1 00:00:35,755 --> 00:00:37,757 大丈夫か? 2 00:00:37,757 --> 00:00:47,233 ♬~ 3 00:00:47,233 --> 00:00:49,933 邪魔だ 邪魔だ! 4 00:00:55,108 --> 00:00:57,408 いってらっしゃいませ。 うん。 5 00:01:14,260 --> 00:01:16,960 おちせ…。 6 00:01:20,934 --> 00:01:25,934 私に 何か用かね? 7 00:01:29,275 --> 00:01:32,975 人殺し…! 8 00:01:35,882 --> 00:01:37,817 ああ~! 9 00:01:37,817 --> 00:01:39,753 ああっ… うう…! ああ~! 10 00:01:39,753 --> 00:01:41,755 ああ…! 11 00:01:41,755 --> 00:01:43,755 ああ~! 12 00:01:46,526 --> 00:01:48,461 うう…。 13 00:01:48,461 --> 00:01:50,461 (悲鳴) 14 00:01:53,233 --> 00:01:55,902 ああ~! 15 00:01:55,902 --> 00:01:59,239 (通行人たち)ああっ! あっ…! 16 00:01:59,239 --> 00:02:02,142 あっ… あっ! 17 00:02:02,142 --> 00:02:04,911 医者だ! 誰か医者を! 18 00:02:04,911 --> 00:02:06,846 旦那様! 大丈夫か? 19 00:02:06,846 --> 00:02:09,249 大丈夫か!? 旦那様! 旦那様! 20 00:02:09,249 --> 00:02:12,919 お気を確かに! 店の方に知らせろ! はい! 早く! 21 00:02:12,919 --> 00:02:16,589 旦那様! 旦那様 しっかり! お気を確かに! 旦那様! 22 00:02:16,589 --> 00:02:19,926 (加賀屋のうめき声) (久坂)しっかりしろ! 23 00:02:19,926 --> 00:02:32,205 ♬~ 24 00:02:32,205 --> 00:02:34,905 ほら 下がれ 下がれ! 25 00:02:38,878 --> 00:02:42,549 (男)おちせちゃん! 26 00:02:42,549 --> 00:02:44,484 おちせちゃん! 27 00:02:44,484 --> 00:02:46,419 止まれ! 28 00:02:46,419 --> 00:02:53,893 ♬~ 29 00:02:53,893 --> 00:02:57,564 おちせちゃん! 下がれ! 30 00:02:57,564 --> 00:03:03,236 ♬~ 31 00:03:03,236 --> 00:03:05,171 来い。 32 00:03:05,171 --> 00:03:09,576 おちせちゃん 心配いらねえぞ! 俺がついてるからな! 33 00:03:09,576 --> 00:03:12,912 おちせちゃん! おい 下がれ 下がれ! 34 00:03:12,912 --> 00:03:21,588 ♬~ 35 00:03:21,588 --> 00:03:23,523 大丈夫か? 36 00:03:23,523 --> 00:03:26,926 ええ…。 37 00:03:26,926 --> 00:03:30,263 あの娘の知り合いか? 38 00:03:30,263 --> 00:03:36,069 へい。 杉蔵と申します…。 39 00:03:36,069 --> 00:03:41,541 おちせが 加賀屋の主人に 怪我をさせたと聞いたんですが…。 40 00:03:41,541 --> 00:03:47,413 うむ…。 包丁でな いきなり グサリとやらかした。 41 00:03:47,413 --> 00:04:01,227 ♬~ 42 00:04:01,227 --> 00:04:03,163 <吟味の末➡ 43 00:04:03,163 --> 00:04:10,163 百日の過怠牢という刑罰が おちせに申し渡された> 44 00:04:13,807 --> 00:04:16,576 (久坂)百日の牢入りですか? 45 00:04:16,576 --> 00:04:18,511 私は 島流しぐらいにはなるんじゃないかと➡ 46 00:04:18,511 --> 00:04:20,446 心配していたんですが…。 47 00:04:20,446 --> 00:04:25,585 それがな 刺された加賀屋本人が 奉行所に穏便の裁きを願い出て➡ 48 00:04:25,585 --> 00:04:27,921 刑が軽くなったそうなんだ。 49 00:04:27,921 --> 00:04:33,526 へえ 大店の主ともなると 鷹揚なものですね。 50 00:04:33,526 --> 00:04:37,397 でも おちせは 何で 加賀屋を殺そうとしたんでしょう? 51 00:04:37,397 --> 00:04:40,867 そこまでは聞いておらんが…。 52 00:04:40,867 --> 00:04:45,738 しかし 何にしても よかった。 杉蔵も喜んでいることでしょう。 53 00:04:45,738 --> 00:04:50,210 今日辺り おちせに 差し入れをしているかもしれんな。 54 00:04:50,210 --> 00:04:52,910 肌着と梅干しです。 55 00:04:54,547 --> 00:04:57,884 <杉蔵は 腕のいい檜物師で➡ 56 00:04:57,884 --> 00:05:02,755 2年前に親の跡を継いで 独り立ちしていた。➡ 57 00:05:02,755 --> 00:05:07,894 住まいは 玄庵の家から さほど遠くない 茅町にあり➡ 58 00:05:07,894 --> 00:05:10,563 登とも顔なじみであった> 59 00:05:10,563 --> 00:05:13,900 3日と空けず ご苦労なことだ。 60 00:05:13,900 --> 00:05:15,835 苦労だなんて とんでもねえ。 61 00:05:15,835 --> 00:05:19,772 あっしゃぁ おちせのためなら 苦労だって いっそ楽しいぐれえなんで。 62 00:05:19,772 --> 00:05:23,243 何だ のろけか? 63 00:05:23,243 --> 00:05:25,243 アハハハ! 64 00:05:29,582 --> 00:05:32,882 まっ ごゆっくり。 65 00:05:40,860 --> 00:05:44,197 いや… 真面目な話➡ 66 00:05:44,197 --> 00:05:47,533 おちせは 近頃 おっ母さんを亡くしまして➡ 67 00:05:47,533 --> 00:05:51,871 天涯孤独の身ってもんに なっちまったんで…。 68 00:05:51,871 --> 00:05:56,209 だもんで あっしゃぁ おちせが ご赦免されたら➡ 69 00:05:56,209 --> 00:06:00,079 うちに引き取ろうと 考えてるんですが…。 70 00:06:00,079 --> 00:06:02,081 おちせと所帯を? 71 00:06:02,081 --> 00:06:06,552 そりゃあ いい。 是非 そうしろ。 72 00:06:06,552 --> 00:06:11,891 しかし こうなると 加賀屋様様だな。 73 00:06:11,891 --> 00:06:14,560 何がです? 