1 00:00:59,000 --> 00:01:04,000 [東京 広尾にあるすし店にも 春がやって来ました] 2 00:01:07,000 --> 00:01:12,000 [今年も 板前になりたいという 若者が一人] 3 00:01:12,000 --> 00:01:15,000 ( ノック ) ( 男性 ) はい 。 4 00:01:15,000 --> 00:01:18,000 失礼します 。 5 00:01:18,000 --> 00:01:23,000 [ハローワークで この店を紹介されたそうです] 6 00:01:26,000 --> 00:01:29,000 えっと… 。 7 00:01:33,000 --> 00:01:35,000 気合 入ってるね 。 8 00:01:35,000 --> 00:01:37,000 でも ちょっと甘くなってるね パンチが 。 9 00:01:47,000 --> 00:01:51,000 [愛知県から来た 17 歳の少年] 10 00:01:53,000 --> 00:01:56,000 ( 阿部 ) ハハハ… 。 11 00:02:11,000 --> 00:02:13,000 ( 男性 ) 間違いないです 。 12 00:02:19,000 --> 00:02:23,000 [阿部さんのお店は 都内に7店舗] 13 00:02:25,000 --> 00:02:27,000 ( 従業員 ) いらっしゃいませ! 14 00:02:30,000 --> 00:02:35,000 [どの店も 大勢のお客でにぎわう 人気店です] 15 00:02:35,000 --> 00:02:39,000 [年商は 実に 16 億円] 16 00:02:42,000 --> 00:02:45,000 [そんな阿部寿司を 支えているのは 17 00:02:45,000 --> 00:02:47,000 50 人の板前たち] 18 00:02:51,000 --> 00:02:57,000 [それぞれの人生を背負って すしを握っています] 19 00:02:57,000 --> 00:03:01,000 [外国人の見習に…] 20 00:03:01,000 --> 00:03:05,000 [ちょっと 訳ありそうな人も] 21 00:03:08,000 --> 00:03:11,000 [さらに 中には] 22 00:03:14,000 --> 00:03:16,000 [お金を貸してほしいという 23 00:03:16,000 --> 00:03:18,000 板前や…] 24 00:03:18,000 --> 00:03:20,000 ( 阿部 ) 開けて 。 25 00:03:20,000 --> 00:03:23,000 [出社拒否になってしまった 板前も] 26 00:03:29,000 --> 00:03:33,000 [その面倒を見るのも 阿部さんの仕事です] 27 00:03:33,000 --> 00:03:37,000 ( サワ ) あしたじゃ駄目ですか? ( 阿部 ) 駄目 お前のために駄目! 28 00:03:37,000 --> 00:03:41,000 頑張れ! 頑張れ! 大丈夫 一緒に行くから 。 29 00:04:02,000 --> 00:04:06,000 [そんな阿部さんが 真面目な仕事ぶりを認めている 30 00:04:06,000 --> 00:04:09,000 一人の板前見習がいました] 31 00:05:03,000 --> 00:05:06,000 [日本の調理師学校で 2年間学んだ後 32 00:05:06,000 --> 00:05:12,000 特定技能実習生として 阿部さんの店に入社] 33 00:05:12,000 --> 00:05:16,000 [主に ホールで 接客を担当しています] 34 00:05:24,000 --> 00:05:28,000 [今では 後輩の指導もできるように] 35 00:05:47,000 --> 00:05:49,000 ( チャン ) ほとんど… 。 36 00:06:05,000 --> 00:06:07,000 [チャンさんが 暮らしているのは 37 00:06:07,000 --> 00:06:12,000 店の近くにある会社の寮] 38 00:06:12,000 --> 00:06:16,000 (スタッフ) こんにちは いいですか? ありがとうございます 。 39 00:06:19,000 --> 00:06:25,000 [一番奥にある6畳間が チャンさんの部屋です] 40 00:06:25,000 --> 00:06:27,000 (スタッフ) 今 大丈夫でしたか? ( チャン ) 大丈夫です 。 41 00:06:30,000 --> 00:06:33,000 [一日中 立ち仕事の チャンさんの楽しみが] 42 00:06:42,000 --> 00:06:46,000 [フリマアプリで買った マッサージ器] 43 00:06:50,000 --> 00:06:52,000 ( チャン ) 時々 これ 。 