1 00:02:03,427 --> 00:02:05,727 こっちこっち ほら ほら 2 00:02:09,700 --> 00:02:12,903 どけ どけどけ 3 00:02:12,903 --> 00:02:14,903 どけどけどけ 4 00:02:25,315 --> 00:02:28,515 どうどう よしよしよし 5 00:02:37,828 --> 00:02:41,532 順斉殿 筒井殿! 6 00:02:41,532 --> 00:02:43,534 いやあ これはこれは 7 00:02:43,534 --> 00:02:46,503 紀伊家 御側御用人 田崎玄右衛門殿ではないか 8 00:02:46,503 --> 00:02:49,073 いや しばらくでござった 9 00:02:49,073 --> 00:02:51,341 のんびりしてる場合ではない 10 00:02:51,341 --> 00:02:54,745 ハハハ 何がおありになったのか 11 00:02:54,745 --> 00:02:58,449 まだ何事も伺っておらんので 慌てようもござらん 12 00:02:58,449 --> 00:03:02,586 じ… 実はな 和歌山から急使があって 13 00:03:02,586 --> 00:03:05,289 頼職様が ご病気になられたとのこと 14 00:03:05,289 --> 00:03:08,225 頼方様に至急 帰っていただかなければならん 15 00:03:08,225 --> 00:03:11,361 何?頼職様が急病? ああ 16 00:03:11,361 --> 00:03:15,065 それは一大事 しかし困ったな 17 00:03:15,065 --> 00:03:17,634 あ? 頼方殿はのう 18 00:03:17,634 --> 00:03:19,837 この頃は講義が休みになると 19 00:03:19,837 --> 00:03:22,172 学生たちと一緒に 市中へ出かけられて 20 00:03:22,172 --> 00:03:24,608 いつ帰られるか 見当もつかんのじゃ 21 00:03:24,608 --> 00:03:27,044 そんな 22 00:03:27,044 --> 00:03:30,414 何とかしてください 紀伊家の一大事でござる 23 00:03:30,414 --> 00:03:33,283 まずは ともかく寮のほうへ 24 00:03:33,283 --> 00:03:35,652 うんうん うん 25 00:03:35,652 --> 00:03:40,924 源太 源太はいないか?源太 26 00:03:40,924 --> 00:03:43,927 …ぬかずかん 27 00:03:43,927 --> 00:03:50,367 見よや 昌平黌に 28 00:03:50,367 --> 00:03:54,872 男児あり おー! 29 00:03:54,872 --> 00:03:58,442 いいか 我々は どんなことがあっても 30 00:03:58,442 --> 00:04:00,711 学問の火を消してはならない 31 00:04:00,711 --> 00:04:02,713 おー! おー! 32 00:04:02,713 --> 00:04:05,415 自由の火を消してはいけない 33 00:04:05,415 --> 00:04:07,417 おー! 34 00:04:07,417 --> 00:04:11,054 たとえ… 頼方様 35 00:04:11,054 --> 00:04:13,123 頼方様! 36 00:04:13,123 --> 00:04:20,864 それ!風に嘯く猛虎の如く 37 00:04:20,864 --> 00:04:28,872 雲を望める飛龍に似たり 天魔鬼神も… 38 00:04:28,872 --> 00:04:33,944 順斉殿 あの 頼方殿のそばにいる 娘は あれは何者ですな? 39 00:04:33,944 --> 00:04:37,614 あー あれか あれは袖と申してな 40 00:04:37,614 --> 00:04:39,616 あ? ハハハ 41 00:04:39,616 --> 00:04:48,058 見よや 昌平黌に男児あり 42 00:04:48,058 --> 00:04:50,194 おー! 43 00:04:50,194 --> 00:04:52,194 おー 行くぞ 44 00:04:54,231 --> 00:04:57,201 頼方様 頼方様 45 00:04:57,201 --> 00:05:00,337 何だ 玄右衛門ではないか 46 00:05:00,337 --> 00:05:02,439 どうしたのだ そのような顔をして 47 00:05:02,439 --> 00:05:04,708 情けのうございます 48 00:05:04,708 --> 00:05:06,710 だから言わないことじゃ ありません 49 00:05:06,710 --> 00:05:10,747 私は このような町の学校に 入れるのは最初から反対だった 50 00:05:10,747 --> 00:05:14,885 このような… このような毎日を 若は送っておられたのですか? 