1 00:00:02,769 --> 00:00:27,995 ♬~ 2 00:00:27,995 --> 00:00:32,132 (岡本敏子) <芸術家 岡本太郎は 私にとって➡ 3 00:00:32,132 --> 00:00:39,439 父であり 夫であり 恋人であり そして 戦友でもありました> 4 00:00:39,439 --> 00:00:47,314 ♬~ 5 00:00:47,314 --> 00:00:51,551 <この「太陽の塔」を造り上げた 岡本太郎は➡ 6 00:00:51,551 --> 00:00:55,355 実に さまざまな顔を持っていました> 7 00:00:59,159 --> 00:01:01,161 <画家> 8 00:01:08,302 --> 00:01:10,604 <思想家> 9 00:01:13,006 --> 00:01:15,509 <テレビタレント> 10 00:01:18,545 --> 00:01:24,618 <岡本太郎は まさに ベラボーとしか 言いようのない人だったのです。➡ 11 00:01:24,618 --> 00:01:31,124 私が太郎さんと出会ったのは 戦後すぐのことでした> 12 00:01:40,033 --> 00:01:48,875 (玉音放送) 13 00:01:48,875 --> 00:01:56,483 <1945年8月。 長かった戦争が ようやく終わりました> 14 00:02:02,589 --> 00:02:07,060 <太郎さんは 戦前 パリで 画家として活動していましたが➡ 15 00:02:07,060 --> 00:02:11,298 徴兵され 中国戦線に送られました。➡ 16 00:02:11,298 --> 00:02:15,469 捕虜生活を終え 復員して見たものは➡ 17 00:02:15,469 --> 00:02:18,372 何もない日本でした> 18 00:02:20,941 --> 00:02:35,255 ♬~ 19 00:02:35,255 --> 00:02:37,624 (岡本太郎)絵画の石器時代は終わった! 20 00:02:37,624 --> 00:02:42,029 これからの芸術は 岡本太郎から始まる! 21 00:02:42,029 --> 00:02:44,264 そう僕は 新聞紙上で宣言した。 22 00:02:44,264 --> 00:02:48,935 <太郎さんは 文学者や 思想家の仲間たちと共に➡ 23 00:02:48,935 --> 00:02:53,740 「夜の会」を結成し 芸術運動に乗り出しました> 24 00:02:53,740 --> 00:02:55,976 なぜ 10年も じっと我慢していられるのか➡ 25 00:02:55,976 --> 00:02:57,911 僕は分からない。 26 00:02:57,911 --> 00:03:01,782 (ピアノ) 27 00:03:01,782 --> 00:03:06,453 僕が 色音痴だと言われながらも 原色を使って 絵を描くのは➡ 28 00:03:06,453 --> 00:03:10,891 そういう画壇に 一人で闘いを 挑んでいるからに ほかならない! 29 00:03:10,891 --> 00:03:13,827 (花田清輝)すると 太郎の絵は 本来 下手くそではないのか? 30 00:03:13,827 --> 00:03:18,398 当たり前じゃないか! あれは下手くそに描いているのだ。 31 00:03:18,398 --> 00:03:20,434 <そこは参加自由で➡ 32 00:03:20,434 --> 00:03:25,172 私は 友達と よく夜の会をのぞきに行きました。➡ 33 00:03:25,172 --> 00:03:27,607 いわゆる取り巻きというやつです> 34 00:03:27,607 --> 00:03:30,644 無限の宇宙へと広がるからだ。 35 00:03:30,644 --> 00:03:35,182 生まれつき下手くそな人間を 天才と呼ぶのだ!(笑い声) 36 00:03:35,182 --> 00:03:37,117 (拍手) 37 00:03:37,117 --> 00:03:41,721 (ピアノ) 38 00:03:41,721 --> 00:03:44,658 <私は 太郎さんが 日本に帰ってきてくれたことを➡ 39 00:03:44,658 --> 00:03:46,960 幸せに思う。➡ 40 00:03:46,960 --> 00:03:52,766 私は 岡本太郎と出会うために この国に生まれたのだから> 41 00:04:00,006 --> 00:04:05,545 <私は 女子大を出て 出版社に勤め始めたばかりだった。➡ 42 00:04:05,545 --> 00:04:13,053 太郎さんの母 岡本かの子のような 小説家になることを夢みていた> 43 00:04:16,923 --> 00:04:19,025 (美喜子)ごめんくださ~い。 44 00:04:21,762 --> 00:04:23,764 うわ~っ! (3人)キャーッ! 45 00:04:23,764 --> 00:04:26,967 うわ~っ! 46 00:04:26,967 --> 00:04:30,504 いらっしゃい。 お待ちしておりました。 47 00:04:30,504 --> 00:04:34,174 さあ ゆっくりしてってくれたまえ。 48 00:04:34,174 --> 00:04:36,610 (美喜子)あっ これが 「夜」という絵ですね。➡ 49 00:04:36,610 --> 00:04:40,013 夜の会の由来となった。 そうだよ。 50 00:04:40,013 --> 00:04:44,284 ここで 会の名前を決めたんだ。 51 00:04:44,284 --> 00:04:47,788 あっ 岡本かの子だ。 52 00:04:54,494 --> 00:04:58,798 おいしいカフェオレは こうやって いれるのだ。 53 00:04:58,798 --> 00:05:10,410 ♬~ 54 00:05:10,410 --> 00:05:14,648 (和代)この平野さんを中心として 私たち 会を作ったんです。➡ 55 00:05:14,648 --> 00:05:19,019 「伊勢物語」とか 芭蕉連句の エロティシズムを研究するような。 56 00:05:19,019 --> 00:05:23,523 (美喜子)会の名は 平野さんの発案で 「原始」というんです。 57 00:05:25,258 --> 00:05:27,194 エロティシズムか。 58 00:05:27,194 --> 00:05:31,064 う~ん…。 59 00:05:31,064 --> 00:05:33,967 服を脱いでごらん。 (3人)えっ!? 60 00:05:33,967 --> 00:05:37,270 自分が丸裸になったと思って 考えてごらん。 61 00:05:37,270 --> 00:05:40,173 大半の人間は 自分を隠そうとするだろう。 62 00:05:40,173 --> 00:05:44,044 つまり それは自己所有の状態に 持っていこうとしているわけだ。 63 00:05:44,044 --> 00:05:48,982 その逆に その裸を完全に 自己喪失の状態に導く行為を➡ 64 00:05:48,982 --> 00:05:51,117 エロティックと呼ぶわけだよ。 65 00:05:51,117 --> 00:05:55,288 死ぬことを「逝く」とも言うだろう? 66 00:05:55,288 --> 00:05:59,159 古代において 性愛行為は 供儀と比較されるほど➡ 67 00:05:59,159 --> 00:06:04,097 そのエロティシズムの根底は 剥奪 または 破壊であった。 68 00:06:04,097 --> 00:06:08,768 エロティシズムにおいて 女性は供儀の生贄のごとく現れ➡ 69 00:06:08,768 --> 00:06:11,438 男性は 供儀の執行者のごとく現れる。 70 00:06:11,438 --> 00:06:16,343 そして 「死ぬ!」と叫ぶほどに 生は たたえられるわけだ。 71 00:06:18,211 --> 00:06:21,114 さあ みんなで向こうで 供儀を体験しよう。 72 00:06:21,114 --> 00:06:24,317 私は遠慮します! 私も! 73 00:06:30,190 --> 00:06:32,926 君は どうする? 74 00:06:32,926 --> 00:06:38,031 私は… 興味があります。 75 00:06:39,100 --> 00:06:42,502 でも 怖いです…。 76 00:06:42,502 --> 00:06:48,608 う~ん… 正直だ! 77 00:06:48,608 --> 00:07:06,826 ♬~ 78 00:07:06,826 --> 00:07:10,530 <私には 絵のことは分からなかった。➡ 79 00:07:10,530 --> 00:07:15,669 ただ その絵の前に立つと 描いた人間の孤独感が➡ 80 00:07:15,669 --> 00:07:19,639 そのまま ぶつかってくるような気がした> 81 00:07:19,639 --> 00:07:22,509 先生の絵を見てきました。 82 00:07:22,509 --> 00:07:25,912 おおっ 燃えたか? え? 83 00:07:25,912 --> 00:07:29,349 君が燃えたのか? 84 00:07:29,349 --> 00:07:36,122 私は ただ… 先生が命を懸けて あの絵を描いていること➡ 85 00:07:36,122 --> 00:07:39,225 それが分かったような気がしたんです。 86 00:07:40,961 --> 00:07:44,597 そんなもの分かられたって うれしくも何ともないよ。 87 00:07:44,597 --> 00:07:46,666 それは 君が僕に 媚を売って➡ 88 00:07:46,666 --> 00:07:49,002 好かれようとして 出た言葉じゃないのか? 89 00:07:49,002 --> 00:07:51,271 私は別に…。 肝心なのは➡ 90 00:07:51,271 --> 00:07:54,774 絵を見て 君が燃えたかどうかだ! 91 00:07:54,774 --> 00:07:58,411 絵を見て 燃えて 君が何かを起こす。 