44 00:06:55,000 --> 00:06:58,000 [チャンさんオリジナルの 使い方も] 45 00:07:04,000 --> 00:07:07,000 ( チャン ) フフ… 。 46 00:07:19,000 --> 00:07:24,000 ( チャン ) これは… 。 47 00:07:35,000 --> 00:07:41,000 [ベトナムの家族と離れ この部屋で暮らし始めて5年] 48 00:07:44,000 --> 00:07:48,000 [古里には 一度しか帰れていません] 49 00:07:50,000 --> 00:07:53,000 [チャンさんのスマホには] 50 00:08:23,000 --> 00:08:25,000 ( チャン ) 自分のお店… 。 51 00:08:45,000 --> 00:08:47,000 (スタッフ) すごい お奇麗ですね 奥さん 。 52 00:08:47,000 --> 00:08:52,000 [妻と幼い子供のため 頑張っています] 53 00:08:59,000 --> 00:09:04,000 [そのチャンさんに まさかの出来事が起きたのです] 54 00:09:07,000 --> 00:09:12,000 [一方 日本の玄関口 成田空港には] 55 00:09:15,000 --> 00:09:18,000 [阿部さんの姿が] 56 00:09:18,000 --> 00:09:23,000 [この日 ある人たちを 迎えにきたのです] 57 00:09:26,000 --> 00:09:28,000 (スタッフ) これ 出発するときの? ( 阿部 ) そうそう 。 58 00:09:47,000 --> 00:09:49,000 そうですね 。 59 00:10:09,000 --> 00:10:12,000 [板前を志す若者が減る中 60 00:10:12,000 --> 00:10:16,000 海外からの見習組は 欠かせない戦力] 61 00:10:19,000 --> 00:10:24,000 [寮で生活を共にしながら 板前修業に励みます] 62 00:10:26,000 --> 00:10:31,000 [平均年齢 20 歳の 若い見習たち] 63 00:10:31,000 --> 00:10:35,000 [阿部さんは 彼らの親代わりでもあります] 64 00:10:40,000 --> 00:10:43,000 [そんな阿部さんが 暮らしているのは 65 00:10:43,000 --> 00:10:48,000 店に程近い 小さなワンルームマンション] 66 00:10:55,000 --> 00:11:00,000 [仕事が忙しく 家族がいる家に帰れないため 67 00:11:00,000 --> 00:11:03,000 この部屋を借りているそうです] 68 00:11:06,000 --> 00:11:09,000 [阿部さんが あるものを見せてくれました] 69 00:11:12,000 --> 00:11:17,000 [妻と 今は高校生になった 娘の写真です] 70 00:11:32,000 --> 00:11:38,000 [阿部さんは 8年の交際の末 30 歳で結婚] 71 00:11:40,000 --> 00:11:44,000 [出会いは 阿部さんの板前修業先でした] 72 00:11:44,000 --> 00:11:47,000 [アルバイトで働いていた ユキコさんを 73 00:11:47,000 --> 00:11:50,000 阿部さんが見初めたそうです] 74 00:11:52,000 --> 00:11:56,000 [その後 独立し がむしゃらに働く阿部さんに 75 00:11:56,000 --> 00:12:00,000 いつも寄り添っていたのが ユキコさんでした] 76 00:12:23,000 --> 00:12:26,000 [そんな ある日のことでした] 77 00:12:31,000 --> 00:12:33,000 [突然 阿部さんから 78 00:12:33,000 --> 00:12:37,000 話したいことがあると 連絡が入ったのです] 79 00:12:41,000 --> 00:12:44,000 [阿部さんの手には ある書類が] 80 00:12:44,000 --> 00:12:48,000 [それは 裁判所からのものでした] 81 00:13:07,000 --> 00:13:12,000 [そこに書かれていたのは あの チャンさんの名前] 82 00:13:17,000 --> 00:13:19,000 (スタッフ) どういうふうに言われた? 