何がって➡ 74 00:06:14,560 --> 00:06:18,431 加賀屋は怪我を押して 奉行所に穏便の裁きを…。 75 00:06:18,431 --> 00:06:20,900 (せきばらい) 76 00:06:20,900 --> 00:06:27,774 そんなもん 別に 立派でも何でもありません。 77 00:06:27,774 --> 00:06:31,511 若先生 あっしはね➡ 78 00:06:31,511 --> 00:06:34,414 加賀屋が 以前から おちせに気があって 手 出したのが➡ 79 00:06:34,414 --> 00:06:36,849 刃物三昧のもとに なってんじゃねえのかなって➡ 80 00:06:36,849 --> 00:06:39,519 にらんでるんですよ。 81 00:06:39,519 --> 00:06:43,856 加賀屋は そいつが世間にばれちゃ 商売に響くから➡ 82 00:06:43,856 --> 00:06:47,527 事を小さく収めようとしたんでさ。 83 00:06:47,527 --> 00:06:50,227 汚え おやじだ。 84 00:06:55,401 --> 00:06:58,171 ここかな 痛むのは。 85 00:06:58,171 --> 00:07:01,541 ええ… そこです 先生…。 86 00:07:01,541 --> 00:07:04,444 やはり 胃の腑のようだ。 87 00:07:04,444 --> 00:07:06,412 心配 いらん。 88 00:07:06,412 --> 00:07:11,884 薬をのんで 一晩 ぐっすり眠れば 朝には 痛みが無くなるだろう。 89 00:07:11,884 --> 00:07:15,221 あ…。 90 00:07:15,221 --> 00:07:19,921 ありがとう存じました。 91 00:07:22,562 --> 00:07:25,898 さっきな 杉蔵に会ったよ。 92 00:07:25,898 --> 00:07:28,801 届け物は受け取ったかね? 93 00:07:28,801 --> 00:07:32,705 はい。 肌着と梅干しを。 94 00:07:32,705 --> 00:07:39,405 ご赦免になったら 杉蔵は あんたを引き取るつもりらしいな。 95 00:07:43,850 --> 00:07:47,186 どうした? 96 00:07:47,186 --> 00:07:54,886 杉蔵さんの気持ちは ありがたいと思ってますけど…。 97 00:08:09,442 --> 00:08:21,087 ♬~ 98 00:08:21,087 --> 00:08:28,561 <やがて 季節は変わり おちせの赦免の日が来た。➡ 99 00:08:28,561 --> 00:08:31,464 しかし 出迎えたのは➡ 100 00:08:31,464 --> 00:08:37,170 おちせの母が住んでいた 本所緑町の町役人一人で➡ 101 00:08:37,170 --> 00:08:41,470 なぜか 杉蔵の姿はなかった> 102 00:08:43,042 --> 00:08:47,513 先生 お世話になりました。 103 00:08:47,513 --> 00:08:51,184 杉蔵が来ておらんようだが…。 104 00:08:51,184 --> 00:08:53,853 しかたありません。 105 00:08:53,853 --> 00:08:59,525 あたしは 牢に入った女ですから…。 106 00:08:59,525 --> 00:09:04,397 杉蔵の家を訪ねてみては どうだ? 107 00:09:04,397 --> 00:09:10,536 でも…。 しかし ほかに行く当てがあるまい。 108 00:09:10,536 --> 00:09:14,207 紀ノ国に頼んでみては どうだね? 109 00:09:14,207 --> 00:09:16,142 紀ノ国というのは? 110 00:09:16,142 --> 00:09:20,880 おちせが ずっと住み込みで働いていた 料理茶屋です。 111 00:09:20,880 --> 00:09:23,880 ああ そりゃ 安心だ。 112 00:09:26,219 --> 00:09:30,089 ほらほら 回ってる! おっ 本当か? いいなあ。 113 00:09:30,089 --> 00:09:32,089 ハハハハ! 114 00:09:33,826 --> 00:09:37,126 ほ~ら ハハハハ! 115 00:09:45,438 --> 00:09:49,175 先生 ここで結構です。 116 00:09:49,175 --> 00:09:52,078 大丈夫か? 117 00:09:52,078 --> 00:09:55,515 いざという時は あたしにも頼るとこがありますから➡ 118 00:09:55,515 --> 00:09:57,850 ご心配は いりません。 119 00:09:57,850 --> 00:10:00,150 杉蔵のところか。 120 00:10:10,196 --> 00:10:12,865 (物音) (おちせ)きゃ~!➡ 121 00:10:12,865 --> 00:10:17,737 やめてください! 早く乗れ おら! 122 00:10:17,737 --> 00:10:21,437 何をしている! 123 00:10:25,878 --> 00:10:28,878 おい 行くぞ! 124 00:10:33,553 --> 00:10:39,892 怪我はないか? ええ… 大丈夫です。 125 00:10:39,892 --> 00:10:41,827 あたたた…。 126 00:10:41,827 --> 00:10:45,231 大丈夫か? ああ… まったく 乱暴な…。 127 00:10:45,231 --> 00:10:47,900 あいつら 何者だ…。 128 00:10:47,900 --> 00:10:51,237 加賀屋の使いだと言ってました。 129 00:10:51,237 --> 00:10:55,537 何? 加賀屋!? はい。 130 00:10:58,911 --> 00:11:00,846 さらわれそうになった? 131 00:11:00,846 --> 00:11:02,782 おちせがですか? 132 00:11:02,782 --> 00:11:05,585 先ほど すぐそこで。 133 00:11:05,585 --> 00:11:10,923 おちせは一体 加賀屋と どんな関わりがあるんです? 134 00:11:10,923 --> 00:11:15,795 関わりがあったのは おちせというより 母親の方でしてね。 135 00:11:15,795 --> 00:11:17,797 どういうことです? 136 00:11:17,797 --> 00:11:21,567 おちせの母親は 囲われていたんです。 137 00:11:21,567 --> 00:11:24,270 えっ? 加賀屋にですか? 138 00:11:24,270 --> 00:11:27,173 (平塚)加賀屋の妾だった。 139 00:11:27,173 --> 00:11:30,142 ところが 半年ばかり前のこったが➡ 140 00:11:30,142 --> 00:11:33,879 こいつが突然 首をくくって死んじまいましてね。 141 00:11:33,879 --> 00:11:36,549 おちせは それを 加賀屋の仕業だと思い込んだ。 142 00:11:36,549 --> 00:11:38,484 仕業というと? 