92 00:07:58,411 --> 00:08:03,116 それが芸術なんだよ。 芸術とは 見る人間の問題なんだ。 93 00:08:03,116 --> 00:08:05,085 それ以外は 単なるアカデミズムだよ。 94 00:08:05,085 --> 00:08:09,022 僕は そういうアカデミズムに 闘いを挑んで 絵を描いてるんだ。 95 00:08:09,022 --> 00:08:15,628 私は 先生の そういう痛ましさが 分かるような気がしたんです。 96 00:08:17,630 --> 00:08:19,933 今のも駄目ですね。 97 00:08:19,933 --> 00:08:22,936 今のは いい! 98 00:08:22,936 --> 00:09:01,541 ♬~ 99 00:09:01,541 --> 00:09:04,944 ごめんなさい 私…。 100 00:09:07,313 --> 00:09:11,317 燃えたか? え? 101 00:09:11,317 --> 00:09:15,121 自分が燃えたか? 102 00:09:17,957 --> 00:09:23,129 はい…。 燃えました。 103 00:09:23,129 --> 00:09:26,366 うん。 正直だ。 104 00:09:26,366 --> 00:10:17,283 ♬~ 105 00:10:17,283 --> 00:10:21,087 (福田恆存) 平野君 本当に ここを辞めるの? 106 00:10:23,089 --> 00:10:26,960 岡本かの子に憧れてるのは 知っていたが➡ 107 00:10:26,960 --> 00:10:30,830 息子の世話をして どうするの? 違うんです。 108 00:10:30,830 --> 00:10:38,304 初めは そういう意識で 興味を持ちましたが 今は…。 109 00:10:38,304 --> 00:10:41,808 (福田)ほれたか? 110 00:10:46,746 --> 00:10:52,185 僕は 大学で君を教えてる頃から 心配だったんだよ。 111 00:10:52,185 --> 00:10:58,024 大抵の人間は熱いヤカンに近づくと➡ 112 00:10:58,024 --> 00:11:01,394 手を触れる前に 熱いと感じて引っ込める。 113 00:11:01,394 --> 00:11:07,967 だけど君は 触ってごらんと言われれば まっすぐに手を出して触ってみる。➡ 114 00:11:07,967 --> 00:11:14,841 それでも 熱いってことが 分からない人なんだよ。 115 00:11:14,841 --> 00:11:17,644 それでは 今に大ヤケドするよ。 116 00:11:19,412 --> 00:11:24,584 二つの在り方を それぞれの極と考える。 117 00:11:24,584 --> 00:11:31,357 妥協 折衷させることなく その矛盾を強調し 本来的に…。 118 00:11:31,357 --> 00:11:33,726 <こうして 私は秘書になった。➡ 119 00:11:33,726 --> 00:11:41,034 いつでも そばで筆記できるよう アトリエで暮らすことになったのだ。➡ 120 00:11:41,034 --> 00:11:44,537 そのころから 岡本太郎は多忙だった。➡ 121 00:11:44,537 --> 00:11:46,573 絵を描くことに とどまらず➡ 122 00:11:46,573 --> 00:11:51,945 新聞や 雑誌の原稿 講演などで挑発的な発言を続け➡ 123 00:11:51,945 --> 00:11:56,182 古い日本の体制に 闘いを挑んでいった。➡ 124 00:11:56,182 --> 00:12:04,357 その活動は無償が基本で 絵画では 一銭も収入を得ることはなかった> 125 00:12:04,357 --> 00:12:08,227 岡本太郎さんですよね。 126 00:12:08,227 --> 00:12:12,765 私は 美術評論などを 細々と書いてる者ですけどね➡ 127 00:12:12,765 --> 00:12:16,569 あなたの発言は いつも刺激的だ。 頑張ってください。 128 00:12:16,569 --> 00:12:18,638 応援してますよ これからも。 129 00:12:18,638 --> 00:12:23,943 お前は お前だ。 私は私だ。 カストリは カストリだ。 130 00:12:23,943 --> 00:12:27,714 私は カストリの味は知ってるが お前さんの味は まだ知らない。 131 00:12:27,714 --> 00:12:31,985 人の応援などしてる場合じゃないだろ! 先生…。 132 00:12:31,985 --> 00:12:34,254 驚いたね。 ええ? 133 00:12:34,254 --> 00:12:39,792 結局 人に頭を下げることも知らない 育ち方をしてるってことだよな。 134 00:12:39,792 --> 00:12:43,630 当たり前だ! 卑屈になれなんて 教わったことはない! 135 00:12:43,630 --> 00:12:47,600 卑屈とは何だ! フン! 136 00:12:47,600 --> 00:12:50,703 (店員)ありがとうございました。 137 00:12:55,041 --> 00:12:58,611 あんなに突っかからなくても よかったじゃないですか。 138 00:12:58,611 --> 00:13:01,280 せっかく 応援してくださってるんですから。 139 00:13:01,280 --> 00:13:05,051 そんな応援は 店の外に出れば すぐに忘れちまうよ。 140 00:13:05,051 --> 00:13:08,921 腹を立てて帰った方が よっぽど何か残る。 141 00:13:08,921 --> 00:13:11,791 何も考えなくても 応援は できるんだ。 142 00:13:11,791 --> 00:13:16,362 ああいうのが軍隊に入ると 何も考えずに殴られ➡ 143 00:13:16,362 --> 00:13:19,932 ちょっとでも人の上に立つと 何も考えずに殴る。 144 00:13:19,932 --> 00:13:22,802 そういう連中だ。 そのとおり! 145 00:13:22,802 --> 00:13:27,640 応援するな! 自分でやれ! 146 00:13:27,640 --> 00:13:31,577 君たち ピープルの生活から 芸術は疎外されてるんだよ。 147 00:13:31,577 --> 00:13:35,882 芸術とは主義主張を超えた 本能だ。 148 00:13:35,882 --> 00:13:38,418 例えば この店にいるピープル➡ 149 00:13:38,418 --> 00:13:43,056 表を歩いているピープルが 家に帰って当たり前のように絵を描き➡ 150 00:13:43,056 --> 00:13:47,894 パーッと宇宙に向かって自分を開く。 本来の自分を取り戻す。 151 00:13:47,894 --> 00:13:51,264 芸術家は そのための生贄だ。 152 00:13:51,264 --> 00:13:55,168 私は 生贄になるために 日本に帰ってきたんだ。 153 00:13:55,168 --> 00:13:58,638 (拍手) 154 00:13:58,638 --> 00:14:01,607 ♬~(太郎の鼻歌) 155 00:14:01,607 --> 00:14:06,145 あ~あ せっかく 電車賃を取っておいたのに➡ 156 00:14:06,145 --> 00:14:08,915 電車の方が なくなるなんて…。 157 00:14:08,915 --> 00:14:10,883 わっ ああ~…。 158 00:14:10,883 --> 00:14:16,656 ♬~(太郎の鼻歌) 159 00:14:16,656 --> 00:14:22,361 あっ 先生 私 これ以上 踊ったら もう吐きそうです。 160 00:14:22,361 --> 00:14:25,264 パリで かの子と踊ったんだ。 161 00:14:31,471 --> 00:14:35,775 本当に お母さんを愛してるんですね。 162 00:14:35,775 --> 00:14:40,680 バカヤロー お前が かの子に 近づきたがってるからだろう。 163 00:14:40,680 --> 00:14:45,385 あら 今は そんなこと 思ってませんよ。 164 00:14:45,385 --> 00:14:47,920 でも いつかは私だって➡ 165 00:14:47,920 --> 00:14:51,390 岡本かの子のような作家に なれるかもしれない。 166 00:14:51,390 --> 00:14:54,394 可能性だけは あるんですからね。 167 00:14:54,394 --> 00:14:58,831 バカヤロー! そういう考えは甘えだ。 168 00:14:58,831 --> 00:15:01,434 今 在りもしないものに 責任おっかぶせて➡ 169 00:15:01,434 --> 00:15:04,103 何ができるってんだ! 170 00:15:04,103 --> 00:15:06,672 可能性があるんだったら 今だってある。 171 00:15:06,672 --> 00:15:09,041 今ないものは 将来にもない! 172 00:15:09,041 --> 00:15:18,718 ♬~ 173 00:15:18,718 --> 00:15:24,090 俺の中では いつでも火が燃えてるんだ。 174 00:15:24,090 --> 00:15:27,126 火? 175 00:15:27,126 --> 00:15:31,230 俺は それを 神聖な火と呼んでる。 176 00:15:39,005 --> 00:15:44,610 俺は 絵なんか描かなくったって 俺なんだ。 177 00:15:48,281 --> 00:15:56,789 絵描きにならなくったって 岡本太郎で いたいんだ。 178 00:16:05,565 --> 00:16:07,934 (一平)タゴシ! 179 00:16:07,934 --> 00:16:11,838 お父さん…。 