1 00:00:39,055 --> 00:00:45,729 <小伝馬町の牢屋敷は 敷地2,677坪。➡ 2 00:00:45,729 --> 00:00:50,400 牢奉行は 石出帯刀が 代々 世襲しており➡ 3 00:00:50,400 --> 00:00:53,303 拷問蔵や処刑場のほか➡ 4 00:00:53,303 --> 00:00:56,740 侍のための揚がり座敷や 揚がり屋➡ 5 00:00:56,740 --> 00:01:03,613 百姓牢 町人を入れる大牢 そして 女牢がある。➡ 6 00:01:03,613 --> 00:01:10,286 これに内科である本道2人 外科1人の医者が詰めていた> 7 00:01:10,286 --> 00:01:25,286 ♬~ 8 00:01:27,103 --> 00:01:29,439 (登)どうだ? 腹の調子は。 9 00:01:29,439 --> 00:01:32,342 (囚人)へい 頂いた薬が 効きましたようで。 10 00:01:32,342 --> 00:01:37,642 なるべく冷やさぬようにな。 へい ありがとうございます。 11 00:01:45,388 --> 00:01:49,726 <その男が 東の大牢に入れられたのは➡ 12 00:01:49,726 --> 00:01:52,062 3日前の事であった> 13 00:01:52,062 --> 00:01:58,401 先生! 先生! 助けておくんなせい! 14 00:01:58,401 --> 00:02:01,304 (万平)またか。 15 00:02:01,304 --> 00:02:04,074 あっしは 無実なんです! 16 00:02:04,074 --> 00:02:08,745 そういう事は お調べの時に お役人方に言うものだ。 17 00:02:08,745 --> 00:02:15,445 我々に訴えても どうにもならぬ。 昨日も そう申しておいたはずだ。 18 00:02:17,420 --> 00:02:20,120 聞いて下せえ 先生! 19 00:02:22,759 --> 00:02:28,059 あっしは はめられたんだ。 助けておくんなせえ! 20 00:02:29,632 --> 00:02:32,569 (桂順)立花さん。 21 00:02:32,569 --> 00:02:35,038 …はい。 22 00:02:35,038 --> 00:02:38,908 先生! 先生! 23 00:02:38,908 --> 00:02:44,380 助けて下せえ! あっしは無実なんです! 24 00:02:44,380 --> 00:02:48,380 先生! (牢内役人)静かにしろい。 25 00:02:53,389 --> 00:02:56,059 あっ! あ~! 26 00:02:56,059 --> 00:02:59,395 (玄庵)気にする事もあるまい。 27 00:02:59,395 --> 00:03:05,735 囚人が無実を訴えるのは よくある事だ。 28 00:03:05,735 --> 00:03:10,406 それは そうですが…。 牢屋暮らしは つらいからな。 29 00:03:10,406 --> 00:03:16,079 うそでも何でも 己の無実を言い立てて➡ 30 00:03:16,079 --> 00:03:20,750 つらい事から ほんのひとときでも 逃れようとする。 31 00:03:20,750 --> 00:03:24,420 しかし 私には とても うそをついてるようには…。 32 00:03:24,420 --> 00:03:28,291 甘いな。 33 00:03:28,291 --> 00:03:33,991 医は仁術ではあるが 人がよすぎても いかん。 34 00:03:35,698 --> 00:03:39,035 囚人の言う事を いちいち気にしていたら➡ 35 00:03:39,035 --> 00:03:44,035 牢医者は つとまらんぞ。 はい。 36 00:03:46,376 --> 00:03:53,076 実は 少々 困っている事が。 困ってるとは? 37 00:03:56,719 --> 00:04:00,056 故郷を出る時 母からもらった金子が➡ 38 00:04:00,056 --> 00:04:02,725 だいぶ 心細くなってまいりまして➡ 39 00:04:02,725 --> 00:04:05,628 このままでは 書物を買う事はおろか➡ 40 00:04:05,628 --> 00:04:08,598 筆や墨の代にも 事欠く事になろうかと。 41 00:04:08,598 --> 00:04:12,402 そりゃ いかんな。 42 00:04:12,402 --> 00:04:16,272 筆や墨はともかくとも➡ 43 00:04:16,272 --> 00:04:20,076 書物だけは 読まずに済ます訳にもいかん。 44 00:04:20,076 --> 00:04:22,979 全く同感です。 45 00:04:22,979 --> 00:04:28,751 それで ものは相談ですが 牢屋敷から頂く お手当から➡ 46 00:04:28,751 --> 00:04:32,622 いくらか こっちに回してもらう 訳には まいりませぬか? 47 00:04:32,622 --> 00:04:36,559 いくらかと申すと? 半分とは申しませぬ。 48 00:04:36,559 --> 00:04:39,362 せめて 4分の1でも。 49 00:04:39,362 --> 00:04:43,032 4分の1… 月に1分か。 50 00:04:43,032 --> 00:04:46,903 しかし… うん。 51 00:04:46,903 --> 00:04:53,042 勉学のためとあらば 致し方もあるまい。 52 00:04:53,042 --> 00:04:57,714 承知して下さいますか! うん わしは構わんが。 53 00:04:57,714 --> 00:05:02,385 では その旨 叔母上に お伝え頂けますか? えっ? 54 00:05:02,385 --> 00:05:05,054 ああ…。 わしの口から? 55 00:05:05,054 --> 00:05:07,957 (松江)登! 登! 56 00:05:07,957 --> 00:05:11,394 人が呼んでいるのに なぜ返事をしないのです。 57 00:05:11,394 --> 00:05:15,064 今 叔父上と 大事な話をしておりましたもので。 58 00:05:15,064 --> 00:05:18,735 話? どんな話です? いやいや 大した事では…。 59 00:05:18,735 --> 00:05:21,435 つまらん話だ。 なっ。 60 00:05:23,072 --> 00:05:26,943 登が 今 大事な話だと。 61 00:05:26,943 --> 00:05:30,947 わしは 吉川… 吉川と約束があって➡ 62 00:05:30,947 --> 00:05:35,018 話は 登から聞いて下さい。 63 00:05:35,018 --> 00:05:38,354 叔父上! おっ…。 