1 00:01:33,046 --> 00:01:38,051 <天保11年正月 3日の夜半 本所亀戸の武蔵屋喜兵衛の➡ 2 00:01:38,051 --> 00:01:44,057 別宅から火が出た。 武蔵屋は 日本橋本石町の薬種屋で➡ 3 00:01:44,057 --> 00:01:49,062 市中に広く その名を知られた 老舗だった。➡ 4 00:01:49,062 --> 00:01:53,066 焼け跡から 3人の焼死体が出たが ほとんど 男女の区別も➡ 5 00:01:53,066 --> 00:01:59,072 つかない有様だった。 武蔵屋の主人・喜兵衛は➡ 6 00:01:59,072 --> 00:02:03,577 3年前に 癆咳で倒れたが 家付きの妻・おそのは➡ 7 00:02:03,577 --> 00:02:07,080 病気が うつるのを恐れ 看病は 娘の おしのに任せきり。➡ 8 00:02:07,080 --> 00:02:11,084 自分は 別宅に移り住んでいた> 9 00:02:11,084 --> 00:02:13,086 (おしの)お父っつぁん。 10 00:02:13,086 --> 00:02:18,091 <だが 火事のあった夜は 喜兵衛は 別宅に運ばれていた> 11 00:02:18,091 --> 00:02:24,030 (喜兵衛) おそのに 言いたい事が…。 12 00:02:24,030 --> 00:02:27,530 おっ母さんには 私から言うから…。 13 00:02:30,036 --> 00:02:33,039 (悲鳴) 14 00:02:33,039 --> 00:02:38,044 (おその)離して… 離してよ 気味が悪いじゃないか…。 15 00:02:38,044 --> 00:02:40,046 離してよ 16 00:02:40,046 --> 00:02:43,550 どうして こう ひどい 仕打ちばかりするの 17 00:02:43,550 --> 00:02:47,053 最後の最後まで 不人情な事ばかりして… 18 00:02:47,053 --> 00:02:51,057 あんたは 自分の事 お父っつぁん子だと➡ 19 00:02:51,057 --> 00:02:57,063 思ってるんだろうけど この人は あんたの父親じゃないんだよ 20 00:02:57,063 --> 00:03:00,066 あんたが 自分の子じゃないって この人だって 知ってたんだ。 21 00:03:00,066 --> 00:03:04,070 え!? 知ってたの…!? 22 00:03:04,070 --> 00:03:11,070 お父っつぁん… 知ってて 私を 可愛がってくれてたのね…。 23 00:03:20,086 --> 00:03:30,086 でも こんな事 許せない。 どうしても許せない 24 00:03:35,035 --> 00:03:40,040 <武蔵屋の別宅が焼けて以来 世間の表から 身を隠していた➡ 25 00:03:40,040 --> 00:03:44,044 娘・おしのは 母親の浮気の 橋渡しを していた➡ 26 00:03:44,044 --> 00:03:50,050 芝居茶屋の出方・佐吉を 金で雇い 母・おそのと 特に関係の➡ 27 00:03:50,050 --> 00:03:54,054 深かった男 5人を捜し当て 父を苦しめた男達への➡ 28 00:03:54,054 --> 00:03:58,058 復讐を始めた…> 29 00:03:58,058 --> 00:04:05,065 <その男達は 常磐津師匠 岸沢蝶太夫…。➡ 30 00:04:05,065 --> 00:04:09,069 悪徳医者・海野得石…。➡ 31 00:04:09,069 --> 00:04:12,572 札差しの息子・香屋清一。➡ 32 00:04:12,572 --> 00:04:17,077 浮世絵師・菱川国宣…。➡ 33 00:04:17,077 --> 00:04:21,077 袋物問屋主人 丸梅屋源次郎だった…> 34 00:04:31,024 --> 00:04:33,026 (千之介)殺しの場所は? 35 00:04:33,026 --> 00:04:36,029 (作馬) 深川門前仲町の料理茶屋です。 36 00:04:36,029 --> 00:04:38,029 今 町方の知らせが…。 37 00:04:46,039 --> 00:04:48,041 身元は? 38 00:04:48,041 --> 00:04:51,044 蝶太夫という常磐津の師匠で➡ 39 00:04:51,044 --> 00:04:54,044 中村座にも よく出ていました。 40 00:04:56,049 --> 00:04:59,052 心の臓を 一突きに されてますな…。 41 00:04:59,052 --> 00:05:02,052 (千之介) うむ… 銀の釵か…。 42 00:05:09,062 --> 00:05:12,062 これは 椿の花びらじゃないか? 43 00:05:18,071 --> 00:05:25,011 人殺しだよ。 門前仲町の料理屋で 常磐津の師匠が殺された 44 00:05:25,011 --> 00:05:28,014 釵で 心の臓を ぐさりと一突き➡ 45 00:05:28,014 --> 00:05:31,017 枕許には 椿の花びらとは➡ 46 00:05:31,017 --> 00:05:33,017 こは如何に… さ 買った買った 47 00:05:40,026 --> 00:05:44,030 蝶太夫が来たのが 昼 七ツ頃と言ったな? 