143 00:11:38,484 --> 00:11:41,220 つまり 加賀屋が殺しておいて➡ 144 00:11:41,220 --> 00:11:44,557 首を吊ったように 見せかけたというんですな。 145 00:11:44,557 --> 00:11:49,228 それで 思い余って 例の刃傷に及んだわけです。➡ 146 00:11:49,228 --> 00:11:51,564 その晩 おちせは➡ 147 00:11:51,564 --> 00:11:55,901 紀ノ国の勤めが終わってから 久方ぶりに おらくのうちへ行き➡ 148 00:11:55,901 --> 00:11:59,238 図らずも 両人が そこで鉢合わせをしたことが➡ 149 00:11:59,238 --> 00:12:02,575 間違いのもとのようですな。 150 00:12:02,575 --> 00:12:11,584 ♬~ 151 00:12:11,584 --> 00:12:14,253 (おちせ)あっ… ああ…! 152 00:12:14,253 --> 00:12:16,188 おっ母さん…!? 153 00:12:16,188 --> 00:12:18,591 (加賀屋)お… おちせ…。 154 00:12:18,591 --> 00:12:21,494 おちせ… 逃げるんじゃない。 155 00:12:21,494 --> 00:12:26,265 (平塚)奉行所では おちせは 加賀屋と一足遅れで 妾宅に着いていて➡ 156 00:12:26,265 --> 00:12:30,603 加賀屋が おらくを殺しておいて 細工をするような暇はなかったと➡ 157 00:12:30,603 --> 00:12:34,303 判断したようですな… うん。 158 00:12:35,875 --> 00:12:38,175 ごめん。 159 00:12:41,747 --> 00:12:44,550 若先生。 160 00:12:44,550 --> 00:12:47,219 杉蔵さんは 留守ですよ。 161 00:12:47,219 --> 00:12:50,122 どこへ行ったか 分からんか? さあ…。 162 00:12:50,122 --> 00:12:53,092 帰ってきたら 私を訪ねるように 伝えてくれ。 163 00:12:53,092 --> 00:12:55,092 へえ。 (戸を閉める音) 164 00:12:56,896 --> 00:13:00,566 (包丁の音) 165 00:13:00,566 --> 00:13:04,437 あら あら あら お嬢様 気を付けないと。 166 00:13:04,437 --> 00:13:07,440 あっ お粥が 糊になってしまいますよ。 167 00:13:07,440 --> 00:13:12,578 大丈夫よ。 お粥でも何でも おなかに入れば 同じなんだから。 168 00:13:12,578 --> 00:13:15,481 ただいま。 あっ お帰りなさいませ。 169 00:13:15,481 --> 00:13:17,917 どうしたんだ? 包丁なんか持って。 170 00:13:17,917 --> 00:13:20,252 旦那様が 目が回ると おっしゃって➡ 171 00:13:20,252 --> 00:13:23,155 朝から 何も お口になさらないものですから。 172 00:13:23,155 --> 00:13:25,124 どこか 具合でも? 173 00:13:25,124 --> 00:13:27,593 昨夜 飲み過ぎたんでございますよ。 174 00:13:27,593 --> 00:13:30,262 宿酔か。 うん フフ…。 175 00:13:30,262 --> 00:13:32,198 だからといって➡ 176 00:13:32,198 --> 00:13:35,101 放っとくわけにもいかないし。 (登 きよ)うん。 177 00:13:35,101 --> 00:13:43,809 ≪竹や~ 竹~! 178 00:13:43,809 --> 00:13:48,547 昔は いくら飲んでも 平気だったのに…➡ 179 00:13:48,547 --> 00:13:52,885 わしも もう年かなあ…。 180 00:13:52,885 --> 00:13:56,222 前に一度 倒れたこともあるのですから➡ 181 00:13:56,222 --> 00:13:58,157 少し節制なさらねば。 182 00:13:58,157 --> 00:14:01,093 分かっている。 分かってはいるんだが➡ 183 00:14:01,093 --> 00:14:04,096 ハハ… 吉川と会うと ついな。 184 00:14:04,096 --> 00:14:06,232 いけませんな。 185 00:14:06,232 --> 00:14:10,102 この際です 外で飲むのを おやめになられては。 186 00:14:10,102 --> 00:14:12,571 うん。 ん? 187 00:14:12,571 --> 00:14:16,909 なにも お前 そこまですることは…。 188 00:14:16,909 --> 00:14:19,578 お前たち 思い違いしているようだが➡ 189 00:14:19,578 --> 00:14:24,917 わしは 酒を飲むばかりが目当てで 吉川と会っているわけではないぞ。 190 00:14:24,917 --> 00:14:28,254 ほう…。 では ほかに どんな目当てが? 191 00:14:28,254 --> 00:14:34,860 それは 言うまでもなく 西洋の新しい医術の知識を得るために…。 192 00:14:34,860 --> 00:14:36,796 (小声で)嘘ばっかり。 193 00:14:36,796 --> 00:14:39,532 嘘ではない。 194 00:14:39,532 --> 00:14:46,405 現に ゆうべも 種痘の話が出てな。 種痘ですか? 195 00:14:46,405 --> 00:14:51,143 ああ。 こいつは 疱瘡の予防法でな➡ 196 00:14:51,143 --> 00:14:57,550 牛痘といって 牛のかかる疱瘡を 人に植え付けるらしいのだ。 197 00:14:57,550 --> 00:15:02,421 牛の疱瘡が うつっても 人は 発病せぬばかりか➡ 198 00:15:02,421 --> 00:15:05,424 以後は 二度と疱瘡にかかることはない。 199 00:15:05,424 --> 00:15:08,894 そこから思いついた 方法らしゅうございますな。 うん うん。 200 00:15:08,894 --> 00:15:13,566 …何だ お前 知ってたのか。 はあ なまかじりですが。 201 00:15:13,566 --> 00:15:15,501 ≪おや? 202 00:15:15,501 --> 00:15:18,437 登さん 帰ってたんですか。 203 00:15:18,437 --> 00:15:22,908 はあ…。 ちょうど よかった。 204 00:15:22,908 --> 00:15:30,583 この間の大風で 屋根瓦がずれたらしくて 雨が漏るのよ。 直してくださいな。 205 00:15:30,583 --> 00:15:34,453 おい 登は帰ったばかりで 疲れとるんだぞ。 206 00:15:34,453 --> 00:15:39,859 じゃあ あなたが やってくださるとでも おっしゃるんですか? 207 00:15:39,859 --> 00:15:44,530 あ~… あっ いかん あ~ また めまいが…。 