64 00:05:38,354 --> 00:05:41,257 お話を伺いましょうか。 65 00:05:41,257 --> 00:05:44,227 いえ もう結構です。 66 00:05:44,227 --> 00:05:48,364 では これからすぐに雑巾がけと 庭の草むしり➡ 67 00:05:48,364 --> 00:05:51,064 それと まき割りもね。 68 00:05:55,238 --> 00:05:57,938 (ため息) 69 00:06:06,716 --> 00:06:12,388 (きよ)まあ! 立派な お医者に なろうっていうお人に➡ 70 00:06:12,388 --> 00:06:17,060 雑巾がけなんか…。 なに 道場で いつもやってる事だし。 71 00:06:17,060 --> 00:06:21,731 道場のは修行ですけど これは ただの雑用です。 72 00:06:21,731 --> 00:06:26,431 お疲れでしょうに。 あっ そうだ。 73 00:06:31,341 --> 00:06:35,011 はい どうぞ。 74 00:06:35,011 --> 00:06:37,680 あ~。 じゃあ 私が。 75 00:06:37,680 --> 00:06:41,351 はい どうぞ。 う~ん。 76 00:06:41,351 --> 00:06:44,020 私も~。 77 00:06:44,020 --> 00:06:46,923 フフフフフ。 78 00:06:46,923 --> 00:06:53,363 私が やっときますから たまには お昼寝でもなさいまし。 79 00:06:53,363 --> 00:06:58,701 ありがたい。 「地獄で仏」とは この事だ。 80 00:06:58,701 --> 00:07:02,401 ≪(ちえ)登! 登! 81 00:07:05,041 --> 00:07:09,379 何の御用です? みきちゃん 送ってってあげてよ。 82 00:07:09,379 --> 00:07:11,714 またか。 83 00:07:11,714 --> 00:07:15,385 「また」とは何よ。 みきちゃんに失礼じゃない。 84 00:07:15,385 --> 00:07:18,054 すいません。 何食べてんの? 85 00:07:18,054 --> 00:07:21,924 アメ。 (あき)私たちもアメ欲しいよね。 86 00:07:21,924 --> 00:07:24,394 ついでに 買ってきてもらおうかな~。 87 00:07:24,394 --> 00:07:29,394 (みき)あきちゃん…。 冗談よ 冗談! 88 00:07:31,067 --> 00:07:34,067 (アメをかみ砕く音) 89 00:07:44,347 --> 00:07:47,047 (吉兵衛)先生。 90 00:07:49,685 --> 00:07:53,685 先生 助けておくんなせえ! 91 00:07:55,358 --> 00:07:59,228 あっしは はめられたんです! 見捨てねえで下せえ! 92 00:07:59,228 --> 00:08:03,032 (牢内役人) おら いい加減にしねえか! 93 00:08:03,032 --> 00:08:08,704 囚人の言う事は 話半分に 聞いておいた方がよろしいですぞ。 94 00:08:08,704 --> 00:08:13,376 無実だというのは 大概 うそか妄想の類いです。 95 00:08:13,376 --> 00:08:18,047 先生 後で お仕置きを かましておきやす。 おら! 96 00:08:18,047 --> 00:08:21,918 おい 乱暴はいかんぞ! あっ へい。 97 00:08:21,918 --> 00:08:27,056 先生 あっしには 目の見えねえ娘がいるんです! 98 00:08:27,056 --> 00:08:33,863 年は16で 訳も分からねえまま あっしの帰りを待ってるんです! 99 00:08:33,863 --> 00:08:39,001 どうか 哀れだと思って 助けてやって下せえ! 100 00:08:39,001 --> 00:08:43,339 お願いします! どうか! 101 00:08:43,339 --> 00:08:46,676 あの男 どういう素性です? 102 00:08:46,676 --> 00:08:51,013 (平塚)名前は吉兵衛。 左官の下職が仕事で➡ 103 00:08:51,013 --> 00:08:54,350 確か 娘と2人暮らしだったと 思うな。 104 00:08:54,350 --> 00:08:58,688 それで 吉兵衛は どのような罪を? 殺しです。 105 00:08:58,688 --> 00:09:02,024 追い剥ぎに襲われ 争ってる間に➡ 106 00:09:02,024 --> 00:09:05,361 相手を匕首で刺し殺した という事で➡ 107 00:09:05,361 --> 00:09:08,264 百たたきの上 追放と決まった。 108 00:09:08,264 --> 00:09:11,234 しかし それならば 悪いのは相手の方であって➡ 109 00:09:11,234 --> 00:09:14,370 吉兵衛は自分の身を 守っただけではありませんか。 110 00:09:14,370 --> 00:09:20,042 それが本当ならね。 どういう事です? 111 00:09:20,042 --> 00:09:24,380 追い剥ぎうんぬんは あくまで 吉兵衛本人からの申し立てで➡ 112 00:09:24,380 --> 00:09:27,049 確かな証拠があった訳ではない。 113 00:09:27,049 --> 00:09:30,720 それに 吉兵衛は ふだんから 匕首を持っていたという➡ 114 00:09:30,720 --> 00:09:35,558 申し立てもあったりして お裁きには大変苦心したそうだ。 115 00:09:35,558 --> 00:09:40,997 一件を扱った岡っ引きが誰か 教えて頂きたい。 116 00:09:40,997 --> 00:09:47,997 先生… 妙に首を突っ込まねえ方が ためだと思いますがね。 117 00:09:53,576 --> 00:09:57,013 <その岡っ引きは清助といい➡ 118 00:09:57,013 --> 00:10:01,884 深川西町の髪結い床が 住まいであった> 119 00:10:01,884 --> 00:10:06,022 ごめん。 ≪いらっしゃい。 120 00:10:06,022 --> 00:10:08,925 (清助)あっしどもは お上から定まった お手当を➡ 121 00:10:08,925 --> 00:10:13,896 頂いてる訳じゃないんでね 女房に稼いでもらわねえと。 122 00:10:13,896 --> 00:10:18,034 なるほど いいご身分ですな。 123 00:10:18,034 --> 00:10:21,704 先生 からかっちゃいけませんぜ。 124 00:10:21,704 --> 00:10:24,607 どうぞ。 