よく来たなあ。 180 00:16:11,838 --> 00:16:17,710 秘書の平野敏子です。 岡本一平です。 181 00:16:17,710 --> 00:16:21,247 さあ ここから あとひと息だ。 182 00:16:21,247 --> 00:16:27,019 <太郎さんが 父 一平さんを訪ねたのは その秋のことだった> 183 00:16:27,019 --> 00:16:31,858 (子供たち)お帰り~。 言ったろう? 俺の兄弟たちだ。 184 00:16:31,858 --> 00:16:36,128 <一平さんは 戦前に かの子さんを亡くし➡ 185 00:16:36,128 --> 00:16:40,132 その後 再婚して 岐阜で暮らしていた> 186 00:16:49,509 --> 00:16:54,280 太郎は いい本を出したね。 君のおかげか。 187 00:16:54,280 --> 00:16:57,783 私は 岡本かの子さんのような➡ 188 00:16:57,783 --> 00:17:01,654 小説家になることに 憧れていたんです。 189 00:17:01,654 --> 00:17:08,327 そう。 火のような女だったからね。 火? 190 00:17:08,327 --> 00:17:10,763 (一平)読む者には 温かく➡ 191 00:17:10,763 --> 00:17:17,236 一緒にいる者には ヤケドを負わせるような女だった。➡ 192 00:17:17,236 --> 00:17:24,443 かの子は 太郎が画家として 一流になることしか許さなかった。 193 00:17:24,443 --> 00:17:30,850 太郎は かの子の聖火を 受け継いだんだよ。 必死にね。 194 00:17:34,553 --> 00:17:39,458 (一平)その火と つきあっていくには 覚悟が必要だ。 195 00:17:42,595 --> 00:17:49,201 どんなに寄り添っても 向こうは孤独なままだからね。 196 00:17:51,003 --> 00:17:55,975 (一平)それを解消する道は 一つしかない。➡ 197 00:17:55,975 --> 00:17:58,778 生身の人間関係を捨てて➡ 198 00:17:58,778 --> 00:18:04,617 彼女のためなら 死をも厭わない覚悟をしたんだ。 199 00:18:04,617 --> 00:18:09,889 生身の男と女では 愛し合えないんですか? 200 00:18:09,889 --> 00:18:16,696 結局 人の愛し方というのは その人間の意志というより➡ 201 00:18:16,696 --> 00:18:19,932 能力によって決まるんだ。 202 00:18:19,932 --> 00:18:23,436 たとえ どんなに努力をしようと➡ 203 00:18:23,436 --> 00:18:31,143 その人間にしかできない愛し方をするより しかたないんだ。 204 00:18:56,168 --> 00:18:58,237  回想  僕が 色音痴だと言われながらも➡ 205 00:18:58,237 --> 00:19:00,873 原色を使って 絵を描くのは➡ 206 00:19:00,873 --> 00:19:05,177 そういう画壇に 一人で闘いを 挑んでいるからにほかならない! 207 00:19:05,177 --> 00:19:08,080 (花田)すると 太郎の絵は 本来 下手くそではないのか? 208 00:19:08,080 --> 00:19:12,084 当たり前じゃないか! あれは下手くそに描いているのだ。 209 00:19:12,084 --> 00:19:17,089 絵なんか描かなくったって 俺なんだ。 210 00:19:19,692 --> 00:19:27,967 絵描きにならなくったって 岡本太郎で いたいんだ。 211 00:19:27,967 --> 00:19:32,571 (一平)太郎が画家として 一流になることしか許さなかった。 212 00:19:32,571 --> 00:19:39,345 太郎は かの子の聖火を 受け継いだんだよ。 必死にね。 213 00:19:39,345 --> 00:19:55,961 ♬~ 214 00:20:00,100 --> 00:20:08,074 <第34回 二科展において 太郎さんは「重工業」を発表した。➡ 215 00:20:08,074 --> 00:20:14,180 みずみずしいネギと 合理的な進歩に踊らされる人間たち。➡ 216 00:20:14,180 --> 00:20:18,951 抽象と具現。 矛盾に引き裂かれている絵だ。➡ 217 00:20:18,951 --> 00:20:24,156 翌年には 「森の掟」を発表。➡ 218 00:20:24,156 --> 00:20:31,063 毒々しい原色を ふんだんに使って 画壇に闘いを挑み続けた> 219 00:20:35,735 --> 00:20:39,605 このチャックというのは 権力の象徴なんだね。 220 00:20:39,605 --> 00:20:42,408 これを開けても 中身は空っぽだ。 221 00:20:42,408 --> 00:20:45,611 そういう訳なんだ。 (記者)なるほどねえ。 222 00:20:45,611 --> 00:20:48,614 (カメラマン)先生 こちら よろしいですか? 223 00:21:18,277 --> 00:21:26,318 ♬~ 224 00:21:26,318 --> 00:21:30,055 「岡本太郎は ヘッポコ画家のくせに弁が立つから➡ 225 00:21:30,055 --> 00:21:33,392 マスコミに ちやほやされているだけだ。➡ 226 00:21:33,392 --> 00:21:37,396 画家としての才能は まるでない」。 227 00:21:44,170 --> 00:21:47,940 <太郎さんは 画家である自分に傷つきながら➡ 228 00:21:47,940 --> 00:21:53,245 何より 画家として 一流になることを望んでいた> 229 00:22:02,188 --> 00:22:08,127 ねえ 太郎さん。 太郎さんにとって 一流とヘッポコの違いって 何ですか? 230 00:22:08,127 --> 00:22:13,799 セザンヌも ゴッホも 世間から ヘッポコ画家だと思われてたが➡ 231 00:22:13,799 --> 00:22:17,670 後に 世間から同じように 一流とされたにすぎない。 232 00:22:17,670 --> 00:22:21,006 彼らは ただ 彼らの芸術を発見しただけだ。 233 00:22:21,006 --> 00:22:24,944 そのことを書くべきよ! 私は 書きたいです。 234 00:22:24,944 --> 00:22:28,280 今 太郎さんが芸術について 思っていることを まとめて➡ 235 00:22:28,280 --> 00:22:31,283 世間に発表すべきよ! 何だよ 急に。 236 00:22:31,283 --> 00:22:33,619 芸術なんて何も分からなかった私が➡ 237 00:22:33,619 --> 00:22:35,654 太郎さんと出会って変わったように➡ 238 00:22:35,654 --> 00:22:37,990 たくさんの人が 岡本太郎と出会って➡ 239 00:22:37,990 --> 00:22:40,292 変われるような本を書きたいんです! 240 00:22:40,292 --> 00:23:00,679 ♬~ 241 00:23:05,084 --> 00:23:07,353 (アナウンサー)「深まる芸術の秋。➡ 242 00:23:07,353 --> 00:23:11,857 画家の岡本太郎氏が書いた芸術論 『今日の芸術』が➡ 243 00:23:11,857 --> 00:23:13,926 大人気を集めています。➡ 244 00:23:13,926 --> 00:23:17,663 青山の 真新しいアトリエで開かれた 祝賀会には➡ 245 00:23:17,663 --> 00:23:21,567 現代芸術研究所の若い作家たちが 多数 詰めかけ➡ 246 00:23:21,567 --> 00:23:26,372 まさに新しい芸術の波が 起ころうとしています」。 247 00:23:26,372 --> 00:23:28,307 (拍手) 248 00:23:28,307 --> 00:23:31,277 今日の芸術は うまくあってはならない。 249 00:23:31,277 --> 00:23:35,047 きれいであってはならない。 心地よくあってはならない。 250 00:23:35,047 --> 00:23:37,483 そう 僕は宣言した。 251 00:23:37,483 --> 00:23:43,289 芸術の本質は いやったらしく 人に不快感を与えるものだ! 252 00:23:43,289 --> 00:23:46,825 (掛け声と拍手) 253 00:23:46,825 --> 00:23:52,131 <岡本太郎は 時代の寵児に のし上がったのだ> 254 00:23:52,131 --> 00:23:55,034 (拍手) 255 00:23:55,034 --> 00:23:57,636 本日は どうもありがとうございました。 256 00:23:57,636 --> 00:24:01,507 今後とも どうぞよろしくお願いします。 失礼します。 257 00:24:01,507 --> 00:24:03,442 おめでとうございます。 ありがとうございます。 258 00:24:03,442 --> 00:24:06,645 今後とも どうぞ よろしく お願いいたします。 259 00:24:06,645 --> 00:24:09,648 パリで かの子と踊ったんだ。 260 00:24:09,648 --> 00:24:13,919 今の僕があるのは 母なる同志 かの子のおかげだよ。 261 00:24:13,919 --> 00:24:17,456 そうなの? 262 00:24:17,456 --> 00:24:23,062 アハハ…。 (歓声と拍手) 263 00:24:23,062 --> 00:24:26,265 (笑い声) 264 00:24:26,265 --> 00:24:29,868 ♬~ 265 00:25:12,478 --> 00:25:18,650 <私は 何をしても あの人の秘書にすぎない。