1 00:00:03,170 --> 00:00:05,606 (沢嶋雄一) <文化文政の江戸時代。➡ 2 00:00:05,606 --> 00:00:09,476 町人文化が花開いた江戸で グルメブームが到来。➡ 3 00:00:09,476 --> 00:00:14,281 江戸っ子たちは 豊かな食文化を追い求めていく。➡ 4 00:00:14,281 --> 00:00:17,618 中でも 人気が沸騰したのが 「初物」。➡ 5 00:00:17,618 --> 00:00:20,520 季節ごとに 初めて収穫された食材を➡ 6 00:00:20,520 --> 00:00:25,959 誰よりも先に食べるのが 江戸っ子の心意気だったという。➡ 7 00:00:25,959 --> 00:00:28,295 そして5月。➡ 8 00:00:28,295 --> 00:00:31,965 初物の代表格 魚の初鰹の季節がやって来た。➡ 9 00:00:31,965 --> 00:00:33,901 果たして その熱狂ぶりとは。➡ 10 00:00:33,901 --> 00:00:37,604 私は早速 江戸時代に タイムワープをした> 11 00:00:49,983 --> 00:00:57,858 え~ アブソリュートポジション N198 W641 E425 S174。 12 00:00:57,858 --> 00:01:00,928 ポジション確認。 13 00:01:00,928 --> 00:01:08,268 アブソリュートタイム B0751470年 24時05分11秒。 14 00:01:08,268 --> 00:01:10,604 西暦変換しますと➡ 15 00:01:10,604 --> 00:01:15,275 1810年5月3日 10時25分18秒。 16 00:01:15,275 --> 00:01:17,945 無事 タイムワープ成功しました。 17 00:01:17,945 --> 00:01:21,615 コードナンバー925371 これから 記録を開始します。 18 00:01:21,615 --> 00:01:26,954 沢嶋雄一。 彼は タイムスクープ社より 派遣されたジャーナリストである。 19 00:01:26,954 --> 00:01:30,290 あらゆる時代に タイムワープしながら 時空を超えて➡ 20 00:01:30,290 --> 00:01:34,294 名もなき人々を記録していく タイムスクープハンターである。 21 00:01:42,869 --> 00:01:45,305 <江戸近郊の山。➡ 22 00:01:45,305 --> 00:01:47,975 道無き道を進む 若い男がいる。➡ 23 00:01:47,975 --> 00:01:52,646 早朝 相模湾で 今年最初の初鰹が取れたという。➡ 24 00:01:52,646 --> 00:01:58,318 男は この先の山道を 初鰹を運ぶ 早馬が通るとの情報を得ていた。➡ 25 00:01:58,318 --> 00:02:02,589 彼は 初鰹を誰よりも先に 入手するため ある作戦に出た。➡ 26 00:02:02,589 --> 00:02:06,927 江戸の魚市場に届けられる前に 鰹を買い取ろうというのだ。➡ 27 00:02:06,927 --> 00:02:11,264 今回の取材対象は 初鰹入手に 情熱を傾ける江戸っ子たち。➡ 28 00:02:11,264 --> 00:02:14,167 その奮闘ぶりに 密着ドキュメントする> 29 00:02:14,167 --> 00:02:19,139 え~ この時代の人々にとって 私は時空を超えた存在となります。 30 00:02:19,139 --> 00:02:22,609 彼らにとって 私は 宇宙人のような存在です。 31 00:02:22,609 --> 00:02:25,278 彼らに接触するには 細心の注意が必要です。 32 00:02:25,278 --> 00:02:29,149 私自身の介在によって この歴史が 変わる事も ありえるからです。 33 00:02:29,149 --> 00:02:31,151 彼らに 取材を許してもらうためには➡ 34 00:02:31,151 --> 00:02:33,153 特殊な交渉術を用います。 35 00:02:33,153 --> 00:02:36,289 それは極秘事項となっており お見せする事はできませんが➡ 36 00:02:36,289 --> 00:02:39,593 今回も無事 密着取材する事に成功しました。 37 00:02:46,633 --> 00:02:48,969 <平吉 21歳。➡ 38 00:02:48,969 --> 00:02:52,305 江戸の札差に勤める 奉公人である。➡ 39 00:02:52,305 --> 00:02:56,176 彼の主人 武蔵屋文右衛門は 無類の食通であった。