48 00:05:44,030 --> 00:05:47,033 (おはな)はい。 離れ座敷に御案内 しました。 先に いらした➡ 49 00:05:47,033 --> 00:05:53,039 女の方から 「後から 客が 来るから」と言われてまして。 50 00:05:53,039 --> 00:05:57,043 ♬~(三味線) 51 00:05:57,043 --> 00:06:03,049 ♬~(小唄) 52 00:06:03,049 --> 00:06:21,067 ♬~ 53 00:06:21,067 --> 00:06:24,003 ≪(女)お待たせして 申し訳ありません。 54 00:06:24,003 --> 00:06:27,003 (蝶太夫) おう… さ ささ… 55 00:06:32,011 --> 00:06:37,016 (おはな)女の方は まだ若くて 「おりうさん」という名前です。 56 00:06:37,016 --> 00:06:40,520 そんなに 若い娘が 独りで 料理茶屋に? 57 00:06:40,520 --> 00:06:46,526 どこかの大店の娘さんでしょうか 島田くずしに 高そうな着物で➡ 58 00:06:46,526 --> 00:06:50,029 ものおじしない 落ち着いた様子で…。 59 00:06:50,029 --> 00:06:54,033 それで 女の方が 先に帰ったと いうんだな? 60 00:06:54,033 --> 00:06:56,035 そうなんです。 61 00:06:56,035 --> 00:06:59,035 あら? お連れ様は…? 62 00:07:01,040 --> 00:07:04,043 (おりう)酔いつぶれて 寝てしまったの。 63 00:07:04,043 --> 00:07:07,543 起きるまで そっとしておいて下さいな。 64 00:07:10,049 --> 00:07:14,049 これは あなたに…。 まあ すみません。 65 00:07:16,055 --> 00:07:21,060 しばらくは 起こさずに いたんですが 余り 静かだから➡ 66 00:07:21,060 --> 00:07:24,998 夜 四ツ頃 様子を見に行ったら…。 67 00:07:24,998 --> 00:07:27,998 (悲鳴) 68 00:07:33,006 --> 00:07:37,010 (彦四郎)とにかく 蝶太夫って 奴は 女たらしで➡ 69 00:07:37,010 --> 00:07:41,514 評判のよくない 男だったらしいですね 兄上? 70 00:07:41,514 --> 00:07:45,018 「むささびの六」とかいう ならず者に 50両 よこせと➡ 71 00:07:45,018 --> 00:07:48,021 脅されていたって いうんでしょう? 72 00:07:48,021 --> 00:07:53,026 女ではなく そっちの殺しの線も? 73 00:07:53,026 --> 00:07:56,029 そうだな…。 うん…。 74 00:07:56,029 --> 00:07:59,029 ≪旦那様。 米沢様が…。 75 00:08:01,034 --> 00:08:05,038 青木様。 むささびの六を 捕まえました。 76 00:08:05,038 --> 00:08:07,040 何か 吐いたか? 77 00:08:07,040 --> 00:08:09,040 はい それが…。 78 00:08:11,044 --> 00:08:14,547 この金だな 蝶太夫から 脅し取ったのは? 79 00:08:14,547 --> 00:08:18,051 (六)違うんで…。 それは もらった金で…。 80 00:08:18,051 --> 00:08:21,054 (七造)もらった? 見えすいた事を… 81 00:08:21,054 --> 00:08:24,490 女に… 蝶太夫の女に もらったんでさ…。 82 00:08:24,490 --> 00:08:26,492 蝶太夫の女にだと? 83 00:08:26,492 --> 00:08:31,497 (作馬)大川端の「ますの屋」に 蝶太夫が 女と居るところを➡ 84 00:08:31,497 --> 00:08:34,500 奴が 上がり込んで 脅したと…。 85 00:08:34,500 --> 00:08:38,504 二度と 三味線の弾けねえように してやろうか 86 00:08:38,504 --> 00:08:41,007 おりうさん… おりうさん 87 00:08:41,007 --> 00:08:43,509 ≪もう いいでしょう。 88 00:08:43,509 --> 00:08:47,513 それくらい やれば 気が すんだでしょう。 89 00:08:47,513 --> 00:08:51,017 離してあげてちょうだい。 そうは いかねえ 90 00:08:51,017 --> 00:08:57,017 その50両は 私が あげます。 これで 勘弁してあげて下さい。 91 00:09:03,029 --> 00:09:07,033 男のために 50両もの金を ぽんと 投げ出す…。 