➡ 266 00:25:18,650 --> 00:25:21,854 そう言われたような気がした> 267 00:25:21,854 --> 00:26:34,560 ♬~ 268 00:26:37,129 --> 00:26:39,531 (東郷青児)はい 次 持ってきて。 269 00:26:41,600 --> 00:26:43,535 (東郷)この絵 取るかい? 270 00:26:43,535 --> 00:26:45,771 要らない。 落選 落選。 271 00:26:45,771 --> 00:26:49,608 落選でいいでしょう。 入選だ。 入選 入選。 入選! 272 00:26:49,608 --> 00:26:54,146 これの どこが落選なんだ。 形式を見て 絵を見てない。 273 00:26:54,146 --> 00:26:57,483 (東郷)それじゃ 一応残しといて。 274 00:26:57,483 --> 00:27:03,655 少し 露骨すぎないか? 何がです? 275 00:27:03,655 --> 00:27:08,427 うん? 君の息がかかった前衛作家を➡ 276 00:27:08,427 --> 00:27:12,664 次々と二科会に送り込むつもりだろう? 277 00:27:12,664 --> 00:27:17,236 気を付けないと 僕は もう かばいきれないよ。 278 00:27:17,236 --> 00:27:20,906 僕は 次の二科で ヨーロッパや アメリカにいる仲間に呼びかけて➡ 279 00:27:20,906 --> 00:27:24,776 世界のトップの前衛を 並べようと思うんだ。 280 00:27:24,776 --> 00:27:29,948 これで 日本の美術界も目を覚ます。 どうだ? 281 00:27:29,948 --> 00:27:32,784 アハハハ。 よし ママ 踊ろう。 282 00:27:32,784 --> 00:27:35,888 あら! アハハハ。 283 00:27:39,358 --> 00:27:43,061 いや~ あのママは 俺に気があるな。 284 00:27:43,061 --> 00:27:47,266 絵の勉強も よくしてるし。 俺の著作も よく読んでるんだよ。 285 00:27:47,266 --> 00:27:51,136 私が一生懸命 書いてるからじゃありませんか。 286 00:27:51,136 --> 00:27:54,907 何だ 怒ったのか? 287 00:27:54,907 --> 00:27:57,309 バカだなあ。 288 00:27:57,309 --> 00:28:00,212 敏子が一番かわいいに 決まってるじゃないか。 289 00:28:00,212 --> 00:28:03,015 やめてください! 290 00:28:07,920 --> 00:28:10,422 おい! 291 00:28:10,422 --> 00:28:12,524 バカ! 292 00:28:14,293 --> 00:28:18,096 ああっ…。 何だ! 293 00:28:20,666 --> 00:28:24,169 (ドアに 物がぶつかる音) 294 00:28:24,169 --> 00:28:43,889 ♬~ 295 00:28:43,889 --> 00:28:49,261 (アナウンサー)「世界で 最もホットな 前衛絵画を集めた展覧会が➡ 296 00:28:49,261 --> 00:28:52,798 日本橋で始まり 大好評を博しています。➡ 297 00:28:52,798 --> 00:28:58,570 中でも アンフォルメルという表現形式が 注目を集めています。➡ 298 00:28:58,570 --> 00:29:02,574 企画を進めた 岡本太郎氏の作品も出品され➡ 299 00:29:02,574 --> 00:29:07,045 高らかに響く太郎節に 人の輪が絶えません」。 300 00:29:07,045 --> 00:29:32,304 ♬~ 301 00:29:32,304 --> 00:29:36,108  回想  (一平)結局 人の愛し方というのは➡ 302 00:29:36,108 --> 00:29:42,748 その人間の意志というより 能力によって決まるんだ。 303 00:29:42,748 --> 00:29:45,450 たとえ どんなに努力をしようと➡ 304 00:29:45,450 --> 00:29:52,891 その人間にしかできない愛し方をするより しかたないんだ。 305 00:29:52,891 --> 00:30:03,135 ♬~ 306 00:30:03,135 --> 00:30:06,138 (物音) 307 00:30:06,138 --> 00:30:10,542 ⚟お~い! 帰ったぞ~! 308 00:30:20,419 --> 00:30:22,354 (倒れる音) 309 00:30:22,354 --> 00:30:24,723 大丈夫ですか? 310 00:30:24,723 --> 00:30:28,994 太郎さん。 太郎さん? 311 00:30:28,994 --> 00:30:31,697 敏子ちゃ~ん。 312 00:30:34,399 --> 00:30:40,205 何だよ! もっと大きな愛で俺を包み込めよ! 313 00:30:40,205 --> 00:30:42,841 おやすみなさい。 314 00:30:42,841 --> 00:30:52,117 あいつら… 若い連中がな アンフォルメルを新しいと喜んでるよ。 315 00:30:52,117 --> 00:30:54,653 それは よかったですね。 316 00:30:54,653 --> 00:31:01,226 この俺は… 岡本太郎は古いんだとさ。 317 00:31:01,226 --> 00:31:05,664 芸術は 新しいと言われれば もう新しくないんでしょ。 318 00:31:05,664 --> 00:31:08,567 そう言ってたじゃありませんか。 319 00:31:08,567 --> 00:31:12,971 流行に負けない力強い作品を 作ればいいんですよ。 320 00:31:12,971 --> 00:31:15,907 分かったようなことを言うな! 321 00:31:15,907 --> 00:31:18,777 お前は 何も分かっちゃいないくせに➡ 322 00:31:18,777 --> 00:31:21,079 何も分かろうとしてないだろ! 323 00:31:21,079 --> 00:31:24,483 私は 太郎さんが どうして 絵を描いてるのかが分からない。 324 00:31:24,483 --> 00:31:28,787 誰のために 何のために 闘ってるのかが分からない。 325 00:31:28,787 --> 00:31:32,991 なぜ分からないんだ。 嫌いだからよ! 326 00:31:32,991 --> 00:31:37,396 絵描きの太郎さんが嫌いだから! 327 00:31:37,396 --> 00:31:41,633 一流に思われることが そんなに大事? 328 00:31:41,633 --> 00:31:44,402 私には作品の善しあしなんて 分からない。 329 00:31:44,402 --> 00:31:48,273 でも 太郎さんのことが 好きでなければ➡ 330 00:31:48,273 --> 00:31:51,510 太郎さんの作品も 好きになんてなれないのよ! 331 00:31:51,510 --> 00:31:57,015 だって 岡本太郎の芸術は 岡本太郎そのものなんだから! 332 00:32:04,389 --> 00:32:09,227 あなたは 女として 一度も私のことを➡ 333 00:32:09,227 --> 00:32:12,597 好きになってくれたことは ないでしょう? 334 00:32:12,597 --> 00:32:17,269 だから 私の気持ちは分からないと思う。 335 00:32:17,269 --> 00:32:21,139 何だ? 結婚したいのか? 形式主義か。 336 00:32:21,139 --> 00:32:24,142 そんなこと 言ってるんじゃないの! 337 00:32:24,142 --> 00:32:27,379 私は 絵描きの太郎さんが 嫌いなだけ! 338 00:32:27,379 --> 00:32:29,714 画壇に こだわる太郎さんが嫌いなの! 339 00:32:29,714 --> 00:32:32,250 一流に こだわる太郎さんが嫌いなの! 340 00:32:32,250 --> 00:32:37,656 かの子に こだわる太郎さんが嫌なの! 341 00:32:43,995 --> 00:32:46,298 殺せ。 342 00:32:46,298 --> 00:32:56,007 ♬~ 343 00:32:56,007 --> 00:33:00,245 だったら 絵描きの俺を殺してくれよ。 344 00:33:00,245 --> 00:33:09,254 ♬~ 345 00:33:09,254 --> 00:33:14,693 いいわ。 私が殺してあげます。 346 00:33:14,693 --> 00:33:26,071 ♬~ 347 00:33:26,071 --> 00:33:32,844 ここから 新しい岡本太郎をつくるのよ。 348 00:33:32,844 --> 00:33:35,413 二人で…。 349 00:33:35,413 --> 00:34:31,202 ♬~ 350 00:34:35,373 --> 00:34:43,081 <間もなくして 私は 岡本太郎の養女となった> 351 00:34:47,018 --> 00:34:49,287 <私は 人生から➡ 352 00:34:49,287 --> 00:34:54,593 結婚と生身の愛憎を 捨て去る覚悟をした。➡ 353 00:34:54,593 --> 00:34:58,964 岡本太郎を 共につくる覚悟をしたのだ> 354 00:34:58,964 --> 00:35:06,838 ハハハ… ハハハ…。 355 00:35:06,838 --> 00:35:10,141 ハハハハ…。 356 00:35:12,077 --> 00:35:16,982 <それからの太郎さんの活躍は 多岐にわたっていった。