➡ 40 00:02:56,176 --> 00:02:58,979 その食道楽の世話役として➡ 41 00:02:58,979 --> 00:03:01,982 平吉は日々 食材の調達に走り回っている> 42 00:03:13,260 --> 00:03:15,262 とても とても。 43 00:03:29,609 --> 00:03:31,611 なるほど。 44 00:03:34,948 --> 00:03:37,617 そうですか。 ええ。 45 00:03:37,617 --> 00:03:40,921 もう かれこれ 十何年ですかね。 46 00:03:48,628 --> 00:03:52,966 <ここ数年 江戸では 空前の 初物ブームが沸き起こっていた。➡ 47 00:03:52,966 --> 00:03:54,901 中でも 初夏の初鰹は➡ 48 00:03:54,901 --> 00:03:57,304 「女房を質に入れても食べたい」と 言われたほど➡ 49 00:03:57,304 --> 00:03:59,239 人気があった。➡ 50 00:03:59,239 --> 00:04:01,908 江戸の市場へ運ぶ初鰹の運搬ルートは 2とおり。➡ 51 00:04:01,908 --> 00:04:03,844 通常は 船で運ばれる。➡ 52 00:04:03,844 --> 00:04:07,414 だが馬を使い 陸路で運ばれる事も あったという。➡ 53 00:04:07,414 --> 00:04:12,919 平吉は昨夜から 海の時化は まだ 収まらないと見て 賭けに出た。➡ 54 00:04:12,919 --> 00:04:17,791 今年最初の初鰹輸送は 船ではなく 陸路を使うと予想したのである。➡ 55 00:04:17,791 --> 00:04:20,794 果たして その読みは…。➡ 56 00:04:20,794 --> 00:04:25,799 遠くから 馬が駆けてきた> 57 00:04:30,470 --> 00:04:33,774 あいすいません。 すいません!何だ⁉ 58 00:04:36,943 --> 00:04:39,646 甚だ あいすいません。 59 00:04:41,815 --> 00:04:44,518 何? 武蔵屋とな? へえ。 60 00:04:51,291 --> 00:04:54,294 <まさしく それは 荷物を運ぶ早馬だった> 61 00:04:59,800 --> 00:05:04,004 これを 譲るわけにはいかん! 62 00:05:11,444 --> 00:05:14,748 お主は 何を考えておった。 63 00:05:20,921 --> 00:05:25,258 <平吉の早とちり。 それは 鰹ではなく 果物の びわだった> 64 00:05:25,258 --> 00:05:28,261 では 急ぐでな。 あの! 65 00:05:29,930 --> 00:05:32,933 初鰹? ええ。 66 00:05:34,601 --> 00:05:37,604 ご存じですか? 67 00:05:42,943 --> 00:05:45,612 早馬? いや 知らぬ。 68 00:05:45,612 --> 00:05:49,950 <読みは外れ 完全な空振り。 鰹は船で運ばれた。➡ 69 00:05:49,950 --> 00:05:52,853 しかし ここで諦めるわけにはいかない。➡ 70 00:05:52,853 --> 00:05:56,289 平吉は 船が着く市場を目指し 急いで 江戸に引き返す> 71 00:05:56,289 --> 00:05:58,225 え~ こちら沢嶋。 本部 応答願います。 72 00:05:58,225 --> 00:06:00,160 (古橋ミナミ) はい。 本部 古橋です。 73 00:06:00,160 --> 00:06:02,095 初鰹の件ですが➡ 74 00:06:02,095 --> 00:06:04,564 船で運ばれた場合のルートを アップして頂きたいんですけど。 75 00:06:04,564 --> 00:06:06,900 初鰹の流通経路ですか? 76 00:06:06,900 --> 00:06:10,570 はい。 了解しました。 すぐにアップします。 77 00:06:10,570 --> 00:06:13,907 え~ 鰹ですが 江戸湾では取れないので➡ 78 00:06:13,907 --> 00:06:18,778 相模湾沖や 房総沖で取れる鰹が 江戸に運ばれてくる事になります。 79 00:06:18,778 --> 00:06:22,916 三浦や鎌倉などの 31か所の港に揚がった鰹は➡ 80 00:06:22,916 --> 00:06:26,586 主に八挺櫓の早船 押送船に載せ換えられ➡ 81 00:06:26,586 --> 00:06:29,256 一刻を争うようにして 日本橋 本材木町の➡ 82 00:06:29,256 --> 00:06:31,191 新場魚市場へと 直送されます。 