92 00:09:07,033 --> 00:09:12,533 しかし 殺すつもりの男のために どうして そこまで? 93 00:09:14,540 --> 00:09:18,040 恩を売っておいて 殺す…。 94 00:09:20,046 --> 00:09:23,046 一体 どういう素性の女だ? 95 00:09:24,984 --> 00:10:20,984 ♬~ 96 00:10:27,980 --> 00:10:31,984 ≪(東蔵)こうしてね 左手は 軽く添えるだけ…。 97 00:10:31,984 --> 00:10:38,984 目はね 下から上へ こう… すくい上げるように…。 98 00:10:42,495 --> 00:10:46,495 (佐吉)いやいや 最後の客が やっと 帰りやがった。 99 00:10:49,001 --> 00:10:53,506 ほう ほう… なかなか 色っぽいですぜ おしのさん。 100 00:10:53,506 --> 00:10:57,009 (おしの)相手に甘える時には どうすれば? 101 00:10:57,009 --> 00:11:01,009 そうね… ちょいと佐吉さん ここへ来て。 へい。 102 00:11:03,015 --> 00:11:07,015 袂を こうしてね 相手の肩を こう…。 103 00:11:09,021 --> 00:11:11,023 会いたかったわ…。 104 00:11:11,023 --> 00:11:14,023 悪い気分じゃないですぜ これは…。 105 00:11:16,028 --> 00:11:20,032 分かったわ。 そのとおり やればいいのね。 106 00:11:20,032 --> 00:11:24,032 やってごらんなさいよ おしのさん。 ね… はい…。 107 00:11:27,039 --> 00:11:30,543 でもね このお嬢さん このままの方が➡ 108 00:11:30,543 --> 00:11:33,546 ずっと 清らかで 美しいと思うわ…。 109 00:11:33,546 --> 00:11:38,050 どうして そんなに 女っぽく なりたいんでしょうね? 110 00:11:38,050 --> 00:11:43,055 好きな男に 色気が足りねえって 言われたんですよ。 111 00:11:43,055 --> 00:11:45,057 ねえ おしのさん? 112 00:11:45,057 --> 00:11:50,062 駄目よ あなた。 こんな男に 深入りしたら ロクな事ないわよ。 113 00:11:50,062 --> 00:11:53,065 芝居茶屋の出方なんて すれっからしが 多いんだから。 114 00:11:53,065 --> 00:11:58,571 適当な おつきあいで とめておかなくちゃね。 115 00:11:58,571 --> 00:12:01,574 おい… じゃ 私は これで…。 116 00:12:01,574 --> 00:12:04,577 ありがとうございました。 117 00:12:04,577 --> 00:12:08,577 聞きたい事があったら また 言ってちょうだい。 118 00:12:11,083 --> 00:12:15,087 東蔵の奴 くだらない事を…。 あっしは おしのさんに➡ 119 00:12:15,087 --> 00:12:18,591 命を賭けてるって… ね 120 00:12:18,591 --> 00:12:24,030 佐吉さん そろそろ 得石と会う 段取りを つけて下さい。 121 00:12:24,030 --> 00:12:29,030 この次の 10日くらいが いいわ。 これで…。 122 00:12:31,037 --> 00:12:33,037 分かりやした。 123 00:12:46,052 --> 00:12:49,055 (おこよ) 徳次郎さん おはよう。 124 00:12:49,055 --> 00:12:51,057 (徳次郎) おはようございます。 125 00:12:51,057 --> 00:12:54,060 ほら 綺麗でしょう? 126 00:12:54,060 --> 00:12:56,062 どこに 咲いていたんですか? 127 00:12:56,062 --> 00:13:01,067 昨日 婆やが 庭に咲いてたのを 持ってきてくれたの。 128 00:13:01,067 --> 00:13:05,071 椿の花って 好き? いえ…。 129 00:13:05,071 --> 00:13:08,074 どうかしたの 徳次郎さん? 130 00:13:08,074 --> 00:13:12,074 ≪(飛脚)毎度… お届けもので ございます は~い 131 00:13:22,021 --> 00:13:25,021 はい ご苦労さま。 こちらへ 受取を。 132 00:13:35,034 --> 00:13:41,040 徳次郎さん あなたによ。 でも 差出人の名前が…。 133 00:13:41,040 --> 00:13:43,040 え…? 134 00:13:59,058 --> 00:14:03,062 徳次郎さん… 何か 悪い知らせでも? 135 00:14:03,062 --> 00:14:05,064 いえ…。 136 00:14:05,064 --> 00:14:07,064 おはようございます。 137 00:14:09,068 --> 00:14:12,571 おはようございます。 (貞之助)おはよう。 