208 00:15:44,530 --> 00:15:46,866 登… 枕 枕…。 はいはい はいはい。 209 00:15:46,866 --> 00:15:50,566 ああ~ めまいが…。 はいはい はい。 210 00:15:52,204 --> 00:15:57,877 助かるわ。 登さんが帰らなかったら どうしようかと思ってたのよ。 211 00:15:57,877 --> 00:16:00,212 職人を頼めばいいじゃないの。 212 00:16:00,212 --> 00:16:05,512 だって 頼めば 手間賃が要るでしょ。 ねえ? フフフフフ。 213 00:16:10,222 --> 00:16:12,222 ああ…。 214 00:16:23,235 --> 00:16:25,235 ふう…。 215 00:16:28,107 --> 00:16:31,844 あ~…。 216 00:16:31,844 --> 00:16:34,747 加賀屋伝助か…。 217 00:16:34,747 --> 00:16:36,715 旦那様! 旦那様 しっかり! お気を確かに! 218 00:16:36,715 --> 00:16:39,518 違う… 違うんだ。 219 00:16:39,518 --> 00:16:41,518 何? 加賀屋!? 220 00:16:43,856 --> 00:16:45,791 (はしごをのぼる音) 221 00:16:45,791 --> 00:16:47,791 きゃ~! 222 00:16:49,528 --> 00:16:52,431 何をやってるんだ。 223 00:16:52,431 --> 00:16:55,431 お煎餅 持ってきたのよ。 224 00:16:59,872 --> 00:17:03,208 仕事は終わった。 下りるから もういい。 225 00:17:03,208 --> 00:17:07,546 今 下りたら また お母様に何か頼まれるわよ。 226 00:17:07,546 --> 00:17:11,546 それも そうだな…。 よし。 227 00:17:15,421 --> 00:17:17,421 あっ! 228 00:17:21,093 --> 00:17:33,172 ♬~ 229 00:17:33,172 --> 00:17:38,844 …危ないじゃないか。 まったく 乱暴な女だ。 230 00:17:38,844 --> 00:17:44,544 はあ… お煎餅 割れちゃった…。 231 00:17:52,391 --> 00:17:57,529 おちえも寝なよ。 きれいな空だ。 232 00:17:57,529 --> 00:18:00,829 …怖いから嫌よ。 233 00:18:04,403 --> 00:18:09,875 ≪(松江)おちえ。 おちえ? 234 00:18:09,875 --> 00:18:13,545 おちえ。 235 00:18:13,545 --> 00:18:18,884 一体 どこ行ったんだろ。 おちえ? 236 00:18:18,884 --> 00:18:29,228 ♬~ 237 00:18:29,228 --> 00:18:35,034 <杉蔵が 登を訪ねてきたのは 翌日のことであった> 238 00:18:35,034 --> 00:18:38,037 (桂順)しみるな そりゃ しみるな。 239 00:18:38,037 --> 00:18:40,172 (戸が開く音) 240 00:18:40,172 --> 00:18:44,043 あ… 若先生。 241 00:18:44,043 --> 00:18:46,045 どうしたんだ!? 242 00:18:46,045 --> 00:18:48,047 立花先生を訪ねてきたんですが➡ 243 00:18:48,047 --> 00:18:51,183 ひどいありさまなので とりあえず手当てをと思いましてね。 244 00:18:51,183 --> 00:18:53,519 それは ご面倒を…。 245 00:18:53,519 --> 00:18:58,190 なに 喧嘩でもしたらしいが 縫うほどの怪我でなくて よかった。 246 00:18:58,190 --> 00:19:00,125 なあ? 247 00:19:00,125 --> 00:19:03,529 はい。 あ~ さてと…。 248 00:19:03,529 --> 00:19:05,864 ん~… うん。 249 00:19:05,864 --> 00:19:09,735 平塚さんの へぼ将棋でも見に行くか。 250 00:19:09,735 --> 00:19:13,205 どうぞ ごゆっくり。 251 00:19:13,205 --> 00:19:17,543 (鼻歌) 252 00:19:17,543 --> 00:19:20,543 どういうことだ? 253 00:19:23,215 --> 00:19:26,885 脅されたんだ 加賀屋の手先に。 254 00:19:26,885 --> 00:19:28,821 ええ…!? 255 00:19:28,821 --> 00:19:33,492 「おちせは 加賀屋が預かるから お前は すっ込んでろ」って。 256 00:19:33,492 --> 00:19:36,395 それで昨日は迎えに来なかったのか。 257 00:19:36,395 --> 00:19:40,695 行こうとしたんだが やつら 3人掛かりで…。 258 00:19:43,836 --> 00:19:46,739 若先生 おちせは? 259 00:19:46,739 --> 00:19:50,709 今は 元の勤め先の紀ノ国に 置いてもらってるはずだ。 260 00:19:50,709 --> 00:19:53,846 そいつが いねえんだよ! いない? 261 00:19:53,846 --> 00:19:55,781 紀ノ国の女将は➡ 262 00:19:55,781 --> 00:19:58,717 「また うちで住み込みで働けばいい」って 言ってくれたらしいんだが➡ 263 00:19:58,717 --> 00:20:00,719 おちせは ほかに行く当てがあるって言って➡ 264 00:20:00,719 --> 00:20:04,719 すぐに出てっちまったっていうんだ。 265 00:20:07,392 --> 00:20:10,863 行く当てというのは お前のとこじゃなかったのか? 266 00:20:10,863 --> 00:20:13,532 あっしも そう思ったんで 飛んで帰ってみたけど➡ 267 00:20:13,532 --> 00:20:16,869 おちせは来てなかった。 268 00:20:16,869 --> 00:20:22,207 だから 昨日も一日中 あちこち捜し回ったけど…。 269 00:20:22,207 --> 00:20:24,543 行方知れずか。 270 00:20:24,543 --> 00:20:28,881 あっし以外で 頼る人間なんて いねえはずなんだ。 271 00:20:28,881 --> 00:20:31,784 早く おちせを見つけねえと…。 272 00:20:31,784 --> 00:20:35,084 あいて…! 無理をするな 杉蔵。 273 00:20:36,755 --> 00:20:41,894 ひょっとしたら 加賀屋の手が 紀ノ国に回ってたのかもしれねえな。 274 00:20:41,894 --> 00:20:45,764 すると 加賀屋が拐かしたとでも? 275 00:20:45,764 --> 00:20:48,233 そいつは 探ってみなきゃ分からねえが。 