83 00:06:31,191 --> 00:06:33,126 日本橋 本材木町ですね。 はい。 84 00:06:33,126 --> 00:06:35,128 了解しました。 ありがとうございます。 85 00:06:35,128 --> 00:06:38,265 <初鰹ブームは とどまる事を知らず➡ 86 00:06:38,265 --> 00:06:41,968 年々 買い取り競争が 激しくなっていた> 87 00:06:46,139 --> 00:06:48,608 <悔しい思いをしている。➡ 88 00:06:48,608 --> 00:06:52,279 ライバルの呉服商 大黒屋に 先に買われてしまったからだ。➡ 89 00:06:52,279 --> 00:06:54,948 「今年こそ 初鰹を手に入れろ」。➡ 90 00:06:54,948 --> 00:06:57,851 それは 平吉に課せられた 至上命令だった。➡ 91 00:06:57,851 --> 00:07:01,554 失敗の許されない平吉に 休んでいる暇はなかった。➡ 92 00:07:01,554 --> 00:07:04,891 すぐに 市場のある日本橋を目指す。➡ 93 00:07:04,891 --> 00:07:06,826 だが…> 94 00:07:06,826 --> 00:07:10,230 分からんやつよのう。 95 00:07:10,230 --> 00:07:13,900 間もなく通すと 言うておるであろうが。 96 00:07:13,900 --> 00:07:17,237 予期せぬ事態です。 今 橋の上で事故が起こっていて➡ 97 00:07:17,237 --> 00:07:20,907 通行止めを食らっていますね。 果たして 間に合うんでしょうか。 98 00:07:20,907 --> 00:07:23,910 <そして そこにいたのは…> 99 00:07:27,580 --> 00:07:30,483 <彼もまた 橋で足止めを食らっていた。➡ 100 00:07:30,483 --> 00:07:34,487 初鰹を狙って 魚市場に出向くのは間違いない> 101 00:07:42,595 --> 00:07:45,498 <市場までの距離は およそ400m。➡ 102 00:07:45,498 --> 00:07:48,935 幸か不幸か ライバルと並ぶ事になってしまった> 103 00:07:48,935 --> 00:07:51,738 お前 前に出るな。 何なんでぇ! 104 00:07:55,275 --> 00:07:59,279 しょうがねえじゃねえか。 そうなっちまったんでぇ。 105 00:08:04,551 --> 00:08:07,454 知ってんのか。 知らねえから言ってんだよ。 106 00:08:07,454 --> 00:08:11,224 <初鰹の競りは 既に始まっているかもしれない。➡ 107 00:08:11,224 --> 00:08:15,562 通行が許可されるのを イライラしながら 待つしかない> 108 00:08:15,562 --> 00:08:17,497 俺が先でぇ。 109 00:08:17,497 --> 00:08:21,234 <平吉 亥三郎 火花を散らす 2人の奉公人。➡ 110 00:08:21,234 --> 00:08:24,571 この競争 絶対に負けられない。➡ 111 00:08:24,571 --> 00:08:28,241 橋の上に散乱した荷物が 片づけられていく。➡ 112 00:08:28,241 --> 00:08:30,176 そして いよいよ…> 113 00:08:30,176 --> 00:08:33,179 よ~し。 114 00:08:36,583 --> 00:08:41,254 <ついに 初鰹獲得レースが スタートした。➡ 115 00:08:41,254 --> 00:08:44,591 市場に向かって 猛然とダッシュする男たち。➡ 116 00:08:44,591 --> 00:08:47,594 目指すは 今年の初鰹を扱う問屋だ> 117 00:08:53,099 --> 00:08:55,135 <平吉と亥三郎が 同時に ゴール。➡ 118 00:08:55,135 --> 00:08:57,604 2人とも 我先にと 買い取りの交渉に入る> 119 00:08:57,604 --> 00:09:00,206 京橋の呉服商 大黒屋の者でございますが…。 120 00:09:00,206 --> 00:09:04,878 手前は 蔵前の札差 武蔵屋の 奉公の者でございます。 121 00:09:04,878 --> 00:09:07,781 <果たして 初鰹は?> 122 00:09:07,781 --> 00:09:11,785 お若いの お若いの! 123 00:09:16,222 --> 00:09:18,558 初鰹を頂きたいんでございます。 