125 00:10:24,607 --> 00:10:28,578 で 用と言いなさるのは? 126 00:10:28,578 --> 00:10:33,316 吉兵衛という男の事で 少々 伺いたい事があって来たのだが。 127 00:10:33,316 --> 00:10:39,055 何をお聞きになりてえんで? 一件の詳しい いきさつを。 128 00:10:39,055 --> 00:10:42,725 ですが 何だって今頃になって。 129 00:10:42,725 --> 00:10:46,596 吉兵衛は 自分が無実だと 訴え続けているのだ。 130 00:10:46,596 --> 00:10:51,067 先生は そいつを信用なさるんで? 131 00:10:51,067 --> 00:10:55,738 そいつは 話を聞いてみん事には。 132 00:10:55,738 --> 00:11:00,076 ようがす お話し致しやしょう。➡ 133 00:11:00,076 --> 00:11:04,413 吉兵衛が 小名木川の川べりで 追い剥ぎに襲われたのは➡ 134 00:11:04,413 --> 00:11:06,749 ひとつきほど前の事です。 135 00:11:06,749 --> 00:11:10,449 旦那! どうしたい? 136 00:11:12,088 --> 00:11:18,427 (清助)襲ったのは 鱒蔵という 大工の見習いなんですがね。 137 00:11:18,427 --> 00:11:20,763 あっしは いきなり襲われたんです! 138 00:11:20,763 --> 00:11:24,100 (清助)吉兵衛が言うには 仕事帰りに➡ 139 00:11:24,100 --> 00:11:27,436 いきなり匕首で切りつけられて もみ合ううちに➡ 140 00:11:27,436 --> 00:11:30,106 相手の腹を 刺しちまったっつう事で。 141 00:11:30,106 --> 00:11:33,976 すると 匕首は 鱒蔵の持ち物 だったという事ですか? 142 00:11:33,976 --> 00:11:38,914 吉兵衛の言い分は そうです。 しかし その一方で➡ 143 00:11:38,914 --> 00:11:42,685 吉兵衛が ふだん 匕首を 持ち歩いていたと言う者が➡ 144 00:11:42,685 --> 00:11:45,588 おりましてね。 誰です? それは。 145 00:11:45,588 --> 00:11:51,060 源六と与五郎といって 吉兵衛とは相長屋で➡ 146 00:11:51,060 --> 00:11:53,396 ごく親しく つきあっていた者です。 147 00:11:53,396 --> 00:11:56,298 信用できるんでしょうな? その2人は。 148 00:11:56,298 --> 00:12:02,405 もちろんです。 その長屋は 六右衛門店というんだが➡ 149 00:12:02,405 --> 00:12:06,275 住人は みんな 気のいい連中ばかりでしてね➡ 150 00:12:06,275 --> 00:12:11,275 通称を善人長屋というほどなんで。 151 00:12:15,418 --> 00:12:20,718 (おもと)あの~ 何か御用ですか? 152 00:12:25,761 --> 00:12:30,099 ≪(おもと)おみよちゃん! (戸が開く音) 153 00:12:30,099 --> 00:12:32,799 ≪(おもと)お客さんだよ! 154 00:12:55,257 --> 00:12:57,957 あっ どうぞ。 155 00:13:00,062 --> 00:13:02,762 じゃあ ごゆっくり。 156 00:13:05,401 --> 00:13:09,071 失礼ですが どちら様でしょう? 157 00:13:09,071 --> 00:13:13,409 私は 小伝馬町の牢医者で 立花 登といいます。 158 00:13:13,409 --> 00:13:17,279 お父っつぁんが病気でも? いやいや。 159 00:13:17,279 --> 00:13:21,083 お父っつぁんは元気だから 心配は無用だよ。 160 00:13:21,083 --> 00:13:23,753 よかった。 161 00:13:23,753 --> 00:13:27,423 おみよさん お父っつぁんは牢の中で➡ 162 00:13:27,423 --> 00:13:31,694 自分は無実だと言い続けていてね。 それが本当なら➡ 163 00:13:31,694 --> 00:13:36,365 なんとか力になりたいと 私は思っているんだ。 164 00:13:36,365 --> 00:13:39,702 そこで あんたに聞きたいんだが➡ 165 00:13:39,702 --> 00:13:43,372 誰か お父っつぁんを恨んだり わなに掛けたりするような人に➡ 166 00:13:43,372 --> 00:13:47,243 心当たりはないだろうか? 167 00:13:47,243 --> 00:13:54,383 私 お父っつぁんが 外で何をしてたか知らないから。 168 00:13:54,383 --> 00:14:01,056 では ここの長屋の人でもいい。 仲が悪かった人はいないかな? 169 00:14:01,056 --> 00:14:06,729 さあ…。 ここの人たちは 皆 いい人ばかりで➡ 170 00:14:06,729 --> 00:14:11,400 口げんか 一つ 聞いた事がありませんから。 171 00:14:11,400 --> 00:14:17,273 じゃあ あと一つ。 鱒蔵という名前を聞いた事は? 172 00:14:17,273 --> 00:14:19,275 いいえ。 173 00:14:19,275 --> 00:14:22,044 そうか…。 174 00:14:22,044 --> 00:14:24,044 ≪(おもと)入るよ。 175 00:14:31,353 --> 00:14:36,053 お客さん どうぞ。 これは ありがたい。 176 00:14:38,027 --> 00:14:41,897 飲んだら ここに置いときな。 後で片づけに来るからね。 177 00:14:41,897 --> 00:14:44,897 ありがとう おもとおばさん。 178 00:14:52,575 --> 00:14:56,378 これ よかったら おすみちゃんに。 179 00:14:56,378 --> 00:15:00,249 あ~ よくまあ こんなきれいに。 180 00:15:00,249 --> 00:15:03,252 おすみが どんなに喜ぶか 知れないよ。 181 00:15:03,252 --> 00:15:07,389 おみよちゃん ありがとうね。 182 00:15:07,389 --> 00:15:10,726 善人長屋か…。 183 00:15:10,726 --> 00:15:13,629 ああ お帰り。 (源六)おお!