと その時々に 形を変えて➡ 374 00:25:33,526 --> 00:25:36,626 雑草のように しぶとく息を吹き返す。 375 00:25:39,332 --> 00:25:41,351 ふ~ん。 (樋口)こらこら➡ 376 00:25:41,351 --> 00:25:43,386 なんだね その顔。➡ 377 00:25:43,386 --> 00:25:46,286 僕 今 すんごくいいことを 言ったんだが。 378 00:25:47,991 --> 00:25:51,628 先生 ず~っと そんなこと考えてたのかい? 379 00:25:51,628 --> 00:25:54,598 頭がいいってのは 大変だね どうも。 380 00:25:54,598 --> 00:25:59,152 オイラ 落語がなくなるなんざ いっぺんも考えたこたぁねぇんだ。 381 00:25:59,152 --> 00:26:02,022 だってよ…。 ん? 382 00:26:02,022 --> 00:26:05,325 こんないいもんが なくなるわけねぇべ。 383 00:26:05,325 --> 00:26:21,057 ♬~ 384 00:26:21,057 --> 00:26:24,878 「へへっ うれしいな。 ついに お梅ちゃんと…。➡ 385 00:26:24,878 --> 00:26:28,264 あっ? あっ どうも 大将」。 386 00:26:28,264 --> 00:26:31,051 「なんだ 一八 そんなに浮かれて」。 387 00:26:31,051 --> 00:26:33,169 「女が ツンツ~ンっと 合図してきたから➡ 388 00:26:33,169 --> 00:26:35,221 こちとら もう とっときのでけぇ声で…➡ 389 00:26:35,221 --> 00:26:38,792 音羽屋! 音羽屋! 音羽屋! 音羽屋!➡ 390 00:26:38,792 --> 00:26:42,512 お~たおたおたおた… 音羽屋~~!」。 391 00:26:42,512 --> 00:26:44,547 (助六)「ネギなんですよ ええ ええ ええ。➡ 392 00:26:44,547 --> 00:26:48,885 このネギくらい 体にいいものはないってんでね➡ 393 00:26:48,885 --> 00:26:51,955 とにかくね ネギだけ食べてらぁ それでいいんですよ。 ネギ」。➡ 394 00:26:51,955 --> 00:26:53,974 「ちょっと ああた ああた! さっきから➡ 395 00:26:53,974 --> 00:26:58,695 『ネギだ ネギだ』言ってますけどね 間に 肉が挟まってますよ」。 396 00:26:58,695 --> 00:27:02,065 「ここは お女郎屋…。 ひぃ~!」。 397 00:27:02,065 --> 00:27:05,919 「坊ちゃん へへへっ。 ダメだよ 逃げちゃあ」。 398 00:27:05,919 --> 00:27:09,723 「おい 坊ちゃん いかにも ここは お女郎屋です」。 399 00:27:09,723 --> 00:27:12,876 「とんでもないこと…。 お稲荷様の お籠もりだってぇから➡ 400 00:27:12,876 --> 00:27:16,846 来たんじゃありませんか。 人をだまして こんな処へ…。➡ 401 00:27:16,846 --> 00:27:19,366 あたしゃ おいとまいたします」。 402 00:27:19,366 --> 00:27:21,901 「お前も 女郎屋で 飯 食おうってんなら➡ 403 00:27:21,901 --> 00:27:23,937 俺の面ぁ覚えとけ。➡ 404 00:27:23,937 --> 00:27:27,640 吉原でも千住でも どこでも 相手に仕手のねぇ➡ 405 00:27:27,640 --> 00:27:30,860 居残り佐平次たぁ 俺のことよ。➡ 406 00:27:30,860 --> 00:27:34,881 楼へ帰って 旦那によろしく言っとくれ。➡ 407 00:27:34,881 --> 00:27:36,916 あばよ!」。 408 00:27:36,916 --> 00:27:45,516 ♬~ 409 00:29:25,592 --> 00:29:30,592