51 00:05:14,885 --> 00:05:19,923 素晴らしいだろ 玄右衛門などには到底 分からぬ 52 00:05:19,923 --> 00:05:23,160 そうだ しばらく 泊まっていかぬか な?さあ行こう 53 00:05:23,160 --> 00:05:26,330 とんでもございません 一大事でござりますぞ 54 00:05:26,330 --> 00:05:30,830 あ?何かあったのか? 紀伊大納言殿がご病気じゃそうな 55 00:05:35,172 --> 00:05:37,174 兄上が? 56 00:05:37,174 --> 00:05:40,274 はい 和歌山より早馬が 57 00:05:48,585 --> 00:05:51,085 分かった すぐに行く 58 00:05:53,223 --> 00:05:57,427 そちは先に屋敷に戻って 和歌山へ行く支度をしといてくれ 59 00:05:57,427 --> 00:05:59,796 いいえ 門前にて お待ちいたします 60 00:05:59,796 --> 00:06:02,966 玄右衛門 頼方にも 61 00:06:02,966 --> 00:06:06,670 していかなければならないことが あるのだ 62 00:06:06,670 --> 00:06:11,241 分かりました 馬を置いておきます 一刻も早く 63 00:06:11,241 --> 00:06:13,641 順斉殿 面倒かけた いや 64 00:06:19,483 --> 00:06:24,688 袖に別れを言っておいでに なるのですね 65 00:06:24,688 --> 00:06:28,488 知っておいでになったのですか 先生は 66 00:06:39,269 --> 00:06:43,874 では和歌山へ いよいよ… 67 00:06:43,874 --> 00:06:49,346 こんな形で こんなに早く やってくるとは 68 00:06:49,346 --> 00:06:51,346 思ってもいなかった 69 00:07:11,201 --> 00:07:14,538 袖 70 00:07:14,538 --> 00:07:16,538 言いにくいことだが 71 00:07:18,742 --> 00:07:21,945 仮にもし 72 00:07:21,945 --> 00:07:23,947 頼方がこのまま 帰ってこなかったら 73 00:07:23,947 --> 00:07:26,216 袖はどうする? 74 00:07:26,216 --> 00:07:29,453 このまま 帰っていらっしゃらない? 75 00:07:29,453 --> 00:07:32,022 兄にもしものことがあれば 76 00:07:32,022 --> 00:07:35,559 家督を継がなくてはならぬ 77 00:07:35,559 --> 00:07:40,063 そんなことはないわ お兄様のご病気は治るわ 78 00:07:40,063 --> 00:07:43,667 だって ご病気だけなんでしょ? 79 00:07:43,667 --> 00:07:45,802 じきに治るわよ 80 00:07:45,802 --> 00:07:48,638 きっと全快なさる 81 00:07:48,638 --> 00:07:54,077 ね?そうなれば また今のように 82 00:07:54,077 --> 00:07:58,582 今のままで… ね?そうでしょ? 83 00:07:58,582 --> 00:08:00,684 頼方様 84 00:08:00,684 --> 00:08:05,422 あなたは きっと戻って おいでになるわ… おいでになるわ 85 00:08:05,422 --> 00:08:09,022 袖が… 袖が待ってるんですもの 86 00:08:11,461 --> 00:08:15,061 そうだな ここには袖がいる 87 00:08:17,734 --> 00:08:20,370 頼方の青春がある 88 00:08:20,370 --> 00:08:23,870 酒がある 仲間がいる 89 00:08:27,911 --> 00:08:30,811 戻ってくる きっとだ 90 00:08:51,802 --> 00:08:54,271 先生 91 00:08:54,271 --> 00:08:56,271 急がれるがよい 92 00:08:58,842 --> 00:09:02,078 袖のこと頼みます 93 00:09:02,078 --> 00:09:04,678 うん 御免 94 00:09:12,055 --> 00:09:14,055 頼方様 95 00:09:16,426 --> 00:09:21,731 約束… きっとまた 戻っておいでになるわね? 