➡ 184 00:15:13,629 --> 00:15:19,068 おや? お客さんかね? ええ お父っつぁんの事で➡ 185 00:15:19,068 --> 00:15:22,404 わざわざ小伝馬町から。 186 00:15:22,404 --> 00:15:26,275 それは ご苦労さまなこって。 187 00:15:26,275 --> 00:15:30,279 おみよちゃん すぐに おまんまの支度するからな。 188 00:15:30,279 --> 00:15:33,279 ありがとう。 じゃあ。 189 00:15:34,984 --> 00:15:39,355 今の人は? 隣の源六さんという人です。 190 00:15:39,355 --> 00:15:42,258 源六? 私が こんなですから➡ 191 00:15:42,258 --> 00:15:44,226 お父っつぁんが 連れていかれてから➡ 192 00:15:44,226 --> 00:15:46,926 いろいろと心配してくれて。 193 00:16:00,376 --> 00:16:23,399 ♬~ 194 00:16:23,399 --> 00:16:25,334 はあ~! 195 00:16:25,334 --> 00:16:49,334 ♬~ 196 00:16:54,029 --> 00:16:57,366 (藤吉)そいつは とんだ災難でござんしたねえ。 197 00:16:57,366 --> 00:17:00,703 災難なのは相手の方だ。 思いっきり ぶん投げたんで➡ 198 00:17:00,703 --> 00:17:06,375 腕の一本は折れたかもしれん。 (藤吉)ハハハハ 威勢のいいこった。 199 00:17:06,375 --> 00:17:12,715 どうぞ。 で 襲ってきたのは その源六とかいう男だったんで? 200 00:17:12,715 --> 00:17:16,585 いや 別の男だと思う。 だとしても➡ 201 00:17:16,585 --> 00:17:20,589 やっぱり においますなあ。 源六がか? 202 00:17:20,589 --> 00:17:24,727 与五郎ってやつも。 どうして そう思う? 203 00:17:24,727 --> 00:17:28,063 日頃は 友達づきあいを していたくせに➡ 204 00:17:28,063 --> 00:17:31,667 吉兵衛の不利になると承知の上で 匕首の事を➡ 205 00:17:31,667 --> 00:17:33,602 しゃべったのが解せねえ。 206 00:17:33,602 --> 00:17:36,338 実は私も そこが引っ掛かっている。 207 00:17:36,338 --> 00:17:38,674 いずれにしても あっしも➡ 208 00:17:38,674 --> 00:17:42,344 吉兵衛は謀られた という気がするね。 209 00:17:42,344 --> 00:17:47,016 なんとかならんもんかなあ。 お気持ちは分かりますが➡ 210 00:17:47,016 --> 00:17:49,918 あっしに調べろというのは 無理ですぜ。 211 00:17:49,918 --> 00:17:54,690 どうして? 縄張りってのは なかなか うるせえもんでね。 212 00:17:54,690 --> 00:17:57,359 あっしが善人長屋に 聞き込みでも行ったら➡ 213 00:17:57,359 --> 00:18:02,659 清助のやつ のぼせ上がっちまう。 そうか…。 214 00:18:05,701 --> 00:18:10,572 直蔵なら まだ清助に 面 知られてねえし➡ 215 00:18:10,572 --> 00:18:14,710 思い切って探らせてみるか。 216 00:18:14,710 --> 00:18:17,379 (新谷)やあ~! 217 00:18:17,379 --> 00:18:30,392 ♬~ 218 00:18:30,392 --> 00:18:36,092 <直蔵が登を訪ねてきたのは 数日後の事であった> 219 00:18:39,001 --> 00:18:43,338 いや~ 驚きやしたよ 先生。 驚いたというと? 220 00:18:43,338 --> 00:18:48,010 善人長屋の連中の事ですよ。 調べてみたら➡ 221 00:18:48,010 --> 00:18:52,681 これが どうも あきれた うそつきばかりでしてね。 222 00:18:52,681 --> 00:18:56,351 例えば この政太という男。 223 00:18:56,351 --> 00:18:59,688 所帯持ちで 子どもが2人いる 日雇いですが➡ 224 00:18:59,688 --> 00:19:03,025 盗みで お縄になった事のある 入れ墨者でした。 225 00:19:03,025 --> 00:19:07,696 それから ここに住んでる おろくという三十女。 226 00:19:07,696 --> 00:19:12,367 実のところは 常盤町の曖昧宿で 男と寝るのが本業なんで。 227 00:19:12,367 --> 00:19:15,270 なるほどな。 考えてみれば➡ 228 00:19:15,270 --> 00:19:18,240 善人長屋なんて呼び名は 相当に うさんくさい。 229 00:19:18,240 --> 00:19:20,709 ほかの連中も 似たり寄ったりでしてね➡ 230 00:19:20,709 --> 00:19:25,047 まっさらの善人といえば この おもとって女と➡ 231 00:19:25,047 --> 00:19:26,982 その亭主ぐれえのもんで。 232 00:19:26,982 --> 00:19:30,385 そこの かみさんには うまい茶を馳走になった。 233 00:19:30,385 --> 00:19:36,191 まっさらと聞いて 一安心だ。 で 肝心の源六と与五郎は? 234 00:19:36,191 --> 00:19:43,332 それなんですがね 2人とも 素性は 皆目 分かりやせん。 235 00:19:43,332 --> 00:19:46,668 あっ そうそう。 236 00:19:46,668 --> 00:19:49,571 吉兵衛の娘さんが ちょっと気になる事を。 237 00:19:49,571 --> 00:19:54,543 おみよさんが何か? へい 今年の正月の事ですが➡ 238 00:19:54,543 --> 00:19:58,280 源六と与五郎が 吉兵衛の所で 一緒に酒を飲んでいて➡ 239 00:19:58,280 --> 00:20:01,683 酔ったはずみに 「近いうちに帰ってくるな」と➡ 240 00:20:01,683 --> 00:20:04,586 漏らしたそうなんです。 帰ってくるというのは➡ 241 00:20:04,586 --> 00:20:08,023 一体 誰の事かな? それには おみよさんも➡ 242 00:20:08,023 --> 00:20:10,359 まるで心当たりがねえと 言ってるんですが➡ 243 00:20:10,359 --> 00:20:14,229 一応 お伝えしときやす。 では あっしは鱒蔵の方に。 