➡ 357 00:35:16,982 --> 00:35:22,253 日本じゅうを旅して 忘れられた日本文化の価値を発見し➡ 358 00:35:22,253 --> 00:35:28,259 それを太郎さんが論じて 私が原稿に起こしていった> 359 00:35:33,798 --> 00:35:37,669 <壁画や モニュメント 文字のデザインといった➡ 360 00:35:37,669 --> 00:35:40,405 誰もが タダで見られるような仕事に➡ 361 00:35:40,405 --> 00:35:43,775 ますます 太郎さんは打ち込んでいった> 362 00:35:43,775 --> 00:35:55,120 ♬~ 363 00:35:55,120 --> 00:35:58,156 下の方は 黄色がいいんじゃない? うん! 364 00:35:58,156 --> 00:36:10,068 ♬~ 365 00:36:10,068 --> 00:36:12,270 <そして…> 366 00:36:17,375 --> 00:36:21,746 (アナウンサー)「日本万国博覧会まで いよいよ あと3年。➡ 367 00:36:21,746 --> 00:36:23,682 大阪 千里の開催地では➡ 368 00:36:23,682 --> 00:36:28,086 今 急ピッチで その建設が 行われようとしています」。 369 00:36:28,086 --> 00:36:31,389 (坂崎康造) 我が国はですね 戦後の焼け跡から➡ 370 00:36:31,389 --> 00:36:33,324 目覚ましい復興を遂げ➡ 371 00:36:33,324 --> 00:36:38,263 経済においては 世界の強国に 肩を並べるほど 成長いたしました。 372 00:36:38,263 --> 00:36:44,803 この度 決まりました 万博のテーマである 「人類の進歩と調和」。 373 00:36:44,803 --> 00:36:48,807 これは まさに 日本の使命であります。 374 00:36:48,807 --> 00:36:55,313 (記者)「今から3年で そのテーマを 表すような 何かシンボリックなものが➡ 375 00:36:55,313 --> 00:36:59,484 本当に つくれますか?」。 「そりゃ つくるんだよ。➡ 376 00:36:59,484 --> 00:37:02,921 そのために 今年の1月に テーマ館の建設と➡ 377 00:37:02,921 --> 00:37:07,158 プロデューサーを立てることを 決めたばかりなんだから」。 378 00:37:07,158 --> 00:37:11,930 (藤川昇一) 先生 お願いがあります。➡ 379 00:37:11,930 --> 00:37:16,735 万博のテーマプロデューサーを 引き受けてもらえないでしょうか? 380 00:37:19,771 --> 00:37:22,574 プロデューサー? はい! 381 00:37:22,574 --> 00:37:25,143 もはや 先生以外には 誰も考えておりません。 382 00:37:25,143 --> 00:37:28,079 時間がないからって やけっぱちになってんじゃないのか? 383 00:37:28,079 --> 00:37:30,181 なってません! 384 00:37:33,485 --> 00:37:35,420 そうなの? 385 00:37:35,420 --> 00:37:41,559 <日本万国博覧会協会は 反体制アバンギャルドの岡本太郎に➡ 386 00:37:41,559 --> 00:37:44,796 なぜか 白羽の矢を立てたのだ> 387 00:37:44,796 --> 00:37:47,365 (小松左京) そりゃ駄目ですよ 太郎さん。 388 00:37:47,365 --> 00:37:51,336 あの協会相手じゃ 満身創痍になりますよ。 389 00:37:51,336 --> 00:37:56,975 そうか。 誰に聞いても反対するんだよ。 390 00:37:56,975 --> 00:37:58,977 ☎(小松)そりゃそうでしょう。 391 00:37:58,977 --> 00:38:04,115 世の中 どちらかというと 全共闘が代表するように➡ 392 00:38:04,115 --> 00:38:09,988 万博には反対 反博のムードが 高まってますからね。➡ 393 00:38:09,988 --> 00:38:14,192 アバンギャルドの岡本太郎が 引き受けでもしたら➡ 394 00:38:14,192 --> 00:38:18,096 裏切り者にされかねませんよ! 395 00:38:18,096 --> 00:38:20,698 (階段から下りてくる足音) 396 00:38:22,901 --> 00:38:26,404 太郎さん やるんですね。 397 00:38:31,209 --> 00:38:33,912 やらないんですか? 398 00:38:39,250 --> 00:38:43,855 敏子は どうする? え? 399 00:38:43,855 --> 00:38:51,062 もし これが失敗したら 今度こそ 岡本太郎は終わるかもしれないよ。 400 00:38:51,062 --> 00:38:53,565 俺は そういうやり方で ずっと やってきたから➡ 401 00:38:53,565 --> 00:38:58,770 それでも構わんが 何も残らない。 402 00:38:58,770 --> 00:39:01,472 お前が不憫だ。 403 00:39:03,608 --> 00:39:11,115 どうして… 私の どこが不憫なんですか? 404 00:39:14,385 --> 00:39:19,591 岡本太郎を殺させやしませんよ。 殺すなら 私が殺します! 405 00:39:22,760 --> 00:39:27,632 そうか。 そうです! 406 00:39:27,632 --> 00:39:33,137 敏子 もし 俺のやり方で この万博をやり抜けば➡ 407 00:39:33,137 --> 00:39:36,874 「ああ 俺もやろう。 私も」というやつらが わ~っと現れて➡ 408 00:39:36,874 --> 00:39:40,445 幾何級数的に増えてくるだろう。 409 00:39:40,445 --> 00:39:42,413 そういう日本を創りたいんだ。 410 00:39:42,413 --> 00:39:49,020 ♬~ 411 00:39:49,020 --> 00:39:54,826 え~ それでは テーマプロデューサーに 就任されました岡本太郎さんに➡ 412 00:39:54,826 --> 00:39:59,764 万博への抱負を 語っていただきたいと思います。 413 00:39:59,764 --> 00:40:07,538 (拍手) 414 00:40:07,538 --> 00:40:13,211 はじめに 私は この万博のテーマに反対である。 415 00:40:13,211 --> 00:40:18,483 (どよめき) 416 00:40:18,483 --> 00:40:21,919 「人類の進歩と調和」なんて くそ食らえだ! 417 00:40:21,919 --> 00:40:25,790 人類は 進歩なんかしていない! 418 00:40:25,790 --> 00:40:32,397 それでは 万博のプロデューサーを 引き受けた理由は何ですか? 419 00:40:32,397 --> 00:40:39,504 危険だからだ! 人間は生きる瞬間 瞬間で 自分の進むべき道を選ぶ。 420 00:40:39,504 --> 00:40:41,572 その時 私は いつだって➡ 421 00:40:41,572 --> 00:40:46,277 まずいと判断する方 危険な方に 懸けることにしている。 422 00:40:46,277 --> 00:40:50,615 極端な言い方をすれば 己を滅びに導く というより➡ 423 00:40:50,615 --> 00:40:56,621 自分を死に直面させる方向 黒い道を選ぶということだ…。 424 00:40:59,924 --> 00:41:05,129 無難な道を選ぶくらいなら 私は 生きる死を選ぶ。 425 00:41:05,129 --> 00:41:07,632 それが 私の生き方の筋だ! 426 00:41:09,801 --> 00:41:11,836 できたぞ! 427 00:41:11,836 --> 00:41:18,376 ♬~ 428 00:41:18,376 --> 00:41:21,813 なんだ これは…! 429 00:41:21,813 --> 00:41:28,820 ベラボーだ! これで万博と闘ってやる! 430 00:41:33,257 --> 00:41:35,259 「その時 私は いつだって➡ 431 00:41:35,259 --> 00:41:39,964 まずいと判断する方 危険な方に 懸けることにしている。➡ 432 00:41:39,964 --> 00:41:43,968 それが 私の生き方の筋だ!」。 433 00:41:43,968 --> 00:41:46,838 (丹下健三)我々が構想する このシンボルゾーンに➡ 434 00:41:46,838 --> 00:41:50,141 何かしら テーマ展示が作られるかもしれない。➡ 435 00:41:50,141 --> 00:41:55,012 我々は よくよく注意して それを迎え撃たねばならないよ。 436 00:41:55,012 --> 00:41:59,117 岡本太郎は 何をしでかすか分からないからね。 437 00:42:02,587 --> 00:42:05,089 (丹下)万博を 木に例えると➡ 438 00:42:05,089 --> 00:42:07,925 このシンボルゾーンは 会場全体の幹に相当し➡ 439 00:42:07,925 --> 00:42:13,297 そこから延びていく装置道路 いわゆる「動く歩道」が枝で➡ 440 00:42:13,297 --> 00:42:17,869 各国のパビリオンが 色とりどりの花 というふうに考えてるんだ。 441 00:42:17,869 --> 00:42:23,674 この 全体を覆ってる 屋根のお化けみたいなものは 何だ? 442 00:42:23,674 --> 00:42:28,513 大屋根ですよ。 