138 00:14:12,571 --> 00:14:15,074 旦那様…。 どうした? 139 00:14:15,074 --> 00:14:19,078 実は 母親の容体が悪くて 危ないと言うのですが➡ 140 00:14:19,078 --> 00:14:22,515 見舞いに行かせて いただけないでしょうか? 141 00:14:22,515 --> 00:14:27,520 いいとも 行っておいで。 事と次第によっちゃ すぐには➡ 142 00:14:27,520 --> 00:14:31,023 帰れないかもな…。 その時は 遠慮は いらないよ。 143 00:14:31,023 --> 00:14:33,023 ありがとうございます。 144 00:14:35,027 --> 00:14:41,033 ≪徳次郎さんは 嘘を言ってる のではないかと思いました。➡ 145 00:14:41,033 --> 00:14:47,033 親元からなら ちゃんと差出人の 名前を書くはずなのに…≫ 146 00:15:08,060 --> 00:15:13,060 ごめんください。 武蔵屋の 徳次郎と申す者で ございます。 147 00:15:21,073 --> 00:15:24,010 (おたき) あの… いらっしゃいました。 148 00:15:24,010 --> 00:15:26,010 ≪はい…。 149 00:15:30,016 --> 00:15:32,016 どうぞ…。 150 00:15:42,028 --> 00:15:44,028 お嬢さん…。 151 00:15:46,032 --> 00:15:52,032 よく来てくれましたね。 ご厄介をかけて すみません。 152 00:15:55,041 --> 00:16:00,046 出てくる時に 武蔵屋で 怪しまれませんでしたか? 153 00:16:00,046 --> 00:16:06,052 いえ それは…。 あれから 一度 牛込の家を お訪ねしましたが➡ 154 00:16:06,052 --> 00:16:08,554 引っ越された後で…。 155 00:16:08,554 --> 00:16:14,060 私の方から 知らせるまでは 来ないでほしいと 言ったのに。 156 00:16:14,060 --> 00:16:19,065 ですが どうなさったのか心配で。 ご無事なのか➡ 157 00:16:19,065 --> 00:16:23,065 お元気で いらっしゃるのかと そればかり…。 158 00:16:25,004 --> 00:16:29,004 ええ。 ずっと 無事でしたよ。 159 00:16:34,013 --> 00:16:37,016 これを… 持参いたしました。 160 00:16:37,016 --> 00:16:44,023 ごめんなさいね。 お父っつぁんが 残してくれた 870両の半分は➡ 161 00:16:44,023 --> 00:16:48,027 徳さんの ものだと思って 折半に したのだけど➡ 162 00:16:48,027 --> 00:16:52,031 ここにきて お金が足りなく なってしまって。 163 00:16:52,031 --> 00:16:54,033 私は 最初から お金など 頂くつもりは ありません。 164 00:16:54,033 --> 00:16:58,037 お嬢様が おっしゃるから お預かりしていただけです。 165 00:16:58,037 --> 00:17:04,043 これは 全部 お嬢様の 金なんですから。 166 00:17:04,043 --> 00:17:07,046 ありがとう… 徳さん。 167 00:17:07,046 --> 00:17:11,550 他にも 何か 必要なものがあれば おっしゃって下さい。 168 00:17:11,550 --> 00:17:17,556 武蔵屋には お嬢様の帯も 着物も 全部 そのままに残っています。 169 00:17:17,556 --> 00:17:21,060 少しずつでも お届けしましょうか? 170 00:17:21,060 --> 00:17:25,998 よしてよ 徳さん…。 火事で死んだ事になってる私が➡ 171 00:17:25,998 --> 00:17:31,003 以前 着ていた着物なんぞ着て 町中を歩いていたら➡ 172 00:17:31,003 --> 00:17:33,005 すぐに怪しまれて…。 173 00:17:33,005 --> 00:17:35,007 ですが… それは お嬢様の罪というより…。 174 00:17:35,007 --> 00:17:39,507 いいえ 私の罪です。 175 00:17:41,514 --> 00:17:43,514 お嬢さん…。 176 00:17:46,018 --> 00:17:50,022 どんな事があっても 許されない 大罪を…➡ 177 00:17:50,022 --> 00:17:56,022 私は… 犯してしまったんです。 178 00:18:02,034 --> 00:18:08,040 [回想] お父っつぁん… こうするより 他ないの…。 179 00:18:08,040 --> 00:20:08,040 ♬~ 180 00:20:10,029 --> 00:20:16,035 (徳次郎)じゃ 焼け跡から出た 死体は 旦那様と内儀さんと…➡ 181 00:20:16,035 --> 00:20:18,035 あとの1つは…? 