83 00:13:33,000 --> 00:13:36,000 [特殊詐欺に利用された 銀行口座は 84 00:13:36,000 --> 00:13:41,000 調理師学校に入学した 7年前に作ったものでした] 85 00:13:41,000 --> 00:13:45,000 [阿部寿司に入社後は 新しい口座を作ったため 86 00:13:45,000 --> 00:13:48,000 ずっと使っていなかったと いいます] 87 00:13:50,000 --> 00:13:54,000 [振込先となった口座の 持ち主であった チャンさんは 88 00:13:54,000 --> 00:13:57,000 加害者の一人として 被害額の一部 89 00:13:57,000 --> 00:14:02,000 およそ 250 万円の弁済を 求められていました] 90 00:14:06,000 --> 00:14:10,000 [なぜ こんなことにな っ てしまったのか] 91 00:14:12,000 --> 00:14:15,000 [阿部さんは この日 出勤前のチャンさんに 92 00:14:15,000 --> 00:14:18,000 事情を聴くことにしました] 93 00:15:22,000 --> 00:15:26,000 [ずっと前に なくしてしまった 銀行のキャッシュカードが 94 00:15:26,000 --> 00:15:30,000 不正に使われたと 勘違いしていたチャンさん] 95 00:15:32,000 --> 00:15:36,000 [自分が 事件の 当事者になっていることを 96 00:15:36,000 --> 00:15:38,000 初めて理解しました] 97 00:15:59,000 --> 00:16:05,000 [突然 請求された 250 万円もの大金] 98 00:16:08,000 --> 00:16:10,000 [チャンさんにとって 99 00:16:10,000 --> 00:16:13,000 とても 払える金額ではありません] 100 00:16:47,000 --> 00:16:53,000 [従業員にトラブルが起きたら 動かずにはいられない] 101 00:16:53,000 --> 00:16:56,000 [それが阿部さんです] 102 00:16:59,000 --> 00:17:01,000 [チャンさんと 一緒に向かったのは…] 103 00:17:03,000 --> 00:17:06,000 [法律事務所] 104 00:17:06,000 --> 00:17:08,000 ( 阿部 ) 阿部寿司です 。 105 00:17:23,000 --> 00:17:27,000 [この問題を 解決する方法はあるのか] 106 00:17:31,000 --> 00:17:33,000 [一方で 阿部さんには 107 00:17:33,000 --> 00:17:36,000 気になっていることが ありました] 108 00:17:55,000 --> 00:17:59,000 彼いわく… 。 109 00:17:59,000 --> 00:18:02,000 [なぜ チャンさんの銀行口座が 110 00:18:02,000 --> 00:18:06,000 特殊詐欺グループに 渡っていたのか] 111 00:18:06,000 --> 00:18:09,000 [一つの可能性を 捨てきれずにいたのです] 112 00:18:36,000 --> 00:18:39,000 [もし チャンさんが 特殊詐欺グループに 113 00:18:39,000 --> 00:18:42,000 使っていない銀行口座を 売っていたとしたら 114 00:18:42,000 --> 00:18:45,000 警察の取り調べを 受けているはず] 115 00:18:47,000 --> 00:18:51,000 [そうなれば 店を 休まざるを得なくなりますが 116 00:18:51,000 --> 00:18:56,000 チャンさんは これまで 無遅刻 無欠勤でした] 117 00:19:01,000 --> 00:19:05,000 [では なぜチャンさんに 事実確認もされないまま 118 00:19:05,000 --> 00:19:09,000 多額の弁済が 確定してしまったのか] 119 00:19:13,000 --> 00:19:16,000 [その理由を確かめたい] 120 00:19:19,000 --> 00:19:22,000 [阿部さんは 新幹線とバスを乗り継ぎ 121 00:19:22,000 --> 00:19:25,000 東京から5時間かけて 122 00:19:25,000 --> 00:19:28,000 通知を送ってきた 裁判所へと向かいました] 123 00:20:09,000 --> 00:20:13,000 [阿部さんは 事件の裁判記録を確認] 124 00:20:16,000 --> 00:20:21,000 [すると ある事実が 明らかになったのです] 125 00:20:25,000 --> 00:20:28,000 [これは 裁判所がチャンさんを 126 00:20:28,000 --> 00:20:34,000 加害者として認定したことが 記された 書類の一部です] 127 00:20:34,000 --> 00:20:36,000 [そこには 128 00:20:36,000 --> 00:20:39,000 「 被告は 口頭弁論期日に出頭せず 129 00:20:39,000 --> 00:20:44,000 