世界中の人々が 集まってくる このシンボルゾーンは➡ 443 00:42:28,513 --> 00:42:31,182 一つ屋根の下にあるというわけ。 444 00:42:31,182 --> 00:42:58,609 ♬~ 445 00:42:58,609 --> 00:43:01,379 どうだ? 446 00:43:01,379 --> 00:43:04,682 いいだろう? 447 00:43:04,682 --> 00:43:12,056 ♬~ 448 00:43:12,056 --> 00:43:15,359 大屋根を壊す気か? 449 00:43:15,359 --> 00:43:18,262 我々が積み上げてきたプランは 一体どうなるんだ? 450 00:43:18,262 --> 00:43:22,133 壊すんじゃない 調和だよ。 451 00:43:22,133 --> 00:43:25,603 君のモダニズムと 僕のベラボーが ぶつかり合うことで➡ 452 00:43:25,603 --> 00:43:27,538 お互いが生きてくるんだ。 453 00:43:27,538 --> 00:43:29,807 引き裂かれる力が強ければ強いほど➡ 454 00:43:29,807 --> 00:43:33,911 逆に お互いが強く輝くんだよ。 455 00:43:52,930 --> 00:43:56,801 敏子さんじゃない? 456 00:43:56,801 --> 00:43:59,704 お久しぶり! 457 00:43:59,704 --> 00:44:02,206 美喜子さん? 458 00:44:02,206 --> 00:44:06,077 そういう画壇に 一人で 闘いを挑んでいるからに ほかならない! 459 00:44:06,077 --> 00:44:08,045 (拍手) 460 00:44:08,045 --> 00:44:13,351 会の名は 平野さんの発案で 「原始」というんです。 461 00:44:13,351 --> 00:44:16,587 (美喜子)万博で すごく大変なんじゃない? 462 00:44:16,587 --> 00:44:22,393 大変というか とても やり甲斐はあるわね。 463 00:44:22,393 --> 00:44:26,597 でも… ほら この間 新聞で発表されてたじゃない? 464 00:44:26,597 --> 00:44:31,002 何だか 随分 変わったものを 作ろうとしてるんでしょ? 465 00:44:31,002 --> 00:44:36,908 うちの人なんか 「何だこれは 牛乳瓶の怪獣か?」ですって。 466 00:44:38,743 --> 00:44:41,412 世間からも 叩かれてるじゃないの。➡ 467 00:44:41,412 --> 00:44:44,115 税金の無駄遣いだって。 468 00:44:44,115 --> 00:44:47,018 そんなことは 百も承知よ。 469 00:44:47,018 --> 00:44:50,721 覚悟の上でやっていることですから。 470 00:44:50,721 --> 00:44:53,024 そういうものを まるっきり蹴飛ばした➡ 471 00:44:53,024 --> 00:44:59,297 ベラボーなものを作ろうっていうのが 私たちの信条だから。 472 00:44:59,297 --> 00:45:03,034 私は 少し腹を立ててるのよ。 岡本太郎に。➡ 473 00:45:03,034 --> 00:45:05,770 あなたのことを縛りつけるだけで➡ 474 00:45:05,770 --> 00:45:08,339 奥さんにだって してもらえてないんでしょ? 475 00:45:08,339 --> 00:45:11,676 そんなこと 思ってないもの。 476 00:45:11,676 --> 00:45:14,979 (美喜子)じゃあ あなたの幸せって何なの? 477 00:45:16,847 --> 00:45:20,685 独身のまま子供も産まず 岡本太郎に尽くして➡ 478 00:45:20,685 --> 00:45:24,455 あなたには一体 何が残るっていうのよ。 479 00:45:24,455 --> 00:45:38,035 ♬~ 480 00:45:38,035 --> 00:45:41,238 (丹下)どうぞ。 すいません。 481 00:45:45,076 --> 00:45:49,280 (丹下)それで 僕に聞きたいことというのは? 482 00:45:49,280 --> 00:45:55,086 はい。 あの…。 483 00:45:55,086 --> 00:45:59,890 先生は 本当に あれでいいと思っていますか? 484 00:45:59,890 --> 00:46:04,662 あの塔の形で…。 485 00:46:04,662 --> 00:46:07,999 敏子さんは 気に入らないの? 486 00:46:07,999 --> 00:46:13,304 そうじゃありませんが 少し不安になるんです。 487 00:46:19,243 --> 00:46:25,049 はっきり言って 僕は あの塔が面白くないよ。➡ 488 00:46:25,049 --> 00:46:29,120 これで 私が当初立てた 大屋根のプランは➡ 489 00:46:29,120 --> 00:46:32,857 人々の印象には 全く残らんと思うからね。 490 00:46:32,857 --> 00:46:38,796 あれは紛れもなく 太郎さんにしか作れないものだよ。➡ 491 00:46:38,796 --> 00:46:43,067 あれを見て 世間は笑うかもしれない。➡ 492 00:46:43,067 --> 00:46:47,938 それだけ太郎さんは とんでもないものを 作ろうとしてるからね。➡ 493 00:46:47,938 --> 00:46:52,743 敏子さんは そのことが信じられない? 494 00:46:52,743 --> 00:46:55,513 いいえ 信じてます。 495 00:46:55,513 --> 00:46:59,383 なら こんなことを わざわざ 私に言わせるために来たの?➡ 496 00:46:59,383 --> 00:47:04,322 私に負けたとでも 言わせたいのかな?いいえ! 497 00:47:04,322 --> 00:47:13,030 ♬~ 498 00:47:19,837 --> 00:47:23,974 ☎ 499 00:47:23,974 --> 00:47:26,677 ああ いいよ。 すいません。 500 00:47:26,677 --> 00:47:31,115 はい 岡本。 …ああ 君か。 (せきばらい) 501 00:47:31,115 --> 00:47:35,453 うん… うん…。 502 00:47:35,453 --> 00:47:39,256 分かった。 やるよ。 503 00:47:41,358 --> 00:47:46,130 おい 「藝術新報」で連載始めるぞ。 504 00:47:46,130 --> 00:47:50,701 引き受けたんですか? 万博で寝る時間もない この時期に? 505 00:47:50,701 --> 00:47:53,504 万博のおかげで 書きたいことが たまってんだよ。 506 00:47:53,504 --> 00:47:56,006 それに…。 507 00:48:00,711 --> 00:48:33,477 ♬~ 508 00:48:33,477 --> 00:48:36,914 もう一つの太陽の顔? 509 00:48:36,914 --> 00:48:41,385 太陽にだって光もあれば影もある。 510 00:48:41,385 --> 00:48:45,890 光が生きれば 影だって生きてくる。 511 00:48:51,695 --> 00:48:55,866 同じように 影だって燃えてるんだよ。 512 00:48:55,866 --> 00:49:23,928 ♬~ 513 00:49:23,928 --> 00:49:27,865 丹下に くだらんことを聞くんじゃない。 514 00:49:27,865 --> 00:49:35,372 ♬~ 515 00:49:50,120 --> 00:49:56,427 <万博会場に完成した塔を 私は初めて見た> 516 00:50:00,264 --> 00:50:25,055 ♬~ 517 00:50:25,055 --> 00:50:33,130 <私には この「太陽の塔」が まるで 成長した我が子のように思えた> 518 00:50:33,130 --> 00:50:38,936 おい 何やってるんだ。 519 00:50:44,508 --> 00:50:47,211 何 泣いてるんだよ。 520 00:50:47,211 --> 00:50:51,081 だって ベラボーなんだもん。 521 00:50:51,081 --> 00:50:55,653 あんまり ベラボーなんだもん。 522 00:50:55,653 --> 00:51:02,092 そうか… そうか そうか。 な! いいだろう? 523 00:51:02,092 --> 00:51:04,795 いい! すごくいい! 524 00:51:04,795 --> 00:51:09,233 世界中の どこ探したって こんな芸術ないわよ! 525 00:51:09,233 --> 00:51:12,870 そうか… そうか。 526 00:51:12,870 --> 00:51:24,381 ♬~ 527 00:51:24,381 --> 00:51:29,820 (アナウンサー)「昭和45年3月14日。 アジアで初めての万国博は➡ 528 00:51:29,820 --> 00:51:36,026 華やかに その幕を開けました。 史上最高の77か国が参加。➡ 529 00:51:36,026 --> 00:51:39,730 330万㎡の会場を目指し➡ 530 00:51:39,730 --> 00:51:45,069 まさに 民族の大移動が始まりました」。 531 00:51:45,069 --> 00:51:53,310 ♬~ 532 00:51:53,310 --> 00:51:57,715 (アナウンサー)「日本万国博のテーマ 『人類の進歩と調和』は➡ 533 00:51:57,715 --> 00:52:01,585 『太陽の塔』を中心に展示されました」。 