276 00:20:48,233 --> 00:20:50,569 あっ 直の野郎を お貸ししましょうか? 277 00:20:50,569 --> 00:20:54,907 そうしてもらえると助かるんだが…。 278 00:20:54,907 --> 00:20:58,777 しかし じかに会ってみるかな。 279 00:20:58,777 --> 00:21:01,246 若先生が? 280 00:21:01,246 --> 00:21:03,582 ですが 加賀屋ってのは➡ 281 00:21:03,582 --> 00:21:06,251 荒っぽいのを 大勢 抱えてるんでござんしょう? 282 00:21:06,251 --> 00:21:08,187 そのようだが…。 283 00:21:08,187 --> 00:21:12,187 すんなり会ってくれますかねえ。 284 00:21:14,927 --> 00:21:20,265 私は 小伝馬町の牢医者の 立花 登という者だが➡ 285 00:21:20,265 --> 00:21:23,168 主は おられるかな? 286 00:21:23,168 --> 00:21:25,938 主に 何の御用でございましょう? 287 00:21:25,938 --> 00:21:30,275 それは お会いしてから じかに申し上げる。 288 00:21:30,275 --> 00:21:32,211 邪魔だ。 289 00:21:32,211 --> 00:21:36,911 待ってくれ。 私は 怪しい者では…。 290 00:21:39,885 --> 00:21:41,820 面倒くせえな! 291 00:21:41,820 --> 00:21:45,224 ちょっと待った! おお… これは 久坂様。 292 00:21:45,224 --> 00:21:47,893 この人は 俺の知り合いだ。 293 00:21:47,893 --> 00:21:51,593 さようでございましたか…。 294 00:21:55,767 --> 00:21:57,903 遅いぞ 久坂。 295 00:21:57,903 --> 00:22:01,773 あと少しで投げ飛ばすところだった。 296 00:22:01,773 --> 00:22:04,776 (久坂)すみません。 297 00:22:04,776 --> 00:22:10,249 しかし 大したご威光だな。 一緒に来てもらって よかった。 298 00:22:10,249 --> 00:22:13,919 命の恩人ですからね。 ああ。 299 00:22:13,919 --> 00:22:15,854 うまいですね。 300 00:22:15,854 --> 00:22:18,790 うまいなあ。 301 00:22:18,790 --> 00:22:21,790 ≪(加賀屋)お待たせしました。 302 00:22:27,933 --> 00:22:30,602 いかがです? 傷の具合は。 303 00:22:30,602 --> 00:22:33,205 おかげさまで もう すっかり。 304 00:22:33,205 --> 00:22:37,876 改めて お礼申します。 305 00:22:37,876 --> 00:22:41,747 さて 早速ですが➡ 306 00:22:41,747 --> 00:22:48,887 小伝馬町のご牢医が 私に 何か御用ですかな? 307 00:22:48,887 --> 00:22:54,559 おちせのことで 少々 伺いたいことがありまして。 308 00:22:54,559 --> 00:22:57,229 おちせが どうかしましたか? 309 00:22:57,229 --> 00:23:01,099 牢を出たあとに 姿を消してしまいましてね。 310 00:23:01,099 --> 00:23:06,238 …で もしかして こちらに隠されているのではと。 311 00:23:06,238 --> 00:23:10,909 私が隠す? どうして そんなことを。 312 00:23:10,909 --> 00:23:15,247 加賀屋さんは おちせが赦免になった日に➡ 313 00:23:15,247 --> 00:23:18,917 駕籠を差し向けて さらおうとしたではありませんか。 314 00:23:18,917 --> 00:23:23,789 それに 杉蔵を脅して 迎えに行くのを邪魔したそうですね。 315 00:23:23,789 --> 00:23:26,591 それで お疑いに…。 316 00:23:26,591 --> 00:23:30,462 しかし それは勘違いです。 317 00:23:30,462 --> 00:23:33,198 使いの者が乱暴を働いたのは➡ 318 00:23:33,198 --> 00:23:39,871 根が がさつで こちらの真意が 十分に伝わってなかったせいです。 319 00:23:39,871 --> 00:23:43,742 では 加賀屋さんの真意というのは? 320 00:23:43,742 --> 00:23:51,483 私は ただ おちせの身を案じて 手元に引き取りたかっただけです。 321 00:23:51,483 --> 00:23:57,222 今 あの子を一人にしておくと… 危うい。 322 00:23:57,222 --> 00:24:01,922 危うい? どういうことです? 323 00:24:06,898 --> 00:24:11,236 清吉 下がりなさい。 324 00:24:11,236 --> 00:24:13,936 へい…。 325 00:24:21,880 --> 00:24:25,784 いいでしょう。 326 00:24:25,784 --> 00:24:32,190 実は おちせが訴えたことは本当で➡ 327 00:24:32,190 --> 00:24:38,190 あの子の母親 おらくは 殺されたのです。 328 00:24:40,065 --> 00:24:42,534 殺されたという証拠は? 329 00:24:42,534 --> 00:24:46,872 金が無くなっていた。 金? 330 00:24:46,872 --> 00:24:53,545 おらくは 百両近い金をためていたのです。 331 00:24:53,545 --> 00:24:57,215 殺した人間に 心当たりは? 332 00:24:57,215 --> 00:25:01,215 それが なくはないのですが…。 333 00:25:04,089 --> 00:25:08,827 1年ほど前 おらくが急に➡ 334 00:25:08,827 --> 00:25:15,901 「妾奉公は飽きた 暇をくれ」と 言い始めたのです。 335 00:25:15,901 --> 00:25:24,901 私に囲われて10年 40に手が届こうという年にです。 336 00:25:33,185 --> 00:25:36,088 ばかなことを言うんじゃない。 337 00:25:36,088 --> 00:25:40,788 今更 その年で一人になって どうするつもりだ。 338 00:25:43,528 --> 00:25:48,867 私に万が一のことがあれば ちゃんと身の立つようにしてやる。 339 00:25:48,867 --> 00:25:52,737 このままで いいじゃないか。 340 00:25:52,737 --> 00:25:58,210 せっかくですが あんたのお恵みを受けなくとも➡ 341 00:25:58,210 --> 00:26:03,910 あたしには ほかに頼る人がいるんです。 342 00:26:07,552 --> 00:26:13,425 なぜ おらくが暇をもらいたいと 言いだしたのか➡ 343 00:26:13,425 --> 00:26:19,164 その訳に はたと思い当たりました。 