請求原因事実を争うことを 明らかにしないものとして 130 00:20:44,000 --> 00:20:50,000 これを自白したものとみなす 」 と書かれています] 131 00:20:52,000 --> 00:20:56,000 [つまり 通知をしても 裁判に出頭せず 132 00:20:56,000 --> 00:21:00,000 否定の意思も 示さなかったチャンさんは 133 00:21:00,000 --> 00:21:03,000 罪を認めたものと 判断されたのです] 134 00:21:07,000 --> 00:21:13,000 [では なぜ裁判所の通知に 対応しなかったのか] 135 00:21:13,000 --> 00:21:17,000 [実は チャンさん ある程度の日本語は話せても 136 00:21:17,000 --> 00:21:20,000 読むことは ほとんどできないのです] 137 00:21:49,000 --> 00:21:52,000 ( 阿部 ) 部屋入っていい? ( チャン ) はい 。 138 00:21:52,000 --> 00:21:54,000 [裁判所からの 通知だったことも 139 00:21:54,000 --> 00:21:58,000 何が書かれているのかも 分からなかった] 140 00:21:58,000 --> 00:22:02,000 [それが 出頭しなかった理由でした] 141 00:22:02,000 --> 00:22:05,000 話 してほしい 。 142 00:22:05,000 --> 00:22:07,000 [だからといって もちろん 143 00:22:07,000 --> 00:22:11,000 弁済の義務が 消えるわけではありません] 144 00:22:21,000 --> 00:22:23,000 ( チャン ) いやー… 。 145 00:22:26,000 --> 00:22:29,000 ( 阿部 ) 何を? 146 00:22:29,000 --> 00:22:34,000 [結局 チャンさんは 被害額の弁済ができないまま 147 00:22:34,000 --> 00:22:37,000 自己破産の手続きをしました] 148 00:22:39,000 --> 00:22:42,000 [5年間勤めた 阿部さんの店も辞め 149 00:22:42,000 --> 00:22:46,000 家族の待つ ベトナムに帰国したのです] 150 00:22:52,000 --> 00:22:54,000 (スタッフ) こんだけ やられたじゃないですか 。 151 00:22:54,000 --> 00:22:56,000 むなしさじゃないですけど 。 152 00:23:03,000 --> 00:23:06,000 でも それを ねぇ 。 153 00:23:13,000 --> 00:23:17,000 [一年を締めくくる 大晦日] 154 00:23:19,000 --> 00:23:24,000 [阿部さんのお店が 最も忙しくなる日でもあります] 155 00:23:37,000 --> 00:23:41,000 [追われているのは おせち料理作り] 156 00:23:43,000 --> 00:23:49,000 [毎年 300 組もの予約が入り 作業は深夜にまで及びます] 157 00:23:58,000 --> 00:24:01,000 [この日ばかりは徹夜] 158 00:24:01,000 --> 00:24:07,000 [幾つもの店を回るため さすがの阿部さんも お疲れです] 159 00:24:09,000 --> 00:24:13,000 [その様子を 動画に撮るスタッフも] 160 00:24:15,000 --> 00:24:18,000 ( 従業員 ) 神様みたいな フフフフ 。 161 00:24:35,000 --> 00:24:39,000 [仕事に人生を捧げてきた 阿部さん] 162 00:24:39,000 --> 00:24:45,000 [実は 大切な家族に 大きな出来事がありました] 163 00:24:50,000 --> 00:24:52,000 [横浜] 164 00:25:01,000 --> 00:25:04,000 [阿部さんが やって来たのは…] 165 00:25:04,000 --> 00:25:06,000 [病院です] 166 00:25:10,000 --> 00:25:15,000 [そこで ある人が 阿部さんを待っていました] 167 00:25:21,000 --> 00:25:27,000 [実は ある深刻な事態が 明らかになったのです] 168 00:25:32,000 --> 00:25:36,000 [別室へと通された阿部さんが 教えてくれたのは] 169 00:25:51,000 --> 00:25:56,000 [阿部さんの人生が 大きく揺らぎ始めました] 170 00:26:02,000 --> 00:26:04,000 [ 2024 年 8月] 171 00:26:06,000 --> 00:26:09,000 [横浜の病院を訪れた 阿部さん] 172 00:26:12,000 --> 00:26:16,000 [妻のユキコさんに がんが見つかったのです] 173 00:26:22,000 --> 00:26:24,000 [仕事に追われ 174 00:26:24,000 --> 00:26:28,000 弟子を育てることを 何よりも優先し 175 00:26:28,000 --> 00:26:32,000 家族を顧みることがなかった 阿部さん] 176 00:26:32,000 --> 00:26:34,000 [そんな生き方を 177 00:26:34,000 --> 00:26:37,000 後悔したことは ありませんでした] 178 00:26:37,000 --> 00:26:41,000 [しかし ユキコさんの がんという現実が 179 00:26:41,000 --> 00:26:44,000 重く のしかかります] 180 00:27:42,000 --> 00:27:46,000 [およそ6時間の 手術が終わりました] 181 00:28:07,000 --> 00:28:11,000 [不器用で 精いっぱいの言葉] 182 00:28:50,000 --> 00:28:53,000 [この日を境に 阿部さんに 183 00:28:53,000 --> 00:28:56,000 ちょっとした変化が 生まれました] 184 00:28:58,000 --> 00:29:03,000 [考え込むことが 多くなっていたのです] 185 00:29:03,000 --> 00:29:05,000 [実は このとき 186 00:29:05,000 --> 00:29:08,000 ある決断を しようとしていました] 187 00:29:20,000 --> 00:29:26,000 [ユキコさんの がんが判明して 1カ月] 188 00:29:26,000 --> 00:29:28,000 お疲れさまです 。 僕が一番最後… 。 189 00:29:28,000 --> 00:29:31,000 遅れちゃいました? ⚟いえ 遅れてないです 。 190 00:29:31,000 --> 00:29:33,000 ( 阿部 ) 皆さん 忙しいのに 。 191 00:29:35,000 --> 00:29:39,000 [待ち合わせていたのは 創業以来の取引先 192 00:29:39,000 --> 00:29:41,000 ビール会社の担当者です] 193 00:29:44,000 --> 00:29:46,000 [ 20 年近く 店で働く 194 00:29:46,000 --> 00:29:50,000 ベテランの板前も 連れてきていました] 195 00:29:50,000 --> 00:29:52,000 [阿部さんの右腕です] 196 00:29:54,000 --> 00:29:56,000 いいすか? 真ん中で 。 197 00:29:58,000 --> 00:30:03,000 [そして 阿部さんは 意外な言葉を切り出しました] 198 00:30:03,000 --> 00:30:07,000 この話したの 初め… 最初がサッポロさんなんすよ 。 199 00:30:07,000 --> 00:30:09,000 まだ どこにもしてないんで 。 200 00:30:12,000 --> 00:30:14,000 あの 僕… 。 201 00:30:25,000 --> 00:30:28,000 [そう 阿部さんは近い将来 202 00:30:28,000 --> 00:30:31,000 社長を降りることを 考えていたのです] 203 00:30:31,000 --> 00:30:35,000 自分の思いと 従業員の思いと 。 204 00:31:17,000 --> 00:31:20,000 ( 担当者 ) えっ? 205 00:31:20,000 --> 00:31:24,000 今 これから手術したり あれとかもするんですけど… 。 206 00:31:35,000 --> 00:31:40,000 [人生を変えようと 動き始めた 阿部さん] 207 00:31:43,000 --> 00:31:45,000 [そして もう一人 208 00:31:45,000 --> 00:31:49,000 自らの人生に悩む 板前がいました] 209 00:31:51,000 --> 00:31:53,000 [ 「 こんな自分を見捨てず 210 00:31:53,000 --> 00:31:55,000 チャンスまでくれて 211 00:31:55,000 --> 00:31:57,000 ありがとうございました 」 ] 212 00:31:59,000 --> 00:32:02,000 [ 「 この恩は 必ず仕事で返せるよう 213 00:32:02,000 --> 00:32:04,000 努力します 」 ] 214 00:32:08,000 --> 00:32:11,000 [メールの送り主は この人] 215 00:32:11,000 --> 00:32:15,000 [人生の岐路に 差し掛かっていました] 216 00:32:17,000 --> 00:32:23,000 [阿部さんにとって 特別な存在ともいえる板前です] 217 00:32:30,000 --> 00:32:33,000 [今から ちょうど1年前] 218 00:32:33,000 --> 00:32:36,000 [私たちは ある板前を取材していました] 219 00:32:41,000 --> 00:32:46,000 [故郷 東北の高校を卒業後 阿部寿司に入社] 220 00:32:46,000 --> 00:32:49,000 [ 13 年目を迎えていました] 221 00:32:59,000 --> 00:33:01,000 [腕も認められ 222 00:33:01,000 --> 00:33:05,000 店では 板場を任される 中堅どころ] 223 00:33:10,000 --> 00:33:14,000 [サワさんが入社したのは 2012 年] 224 00:33:14,000 --> 00:33:18,000 [阿部さんのお店が まだ軌道に乗る前] 225 00:33:20,000 --> 00:33:24,000 [同期の板前見習は 10 人いましたが 226 00:33:24,000 --> 00:33:27,000 残っているのは サワさんだけ] 227 00:33:30,000 --> 00:33:34,000 [大変な時代を支えてくれた サワさん] 228 00:33:34,000 --> 00:33:39,000 [阿部さんにとって 特別な弟子ともいえる存在です] 229 00:33:41,000 --> 00:33:47,000 [一方 板前として育ててもらった サワさんにとっても 230 00:33:47,000 --> 00:33:50,000 阿部さんは人生の恩人] 231 00:34:06,000 --> 00:34:08,000 [しかし] 232 00:34:11,000 --> 00:34:14,000 [サワさんには 克服しなければならないことが 233 00:34:14,000 --> 00:34:16,000 ありました] 234 00:34:21,000 --> 00:34:26,000 [阿部さんが向かったのは サワさんが暮らす部屋] 235 00:34:26,000 --> 00:34:29,000 [この日は 出勤日だったのですが] 236 00:34:34,000 --> 00:34:36,000 ( サワ ) はい すいません 。 237 00:34:36,000 --> 00:34:38,000 ( サワ ) はい 。 238 00:34:44,000 --> 00:34:46,000 [実はサワさん このところ 239 00:34:46,000 --> 00:34:50,000 無断欠勤を 繰り返していたのです] 240 00:34:59,000 --> 00:35:01,000 ( サワ ) 俺… 。 241 00:35:06,000 --> 00:35:09,000 [そんなサワさんの逃げ癖 242 00:35:09,000 --> 00:35:14,000 1年ほど前から 抑えられなくなっていました] 243 00:35:20,000 --> 00:35:22,000 [お店の同僚たちも] 244 00:35:36,000 --> 00:35:39,000 [阿部さんは サワさんを立ち直らせたいと 245 00:35:39,000 --> 00:35:42,000 部屋に通う日々が 続いていました] 246 00:35:42,000 --> 00:35:44,000 ( サワ ) お疲れさまです 。 247 00:35:46,000 --> 00:35:48,000 ( 阿部 ) ホントだよ 寝てただろ また 。 248 00:35:48,000 --> 00:35:50,000 ( サワ ) 寝てました 今 。 すいません 。 249 00:35:50,000 --> 00:35:54,000 すんません ホントに 。 ( 阿部 ) てか お前… 。 250 00:35:59,000 --> 00:36:02,000 ( サワ ) そうっすね 。 251 00:36:02,000 --> 00:36:06,000 [そして その言葉が現実に] 252 00:36:10,000 --> 00:36:15,000 [阿部さんと一緒に 訪ねてきたのは 不動産屋さん] 253 00:36:15,000 --> 00:36:19,000 [サワさん 家賃を滞納していたのです] 254 00:36:38,000 --> 00:36:42,000 [それでも 阿部さんが 見放すことはありませんでした] 255 00:36:49,000 --> 00:36:51,000 すごい大変ですけど 。 