124 00:09:18,558 --> 00:09:20,860 (笑い声) 125 00:09:23,229 --> 00:09:26,933 おう 着きましたぜ。 それで今から…。 126 00:09:28,568 --> 00:09:31,471 片づけ? 127 00:09:31,471 --> 00:09:33,440 武蔵屋さんに 大黒屋さんといっちゃあ➡ 128 00:09:33,440 --> 00:09:35,442 あっしらにとっちゃ 上得意でございますから➡ 129 00:09:35,442 --> 00:09:38,912 便宜を図ってさしあげてえが… 130 00:09:38,912 --> 00:09:40,914 <一歩 遅かった> 131 00:09:56,262 --> 00:10:00,266 <残る初鰹は 仲買人の元に> 132 00:10:02,135 --> 00:10:05,438 (平吉)売れた? 133 00:10:07,874 --> 00:10:10,877 さあ どうでございやしょう。 134 00:10:18,518 --> 00:10:20,954 <だが既に 仲買人から➡ 135 00:10:20,954 --> 00:10:23,289 末端の棒手振りに 売られてしまっていた。➡ 136 00:10:23,289 --> 00:10:26,960 棒手振りとは てんびんを担いで 魚を売る 小売商人だ。➡ 137 00:10:26,960 --> 00:10:29,629 2人は 棒手振りを探し 走り回る。➡ 138 00:10:29,629 --> 00:10:31,564 そして ついに…。➡ 139 00:10:31,564 --> 00:10:36,503 街の一角に人だかりが。 大急ぎで近づいていく。➡ 140 00:10:36,503 --> 00:10:39,639 まさしく それは 棒手振りだった。➡ 141 00:10:39,639 --> 00:10:43,943 初鰹を求める客で 現場は大混乱となっている> 142 00:10:48,982 --> 00:10:51,885 (千吉)下がれ! ほら 下がれ。 143 00:10:51,885 --> 00:10:56,189 <そして ついに その姿を現した> 144 00:11:16,609 --> 00:11:19,946 目や耳はタダだが 口は高くつく。 145 00:11:19,946 --> 00:11:24,951 <残った初鰹は 僅かに1本のみ。 早速 競りが開始された> 146 00:11:30,290 --> 00:11:35,295 <早くも 一両をつける客が現れた。 だが…> 147 00:11:45,638 --> 00:11:48,541 そうだ。 いくらありゃいいんでぇ? 148 00:11:48,541 --> 00:11:50,843 二両⁉ 149 00:11:52,512 --> 00:11:55,315 <と その時。➡ 150 00:11:55,315 --> 00:11:59,018 亥三郎が勝負に出た> 151 00:12:00,587 --> 00:12:02,922 <が 平吉も負けられない> 152 00:12:02,922 --> 00:12:05,258 (平吉)この場で払うぜ。 おお! それでこそだ! 153 00:12:05,258 --> 00:12:07,260 <しかし…> 154 00:12:10,096 --> 00:12:12,599 <とうとう 三両まで跳ね上がった。➡ 155 00:12:12,599 --> 00:12:14,934 同時に2人が 同じ値段をつける事態> 156 00:12:14,934 --> 00:12:16,869 二両って 先に言ったのは俺だぜ。 157 00:12:16,869 --> 00:12:18,805 おめえが三両と言いやすいように 下地を作ってやったんだ。 158 00:12:18,805 --> 00:12:21,274 譲るのは おめえの方だろうが。 159 00:12:21,274 --> 00:12:24,944 何 訳の分かんねえ事 抜かしやがんでぇ。 160 00:12:24,944 --> 00:12:31,284 <購入権をめぐり もめ始める2人。 両者 一歩も譲らない> 161 00:12:31,284 --> 00:12:33,219 おめえさんが はっきりしねえから…。 162 00:12:33,219 --> 00:12:35,922 いや あっしは はっきりしてやすぜ。 163 00:12:42,295 --> 00:12:45,999 <三両は 2人にとって 予算枠 ギリギリだったのだ> 164 00:12:47,634 --> 00:12:51,638 <そこで 売り手が解決策を出す> 165 00:12:53,973 --> 00:12:56,676 後腐れはなしですぜ。 