344 00:26:19,164 --> 00:26:22,100 男が出来たんです。 345 00:26:22,100 --> 00:26:24,102 男が? 346 00:26:24,102 --> 00:26:26,571 間違いありません。 347 00:26:26,571 --> 00:26:34,379 そんな目で眺めると 男の影が はっきりと目に付くようになりました。 348 00:26:34,379 --> 00:26:40,118 思うに その男が おらくを殺して 金を奪い➡ 349 00:26:40,118 --> 00:26:43,054 首くくりに見せかけて➡ 350 00:26:43,054 --> 00:26:46,858 奉行所の目をくらませた。 351 00:26:46,858 --> 00:26:55,200 ところが おちせが 母親が殺されたと訴え出た。 352 00:26:55,200 --> 00:26:58,103 おちせが騒ぎ続ければ➡ 353 00:26:58,103 --> 00:27:01,540 この先 どう ひっくり返るか 分からない。 354 00:27:01,540 --> 00:27:07,879 男にとって おちせは 不安の種ということですか。 355 00:27:07,879 --> 00:27:13,218 あの子は 消されるおそれがある。 356 00:27:13,218 --> 00:27:16,555 こうなると おちせの行方が気になります。 357 00:27:16,555 --> 00:27:18,890 どこか 心当たりはありませんか? 358 00:27:18,890 --> 00:27:24,763 いや… 行き先に 心当たりはありませんが➡ 359 00:27:24,763 --> 00:27:29,534 私は その男に一度 会っているかもしれません。 360 00:27:29,534 --> 00:27:33,405 会っている? いつのことです? 361 00:27:33,405 --> 00:27:38,843 (加賀屋)おらくが殺された あの晩…。➡ 362 00:27:38,843 --> 00:27:43,181 近くの路地で すれ違ったのです。➡ 363 00:27:43,181 --> 00:27:46,481 足を引きずった男と…。 364 00:27:50,522 --> 00:27:56,861 (加賀屋) 男は 暗がりに溶け込み 顔も見えず➡ 365 00:27:56,861 --> 00:28:01,733 まるで 影法師のようでした。 366 00:28:01,733 --> 00:28:03,733 (足を引きずる音) 367 00:28:11,409 --> 00:28:15,213 何を考え込んでいるのです? 368 00:28:15,213 --> 00:28:21,086 おらくは 加賀屋に向かって 「私には頼れる人がいる」と言った。 369 00:28:21,086 --> 00:28:23,088 それが? 370 00:28:23,088 --> 00:28:27,792 おちせも 牢を出された日に 全く同じことを言ったんだ。 371 00:28:27,792 --> 00:28:32,697 「いざという時には あたしにも頼るところがある」と。 372 00:28:32,697 --> 00:28:37,697 フッ… まさか 2人とも同じ男を 頼っていたというんじゃないでしょうね。 373 00:28:41,373 --> 00:28:43,375 おかしいかな? 374 00:28:43,375 --> 00:28:49,080 おらくが頼った男は 金が目当てで近づいた悪党ですよ。 375 00:28:49,080 --> 00:28:52,851 おちせが仮に その男と顔見知りだったとしても➡ 376 00:28:52,851 --> 00:28:55,186 そんなやつを頼りにしますか? 377 00:28:55,186 --> 00:28:57,122 はあ… そうだな。 378 00:28:57,122 --> 00:28:59,057 だが それならば➡ 379 00:28:59,057 --> 00:29:04,529 おちせは いつ どこで そんな頼れる人と知り合ったんだ? 380 00:29:04,529 --> 00:29:10,229 ずっと つきあいがあったのなら 誰も知らんというのは…。 381 00:29:16,875 --> 00:29:19,210 牢見舞いの願書? 382 00:29:19,210 --> 00:29:25,083 はい。 おちせが牢に入っていた百日間の 届け物の願書を見たいのです。 383 00:29:25,083 --> 00:29:29,854 それを見るには 奉行所の係を 拝み倒さねばならんのですが…。 384 00:29:29,854 --> 00:29:32,757 はい。 お願いします。 385 00:29:32,757 --> 00:29:36,161 あ… ああ…。 386 00:29:36,161 --> 00:29:38,161 ハハ…。 ああ…。 387 00:29:41,833 --> 00:29:45,170 <囚人に 物を差し入れる時は➡ 388 00:29:45,170 --> 00:29:49,507 奉行所に願書を出して 許し状をもらい➡ 389 00:29:49,507 --> 00:29:52,177 それを品物に添えて➡ 390 00:29:52,177 --> 00:29:57,048 牢屋敷の張番に差し出す 定めになっていた> 391 00:29:57,048 --> 00:30:12,864 ♬~ 392 00:30:12,864 --> 00:30:15,564 森田屋…? 393 00:30:19,204 --> 00:30:24,542 森田屋佐兵衛… 森田屋佐兵衛ですか。 394 00:30:24,542 --> 00:30:27,212 覚えておりますよ。 395 00:30:27,212 --> 00:30:29,547 覚えている? どんな男だった? 396 00:30:29,547 --> 00:30:33,418 どんなと申されましても ごく ありふれた…。 397 00:30:33,418 --> 00:30:35,420 年は? さあ…。 398 00:30:35,420 --> 00:30:40,558 多分 40か50… いや 60だったかも…。 399 00:30:40,558 --> 00:30:42,494 覚えているというのは 嘘か。 400 00:30:42,494 --> 00:30:44,429 嘘ではございません。 401 00:30:44,429 --> 00:30:48,900 おちせに言づけをしてくれといって たっぷり心付けを。 402 00:30:48,900 --> 00:30:52,771 金をもらったことしか覚えておらんのか。 ハハハハハ…。 403 00:30:52,771 --> 00:30:55,240 どんな言づけを頼まれたんだ? 404 00:30:55,240 --> 00:31:01,240 牢を出たら ここを訪ねてほしいって 紙を渡されまして。 405 00:31:05,250 --> 00:31:08,586 その紙には 何と書いてあった? 406 00:31:08,586 --> 00:31:12,457 え~と あれは…。 407 00:31:12,457 --> 00:31:16,261 先生 聞くだけ無駄ですよ。 え~…。 408 00:31:16,261 --> 00:31:18,196 はあ…。 