182 00:20:21,040 --> 00:20:25,040 教えて下さい… もう1人は 誰なんですか? 183 00:20:28,981 --> 00:20:31,981 私よ…。 え…? 184 00:20:33,986 --> 00:20:37,986 あの時 私は 一度 死んだの。 185 00:20:41,994 --> 00:20:48,000 だから 徳さん… 今の私は 亡霊と思ってちょうだい。 186 00:20:48,000 --> 00:20:50,002 お嬢さん… 187 00:20:50,002 --> 00:20:59,011 分かったでしょう? 私は 亡霊。 だから 世の中の表には➡ 188 00:20:59,011 --> 00:21:05,011 出られない。 世を忍んで 生きていくしか ないんです。 189 00:21:07,019 --> 00:21:12,019 徳さんも これきり 私には 近づかない方が いいわ。 190 00:21:21,033 --> 00:21:23,033 あら…? 191 00:21:25,037 --> 00:21:28,540 ここに 椿の花を 飾ってあったのに…。 192 00:21:28,540 --> 00:21:32,044 (利助)ああ 徳さんが 持っていきましたよ。 193 00:21:32,044 --> 00:21:35,044 え…? 徳次郎さんが…? 194 00:21:42,054 --> 00:21:50,062 これを…。 亡くなった旦那様も 椿の花が お好きでした。 195 00:21:50,062 --> 00:21:56,062 お嬢様も そうでしょう? これを 飾って下さい。 196 00:22:00,072 --> 00:22:02,572 ありがとう…。 197 00:22:05,077 --> 00:22:09,081 お嬢さん… 大丈夫なんですか? 198 00:22:09,081 --> 00:22:13,085 この先 どうなさる おつもりなんです? 199 00:22:13,085 --> 00:22:19,091 ご自分の行く先を どのように 考えていらっしゃるのですか? 200 00:22:19,091 --> 00:22:21,093 どのようにって…? 201 00:22:21,093 --> 00:22:23,028 困った事があったら 何でも 私に 相談して下さい。 202 00:22:23,028 --> 00:22:29,034 力に なります。 武蔵屋は 辞めてもいい。 203 00:22:29,034 --> 00:22:32,037 お嬢さんの手足になって 働きます 204 00:22:32,037 --> 00:22:36,037 もう いいわ… 徳さん… お帰りなさい。 205 00:22:38,043 --> 00:22:42,043 帰ってちょうだい お嬢さん…。 206 00:22:44,049 --> 00:22:47,052 あなたは ここに来ちゃ いけないわ。 207 00:22:47,052 --> 00:22:51,052 私なんかに 係りあいになっちゃ いけないの…。 208 00:22:53,058 --> 00:22:56,058 もう二度と 来ないでちょうだい 209 00:23:07,072 --> 00:23:13,072 (得石)終わりました。 さ お直しなさい。 210 00:23:17,082 --> 00:23:21,082 およしさん お風邪を ひきますよ。 211 00:23:25,023 --> 00:23:29,027 どうですか? 軽くなったでしょう。 212 00:23:29,027 --> 00:23:31,530 (およし)お陰さまで…。 213 00:23:31,530 --> 00:23:37,030 痛んだら また いらっしゃい。 お薬を 差し上げましょう。 214 00:23:46,044 --> 00:23:48,544 薬礼は 「乙」でな。 215 00:23:59,057 --> 00:24:04,062 (おくに)また あの手を 使ったんだね。 汚らわしい 216 00:24:04,062 --> 00:24:09,067 お前に 何が分かる。 俺のする事に 口を出すな。 217 00:24:09,067 --> 00:24:11,069 薬礼だよ 218 00:24:11,069 --> 00:24:15,073 白首や けころにも劣る 汚らわしい真似をして➡ 219 00:24:15,073 --> 00:24:19,077 大の男が よくも こんな金が 取れるもんだ。 220 00:24:19,077 --> 00:24:21,079 そういう金で お前も 雨露を しのいできたんじゃないのか。 221 00:24:21,079 --> 00:24:24,016 今更 何を言う。 222 00:24:24,016 --> 00:24:29,021 私は 馬鹿だったよ。 この9年余り 薬研を擦ったり➡ 223 00:24:29,021 --> 00:24:35,027 客の応対をしたり 代脈と下女の 役もしてきたけど もう 嫌だ 224 00:24:35,027 --> 00:24:38,030 私と夫婦になる気は なかったんだ 225 00:24:38,030 --> 00:24:43,035 そんなに嫌なら 出て行けばいい。 誰も止めやせんぞ。 226 00:24:43,035 --> 00:24:48,040 ふん… 何が 得石先生だい。 