534 00:52:01,585 --> 00:52:12,696 ♬~ 535 00:53:00,244 --> 00:53:02,212 お疲れさまでした。 お疲れさまでした。 536 00:53:02,212 --> 00:53:04,214 お疲れさまでした。 537 00:53:11,455 --> 00:53:14,458 (倉田清作)敏子さん。 538 00:53:14,458 --> 00:53:17,695 表の彫刻は もう大丈夫です。 539 00:53:17,695 --> 00:53:20,898 私は 今日で辞めさせてもらいます。 540 00:53:20,898 --> 00:53:25,102 そうだったわね。 ご苦労さま。 541 00:53:25,102 --> 00:53:28,505 もう どのくらいになる? 542 00:53:28,505 --> 00:53:33,077 ここで お世話になるようになったのは 万博の翌年からですから➡ 543 00:53:33,077 --> 00:53:35,979 もう 25年近いですよ。➡ 544 00:53:35,979 --> 00:53:40,617 先生の作品は 今も至る所に たくさん残ってますけど➡ 545 00:53:40,617 --> 00:53:43,921 あの「太陽の塔」を残せたことは 本当に よかったですね。 546 00:53:43,921 --> 00:53:46,123 そうね。 547 00:53:48,425 --> 00:53:51,929 それじゃあ 皆さん 聞いてくださ~い。 548 00:53:51,929 --> 00:53:56,500 本日 万国博後処理委員会の方から 報告がありまして➡ 549 00:53:56,500 --> 00:54:00,337 あの「太陽の塔」が 万博の記念建造物として➡ 550 00:54:00,337 --> 00:54:02,272 保存されることが決定しました! 551 00:54:02,272 --> 00:54:04,341 (歓声) 552 00:54:04,341 --> 00:54:08,078 乾杯! (一同)乾杯! 553 00:54:08,078 --> 00:54:19,456 ♬~(歌声) 554 00:54:19,456 --> 00:54:23,460 こういうものを 世界に たくさん置けるといいわね。 555 00:54:23,460 --> 00:54:27,898 そうしたら 世界中のピープルが変わるわよ~。 556 00:54:27,898 --> 00:54:31,368 そりゃまた 大きな夢ですね。 どうして? 557 00:54:31,368 --> 00:54:35,339 そんなに大きくないわよ。 558 00:54:35,339 --> 00:54:39,710 もともと 岡本太郎のような地球人は いないのよ。 559 00:54:39,710 --> 00:54:44,214 その存在を もっと知らしめなきゃ。 560 00:54:45,916 --> 00:54:49,853 太郎さん 明日が いよいよ コマーシャルの撮影なんだけど➡ 561 00:54:49,853 --> 00:54:52,156 何を しゃべりましょうか? 562 00:54:52,156 --> 00:54:55,025 コマーシャル? し… 知らないよ そんなの。 563 00:54:55,025 --> 00:54:57,628 前に言ったじゃありませんか。 564 00:54:57,628 --> 00:55:00,264 な… 何で そんなこと やらなきゃいけないんだ! 565 00:55:00,264 --> 00:55:02,199 そんなことやって どうするんだよ! 566 00:55:02,199 --> 00:55:04,134 また体制に アバンギャルドが取り込まれたって➡ 567 00:55:04,134 --> 00:55:07,037 悪口言われるだけだろう。 言われて何が悪いんですか。 568 00:55:07,037 --> 00:55:09,106 そんなやつには 言わせておけばいいのよ。 569 00:55:09,106 --> 00:55:15,078 岡本太郎は ピープルに 影響を与えてこそじゃありませんか。 570 00:55:15,078 --> 00:55:19,349 それじゃあ 太郎さんに お聞きしますが➡ 571 00:55:19,349 --> 00:55:23,020 芸術とは何ですか? 572 00:55:23,020 --> 00:55:26,690 そりゃ… 爆発だよ。 芸術は爆発だ。 573 00:55:26,690 --> 00:55:30,561 それですよ。 それ いいじゃないですか! 574 00:55:30,561 --> 00:55:35,098 そうか? それこそ 岡本太郎の言葉ですよ。 575 00:55:35,098 --> 00:55:38,068 芸術は爆発だ。 いい。 576 00:55:38,068 --> 00:55:41,471 芸術は爆発だ! もう 大好き! 577 00:55:41,471 --> 00:55:55,118 ♬~ 578 00:55:55,118 --> 00:55:58,989 芸術は爆発だ! 579 00:55:58,989 --> 00:56:03,994 <万博以後 岡本太郎を知らぬ者は少ない> 580 00:56:08,899 --> 00:56:10,834 おい。 581 00:56:10,834 --> 00:56:14,571 何やってんだ。 どけ! どけ! どけ! ちまちま やってんじゃない。 582 00:56:14,571 --> 00:56:17,908 これは こうやるんだ! 583 00:56:17,908 --> 00:56:19,843 なんだ これは? 584 00:56:19,843 --> 00:56:24,581 <しかし 岡本太郎の本質を知る者は少ない> 585 00:56:24,581 --> 00:56:27,084 あら いいわね きれいだわね なんていうのは➡ 586 00:56:27,084 --> 00:56:29,019 ただ きれいなだけじゃなくて➡ 587 00:56:29,019 --> 00:56:32,890 きれいと美しいというのは 正反対なんだな。 588 00:56:32,890 --> 00:56:36,360 なんだ これは!? 醜悪だ! うわ~っていうものが…。 589 00:56:36,360 --> 00:56:38,795 「なんだ これは!? 醜悪だ!➡ 590 00:56:38,795 --> 00:56:41,598 うわ~っていうものが 美しいんであって➡ 591 00:56:41,598 --> 00:56:46,169 逆に あら いいわね きれいだわねっていうのは…」。 592 00:56:46,169 --> 00:56:50,007 ねえ もう少し 普通に話してもいいんじゃない? 593 00:56:50,007 --> 00:56:53,010 せっかく本質的なことを 話してるのに➡ 594 00:56:53,010 --> 00:56:56,146 何だか おかしなおじさんが いるなあって➡ 595 00:56:56,146 --> 00:56:59,816 そこだけが伝わってしまう 可能性もあるでしょう? 596 00:56:59,816 --> 00:57:01,752 それで いいんだよ。 597 00:57:01,752 --> 00:57:05,989 普通に伝わるってことは 何も残らないってことだ。 598 00:57:05,989 --> 00:57:11,561 伝え方は生き方だ。 生き方こそが芸術だ。 599 00:57:11,561 --> 00:57:17,000 俺がテレビに出るということは 俺が作品を作るのと同じことなんだよ。 600 00:57:17,000 --> 00:57:19,569 だからこうやって原色を使うんだ。 601 00:57:19,569 --> 00:57:21,972 なんだ これは!? って思わせるのね。 602 00:57:21,972 --> 00:57:25,342 そうだ。 敏子の言ったとおりだよ。 603 00:57:25,342 --> 00:57:28,845 ピープルに影響を与えてこその 岡本太郎だ。 604 00:57:28,845 --> 00:57:32,683 バカと言われようが 道化と言われようが 俺は構わん。 605 00:57:32,683 --> 00:57:37,254 そこから何人かは 本質に たどりつくだろう。 606 00:57:37,254 --> 00:57:41,591 そのための生贄になるんだ。 607 00:57:41,591 --> 00:57:45,896 血を流しても にっこり笑ってみせるんだよ。 608 00:57:45,896 --> 00:57:50,300 それが 岡本太郎の闘いだ。 609 00:58:02,646 --> 00:58:05,248 太郎さん! 610 00:58:05,248 --> 00:58:09,419 どうしたの? また転んだんですか? 611 00:58:09,419 --> 00:58:11,755 大丈夫? 大丈夫だ。 612 00:58:11,755 --> 00:58:14,191 昨日は ちょっと 飲み過ぎちまったみたいだな。 613 00:58:14,191 --> 00:58:17,961 パーキンソン病? 614 00:58:17,961 --> 00:58:22,666 (医師)突然 前のめりに倒れたりするのも そのせいです。➡ 615 00:58:22,666 --> 00:58:26,636 運動の機能を調節するドーパミンが 出なくなってるので➡ 616 00:58:26,636 --> 00:58:32,342 つま先が すっと出ずに 重心が前に傾くんです。 617 00:58:32,342 --> 00:58:37,080 治るんですよね? 618 00:58:37,080 --> 00:58:41,685 (医師)残念ながら原因不明の難病です。 619 00:58:49,793 --> 00:58:52,262 赤! 赤だ! 620 00:58:52,262 --> 00:58:55,165 はい。 