166 00:12:58,311 --> 00:13:02,615 俺が先に言ったんだろう。 俺が表だ。 167 00:13:07,587 --> 00:13:09,922 <勝負の草履投げ。➡ 168 00:13:09,922 --> 00:13:13,226 表が出れば亥三郎 裏が出れば平吉の勝ち> 169 00:13:18,264 --> 00:13:22,969 <運命の瞬間。 果たして…?> 170 00:13:24,604 --> 00:13:27,273 今年の初鰹は こちらの おにいさんに決まりました! 171 00:13:27,273 --> 00:13:30,943 <決まった!➡ 172 00:13:30,943 --> 00:13:34,280 初鰹は ついに平吉の手に。➡ 173 00:13:34,280 --> 00:13:39,285 ライバル大黒屋との勝負 今年の対決は 武蔵屋の勝利で幕を閉じた> 174 00:14:00,239 --> 00:14:02,575 <1812年の記録では➡ 175 00:14:02,575 --> 00:14:04,911 歌舞伎役者の 中村歌右衛門が➡ 176 00:14:04,911 --> 00:14:07,814 初鰹を 1本三両の値段で 買い取ったという。➡ 177 00:14:07,814 --> 00:14:11,250 初物 特に初鰹は バブルと呼べるほど➡ 178 00:14:11,250 --> 00:14:13,586 獲得合戦は過熱していた> 179 00:14:13,586 --> 00:14:16,289 お気をつけなすって。 180 00:14:19,459 --> 00:14:23,596 <任務をやり遂げた平吉に やっと 安堵の表情が浮かぶ。➡ 181 00:14:23,596 --> 00:14:27,934 主人の元に届けるため 帰路を急いだ。➡ 182 00:14:27,934 --> 00:14:30,269 ところが…。➡ 183 00:14:30,269 --> 00:14:33,573 再び 目の前に亥三郎の姿が> 184 00:14:35,141 --> 00:14:37,844 何 訳の分かんねえ事 言ってんだよ。 185 00:14:40,613 --> 00:14:43,316 頼むよ! 186 00:14:44,951 --> 00:14:47,286 <亥三郎が泣きついてきた。➡ 187 00:14:47,286 --> 00:14:49,956 彼もまた 主人に仕える奉公人。➡ 188 00:14:49,956 --> 00:14:53,960 手ぶらで帰れば 厳しい お叱りが待っている> 189 00:14:58,965 --> 00:15:01,667 あんな祭りは 1回きりよ。 190 00:15:06,572 --> 00:15:09,575 <なりふり構わず 亥三郎が懇願する> 191 00:15:11,244 --> 00:15:14,580 それは こっちも一緒だ! おねげえだ! 192 00:15:14,580 --> 00:15:17,483 (平吉)ちょっと ちょっと! やめろよ そういうの。 193 00:15:17,483 --> 00:15:19,919 <そして…> 194 00:15:19,919 --> 00:15:23,222 (平吉)当たり前だ。 195 00:15:25,591 --> 00:15:28,928 しょうがねえ。 平吉! うわっ! 196 00:15:28,928 --> 00:15:31,597 <亥三郎が 卑劣な行為に出た。➡ 197 00:15:31,597 --> 00:15:34,300 平吉を殴り 初鰹を奪っていく> 198 00:15:35,935 --> 00:15:40,640 <平吉は亥三郎の前にいた男たちに 助けを求めた> 199 00:15:42,275 --> 00:15:45,578 <彼らも加わり 亥三郎を追いかける> 200 00:15:47,146 --> 00:15:49,148 <運よく そこは➡ 201 00:15:49,148 --> 00:15:52,452 追跡を助けてくれた男たちが住む 長屋だった> 202 00:15:55,822 --> 00:15:59,525 そうはいかねえなあ! 203 00:16:04,230 --> 00:16:07,233 早くしろよ。 204 00:16:21,080 --> 00:16:23,583 <多勢に無勢と判断したのか➡ 205 00:16:23,583 --> 00:16:26,252 威勢のよかった亥三郎も 観念する。➡ 206 00:16:26,252 --> 00:16:28,955 初鰹は 無事に戻った> 207 00:16:32,124 --> 00:16:36,128 ちょっと待てよ。 何すんでぇ。 208 00:16:42,602 --> 00:16:45,605 だとしたら 虫がよすぎるぜ。 