256 00:36:59,000 --> 00:37:01,000 [サワさんを変えたい] 257 00:37:01,000 --> 00:37:05,000 [それには ある理由がありました] 258 00:37:05,000 --> 00:37:08,000 [取り出したのは サワさんの履歴書] 259 00:37:25,000 --> 00:37:30,000 [その思いに水を差す まさかの事件が起きました] 260 00:37:32,000 --> 00:37:34,000 [阿部さんの前から 261 00:37:34,000 --> 00:37:38,000 サワさんが 姿を消してしまったのです] 262 00:37:45,000 --> 00:37:48,000 [サワさん 突然の失踪] 263 00:37:50,000 --> 00:37:52,000 [さすがの阿部さんも 264 00:37:52,000 --> 00:37:55,000 ショックを 隠しきれませんでした] 265 00:38:03,000 --> 00:38:06,000 ( 阿部のため息 ) 266 00:38:16,000 --> 00:38:18,000 [その翌日] 267 00:38:28,000 --> 00:38:32,000 [サワさんは 出勤しようとしたものの 268 00:38:32,000 --> 00:38:34,000 電車を乗り過ごし 269 00:38:34,000 --> 00:38:38,000 そのまま 友人の家に 泊まっていたといいます] 270 00:38:51,000 --> 00:38:55,000 [それは 阿部さんからの最後通告] 271 00:38:55,000 --> 00:38:58,000 [そして サワさんは 272 00:38:58,000 --> 00:39:02,000 故郷に帰ることを告げたのです] 273 00:39:09,000 --> 00:39:15,000 [誰よりも目をかけてきた 特別な弟子 サワさんの決意] 274 00:39:15,000 --> 00:39:19,000 [心の整理が つきませんでした] 275 00:39:38,000 --> 00:39:40,000 ねぇ 。 276 00:39:50,000 --> 00:39:54,000 [一方 故郷に帰ると告げた サワさんでしたが 277 00:39:54,000 --> 00:39:57,000 実は その後も東京に残り 278 00:39:57,000 --> 00:40:01,000 一人 迷い続けていました] 279 00:40:16,000 --> 00:40:21,000 [悩み抜いた末に下した サワさんの決断とは] 280 00:40:28,000 --> 00:40:33,000 [故郷に帰ると告げてからも 迷い続けていたサワさん] 281 00:40:37,000 --> 00:40:40,000 ( サワ ) ただ 正直 今… 。 282 00:40:44,000 --> 00:40:48,000 [失うものはない 。 だからこそ…] 283 00:40:58,000 --> 00:41:03,000 [そのチャンスを逃せば もう 後はありません] 284 00:41:05,000 --> 00:41:09,000 [サワさんが出した答えは] 285 00:41:09,000 --> 00:41:12,000 ( サワ ) おはようございます 。 286 00:41:12,000 --> 00:41:15,000 [店に帰ることでした] 287 00:41:17,000 --> 00:41:20,000 [丸刈りは 覚悟の表れ] 288 00:41:37,000 --> 00:41:41,000 [板場に立つのは 3カ月ぶりですが] 289 00:41:43,000 --> 00:41:48,000 [すしを握る腕は 衰えてはいません] 290 00:41:48,000 --> 00:41:51,000 [ここまで育ててくれた 阿部さんのためにも 291 00:41:51,000 --> 00:41:55,000 もう 逃げるわけにはいかないのです] 292 00:41:55,000 --> 00:41:58,000 ( サワ ) お願いします 。 293 00:42:00,000 --> 00:42:05,000 [久々のサワさんの仕事ぶりに 同僚たちは] 294 00:42:19,000 --> 00:42:24,000 [そして あの人も やって来ました] 295 00:42:24,000 --> 00:42:26,000 [阿部さんです] 296 00:43:43,000 --> 00:43:48,000 [阿部さんは 相変わらず 弟子たちの元を飛び回る日々] 297 00:43:52,000 --> 00:43:57,000 [妻 ユキコさんの病状も 落ち着いているそうです] 298 00:44:24,000 --> 00:44:28,000 [すしを巡る人生は 続きます] 299 00:44:36,000 --> 00:44:42,000 [たった一度の人生は 誰もが 山あり谷あり] 300 00:44:42,000 --> 00:44:47,000 [それぞれの思いをのせて 一貫のすしを握る] 301 00:44:47,000 --> 00:44:53,000 [それこそが 板前たちの心意気]