244 00:20:14,229 --> 00:20:16,229 ご苦労。 245 00:20:27,376 --> 00:20:30,712 死んだ鱒蔵と親しかったやつは いやすか? 246 00:20:30,712 --> 00:20:35,012 おい 仙吉! へい! おめえに客だ。 247 00:20:39,054 --> 00:20:42,724 親の敵? 鱒蔵が そう言ったのか? 248 00:20:42,724 --> 00:20:48,397 へい。 殺される前の日に 男が あいつを訪ねてきまして。 249 00:20:48,397 --> 00:20:52,267 男ってえのは? いや 知らねえ男です。 250 00:20:52,267 --> 00:20:56,738 で そいつが帰ったあと 親の敵が見つかったって➡ 251 00:20:56,738 --> 00:21:01,038 鱒蔵のやつ 血相変えて。 252 00:21:04,079 --> 00:21:08,750 先生が わざわざ長屋へ? 253 00:21:08,750 --> 00:21:13,422 おみよは? おみよは 元気にしておりましたか? 254 00:21:13,422 --> 00:21:17,092 あの子の事なら みんなから 大事にされてるようだし➡ 255 00:21:17,092 --> 00:21:20,429 何の心配もいらんぞ。 256 00:21:20,429 --> 00:21:25,100 それはそれとして…。 257 00:21:25,100 --> 00:21:31,707 (小声で)鱒蔵殺しの一件だが 今 洗い直してもらってる最中なんだ。 258 00:21:31,707 --> 00:21:37,045 本当ですか? しかし いろいろ調べていくうちに➡ 259 00:21:37,045 --> 00:21:42,718 分からん事が出てきてな。 どんな事です? 260 00:21:42,718 --> 00:21:46,054 あ~ もう それぐらいにして頂かないと➡ 261 00:21:46,054 --> 00:21:49,354 あっしが叱られます。 ヘヘヘ…。 262 00:21:50,926 --> 00:21:53,226 (直蔵)へい! 263 00:21:57,065 --> 00:22:00,936 あっ… どうでした? 親分。 264 00:22:00,936 --> 00:22:05,741 大当たりだ! 4年前 清住町の外れで➡ 265 00:22:05,741 --> 00:22:08,076 女が男2人に 手込めにされた上に➡ 266 00:22:08,076 --> 00:22:10,979 持っていた50両を奪われる という事件があった。 267 00:22:10,979 --> 00:22:14,750 50両? 大金ですね。 女は 三河屋という➡ 268 00:22:14,750 --> 00:22:18,086 古物屋の後家で 傾いた商いを立て直すために➡ 269 00:22:18,086 --> 00:22:21,757 親戚から金を借りて 帰る途中だったのよ。 270 00:22:21,757 --> 00:22:26,628 その一件は 瞬く間に 近所に知れ渡っちまってな➡ 271 00:22:26,628 --> 00:22:29,431 気の毒な事に その後家さんは➡ 272 00:22:29,431 --> 00:22:32,334 それを苦にして 首をつったというんだ。 273 00:22:32,334 --> 00:22:38,040 すると その三河屋の後家というのは…。 274 00:22:38,040 --> 00:22:40,942 鱒蔵の おっ母さんだ。 275 00:22:40,942 --> 00:22:45,914 となると 鱒蔵が親の敵と言ったのは➡ 276 00:22:45,914 --> 00:22:49,384 おふくろを襲ったやつらの事 でしょうが➡ 277 00:22:49,384 --> 00:22:52,721 源六と与五郎に違えありやせんぜ。 278 00:22:52,721 --> 00:22:57,059 何だって そう言い切れんだい? 実は 今朝早く➡ 279 00:22:57,059 --> 00:23:00,729 例の見習い大工の仙吉を 善人長屋へ連れてったんです。 280 00:23:00,729 --> 00:23:02,729 行ってらっしゃい。 281 00:23:05,600 --> 00:23:09,404 (直蔵)仕事に出かける連中を 見物させたところ➡ 282 00:23:09,404 --> 00:23:13,742 与五郎を指さして 「鱒蔵に 会いに来たのは あいつだ」と。 283 00:23:13,742 --> 00:23:16,442 何だと? 284 00:23:24,386 --> 00:23:27,289 (藤吉)せっかく いい気持ちになったところ➡ 285 00:23:27,289 --> 00:23:32,289 悪いが 一緒に来てもらおうか。 どちら様で? 286 00:23:37,366 --> 00:24:18,974 ♬~ 287 00:24:18,974 --> 00:24:21,743 おめえが与五郎か。 288 00:24:21,743 --> 00:24:27,616 立花先生に襲いかかるとは 身の程知らねえ野郎だ。 289 00:24:27,616 --> 00:24:29,616 (与五郎)いたたたっ! 290 00:24:31,353 --> 00:24:35,023 また届け物をお願い致します。 291 00:24:35,023 --> 00:24:37,359 お願いします。 292 00:24:37,359 --> 00:24:40,262 それで 2人は 洗いざらい白状したのか? 293 00:24:40,262 --> 00:24:44,699 吟味は まだこれからですが じきに吐きますよ。 294 00:24:44,699 --> 00:24:47,035 与五郎が鱒蔵に近づいて➡ 295 00:24:47,035 --> 00:24:49,938 「4年前 おめえの おふくろを 襲ったのは吉兵衛だ」と➡ 296 00:24:49,938 --> 00:24:53,909 吹き込んだのは間違えありやせん。 吉兵衛が はめられたのは➡ 297 00:24:53,909 --> 00:24:58,380 はっきりしてますからね いずれ 解き放ちになるでしょう。 298 00:24:58,380 --> 00:25:04,052 しかし 源六と与五郎は 何で 吉兵衛を襲わせたりしたのかな? 299 00:25:04,052 --> 00:25:06,721 そりゃ 多分 怖かったからでしょう。 300 00:25:06,721 --> 00:25:10,392 ばれれば死罪という罪を背負って 暮らしてる訳ですからね。 301 00:25:10,392 --> 00:25:13,295 だから吉兵衛を身代わりに 立てたのかもしれねえ。 302 00:25:13,295 --> 00:25:17,732 だがな 親分 3人は 昵懇のつきあいをしていたんだぞ。 