96 00:09:21,731 --> 00:09:24,831 お部屋も今のままにしときます 97 00:09:41,852 --> 00:09:46,256 袖 袖は頼方殿が 戻ってこられると 98 00:09:46,256 --> 00:09:50,026 信じておるのか? ええ 99 00:09:50,026 --> 00:09:53,964 ならば言うまい 100 00:09:53,964 --> 00:09:56,266 何かあるの?先生 101 00:09:56,266 --> 00:09:58,568 頼方殿には言わなんだ 102 00:09:58,568 --> 00:10:03,206 頼方殿も多分 ご存じなかったであろう 103 00:10:03,206 --> 00:10:07,106 紀伊殿が ご病気で あられるはずがないのじゃ 104 00:10:09,446 --> 00:10:13,149 先日 あることがあって 105 00:10:13,149 --> 00:10:16,286 急きょ和歌山より ご出府あそばされたと 106 00:10:16,286 --> 00:10:20,156 ある筋より聞いておる 107 00:10:20,156 --> 00:10:22,156 どういうことなの?先生 108 00:10:34,004 --> 00:10:37,073 おっ 109 00:10:37,073 --> 00:10:40,076 若 お戻りでしたか お待ちしておりました 110 00:10:40,076 --> 00:10:43,813 どうした 支度はできたか? あの… 殿がお待ちです 111 00:10:43,813 --> 00:10:46,449 兄上が?どういうことなんだ? 112 00:10:46,449 --> 00:10:49,619 兄上は今 ご病気 兄上は和歌山のはずではないか 113 00:10:49,619 --> 00:10:53,456 お病気ではありません 訳あって数日前に江戸へ 114 00:10:53,456 --> 00:10:55,956 ともあれ お庭へ はい 115 00:10:59,162 --> 00:11:03,900 殿 頼方様をお連れしました 116 00:11:03,900 --> 00:11:05,902 兄上 117 00:11:05,902 --> 00:11:09,773 おー 頼方か しばらくであったな 118 00:11:09,773 --> 00:11:12,073 さあ こちらへ入れ 119 00:11:14,811 --> 00:11:16,811 わたくしは これにて 120 00:11:29,893 --> 00:11:33,096 ご健勝にて何より 121 00:11:33,096 --> 00:11:36,499 うん そちも元気そうだな 122 00:11:36,499 --> 00:11:40,503 ああ 無頼の暮らしを 送ってますゆえ 123 00:11:40,503 --> 00:11:42,505 病気の入り込む余地が ありません 124 00:11:42,505 --> 00:11:46,810 ハハハ 無頼はよい 125 00:11:46,810 --> 00:11:51,014 ハア 城の暮らしほど うっとうしいものはない 126 00:11:51,014 --> 00:11:53,183 飽き飽きだ 127 00:11:53,183 --> 00:11:55,885 兄上 128 00:11:55,885 --> 00:11:58,989 うん 129 00:11:58,989 --> 00:12:02,525 そちに伝えねばならぬことがある 130 00:12:02,525 --> 00:12:05,462 玄右衛門から何か聞いたか? 131 00:12:05,462 --> 00:12:08,898 私は兄上がご病気だと言われて 132 00:12:08,898 --> 00:12:12,769 急きょ和歌山へ戻るよう 呼び返されたんです 133 00:12:12,769 --> 00:12:14,769 うん 134 00:12:17,107 --> 00:12:20,510 水戸綱條殿 並びに尾張殿から 135 00:12:20,510 --> 00:12:24,114 そちに相談事があってな 136 00:12:24,114 --> 00:12:26,616 家老たちの一存ではならず 137 00:12:26,616 --> 00:12:29,386 その上 内分のことゆえ 138 00:12:29,386 --> 00:12:31,986 私も こうして出府してきたのだ 139 00:12:34,557 --> 00:12:39,329 少々 厄介なことになっている 140 00:12:39,329 --> 00:12:43,329 そちに八代の口が かかってきたのだ 141 00:12:46,569 --> 00:12:48,569 八代? 142 00:12:51,241 --> 00:12:53,309 兄上 143 00:12:53,309 --> 00:12:55,545 急にそのようなことを言われても 