私は お前さんの汚らわしい➡ 227 00:24:48,040 --> 00:24:51,043 裏の裏まで 知り抜いてるんだよ。 どんなに あくどい手を使って➡ 228 00:24:51,043 --> 00:24:55,047 医者に成り上がったか… 治療という名目で 患者に➡ 229 00:24:55,047 --> 00:24:59,051 どんなに いやらしい真似を してるか。 中でも ひどいのは➡ 230 00:24:59,051 --> 00:25:05,057 満利屋さんの御新造さんさ。 いつもの手で 無我夢中にさせ➡ 231 00:25:05,057 --> 00:25:09,061 子を孕ませた。 そして 御新造さんは 首を吊って…。 232 00:25:09,061 --> 00:25:14,066 出かけるんだ 履き物を出してくれ。 233 00:25:14,066 --> 00:25:19,071 おまけに 怪しげな料理茶屋を 出したり ひどい高利で➡ 234 00:25:19,071 --> 00:25:25,071 金貸しをしたり… 私が お上に 喋ったら どうなると思うんだい。 235 00:25:32,017 --> 00:25:37,022 お前なんかには 分かるまいが 世の中は 「二一天作」が➡ 236 00:25:37,022 --> 00:25:40,025 七にもなれば 三にも 九にもなる。 嫉妬半分で 訴え出たところで➡ 237 00:25:40,025 --> 00:25:46,531 まともに 取り上げられると 思ってるのか。 238 00:25:46,531 --> 00:25:50,531 ほうり出されたくなきゃ おとなしくしてろ 239 00:26:31,009 --> 00:26:38,009 今日こそは せしめてやるぞ。 力ずくでもな…。 今日こそは。 240 00:26:46,024 --> 00:26:48,024 ≪は~い。 241 00:27:03,041 --> 00:27:05,043 おみのさん… 242 00:27:05,043 --> 00:27:08,043 お酒… 今 きますわ。 243 00:27:15,053 --> 00:27:22,053 憎らしいわ。 独りで お酒なんか…。 244 00:27:24,996 --> 00:27:29,996 私の事なんか どうでも よかったんでしょう。 245 00:27:36,007 --> 00:27:43,014 先生。 約束したものを 見せていただけます? 246 00:27:43,014 --> 00:27:47,018 え? 約束…? 247 00:27:47,018 --> 00:27:51,022 貸し金の証文。 みんな 持ってきて 見せるって➡ 248 00:27:51,022 --> 00:27:54,025 約束なさったでしょう? 249 00:27:54,025 --> 00:28:00,031 ああ そうか…。 今日は 忙しくってな➡ 250 00:28:00,031 --> 00:28:03,031 平松町の方へ 寄る暇が なかった。 251 00:28:11,042 --> 00:28:17,042 ありがとう…。 ごゆっくり。 252 00:28:32,998 --> 00:28:34,998 ま 一杯…。 253 00:28:37,002 --> 00:28:41,506 約束を守って下さらなければ 私 頂きません。 254 00:28:41,506 --> 00:28:46,511 約束は守る。 必ず 誓って 約束は守りますから➡ 255 00:28:46,511 --> 00:28:49,511 どうぞ 一杯 受けて下さいよ。 256 00:29:13,038 --> 00:29:17,038 しかし あなたって人は 不思議な人だ。 257 00:29:20,045 --> 00:29:22,981 大川端で 私が やらせている 「海石」って料理茶屋の事も➡ 258 00:29:22,981 --> 00:29:26,985 知ってるし 平松町の宿屋 豊島屋で 小金貸しを➡ 259 00:29:26,985 --> 00:29:30,989 やらせてる事まで知っている。 全く 首根っこを➡ 260 00:29:30,989 --> 00:29:33,992 押さえられてるような 気分ですぜ。 261 00:29:33,992 --> 00:29:42,000 そんな事 当たり前でしょ。 一生 添い遂げる相手ですもの。 262 00:29:42,000 --> 00:29:47,000 女なら誰だって その人の事を 知りたいと思うわ。 263 00:29:49,007 --> 00:29:54,012 しかし その若さで 金貸しに興味があるってね。 264 00:29:54,012 --> 00:30:01,019 あら 私は お金が好きなの。 先生が お医者様をなさりながら➡ 265 00:30:01,019 --> 00:30:07,025 いろんな商売 やってらっしゃるの ちっとも悪いとは思わないわ。 266 00:30:07,025 --> 00:30:12,030 こうして 会いたい時に 先生と 会えるのも 私に お金が➡ 267 00:30:12,030 --> 00:30:18,036 あればこそですもの。 私 もし 先生と一緒になる事が➡ 268 00:30:18,036 --> 00:30:24,036 出来れば 豊島屋の方は 私が やらせていただくつもりです。 