303 00:25:17,732 --> 00:25:22,432 そりゃ うわべだけでさ。 2人は悪人だ。 304 00:25:25,073 --> 00:25:31,880 で 吉兵衛一人は 善人という訳かな? 305 00:25:31,880 --> 00:25:36,351 哀れだと思って 助けてやって下せえ! 306 00:25:36,351 --> 00:25:39,020 何です? 今頃になって。 307 00:25:39,020 --> 00:25:42,891 吉兵衛の無実は 先生が言いだした事ですぜ。 308 00:25:42,891 --> 00:25:46,191 それは まあ そうなんだが…。 309 00:25:50,632 --> 00:25:56,332 (雷鳴) 310 00:26:00,709 --> 00:26:03,612 という訳で おみよさん お父っつぁんは遠からず➡ 311 00:26:03,612 --> 00:26:08,583 無罪放免となって帰ってくる。 もうちょっとの辛抱だ。 312 00:26:08,583 --> 00:26:14,256 ありがとうございます。 いろいろと お骨折り頂いて。 313 00:26:14,256 --> 00:26:19,060 どうしたのかな? あまり うれしそうに見えんが。 314 00:26:19,060 --> 00:26:23,932 だって 今度は 源六さんと与五郎さんが➡ 315 00:26:23,932 --> 00:26:25,934 お父っつぁんの代わりに…。 あの2人は➡ 316 00:26:25,934 --> 00:26:29,404 本当に悪い事をしたのだから 捕まって当然なんだよ。 317 00:26:29,404 --> 00:26:34,676 でも 2人とも あたしには そりゃ優しくて➡ 318 00:26:34,676 --> 00:26:38,346 いつも そばにいて 大事に守ってくれる➡ 319 00:26:38,346 --> 00:26:41,346 いい おじさんだったんです。 320 00:26:48,356 --> 00:26:51,356 一つ 気になる事が。 321 00:26:53,028 --> 00:26:56,364 おみよさんは 源六たちが酒を飲んでいて➡ 322 00:26:56,364 --> 00:27:00,702 もうすぐ誰かが帰ってくると 漏らすのを聞いたそうだが。 323 00:27:00,702 --> 00:27:04,039 ええ。 それが? 324 00:27:04,039 --> 00:27:06,708 これは 取り越し苦労かもしれんが➡ 325 00:27:06,708 --> 00:27:11,379 その帰ってくるというのが もしも悪いやつだとしたら…。 326 00:27:11,379 --> 00:27:13,715 (雷鳴) キャッ! 327 00:27:13,715 --> 00:27:20,055 (雷鳴) 328 00:27:20,055 --> 00:27:23,925 どうだろう? おみよさん。 念のため しばらく別の場所に➡ 329 00:27:23,925 --> 00:27:26,728 身を置いてみては? 330 00:27:26,728 --> 00:27:32,000 どうして そんなに親身に なって下さるんです? 331 00:27:32,000 --> 00:27:34,700 「どうして」と言われても…。 332 00:27:37,339 --> 00:27:41,639 私の目が見えないからですか? 333 00:27:43,211 --> 00:27:46,681 そうかもしれん…。 334 00:27:46,681 --> 00:27:50,552 本当は医者として あんたの目を治せたら➡ 335 00:27:50,552 --> 00:27:55,357 どんなにいい事かと思うんだが 私は まだ半人前で➡ 336 00:27:55,357 --> 00:27:59,227 まともな見立てもできん。 337 00:27:59,227 --> 00:28:05,227 じゃあ いいお医者様になって いつか診て下さい。 338 00:28:08,370 --> 00:28:11,370 必ず。 339 00:28:20,949 --> 00:28:24,649 ≪入るぞ。 はい。 340 00:28:35,330 --> 00:28:38,233 吉川から借りてきてやった。 341 00:28:38,233 --> 00:28:43,672 読み終えたら また別のを借りてやる。 342 00:28:43,672 --> 00:28:50,345 叔父上…。 礼はいらん。 勉強しろ。 343 00:28:50,345 --> 00:28:52,645 はい。 344 00:29:09,364 --> 00:29:13,702 ≪登! 登! (ため息) 345 00:29:13,702 --> 00:29:16,702 ≪登! 346 00:29:19,040 --> 00:29:23,378 遅い! 犬でも呼ぶように…➡ 347 00:29:23,378 --> 00:29:27,716 人を何だと思っているのです? 大事な使いを頼まれてほしいのよ。 348 00:29:27,716 --> 00:29:30,618 岩本町の恵比寿屋さん 覚えてるでしょ? 349 00:29:30,618 --> 00:29:33,321 前に足袋を取りにやらされた? 350 00:29:33,321 --> 00:29:39,661 そこの栄吉さんという手代に これを渡してきてちょうだい。 351 00:29:39,661 --> 00:29:44,361 何です? これは。 見れば分かるでしょ。 352 00:29:59,347 --> 00:30:03,218 こりゃ 付け文ですよ。 付け文!? 353 00:30:03,218 --> 00:30:06,221 足袋屋の栄さん 男前ですからね。 354 00:30:06,221 --> 00:30:08,356 いいのですか? こんなもの届けて。 355 00:30:08,356 --> 00:30:12,227 いい訳ないでしょ! 356 00:30:12,227 --> 00:30:18,227 若先生! 八名川町の親分さんが お見えですよ。 357 00:30:19,968 --> 00:30:23,905 あっ 先生! えれえ事になった! 何か まずい事でも? 358 00:30:23,905 --> 00:30:26,605 源六と与五郎が とんでもねえ事を! 359 00:30:30,044 --> 00:30:34,716 12年前 深川材木町の大店に 4人の男が押し入って➡ 360 00:30:34,716 --> 00:30:38,586 奉公人を殺した上に 700両もの 大金を盗むという事件があった。 361 00:30:38,586 --> 00:30:41,055 そいつをやらかしたのは てめえたちだって➡ 362 00:30:41,055 --> 00:30:42,991 ついさっき白状しやがって…。 待ってくれ。 363 00:30:42,991 --> 00:30:46,394 今 4人の男と言ったようだが…。 