144 00:12:55,545 --> 00:12:58,145 頼方には何のことやら 見当がつきません 145 00:13:00,116 --> 00:13:03,987 詳しく話してくれませんか? うん 146 00:13:03,987 --> 00:13:06,089 誰もまだ知らぬことだが 147 00:13:06,089 --> 00:13:08,958 上様がご病気なのだ 148 00:13:08,958 --> 00:13:12,529 今日明日をも知れぬ 149 00:13:12,529 --> 00:13:16,766 上様は いまだ8歳 幼年にわたらせられれば 150 00:13:16,766 --> 00:13:21,237 お世継ぎのことも 誰一人 考えてもいなんだ 151 00:13:21,237 --> 00:13:24,541 元々 ご病弱で おいでになったのだが 152 00:13:24,541 --> 00:13:29,012 ふとした風邪が元で 重体に陥られた 153 00:13:29,012 --> 00:13:33,316 急いで世継ぎのことを決めねば 大変なことになる 154 00:13:33,316 --> 00:13:39,122 それで ご長老水戸殿 幕閣 相談の上 そちに 155 00:13:39,122 --> 00:13:42,425 いや 待ってください 兄上 156 00:13:42,425 --> 00:13:45,628 何もかも突然で 157 00:13:45,628 --> 00:13:49,132 上様の世継ぎのことは 尾張様 水戸様 158 00:13:49,132 --> 00:13:52,869 それに兄上もおいでになるでは ありませんか 159 00:13:52,869 --> 00:13:55,071 私は嫌なのだ いや と申されて… 160 00:13:55,071 --> 00:13:59,642 ともかく そなたに 白羽の矢が立ったのだ 161 00:13:59,642 --> 00:14:03,079 後のことはご長老や尾張殿 それに 162 00:14:03,079 --> 00:14:05,448 老中の間部と直接 話すがよい 163 00:14:05,448 --> 00:14:07,448 兄上! 164 00:14:09,586 --> 00:14:13,456 城からお迎えの駕籠が 参っております お支度を 165 00:14:13,456 --> 00:14:15,456 玄右衛門! 166 00:14:40,750 --> 00:14:42,786 頼方殿はどうされたのです? 167 00:14:42,786 --> 00:14:45,321 遅いではありませぬか この火急の折に 168 00:14:45,321 --> 00:14:47,991 遅うござるのう 見てまいりましょう 169 00:14:47,991 --> 00:14:51,628 紀伊頼方様 170 00:14:51,628 --> 00:14:55,031 お入り 171 00:14:55,031 --> 00:14:57,231 おー 参られた 172 00:15:03,673 --> 00:15:05,673 こちらでございます 173 00:15:17,687 --> 00:15:22,158 紀伊頼方 お召しにより 出仕いたしました 174 00:15:22,158 --> 00:15:25,628 頼方殿 夜中の出仕 ご苦労さまでござる 175 00:15:25,628 --> 00:15:27,697 さあ こちらへ 176 00:15:27,697 --> 00:15:29,697 はっ 177 00:15:37,607 --> 00:15:40,977 頼方殿 お召しの向きは 178 00:15:40,977 --> 00:15:44,681 兄上の紀伊大納言殿より お聞きで? 179 00:15:44,681 --> 00:15:47,083 おっ 水戸殿 180 00:15:47,083 --> 00:15:50,653 口を差し挟むようでござるが 181 00:15:50,653 --> 00:15:55,491 大切な話ゆえ ここにおられる方々を 182 00:15:55,491 --> 00:16:00,797 頼方殿に まず お引き合わせ いたしたらいかがでござろう 183 00:16:00,797 --> 00:16:03,166 そうでござったな 184 00:16:03,166 --> 00:16:08,371 頼方殿 今 先に 口を開かれたお方が 185 00:16:08,371 --> 00:16:10,871 水戸綱條殿 186 00:16:12,942 --> 00:16:16,342 私は尾張継友じゃ 187 00:16:20,116 --> 00:16:23,253 尾張殿のお隣におられるのが 188 00:16:23,253 --> 00:16:27,056 先の上様 家宣様のご生母 189 00:16:27,056 --> 00:16:30,293 長昌院様 190 00:16:30,293 --> 00:16:34,264 長昌院です 191 00:16:34,264 --> 00:16:38,368 そのお隣が老中筆頭… 192 00:16:38,368 --> 00:16:40,868 間部越前守詮房 193 00:16:46,075 --> 00:16:48,778 私の隣におられるのが… わらわ 194 00:16:48,778 --> 00:16:52,678 上様生母 月光院じゃ 195 00:16:57,153 --> 00:17:00,490 さて話を戻しますが 196 00:17:00,490 --> 00:17:05,561 頼方殿 おいでいただいたのは 他でもない 197 00:17:05,561 --> 00:17:08,564 上様ご重体 198 00:17:08,564 --> 00:17:13,136 残念ながら ご回復の兆しは ないとのことにて 199 00:17:13,136 --> 00:17:17,840 にわかに八代様を 決めねばならぬことと相なった 200 00:17:17,840 --> 00:17:19,909 そこで… お待ちください 201 00:17:19,909 --> 00:17:23,413 そのお話ならば 水戸様が先程 言われたとおり 202 00:17:23,413 --> 00:17:25,715 兄 頼職より聞いてまいりました 203 00:17:25,715 --> 00:17:30,320 ですが頼方 いまだ若輩 とても その任ではございません 204 00:17:30,320 --> 00:17:34,357 それに そもそも筋が違いましょう 筋? 205 00:17:34,357 --> 00:17:38,328 徳川家の取り決めにて 世継ぎの絶えし その時は 206 00:17:38,328 --> 00:17:40,363 まず尾張様 207 00:17:40,363 --> 00:17:43,366 おっ いやいや 頼方殿 208 00:17:43,366 --> 00:17:48,171 そのことならば私のことは 見逃してもらいたい 209 00:17:48,171 --> 00:17:50,173 見逃す? 210 00:17:50,173 --> 00:17:56,646 私は上様と同じ 生来 病弱でのう 211 00:17:56,646 --> 00:17:59,916 ここに こうして 座っているだけでも 212 00:17:59,916 --> 00:18:02,385 息が切れる 213 00:18:02,385 --> 00:18:04,387 本心を言うなら 214 00:18:04,387 --> 00:18:09,158 早く屋敷に帰って 横になりたい 215 00:18:09,158 --> 00:18:12,161 ホホホ 216 00:18:12,161 --> 00:18:14,330 (せき払い) 217 00:18:14,330 --> 00:18:17,567 よいではござらぬか 間部殿 218 00:18:17,567 --> 00:18:22,138 人には それぞれ生き方がござる 219 00:18:22,138 --> 00:18:25,108 堪忍してくだされい 220 00:18:25,108 --> 00:18:29,912 では水戸様 お年から申しても 221 00:18:29,912 --> 00:18:33,383 年のことなど申されるな 222 00:18:33,383 --> 00:18:36,919 頼方殿 いたずらに 年のみ重ねても 223 00:18:36,919 --> 00:18:39,188 何ほどのことがあろう 224 00:18:39,188 --> 00:18:43,726 私たちは頼方殿のお人柄を 見込んで 225 00:18:43,726 --> 00:18:48,164 八代にと頼んでいるのじゃ 226 00:18:48,164 --> 00:18:53,469 さ… されど この任ばかりは お受けするわけにはいきません 227 00:18:53,469 --> 00:18:57,473 水戸様は先程 お人柄と申されましたが 228 00:18:57,473 --> 00:18:59,709 私の知っていることといえば 229 00:18:59,709 --> 00:19:04,580 紀州の山河と昌平黌のみ 230 00:19:04,580 --> 00:19:09,719 勝手気まま無頼の暮らしを 送った身に天下の政など 231 00:19:09,719 --> 00:19:11,788 頼方殿 232 00:19:11,788 --> 00:19:16,225 わらわたちが そなたを 頼りにすることは 233 00:19:16,225 --> 00:19:19,028 今 頼方殿が申された 234 00:19:19,028 --> 00:19:22,928 勝手気まま無頼な暮らし え? 235 00:19:25,701 --> 00:19:30,473 分かりません 頼方には 長昌院様の申されること 236 00:19:30,473 --> 00:19:34,343 分かりませぬか? はあ 237 00:19:34,343 --> 00:19:38,281 徳川の天下もすでに7代 238 00:19:38,281 --> 00:19:41,284 揺るぎなきものになったとは申せ 239 00:19:41,284 --> 00:19:46,022 泰平に慣れて 人々の心も緩みがち 240 00:19:46,022 --> 00:19:51,227 見直さねばならぬことも 数々あることでしょう 241 00:19:51,227 --> 00:19:57,100 そのような時 ただ城の中にてのみ 育ったあるじにては 242 00:19:57,100 --> 00:20:02,472 人の心をつかむ よい政が できませぬ 243 00:20:02,472 --> 00:20:04,707 人の心に通じ 244 00:20:04,707 --> 00:20:09,011 生ける者の喜びや悲しみ 245 00:20:09,011 --> 00:20:14,250 それを知ってこそ初めて よい上様 246 00:20:14,250 --> 00:20:18,154 よい天下人 247 00:20:18,154 --> 00:20:22,425 その大任をわたくしが… 248 00:20:22,425 --> 00:20:25,962 そうです 頼方殿こそ 249 00:20:25,962 --> 00:20:28,331 誰よりも適任 250 00:20:28,331 --> 00:20:30,366 それにこのことは 251 00:20:30,366 --> 00:20:33,069 こちらにおいでのご重役 252 00:20:33,069 --> 00:20:35,705 ご長老の皆様のみの 253 00:20:35,705 --> 00:20:39,709 ご意思ではないのです 254 00:20:39,709 --> 00:20:45,748 私の子 六代家宣様のご意思です 255 00:20:45,748 --> 00:20:48,748 先の上様のご意思? 256 00:20:52,188 --> 00:20:55,758 頼方殿は覚えておいでか? 257 00:20:55,758 --> 00:21:00,963 あの 紀州から出府して 昌平黌に入る際 258 00:21:00,963 --> 00:21:05,701 上様にお目通りしたことが ありましたねえ 259 00:21:05,701 --> 00:21:07,703 覚えております 260 00:21:07,703 --> 00:21:11,174 あの折に頼方殿を見られて 261 00:21:11,174 --> 00:21:16,512 「頼もしき若者よ 家継に万一のことがあったら」 262 00:21:16,512 --> 00:21:20,650 「あの紀州の暴れん坊を八代に」と 263 00:21:20,650 --> 00:21:22,850 言い残されました 264 00:21:26,189 --> 00:21:30,226 頼方殿 六代様のご意思 265 00:21:30,226 --> 00:21:34,726 よもや背くつもりは ないであろうのう? 266 00:21:39,468 --> 00:21:43,168 お越しくださいませ 上様 ご最期にござります 267 00:22:11,667 --> 00:22:17,039 袖 どうしたのじゃ ハハッ また頼方殿のことか? 268 00:22:17,039 --> 00:22:20,009 先生 頼方様は 269 00:22:20,009 --> 00:22:23,012 やはり上様におなりあそばすの? 270 00:22:23,012 --> 00:22:25,612 うん そのことよのう 271 00:22:27,917 --> 00:22:30,219 七代様はご逝去 272 00:22:30,219 --> 00:22:34,657 みんなは頼方様が 八代様になるって言ってるわ 273 00:22:34,657 --> 00:22:38,728 うん だが頼方殿は まだ 274 00:22:38,728 --> 00:22:43,399 しかとした返事を していられないらしいのじゃ 275 00:22:43,399 --> 00:22:47,536 なぜ? 上様は大任じゃ 276 00:22:47,536 --> 00:22:51,336 頼方殿は そのことを 誰よりもよくご存じなのじゃ 277 00:22:53,576 --> 00:22:56,512 上様におなりになったら 278 00:22:56,512 --> 00:23:00,549 もう ここには戻ってこられない 279 00:23:00,549 --> 00:23:03,185 ううん そんなことはない 280 00:23:03,185 --> 00:23:07,089 頼方様は きっと ここに戻っていらっしゃる 281 00:23:07,089 --> 00:23:10,489 そうおっしゃった ねっ そうでしょ?先生