621 00:59:56,126 --> 01:00:05,135 (うなり声) 622 01:00:05,135 --> 01:00:28,058 ♬~ 623 01:00:28,058 --> 01:00:33,930 俺が… 岡本太郎じゃなくなったら➡ 624 01:00:33,930 --> 01:00:37,534 どうする? 625 01:00:40,670 --> 01:00:48,278 その時は 私が殺してあげます。 626 01:00:52,616 --> 01:00:55,852 大丈夫。 627 01:00:55,852 --> 01:01:01,658 体が動かなくなっても 声が出なくなっても➡ 628 01:01:01,658 --> 01:01:08,465 岡本太郎の中にある神聖なる火は 消えてないでしょ? 629 01:01:08,465 --> 01:01:12,269 私も消さないから…。 630 01:01:12,269 --> 01:01:16,773 一緒に闘いましょ。 631 01:01:21,478 --> 01:01:23,813 大丈夫よ! 632 01:01:23,813 --> 01:01:46,903 ♬~ 633 01:01:49,639 --> 01:01:52,242 (プロデューサー) あっ おはようございます。 634 01:01:52,242 --> 01:01:55,145 おはようございます。 よろしくお願いします。 635 01:01:55,145 --> 01:01:57,981 先生 お体 大丈夫ですか? 636 01:01:57,981 --> 01:02:01,785 大丈夫ですよ。 本番になれば。 ああ…。 637 01:02:01,785 --> 01:02:08,258 あの 早速なんですが 先生は シャンソンがお得意だと聞いたもので➡ 638 01:02:08,258 --> 01:02:11,161 番組の冒頭で 是非1曲 歌ってほしいんですが➡ 639 01:02:11,161 --> 01:02:14,464 よろしいでしょうか? 640 01:02:14,464 --> 01:02:18,668 先生? 先生。 641 01:02:18,668 --> 01:02:21,271 わっ。 わっ。 642 01:02:21,271 --> 01:02:23,707 わっ! わっ! 643 01:02:23,707 --> 01:02:26,276 アッハハハハ 大丈夫ですか? 644 01:02:26,276 --> 01:02:34,918 ♬~ 645 01:02:34,918 --> 01:02:53,003 ♬~ (太郎のシャンソン) 646 01:02:53,003 --> 01:03:05,649 ♬~ 647 01:03:05,649 --> 01:03:07,651 わっ! 648 01:03:07,651 --> 01:03:10,754 (観客の笑い声) 649 01:03:10,754 --> 01:03:12,756 わっ! (笑い声) 650 01:03:16,393 --> 01:03:20,697 わ~! 651 01:03:28,705 --> 01:03:31,808 (せきこみ) 652 01:03:34,110 --> 01:03:37,681 ☎(丹下)どう見てもおかしいですよ あれは。 653 01:03:37,681 --> 01:03:41,551 そうでしょうか。 654 01:03:41,551 --> 01:03:46,389 ☎(丹下)どうして あんなテレビに出すんですか?➡ 655 01:03:46,389 --> 01:03:49,726 創作にだけ打ち込めば いいじゃないですか。 656 01:03:49,726 --> 01:03:54,197 もう十分じゃないの? 657 01:03:54,197 --> 01:03:58,702 テレビに出ることも 岡本太郎には創作なんです。 658 01:04:00,437 --> 01:04:04,874 あんな太郎さん 見せないでくれよ。 659 01:04:04,874 --> 01:04:10,380 岡本太郎は もっと尊敬されていいはずだ。 660 01:04:12,115 --> 01:04:15,118 (電話が切れる音) 661 01:04:15,118 --> 01:04:37,607 ♬~ 662 01:04:37,607 --> 01:04:43,780 俺が… 岡本太郎じゃなくなったら➡ 663 01:04:43,780 --> 01:04:48,051 どうする? 664 01:04:48,051 --> 01:05:16,012 ♬~ 665 01:05:16,012 --> 01:05:18,648 (彫刻制作スタッフ)どうですかね? (倉田)うん。➡ 666 01:05:18,648 --> 01:05:21,851 そんなもんだね。OK。 667 01:05:25,421 --> 01:05:29,259 違う 違う。 ここは もっと ボリュームをつけてほしいのよ。 668 01:05:29,259 --> 01:05:31,327 この膨らみが 力になってるんだから。 669 01:05:31,327 --> 01:05:34,164 これじゃ TAROの作品じゃないわよ。 670 01:05:34,164 --> 01:05:36,100 分かりました。 671 01:05:36,100 --> 01:05:40,937 強調して。 何なんですかねえ。➡ 672 01:05:40,937 --> 01:05:43,439 あの人に何が分かるんですか。 おい! 673 01:05:46,109 --> 01:05:49,712 <私たちは 闘い続けた。➡ 674 01:05:49,712 --> 01:05:52,115 だけど 太郎さんは➡ 675 01:05:52,115 --> 01:05:58,822 そのうち 目を開けていることも できなくなった> 676 01:06:09,365 --> 01:06:13,970 (倉田)先生の作品は 今も至る所に たくさん残ってますけど➡ 677 01:06:13,970 --> 01:06:19,476 あの「太陽の塔」を残せたことは 本当によかったですね。 678 01:06:30,854 --> 01:06:34,457 私 一度 聞いたことがあるんですよ。 679 01:06:34,457 --> 01:06:38,328 ほら あの塔の背中にある 黒い太陽の顔。 680 01:06:38,328 --> 01:06:42,432 あれは 岡本かの子さんじゃないかって。 681 01:06:46,002 --> 01:06:49,572 そうしたら 太郎さん 否定しなかったですよ。 682 01:06:49,572 --> 01:06:52,876 やっぱり そうかって思いました。 683 01:06:56,145 --> 01:07:03,353 それじゃ また顔を出します。 先生に よろしくお伝えください。 684 01:07:03,353 --> 01:07:05,288 さよなら。 685 01:07:05,288 --> 01:07:08,291 さよなら。 686 01:07:27,911 --> 01:07:29,913 太郎さん。 687 01:08:18,761 --> 01:08:20,730 太郎さん! 688 01:08:20,730 --> 01:08:22,932 わっ! 689 01:08:25,535 --> 01:08:28,137 わっ! 690 01:08:28,137 --> 01:08:30,139 わっ! 691 01:08:32,342 --> 01:08:35,011 わっ! 692 01:08:35,011 --> 01:08:38,448 わっ…。 693 01:08:38,448 --> 01:08:40,650 わっ…。 694 01:08:47,223 --> 01:08:50,627 もう いいから…。 695 01:08:53,863 --> 01:09:00,036 もう… 消して。 696 01:09:00,036 --> 01:10:24,520 ♬~ 697 01:10:24,520 --> 01:10:27,023  回想 何やってるんだ。 698 01:10:29,225 --> 01:10:33,496 何 泣いてるんだよ。 699 01:10:33,496 --> 01:10:37,734 だって ベラボーなんだもん。 700 01:10:37,734 --> 01:10:41,904 あんまり ベラボーなんだもん。 701 01:10:41,904 --> 01:10:48,311 そうか… そうか そうか。 な! いいだろう? 702 01:11:00,323 --> 01:11:29,986 ♬~ 703 01:11:29,986 --> 01:11:35,725 (鐘の音) 704 01:11:35,725 --> 01:11:38,661 私は 秘書として 50年近くも➡ 705 01:11:38,661 --> 01:11:41,497 岡本太郎の仕事を 手伝ってきましたけど➡ 706 01:11:41,497 --> 01:11:44,300 ほんとに あっという間だったわ。 707 01:11:44,300 --> 01:11:47,603 だって 太郎さんには 瞬間 瞬間しかないんですもの。 708 01:11:47,603 --> 01:11:50,973 もう それに ついていくのが 精いっぱいで。 709 01:11:50,973 --> 01:11:55,244 でも 私ほど幸せな女も いないと思うわね。 710 01:11:55,244 --> 01:12:01,050 だって あんなすてきな男の子と ずっと一緒にいられたんですもの。 711 01:12:01,050 --> 01:12:03,953 これって 奇跡だと思わない? 712 01:12:03,953 --> 01:12:06,856 (インタビュアー)いなくなって さみしくないですか? 713 01:12:06,856 --> 01:12:09,091 ちっとも! 714 01:12:09,091 --> 01:12:14,297 だって岡本太郎は いるのよ ここに。 そうでしょ? 715 01:12:16,599 --> 01:12:20,469 なんで 「いない」なんて言うの? 716 01:12:20,469 --> 01:12:25,174 今も一緒に 闘ってるのよ。 717 01:12:25,174 --> 01:12:29,779 まだまだ 岡本太郎は この世界に必要なのよ。 718 01:12:29,779 --> 01:12:35,484 だから まだ何にも終わってないのよ! 719 01:12:35,484 --> 01:12:57,273 ♬~