209 00:16:51,611 --> 00:16:54,514 <だが 平吉にとって 思わぬ事態が起きる。➡ 210 00:16:54,514 --> 00:16:58,217 長屋の住人は 先ほどの競りで 一両をつけた者たちだった> 211 00:17:00,887 --> 00:17:02,822 気持ちは分かるんだけどね➡ 212 00:17:02,822 --> 00:17:06,125 てめえも 自分が欲しくて 買ったわけじゃねえんだ。 213 00:17:26,045 --> 00:17:29,749 <彼らが初鰹を欲しがるのには 特別な事情があった。➡ 214 00:17:29,749 --> 00:17:31,951 その訳とは…> 215 00:17:48,601 --> 00:17:53,306 いや 昔からなんでぇ。 ただ… 216 00:17:58,945 --> 00:18:02,248 そしたら こいつらがよ…。 217 00:18:24,570 --> 00:18:28,240 <それは 長屋の住人たちの あつい人情であった> 218 00:18:28,240 --> 00:18:32,244 頼むぜ。 頼む! このとおりだ。 219 00:18:35,114 --> 00:18:39,118 けどな…。「けど」だ? 「けど」… 何でぇ? 220 00:18:41,587 --> 00:18:44,924 <それでも 平吉は 譲るわけにはいかない。➡ 221 00:18:44,924 --> 00:18:48,628 主人の命令を成し遂げる事が 最優先事項なのだ> 222 00:18:53,265 --> 00:18:58,137 <しかし 長屋の住人たちも 引き下がらない> 223 00:18:58,137 --> 00:19:01,140 おい。 よし。 224 00:19:06,212 --> 00:19:09,215 <気性の荒い彼らが なんと 実力行使に出た> 225 00:19:11,550 --> 00:19:15,221 そうだよ 分けてくれんのかよ? 226 00:19:15,221 --> 00:19:18,924 ごちゃごちゃ言ってたって 始まらねえや。(平吉)そんな…。 227 00:19:23,896 --> 00:19:26,799 心配するな。 228 00:19:26,799 --> 00:19:29,568 <最悪の展開。➡ 229 00:19:29,568 --> 00:19:33,906 目の前で 競り落とした初鰹が さばかれてしまう。➡ 230 00:19:33,906 --> 00:19:37,576 むしろが広げられ ついに…。➡ 231 00:19:37,576 --> 00:19:40,279 だが…> 232 00:19:42,915 --> 00:19:46,786 <それは 鰹ではなかった> 233 00:19:46,786 --> 00:19:48,788 どういう事だ⁉ 234 00:19:53,559 --> 00:19:55,928 ちくしょう あの野郎! 235 00:19:55,928 --> 00:19:58,831 <悪知恵が働く 亥三郎の手口。➡ 236 00:19:58,831 --> 00:20:02,268 食材として買っていたコイと 初鰹をすり替えていたのだ。➡ 237 00:20:02,268 --> 00:20:04,203 まんまと だまされた。➡ 238 00:20:04,203 --> 00:20:07,606 亥三郎の行方を追って 聞き込みを開始する> 239 00:20:07,606 --> 00:20:11,110 ちょっと見てないねえ。 くそ… 向こうへ行こう。 240 00:20:11,110 --> 00:20:13,612 <と その時…> 241 00:20:13,612 --> 00:20:16,615 向こうだ! 242 00:20:18,951 --> 00:20:20,986 <町なかを流れる運河。➡ 243 00:20:20,986 --> 00:20:23,622 そこには 大黒屋の奉公人たちと共に➡ 244 00:20:23,622 --> 00:20:27,293 食材を 船に積み込もうとしている 亥三郎の姿があった。➡ 245 00:20:27,293 --> 00:20:30,196 長屋の住人たちが 初鰹を奪い返そうとする。➡ 246 00:20:30,196 --> 00:20:32,631 船着き場は大混乱となる。➡ 247 00:20:32,631 --> 00:20:35,534 亥三郎たち大黒屋チーム 対する 長屋チーム➡ 248 00:20:35,534 --> 00:20:38,537 初鰹の争奪戦が始まった> 249 00:20:41,974 --> 00:20:45,644 え~ 今ですね 長屋の方々と 亥三郎さんたちの間で➡ 250 00:20:45,644 --> 00:20:48,314 初鰹をめぐっての争奪戦が 繰り広げられています。 