269 00:30:25,977 --> 00:30:33,985 そうか…。 それで 証文が 見たいって言うんですか。 270 00:30:33,985 --> 00:30:40,992 あるだけ全部…。 先生の事 全部 分かりたいの。 271 00:30:40,992 --> 00:30:45,997 じゃ どうして…? どうして いつも 私を焦らすばかりで➡ 272 00:30:45,997 --> 00:30:47,999 自分の事は 何も 打ち明けてくれないんだ? 273 00:30:47,999 --> 00:30:49,999 居所さえ 教えてくれないんだから。 274 00:30:53,004 --> 00:30:55,504 憎いお人だ…。 275 00:30:59,010 --> 00:31:06,017 私ね… 今夜は 覚悟して 来たんですよ。 276 00:31:06,017 --> 00:31:10,021 それなら… それが 本当なら… 277 00:31:10,021 --> 00:31:13,021 痛いわ… 先生…。 痛い 278 00:31:22,033 --> 00:31:26,033 じゃ… 私 お湯に入ってきますから…。 279 00:31:43,054 --> 00:31:45,554 これは 今日の お勘定。 280 00:31:48,059 --> 00:31:52,063 これは あなたに ほんの おしるし…。 281 00:31:52,063 --> 00:31:55,563 (おとき)まあ こんなに よろしいんですか? 282 00:32:01,072 --> 00:32:03,575 また 逃げられたか…。 283 00:32:03,575 --> 00:32:08,079 いけませんよ 先生。 あんな綺麗で お若いお嬢様を➡ 284 00:32:08,079 --> 00:32:11,082 口説いたりなすっちゃ 罪ですよ。 285 00:32:11,082 --> 00:32:17,082 あの小娘… この得石を 手玉に取りやがった。 286 00:32:21,092 --> 00:32:23,592 あれは 魔性の女だ 287 00:32:27,032 --> 00:32:56,061 ♬~ 288 00:32:56,061 --> 00:33:02,061 お父っつぁん…。 行ってきます…。 289 00:33:05,070 --> 00:33:10,075 今日 1人 お父っつぁんの恨みを…。 290 00:33:10,075 --> 00:33:23,075 ♬~ 291 00:33:53,051 --> 00:33:55,551 会いたかったわ。 292 00:34:06,064 --> 00:34:10,068 さあさ… 持ってきましたよ。 約束のものを。 293 00:34:10,068 --> 00:34:14,072 嬉しい… でも 心配だわ。 294 00:34:14,072 --> 00:34:18,076 何が心配だ… 何が? 私は おみのさんを信用して➡ 295 00:34:18,076 --> 00:34:24,015 何もかも 見せてるじゃないか… 今夜は どんな事が あっても➡ 296 00:34:24,015 --> 00:34:27,018 おみのさんと いいえ 駄目 297 00:34:27,018 --> 00:34:31,018 先生の事で もっと知りたい事が あるの。 298 00:34:33,024 --> 00:34:37,028 それを 教えて下さらなきゃ 駄目 299 00:34:37,028 --> 00:34:39,028 これ以上 何を…? 300 00:34:41,032 --> 00:34:46,037 武蔵屋の御新造さんとの事を 知りたいの。 301 00:34:46,037 --> 00:34:51,042 武蔵屋の? あんな女の事を聞いて➡ 302 00:34:51,042 --> 00:34:54,042 一体 どうしようって いうんです? 303 00:34:56,047 --> 00:35:02,053 武蔵屋の御新造さんは ご主人を よそにして 先生に すっかり➡ 304 00:35:02,053 --> 00:35:07,058 のぼせ上がってたそうですね。 なぜ そんなに女を➡ 305 00:35:07,058 --> 00:35:11,062 夢中にさせる事が 出来るのかしら? 306 00:35:11,062 --> 00:35:15,066 先生は 妖術でも 使ってらっしゃるのかしら? 307 00:35:15,066 --> 00:35:17,566 立派な医術ですよ 308 00:35:21,072 --> 00:35:24,509 しかし あの人は 大変なものだった。 309 00:35:24,509 --> 00:35:28,012 私は 随分 女を知ってるが 後にも先にも あんな女には➡ 310 00:35:28,012 --> 00:35:34,018 会った事がない。 生まれつき 体が そう出来ているんだ…。 311 00:35:34,018 --> 00:35:40,024 あの女とは 5年ほど 続いたかな…。➡ 312 00:35:40,024 --> 00:35:45,024 「金は 出してやるから 独り立ちをしろ」ってね…。 313 00:35:49,033 --> 00:35:56,033 そう…。 そこまで 先生に 夢中に なっていたのね。 