ああ 押し入ったのは➡ 364 00:30:46,394 --> 00:30:49,297 源六と与五郎 それに吉兵衛。 365 00:30:49,297 --> 00:30:53,735 やはり 吉兵衛も…。 あと一人は? 366 00:30:53,735 --> 00:30:57,405 弥太という博打打ちで こいつが盗んだ700両を預かって➡ 367 00:30:57,405 --> 00:31:01,276 どこかへ隠したらしいんだが そこで思わぬ手違いが起きた。 368 00:31:01,276 --> 00:31:03,276 手違いとは? 369 00:31:08,750 --> 00:31:13,621 弥太が いかさま博打で 捕まっちまった。 金は? 370 00:31:13,621 --> 00:31:18,426 それが 隠した場所を 仲間に教えねえまま島送りに。 371 00:31:18,426 --> 00:31:21,329 そいつは 3人にとっては とんだ骨折り損だな。 372 00:31:21,329 --> 00:31:25,767 ところが連中は それで 金を諦めたりはしなかった。 373 00:31:25,767 --> 00:31:29,637 弥太には 当時 4つになる娘がいましてね。 374 00:31:29,637 --> 00:31:32,373 女房に死なれて よそに預けていたんだが➡ 375 00:31:32,373 --> 00:31:37,245 3人は その子を引き取って 吉兵衛の子として育てた。 376 00:31:37,245 --> 00:31:41,049 まさか…。 弥太が島から帰った時に➡ 377 00:31:41,049 --> 00:31:45,386 金と引き換えにするつもりで あいつら その子を人質として➡ 378 00:31:45,386 --> 00:31:47,322 手元に置いてやがったんだ。 379 00:31:47,322 --> 00:31:51,059 その子が おみよ…。 380 00:31:51,059 --> 00:31:54,929 源六と与五郎が 吉兵衛をはめようとしたのも➡ 381 00:31:54,929 --> 00:31:57,398 もうじき弥太が 島から帰ってくるってんで➡ 382 00:31:57,398 --> 00:32:00,068 分け前の事で もめたあげくの事 だったそうです。 383 00:32:00,068 --> 00:32:03,404 で その弥太という男は もう島から帰ってきてるのか? 384 00:32:03,404 --> 00:32:07,742 そいつが どうも はっきりしねえんで。 385 00:32:07,742 --> 00:32:12,614 しかし 気がかりなのは 弥太よりも吉兵衛だ。 386 00:32:12,614 --> 00:32:15,617 吉兵衛が何か? お奉行所の方で➡ 387 00:32:15,617 --> 00:32:18,386 牢から出しちまったというんでさ。 いつ? 388 00:32:18,386 --> 00:32:22,090 今朝の事で 源六たちが白状する ちいとばかし前に。 389 00:32:22,090 --> 00:32:24,390 いかん こうしちゃおれん! 390 00:32:25,960 --> 00:32:35,036 ≪鬼さん こちら。 手の鳴る方へ。 391 00:32:35,036 --> 00:32:37,705 吉兵衛さん! 出てきたのかい? 392 00:32:37,705 --> 00:32:40,375 おみよは? おみよちゃんなら いないよ。 393 00:32:40,375 --> 00:32:43,044 いねえって どういう事なんで! 394 00:32:43,044 --> 00:32:44,979 一人で置いとくのは 心配だからって➡ 395 00:32:44,979 --> 00:32:48,383 小伝馬町の先生が よそへ預けたんだよ。 396 00:32:48,383 --> 00:32:50,718 そうなのかい…。 397 00:32:50,718 --> 00:32:53,621 で どこで 預かってもらってるんだ? 398 00:32:53,621 --> 00:32:57,392 それは 誰にも言っちゃいけないって…。 399 00:32:57,392 --> 00:33:02,063 おもとさん! 俺は おみよに 早く会いたくて➡ 400 00:33:02,063 --> 00:33:04,732 たまらねえんだよ! 分かったよ。 401 00:33:04,732 --> 00:33:09,432 まあ なにも 父親にまで 隠しとく事もないだろうから。 402 00:33:11,072 --> 00:33:16,411 <おみよは5日前から 新谷弥助の奉公人で➡ 403 00:33:16,411 --> 00:33:21,282 本所南割り下水に 1人暮らしをする老女の家に➡ 404 00:33:21,282 --> 00:33:23,284 預けてあった> 405 00:33:23,284 --> 00:33:26,087 おみよさんは!? 406 00:33:26,087 --> 00:33:29,387 中にいるが? 407 00:33:31,359 --> 00:33:34,262 食うか? 要らん! 408 00:33:34,262 --> 00:33:36,562 そうか。 409 00:33:39,033 --> 00:33:52,580 (鳴き声) 410 00:33:52,580 --> 00:33:56,584 (おぬい)おみよちゃん ちょっと合わせて下さい。 411 00:33:56,584 --> 00:33:59,284 はい 手を貸して。 412 00:34:01,055 --> 00:34:03,391 あっ ちょっと長いわね。 413 00:34:03,391 --> 00:34:06,728 何事もなくて とりあえずは よかった。 414 00:34:06,728 --> 00:34:12,600 しかし そんなに凶悪なのか? 吉兵衛という男は。 415 00:34:12,600 --> 00:34:15,403 恐らく。 今頃は➡ 416 00:34:15,403 --> 00:34:18,740 追い詰められた獣のように 焦っている事だろうし。 417 00:34:18,740 --> 00:34:20,675 だとすると 何をするか分からんな。 418 00:34:20,675 --> 00:34:26,080 今夜にも おみよさんを 奪い返しに来るだろう。 419 00:34:26,080 --> 00:34:28,016 こんな事になったのも➡ 420 00:34:28,016 --> 00:34:30,752 俺が まんまと吉兵衛に だまされたからだ。 421 00:34:30,752 --> 00:34:33,354 (たたく音) 我ながら情けない。 422 00:34:33,354 --> 00:34:36,257 (おぬい)立花様! 423 00:34:36,257 --> 00:34:40,257 今 お茶を。 どうか お構いなく。 424 00:34:48,703 --> 00:34:52,403 先生 いらっしゃい。 