251 00:20:48,314 --> 00:20:51,217 果たして どちらの手に渡るんでしょうか。 252 00:20:51,217 --> 00:20:55,187 <長屋の若者が 鰹をつかんで 抜け出てきた。➡ 253 00:20:55,187 --> 00:20:58,958 だが 大黒屋奉公人たちが 追いかけ 奪い取る。➡ 254 00:20:58,958 --> 00:21:01,594 後方にいた仲間にパス。➡ 255 00:21:01,594 --> 00:21:04,597 それをもらい受けた亥三郎> 256 00:21:07,466 --> 00:21:11,937 <鰹を持つ手を伸ばした。 その先には 大黒屋の船が> 257 00:21:11,937 --> 00:21:13,873 行かせるな! 行かせるな! 258 00:21:13,873 --> 00:21:16,275 <しかし 長屋住人も諦めない。➡ 259 00:21:16,275 --> 00:21:19,945 必死に奪い返し 形勢逆転> 260 00:21:19,945 --> 00:21:27,286 ♬~ 261 00:21:27,286 --> 00:21:31,957 <どちらも一歩も引かない 激しい争奪戦> 262 00:21:31,957 --> 00:21:39,298 ♬~ 263 00:21:39,298 --> 00:21:45,004 <大黒屋が 後方にロングパス。 絶好のポジションに亥三郎がいた> 264 00:21:49,308 --> 00:21:54,013 <初鰹を載せた船が 岸を離れていく> 265 00:21:55,648 --> 00:21:58,984 <とうとう 大黒屋の手に渡ってしまった。➡ 266 00:21:58,984 --> 00:22:03,255 残された両者が もつれて そのまま 地面に倒れ込む。➡ 267 00:22:03,255 --> 00:22:08,127 彼らを残して 平吉は 船の行方を追う。➡ 268 00:22:08,127 --> 00:22:14,867 立てかけてあった釣りざおから 何かをひらめいていた。➡ 269 00:22:14,867 --> 00:22:19,171 釣り針を使って 鰹を引っ掛け 奪い返すつもりらしい> 270 00:22:20,806 --> 00:22:22,942 えっ? 何ですかい? 271 00:22:22,942 --> 00:22:25,277 すいません ちょっと お借りします。 272 00:22:25,277 --> 00:22:28,614 <私は その様子を 詳細に映像に収めるべく➡ 273 00:22:28,614 --> 00:22:33,953 極小の使い捨てカメラ ナノカムを 釣り針に装着させてもらう事に> 274 00:22:33,953 --> 00:22:37,289 ありがとうございます。 ええ。 275 00:22:37,289 --> 00:22:42,995 <平吉の初鰹奪還作戦 果たして うまくいくのか?> 276 00:22:44,630 --> 00:22:47,533 <橋の下を通過しようとする 大黒屋の船。➡ 277 00:22:47,533 --> 00:22:51,303 こちらには気付いていない。➡ 278 00:22:51,303 --> 00:22:55,307 平吉は タイミングを見計らって 釣り針を下ろす> 279 00:22:58,644 --> 00:23:02,248 <釣り針に仕掛けられた ナノカムの映像。➡ 280 00:23:02,248 --> 00:23:05,251 ゆっくりと船が近づいてくる> 281 00:23:11,590 --> 00:23:15,461 <風が吹き 釣り針のコントロールがきかない。➡ 282 00:23:15,461 --> 00:23:20,165 亥三郎の着物に引っ掛かりそうに なるのを 巧みによける> 283 00:23:22,234 --> 00:23:26,138 <上下の距離感覚が なかなか つかめない。➡ 284 00:23:26,138 --> 00:23:28,941 再び チャレンジ。➡ 285 00:23:28,941 --> 00:23:32,278 絶妙なポイント。➡ 286 00:23:32,278 --> 00:23:34,613 奪還成功!> 287 00:23:34,613 --> 00:23:36,949 やりやがったな! 288 00:23:36,949 --> 00:23:40,286 <初鰹が やっと手元に戻った。➡ 289 00:23:40,286 --> 00:23:42,621 主人の元に走っていく平吉。➡ 290 00:23:42,621 --> 00:23:45,925 初鰹の争奪戦は こうして 幕を閉じた> 291 00:23:48,294 --> 00:23:51,630 <帰還した平吉は 何事もなかったかのように➡ 292 00:23:51,630 --> 00:23:54,333 初鰹を主人に差し出す> 293 00:23:59,305 --> 00:24:01,607 そうかい。 