314 00:36:04,048 --> 00:36:06,048 どうぞ…。 315 00:36:13,057 --> 00:36:18,062 もっとも 武蔵屋のおそのさんには 私以外にも 男がいてね。 316 00:36:18,062 --> 00:36:22,000 いつも 相手が変わらなきゃ 駄目な女だったよ。➡ 317 00:36:22,000 --> 00:36:26,004 それに 亭主は 朴念仁で からきし 夜の方は 駄目。 318 00:36:26,004 --> 00:36:30,008 おまけに 癆咳じゃ 男あさりも したくなる。 319 00:36:30,008 --> 00:36:34,008 そんな話を 2人で していたんですか? 320 00:36:36,014 --> 00:36:41,019 寝物語ってやつですよ。 どんなに 取り澄ました女でも➡ 321 00:36:41,019 --> 00:36:47,025 寝物語となると あけすけになる。 男が 恥ずかしくなるくらいね。 322 00:36:47,025 --> 00:36:53,031 2人で その亭主の事を 笑っていたんですね…。 323 00:36:53,031 --> 00:37:00,031 しかし 何の報いか あの女も 焼け死んじまった。 324 00:37:06,044 --> 00:37:10,048 先生も 報いを受けないで 済むかしら…? 325 00:37:10,048 --> 00:37:14,052 報いなんぞ 受けるもんですか。 326 00:37:14,052 --> 00:37:20,058 何だ かんだ言っても 私は運が 強いんです。 特に 女の運はね。 327 00:37:20,058 --> 00:37:23,995 こうして おみのさんって 人にも 会えたしね。 328 00:37:23,995 --> 00:37:29,995 (大笑い) 329 00:37:35,006 --> 00:37:38,006 どうしたんです? おみのさん…。 330 00:37:41,012 --> 00:37:47,012 何か 悪い事を 言ったかな…? おみのさん おみのさん…。 331 00:37:51,022 --> 00:37:53,024 ごめんなさい…。 332 00:37:53,024 --> 00:37:58,029 年若いあなたに あんな事まで 言うのは 酷だった。 333 00:37:58,029 --> 00:38:01,532 しっかりしているようで やはり あなたは➡ 334 00:38:01,532 --> 00:38:06,537 まだ うぶな ねんねなんだね。 いや そこが 可愛い…。 335 00:38:06,537 --> 00:38:10,541 何とも可愛い さ 奥へ行きましょう。 336 00:38:10,541 --> 00:38:15,041 先生 先に行ってて下さい。 337 00:38:17,048 --> 00:38:19,050 私 支度を…。 338 00:38:19,050 --> 00:38:26,050 そんな事を言って また 逃げたりしないでしょうね? 339 00:38:27,992 --> 00:38:32,992 私こそ 今夜は 先生を 逃がさないわ…。 340 00:38:40,004 --> 00:38:46,004 先生の妖術で 私が虜に なってしまったら…。 341 00:38:48,012 --> 00:38:51,015 責任を 取っていただきますよ。 342 00:38:51,015 --> 00:38:57,015 ほう… 望むところだ。 343 00:39:20,044 --> 00:39:22,044 お父っつぁん…。 344 00:39:25,983 --> 00:39:33,983 力を… 力を貸して… 345 00:40:34,986 --> 00:40:36,986 先生…。 346 00:41:10,021 --> 00:42:05,021 ♬~ 347 00:42:12,083 --> 00:42:17,088 ≪いよいよ 今日は 3人目 お父っつぁんの恨みを➡ 348 00:42:17,088 --> 00:42:20,091 また 1つ 消してあげます…≫ 349 00:42:20,091 --> 00:42:22,026 (清一)今夜は帰さないよ。 いいよな。 350 00:42:22,026 --> 00:42:26,030 (おはな)この女が下手人ですよ。 この女が殺したんだよ。 351 00:42:26,030 --> 00:42:28,032 静かにしろ。 352 00:42:28,032 --> 00:42:32,036 私はずっと あなたにほれてますよ。 353 00:42:32,036 --> 00:42:35,039 (おこよ)どことなく おしのちゃんに 似てるでしょ。 354 00:42:35,039 --> 00:42:38,042 まさか…。 徳次郎さん! お願い…。 355 00:42:38,042 --> 00:42:40,044 やめてくれ! 356 00:42:40,044 --> 00:42:42,046 (国宣)フッフフ。 357 00:42:42,046 --> 00:42:47,046 (千之介)あの娘は白だ。 人を殺せるはずがない。 358 00:42:52,056 --> 00:42:55,056 何も 恐れる事なんか ないわ 359 00:42:57,061 --> 00:44:19,061 ♬~