425 00:34:54,375 --> 00:34:58,046 どうかな? おみよさん。 ここは静かすぎて➡ 426 00:34:58,046 --> 00:35:01,382 退屈してはないかな? いいえ ちっとも。 427 00:35:01,382 --> 00:35:05,253 新谷様が 毎日来て 話し相手になって下さいますし。 428 00:35:05,253 --> 00:35:10,058 毎日? ええ。 今日なんか ご親切に➡ 429 00:35:10,058 --> 00:35:13,728 かわいらしい小鳥も 借りてきて下さって。 430 00:35:13,728 --> 00:35:18,066 こいつが 小鳥を? おっ… 俺が➡ 431 00:35:18,066 --> 00:35:22,737 小鳥を借りてきては いかんのか? どうやら 新谷は➡ 432 00:35:22,737 --> 00:35:26,074 おみよさんの事が すっかり気に入ったらしい。 433 00:35:26,074 --> 00:35:28,976 あら 私なんか 何の取り柄もないのに。 434 00:35:28,976 --> 00:35:33,881 いやいや… 取り柄がないなんて とんでもない。 435 00:35:33,881 --> 00:35:38,019 おみよさんのように 何をしてあげても➡ 436 00:35:38,019 --> 00:35:41,355 素直に喜んでくれる人は どこを探したって➡ 437 00:35:41,355 --> 00:35:44,692 見つかるもんじゃない。 ここの ばあさんなんか➡ 438 00:35:44,692 --> 00:35:47,361 しんから ほれ込んで 孫にしたいと言ってるぐらいだ。 439 00:35:47,361 --> 00:35:52,233 本当ですか? 本当だとも。 440 00:35:52,233 --> 00:35:56,370 うれしい。 でも 私がいなくなると➡ 441 00:35:56,370 --> 00:35:59,370 お父っつぁんが かわいそうだから。 442 00:36:08,382 --> 00:36:11,285 (おぬい)おやすみ。 443 00:36:11,285 --> 00:36:31,072 ♬~ 444 00:36:31,072 --> 00:36:36,677 よいしょ。 いや~ こういう時は 不思議と腹が減るな。 445 00:36:36,677 --> 00:36:40,014 おう。 446 00:36:40,014 --> 00:36:45,314 お前も食え。 俺は結構。 そうか。 447 00:36:54,562 --> 00:37:05,039 (いびき) 448 00:37:05,039 --> 00:37:08,910 ≪(物音) 449 00:37:08,910 --> 00:37:11,712 新谷! 新谷! 450 00:37:11,712 --> 00:37:13,648 (いびき) 451 00:37:13,648 --> 00:37:31,348 ♬~ 452 00:37:40,875 --> 00:37:43,344 先生…。 453 00:37:43,344 --> 00:38:28,923 ♬~ 454 00:38:28,923 --> 00:38:33,327 立花! 手出し無用だ! 455 00:38:33,327 --> 00:39:24,627 ♬~ 456 00:39:40,995 --> 00:39:44,865 おみよちゃん 菊の花。 はい。 457 00:39:44,865 --> 00:39:51,339 <数日後 おみよの実の父親である 流人の弥太が➡ 458 00:39:51,339 --> 00:39:55,209 5年も前に 島で病死していた事が➡ 459 00:39:55,209 --> 00:39:59,013 藤吉の調べで明らかとなった> 460 00:39:59,013 --> 00:40:03,351 はい 座って。 すみません。 461 00:40:03,351 --> 00:40:18,899 ♬~ 462 00:40:18,899 --> 00:40:22,370 <おみよが何も知らぬまま➡ 463 00:40:22,370 --> 00:40:26,240 おもとに連れられて 長屋へ帰っていったのは➡ 464 00:40:26,240 --> 00:40:30,244 その翌日の事であった> 465 00:40:30,244 --> 00:40:32,544 (新谷)大丈夫かな? 466 00:40:35,716 --> 00:40:42,416 あの子は これで 正真正銘の 孤児になってしまった訳だからな。 467 00:40:44,392 --> 00:40:48,062 だが さきざきの事を考えれば➡ 468 00:40:48,062 --> 00:40:50,965 その方が かえって よかったかもしれん。 469 00:40:50,965 --> 00:40:54,402 (おもと) あ~ そこ 前 大きい石あるよ。➡ 470 00:40:54,402 --> 00:40:57,304 もうちょっと こっち…。 471 00:40:57,304 --> 00:41:00,741 あの子は どんな不幸にも ねじ曲げられる事のない➡ 472 00:41:00,741 --> 00:41:03,644 強さを持っている。 473 00:41:03,644 --> 00:41:08,616 それに 世の中には 困っている人を見ると➡ 474 00:41:08,616 --> 00:41:11,752 助けずにはいられない あの おもとさんのような➡ 475 00:41:11,752 --> 00:41:14,752 善人もいるからな。 476 00:41:16,624 --> 00:41:23,364 確かに。 世の中 悪いやつばかりではない。 477 00:41:23,364 --> 00:41:28,364 よし 新谷 どちらが速いか勝負だ! おう! 478 00:41:36,377 --> 00:42:54,677 ♬~ 479 00:42:56,390 --> 00:43:00,261 おしの。 亭主殺しは重罪だ。 480 00:43:00,261 --> 00:43:03,731 (悲鳴) 私は叔父上の代診に出かけました。 481 00:43:03,731 --> 00:43:08,402 その時に 一緒にいた女です。 明るくて優しくて控えめで➡ 482 00:43:08,402 --> 00:43:10,337 私には信じられないんだ。 483 00:43:10,337 --> 00:43:13,274 どうしたんだ? (悲鳴) 484 00:43:13,274 --> 00:43:16,076 女の すげえ声を 聞いたって言うんでさ。 485 00:43:16,076 --> 00:43:18,746 何か助けを求めたのか? バカを言うな! 486 00:43:18,746 --> 00:43:21,649 そんな事ができるか! 怖いのかい? 先生。 487 00:43:21,649 --> 00:43:25,349 あの家で何があった? 若先生。