え~と…。 はあ…。 409 00:31:18,196 --> 00:31:20,131 先生! 410 00:31:20,131 --> 00:31:24,135 はあ… はあ… ああ…。 411 00:31:24,135 --> 00:31:26,604 下谷北大門町に➡ 412 00:31:26,604 --> 00:31:29,941 森田屋佐兵衛という古手屋は 住んでおりやせん。 413 00:31:29,941 --> 00:31:32,544 やっぱり そうか…。 414 00:31:32,544 --> 00:31:37,215 願書に嘘を書くなんざ 太え野郎ですぜ! 415 00:31:37,215 --> 00:31:40,118 ですが 古手屋というのは➡ 416 00:31:40,118 --> 00:31:43,888 まるっきりの嘘でも ねえのかもしれやせん。 417 00:31:43,888 --> 00:31:45,824 なぜ そう思う? 418 00:31:45,824 --> 00:31:49,561 おらくの家の近所で聞いて回ったところ➡ 419 00:31:49,561 --> 00:31:54,232 足の悪い行商人が 人目を避けるように こそこそと出入りしていたそうなんで。 420 00:31:54,232 --> 00:31:59,904 すると おらくを殺したのは やはり…。 421 00:31:59,904 --> 00:32:03,604 森田屋と見るほかねえようで。 422 00:32:05,777 --> 00:32:10,248 (加賀屋)あの子は 消されるおそれがある。 423 00:32:10,248 --> 00:32:14,586 一刻も早く捜し出さねば おちせの身が危うい。 424 00:32:14,586 --> 00:32:16,586 へい! 425 00:32:18,456 --> 00:32:21,926 おらくさんは 確かに うちで働いてましたけど➡ 426 00:32:21,926 --> 00:32:23,862 ずっと昔のことでございまして…。 427 00:32:23,862 --> 00:32:27,265 ああ… そのころ 親しくしていた人がいたら➡ 428 00:32:27,265 --> 00:32:29,200 教えてもらいてえんですが。 429 00:32:29,200 --> 00:32:32,537 ちょっと それ早くしてちょうだい。 はい。 あら すみません。 430 00:32:32,537 --> 00:32:35,440 客でも 一緒に働いてた方でも かまいやせん。 431 00:32:35,440 --> 00:32:40,411 おらくさんが 何か 悪いことでも? いえ そうじゃねえんですが…。 432 00:32:40,411 --> 00:32:42,881 待ちなさい! 433 00:32:42,881 --> 00:32:45,550 何でえ 何でえ? 434 00:32:45,550 --> 00:32:49,888 盛りつけが雑よ。 やり直し。 はい。 435 00:32:49,888 --> 00:32:53,224 実は…。 ≪(物が割れる音) ≪すいません! 436 00:32:53,224 --> 00:32:55,894 あら すみません。 大丈夫か? ええ? 437 00:32:55,894 --> 00:32:59,764 実は おらくさんの娘が 行方知れずになりやしてね➡ 438 00:32:59,764 --> 00:33:01,766 捜してるような訳合いなんで。 439 00:33:01,766 --> 00:33:04,903 でも それなら おらくさん本人に お聞きになれば? 440 00:33:04,903 --> 00:33:07,805 それが…➡ 441 00:33:07,805 --> 00:33:09,774 亡くなっちまったもんですから。 442 00:33:09,774 --> 00:33:13,244 まあ! そうでございましたか。 443 00:33:13,244 --> 00:33:15,244 こちらへ。 444 00:33:18,583 --> 00:33:22,253 ここで おらくさんが 一番 懇意にしてたのは➡ 445 00:33:22,253 --> 00:33:25,156 森田屋佐兵衛さんとおっしゃる お客様ですよ。 446 00:33:25,156 --> 00:33:28,126 えっ? 森田屋? 447 00:33:28,126 --> 00:33:31,863 あ… じゃあ 森田屋さんは よく こちらへ? 448 00:33:31,863 --> 00:33:34,532 昔は よくお見えになったんですけど➡ 449 00:33:34,532 --> 00:33:39,871 10年ほど前 店が潰れたとかで ぷっつりと 姿を消しておしまいになられまして。 450 00:33:39,871 --> 00:33:41,806 それからは ここへは一度も? 451 00:33:41,806 --> 00:33:43,741 女将さん。 後にして。 452 00:33:43,741 --> 00:33:49,213 いいえ 半年ほど前に一度だけ お金の無心に。 453 00:33:49,213 --> 00:33:51,149 よほど困っているようでしたか? 454 00:33:51,149 --> 00:33:54,085 あの…。 昔の面影は まるでございませんでした。 455 00:33:54,085 --> 00:33:57,555 今 どこに住んでるか ご存じじゃありやせんか? いいえ。 456 00:33:57,555 --> 00:33:59,490 あの➡ 457 00:33:59,490 --> 00:34:04,228 あたし つい この間 森田屋さんを見かけたんですけど。 458 00:34:04,228 --> 00:34:06,228 どこで!? 459 00:34:15,239 --> 00:34:17,575 おちせが見つかったのか? 460 00:34:17,575 --> 00:34:20,912 多分。 多分? どういうことだ? 461 00:34:20,912 --> 00:34:24,248 森田屋を この近くで見かけたという話を 聞きやして➡ 462 00:34:24,248 --> 00:34:28,119 しらみつぶしに当たったところ それらしい娘が見つかったんで。 463 00:34:28,119 --> 00:34:30,855 居場所は? おちせは 今 どこにいるんですか? 464 00:34:30,855 --> 00:34:32,790 まあまあ 待ちねえ。 465 00:34:32,790 --> 00:34:36,527 間違いねえとは思うが こっちは おちせの顔も知らねえんだ。 466 00:34:36,527 --> 00:34:40,198 娘は 暮れ六ツまで あの居酒屋で働いてるそうだから➡ 467 00:34:40,198 --> 00:34:44,198 まずは 本当に おちせかどうか 確かめてもらいてえ。 468 00:34:45,870 --> 00:34:48,773 おいおい まだ だいぶ間があるんだ。 469 00:34:48,773 --> 00:34:51,773 お茶でも飲んじゃあどうです。 470 00:34:59,217 --> 00:35:01,552 しかし 分からんな。 471 00:35:01,552 --> 00:35:05,423 おちせは 森田屋と どんな つながりがあったのか…。 