294 00:24:03,175 --> 00:24:05,911 へえ。 それでも 何とか…。 295 00:24:05,911 --> 00:24:09,915 それは ご苦労だったね。 いえ…。 296 00:24:16,922 --> 00:24:19,591 <そして…➡ 297 00:24:19,591 --> 00:24:22,261 すぐさま 初鰹は さばかれ➡ 298 00:24:22,261 --> 00:24:25,597 ひいきの客人たちに 振る舞われる事になった> 299 00:24:25,597 --> 00:24:29,468 皆さん さあ 箸をつけて下さい。 300 00:24:29,468 --> 00:24:32,471 <江戸の鰹の味わい方は 今とは違う。➡ 301 00:24:32,471 --> 00:24:34,940 刺身にして からしを付けて 食べるのが➡ 302 00:24:34,940 --> 00:24:36,875 一般的であったという。➡ 303 00:24:36,875 --> 00:24:39,812 江戸中期の豪商 紀伊國屋文左衛門も➡ 304 00:24:39,812 --> 00:24:43,949 初鰹を買い占め 大勢の客に 振る舞ったという。➡ 305 00:24:43,949 --> 00:24:48,287 江戸っ子の見栄であり 富裕層のステータスだったのだ。➡ 306 00:24:48,287 --> 00:24:51,123 それは 奉公人である平吉にとって➡ 307 00:24:51,123 --> 00:24:55,294 決して 味わう事のできない 食文化であった。➡ 308 00:24:55,294 --> 00:24:57,596 が その時だった> 309 00:25:01,567 --> 00:25:04,870 <主人の文右衛門が 思いがけない行動に出た> 310 00:25:10,576 --> 00:25:14,246 <平吉の苦労を察した 主人の気遣い。➡ 311 00:25:14,246 --> 00:25:17,249 だが 平吉は…> 312 00:25:28,427 --> 00:25:30,362 へえ。 313 00:25:30,362 --> 00:25:35,167 <足早に 目的の場所に向かう平吉。 その行く先は…> 314 00:25:36,935 --> 00:25:39,238 おめえ あれから どうしてたんでぇ? 315 00:25:46,278 --> 00:25:49,581 どうもこうもねえんでぇ。 さあ… 316 00:25:53,619 --> 00:25:55,554 おお…。 317 00:25:55,554 --> 00:25:58,857 いいのか? これ。 (平吉)ああ。 318 00:26:05,230 --> 00:26:09,902 <初めて 初鰹を食べる父親と 父親の体を気遣う息子> 319 00:26:09,902 --> 00:26:11,837 うめぇか? 320 00:26:11,837 --> 00:26:15,240 <その親子を見守る住人たち> 321 00:26:15,240 --> 00:26:17,910 ありがとな。 322 00:26:17,910 --> 00:26:23,916 <享楽に浮かれる人々とは対照的な 彼らの姿が印象的だった> 323 00:26:39,932 --> 00:26:43,235 それに おめえさん 知らねえかもしれねえですが… 324 00:26:46,605 --> 00:26:49,308 それは おいしそうですね。 ええ。 325 00:27:00,152 --> 00:27:02,154 そうですか。 326 00:27:13,565 --> 00:27:17,236 ごめんなすって。 327 00:27:17,236 --> 00:27:21,573 <これだけ高値がつき 江戸っ子を熱狂させた 初鰹も➡ 328 00:27:21,573 --> 00:27:25,444 1か月後には 値段が 50分の1まで暴落したという。➡ 329 00:27:25,444 --> 00:27:30,916 人々を熱狂させ 時期が過ぎると あっという間に熱が冷めた初鰹。➡ 330 00:27:30,916 --> 00:27:34,786 そこに見たのは 江戸っ子特有の見栄と粋だった。➡ 331 00:27:34,786 --> 00:27:39,925 だが そのありようは今も変わらぬ 人間の営みなのかもしれない> 332 00:27:39,925 --> 00:27:56,275 ♬~ 333 00:27:56,275 --> 00:28:01,113 え~ 以上 コードナンバー925371 アウトします。 334 00:28:01,113 --> 00:28:20,098 ♬~