472 00:35:05,423 --> 00:35:10,228 森田屋は 鷺見屋で仲居をしていた おらくと懇ろになって➡ 473 00:35:10,228 --> 00:35:12,563 おちせのことも 着物を買ってやったりして➡ 474 00:35:12,563 --> 00:35:14,499 随分 かわいがってたらしいんです。 475 00:35:14,499 --> 00:35:19,904 向島の花見だ 王子の紅葉狩りだと よく母子を連れ出していたそうだから➡ 476 00:35:19,904 --> 00:35:26,778 おちせは 子ども心に いいおじさんだと 思っていたんでしょうよ。 477 00:35:26,778 --> 00:35:29,914 はあ… だからって➡ 478 00:35:29,914 --> 00:35:35,520 そんな男を頼って 杉蔵さんに ひと言の断りもなく行っちまうなんて➡ 479 00:35:35,520 --> 00:35:38,520 どういうつもりなんだか。 480 00:35:44,195 --> 00:35:50,068 おちせは… 父なし子なんです。 481 00:35:50,068 --> 00:35:58,543 だから ほんの一時だけでも かわいがってくれた森田屋のことを➡ 482 00:35:58,543 --> 00:36:01,879 父親のように思って➡ 483 00:36:01,879 --> 00:36:08,879 ずっと 胸の中に しまい込んでたんだと思います。 484 00:36:12,223 --> 00:36:14,559 ばかなやつだよ…。 485 00:36:14,559 --> 00:36:28,573 ♬~ 486 00:36:28,573 --> 00:36:31,175 そんな気持ちもあっただろうが➡ 487 00:36:31,175 --> 00:36:34,078 おちせが 何も言わず いなくなったのは➡ 488 00:36:34,078 --> 00:36:38,516 牢に入ったような女が お前さんを頼っては➡ 489 00:36:38,516 --> 00:36:41,853 迷惑がかかると思ったからだよ。 490 00:36:41,853 --> 00:36:46,190 子どもの頃から 人の何倍も苦労してきたもんで➡ 491 00:36:46,190 --> 00:36:52,864 諦めて 身を引く癖が ついちまったんだなあ…。 492 00:36:52,864 --> 00:36:58,564 ♬~ 493 00:37:11,883 --> 00:37:15,219 待ちねえ。 もうちょっとの辛抱だ。 494 00:37:15,219 --> 00:37:17,555 でも 顔を見ないことには心配で…。 495 00:37:17,555 --> 00:37:19,891 娘が おちせだったら➡ 496 00:37:19,891 --> 00:37:24,762 森田屋の家まで 跡をつけさせてもらわなきゃならねえ。 497 00:37:24,762 --> 00:37:28,566 また帰すんですか!? 498 00:37:28,566 --> 00:37:34,172 心配はいらんぞ 杉蔵。 499 00:37:34,172 --> 00:37:39,172 (鐘の音) 500 00:37:50,188 --> 00:37:58,863 (鐘の音) 501 00:37:58,863 --> 00:38:02,200 おちせ! 502 00:38:02,200 --> 00:38:08,200 (鐘の音) 503 00:38:10,074 --> 00:38:17,548 (犬のほえ声) 504 00:38:17,548 --> 00:38:19,884 おじさん ただいま。 505 00:38:19,884 --> 00:38:23,184 ≪お帰り。 (戸を閉める音) 506 00:38:24,755 --> 00:38:26,757 ≪(包丁の音) 507 00:38:26,757 --> 00:38:29,560 あら あたしがやるって言ったのに。 508 00:38:29,560 --> 00:38:35,860 なに いいさ。 お前さんだって 疲れて帰るのだから。 509 00:38:37,368 --> 00:38:40,838 (足を引きずる音) 510 00:38:40,838 --> 00:39:13,204 ♬~ 511 00:39:13,204 --> 00:39:15,139 何? 512 00:39:15,139 --> 00:39:20,878 あっ いや… 大きくなったなあと思ってね。 513 00:39:20,878 --> 00:39:23,214 変なおじさん。 514 00:39:23,214 --> 00:39:25,514 ウフフフ。 フフフフ…。 515 00:39:30,087 --> 00:39:32,023 えっ? 516 00:39:32,023 --> 00:39:35,493 森田屋佐兵衛だな。 ちょっと そこの番屋まで来てもらおうか。 517 00:39:35,493 --> 00:39:38,396 杉蔵さん… どうして ここが? 518 00:39:38,396 --> 00:39:55,179 ♬~ 519 00:39:55,179 --> 00:39:57,848 おじさん? 520 00:39:57,848 --> 00:40:15,199 ♬~ 521 00:40:15,199 --> 00:40:17,199 よし。 522 00:40:20,071 --> 00:40:23,074 おじさん…!? 523 00:40:23,074 --> 00:40:25,209 おい。 524 00:40:25,209 --> 00:40:27,509 おじさん! 525 00:40:33,551 --> 00:40:35,886 どうしたの…? 526 00:40:35,886 --> 00:40:40,886 おじさんが 何か悪いことでもしたの? 527 00:40:47,498 --> 00:40:51,902 よかった…。 528 00:40:51,902 --> 00:40:56,774 無事で よかった…。 529 00:40:56,774 --> 00:41:09,920 (泣き声) 530 00:41:09,920 --> 00:41:22,500 ♬~ 531 00:41:22,500 --> 00:41:24,935 意気地のねえやつだ。 532 00:41:24,935 --> 00:41:29,273 あれでは 一生 尻に敷かれそうだな。 違えねえ。 533 00:41:29,273 --> 00:41:34,879 先生も せいぜい ああならねえように 気を付けてくだせえよ。 ハハハ! 534 00:41:34,879 --> 00:41:45,890 (杉蔵の泣き声) 535 00:41:45,890 --> 00:41:47,825 あれ 無実ですぜ。 536 00:41:47,825 --> 00:41:50,227 だが これには 何の裏付けもない。 537 00:41:50,227 --> 00:41:52,897 喜八が 出任せを言ったかもしれん。 538 00:41:52,897 --> 00:41:56,567 うるさい! 飲みに行くって それ 女の人がいる所? 539 00:41:56,567 --> 00:41:58,903 あんたがいなくちゃ 生きていけない…! 540 00:41:58,903 --> 00:42:00,838 殺されたのか? 541 00:42:00,838 --> 00:42:03,574 一切を操っているような気がして ならねえんで。 542 00:42:03,574 --> 00:42:05,910 陰で誰かが…? 543 00:42:05,910 --> 00:43:25,910 ♬~